以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、以下の実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。また、本発明は、排ガスの導入通路を2本備え、排気干渉の少ない気筒の排ガス通路を組み合わせて、それぞれの導入通路へ接続する、いわゆるツインエントリー式の過給機と、吸気弁又は排気弁のうち少なくとも一方の開閉弁時期を調整できる機構と、を備える内燃機関に対して好適である。
本実施形態は、過給機を備える内燃機関において、内燃機関に要求される要求トルク値が所定の閾値以下、かつ燃焼空間へ導入される空気の温度に関するパラメータが所定の閾値以下である場合には、過給機が備える圧縮機から送られる空気の一部を圧縮機の入口側へ戻す点に特徴がある。
図1は、本実施形態に係る内燃機関の全体構成図である。本実施形態に係る内燃機関1は、ピストン3が気筒2内を往復運動する、いわゆるレシプロ式の内燃機関である。ピストン3は、気筒2内の燃焼空間(気筒内燃焼空間)B内の混合気が燃焼する際の燃焼圧力により気筒2内を往復運動する。ピストン3の往復運動は、コネクティングロッド5を介してクランクシャフト6へ伝達され、クランクシャフト6で回転運動に変換されて出力として取り出される。
内燃機関1の気筒内燃焼空間Bには、内燃機関1のシリンダヘッド4内に形成される吸気ポート13が接続される。気筒内燃焼空間Bに吸気ポート13が接続される部分が吸気口13Hであり、吸気口13Hは気筒内燃焼空間Bに開口する。気筒内燃焼空間Bの吸気口13Hには吸気弁7Vが設けられている。吸気弁7Vは、吸気側動弁装置7によって動作して、吸気口13Hを開閉する。吸気側動弁装置7は、吸気弁開閉時期変更機構(VVTi)7Aを備えており、吸気弁7Vの開弁時期や閉弁時期を変更できる。
また、内燃機関1の気筒内燃焼空間Bには、内燃機関1のシリンダヘッド4内に形成される排気ポート14が接続される。気筒内燃焼空間Bに排気ポート14が接続される部分が排気口14Hであり、排気口14Hは気筒内燃焼空間Bに開口する。気筒内燃焼空間Bの排気口14Hには排気弁8Vが設けられている。排気弁8Vは、排気側動弁装置8によって動作して、排気口14Hを開閉する。排気側動弁装置8は、排気弁開閉時期変更機構(VVTe)8Aを備えており、排気弁8Vの開弁時期や閉弁時期を変更できる。
吸気弁開閉時期変更機構7Aや排気弁開閉時期変更機構8Aは、油圧で動作する形式でもよいし、電動機で動作するものでもよい。なお、本実施形態に係る内燃機関1は、吸気弁開閉時期変更機構7Aと、排気弁開閉時期変更機構8Aとのうち少なくとも一方を備えていればよい。
吸気ポート13には、内燃機関1の気筒内燃焼空間Bへ燃焼に供する空気Aを導入するための吸気通路12が接続されている。吸気弁7Vが開くと、気筒内燃焼空間Bには、吸気通路12及び吸気ポート13を通って、燃焼に供する空気Aが導入される。気筒内燃焼空間Bへ導入される空気Aは、内燃機関1の外部の大気、すなわち外気であり、吸気ポート13に接続される吸気通路12の入口に設けられるエアークリーナ11によって外気中の塵が取り除かれてから、気筒内燃焼空間Bへ外気が導入される。
本実施形態に係る内燃機関1は、気筒内燃焼空間Bへ直接燃料を供給する直噴燃料噴射弁9DIと、吸気ポート13内へ燃料を供給するポート噴射弁9とを備える。内燃機関1は、直噴燃料噴射弁9DIと、ポート噴射弁9とのうち少なくとも一方を用いて燃料が供給される。直噴燃料噴射弁9DIの燃料噴射割合と、ポート噴射弁9の燃料噴射割合とは、内燃機関1の運転条件に応じて適宜変更される。なお、本実施形態においては、直噴燃料噴射弁9DI及びポート噴射弁9の両方を備える必要はなく、直噴燃料噴射弁9DIと、ポート噴射弁9とのうち少なくとも一方を備えていればよい。
直噴燃料噴射弁9DIは、燃料分配管9DPから燃料が供給される。内燃機関1が複数の気筒2を備える場合、直噴燃料噴射弁9DIはそれぞれの気筒2に設けられる。そして、複数の直噴燃料噴射弁9DIが燃料分配管9DPに取り付けられて、燃料分配管9DPからそれぞれの直噴燃料噴射弁9DIへ燃料が供給される。直噴燃料噴射弁9DIから気筒内燃焼空間Bへ導入された燃料は、吸気ポート13から気筒内燃焼空間Bへ導入された空気Aと混合気を形成する。一方、ポート噴射弁9は、吸気ポート13内へ燃料を供給する。この燃料が、吸気ポート13内の空気Aと混合気を形成してから気筒内燃焼空間Bへ流入する。
気筒内燃焼空間B内の混合気は、点火手段である点火プラグ10からの放電により着火し、燃焼する。そして、混合気が燃焼した後における燃焼ガスの圧力によってピストン3が往復運動する。排気弁8Vが開くと、気筒内燃焼空間B内の燃焼ガスは、排ガスExとして気筒内燃焼空間Bから排気ポート14へ排出される。排気ポート14へ排出された排ガスExは、排ガス通路15を通って過給機21のタービン23へ供給される。
本実施形態に係る内燃機関1は、過給機21を備えている。過給機21は、内燃機関1の排ガスExによって駆動される、いわゆるターボチャージャーであり、圧縮機22と、タービン23とを含んで構成される。タービン23にはタービン羽根車23Iが備えられ、圧縮機22には圧縮機羽根車22Iが備えられる。タービン羽根車23Iは、内燃機関1の排ガス通路15に設けられており、内燃機関1の排ガスExにより駆動される。また、圧縮機羽根車22Iは、内燃機関1の吸気通路12に設けられており、吸気通路12から圧縮機22へ導入される空気Aを圧縮する。
タービン羽根車23Iと圧縮機羽根車22Iとは連結軸24で連結されており、タービン羽根車23Iが回転すると圧縮機羽根車22Iが回転する。このような構成により、内燃機関1の排ガスExによってタービン羽根車23Iが回転すると、これにともなって圧縮機羽根車22Iが回転し、空気Aを加圧して内燃機関1の気筒内燃焼空間Bへ導入する。
過給機21は、必要に応じて空気Aを圧縮して内燃機関1へ供給する。排気ポート14へ排出された排ガスExは、排ガス通路15を通って、過給機21のタービン23へ導かれる。ここで、排ガス通路15は、過給機21のタービン23に接続されて、タービン23へ排ガスExを導く主排ガス通路15Aと、タービン23の入口と出口とを接続して、タービン23をバイパスさせて排ガスExを流すタービンバイパス通路15Bとに分岐する。タービンバイパス通路15Bには、タービンバイパス弁25が設けられている。タービンバイパス弁25は、主排ガス通路15Aを通ってタービン23へ流入する排ガスExの流量を調整する。
すなわち、タービンバイパス弁25が開くとタービンバイパス通路15Bを通過する排ガスExの流量が増加し、相対的に主排ガス通路15Aを通過してタービン23へ流入する排ガスExの流量が減少する。一方、タービンバイパス弁25を閉じるとタービンバイパス通路15Bを通過する排ガスExの流量が減少し、相対的に主排ガス通路15Aを通過してタービン23へ流入する排ガスExの流量が増加する。これによって、タービン23が備えるタービン羽根車23Iの回転数を調整して、圧縮機22で加圧する空気Aの圧力を調整する。すなわち、内燃機関1に対する過給圧力を調整する。
タービンバイパス弁25は、過給圧力調整用アクチュエータ26により開閉される。過給圧力調整用アクチュエータ26の動作は、アクチュエータ制御手段27によって制御される。アクチュエータ制御手段27は、例えばソレノイドバルブが用いられ、ソレノイドバルブの開弁時期と閉弁時期との比を制御することによって過給圧力調整用アクチュエータ26の動作を制御して、タービンバイパス弁25の開度を調整する。これによって、内燃機関1に対する過給圧力を調整する。
タービン23を駆動した後の排ガスExや、タービンバイパス通路15Bを通過した排ガスExは、タービン下流側排ガス通路16を通って排ガス浄化触媒17へ導かれる。排ガス浄化触媒17では、排ガスExに含まれる窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)が浄化される。排ガス浄化触媒17で浄化された後の排ガスは、消音装置を通って大気中に排気される。
過給機21を構成する圧縮機22の入口に接続される吸気通路12と、圧縮機22の出口に接続される吸気通路12とは、吸気バイパス通路12Bで接続される。吸気バイパス通路12Bは、圧縮機22の出口側と圧縮機22の入口側とを接続する通路であり、圧縮機22で加圧された空気Aの一部を、圧縮機22の出口側から圧縮機22の入口側へ戻すための通路である。すなわち、吸気バイパス通路12Bは、圧縮機22で加圧された空気Aの一部を、圧縮機22の出口側から圧縮機22の入口側へ還流させる、吸気還流通路として機能する。
また、吸気バイパス通路12Bには、吸気バイパス弁(ABV:Air Bypass Valve)20が設けられる。吸気バイパス弁20が開弁すると、圧縮機22の入口に接続される吸気通路12と、圧縮機22の出口に接続される吸気通路12とが連通する。そして、吸気バイパス弁20が閉弁すると、圧縮機22の入口に接続される吸気通路12と、圧縮機22の出口に接続される吸気通路12との連通が遮断される。吸気バイパス弁20は、その開度を調整することにより、圧縮機22の出口側から圧縮機22の入口側へ戻す空気Aの量を調整できる。このように、吸気バイパス弁20は、圧縮機22の出口側から圧縮機22の入口側へ戻す空気Aの量を調整する、空気戻し量調整手段としても機能する。本実施形態において、吸気バイパス弁20は、機関ECU(Electronic Control Unit)50によって開弁動作及び閉弁動作が制御される。これによって、本実施形態に係る吸気温度制御を実行する。吸気バイパス弁20には、例えば電磁弁を用いる。
また、吸気バイパス弁20は、例えば、アクセル45Pをオンした状態から急激にオフしてスロットル弁19が急激に閉じられ、スロットル弁19で空気Aがせき止められたときに開く。そして、吸気バイパス弁20は、圧縮機22の出口側における吸気通路12と圧縮機22の入口側における吸気通路12とを吸気バイパス通路12Bによって連通させる。これによって、圧縮機22で加圧された空気Aは、吸気バイパス通路12Bを通って圧縮機22の入口側へ逃げるので、スロットル弁19でせき止められた空気Aが圧縮機22へ逆流することによる過給機21の耐久性低下を抑制する。
過給機21の圧縮機22で加圧された空気Aは、加圧されることにより昇温するので、吸気冷却手段である吸気クーラー18で冷却された後、スロットル弁19を通って吸気ポート13へ導かれる。吸気クーラー18は、過給機21の圧縮機22と内燃機関1の気筒内燃焼空間Bとの間に設けられる。吸気クーラー18は熱交換器であり、過給機21の圧縮機22で圧縮され、密度及び温度が上昇した空気Aを外気と熱交換させることによって冷却する。
吸気クーラー18と気筒内燃焼空間Bとの間には、気筒内燃焼空間Bに供給する空気の量を調整する吸入空気量調整手段として、スロットル弁19が設けられる。スロットル弁19は、空気Aが通過する通路の断面積を変更する弁体19Vと、弁体19Vを開閉するステッピングモータ等のアクチュエータ19Aと、弁体19Vの開度を検出するスロットル開度センサ19Cとを含んで構成される。
吸入空気量調整手段として機能するスロットル弁19の弁開度、すなわち弁体19Vの開度は、機関ECU50がアクチュエータ19Aによって弁体19Vの開度を調整することにより制御される。例えば、機関ECU50は、アクセル45Pの開度に応じてアクチュエータ19Aを動作させ、弁体19Vをアクセル45Pの開度に対応した開度とする。スロットル開度センサ19Cが検出した弁体19Vの開度は、機関ECU50に取り込まれ、アクチュエータ19Aのフィードバック制御や、内燃機関1の運転制御に用いられる。
圧縮機22の入口側における吸気通路12には、内燃機関1へ供給される空気Aの流量を計測するための吸入空気量検出手段としてエアフローセンサ40が設けられる。吸気クーラー18と気筒内燃焼空間Bとの間における吸気通路12には、内燃機関1へ供給される空気Aの温度を計測する吸気温度計測手段である吸気温度センサ41と、吸気クーラー18とスロットル弁19との間における吸気通路12内の空気Aの圧力を計測するスロットル入口側吸気圧力計測手段であるスロットル入口側吸気圧力センサ42とが設けられる。また、スロットル弁19と気筒内燃焼空間Bとの間における吸気通路12には、スロットル弁19の出口側における吸気通路12内の空気Aの圧力を計測するスロットル出口側吸気圧力計測手段として、スロットル出口側吸気圧力計測センサ43が設けられる。
本実施形態では、吸気クーラー18と気筒内燃焼空間Bとの間に設けた吸気温度センサ41で計測した空気Aの温度を、気筒内燃焼空間Bへ導入される空気Aの温度、すなわち吸気温度として用い、本実施形態に係る吸気温度制御に用いる。このように、吸気クーラー18と気筒内燃焼空間Bとの間で気筒内燃焼空間Bへ導入される空気Aの温度を計測することにより、外気温度のばらつきや吸気クーラー18による冷却の影響を考慮した空気Aの温度を計測できる。これによって、吸気温度に対する外乱の影響を低減できるので、吸気温度制御の精度が向上する。
また、本実施形態では、吸気通路12内における空気Aの温度を吸気温度センサ41で計測するが、吸気通路12内における空気Aの圧力と、吸気通路12内における空気Aの流量とに基づいて、吸気通路12内における空気Aの温度を推定してもよい。空気Aの温度が高くなると密度は小さくなり、空気Aの温度が低くなると密度は大きくなる。このため、吸気通路12内における空気Aの圧力が同じであっても、吸気通路12内における空気Aの温度が低くなると、吸気通路12内における空気Aの流量は増加する。この関係を利用して、吸気通路12内における空気Aの温度を推定できる。このようにすれば、吸気温度センサ41を省略できるので、内燃機関1の製造コストを低減できる。
クランクシャフト6の近傍には、クランクシャフト6の回転角度を検出するクランク角度検出手段としてクランク角度センサ44が設けられる。また、アクセル45Pには、アクセル45Pの開度を検出するためのアクセル開度検出手段としてアクセル開度センサ45が設けられる。
エアフローセンサ40、吸気温度センサ41、スロットル入口側吸気圧力センサ42、スロットル出口側吸気圧力計測センサ43、アクセル開度センサ45は、機関ECU50の入出力ポート(I/O)52に接続されており、これらが計測等した情報は、機関ECU50に取り込まれる。機関ECU50は、前記情報に基づき、内燃機関1の運転を制御する。
機関ECU50は、エアフローセンサ40や吸気温度センサ41等のセンサ類からの入力信号や、吸気バイパス弁20やスロットル弁19等の制御対象に対する出力信号の入出力を行う入出力部(I/O)52と、処理部50pと、燃料噴射量マップや本実施形態に係る吸気温度制御を実行するために用いるデータマップ等を格納する記憶部53とを有する。処理部50pは、例えば、メモリ及びCPU(Central Processing Unit:中央演算装置)により構成されている。また、記憶部53は、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、ROM(Read Only Memory)のような読み出しのみが可能なメモリ、あるいはRAM(Random Access Memory)のような読み書きが可能なメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成できる。
処理部50pは、制御条件判定部54と、制御量演算部55と、吸気温度制御部56と、出力制御部57とを含んでいる。これらが本実施形態に係る吸気温度制御を実行する。このように、機関ECU50は、本実施形態に係る吸気温度制御を実行する手段を含んで構成されているので、機関ECU50は、本実施形態に係る吸気温度制御装置として機能する。
図2は、本実施形態に係る内燃機関が備える過給機の構成を示す模式図である。本実施形態の内燃機関1は、4個の気筒を直列に配置した直列4気筒の内燃機関であり、第1気筒2−1、第3気筒2−3、第4気筒2−4、第2気筒2−2の順に点火され、混合気が燃焼する。本実施形態に係る内燃機関1が備える過給機21は、いわゆるツインエントリー形式の過給機であり、内燃機関1が排出する排ガスExを2本の通路からタービン23へ導入し、図1に示すタービン羽根車23Iへ供給する。
過給機21のタービン23は、内燃機関1の第1気筒2−1の排ガス通路と第4気筒2−4の排ガス通路とを集合させた第1排ガス通路15−1と、第2気筒2−2の排ガス通路と第3気筒2−3の排ガス通路とを集合させた第2排ガス通路15−2とから、排ガスExが導入される。タービン23内は、複数の排ガス通路が設けられている。本実施形態では、タービン23内に、タービン内第1排ガス通路23p1及びタービン内第2排ガス通路23p2の2本の排ガス通路が設けられている。そして、第1排ガス通路15−1がタービン内第1排ガス通路23p1に接続され、第2排ガス通路15−2がタービン内第2排ガス通路23p2に接続される。
このような構成により、内燃機関1の第1気筒2−1及び第4気筒2−4から排出された排ガスExは、第1排ガス通路15−1及びタービン内第1排ガス通路23p1を通って図1に示すタービン羽根車23Iへ供給される。そして、内燃機関1の第2気筒2−2及び第3気筒2−3から排出された排ガスExは、第2排ガス通路15−2及びタービン内第2排ガス通路23p2を通って図1に示すタービン羽根車23Iへ供給される。
本実施形態に係る内燃機関1が備える過給機21は、内燃機関1の第1気筒2−1及び第4気筒2−4から排出された排ガスExを集合させ、また、内燃機関1の第2気筒2−2及び第3気筒2−3から排出された排ガスExを集合させてからタービン23へ導入する。すなわち、内燃機関1が備える4個の気筒の点火順序を考慮して、内燃機関1の気筒から排出される排ガスExの干渉が小さくなるように内燃機関1の気筒から排出される排ガスExを集合させ、タービン23に設けられるタービン内第1排ガス通路23p1とタービン内第2排ガス通路23p2とへ導く。これによって、本実施形態に係る内燃機関1が備える過給機21は、第1気筒2−1から第4気筒2−4の排ガスを集合させてタービンへ導く形式(シングルエントリー形式)と比較して、気筒間における排気干渉を小さくできるので、各気筒の排ガス出口における排ガスの圧力(背圧)が低下する。
その結果、図1に示す内燃機関1の吸気弁7Vの開弁時期と排気弁8Vの開弁時期とが重なるとき(排気行程と吸気行程との間)には、吸気ポート13から気筒内燃焼空間Bに開口する吸気口13Hを通って気筒内燃焼空間Bへ流入した空気Aが、気筒内燃焼空間Bに開口する排気口14Hを通って排気ポート14へ吹き抜ける、空気の吹き抜けが起こりやすい。そして、空気の吹き抜けによって、タービン羽根車23Iを回転させる力が強くなるので、過給圧力が上昇する。これによって、本実施形態に係る内燃機関1が備える過給機21は、同じ内燃機関1の回転数(機関回転数)であれば、シングルエントリー形式の過給機と比較して高い過給圧力を得て、より大きいトルクを内燃機関1から取り出すことができる。特に、背圧の影響が小さい低機関回転数側において、吸気弁7Vの開弁時期と排気弁8Vの開弁時期とが重なる量の大きさに比例して、過給圧力を増加させ、内燃機関1のトルクを増加させる効果は大きい。
なお、ツインエントリー形式の過給機を用いる場合、本実施形態に適用できる内燃機関の気筒数及び配列は直列4気筒に限られるものではなく、排ガス通路の取り回しによって、気筒間における排ガスの干渉が小さくできるように構成してツインエントリー形式の過給機が備える各排ガス通路へ、内燃機関の排ガスを導入すればよい。例えば、直列6気筒の内燃機関で、点火順序を考慮して3気筒ずつ排ガスを集合させて2本の排ガス通路とし、集合させた後の2本の排ガス通路から、ツインエントリー形式の過給機が備える各排ガス通路へ排ガスを導入する。
上述したように、図1に示す本実施形態に係る内燃機関1は、過給機21の圧縮機22で加圧した空気Aを吸気クーラー18によって冷却してから気筒内燃焼空間Bへ供給する。吸気クーラー18は、過給機21の圧縮機22で加圧した空気Aを外気によって冷却するので、外気の温度(以下、外気温度という)が低い場合(例えば、氷点下20℃〜30℃)、気筒内燃焼空間Bへ導入される空気Aの温度(吸気温度という)が低下し過ぎてしまい、燃焼が悪化することがある。その結果、内燃機関1のトルク変動や回転変動が発生し、ドライバビリティの低下やエミッションの悪化を招くことがある。
本実施形態では、外気温度が低い場合における燃焼悪化を抑制するため、吸気温度に基づいて吸気バイパス弁20の開度を調整することにより、気筒内燃焼空間Bへ導入される空気Aの温度低下を抑制する。過給機21の圧縮機22で加圧した空気Aは温度及び密度が上昇するので、吸気バイパス弁20を開いて、圧縮機22によって加圧した空気Aの一部を圧縮機22の入口側へ還流させ、再度圧縮機22で加圧することにより空気Aの温度を逐次上昇させる。
さらに、吸気バイパス弁20の開度を調整することでは吸気温度の低下を十分に抑制できない場合には、スロットル弁19の開度と、吸気弁7Vの開弁時期と排気弁8Vの開弁時期とが重なる量(以下、バルブオーバーラップ量という)とを調整することにより、気筒内燃焼空間Bへ導入される空気Aの温度低下を抑制する。次に、本実施形態に係る吸気温度制御の手順を説明する。本実施形態に係る吸気温度制御は、図1に示す機関ECU50を吸気温度制御装置として機能させることによって実現できる。
図3は、本実施形態に係る吸気温度制御の手順を示すフローチャートである。図4は、要求トルク閾値を記述したマップを示す模式図である。本実施形態に係る吸気温度制御を実行するにあたり、ステップS101において、機関ECU50のCPU50pが備える制御条件判定部54は、内燃機関1に対する要求トルク値Tmと、予め定めた所定の要求トルク閾値Tmcとを比較する。
要求トルク閾値Tmcは、図4に示す要求トルク閾値マップ38に記述されている。要求トルク閾値マップ38は、図1に示す機関ECU50の記憶部53に格納されている。要求トルク閾値Tmcは、図1に示す吸気バイパス弁20を全開(ABV:全開)とし、スロットル弁19の開度(OPt)をWOT(Wide Open Throttle)としたときに内燃機関1が発生するトルクである。スロットル弁19の開度をWOTとするということは、スロットル弁19の出口側における空気Aの圧力Poと、スロットル弁19の入口側における空気Aの圧力Piとの比(スロットル弁圧力比)Po/Piが1に近い状態(例えば0.99以上)になる。
ステップS101において、制御条件判定部54は、クランク角度センサ44から取得した信号に基づいて機関回転数Neを求めて要求トルク閾値マップ38に与え、対応する要求トルク閾値Tmcを取得して、内燃機関1に対する要求トルク値Tmと比較する。なお、内燃機関1に対する要求トルク値Tmは、図1に示すアクセル45Pの開度や内燃機関が搭載される車両の速度等に基づいて機関ECU50が設定する。
ステップS101においてNoと判定された場合、すなわち、制御条件判定部54が、内燃機関1に対する要求トルク値Tmが要求トルク閾値Tmcよりも大きいと判定した場合、内燃機関1に対して過給が必要になると判断できる。この場合、図1に示す吸気バイパス弁20を開くことはできないので、本実施形態に係る吸気温度制御を終了する。
ステップS101においてYesと判定された場合、すなわち、制御条件判定部54が、内燃機関1に対する要求トルク値Tmが要求トルク閾値Tmc以下であると判定した場合、ステップS102へ進み、図1に示す内燃機関1の気筒内燃焼空間Bへ導入される空気Aの温度に関するパラメータと、予め定めた前記パラメータの目標値とが比較される。本実施形態において、図1に示す内燃機関1の気筒内燃焼空間Bへ導入される空気Aの温度に関するパラメータとして内燃機関1の吸気温度θiを用い、前記パラメータの目標値として吸気温度の目標値(吸気温度目標値)θimを用いる。
ステップS102において、制御条件判定部54は、現時点における内燃機関1の吸気温度θiと、所定の吸気温度目標値θimとを比較する。吸気温度目標値θimは、例えば、内燃機関1を運転するにあたって、燃焼悪化が許容できる最低の温度とする。燃焼悪化が許容できるか否かは、例えば、燃焼悪化に起因する内燃機関1のトルク変動や回転変動が許容できるか否かで判定し、吸気温度目標値θimを予め設定する。
なお、燃焼悪化は、吸気温度θiの他、内燃機関1に対する燃料供給量によっても影響を受けるので、吸気温度目標値θimは、前記燃料供給量に応じて変更してもよい。例えば、前記燃料供給量が増加するにしたがって、同じ吸気温度であっても燃料は霧化しにくくなる。このため、前記燃料供給量が増加するにしたがって、吸気温度目標値θimを高くしてもよい。これによって、本実施形態に係る吸気温度制御において、より確実に燃焼悪化を抑制できる。
ステップS102においてNoと判定された場合、すなわち、制御条件判定部54が、現時点における吸気温度θiが吸気温度目標値θimよりも高いと判定した場合、吸気温度θiが低いことに起因する燃焼悪化は許容範囲であると判定できる。この場合、本実施形態に係る吸気温度制御を終了する。
ステップS102においてYesと判定された場合、すなわち、制御条件判定部54が、現時点における吸気温度θiは吸気温度目標値θim以下であると判定した場合、吸気温度θiが低いことに起因して、許容できない燃焼悪化が発生すると判定できる。この場合、ステップS103へ進み、機関ECU50のCPU50pが備える制御量演算部55は、吸気温度目標値θimと現時点における吸気温度θiとの差分(吸気温度差分)Δθi(=θim−θi)を求める。
図5、図6は、本実施形態に係る吸気温度制御において、内燃機関のトルク増加が見込める程度の空気の吹き抜けが発生しているか否かを判定するための吹き抜け領域判定マップを示す模式図である。図7は、バルブオーバーラップ量を説明するための概念図である。図7は、図1に示す内燃機関1のクランク角度CAに対する吸気弁7Vの弁開度VLiと、排気弁8Vの弁開度VLeとを示している。バルブオーバーラップは、吸気弁7Vと排気弁8Vとの両方が開弁している期間であり、図7に示すように、排気弁8Vの閉弁時期CAcと吸気弁7Vの開弁時期CAsとの差分で表すことができる。
ステップS103において、吸気温度差分Δθiを求めたら、ステップS104において、制御条件判定部54は、現時点におけるスロットル弁19の開度(スロットル開度という)OPtと所定のスロットル開度判定値OPtcとを比較し、また、現時点におけるバルブオーバーラップ量OLと所定のバルブオーバーラップ量閾値OLcとを比較する。これによって、図1に示す内燃機関1の吸気口13Hから排気口14Hへ向かう空気Aの吹き抜けが所定量以上発生することにより、内燃機関1のトルクの増加が見込めるか否かを判定する。すなわち、所定量以上の空気Aの吹き抜けは、この吹き抜けによって内燃機関1のトルクの増加が見込める程度の吹き抜けである。
本実施形態に係る内燃機関1が備える過給機21は、いわゆるツインエントリー形式の過給機であり、バルブオーバーラップ量OLとスロットル開度OPtとの関係により、吸気弁7Vから排気弁8Vへの空気の吹き抜けによって内燃機関1のトルクが増加する。ステップS104では、バルブオーバーラップ量OLとスロットル開度OPtとによって、図1に示す内燃機関1の吸気口13Hから排気口14Hへ向かう空気Aの吹き抜けが所定量以上発生することによって、内燃機関1のトルクが増加する領域を判定する。この領域であれば、吸気温度θiを上昇させるために吸気バイパス弁20を開くことにより内燃機関1のトルクが低下した分を、バルブオーバーラップ量OLとスロットル開度OPtとを調整することによって補正できる。また、図1に示す過給機21を構成する圧縮機22の出口温度を上昇させることもできるので、吸気温度θiを上昇させることができる。
本実施形態においては、図6に示す吹き抜け領域判定マップ30_nを用いて、吸気弁7Vから排気弁8Vへの空気の吹き抜けによって内燃機関1のトルクが増加する領域を判定する。図6に示すように、吹き抜け領域判定マップ30は、機関回転数Ne1、Ne2、・・・Nen毎に用意される吹き抜け領域判定マップ30_1、30_2、・・・30_nで構成されて、図1に示す機関ECU50の記憶部53に格納される。
図5に示す吹き抜け領域判定マップ30_nには、機関回転数NeがNenのとき、吸気弁7Vから排気弁8Vへの空気の吹き抜けによって内燃機関1のトルクが増加する領域が記述されている。図5に示す吹き抜け領域判定マップ30_nの点線Tc1、Tc2、・・・Tc7、Tc8は、等トルク線であり、Tc1<Tc2<・・・<Tc7<Tc8である。吹き抜け領域判定マップ30_nの実線F(OPtc、OLc)は、吹き抜け領域(吹き抜け領域判定マップ30_nのハッチング部分)の境界であり、実線F上の(OPtc、OLc)が、スロットル開度判定値OPtc、及びバルブオーバーラップ量閾値OLcである。
吹き抜け領域判定マップ30_nから、現時点におけるスロットル開度OPtがスロットル開度判定値OPtc以上、かつ現時点におけるバルブオーバーラップ量OLがバルブオーバーラップ量閾値OLc以上である場合、吸気弁7Vから排気弁8Vへの空気の吹き抜けによって内燃機関1のトルクが増加する領域であると判定できる。ステップS104においてYesと判定された場合、すなわち、制御条件判定部54が、OPt≧OPtc、かつOL≧OLcであると判定した場合、ステップS105に進む。
図8は、吸気温度と、吸気バイパス弁の開度との関係を記述した吸気バイパス弁開度マップを示す模式図である。ステップS105において、制御条件判定部54は、ステップS103で求めた吸気温度差分Δθiと、所定の吸気温度差分閾値Δθicとを比較する。図8の吸気バイパス弁開度マップ31に示すように、吸気バイパス弁(ABV)20の開度OPaが大きくなるにしたがって、吸気温度θiは高くなる。そして、吸気バイパス弁(ABV)20の開度OPaが最大値OPamになると、そのときの吸気温度よりも吸気温度θiは高くならない。
吸気バイパス弁(ABV)20の開度OPaが0のときの吸気温度をθi1、吸気バイパス弁(ABV)20の開度OPaが最大値OPamのときの吸気温度をθi2とすると、吸気バイパス弁(ABV)20を開くことによる吸気温度の上昇幅の最大値(最大上昇吸気温度)Δθiumは、(θi2−θi1)である。すなわち、吸気バイパス弁(ABV)20を開くことによっては、吸気温度θiを最大上昇吸気温度Δθiumよりも上昇させることはできない。本実施形態において、所定の吸気温度差分閾値Δθicは、吸気バイパス弁(ABV)20を開くことによって吸気温度θiを上昇させることが可能な最大値に設定する。すなわち、吸気温度差分閾値Δθicは、最大上昇吸気温度Δθiumに設定される。
ステップS105においてYesと判定された場合、すなわち、制御条件判定部54がΔθi≧Δθicであると判定した場合、吸気バイパス弁20の開度を調整しても、現在の吸気温度θiを吸気温度目標値θimまで上昇させることはできない。この場合、ステップS106に進み、図1に示す機関ECU50のCPU50pが備える吸気温度制御部56は、吸気バイパス弁(ABV)20の開度を全開にして、ステップS107に進む。ステップS107において、吸気温度制御部56は、図1に示す内燃機関1のスロットル開度OPt及びバルブオーバーラップ量OLを、図1に示す機関ECU50が備える制御量演算部55によって求められた値に調整する。これにより、吸気温度θiの上昇不足分を補い、現在の吸気温度θiを吸気温度目標値θimとする。次に、スロットル開度OPt及びバルブオーバーラップ量OLを求める手法について説明する。
図9は、スロットル開度及びバルブオーバーラップ量を設定するための制御量設定マップを示す模式図である。図10−1〜図10−4は、スロットル開度及びバルブオーバーラップ量を設定する際に用いる係数が記述された係数設定マップを示す模式図である。スロットル開度OPt及びバルブオーバーラップ量OLを設定する場合、図9に示す制御量設定マップ32を用いる。
制御量設定マップ32の実線は、図1に示す吸気バイパス弁(ABV)20を全開とした場合において、図1に示す過給機21が備える圧縮機22の出口温度(圧縮機出口温度)θi_cが等しくなるバルブオーバーラップ量OL及びスロットル開度OPtの条件を示す等圧縮機出口温度線である。また、制御量設定マップ32の点線は、図1に示す内燃機関1のトルクが等しくなるバルブオーバーラップ量OL及びスロットル開度OPtの条件を示す等トルク線である。等圧縮機出口温度線を示すθi_c1、θi_c2、θi_c3は、それぞれ圧縮機出口温度を表しており、θi_c1<θi_c2<θi_c3である。なお、等圧縮機出口温度線は、同じ温度であっても吸気バイパス弁(ABV)20の開度によってバルブオーバーラップ量OLとの切片及びスロットル開度OPtとの切片が異なる。
等トルク線を示すTm_a、Tm_bは、図1に示す内燃機関1に対する要求トルク値であり、両者ともにステップS101における要求トルク値Tmに等しい。すなわち、Tm_a=Tm_b=Tmである。ここで、等トルク線Tm_aは、図1に示す吸気バイパス弁(ABV)20の開度が全開の場合であり、Tm_bは、吸気バイパス弁(ABV)20の開度が全開に至らない場合である。したがって、吸気バイパス弁(ABV)20の開度が全開の場合には、吸気バイパス弁(ABV)20の開度が全開に至らないときと同じトルクを内燃機関1に発生させるために必要なバルブオーバーラップ量OL及びスロットル開度OPtは異なる。また、要求トルク値Tmによっても、等トルク線は異なる。
制御量設定マップ32に示すように、図1に示す吸気バイパス弁(ABV)20を全開とした場合には、バルブオーバーラップ量OL及びスロットル開度OPtを調整することによって、圧縮機出口温度θi_cを変更できる。本実施形態では、ステップS106で吸気バイパス弁(ABV)20を全開とした場合には、バルブオーバーラップ量OL及びスロットル開度OPtを調整することによって圧縮機出口温度θi_cを上昇させる。そして、吸気バイパス弁(ABV)20を開くことによって得られる最大上昇吸気温度Δθiumを超える圧縮機出口温度θi_cとすることにより、Δθi≧Δθicである場合であっても、現在の吸気温度θiを吸気温度目標値θimまで上昇させる。このとき、ステップS101における要求トルク値Tmを実現できるように、バルブオーバーラップ量OL及びスロットル開度OPtを調整する。
例えば、圧縮機出口温度θi_cを図9の制御量設定マップ32に示すθi_c3とすれば、ステップS102における吸気温度目標値θimを達成できる場合、バルブオーバーラップ量OL及びスロットル開度OPtを、θi_c3の等圧縮機出口温度線とTm_aの等トルク線との交点M(OPt1、OL1)におけるバルブオーバーラップ量OL1及びスロットル開度OPt1に調整する。これによって、圧縮機出口温度をθi_cに上昇させてステップS102における吸気温度目標値θimを実現でき、かつステップS101における要求トルク値Tmを実現できる。
制御量設定マップ32において、図1に示す内燃機関1のトルクが一定となるバルブオーバーラップ量OLとスロットル開度OPtとの関係は、式(1)によって表すことができる。また、制御量設定マップ32において、圧縮機出口温度θi_cが一定となるバルブオーバーラップ量OLとスロットル開度OPtとの関係は、式(2)によって表すことができる。
OL=K1×OPt+K2+K3・・(1)
OL=KA×OPt+KB+K3・・(2)
ここで、K1、K2は、図1に示す内燃機関1の機関回転数Neと負荷率(あるいは負荷)KLとに基づいて設定される係数である。K3、KBは、図1に示す吸気バイパス弁(ABV)20の開度OPaに基づいて設定される係数である。KAは、内燃機関1のガス流量Qgに基づいて設定される係数である。内燃機関1のガス流量Qgは、内燃機関1の吸入空気量であり、図1に示すエアフローセンサ40で検出できる。
係数K1は図10−1に示す係数設定マップ33に、係数K2は図10−2に示す係数設定マップ34に、係数K3及び係数KBは図10−3に示す係数設定マップ35に、係数KAは図10−4に示す係数設定マップ36に記述される。これらの係数設定マップ33〜係数設定マップ36は、図1に示す機関ECU50の記憶部53に格納されている。図10−1、図10−2に示すように、係数K1、係数K2は、負荷率KLの増加とともに大きくなり、機関回転数Neの増加とともに小さくなるように設定される。図10−3に示すように、係数K3、係数KBは、図1に示す吸気バイパス弁(ABV)20の開度が増加するとともに大きくなるように設定される。図10−4に示すように、係数KAは、ガス流量Qgの増加とともに大きくなるように設定される。
ステップS107においてバルブオーバーラップ量OLとスロットル開度OPtを求めるにあたり、図1に示す機関ECU50が備える制御量演算部55は、図1に示す内燃機関1の機関回転数Ne、負荷率KL、吸気バイパス弁(ABV)20の開度OPa及びガス流量Qgを求める。機関回転数Neは、図1に示すクランク角度センサ44の検出値に基づいて求めることができ、負荷率KLは図1に示すエアフローセンサ40によって検出される吸入空気量に基づいて求めることができる。吸気バイパス弁(ABV)20の開度OPaは、例えば、吸気バイパス弁(ABV)20に対する開度の指令値を用いることができる。そして、制御量演算部55は、得られた機関回転数Ne、負荷率KL、吸気バイパス弁(ABV)20の開度OPa及びガス流量Qgを、図10−1〜図10−4に示す係数設定マップ33〜36に与え、対応する係数K1、K2、K3、KA、KBを取得する。
係数K1、K2、K3、KA、KBが得られたら、制御量演算部55は、式(1)、式(2)に係数K1、K2、K3、KA、KBを与え、式(1)、式(2)を連立させて解くことにより、バルブオーバーラップ量OL及びスロットル開度OPtを得る。このようにして得られたバルブオーバーラップ量OL及びスロットル開度OPtによって、ステップS102における吸気温度目標値θimを実現でき、かつステップS101における要求トルク値Tmを実現できる。
ステップS107において、吸気温度制御部56は、吸気弁開閉時期変更機構7Aと排気弁開閉時期変更機構8Aとの少なくとも一方を調整し、またスロットル弁19の開度を調整して、制御量演算部55が求めたバルブオーバーラップ量OL及びスロットル開度OPtを実現する。これによって、ステップS102における吸気温度目標値θim及びステップS101における要求トルク値Tmが実現される。
このように制御することで、吸気温度が極低温である場合には、吸気温度を上昇させて燃焼悪化を抑制できるので、燃焼悪化に起因するドライバビリティの悪化やエミッションの悪化を抑制できる。また、バルブオーバーラップ量OL及びスロットル開度OPtを調整することにより、吸気バイパス弁(ABV)20を開くことによるトルクの低下を補うことができるので、ドライバビリティの悪化をさらに抑制できる。また、バルブオーバーラップ量OL及びスロットル開度OPtを調整することにより、吸気バイパス弁(ABV)20の開度が最大であっても吸気温度を上昇させることができるので、燃焼悪化をより効果的に抑制できる。
次に、ステップS105に戻って説明する。ステップS105においてNoと判定された場合、すなわち、制御条件判定部54がΔθi<Δθicであると判定した場合、吸気バイパス弁20の開度を調整することによって、現在の吸気温度θiをステップS102における吸気温度目標値θimまで上昇させることができる。この場合、ステップS108に進み、吸気温度制御部56は、吸気バイパス弁(ABV)20の開度を所定の大きさに調整する。吸気バイパス弁(ABV)20の開度を調整するにあたっては、制御量演算部55は、図8に示す吸気バイパス弁開度マップ31へ吸気温度目標値θimを与え、対応する吸気バイパス弁(ABV)20の開度OPaを得る。なお、吸気バイパス弁開度マップ31は、図1に示す機関ECU50の記憶部53に格納されている。吸気温度制御部56は、制御量演算部55が取得した吸気バイパス弁(ABV)20の開度OPaとなるように、吸気バイパス弁(ABV)20の開度を調整する。これによって、吸気温度θiは吸気温度目標値θimとなる。次に、ステップS107へ進む。
ステップS107において、吸気温度制御部56は、図1に示す内燃機関1のスロットル開度OPt及びバルブオーバーラップ量OLを、図1に示す機関ECU50が備える制御量演算部55によって求められた値に調整する。これによって、ステップS108において吸気バイパス弁(ABV)20の開度OPaが調整されたことによる内燃機関1のトルク変化分を補正する。
制御量演算部55は、図9に示す制御量設定マップ32において、ステップS102での吸気温度目標値θimに対応する等圧縮機出口温度線を選択し、ステップS101における要求トルク値Tmに対応する等トルク線との交点を求める。この手法は上述した通りであり、制御量演算部55は、内燃機関1の運転条件に対応して求められる係数K1、K2、K3、KA、KBを式(1)、式(2)へ与え、両者を連立させて解くことにより、バルブオーバーラップ量OL及びスロットル開度OPtを得る。ここで、係数K3、係数KBは、吸気バイパス弁(ABV)20の開度OPaの関数であるため、吸気バイパス弁(ABV)20の開度OPaが変更されたことによる式(1)、式(2)の変化は、係数K3、係数KBにより反映される。
このようにして得られたバルブオーバーラップ量OL及びスロットル開度OPtによって、ステップS108において吸気バイパス弁(ABV)20の開度OPaが調整されたことによる内燃機関1のトルク変化分を補正して、ステップS101における要求トルク値Tmを実現する。ステップS107において、吸気温度制御部56は、吸気弁開閉時期変更機構7Aと排気弁開閉時期変更機構8Aとの少なくとも一方を調整し、またスロットル弁19の開度を調整して、制御量演算部55が求めたバルブオーバーラップ量OL及びスロットル開度OPtを実現する。これによって、ステップS102における吸気温度目標値θim及びステップS101における要求トルク値Tmが実現される。
このように制御することで、吸気温度が極低温である場合には、吸気温度を上昇させて燃焼悪化を抑制できるので、燃焼悪化に起因するドライバビリティの悪化やエミッションの悪化を抑制できる。また、バルブオーバーラップ量OL及びスロットル開度OPtを調整することにより、吸気バイパス弁(ABV)20を開くことによるトルクの低下を補うことができるので、ドライバビリティの悪化をさらに抑制できる。
次に、ステップS104に戻って説明する。ステップS104においてNoと判定された場合、すなわち、制御条件判定部54が、OPt<OPtc、又はOL<OLcであると判定した場合、吸気弁7Vから排気弁8Vへの空気の吹き抜けによって内燃機関1のトルクが増加する領域ではないと判定できる。この場合、ステップS109に進む。
ステップS109において、吸気バイパス弁20の開度を調整することによって、現在の吸気温度θiを上昇させる。この場合、吸気温度制御部56は、吸気バイパス弁(ABV)20の開度を所定の大きさに調整する。吸気バイパス弁(ABV)20の開度を調整するにあたっては、制御量演算部55は、図8に示す吸気バイパス弁開度マップ31へ吸気温度目標値θimを与え、対応する吸気バイパス弁(ABV)20の開度OPaを得る。吸気温度制御部56は、制御量演算部55が取得した吸気バイパス弁(ABV)20の開度OPaとなるように、吸気バイパス弁(ABV)20の開度を調整する。これによって、吸気温度θiは吸気温度目標値θimとなる。このように制御することで、吸気温度が極低温である場合には、吸気温度を上昇させて燃焼悪化を抑制できるので、燃焼悪化に起因するドライバビリティの悪化やエミッションの悪化を抑制できる。ステップS109で吸気バイパス弁(ABV)20の開度を調整したら、ステップS110へ進む。
図10−5は、スロットル弁を通過する空気の流量と、スロットル弁圧力比との関係を示す概念図である。スロットル弁圧力比ηpは、上述したように、図1に示すスロットル弁19の出口側における空気Aの圧力Poと、スロットル弁19の入口側における空気Aの圧力Piとの比である。スロットル弁圧力比ηp(=Po/Pi)が1に近づくにしたがって、図1に示すスロットル弁19を通過する空気Aの流量(スロットル流量)Qtが小さくなる。
吸気バイパス弁(ABV)20の開度を調整すると、過給機21による過給圧力が変化する。これによって、スロットル弁19の入口側における空気Aの圧力Piが変化するので、スロットル開度が一定であれば、スロットル弁圧力比ηpが変化し、その結果スロットル流量Qtも変化する。例えば、吸気バイパス弁(ABV)20を開くと、過給機21による過給圧力が低下することによりスロットル弁19の入口側における空気Aの圧力Piが低下する結果、スロットル弁圧力比ηpが1に近くなり、その結果スロットル流量Qtが低下する。また、吸気バイパス弁(ABV)20を閉じると、過給機21による過給圧力が上昇することによりスロットル弁19の入口側における空気Aの圧力Piが上昇する結果、スロットル弁圧力比ηpが0に近づき、その結果スロットル流量Qtが増加する。
このように、吸気バイパス弁(ABV)20の開度を調整すると、図1に示す内燃機関1の出力(トルク)が変化するので、本実施形態では、ステップS109において吸気バイパス弁(ABV)20の開度を調整する前のスロットル弁圧力比ηp_bと、吸気バイパス弁(ABV)20の開度を調整した後のスロットル弁圧力比ηp_aとが同じ大きさになるように、スロットル弁19の開度を調整する。すなわち、吸気バイパス弁(ABV)20を開いて、過給機21の圧縮機22から送られる空気Aを圧縮機22の入口側へ戻す前後において、スロットル弁圧力比ηpが一定になるようにスロットル弁19の開度を調整する。
本実施形態では、目標とするスロットル弁19の出口側における空気Aの圧力(目標吸気管圧力)Po_mを式(3)によって求め、得られた目標吸気管圧力Po_mとなるようにスロットル弁19の開度をフィードバック制御する。ここで、Pi_nは、現時点におけるスロットル弁19の入口側における空気Aの圧力である。
Po_m=ηp_b×Pi_n・・(3)
ステップS110において、制御量演算部55は、ステップS109で吸気バイパス弁(ABV)20の開度を調整する前に、予め記憶部53に格納しておいたηp_b、及び図1に示すスロットル入口側吸気圧力センサ42から取得したPi_nを式(3)に与え、目標吸気管圧力Po_mを求める。そして、図1に示す機関ECU50が備える出力制御部57は、図1に示すスロットル出口側吸気圧力計測センサ43によって取得した圧力、すなわち、スロットル弁19の出口側における空気Aの圧力Poが、制御量演算部55が求めた目標吸気管圧力Po_mとなるように、スロットル弁19の開度をフィードバック制御する。すなわち、出力制御部57は、目標吸気管圧力Po_mとスロットル弁19の出口側における空気Aの圧力Poとの偏差が0になるように、スロットル弁19の開度をフィードバック制御する。これによって、吸気バイパス弁(ABV)20の開度を調整することに起因する、図1に示す内燃機関1の出力(トルク)変化を抑制できるので、ドライバビリティの低下を抑制できる。
ここで、Δθi≧Δθicである場合には、吸気バイパス弁20の開度を全開にしても、現在の吸気温度θiを吸気温度目標値θimまでは上昇させることはできないが、図8に示すθi2までは上昇させることができる。この場合、吸気温度制御部56は、吸気バイパス弁(ABV)20の開度を全開にするとともに、制御量演算部55及び出力制御部57は、上記手法によってスロットル弁19の開度をフィードバック制御する。
本実施形態では、吸気温度θiの低下により燃料の霧化が不十分となることに起因する内燃機関1の燃焼悪化を判定する尺度として、気筒内燃焼空間Bへ導入される空気Aの温度(吸気温度)に関するパラメータを用いる。上記説明では、吸気温度に関するパラメータとして、吸気クーラー18と気筒内燃焼空間Bとの間に設けた吸気温度センサ41で計測した空気Aの温度、すなわち吸気温度θiそのものを用いた。これによって、吸気温度θiに起因する燃焼変動を抽出できる。
なお、本実施形態では、吸気温度に関するパラメータは吸気温度θiに限定されるものではなく、内燃機関1の回転変動を吸気温度に関するパラメータとして用いてもよい。この場合、内燃機関1の回転変動と吸気温度との関係を予め求めておくことにより、内燃機関1の回転変動から吸気温度θiを推定し、上述した吸気温度制御の手順における吸気温度θiとしてもよい。また、内燃機関1の回転変動が所定の回転変動閾値に収まるように、吸気バイパス弁20の開度やバルブオーバーラップ量やスロットル開度を調整してもよい。
また、気筒内燃焼空間B内における燃焼圧力や燃焼イオン電流値も、気筒内燃焼空間Bにおける燃焼の状態と相関が高い。このため、燃焼圧力や燃焼イオン電流値を吸気温度に関するパラメータとしてもよい。この場合、燃焼圧力や燃焼イオン電流値と吸気温度との関係を予め求めておくことにより、内燃機関1の燃焼圧力や燃焼イオン電流値から吸気温度θiを推定し、上述した吸気温度制御の手順における吸気温度θiとしてもよい。また、内燃機関1の燃焼圧力や燃焼イオン電流値が所定の閾値に収まるように、吸気バイパス弁20の開度やバルブオーバーラップ量やスロットル開度を調整してもよい。
以上、本実施形態では、過給機を備える内燃機関において、内燃機関に対する要求トルク値が所定の閾値以下、かつ内燃機関の燃焼空間へ導入される空気の温度に関するパラメータが所定の閾値以下である場合には、過給機が備える圧縮機から送られる空気の一部を圧縮機の入口側へ戻す。これによって、圧縮機で加圧され、温度と密度とが上昇した空気の一部を圧縮機の入口側へ還流させて、再び圧縮機で加圧させるので、内燃機関の燃焼空間へ供給される空気の温度を逐次上昇させることができる。その結果、過給機を備える内燃機関において、外気温度が極低温になった場合の燃焼悪化を抑制できる。