JP4925232B2 - 電界プローブ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電界プローブに関し、特に、プリント基板等におけるノイズ検出に使用して好適な電界プローブに関する。
【0002】
【従来の技術】
電気製品から放射される雑音電磁波はその周辺にある他の電気製品を誤動作させる場合があるため、VCCI(Voluntary Control Council for Information Technology Equipment)、FCC(Federal Communications Commission)、EMC(Electro Magnetic Compatibility)指令等のEMC規格において規制されている。従来、電気製品から放射される電磁界の調査を行うためにダイポールアンテナや静電結合型のプローブを用いて電界強度を測定している。また、微少ループアンテナを用いて磁界強度を測定することができ、当該微少ループ中に発生する電界が空間的に一様であるとすれば「E=120πH」という換算式によって測定磁界強度から電界強度を算出することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の測定手法においては、次のような課題があった。
すなわち、電波源から放射される電磁波は一般にその周波数や距離によって静電磁界、近傍電磁界、遠方電磁界に分類することができ、電気製品のプリント基板等からの放射を評価するためには近傍電磁界を評価することが重要である。また、上述の規制において測定されるのは雑音電界強度であり、電磁界のうち磁界成分より電界成分の強度を知ることが重要である。
【0004】
上述のダイポールアンテナでは電荷の変化に起因する電界および電流の変化に起因する電界の和が測定できるが、周波数が低いとアンテナが非常に大きくなり(f=30MHzの時、5m)、プリント基板等の電界測定に使用することができない。静電結合型プローブでは、電荷の変化に起因する電界が測定できるが、周波数が低くなるとゲインが小さくなり、また、変動電流に起因する電界強度を計測できない。さらに、微少ループアンテナでは電流に起因する電界が測定できるが、「E=120πH」という換算式は電界強度が一様であるという前提の元に適用可能であることから、遠方電磁界の測定は可能であっても電界の空間的な変動の大きい近傍電磁界の測定はできない。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、簡易な構成により比較的小さな電波源からの近傍電磁界を測定可能な電界プローブを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明では、近傍電磁界の電界成分を測定する電界プローブであって、略平行な長い経路とこの長い経路の先端同士を連結するようにして構成される短い経路とからなるループ状に形成された導体と、この導体に発生する誘導起電力を測定するとともにこのループ全体の誘導起電力を上記短い経路の一方における近傍電界成分に相当する値として出力する電界成分出力手段とを具備する構成としてもよい。
【0006】
上記のように構成した発明では、近傍電磁界の電界成分を測定するため、導体と電界成分出力手段とを備えている。当該導体は長い経路と短い経路とからなり、長い経路は略平行であるとともに短い経路はこの長い経路の先端同士を連結するようにしてループ状に形成される。電界成分出力手段はこの導体に発生する誘導起電力を測定するとともにこのループ全体の誘導起電力を上記導体の短い経路部位における近傍電界成分に相当する値として出力する。
【0007】
すなわち、本発明においては、導体全体の誘導起電力が短い経路の一方における近傍電界成分に相当する値に近似的に等しい値に相当するものとしており、後述する原理に着目することによってかかる誘導起電力全体が主に短い経路の一方の近傍電界成分のみを与えるという近似が成り立つことが把握される。本発明における導体はこの近似を適用できるような形状であり、長い経路と短い経路とにて構成される。かかる構成によれば、測定プローブをループアンテナからなる構成にすることができるので、ダイポールアンテナのように大きなプローブになったり、静電結合型プローブのようにゲインが小さくなることがなく、また、上記近似によって近傍電界成分を測定することができる。従って、簡易な構成により比較的小さな電波源からの近傍電磁界を測定可能である。
【0008】
ここで、電界成分出力手段においては誘導起電力を近傍電界成分に相当する値として出力することができればよい。すなわち、電圧の次元を[V]、長さの次元を[m]とすると、電界の次元は[V/m]であるから、誘導起電力にて生ずる電圧を短い経路の長さで除したものを出力すれば電界を得て好適であるが、数値を知る以外にアナログ的な出力をしたい場合等には電圧値に比例する何らかの値を出力しても良いし、電流値に比例する値等を出力しても良い。さらに、出力はアナログ出力の他、デジタル処理を施してデジタル出力を行っても良いし、その表示デバイスも様々でありアナログメータやデジタル数値出力や液晶表示等のグラフィカルな出力など、種々の態様を採用可能である。
【0009】
また、後述する原理に基づいて近似が適用できる条件は、略平行な長い経路同士における電界の経路積分値がほぼ相殺し、短い経路の一方の経路積分値が短い経路の他方の経路積分値よりはるかに大きいことであると言える。かかる近似を適用する好適な具体的な例として、電界プローブにおいて、上記導体の略平行な長い経路は、対向する微少経路の経路積分値が互いに相殺する程度に近接している構成としてもよい。上記のように構成した発明では、上記導体の略平行な長い経路は互いに近接しており、電界ベクトルを上記ループに沿って経路積分したときにこの長い経路の対向位置では、その対向位置同士の微少経路上の値が相殺する。
【0010】
すなわち、経路積分において長い経路からの寄与はほぼ「0」であり、上記誘導起電力の値において長い経路上の電界成分はほとんど考慮する必要がなくなる。ここで、経路積分において対向する長い経路からの寄与が厳密に相殺するためには長い経路上の電界が等しいことが必要であるが、測定プローブとしては厳密に「0」でなくても、ほぼ「0」と見なせる程度に長い経路が近接していれば十分である場合が多い。この近接度合は電界プローブとしての測定可能な精度や測定対象の空間的な電界勾配の強弱によって適宜変更可能である。
【0011】
さらに、後述する原理によって近似が適用できるようなループの、より具体的な例として、電界プローブにおいて、上記導体の短い経路は、この経路の長さにわたって経路近傍の電界成分が略等しいとみなすことができる程度である構成としてもよい。
【0012】
上記のように構成した発明においては、上記導体の短い経路の距離が非常に短く、当該短い経路近傍の電界成分が略等しいとみなすことができる。すなわち、経路積分において当該短い経路近傍の電界成分が一定値であるとみなすことができるので、誘導起電力による電圧値はほぼ当該短い経路の経路積分値と等しく、かつ、電界成分が一定値であることから、電圧値を経路長で除すると当該一定の電界値を求めることができて好適である。むろん、本発明は後述する原理に基づき、当該短い経路に対向する他方の短い経路では経路積分に対する寄与は小さく、ほぼ「0」であるとみなすことができることが前提となっている。
【0013】
さらに、後述する原理によって近似が適用できるようなループの、より具体的な例として、電界プローブにおいて、上記導体は、略矩形状であって短辺側と長辺側との比が大きいループ状に形成されている構成としてもよい。すなわち、短辺側と長辺側の比が大きい略矩形状は長い経路と短い経路とを連結した形状の簡易な構成として好適であり、利用者が測定対称面に短い経路を平行に位置させることが直感的に理解しやすくプローブの取り扱いが容易である。むろん、本発明にかかるプローブにおいては上述の近似を適用可能な形状であれば良く、厳密に矩形形状であることが必要とされるわけではなく、長い経路が厳密に平行でなかったり、長い経路と短い経路とが厳密に直角でなくても良い。
【0014】
さらに、導体は、上記短い経路の一方同士が略直交する2つのループからなる構成としてもよい。上記のように構成した発明においては、略直交する2つのループから近傍電界成分を得ることから、直交平面の電界成分を得ることができ、これらの成分に基づいて上記導体の短い経路が属する平面上の電界ベクトルの様子を把握することができる。
【0015】
さらに、上記導体には、静電界の影響を除去する静電シールドが施されている構成としてもよい。すなわち、本発明においてはノイズ等の時間的に変動する磁界によって生ずる誘導起電力に基づいて近傍電界成分に相当する値を得るので静電界成分は測定に寄与せず、静電シールドによって静電界成分を除去することにより測定精度が向上する。
【0016】
さらに、上記静電シールドは上記ループの少なくとも一カ所にて絶縁され、この静電シールド自体がループにならないように構成されてもよい。すなわち、少なくとも一カ所において静電シールドが絶縁されることにより静電シールド自体がループになることを防止し、誘導起電力の発生を防止する。また、上記経路積分の主な寄与が存在する方の短い経路において2つのループが直交する位置にて静電シールドの一部を切り離す態様を採用すると、静電シールドを対称に構成することができて好適である。
【0017】
さらに、上記電界成分出力手段は、予め与えられた上記短い経路の長さで測定した誘導起電力を除することにより当該短い経路の一方における近傍電界成分値を得る構成としてもよい。すなわち、経路積分の主な寄与が存在する方の短い経路の長さはループの大きさによって決定されるので、予め当該長さを与えておき、この与えられた長さで常に測定誘導起電力による電圧値を除して出力するよう構成すれば、出力として常に電界値を得ることができる。むろん、かかる除算はデジタルプロセッサで行っても良いし、アナログ回路によって除算回路を構成して行っても良い。
【0018】
さらに、上記電界成分出力手段は、略直交する2つの導体それぞれの測定誘導起電力に基づいて演算される電界値を成分とする電界ベクトルを演算して出力する構成としてもよい。すなわち、直交する導体によれば平面上における電界の直交二成分が判明するので、かかる二成分に基づいて容易に平面上の電界の強度と方向とを得ることができ、電界ベクトルを得ることができる。
【0019】
さらに、上記電界成分出力手段は、近傍電界成分の演算にあたりアンテナ係数補正を行う構成としてもよい。すなわち、アンテナ係数はアンテナの実行長、不整合度、伝送線路の損失等を除去する係数であり、本発明における導体は一種のアンテナと考えることができるので、電界成分出力手段において電界成分を得るにあたりかかる補正を行えば、より正確に近傍電界成分値を得ることができる。
【0020】
【発明の効果】
以上説明したように本発明では、簡易な構成により比較的小さな電波源からの近傍電磁界を測定可能な電界プローブを提供することができる。また、本発明によれば、本発明における近似を適用可能な導体を提供することができる。
さらに、本発明によれば、平面上の電界ベクトルの様子を把握することができる。
さらに、本発明によれば、高精度の測定プローブを提供することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面にもとづいて本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる電界プローブ10を電界測定対象とともに示した図である。同図に示すように、本実施形態にかかる電界プローブ10はプローブ11a,bと測定回路30とから構成されている。同電界プローブ10はコンピュータ内に装着される各種ボード20等の近傍電界を測定するのに使用され、プローブ11a,bを各種ボード20付近の近傍電界にさらすことができる程度の大きさで構成されている。
【0023】
尚、各種ボード20はボード20単体を図示しているが、電界の測定はボード20を装着しコンピュータを起動した状態で行う。さらに、プローブ11a,bは概略長方形であり、その短辺は長辺に対して非常に短く構成され実際は図1に示す短辺より短いが、ここでは理解の容易のため短辺を実際より長く描いている。また、同図において、ボード20と略平行の面内にE1,E2軸を取り、当該面に垂直な方向をZ軸としている。
【0024】
プローブ11a,bは概略長方形のループであり、本実施形態ではプローブ11a、bがかかる形状であることと、ボード20が発生源となる誘導電磁界強度が図2に示すように発生源からの距離Zに応じて急激に減衰することを利用してボード20の近傍電界成分を測定する。図3は、この測定原理を示す図である。ファラデーの誘導法則を示す以下のマクスウェル方程式(1)において任意の閉曲線lで囲まれた領域Sについての面積分を行うと式(2)となる。式(2)をさらにストークスの定理によって変換すると式(3)になり、領域Sが時間的に不変である場合には式(4)を得る。
【数1】
【0025】
以上の変形によって、時間的に変動する磁界Bを領域Sで検出することによって電界Eの接線成分の閉曲線l上での積分値を得ることが分かる。さらに、式(4)に上記式(2)を代入すると、式(4)は式(5)のように変形され、電界Eと遅延ベクトルポテンシャルAとの関係である(6)が導かれる。尚、B=rotAである。
【数2】
従って、式(4)では時間的に変動する電流によって生ずる電界の接線成分を閉曲線l上で積分したものが得られることになる。すなわち、本原理によると時間的に変化する電流に起因するノイズ成分のみを計測することができる。
【0026】
以上の原理を図3に示すような概略長方形のループに適用する。当該ループの各頂点には1〜4の番号を付与しており、長辺の長さをL、短辺の長さをdとしている。また、このループにおいてはL>>dであり、図2に示すような電界勾配のある空間において短辺1→2を上記ボード20等の被測定物側に位置させることにより短辺1→2近傍の電界Enearを短辺3→4近傍の電界Efarより非常に大きな値とすることができる。さらに、上述の通りL>>dであることから短辺の全長において電界Enearと電界Efarはほぼ一定値であるとみなすことができ、長辺上において対向する微少位置の電界はほぼ等しいとみなすことができる。
【0027】
かかる条件を上記式(4)における電界の経路積分に適用することになるが、上記ループに垂直な電界成分は経路とも垂直であって積分に対する寄与は「0」である。また、短辺上の電界の経路積分は式(7)となり、長辺上の電界の経路積分は式(8)となる。
【数3】
すなわち、短辺3→4における経路積分は短辺1→2より小さく無視することができる。また、長辺2→3における経路積分と長辺4→1における経路積分とは符号が逆でほぼ等しく、閉曲線の経路積分においては相殺する。
【0028】
従って、上記式(4)において閉曲線1→2→3→4上の経路積分はほぼ短辺1→2上の経路積分のみと等しいと考えることができる。ここで、式(4)において閉曲線1→2→3→4上の経路積分はループ中の変動磁界によってループに生ずる電圧でもある。従って、上記式(4)は式(9)のように近似され、ループ全体に生ずる電圧からループの短辺1→2の近傍に生ずる電界成分Enearを求めることができる。尚、式(9)においては短辺1→2上にて電界Enearがほぼ一定であるということを使用している。
【数4】
【0029】
図4は、上記原理に基づいて被測定物の近傍電界を測定するためのプローブ11a,bの概略構成を示している。プローブ11a,bは概略長方形のループを略直交させるようにして配設されており、図4においては一方の構成を抜き出して示している。尚、同図においてもループの短辺は実際より長く記載されており、実際のプローブ11a,bにおいては長辺>>短辺が実現されている。プローブ11a,bは同軸ケーブルのようにして構成されており、内部導体12a,bにて概略長方形のループを構成するとともに外部導体13a,bにて静電シールドが施されている。内部導体12a,bの両端は測定回路30に接続されており、当該内部導体12a,bの形成するループに発生する起電力を測定するようになっている。
【0030】
また、外部導体13a,bは内部導体12a,bの回りに備えられており、測定回路30の付近で外部導体13a,bが導通しているが、測定回路30と反対側の短辺において絶縁されており、外部導体13a,bもがループを構成しないようにしてある。本実施形態において外部導体13a,bは内部導体12a,bの短辺の略中央にて絶縁されており、この絶縁位置においてプローブ11a,bが直交されている。すなわち、プローブ11a,bは図5に示すように外部導体13a,bの絶縁位置にて内部導体12a,bの短辺中央に僅かな間隙が与えられつつ直交される。ここで、本実施形態においては同軸ケーブルと同様の構成によって静電シールドを構成しているが、むろんストリップライン等の形態と同様にして静電シールドを構成しても良い。
【0031】
尚、上記構成において内部導体12a,bは短辺中央に僅かな間隙が与えられていることから導通はなく、外部導体13a,bが短辺中央にて絶縁されることから測定回路30から見て外部導体13a,bおよび内部導体12a,bが対称であってインピーダンス整合が取りやすい。この意味でプローブ11a,bを短辺中央にて直交させる構成は好適であるが、必ずしもかかる構成に限られることはなく、他の位置にて直交させるように構成することも可能である。また、上記内部導体12a,bには互いに僅かな間隙が与えられつつ直交されているが、むろん両者を絶縁し、当接させつつ直交させる構成であってもよい。
【0032】
本実施形態においては、このようにしてプローブ11a,bを直交させることによってボード20等の被測定物近傍電界の平面上における成分を得るようにしてある。図6はこの平面上の成分を得るための測定回路30の概略構成を示すブロック図である。同図において、プローブ11aの両端は差動増幅器31aの2つの入力端子に接続されており、その増幅後の出力は二乗演算回路32aに入力される。一方、プローブ11bの両端は差動増幅器31bの2つの入力端子に接続されており、その増幅後の出力は二乗演算回路32bに入力される。
【0033】
二乗演算回路32a,bは入力される信号を二乗した結果を出力する回路であり、例えば、差動増幅器によって構成された乗算回路の2入力端子に同信号を入力するようにして構成することができ、他にも種々の構成を採用可能である。これらの二乗演算回路32a,bの出力は加算回路33に入力されている。同加算回路33は入力される2信号を加算して出力する回路であり、例えば、演算増幅器によって構成されたミキサ等を採用可能である。この加算回路33の出力は平方根演算回路34に入力されている。
【0034】
平方根演算回路34は入力される信号の平方根を出力する回路であり、例えば、乗除算回路の組み合わせること等によって構成することができる。この平方根演算回路34の出力はアンテナ係数補正回路35に入力される。アンテナ係数補正回路35は、入力された信号に予め与えられた補正係数を乗じて出力する回路であり、かかる乗算によってプローブ11a,bのアンテナの実行長,不整合度,伝送線路の損失等を補正した結果が出力される。
【0035】
このアンテナ係数補正回路35の出力は電圧出力部36に入力されるようになっている。電圧出力部36は入力される電圧に応じた振れ幅で指示針が駆動される電圧表示部36aを備えており、上記補正された平方根が電圧出力部36に出力されると、電圧表示部36aの指示針が所定位置まで駆動して利用者はプローブ11a,bに生じている電圧レベルを知ることができる。このように、本実施形態においては測定回路30が上記請求項の上記電界成分出力手段を構成し、内部導体12が上記請求項の導体を構成する。
【0036】
ここで、誘導電圧V=Enear・dであるから、プローブ11a,bの短辺dで電圧値を除することによって電界成分が得られるが、短辺dの長さは一定であることから本実施形態では利用者に与える情報が電圧値であったとしても電界成分値を直接出力するのと大差がないとして電圧値を表示するようにしている。本実施形態においては、このように直交する2短辺の電界成分に基づく電圧値の平方根を得ることによって短辺が存在する平面上の合成電界成分に基づく電圧値を得ることができる。むろん、電圧表示部36aの表示態様は様々であり、電圧値を出力するほか、電流値を検出して出力しても良いし、電流プローブを用いても良い。表示法も上述のもののほか種々の態様が採用可能である。
【0037】
上述のように構成した電界プローブ10にて近傍電界を測定する際には、図示しないコンピュータに上記ボード20を装着した状態で通常通り図示しないコンピュータを駆動する。その結果ボード20からは電磁波が放射され、時間的に変動する電磁波はボード20に略平行、すなわち図1のE1,E2軸が属する平面に略平行な方向に主たる成分を持つとともに図2に示すようにZ軸方向に沿って急激に減衰する電磁波となる。
【0038】
かかる駆動状態において利用者が電界プローブ10の測定回路部分を保持しつつプローブ11a,bの短辺をボード20に略平行に配向させながらできるだけ近づける。この結果、プローブ11a,bの一方の短辺を図2に示すEnear位置に配設させつつ他方の短辺を図2に示すEfar位置に配設させることができる。この状態において対向する長辺は近接しているので、両長辺の対向位置の経路積分は上述のようにして相殺すると考えることができる。さらに、短辺の電界成分はEnear>>Efarであることから、上述の式(9)が適用できる。
【0039】
利用者がかかる状態で電界プローブ10を保持すると、ボード20の近傍磁界によってプローブ11a,bの内部導体12に誘導起電力が発生し、かかる誘導起電力が上記式(9)における左辺の電圧Vとなる。この電圧Vはプローブ11aとプローブ11bのそれぞれにおいて検出され、プローブ11aの誘導起電力は差動増幅器31aにて増幅され、出力電圧V1として二乗演算回路32aに入力される。また、プローブ11bの誘導起電力は差動増幅器31bにて増幅され、出力電圧V2として二乗演算回路32bに入力される。
【0040】
二乗演算回路32aにて入力電圧を二乗して出力し、二乗演算回路32bにて入力電圧を二乗して出力すると、これらの出力は加算回路33に入力される。加算回路33はこれらの2入力を加算して加算結果を平方根演算回路34に入力する。平方根演算回路34は入力された信号の平方根を出力し、かかる平方根はアンテナ係数補正回路35を介して補正がなされるとともに電圧出力部36に出力される。この結果、電圧表示部36aはプローブ11a,bの短辺が存在する平面上の電界成分に相当する電圧値Vを指示するので、利用者は当該電圧値Vによって電界成分に相当する値を知ることができる。
【0041】
以上のように本発明においては、測定対象から急激に減衰する電磁波に対して式(9)の近似を適用可能なループを構成し、当該ループの誘導起電力を測定する。従って、かかるループの形状は上記図4に示すようなものに限られることはなく種々の態様が採用可能である。図7は、第二の実施形態にかかるプローブ110a,bの概略構成を示す図である。プローブ110a,bは概略長方形のループを略直交させるようにして配設されている。図7においても一方の構成を抜き出しており、ループの短辺は実際より長く記載されている。
【0042】
プローブ110a,bは同軸ケーブルのようにして構成されており、内部導体120a,bにて概略長方形のループを構成するとともに外部導体130a,bにて静電シールドが施されている。本実施形態においても外部導体130a,bは内部導体120a,bの回りに備えられており、測定回路300と反対側の短辺中央において絶縁され、外部導体130a,bがループを構成しないようにしてあるとともに、この絶縁位置においてプローブ110a,bが直交されている。
【0043】
内部導体120a,bの一方の短辺には所定の抵抗が接続されており、測定回路300においては当該抵抗の両端の電圧を測定できるようになっている。測定された電圧は上記測定回路30と同様にして増幅、二乗、加算を経て平方根が出力され、平面上の成分値が得られるようになっている。このように、ループ形状や測定回路の構成は限定されることなく、式(9)の近似が適用可能な範囲で種々のループ形状を採用可能である。
【0044】
図8は、第三の実施形態にかかるプローブ111a,bの概略構成を示す図である。プローブ111a,bは概略長方形のループを略直交させるようにして配設されている。図8においても一方の構成を抜き出しており、ループの短辺は実際より長く記載されている。プローブ111a,bは同軸ケーブルのようにして構成されており、内部導体121a,bの回りに外部導体131a,bが備えられている。本実施形態の測定回路は上記第一の実施形態と同様の構成となっている。
【0045】
本実施形態において、内部導体121a,bは上記式(9)の近似が適用可能なループを構成しており、内部導体121a,bの一方端は測定回路30に入力されるとともに他方端は外部導体131a,bの一面に接続されている。測定回路30には外部導体131a,bの一端から引き延ばされた信号線が入力され、当該ループに誘起される電圧を測定するようになっている。本実施形態においても外部導体131a,bは測定回路300と反対側の短辺中央において絶縁され、外部導体131a,bがループを構成しないようにしてあるとともにこの絶縁位置においてプローブ111a,bが直交されている。かかる構成において測定回路30にて所定の信号処理を経て平方根が出力され、平面上の成分値が得られる。
【0046】
本発明においては、上述のようにループとして種々の態様を採用可能である他、測定回路も上記態様に限られず種々の態様が採用可能である。図9は第四の実施形態にかかる測定回路301の概略構成を示すブロック図である。同図において、信号の演算は主としてマイクロプロセッサ371が担っており、プローブ11a,bにおける誘導起電力はデジタル処理を可能にするためA/D変換される。すなわち、プローブ11aの両端は差動増幅器311aの2つの入力端子に接続されており、その増幅後の出力はA/D変換器381aに入力される。一方、プローブ11bの両端は差動増幅器311bの2つの入力端子に接続されており、その増幅後の出力はA/D変換器381bに入力される。
【0047】
A/D変換器381a,bの出力はマイクロプロセッサ371の所定の入力ポートに入力され、所定の信号処理が施される。すなわちマイクロプロセッサ371は二乗演算部321a,bと加算部331と平方根演算部341とアンテナ係数補正部351とを備えており、上記測定回路30内の各回路とほぼ同様の演算を行うことができる。一方、本実施形態においては、各プローブ11a,bからの誘導起電力を直接出力して、各プローブ11a,bの短辺に平行な成分も出力する。また、演算された電圧値はプローブ11a,bの短辺で除されることによって電界成分値として出力される。
【0048】
A/D変換器381aにて出力されたデジタル出力は二乗演算部321aに入力されて二乗され、A/D変換器381bにて出力されたデジタル出力は二乗演算部321bに入力されて二乗され、加算部331にて両者が加算される。加算部331にて加算された結果はさらに平方根演算部341に入力され平方根が演算される。平方根演算部341にて平方根が演算されるとその結果はさらにアンテナ係数補正部351にてアンテナ補正係数が乗じられ、除算部391にて予め与えられるループの短辺dで除されて出力される。
【0049】
また、上記A/D変換器381a,bから出力されたデジタル出力値は、アンテナ係数補正部351に入力されてアンテナ係数補正が施されるとともに、その結果が除算部391に入力されて上記短辺dにて除されて出力される。本実施形態においてはこの除算部391が出力する出力値は出力I/F361を介して液晶表示装置(LCD)361aに出力されるようになっており、図10に示すような態様で各ループの短辺に平行な電界成分値E1,E2とそれらを成分としたベクトルの大きさを出力するようになっている。この結果、利用者は各電界成分とともに近傍電界ベクトルの大きさも知ることができる。
【0050】
さらに、上記図10に示す電界の表示手法は一例であり、他にも種々の態様を採用することができる。例えば、図11の表示362aに示すように、各プローブ11a,bによって得られた電界成分を各軸E1,E2の成分として表示するとともに、平方根演算部341の出力に基づく電界成分を両者の合成による電界ベクトルとして出力することも可能である。上記デジタル出力をマイクロプロセッサによって処理すると、かかるグラフィカルな表示を容易に行うことができる。また、かかる表示によればより直感的にベクトルの大きさと方向とを把握することができる。
【0051】
さらに、スペクトラムアナライザを使用して各プローブ11a,bによって得られた各軸の電界成分値E1,E2や合成電界成分値Eを表示することもできる。図12の表示363aは合成電界成分値Eをスペクトラムアナライザによって表示した状態を示しており、同図において横軸は周波数であり、縦軸が合成電界成分値である。このように、スペクトラムアナライザによると測定対象の近傍電界のいずれの周波数成分が大きいのかを容易に把握することができる。
【0052】
以上説明したように、本発明においては、略平行な長い経路とこの長い経路の先端同士を連結するようにして構成される短い経路とからなるループに発生する誘導起電力を測定する。ここで、測定対象たる近傍電磁界は長い経路に沿って急激に減衰し、長い経路同士が近接しているので、ループ全体の経路積分値は短い経路の経路積分値にほぼ等しいという近似が適用できる。従って、このループに発生する誘導起電力を測定すれば、このループ全体の誘導起電力を上記短い経路の一方における近傍電界成分に相当する値として得ることができ、簡易な構成により比較的小さな電波源からの近傍電磁界を測定可能な電界プローブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる電界プローブを示す図である。
【図2】近傍電界成分が減衰する様子を示す図である。
【図3】本発明における測定原理を示す図である。
【図4】プローブの概略構成を示す図である。
【図5】プローブの拡大図である。
【図6】測定回路の概略構成を示すブロック図である。
【図7】第二の実施形態にかかるプローブの概略構成を示す図である。
【図8】第三の実施形態にかかるプローブの概略構成を示す図である。
【図9】第四の実施形態にかかる測定回路の概略構成を示すブロック図である。
【図10】液晶表示装置による表示例を示す図である。
【図11】液晶表示装置による表示例を示す図である。
【図12】スペクトラムアナライザによる表示例を示す図である。
【符号の説明】
10…電界プローブ
11a,b…プローブ
12a,b…内部導体
13a,b…外部導体
20…ボード
30…測定回路
31a,b…差動増幅器
32a,b…二乗演算回路
33…加算回路
34…平方根演算回路
35…アンテナ係数補正回路
36…電圧出力部
36a…電圧表示部
Claims (1)
- 近傍電磁界の電界成分を測定する電界プローブであって、
第一の経路と、上記第一の経路と略平行な第二の経路と、上記第一の経路及び上記第二の経路の先端同士を連結するようにして構成される第三の経路とを備えるループ状に形成された第一の導体と、
第四の経路と、上記第四の経路と略平行な第五の経路と、上記第四の経路及び上記第五の経路の先端同士を連結するようにして構成される第六の経路とを備えるループ状に形成され、上記第六の経路が上記第三の経路と直交するよう配置された第二の導体と、
上記各導体に発生する個別の電界成分、及び上記個別の電界成分を合成したベクトルの大きさを算出して、上記算出された各値を近傍電界成分に相当する値として出力する電界成分出力手段と、
上記出力された個別の電界成分と上記ベクトルの大きさを用いて電界ベクトルを表示する表示手段と、を具備することを特徴とする電界プローブ。
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