以下に本発明の実施の形態を図1〜図8に基づいて説明する。
本実施形態の電源装置は、従来技術で説明した静電霧化装置に用いられる電源装置であって、放電極と対向電極との間に高電圧を印加する高圧電源回路と、冷却側伝熱部により放電極を冷却することで空気中の水分を放電極表面に結露させるペルチェ素子に対して周囲温度に応じた電圧を印加する可変電源のペルチェ電源回路とを備えている。
図1は本実施形態の電源装置の回路図であり、直流電源回路41と、直流電源回路41の一方(正側)の出力端子に一次側巻線n1の一端(巻き終わり端)が接続されるとともに、第1及び第2の二次側巻線n2,n3と帰還巻線n4とを備えたトランスT1と、直流電源回路41の他方(負側)の出力端子と一次側巻線n1の他端との間に接続されたスイッチング素子Q1と、スイッチング素子Q1のオフ時に二次側巻線n2から放出されるエネルギにより充電される第1のコンデンサC1を具備し、第1のコンデンサC1の両端電圧を第1の負荷に供給するRCC方式のレギュレータ回路であるフライバック・コンバータ回路42と、スイッチング素子Q1のオン時に二次側巻線n3から放出されるエネルギにより充電される第2のコンデンサC2を具備したフォワード・コンバータ回路43と、帰還巻線n4に発生する帰還信号に基づいてフライバック・コンバータ回路42の出力電圧が一定電圧となるようにスイッチング素子Q1のオン・オフを制御する制御回路44と、フォワード・コンバータ回路43の出力電圧をスイッチングすることによって電圧値が可変の出力電圧を発生して第2の負荷に供給する電圧変換回路45とを備えている。ここにおいて、フライバック・コンバータ回路42から放電極と対向電極との間に高電圧(例えば無負荷時において3.8kV)を印加する高圧電源回路が構成され、フォワード・コンバータ回路43および電圧変換回路45からペルチェ素子に対して周囲温度に応じた電圧を印加するペルチェ電源回路が構成される。
直流電源回路41は、入力端子P1,P2を介して供給される交流電源ACを全波整流するダイオードブリッジDBと、ダイオードブリッジDBの出力電圧を整流するコンデンサC10とで構成される。
直流電源回路41の一方(高圧側)の出力端子には、トランスT1の一次側巻線n1の一端が接続され、一次側巻線n1の他端にはN型のMOSFETよりなるスイッチング素子Q1のドレイン端子が接続される。スイッチング素子Q1のソース端子は抵抗R7を介して直流電源回路41の他方(低圧側)の出力端子に接続され、ゲート端子には制御回路44の出力が接続されている。またスイッチング素子Q1のゲート・ソース間には抵抗R4が接続され、スイッチング素子Q1のゲートと直流電源回路41の高圧側の出力端子との間には抵抗R9が接続されている。また、一次側巻線n1には抵抗R8とコンデンサC6とダイオードD3からなるスナバ回路が並列に接続されている。
制御回路44は、一端が直流電源回路41の低圧側出力端子に接続されたトランスT1の帰還巻線n4と、帰還巻線n4の他端とスイッチング素子Q1のゲート端子との間に接続された抵抗R5およびコンデンサC4の直列回路と、スイッチング素子Q1のゲート端子と直流電源回路41の低圧側出力端子との間にダイオードD4を介してコレクタ−エミット間が接続されるととともに、スイッチング素子Q1のソース端子が抵抗R6を介してベースに接続されたNPN型トランジスタよりなるスイッチング素子Q2とを備えている。
また、トランスT1の二次側巻線n2の一端(巻き終わり端)にはダイオードD1のカソードが接続され、ダイオードD1のアノードと二次側巻線n2の他端との間には平滑用のコンデンサC1と抵抗R1とが並列に接続され、コンデンサC1の両端電圧V1が出力端子P3,P4を介して負荷に供給される。また二次側巻線n2の他端は、抵抗R10〜R13の直列回路を介して直流電源回路41の低圧側出力端子に電気的に接続されている。ここに、ダイオードD1、コンデンサC1、トランスT1、スイッチング素子Q1などからフライバック・コンバータ回路42が構成されている。
トランスT1の他方の二次側巻線n3の一端(巻き終わり端)にはダイオードD2のアノードが接続され、ダイオードD2のカソードと二次側巻線n3の他端との間には平滑用のコンデンサC2が接続されており、二次側巻線n3の他端は直流電源回路41の低圧側出力端子に電気的に接続されている。ここに、ダイオードD2、コンデンサC2、トランスT1、スイッチング素子Q1などからフォワード・コンバータ回路43が構成され、トランスT1やスイッチング素子Q1などの一次側回路を上記のフライバック・コンバータ回路42と共用している。
電圧変換回路45は、ダイオードD2とコンデンサC2との接続点にエミッタが接続されるとともに、ベースが抵抗R3およびNPN型のトランジスタよりなるスイッチング素子Q4を介して直流電源回路41の低圧側出力端子に接続されたPNP型のトランジスタよりなるスイッチング素子Q3と、スイッチング素子Q3のベース・エミッタ間に接続された抵抗R2と、スイッチング素子Q3のコレクタと直流電源回路41の低圧側出力端子との間に接続された平滑用のコンデンサC3と、スイッチング素子Q4のオン/オフを制御する制御回路45aとを備えたシリーズ・レギュレータ回路により構成され、コンデンサC3の両端電圧が出力端子P5,P6を介して負荷(ペルチェ素子)に供給される。
制御回路45aは、コンデンサC3の高圧側端子に一端が接続された抵抗R14と、制御電源Vccと直流電源回路41の低圧側出力端子との間に接続された抵抗R16とツェナーダイオードZD1との直列回路と、ツェナーダイオードZD1の両端間に接続されたサーミスタTH1と抵抗R17との直列回路と、抵抗R17に並列接続されたコンデンサC5と、抵抗R14の他端が反転入力端子に接続されるとともに、サーミスタTH1および抵抗R17の接続点が非反転入力端子に接続されたオペアンプOP1と、オペアンプOP1の反転入力端子と出力端子との間に接続された抵抗R15及びコンデンサC4の並列回路と、ツェナーダイオードZD1と並列に接続された抵抗R18および発光ダイオードLD1の直列回路と、発光ダイオードLD1と並列に接続された抵抗R19と、オペアンプOP1の出力に一端が接続された抵抗R20と、抵抗R20の他端にカソードが接続されるとともに、アノードがスイッチング素子Q4のベースに接続されたツェナーダイオードZD2とを備えている。尚、図1中のP7はフレームグランドに接続するための接地端子である。
次に本電源装置の動作について説明する。まず、直流電源回路41に交流電源ACが投入されると、交流電源ACの電源電圧がダイオードブリッジDBにより全波整流され、コンデンサC10により平滑され、交流電源ACを整流、平滑して得た直流電源がトランスT1の一次側回路に供給される。この時、制御回路44ではスイッチング素子Q1のゲート端子にオン電圧が印加されて、スイッチング素子Q1がターンオンする。スイッチング素子Q1がオンすると、直流電源回路41から一次側巻線n1、スイッチング素子Q1、抵抗R7の経路で一次電流が流れる。ここで、フライバック・コンバータ回路42ではダイオードD1が逆極性に接続されているので、スイッチング素子Q1のオン時にはダイオードD1がオフし、トランスT1にエネルギが蓄積される。一方、フォワード・コンバータ回路43ではダイオードD2が順方向に接続されているので、スイッチング素子Q1のオン時にダイオードD2もオンし、二次側巻線n3からダイオードD2を介してコンデンサC2に充電電流が供給され、コンデンサC2の両端間に充電電圧が発生する。
ここで、スイッチング素子Q1のオン時にトランスT1の一次側巻線n1に一次電流が流れると、抵抗R7の両端には一次電流に比例した電圧が発生し、抵抗R7の両端電圧が所定電圧以上にまで増加すると、抵抗R6を通ってスイッチング素子Q2にベース電流が流れ、スイッチング素子Q2がオンになる。この時、スイッチング素子Q1のゲート電荷がスイッチング素子Q2およびダイオードD4を介して引き抜かれるので、ゲート電圧が低下して、スイッチング素子Q1がターンオフし、スイッチング素子Q2もオフになる。尚、スイッチング素子Q1のターンオフ時に一次側巻線n1の両端に発生するサージ電圧は上述のスナバ回路により抑制されるようになっている。
スイッチング素子Q1がオフになると、トランスT1の一次側巻線n1に流れる一次電流が遮断されて、二次側巻線n2,n3に逆起電力が発生する。この時、フライバック・コンバータ回路42ではダイオードD1がオンになり、スイッチング素子Q1のオン時にトランスT1に蓄積されたエネルギが放出され、二次側巻線n2→コンデンサC1→ダイオードD1の経路で充電電流が流れて、コンデンサC1が充電される。一方、フォワード・コンバータ回路43ではダイオードD2が逆極性に接続されているので、ダイオードD2はオフ状態のままであり、スイッチング素子Q1のオフ時にはフォワード・コンバータ回路43に二次電流が流れない。
また、スイッチング素子Q1のオフ時において逆起電力が発生した後の二次側巻線n2には、ごく小さな残留エネルギーがあり、この残留エネルギーがバックスイングして帰還巻線n4に電圧が発生するので、制御回路44では、帰還巻線n4に発生した電圧を抵抗R5およびコンデンサC4の直列回路を介してスイッチング素子Q1のゲート端子に印加することで、所定時間後にスイッチング素子Q1がターンオンする。
そして、上記動作の繰り返しによって、スイッチング素子Q1が自励発振動作を行い、フライバック・コンバータ回路42のコンデンサC1と、フォワード・コンバータ回路43のコンデンサC2とが充電され、コンデンサC1の両端間に発生した高圧電圧V1が図示しない放電極と対向電極との間に印加されて、放電極に供給される水を霧化させるとともに、コンデンサC2の両端電圧V2が電圧変換回路45に供給される。
電圧変換回路45では、周囲温度によって抵抗値が変化するサーミスタTH1を用い、サーミスタTH1の抵抗値変化に応じて負荷であるペルチェ素子(図示せず)に供給する出力電圧V3を変化させている。なお、サーミスタTH1は、周囲温度が高くなると抵抗値が低下し、周囲温度が低くなると抵抗値が増大する特性を有している。
この電圧変換回路45の動作について以下に説明する。オペアンプOP1の反転入力端子には、コンデンサC3の両端電圧(つまり電圧変換回路45の出力電圧)V3が抵抗R14を介して入力される。一方、オペアンプOP1の非反転入力端子には、ツェナーダイオードZD1のツェナー電圧をサーミスタTH1と抵抗R17とで分圧した分圧電圧が基準電圧Vrefとして入力されている。オペアンプOP1は、反転入力端子に印加された電圧変換回路45の出力電圧V3と、非反転入力端子に印加された基準電圧Vrefとを差動増幅した信号をスイッチング素子Q4のゲートに印加している。
ここで、電圧変換回路45の出力電圧V3が基準電圧Vrefよりも高ければ、オペアンプOP1の出力電圧の極性が負になって、スイッチング素子Q4,Q3がオフになるので、コンデンサC2からコンデンサC3に充電電流が流れなくなって、コンデンサC3の両端電圧(すなわち電圧変換回路45の出力電圧V3)が低下する。一方、電圧変換回路45の出力電圧V3が基準電圧Vrefよりも低ければ、オペアンプOP1の出力電圧の極性が正になり、スイッチング素子Q4のスレショルドレベルを越えると、スイッチング素子Q4,Q3がオンになるので、コンデンサC2からコンデンサC3に充電電流が流れて、コンデンサC3の両端電圧(すなわち電圧変換回路45の出力電圧V3)が増加する。したがって、制御回路45aが、出力電圧V3と基準電圧Vrefとの高低を比較し、比較結果に応じてスイッチング素子Q4のオン/オフを制御することで、出力電圧V3が基準電圧Vrefに一致するように制御される。
ところで、この基準電圧Vrefは、ツェナーダイオードZD1の両端電圧をサーミスタTH1と抵抗R17との直列回路で分圧して得た電圧であり、周囲温度が高くなるとサーミスタTH1の抵抗値が低下するので、基準電圧Vrefが増加し、周囲温度が低くなるとサーミスタTH1の抵抗値が増加するので、基準電圧Vrefが低下する。而して、制御回路45aでは、周囲温度が高くなると出力電圧V3を高くしてペルチェ素子の冷却能力を高めるとともに、周囲温度が低くなると出力電圧V3を低くしてペルチェ素子による冷却能力を低下させている。ここで、静電霧化装置ではペルチェ素子に通電して周囲の空気を冷却することによって、空気中の水分を結露させて水を生成しているのであるが、制御回路45aは周囲温度が高い場合にはペルチェ素子に印加する出力電圧V3を高め、ペルチェ素子による冷却能力を高めているので(ペルチェ素子の温度を下げているので)、空気中の水分を確実に結露させて水を生成することができる。
上述のように本電源装置は、フライバック・コンバータ回路42と、フォワード・コンバータ回路43とでトランスT1やトランスT1の一次側回路(スイッチング素子Q1や制御回路44など)を共用しているので、部品点数を削減でき、コストダウンや実装基板の小型化を実現できるという効果がある。また制御回路44が、トランスT1の帰還巻線n4に発生する帰還信号に基づいて、スイッチング素子Q1のオン/オフを制御することで、電圧値が略一定の出力電圧を第1の負荷(放電極と対向電極との間)に供給することができる。また電圧変換回路45が、フォワード・コンバータ回路43の出力電圧をスイッチングすることによって、電圧値が可変の出力電圧V3を第2の負荷(ペルチェ素子)に供給することができ、周囲温度に応じてペルチェ素子の冷却能力を変化させている。
次に、上述の電源装置を用いた静電霧化装置をヘアドライヤに搭載した実施形態について図2〜図8を参照して説明する。
図2及び図3は、上述した電源装置のうちフライバック・コンバータ回路42の高圧部品(トランスT1、ダイオードD1、コンデンサC1、抵抗R1,R10〜R13からなる)を実装した高圧基板11aを有する高圧基板組立品11を、樹脂成型品からなるケース1に内装した高圧発生ブロック10を示しており、ケース1の内部は電気部品の絶縁性、防水性を確保するために例えばエポキシ樹脂のような1次ポッティング剤3a、2次ポッティング剤3bにて樹脂封止されている。尚、高圧発生ブロック10の説明では特に断りが無いかぎり、図3(b)に示す状態において上下左右の方向を規定して説明を行う。
上記ケース1は、図6および図7に示すように、上方に開口した長方形の略箱状に形成されており、その長さ方向の一端1a側にトランスT1の二次側巻線n2を収納する第1収納室12が設けられるとともに、他端1b側に高圧基板11aを収納する第2収納室13が設けられ、両収納室12,13の間には後述するコア32を挿入するための凹溝1cが設けられている。
トランスT1は、ボビン8に一次側巻線n1と二次側巻線n2,n3と帰還巻線n4とをそれぞれ巻回し、E型コアからなるコア32,32の中棒をボビン8の中空孔8eに挿通して(図3(a)(b)参照)、コア32,32を接着固定することで一体に形成されており、コア32,32により日字形のコアを形成している。ボビン8は図4(a)に示すように角筒状に形成されて、長手方向の両端部に鍔部8aを備えるとともに、長手方向の中央位置よりも一端側(高圧基板11aと反対側)寄りに低圧側と高圧側とを仕切る2つの絶縁壁8bが隙間を開けて形成されている。またボビン8において他端側(基板側)の鍔部8aと絶縁壁8bの間には、4つの仕切り壁8cが等間隔に設けられている。
そして、ボビン8において一方の鍔部8aと絶縁壁8bとの間には一次側巻線n1と二次側巻線n3と帰還巻線n4とが重ね巻きされ、その表面は絶縁テープ8dで覆われている。低圧側の各巻線n1,n3,n4の両端はそれぞれ端子台6に設けた6個のラッピング端子9にそれぞれ巻き付けて固定されている。各ラッピング端子9は端子台6にインサート成形され、その他端側は端子台6の上面から上方に突出しており、この突出部位が後述の実装基板2Aに実装するための端子ピン5となる。
また、ボビン8において他方の鍔部8aと絶縁壁8bとの間には、高電圧を発生する二次側巻線n2が、仕切り壁8cによって仕切られた各巻胴部分にそれぞれ分巻きされている。なお二次側巻線n2の両端は、一方(基板側)の鍔部8aの上側部から延出する樹脂基台18にインサート成形されたラッピング端子34,34に巻き付けて固定されている。
ここで、重ね巻きされた低圧側の巻線n1,n3,n4と高電圧を発生する二次側巻線n2との間は、2つの絶縁壁8bと、2つの絶縁壁8bの間の空気層とで絶縁されており、絶縁性を向上させている。また本実施形態では二次側巻線n2をボビン8の巻胴部に分巻きしているので、分巻きしていない場合に比べてターン数を小さくでき、巻線とコアとの距離を短くできるから、損失を低減することができる。
また樹脂基台18の上面には、ポッティング剤3bを第1収納室12から第2収納室13(或いはその逆)に流動させるための2条の樹脂流動溝19が左右方向に沿って凹設されており、2条の樹脂流動溝19に挟まれた部位からは上方に向かって端子ピン35が突出している。端子ピン35は樹脂基台にインサート成形されている。端子ピン35の他端側と上述したラッピング端子34,34の他端側は、それぞれ、樹脂基台18における高圧基板11aとの対向面から外部に突出しており、この突出部位が高圧基板11aの配線パターンに半田付けされる半田付け端子35a,34a,34aとなっている。そして、これらの半田付け端子34a,35aを高圧基板11aに形成された端子パターンに半田付けすることにより、高圧基板11aにトランスT1が実装されて、高圧基板組立品11が構成される。なお半田付け端子35aは、図1に示す回路において抵抗R13における抵抗R12と反対側の端子に電気的に接続されており、端子ピン35は高圧発生ブロック10を実装する実装基板2Aのグランドパターンに電気的に接続されるのである。また高圧基板11aには、トランスT1が実装される側縁と反対側の側縁に、高圧電圧を出力するための2本のリード線21が半田付けされている。
この高圧基板組立品11のうちトランスT1の二次側巻線n2を収納する第1収納室12の両端には、それぞれ、切欠穴14,15が設けられており、外側の切欠穴14からトランスT1の絶縁テープ8dで被覆された巻線部分と、ボビン8と一体に形成された端子台6とがそれぞれ突出している。ここで、外側の切欠穴14の内周に設けた差込溝16にボビン8の中間部に設けた仕切り壁8cを挿入嵌合するとともに、切欠穴14の内周に設けたリブ36が2つの仕切り壁8cの間の隙間に嵌合し、且つ、内側の切欠穴15の内周に設けた差込溝17にボビン8の一端側(基板側)の鍔部8aを挿入嵌合することにより、第1収納室12の各切欠穴14,15がそれぞれ閉鎖され、これにより第1収納室12内に充填されて二次側巻線n2を封止するポッティング剤3bが切欠穴14,15から漏出しない構造となっている。なお第1収納室12の左右の壁は、コア32,32とボビン8との間に形成される空隙に挿入されるようになっている。
また第2収納室13には、第1収納室12側の壁に樹脂基台18を挿入するための凹部13aが形成されるとともに、反対側(ケース1の他端1b側)の壁には凹溝20が設けられている。凹溝20は、図6に示すように、ケース1の端縁部の左右2箇所にそれぞれ切り込み形成されている。各凹溝20は同じ構造をしているので、一方の凹溝20について説明する。凹溝20は、高圧基板組立品11から引き出されるリード線21を圧入保持するためのものである。リード線21は例えば絶縁被覆電線からなり、静電霧化装置の一対の放電針(放電極および対向電極)に接続される高圧線とGND線として用いられる。また第2収納室13の底部には、ケース1の他端1b側の部位にダミーピン7が圧入固定されており、高圧基板11aにはダミーピン7を挿通するための貫通孔38が貫設されている。
ここで、上記凹溝20は、リード線21全体が入り込むことができる大きさに切り込み形成されている。凹溝20の切り込み開口部の内側面には互いに対向する一対の抜け止め用突部30が突設されており、図3(a)に示すように抜け止め用突部30間の開口幅Aを、絶縁被覆電線からなるリード線21の外寸Bよりも若干狭くすることにより、リード線21を凹溝20に圧入可能で、且つ、圧入したリード線21を抜け止め保持できるようにしている。ここにおいて、凹溝20の横幅はリード線21の外寸Bよりも若干短く、抜け止め用突部30から凹溝20の底面までの深さはリード線21の外寸Bよりも若干長く設定されている。これにより、リード線21を凹溝20に圧入した状態では、リード線21が左右から挟圧された状態で、リード線21の上面が抜け止め用突部30に押し付けられ且つリード線21の下面が凹溝20の底面から若干浮き上がるようにしている。さらに、凹溝20の底面側であってケース1の内部に臨む内端側には、圧入されたリード線21に圧接してリード線21と凹溝20との隙間を塞ぐための堰部31が立設されているので(図3(b)のD部参照)、第2収納室13にポッティング剤3bを充填する際にポッティング剤3bが凹溝20から漏れ出すことがなく、またOリングなどのシール部材を用いる必要がないので、部品点数の削減や組立工数の低減を図ることができる。尚、本実施形態では、凹溝20をケース1の端縁部の外面よりも外方に延出すると共に、この延出部にも上記抜け止め用突部30を設けている。
この高圧発生ブロック10は、高圧基板組立品11の二次側巻線n2および高圧基板11aをそれぞれケース1の第1収納室12、第2収納室13に収納した後、ケース1内を樹脂封止しているのであるが、ケース1内部へのポッティング剤の注入は例えば2段階で行なわれる。最初は、図2(a)のように、第2収納室13内に高圧基板組立品11の上側(樹脂流動溝19よりも下側)までポッティング剤3aを注入し、その後、図2(b)のように、端子ピン35とダミーピン7の先端部を残して、各収納室12,13の開口付近までポッティング剤3bを注入しており、ポッティング剤3a,3bにより二次側巻線n2及び高圧基板11aが樹脂封止される。ポッティング剤3a,3bとしては例えばエポキシ樹脂やウレタン樹脂などの熱容量が大きいものが用いられ、これによりトランスT1の二次側巻線n2や高圧基板11aからの放出熱を効率良く吸収して冷却効果が高められると共に、ポッティングによって高圧側の二次側巻線n2と高圧基板11aとの防水性と絶縁性がそれぞれ確保され、水分等に起因する故障防止にも役立つ。なお第1収納室12と第2収納室13との間に挿入される樹脂基台18の上面には樹脂流動溝19が形成されているので、一方の収納室にポッティング剤3bを充填すれば、樹脂流動溝19を通して他方の収納室に充填することができる。また、トランスT1のコア32,32はポッティング剤3a,3bが充填される収納室12,13の外側に配置されているので、コア32,32がポッティング剤3a,3bに浸かっておらず、ポッティング剤3a,3bの収縮によってコア32,32に歪みが発生するのを防止することができる。
そして、ポッティング作業が終了すると、封止部4から突出している端子ピン35及びダミーピン7と端子台6に設けた端子ピン5を実装基板2Aにそれぞれ半田付け接続することで、実装基板2Aに高圧発生ブロック10が実装される。
この実装基板2Aには、上述した電源装置のうち、フライバック・コンバータ回路42の高圧部品(トランスT1、ダイオードD1、コンデンサC1、抵抗R1,R10〜R13からなる)を含む高圧発生ブロック10と、スイッチング素子Q1と、制御回路44を構成する回路部品(図1の点線Dで囲んだ回路部品)が実装されている。また上述した電源装置の残りの回路部品、すなわち直流電源回路41と、フォワード・コンバータ回路43のコンデンサC2と、電圧変換回路45を構成する回路部品(図1の点線E,Fで囲んだ回路部品)は別の実装基板2Bに実装されており、両基板2A,2Bの間はリード線37を介して電気的に接続されている(図7参照)。
ここで、本実施形態では、高圧基板組立品11をケース1内に収納した後にポッティング剤3a,3bを注入しており、ポッティング剤3a,3bを注入する前に高圧基板組立品11の組立が完了しているので、ポッティング作業を行う前にトランスT1などの性能検査を実施することができる。従来の高圧発生ブロックはコイルをケースに内装してポッティングした後でコアを取り付けていたため、ポッティング作業の前にトランスなどの性能検査を行うことができず、所望の性能が得られなかった場合には高圧発生ブロックの全体を廃棄するしかなかったが、本実施形態ではポッティング作業の前にトランスなどの性能検査が行えるので、所望の性能が得られない場合にはトランスT1あるいは高圧基板11のみの交換などで対応できるから、製品が無駄になることがない。
また、本実施形態ではケース1の底面に金属材料からなるダミーピン7を圧入固定しており、ダミーピン7の先端部は高圧基板11aに設けた貫通孔38を貫通して封止部4の表面から突出している。ダミーピン7は端子ピン5と異なり、ポッティング剤3a,3bで封止される。ダミーピン7の先端部は、端子ピン5と同様、実装基板2Aに対して半田付け接続されるが、ダミーピン7自体は電気的に関与しないものであり、電源装置を組み込んだ装置(本実施形態ではヘアドライヤ)の落下衝撃等によって端子ピン5,35にかかる荷重をダミーピン7で受け止めることで荷重を分散し、端子ピン5,35への荷重集中を防止するために用いられる。なおダミーピン7の本数は2本以上でもよい。
また、端子ピン5は高圧発生ブロック10の長手方向一端側に設けた端子台6にインサート成形されるとともに、ダミーピン7は高圧発生ブロック10の長手方向他端側でケース1に圧入固定されており、これら端子ピン5とダミーピン7とを高圧発生ブロック10の長手方向両端側に離間して設け、実装基板2Aに半田付け接続しているので、端子ピン5とダミーピン7とのスパンを長くしたことにより、実装基板2Aに対する高圧発生ブロック10の接続強度を高めることができ、ケース1の変形によるトランスT1等の電気部品への応力集中を低減して、電気部品の保護強化を図ることができる。
また本実施形態では、トランスT1の二次側巻線n2がポッティング剤3a,3bで封止され、トランスT1のボビン8に端子台6を一体に設けたので、トランスT1に対する端子台6の取り付け強度が高まる。そのうえ、トランスT1の巻線n1、n3、n4にそれぞれ接続されるラッピング端子9と端子ピン5とを端子台6にそれぞれインサート成形すると共に、端子ピン5とラッピング端子9とを端子台6の内部でL字形に連続形成しているので、ラッピング端子9を利用して端子台6から端子ピン5が抜けない構造となり、結果、従来のケース1に端子ピン5を圧入した構造と比較して、衝撃等による断線発生を確実に防止でき、取り扱い性や作業性の点で優れたものとなる。
また、端子台6からの端子ピン5の突出方向と直角方向にラッピング端子9を突出させたことにより、ラッピング端子9に妨げられることなく端子台6を実装基板2Aに密着させた状態で端子ピン5を実装基板2Aに半田付け接続することが可能となり、この結果、端子台6と実装基板2Aとの接続強度が高まり、ケース1と実装基板2Aとを強固に一体化できる利点もある。
次に静電霧化装置を組み込んだヘアドライヤについて図8に基づいて説明する。図8(a)はヘアドライヤ60の一部破断断面図であり、外殻62の筒状部の内側には温風発生装置61が納装されている。図8(b)は温風発生装置61の上面図、図8(c)は温風発生装置61の側面図であり、温風発生装置61の上面には主吹き出し口63の上側に設けた吹き出し口64に臨ませて静電霧化装置50が配置され、静電霧化装置50の後方には実装基板2Bが配置されている。また温風発生装置61の側面には実装基板2Aが配置されており、実装基板2A,2Bの間はリード線37を介して電気的に接続され、実装基板2Bに実装された高圧発生ブロック10と静電霧化装置50との間はリード線21を介して電気的に接続されている。なおヘアドライヤ60では、温風発生装置61内部のファンにより送られた空気がヒータにより加熱され、前方の主吹き出し口63から外部に送出されるのであるが、ファンにより送られた空気の一部はヒータに加熱されないまま、温風発生装置61と外殻62との間の空隙を通って静電霧化装置50に送られる。そして、静電霧化装置50のペルチェ素子により放電極を冷却し、放電極の表面に結露させた水を、放電極と対向電極との間に高電圧を印加することで霧化させて、ナノサイズで強い電荷を持つマイナスイオンミスト(以下、これをナノイオンミストという)を発生させ、吹き出し口64から外部に送られるようになっている。
本実施形態では、フライバック・コンバータ回路42と、フォワード・コンバータ回路43とでトランスT1やトランスT1の一次側回路(スイッチング素子Q1や制御回路44など)を共用することで、部品点数を削減しており、フォワードコンバータ回路43の回路部品を実装した実装基板2Bにはトランスが実装されないので、その空きスペースに直流電源回路41の回路部品を実装することで、上述の電源装置を2枚の実装基板2A,2Bに実装することができる。したがって、フライバック・コンバータ回路からなる高圧電源回路と、フォワードコンバータからなるペルチェ電源回路とがそれぞれトランスを有した従来の電源装置のように、直流電源回路の回路部品と、フライバック・コンバータからなる高圧電源回路の回路部品(トランスを含む)と、フォワードコンバータからなるペルチェ電源回路の回路部品(トランスを含む)とをそれぞれ別々の実装基板に実装した従来の電源装置に比べて、実装基板の枚数を3枚から2枚に削減することができ、電源装置を筐体に組み込む際に実装基板の収納スペースを小さくできるから、小型の機器にも電源装置を組み込むことができる。
なお、上述の実施形態では、電源装置を静電霧化装置に適用した例について説明したが、負荷変動の少ない第1の負荷と、負荷変動の大きな第2の負荷とにそれぞれ電源を供給するような用途であれば、どのような装置にも適用可能である。