JP4677361B2 - 発動発電機用インバータ - Google Patents

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本発明は、エンジンの回転駆動力を元に交流発電機により発生される交流電圧を整流して得られる直流電圧を、例えば50/60Hzで100Vの商用交流電圧に変換する発動発電機用インバータに関し、特に、屋外レジャー用、野外工事用、非常用等の電源として使用される携帯型の発動発電機に好適なインバータに関する。
携帯型の発動発電機は、ガソリンや軽油等の燃料を利用して任意の場所で照明やそのほかの電気機器の電源電力を手軽に得ることができることから、業務用途のみならずレジャー用途などにも広く利用されている。この種の発動発電機は運搬の容易性が重要であることから小型・軽量化が必須であり、それ以外に屋外での使用を考慮した防水性・防湿性も必要である。
上記のような携帯型の発動発電機として、従来、特許文献1に記載のものが知られている。一般に発動発電機では、交流発電機で発生される交流電圧を変換して得られる直流電圧から商用交流電圧を発生するためにインバータが使用されるが、上記文献に記載の発動発電機では、そのインバータの構成部品の1つであるインダクタンス素子の構造を工夫することにより、その占有体積を小さくしながら十分な性能を確保できるようにしている。
図7は上記文献に記載の従来のインダクタンス素子50の構造を示す正面図(a)及び側面図(b)である。このインダクタンス素子50は、矩形状の珪素薄鋼板を多数枚積重することで角柱棒状に形成した主コア51と、ガラスチューブにより主コア51の周囲を覆う絶縁被膜52と、該絶縁被膜52を介して主コア51の周囲に巻装されたコイル53と、該コイル53の外側に添設され、フェライトで構成された直方体状の補助コア54と、から成る。主コア51と補助コア54とは固定用テープ55を巻き付けることで一体化されている。
上述したようなインダクタンス素子50では、インダクタ(コイル)効率を高めるために、主コア51の外周面との間にできるだけ空隙ができないようにコイル53を巻装することが望ましい。主コア51は角柱棒状であるため、その外周面との間に空隙がないようにコイル53を巻装するには、屈曲性の高い線を用いてコイル53を形成する必要がある。しかしながら、こうした用途のコイルでは電流容量を大きくする必要があるため、単線を用いる場合にはその径がかなり太くなり屈曲性があまり良好ではない。そこで、径の細い線を多数撚り合わせた撚り線を使用するのが一般的である。そのため、単線を用いる場合に比べて線材自体のコストが高くつく。
また、こうした比較的屈曲性の高い線材を用いたとしても、自動巻線装置を利用した場合には角柱棒状の主コア51の周囲に空隙が生じないように巻装するのは困難である。そのため、作業者が手作業でコイル53の巻回作業を行う必要があり、そのために加工コストも大きくなる。また、手作業による巻回は作業に熟練を要するため作業者による出来のばらつきも大きく、品質や性能を安定に維持することが難しい。また、上記構造のインダクタンス素子では、コイル53以外にも、絶縁被膜52による被覆作業や固定用テープ55の巻付け作業にも手間が掛かり、全体としてコストの削減が難しいという問題がある。
特開2003−169483号公報
本発明はこのような点に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、発動発電機用インバータに利用されるインダクタンス素子の性能を損なうことなくそのコストを低減し、さらに自動巻線装置によるコイルの巻回を可能とすることで品質や性能の安定性を向上させることができる発動発電機用インバータを提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明は、エンジンによる回転駆動力を元に交流発電機により発生された交流電圧を整流する整流回路と、インダクタンス素子とコンデンサとから成るフィルタ回路を含み、前記整流回路からの直流電圧を商用交流電圧に変換するインバータ回路と、を備える発動発電機用インバータにおいて、前記インダクタンス素子は、
a)長円筒形状である絶縁性のボビンと、
b)前記ボビンの中空部の一方の半円状内周面に沿って収容される円柱棒状の第1コアと、
c)前記ボビンの中空部にあって該ボビンの他方の半円状内周面と前記第1コアの外周面との間に形成される空間に収容される、矩形状の珪素薄鋼板が多数積重されてなる第2コアと、
d)前記ボビンの外周面に沿って単線が巻回されてなるコイルと、
から成ることを特徴としている。
ここで「長円」とは、正円を中心点を通る直線で2分割して出来た2つの半円を上記直線に直交する方向に離間させ、その離間した端部同士をそれぞれ直線で繋いでできる図形である。
本発明に係る発動発電機用インバータにおいて、ボビンは長円筒状であるため、撚り線に比べれば硬く曲げにくい太径の単線であっても、ボビンの外周面に沿って空隙が殆どないように巻装したコイルを作製することができる。一方、長円筒状のボビンの中空部は、例えばフェライト等の磁性体から成る円柱棒状の第1コアと、多数の珪素薄鋼板が積重されることで形成された第2コアと、によりほぼ隙間無く満たされる。したがって、ボビンの外周面に沿って巻装されるコイルと第1及び第2コアとの間の距離はボビンの筒状体の肉厚にほぼ等しく、例えばボビンを合成樹脂から形成する場合に、その肉厚は例えば1mm程度とかなり薄くできる。そのため、コイルに電流を流した際に該コイルから発生する磁力線が無駄なく第1及び第2コアを通過する。したがって、磁力線の外部への漏れが小さく、コイル(インダクタ)効率を高くして所望のインダクタンス特性を得ることができる。
また、従来のように撚り線を使用せずに単線でコイルを形成することができ、しかも内周面が長円筒状となるように巻回すればよいので手作業でなく自動巻線装置を用いることができる。したがって、コイルの素材のコスト低減と加工コストの低減とを共に達成できる。また、長円筒状のボビンの中空部に収容される第1コア及び第2コアは、一般的に入手が容易な円柱棒状の磁性体(フェライトなど)と安価な材料である珪素薄鋼板との組み合わせにより構成することができるため、コアにかかるコストも低くて済む。さらにまた、ボビンは合成樹脂から成る成型品とすることができるので安価で済み、従来のような絶縁被覆やテープなどの装着作業は不要である。こうしたことから、本発明によれば、従来のインダクタンス素子に比べてコストを低減し、発動発電機のインバータを安価に提供することができる。
また、本発明に係る発動発電機用インバータでは、好ましくは、前記ボビンの中空部に面する内周面に、少なくとも該内周面に面して収容される前記珪素薄鋼板と前記第1コアとの間を隔てるように突設された突部を有する構成とするとよい。
この構成によれば、ボビンの内周面にその一面が接触している珪素薄鋼板の縁部が上記突部に当接することで、該珪素薄鋼板が第1コア側へ移動することが阻止される。つまりは突部が珪素薄鋼板に対するストッパとして機能するので、円柱棒状の第1コアの外周面とボビンの中空部の半円状内周面との間の隙間が珪素薄鋼板の厚さよりも大きいような場合であっても、上記隙間に珪素薄鋼板が入り込んでしまうことを防止することができる。これにより、ボビンの中空部において第1コアと第2コアの位置が安定し、それ故にインダクタンスとしての特性も安定する。
また、本発明に係る発動発電機用インバータでは、前記インダクタンス素子は、前記ボビンの両開口端面にそれぞれ装着される端面部材を含み、該端面部材により前記第1コア及び第2コアが前記ボビンの中空部に保持される構成とすることができる。
この構成によれば、端面部材をボビンに装着することで第1及び第2コアを安定的に保持できるので、組立が簡単であって組立作業の効率も良好である。
以下、本発明に係るインバータを備える発動発電機の一実施例について説明する。図1は本実施例による発動発電機の概略ブロック構成図、図2は図1中のインバータの回路構成図である。
図1に示すように、この発動発電機は、ガソリン、軽油などを燃料とするエンジン1と、エンジン1により回転駆動される駆動軸を介して回転駆動力を受ける交流発電機2と、整流回路4及びインバータ回路5を含み、交流発電機2で発生させた交流電圧を一旦直流に整流した後に周波数が50又は60Hzで電圧が100Vである商用交流電圧に変換するインバータ3と、から成り、インバータ3による商用交流電圧が出力される電圧出力端子6に、電力供給先である負荷7が接続される。
この発動発電機では、エンジン1が作動すると、交流発電機2は2800〜3800rpm程度の回転速度で安定的に回転駆動され、これにより電圧113〜212V、周波数300〜550Hz程度の三相交流電圧が交流発電機2で発生されてインバータ3に加えられる。インバータ3では、まずダイオードブリッジから成る整流回路4において三相交流電圧が直流電圧に変換され、平滑用コンデンサ11により平滑化される。電力用トランジスタ等のスイッチング素子12、13、14、15は図示しない制御回路から供給される数十kHz程度のパルス信号によりオン/オフ駆動され、これにより高周波のsin変調波が発生する。次段のインダクタンス素子17とコンデンサ18とにより構成されるフィルタ回路16によりsin変調波の高周波成分を除去すると、所望の商用周波数で100Vの正弦波交流電圧が得られ、これが負荷7に供給されることになる。
図3(a)はインバータ3の概略上面図、図3(b)は筐体のA−A’矢視線断面図である。インバータ3の筐体は、下面に突出して放熱板21が形成されたアルミダイカスト製の底板部20と、該底板部20の上にネジ23で固定される合成樹脂から成る側面枠部22とを含む。この筐体の内部には、図2で説明した各種電気部品を実装した回路基板24が収容され、さらに回路基板24が配置されていない部分にフィルタ回路16のインダクタンス素子17が収容されて、インダクタンス素子17からの2本の引き出し線35は真っ直ぐに伸びて回路基板24上の端子25に接続される。
なお、筐体内に回路基板24やインダクタンス素子17を初めとする必要な部品が全て装着された後に、筐体内には溶解したエポキシ樹脂が流し込まれ、全ての部品はエポキシ樹脂で被覆されることでモールドされる。これにより、インバータ3の防水性及び防湿性が確保され、高い信頼性を達成することができる。また、このインバータ3では、側面枠部22が合成樹脂製であるので、この側面枠部22を通してインダクタンス素子17からの漏れ磁束による閉磁路が形成されるおそれがない。そのために、従来のようにコイルの外側に補助コアを設ける必要がない。
次に、特徴的な構造を有するインダクタンス素子17について図4〜図6により説明する。図4は端面部材を取り外した状態のインダクタンス素子17の上面図(a)及び側面図(b)、図5は側面図の一部の拡大図、図6はボビンの両開口端面に装着される端面部材の正面図(a)と、組立状態でのB−B’矢視線断面図(b)、C−C’矢視線断面図(c)である。
このインダクタンス素子17は、合成樹脂(例えばポリブチレンテレフタレート:PBT)から成る長円筒状のボビン30と、ボビン30の外周面に巻装された、径が2.8mmであるポリエステル銅線の単線から成るコイル31と、ボビン30の中空部に収容され、その中空部の一方の半円形状の内周面の径よりも僅かに小さい径を有する円柱棒状のフェライトから成る第1コア32と、ボビン30の中空部で第1コア32が収容される以外の空間を満たすように、多数の同サイズの矩形状の珪素薄鋼板を積重させた第2コア33と、第1及び第2コア32、33の両端を保持するためにボビン30の両開口端面に装着される一対の端面部材34と、から成る。コイル31の両端からは同方向に略平行に引き出し線35が引き出されており、引き出し線35の先端には圧着端子36が取り付けられている。
図5に示すように、ボビン30の中空部の内周面は完全な長円形状ではなく、半円形状部30aの外側において内方に突出し且つ軸方向に延伸する突部30bが2個所に形成されている。この半円形状部30aに沿うように第1コア32を収容したとき、第1コア32の径と半円形状部30aの径との相違によるガタが存在し、第1コア32の外周面と半円形状部30aとの間には隙間が形成される。この隙間が1枚の珪素薄鋼板の厚さよりも大きい場合、上記突部30bがないと最も外側の(つまりボビン30の内周面に面する)珪素薄鋼板が移動して上記隙間に入り込んでしまうおそれがある。これに対し、本実施例のように突部30bを設けておくことにより、最も外側の珪素薄鋼板の縁部はこの突部30bに当接して、つまりは突部30bがストッパとして機能して、第1コア32の方向への移動が阻止される。このため、上述のような隙間への珪素薄鋼板の入り込みを防止することができ、第2コアにおける珪素薄鋼板の積重状態が安定する。
なお、図5に示すように、突部30bは第1コア32の外周面との間に隙間が形成されるような形状に意図的に形成されている。これは、上述したように樹脂モールドの際に流し込まれるエポキシ樹脂が第1コア32と突部30bとの間の隙間にも流れ込むようにするためである。これにより、樹脂モールドされた状態では、第1コア32、第2コア33ともに樹脂で固められ、ボビン30の中空部で所望の位置に固定されることになる。
ボビン30の両端開口面に装着される端面部材34はボビン30と同様の合成樹脂から成る成型品であり、ボビン30の端部が装入される軸方向に短い筒状部342と、該筒状部342の一端面から外側に張り出した鍔部341と、筒状部342の他端面から内方に張り出した押さえ部343と、を有する。さらに、筒状部342の一部には一対の爪部344が形成されている。ボビン30の端部には上記爪部344が嵌合する嵌合穴30cが形成されており、端面部材34の筒状部342をボビン30の端部に挿入すると、図6(c)に示すように爪部344が嵌合穴30cに嵌り込んで端面部材34の位置が固定される。
この状態において、押さえ部343はボビン30の両開口端面の一部を閉塞するから、ボビン30の中空部に収容された第1コア32及び第2コア33の端部は押さえ部343により係止されて抜けが防止できる。即ち、前述の如くボビン30の中空部に第1コア32及び第2コア33を収容した後に端面部材34を取り付ければ、第1コア32及び第2コア33はボビン30の中空部に安定的に保持され、その状態で以て図3(a)に示すように筐体内に取り付けることができる。その後に筐体内にエポキシ樹脂を流し込めば、ボビン30の中空部の隙間に樹脂が流れ込んで第1コア32及び第2コア33は完全に固定される。
以上説明したように、本実施例による発動発電機用インバータでは、フィルタ回路16の構成部材であるインダクタンス素子17の構造が簡単であり、組立作業も簡単である。特にコイル31は単線の巻回により形成可能であるので、撚り線を利用する場合に比べて素材のコストがかなり割安であり、自動巻線装置を使用できることから加工コストも抑えることができる。また、そうしたコストの削減にも拘わらず、コイル31とコア32、33との間の隙間を小さくできるので、コイル31から発生する磁力線を有効に利用して高いコイル効率を達成できる。
なお、上記実施例は本発明の一例であり、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。例えば、上記実施例において挙げた各部材の材料は一例であって、適宜に変更することができる。
本発明に係るインバータを備える発動発電機の一実施例である発動発電機の概略ブロック構成図。 図1中のインバータの回路構成図。 インバータの概略上面図(a)及び筐体のA−A’矢視線断面図。 端面部材を取り外した状態のインダクタンス素子の上面図(a)及び側面図(b)。 図4(b)の一部の拡大図。 ボビンの両開口端面に装着される端面部材の正面図(a)、組立状態でのB−B’矢視線断面図(b)、及びC−C’矢視線断面図(c)。 従来のインダクタンス素子の構造を示す正面図(a)及び側面図(b)。
符号の説明
1…エンジン
2…交流発電機
3…インバータ
4…整流回路
5…インバータ回路
6…電圧出力端子
7…負荷
11…平滑用コンデンサ
12、13、14、15…スイッチング素子
16…フィルタ回路
17…インダクタンス素子
18…コンデンサ
20…底板部
21…放熱板
22…側面枠部
23…ネジ
24…回路基板
25…端子
30…ボビン
30a…半円形状部
30b…突部
30c…嵌合穴
31…コイル
32…第1コア
33…第2コア
34…端面部材
341…鍔部
342…筒状部
343…押さえ部
344…爪部
35…引き出し線
36…圧着端子

Claims (3)

  1. エンジンによる回転駆動力を元に交流発電機により発生された交流電圧を整流する整流回路と、インダクタンス素子とコンデンサとから成るフィルタ回路を含み、前記整流回路からの直流電圧を商用交流電圧に変換するインバータ回路と、を備える発動発電機用インバータにおいて、前記インダクタンス素子は、
    a)長円筒形状である絶縁性のボビンと、
    b)前記ボビンの中空部の一方の半円状内周面に沿って収容される円柱棒状の第1コアと、
    c)前記ボビンの中空部にあって該ボビンの他方の半円状内周面と前記第1コアの外周面との間に形成される空間に収容される、矩形状の珪素薄鋼板が多数積重されてなる第2コアと、
    d)前記ボビンの外周面に沿って単線が巻回されてなるコイルと、
    から成ることを特徴とする発動発電機用インバータ。
  2. 前記ボビンの中空部に面する内周面に、少なくとも該内周面に面して収容される前記珪素薄鋼板と前記第1コアとの間を隔てるように突設された突部を有することを特徴とする請求項1に記載の発動発電機用インバータ。
  3. 前記インダクタンス素子は、前記ボビンの両開口端面にそれぞれ装着される端面部材を含み、該端面部材により前記第1コア及び第2コアが前記ボビンの中空部に保持されることを特徴とする請求項1又は2に記載の発動発電機用インバータ。

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