JP4924195B2 - 粉末成形用金型および粉末成形用金型における漏出粉末除去方法 - Google Patents
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このような粉末成形用金型においては、キャビティや原料粉末のキャビティへの供給経路等の原料粉末が本来的に存在する部分以外の部分に、原料粉末が漏出する場合がある。こうした原料粉末の漏出は、金型構造等に応じて、原料損失の増大や、複数種の原料粉末が別々に供給されて成形品が成形される場合の部品の特性変動や、金型における作動不良等、様々な不具合の原因となり得る。そこで、これらのような原料粉末の漏出にともなう不具合を解消するための技術が種々提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2および特許文献3参照。)。
すなわち、従来構成の粉末成形用金型においては、原料粉末の漏出は、成形サイクルにおいて、下パンチを構成する型要素同士が相対移動すること等により、キャビティ部分に供給された原料粉末が、型要素同士の間(隙間)から下方に漏出することによって生じる。このようにして漏出した原料粉末は、前述した受圧面上に落下することとなる。受圧面上に落下した原料粉末は、その量が増えるにつれて受圧面上に堆積する。受圧面上に堆積した原料粉末は、粉末成形用金型における成形品の寸法に影響を与える。
特に、特許文献4に開示されているように、下パンチの各型要素の停止位置を決定するための構成がキャビティ近傍に集中的に配置される粉末成形用金型においては、下パンチの各型要素の長さ(上下方向の長さ)が短くなり、キャビティを形成する下パンチの成形面(上側面)と受圧面との距離が短くなるため、キャビティ部分から漏出する原料粉末が受圧面上に堆積しやすく、原料粉末が成形品の寸法に与える影響が比較的大きくなる。具体的には、原料粉末の漏出は、次のような現象をともなって成形品の寸法に影響を与える。
薄板状のかたまりとなる等して受圧面上に堆積する原料粉末は、その堆積厚さ分、キャビティ内の原料粉末の加圧完了時における下パンチの各型要素の停止位置を上昇させる(上方に移動させる)。つまりは、下パンチの成形面の高さ位置が高くなる。結果として、成形品が、受圧面上に堆積する原料粉末の厚さ分、下パンチの各型要素の移動方向(原料粉末が押し固められる方向)について寸法(製品厚さ)が短く(薄く)なるという影響を受ける。
そこで、特許文献1、特許文献2および特許文献3にも記載されているように、漏出した原料粉末を吸引装置等によって吸引する方法が考えられる。しかし、吸引装置等による吸引する力は、前記のようにエアが吹き付けられる力に対して比較的弱い。このため、原料粉末を吸引する方法では十分な効果が得られない場合がある。
すなわち、本発明によれば、作業環境の悪化や設備への悪影響をともなうことなく、成形品の寸法に影響を与える原因となる、キャビティ部分から漏出して受圧面上に堆積する原料粉末を除去することができ、成形品の寸法精度の維持を図ることができる。
本発明に係る粉末成形用金型は、例えば歯車等の機械部品の製造に際し、金属粉等の粉末を原料とする粉末成形に用いられるものである。
以下では、本発明に係る粉末成形用金型の実施の一形態である粉末成形用金型1について、図面を参照しながら説明する。なお、図1における上下方向が、粉末成形用金型1における上下方向に対応する。
本実施形態では、下インナパンチ11は、その下側に連結されるインナ型ロッド14を介して所定の範囲で上下方向に移動可能に設けられる。つまり、インナ型ロッド14は、上下方向に延設される棒状の部材であり、その下方に設けられる油圧シリンダ等の昇降機構(図示略)により、所定の範囲で上下方向に移動可能に(昇降可能に)設けられる。
また、下ミドルパンチ12は、その下側に連結されるミドル型ロッド15を介して所定の範囲で上下方向に移動可能に設けられる。ミドル型ロッド15は、上下方向に延設される棒状の部材である。本実施形態では、前記のとおり略円筒状の下ミドルパンチ12に対して、その周方向に略等間隔で三本のミドル型ロッド15が設けられている(図2参照)。なお、図1に示す断面は、図2におけるA−A矢視方向の断面に対応する。各ミドル型ロッド15は、その下端側(下ミドルパンチ12に連結される側と反対側)が、昇降部材16に対して固定される。昇降部材16は、略円柱状の部材であり、その下方に設けられる油圧シリンダ等の昇降機構(図示略)により、所定の範囲で上下方向に移動可能に(昇降可能に)設けられる。つまり、ミドル型ロッド15は、昇降部材16を介して上下方向に移動可能に設けられる。ミドル型ロッド15は、昇降部材16の上側面に対して、固定板17が用いられて固定される。なお、昇降部材16には、その略中央部に前記インナ型ロッド14の上下方向の移動を許容するための貫通孔16aが設けられている。
本実施形態の粉末成形用金型1においては、受圧面30は、下パンチ2の下方に設けられる前記支持部材としてのパンチホルダ31により形成される。
インナ型ロッド孔34に対して貫通した状態となるインナ型ロッド14の下側の部分は、下方に延設され、昇降部材16の貫通孔16aを介して前述したような昇降機構に連結される。
ミドル型ロッド孔35に対して貫通した状態となるミドル型ロッド15の下側の部分は、パンチホルダ31の外部において、前述したように昇降部材16に対して固定される。
なお、この粉末成形用金型1における待機状態においては、上パンチ3が下パンチ2に対して所定の間隔を隔てて離間した状態、つまり粉末成形用金型1の型開き状態となる。
ここで、粉末成形用金型1が、その型開き状態(図3(a)参照)から、型閉じ状態(同図(b)参照)となる過程においては、下パンチ2および上パンチ3の各型要素が、それぞれ所定のタイミングや速度で移動する。この下パンチ2および上パンチ3の各型要素の移動についてのタイミングや速度は、例えば、キャビティ39内の原料粉末5の圧縮に際し、キャビティ39内の原料粉末5の各部における密度が略一定の状態に保たれるように設定される。
また、図3(b)に示すように、キャビティ39内の原料粉末5の加圧完了時においては、前記のとおり、受圧面30に対し、下パンチ2を構成する下インナパンチ11および下ミドルパンチ12が圧接した状態となる。
つまり、原料粉末5の充填時には、キャビティ形成凹部6から下インナパンチ11と下ミドルパンチ12との隙間や下ミドルパンチ12と下アウタパンチ13との隙間を介して原料粉末5が下方に漏出する。また、圧縮成形の過程では、下パンチ2を構成する型要素同士の相対的な移動等により、キャビティ形成凹部6やキャビティ39から下インナパンチ11と下ミドルパンチ12との隙間や下ミドルパンチ12と下アウタパンチ13との隙間を介して原料粉末5が下方に漏出する。
図4(b)に示すように、キャビティ部分から漏出して受圧面30上に堆積した原料粉末5は、受圧面30と下インナパンチ11および下ミドルパンチ12との間に介在することとなる。したがって、成形品の成形に際してキャビティ39内の原料粉末5が加圧されることにより、受圧面30上に堆積している原料粉末5は、受圧面30と下インナパンチ11および下ミドルパンチ12それぞれの下側面11b、12bとに挟まれて圧縮される。そして、成形サイクルが繰り返されることにより、受圧面30上に堆積する原料粉末5は、その堆積量が増える。ここで、受圧面30上に堆積する原料粉末5は、キャビティ39内の原料粉末5に対する加圧にともなって圧縮されるため、その圧縮によって押し固められ、薄板状(チップ状)のかたまりとなる場合がある。
薄板状のかたまりとなる等して受圧面30上に堆積する原料粉末は、その堆積厚さ分、キャビティ39内の原料粉末5の加圧完了時における下インナパンチ11および下ミドルパンチ12の停止位置を上昇させる(上方に移動させる)。つまりは、下インナパンチ11および下ミドルパンチ12それぞれの成形面11a、12aの高さ位置が高くなる。結果として、成形品10が、受圧面30上に堆積する原料粉末5の厚さ分、下インナパンチ11および下ミドルパンチ12の移動方向(原料粉末5が押し固められる方向)について寸法(製品厚さ)が短く(薄く)なるという影響を受ける。
すなわち、本実施形態に係る粉末成形用金型1は、パンチホルダ31の周囲に、所定の閉空間を形成する空間形成部材と、パンチホルダ31に形成され受圧面30に開口する孔部を介して、受圧面30に吹き付けるようにエアを導くエア導入手段とを備える。
つまり、粉末成形用金型1においては、パンチホルダ31の周囲に、所定の閉空間が形成され、パンチホルダ31に形成され受圧面30に開口する孔部を介して、受圧面30にエアが吹き付けられることにより、キャビティ部分から漏出した受圧面30上の原料粉末が除去される。以下、粉末成形用金型1における、受圧面30上の原料粉末を除去するための構成および方法について、本実施形態に即して具体的に説明する。
図1に示すように、粉末成形用金型1においては、粉末除去空間40の形成に際し、ホルダ41と、蓋体42とが用いられる。つまり、粉末除去空間40は、ホルダ41および蓋体42によって、下パンチ2とともに形成される。したがって、本実施形態に係る粉末成形用金型1においては、ホルダ41と蓋体42とが、粉末除去空間40を形成する前記空間形成部材となる。
このように、ホルダ41は、粉末除去空間40の形成に際して、略円筒状の側壁部材として機能する。
このように、下アウタパンチ13は、前記加圧完了時において、蓋体42を介して受圧面30に圧接した状態となる。
なお、シリンダ機構44について、その構成や設けられる個数等は、特に限定されるものではない。つまり、蓋体42の昇降機構としては、蓋体42が受圧面30に対して昇降可能に設けられる構成であれば、本実施形態におけるシリンダ機構44に限定されるものではない。
このように、蓋体42は、粉末除去空間40の形成に際して、略円環板状の蓋部材として機能する。
すなわち、下パンチ2を構成する型要素のうち、下インナパンチ11および下ミドルパンチ12は、それぞれの独立した上下動により、受圧面30に接触していない状態、つまりそれぞれの下側面11b、12bが受圧面30に対して離間している状態となる。また、下アウタパンチ13は、シリンダ機構44による蓋体42の昇降動作により、蓋体42を介して受圧面30に接触していない状態、つまり蓋体42の接触面42cが、受圧面30に対して離間している状態となる。
したがって、本実施形態では、下アウタパンチ13が、蓋体42上に支持される構成であるため、蓋体42が受圧面30に対して昇降可能に設けられるが、下アウタパンチ13が、蓋体42とは独立して上下動可能に設けられる構成であってもよい。この構成の場合、蓋体42は、受圧面30に対して昇降可能に設けられる必要はない。
介装板54の貫通孔54aの内部空間は、パンチホルダ31の下方において、土台33の貫通孔33aの内部空間とともに、インナ型ロッド14やミドル型ロッド15や昇降部材16が上下動する空間を形成する。以下の説明においては、このパンチホルダ31の下方に形成される空間を、「ホルダ下部空間50」とする。
また、介装板内通路56は、その一端が、介装板54の上面におけるホルダ41が接触する部分に開口してホルダ内通路55と連通するとともに、他端側が、ホルダ下部空間50に開口する。ホルダ下部空間50は、パンチホルダ31に形成され受圧面30に開口する孔部であるインナ型ロッド孔34およびミドル型ロッド孔35に対して連通する。
ここで、ホルダ下部空間50に対しては、その気密性が確保されるため、昇降部材16と土台33の貫通孔33aとの間には、円環状のシール部材57が介装される。また、図示は省略するが、インナ型ロッド14と昇降部材16の貫通孔16aとの間も、シール部材が用いられること等により、気密性が確保される。したがって、ホルダ下部空間50は、インナ型ロッド孔34およびミドル型ロッド孔35に対してのみ開口した状態となる。
エア導入口51から導入されたエアは、エア導入経路52、つまりホルダ内通路55、介装板内通路56、およびホルダ下部空間50を介して、インナ型ロッド孔34およびミドル型ロッド孔35に導かれる。これらインナ型ロッド孔34およびミドル型ロッド孔35に導かれたエアは、パンチホルダ31の上側面、つまり受圧面30に噴出することとなる。
また、本実施形態では、パンチホルダ31に形成され受圧面30に開口する孔部として、インナ型ロッド14を貫通させるインナ型ロッド孔34と、ミドル型ロッド15を貫通させるミドル型ロッド孔35とが用いられているが、これに限定されず、パンチホルダ31を上下方向に貫通する孔部が、インナ型ロッド孔34およびミドル型ロッド孔35とは別途に設けられてもよい。ただし、本実施形態のように、インナ型ロッド14を貫通させるインナ型ロッド孔34と、ミドル型ロッド15を貫通させるミドル型ロッド孔35とが用いられることにより、構造の簡略化が図れる。
つまり、粉末成形用金型1においては、受圧面30上の原料粉末を除去するに際し、粉末除去空間40に対する吸引が行われることが好ましい。
エア吸引口61から吸引されたエアは、所定の方法により回収される。
すなわち、エア吸引口61を介して粉末除去空間40に対する吸引が行われることにより、粉末除去空間40内にエアの流れを形成することができ、粉末除去空間40内に原料粉末を溜めることなく、効率的に原料粉末を回収することが可能となる。
ただし、粉末除去空間40に対する吸引は、前述したような受圧面30に対するエアの吹付けのタイミングに合わせて間欠的に行われてもよい。
また、エアの吹付けによって受圧面30から除去される原料粉末5は、閉空間として形成される粉末除去空間40内に撒き散らされることとなるので、粉末成形用金型1の外部(周囲)に撒き散らされることが防止される。これにより、原料粉末5が外部に撒き散らされることにともなう作業環境の悪化や、粉末成形用金型1における作動不良等の設備への悪影響等が防止される。
2 下パンチ(型部材)
3 上パンチ(型部材)
4 ダイ(型部材)
5 原料粉末
6 キャビティ形成凹部
11 下インナパンチ(型要素)
12 下ミドルパンチ(型要素)
13 下アウタパンチ(型要素)
30 受圧面
31 パンチホルダ(支持部材)
34 インナ型ロッド孔(孔部)
35 ミドル型ロッド孔(孔部)
39 キャビティ
40 粉末除去用空間(閉空間)
41 ホルダ(空間形成部材)
42 蓋体(空間形成部材)
50 ホルダ下部空間
51 エア導入口(エア導入手段)
52 エア供給経路(エア導入手段)
55 ホルダ内通路
56 介装板内通路
61 エア吸引口(吸引手段)
Claims (4)
- 上パンチと、該上パンチに対する近接離間方向に相対移動可能な複数の型要素を有する下パンチとを含む複数の型部材によりキャビティを形成し、前記型部材同士の相対的な移動によって前記キャビティ内の原料粉末を圧縮することで成形し、前記キャビティ内の原料粉末の加圧完了時において前記複数の型要素の少なくともいずれかが圧接した状態となる受圧面を形成する支持部材を備える粉末成形用金型であって、
前記支持部材の周囲に、前記下パンチとともに、前記複数の型要素が接触していない状態の前記受圧面が露出した状態となる閉空間を形成する空間形成部材と、
前記支持部材に形成され前記受圧面に開口する孔部を介して、前記受圧面に吹き付けるようにエアを導くエア導入手段と、
を備えることを特徴とする粉末成形用金型。 - 前記閉空間と連通し、該閉空間に対する吸引を行うための吸引手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の粉末成形用金型。
- 上パンチと、該上パンチに対する近接離間方向に相対移動可能な複数の型要素を有する下パンチとを含む複数の型部材によりキャビティを形成し、前記型部材同士の相対的な移動によって前記キャビティ内の原料粉末を圧縮することで成形し、前記キャビティ内の原料粉末の加圧完了時において前記複数の型要素の少なくともいずれかが圧接した状態となる受圧面を形成する支持部材を備える粉末成形用金型における漏出原料粉末除去方法であって、
前記支持部材の周囲に、前記下パンチとともに、前記複数の型要素が接触していない状態の前記受圧面が露出した状態となる閉空間を形成し、
前記支持部材に形成され前記受圧面に開口する孔部を介して、前記受圧面にエアを吹き付けることにより、
前記キャビティ部分から漏出した前記受圧面上の原料粉末を除去することを特徴とする粉末成形用金型における漏出原料粉末除去方法。 - 前記閉空間に対する吸引を行うことを特徴とする請求項3に記載の粉末成形用金型における漏出原料粉末除去方法。
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