図13は、地下鉄A駅と地下鉄B駅間のトンネル内を構築する際に設置される移動台車走行ラインのレイアウトの一例を示す概略平面図である。
図13に示すように、地下鉄軌道を構築する際には、次のような手順で行われる。まず、地下鉄A駅の立坑部1から地下鉄B駅の立坑部2に向けて、地中の水平方向に地下鉄軌道となるトンネル3を構築して行く。該トンネル3を構築後、反対に地下鉄B駅の立坑部2から地下鉄A駅の立坑部1に向けて地中の水平方向に地下鉄軌道となるトンネル4を構築して行く。なお、地下鉄A駅の立坑部1からトンネル3、及び地下鉄B駅の立坑部2からトンネル4を構築する際には、セグメント等の資材搬入や土砂搬出用の複数の車両を走行させるために、構築途中のトンネル3及び4内に走行路としての走行レール5a及び5bを順次敷設して行く。
そして、トンネル4の構築時、地下鉄A駅の立坑1からトンネル3の走行レール5a上を走行して地下鉄B駅の立坑部2内に来た車両群は、トンネル4内に新たに資材を搬入するため、さらには土砂を積み込むために、地下鉄B駅の立坑部2の底部2aに設置したトラバーサー装置6によってトンネル4内の走行レール5bに乗り移され、構築位置や土砂積み込み位置まで移送される。
図14は、図13に示した地下鉄B駅に設置されるトラバーサー装置6の概略拡大配置図である。図14に示すように、トラバーサー装置6は、地下鉄B駅の立坑部2の底部2aでトンネル3の走行レール5aに接続する位置からトンネル4の走行レール5bに接続する位置までの間に設置されたトラバーサー下レール7aと、該トラバーサー下レール7a上を走行レール5aから走行レール5b位置、あるいは走行レール5bから走行レール5a位置まで横移動するトラバーサー8と、該トラバーサー8上に走行レール5a及び走行レール5bに対応して設けられているトラバーサー上レール7bとを備えている。
そして、トラバーサー装置6は、例えば動力車である機関車を最後尾として連結走行して来た複数の車両9,9…を、トラバーサー8の上に1両ずつ乗せた後、該トラバーサー8上の車両9が移動しないように車止めを行う。次いで、トラバーサー8上の車両9とその後側の車両9,9…間の連結を外し、かつ、トラバーサー8を横移動させたときに、該トラバーサー8上の車両9と後側の車両9,9…とが接触しない位置まで、残りの車両9,9…を後側に移動させる。
次に、トラバーサー8を走行レール5b位置まで横移動し、移動後に車止めを外す。その後、トラバーサー8上の車両9を手押し作業により走行レール5b上に乗り移らせ、既に入線している車両9に連結する。また、トラバーサー8からトンネル4の走行レール5bに車両9を乗り移させて空になったトラバーサー8をトンネル3の走行レール5a位置まで横移動させて戻す。これを1台ずつ順次繰り返す。そして、全ての車両9,9…がトンネル4の走行レール5bに移動し終えたら、さらにトンネル4内の構築位置や土砂搬出位置まで移送される。
なお、上記例では地下鉄A駅と地下鉄B駅間の地下鉄軌道を構築する場合について述べたが、上下水道、共同溝等を中間の立坑等でUターンする路線についても適用されることもあるが、Uターンする形に曲がる曲線部を含む軌道上を、動力車を含む車両を通過させる方式は、何れも図13及び図14に示すような直角に移動できるトラバーサーと呼ばれるテーブルを用いる構造が一般的である。
また、複数の移動台車を曲線軌道上で移動させる方法としては、例えば特許文献1及び2に記載されているものが知られている。しかし、特許文献1で提案されている移動台車装置は、曲線上を移動する複数の移動台車が相互に連結されている構造ではない。
一方、特許文献2で提案されている移動台車装置は、ターンをターンテーブルの回転で行う構造であり、該ターンテーブルに複数の車両を順次載せて回転させ、前に載せた複数の車両を順に降ろすシステムを提案しており、1つに連結された複数の車両をターンテーブルで一度にターンさせて通過させているものではない。
特開平2002−240707号公報。
特許第3969053号公報。
上述したように、図13及び図14に示す移動台車装置は、車両9をトラバーサー8上に乗せて移動させ、移動させた位置で車両9を降ろし、該車両9を降ろし終えたトラバーサー8を再び元の位置に戻すという操作を繰り返しながら全ての車両9,9…を搬送するものである。このため、ほぼ車両数量に応じた回数分だけトラバーサー8を往復移動させ、また、これに伴う車両間連結の解除及び再連結と、車止めの実施及び解除、手押しによる移動等、多くの時間と人力を費やしていた。また、作業時に手を挟む、つまづく、足を踏外す等の危険を伴う等の問題があった。
なお、軌条で直角あるいはUターンする形に曲がる曲線部を軌条で繋いで連続して運搬する方法もあるが、半径10m未満となる場合は、脱輪の危険性が高く、また、車軸は負荷が大きく破損の要因になっている。このため、半径10m未満の急な曲線部では、動力車を用いて運搬する軌道装置は法律で禁止されている。
そこで、トンネル内における直角またはUターンする曲線部を含む走行軌道上を相互連結されている複数の車両を一度に通過することができる移動台車装置及び移動方法を提供するために解決すべき技術課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
本発明は上記目的を達成するために提案されたもので、請求項1記載の発明は、互いに直角またはUターンする等0°を超える形で方向転換位置から横方向に延設されている第1と第2の走行路の一方の走行路上から該第1と第2走行路相互間を接続している方向転換用走行路を通って他方の前記走行路上に相互連結された複数の車両を順に乗り移らせる移動台車装置であって、前記相互連結された複数の車両を前記第1または第2走行路上から乗り移らせて前記方向転換用走行路上を移動する相互連結された複数の移動台車と、該複数の移動台車を走行させる運転手段と、前記移動台車相互間に設けられ、後押し運転時であって、前記移動台車から前記第1または第2走行路上および前記第1または第2走行路上から前記移動台車へ乗り移らせる時に該移動台車同士の前部と後部が隙間なく接触した状態に前記移動台車同士を連結保持する連結手段とを備えたことを特徴とする移動台車装置を提供する。
この構成によれば、方向転換用走行通路上の相互に連結された複数の移動台車を第1または第2走行路に隣接配置し、かつ、該第1または第2走行路上から該複数の移動台車上に相互連結されている複数の車両を一度に乗り移させ、その後、該移動台車を第2または第1走行路と隣接する位置まで走行移動させて該移動台車上の複数の車両を該移動台車上から該第2または第1走行路上側へ一度に乗り移させることができる。
請求項2記載の発明は、上記連結手段は、相互に連結し合う上記移動台車の前側面または後側面における左右の両側部から相互に連結し合う前側面または後側面へ向かってそれぞれ水平に延びる左右1対の連結片と前記各移動台車間の連結片をほぼ直角に貫通して前記前後の連結片間を水平方向に回動可能に連結している連結ピンとを有してなる左右1対の連結機構を備え、かつ、曲線内側となる連結機構は曲線走行時に前後の移動台車間を連結した状態を保持したまま走行し、曲線外側となる連結機構は曲線走行時に前後の移動台車間を離した状態で走行可能に構成してなる移動台車装置を提供する。
この構成によれば、後押し運転の直線走行では、各移動台車同士の前部と後部は隙間なく接触しながら走行する。また、停止時には前側移動台車が慣性により後側移動台車から離れようとするが、左右1対の連結機構のうち、曲線内側となる連結機構は前後の移動台車間を連結保持した状態で走行しているので、前側移動台車が後側移動台車から離れて単独で走行することはない。一方、曲線走行の場合では、曲線内側は弧が短いため接触した状態で走行するが、弧の長い曲線外側は移動台車間で離れ、曲線走行を可能とする。
請求項3記載の発明は、上記連結手段による上記各移動台車同士の連結は、該各移動台車同士の前部と後部の対向接触面が互いに円弧であって、該円弧の半径は前記曲線走行する曲線より小さい半径で、かつ、前記円弧となる円の中心位置に設けた連結ピンで連結している移動台車装置を提供する。
この構成によれば、各移動台車同士の前部と後部の接触面は、直線走行または曲線走行に係わらず円弧であり、しかも円弧となる円の中心で移動台車上レールの中心位置をピン連結しているので、直線円弧の場合の曲線走行では各移動台車同士の前部と後部が接触したまま連結ピンを中心に回転して、曲線を吸収しながら走行する。
請求項4記載の発明は、上記運転手段は、上記方向転換用走行路上に敷設されたピンラックと、該ピンラックに噛み込み係合されて上記方向転換用走行路上を走行する上記移動台車に設けられた回転可能なスプロケットと、該スプロケットを回転させる電動機とを備えてなる移動台車装置を提供する。
この構成によれば、ピンラックに噛み込むスプロケットを原動機で回転させると、移動台車が走行軌道上を自走する。
請求項5記載の発明は、上記運転手段は、一端側を上記連結されている移動台車に固定したワイヤーロープと、該ワイヤーロープの他端側を巻き取り可能なウインチとを備えてなる移動台車装置を提供する。
この構成によれば、移動台車を移動させる際、一端側が移動台車に連結されているワイヤーロープをウインチにより巻き取ると、移動台車が方向転換用走行路上を走行する。
請求項6記載の発明は、 互いに直角またはUターンする等0°を超える形で方向転換位置から横方向に延設されている第1と第2の走行路の一方の走行路上から該第1と第2走行路相互間を接続している方向転換用走行路を通って他方の前記走行路上に、相互連結された複数の車両を順に乗り移らせる際に、請求項1,2,3,4または5記載の移動台車装置を用い、前記相互連結された複数の車両を前記第1または第2走行路から前記移動台車上に乗り移らせて、該複数の車両を該移動台車と共に前記方向転換位置内を一度で通過させることを特徴とする移動方法を提供する。
この方法によれば、方向転換用走行通路上の相互に連結された複数の移動台車を第1または第2走行路に隣接配置し、かつ、該第1または第2走行路上から該複数の移動台車上に相互連結されている複数の車両を一度に乗り移させ、その後、該移動台車を第2または第1走行路と隣接する位置まで走行移動させて該移動台車上の複数の車両を該移動台車上から該第2または第1走行路上側へ一度に乗り移させることができる。
請求項1記載の発明は、方向転換用走行路上における相互連結された複数の移動台車を第1または第2走行通路に隣接配置させて、該第1または第2走行路から該移動台車上に相互連結されている複数の車両を一度に乗り移させ、その後、該移動台車を第2または第1走行路と隣接する位置まで移動走行させて該移動台車上の複数の車両を該第2または第1走行路側へ一度に乗り移させることができるので、相互連結された複数の車両の移動に要する時間を短縮することができる。また、多くの人力を費やすことなく切り換えることができる。さらに、地下鉄のトンネル工事等において、180°でUターンする単線並列の線路部分などの建設では、スイッチバックする場合はホーム部まで工事用地として必要になるが、本発明では立坑部のみの使用で施工できる。ホーム部を使用することによる
ホーム部建設工程に影響を与えない。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、移動台車の停止時におけ
る移動台車のコントロール及び曲線走行時における走行コントロールが簡単に行える。
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、直線走行及び曲線走行時における走行コントロールが簡単に行える。
請求項4記載の発明は、請求項1,2または3記載の発明の効果に加えて、ピンラックとスプロケットと原動機とで自走式の移動台車が得られる。
請求項5記載の発明は、請求項1,2または3記載の発明の効果に加えて、ワイヤーロープ牽引式の構造をした移動台車装置を簡単に得ることができる。
請求項6記載の発明は、方向転換用走行路上における相互連結された複数の移動台車を第1または第2走行通路に隣接配置させて、該第1または第2走行路から該移動台車上に相互連結されている複数の車両を一度に乗り移させ、その後、該移動台車を第2または第1走行路と隣接する位置まで移動走行させて該移動台車上の複数の車両を該第2または第1走行路側へ一度に乗り移させることができるので、相互連結された複数の車両の移動に要する時間を短縮することができる。また、多くの人力を費やすことなく切り換えることができる。さらに、地下鉄のトンネル工事等において、180°でUターンする単線並列の線路部分などの建設では、スイッチバックする場合はホーム部まで工事用地として必要になるが、本発明では立坑部のみの使用で施工できる。ホーム部を使用することによるホーム部建設工程に影響を与えない。
以下、本発明の移動台車装置について、好適な実施例をあげて説明する。図1は、本発明に係る移動台車装置を適用した移動台車走行ラインのレイアウトの一例を示す概略平面図で、図2は、図1のA−A線概略断面図である。
なお、図1及び図2に示す移動台車走行ラインは、図13及び図14に示した方向転換位置としての地下鉄B駅の立坑2において、車両群11(図2参照)をトンネル3内の第1走行路である走行レール5a(以下、「第1走行レール5a」という)からUターンさせてトンネル4内の第2走行路である走行レール5b(以下、「第2走行レール5b」という)上に切り換え移動させるようにしたもので、図13及び図14に示した構成と同一構成部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
図1及び図2において、移動台車装置20は、中間部でUターンさせて、平面的にその一端部側を第1走行レール5aの一端部に連結させ、他端部側を第2走行レール5bの一端部に連結している方向転換用走行路としての方向転換用走行レール21と、該方向転換用走行レール21上を図示しない運転手段により移動する5両の移動台車22,22…とを備えてなる。該5両の移動台車22,22…は、後述する連結手段30により前部と後部が相互に連結されて、これらが列をなして走行できる構造になっている。また、各移動台車22の上面には、第1及び第2走行レール5a,5bに対応して移動台車上レール23(図2参照)が各々設けられている。
なお、方向転換用走行レール21と第1及び第2走行レール5a,5bとの間には、該方向転換用走行レール21の高さが第1及び第2走行レール5a,5bの高さよりもほぼ移動台車22の高さ分だけ低くなるように、段差S(図2参照)を持たせてある。そして、移動台車22,22…が第1及び第2走行レール5a,5bと隣接する位置に配置されると、移動台車22,22…上の移動台車上レール23と第1または第2走行レール5a,5bの高さ及び水平方向の各位置がそれぞれ一致して一体化され、第1または第2走行レール5a,5bから移動台車22,22…上の移動台車上レール23へ、及び、その逆側の方向へ車両群11をスムーズに乗り移させることができる構造になっている。
前記車両群11は、本例では原動機(図示せず)を有する1両の動力車25aと4両の自走しない車両25b,25b…とでなり、これら車両25a及び25b,25b…は、後部と前部が順次相互連結されて縦列走行できる構造になっている。
前記連結手段30は、移動台車22,22…の前後の面において、それぞれ左右(曲線の内側と外側)に分かれて設けられている左右1対の連結機構31,32により構成されている。すなわち、図1に示すように、連結機構31は曲線走行時に曲線内側となる内側箇所に設けられ、連結機構32は曲線走行時に曲線外側となる外側箇所に設けられている。
前記連結機構31は、図3に示すように、前側の移動台車22の後面22aから後側の移動台車22の前面22bに向かって水平に突出している平板状をした上下1対の連結片33,33と、後側の移動台車22の前面22aから前側の移動台車22の後面22aに向かって水平に突出している平板状をした一枚の連結片34と、連結片33,33と連結片34との間を連結している連結ピン35とを備えている。
前記連結片33,33及び連結片34は、図4に示すように、互いに対応する位置に上下方向に貫通している取付孔36a,36a及び取付孔36bを有する。そして、連結片33と連結片33との間に連結片34を差し込み、取付孔36a,36a及び取付孔36bがそれぞれ対応した位置で、連結ピン35を取付孔36a,36a,36b共通に差し込み、該連結ピン35により連結片33,33と連結片34との間を離脱不能に連結している構造になっている。また、連結ピン35を外せば、連結片33,33と連結片34との間の連結も解除させることができる構造になっている。
なお、連結機構31において、図3に示す構造とは反対に、上下1対の連結片33,33が後側の移動台車22の前面22bから前側の移動台車22の後面22aに向かって突出し、連結片34が前側の移動台車22の後面22aから後側の移動台車22の前面22bに向かって直角に突出した構造であってもよい。また、連結片33は上下1対設けなくても、上または下側の連結片33だけを設けた構造してもよい。
前記連結機構32は、図5に示すように、前側の移動台車22の後面22aから後側の移動台車22の前面22bに向かって水平に突出している平板状をした上下1対の連結片37,37と、後側の移動台車22の前面22aから前側の移動台車22の後面22aに向かって水平に突出している平板状をした一枚の連結片38と、連結片33,33と連結片34との間を連結している連結ピン39とを備えている。
前記連結片37,37は、図6に示すように、互いに対応する位置に上下方向に貫通している取付孔40a,40aを有し、該取付孔40a,40aに連結ピン39を挿入して、該連結ピン39を連結片37,37に取り付けている。一方、連結片38側は、先端側に連結ピン39の周面を当接させて受け入れ可能な半月状の係合切欠部40bが形成されている。そして、係合切欠部40bを連結ピン39の周面に当接係合させて、後側の移動台車22を前側の移動台車22に対して押して行くと、連結ピン39と連結片38との間が当接係合された状態で一体的に移動し、また、直線上で後側の移動台車22にブレーキ等をかけると、連結ピン39と連結片38との間が離れ、前側の移動台車22だけが慣性で前側に進むことができる構造になっている。
なお、連結機構32において、図5に示す構造とは反対に上下1対の連結片37,37が後側の移動台車22の前面22bから前側の移動台車22の後面22aに向かって突出し、連結片38が前側の移動台車22の後面22aから後側の移動台車22の前面22bに向かって直角に突出した構造であってもよい。また、連結片37は上下1対設けなくても、上または下側の連結片37だけを設けてもよい。
また、クランク状のように方向転換する向きが2方向となる場合の前記連結手段30は、移動台車22,22…の前後の面において、それぞれ左右(曲線の内側と外側)に分かれて設けられている左右1対共、連結機構32により構成してもよい。
この場合、曲線部途中で停止しても惰性で連結が外れないが、直線部では外れる可能性がある。この防止処置は、左右連結位置で移動台車22同士をゴム、ばね等で繋ぐだけでよい。
次に、動作を説明する。車両群11をトンネル3内の第1走行レール5aからトンネル4内の第2走行レール5bに移し替える場合は、方向転換用走行レール21上で連結されている移動台車22,22…を第1走行レール5aの端部まで移動させる。移動台車22,22…を第1走行レール5aの端部に移動されると、主走行レール5aと移動台車22,22…上の移動台車上レール23,23…とが同一高さで対応する
この状態で車両群11を移動台車22側へ動力車25aの牽引力により移動させると、各移動台車22上に車両25を一台ずつ、その車両群11の連結を崩すことなく乗り移すことができる。また、各移動台車22,22…上に車両群11を移し替えたら、連結されている移動台車22,22…を第2走行レール5bへ向かって運転手段の駆動力で方向転換用走行レール21上を後押し運転で走行させる。
直線走行では、連結機構31,32による連結で、図7に示すように、各移動台車22,22同士の前部と後部は隙間なく接触しながら移動する。一方、方向転換位置となる立坑2内ではUターンする形で曲線走行するが、この曲線走行では、図8に示すように、曲線内側では連結機構31により各移動台車22,22同士の前部と後部は隙間なく接触しながら移動する。これに対して、曲線外側では連結機構32により連結ピン39と連結片38との間が離れて各移動台車22は曲がることが可能になる。これにより、移動台車22,22…は車両群11を乗せたまま曲線部をスムーズに曲がって第2走行レール5bに向かう。
移動台車22,22…が第2走行レール5bの端部まで移動されると、移動台車22,22…上の移動台車上レール23,23…と第2走行レール5bが同一高さで対応する。そして、駆動車両25aの駆動力により車両群11を第2走行レール5b側に移動させると、各移動台車22上の車両群11の連結を崩すことなく第2走行レール5b上に乗り移すことができる。
以上は、車両群11をトンネル3内の第1走行レール5aからトンネル4内の第2走行レール5bに移し替える場合について説明したが、トンネル4内の第2走行レール5bからトンネル3内の第1走行レール5aに移し替える場合も、移動される向きが反対なだけで同じ方法により移し替えることができる。
前記車両群11を移動台車22に前記走行レール5aまたは5bから乗り移らせた後は、前記車両群11を連結したまま移動台車22を走行する場合と、連結を解除して移動台車22を走行する方法がある。前記車両群11を連結したまま移動台車22の曲線走行時は、曲線内側は弧が短いため接近するが弧の長い外側は離れることから、前記車両群11の各車両連結位置の車両中心間隔も同様に広くなるが、連結方式で連結棒のピン穴を長穴にすることが対応できる。
また、特殊な連結装置等で、連結ピン方式で連結棒のピン穴を長穴にすることのできない場合等、前記車両群を連結したまま移動させられない場合は、解除する。
したがって、この構成によれば、車両群11を構成している車両25の連結を切り離さずに、方向を変える必要がある第1または第2走行レール5a,5bから第2または第1走行レール5b,5aへスムーズに移し替えることができるので、連結された複数車両25,25…の移動に要する時間を短縮することができる。また、多くの人力を費やすことなく切り換えることができる。さらに、地下鉄のトンネル工事等において、180°でUターンする単線並列の線路部分の建設ではスイッチバックする場合はホーム部まで工事用地として必要になるが、本発明では立坑部のみの使用で施工できる。ホーム部を使用することによるホーム部建設工程に影響を与えない。
図9及び図10は、方向転換用走行レール21上で移動台車22,22…を移動させる運転手段の一例を示すもので、図9は移動台車走行ラインのレイアウトの一例を示す概略平面図、図10は図9の要部概略断面図である。また、図9及び図10において、図1〜図8に示した構成と同一構成部分には同一符号を付してその説明を省略する
図10に示すように、運転手段50は、方向転換用走行レール21上に敷設されているピンラック51と、該ピンラック51に噛み込み係合されてピンラック51上を回転走行する移動台車22側に設けられたスプロケット52と、該スプロケット52を回転駆動する正逆転可能な電動機53とで構成されている。
そして、電動機53が正または逆方向に回転されると、スプロケット52も電動機53と同じ方向に一体に回転し、スプロケット52の回転で移動台車22が第1走行レール5aあるいは第2走行レール5b方向に移動し、また該第1走行レール5aあるいは第2走行レール5bの端部に移動したら停止する。これにより、移動台車22,22…を方向転換用走行レール21上で移動させることができる。なお、電動機53及びスプロケット52は、後押し運転の場合は、相互に連結されている複数の移動台車22のうち、両端部の2台にだけ設ける。また、牽引運転または牽引運転を含む後押し運転以外の場合は、相互に連結されている複数の移動台車22のうち、何れか1台にだけ設ける。
図11は、方向転換用走行レール21上で移動台車22,22…を移動させる運転手段の他の例を示すもので、図11は移動台車走行ラインのレイアウトの一例を示す概略平面図である。また、図11において、図1〜図8に示した構成と同一構成部分には同一符号を付してその説明を省略する。
図11において、後押し運転時である運転手段55は、複数のシーブ56,56…に案内されて方向転換用走行レール21上に敷設されている2本のワイヤーロープ57a,57bと、該ワイヤーロープ57a,57bを巻き取る1対の電動ウインチ58a,58bとで構成されている。
前記1対の電動ウインチ58a,58bのうち、電動ウインチ58aは第1走行レール5aの端部に配置され、電動ウインチ58bは第2走行レール5bの端部に配置されている。また、ワイヤーロープ57aの一端部は電動ウインチ58bに近い移動台車22に固定され、他端部は電動ウインチ58aに取り付けられている。一方、ワイヤーロープ57bの一端部は電動ウインチ58aに近い移動台車22に固定され、他端部は電動ウインチ58bに取り付けられている。
そして、ワイヤーロープ57a,57bと電動ウインチ58a,58bとは、一方の電動ウインチ58aあるいは58bがワイヤーロープ57aあるいは57bを巻き取るとき、他方の電動ウインチ58bあるいは58aがワイヤーロープ57bあるいは57aを送り出し、この動作によりワイヤーロープ57aあるいは57bが第1走行レール5aと第2走行レール5b相互間を移動台車22,22…と一体に移動する構成になっている。
また、図示しないが、電動ウインチ58bに替えてシーブを用いることにより、ワイヤーロープ57aだけでのエンドレスワイヤリングとすることも可能である。この場合電動ウインチ58aは第1走行レール5aの端部に配置され、電動ウインチ58bに替えたシーブは第2走行レール5bの端部に配置されている。また、ワイヤーロープ57aの一端部は電動ウインチ58bに替えたシーブに近い移動台車22に固定され、他端部は電動ウインチ58aに巻き込みし、折り返し、電動ウインチ58bに替えたシーブで折り返し、電動ウインチ58aに近い移動台車22に固定される。
そして、移動台車22は、電動ウインチ58aを正転させると電動ウインチ58a側に移動し、電動ウインチ58aを逆転させると、電動ウインチ58bに替えたシーブ側に移動する。
なお、ワイヤロープ57a,57bおよび電動ウインチの運転手段で、後押し運転の場合を記したが、牽引運転でも後押し運転の場合と同様に、運転手段55は、複数のシーブ
56,56…に案内されて方向転換用走行レール21上に敷設されている2本のワイヤロープ57a,57bと、該ワイヤロープ57a,57bを巻き取る一対の電動ウインチ58a,58bとで構成されている。
前記一対の電動ウインチ58a,58bのうち、電動ウインチ58aは第1走行レール5aの端部に配置され、電動ウインチ58bは第2走行レール5bの端部に配置されている。また、ワイヤロープ57aの一端部は電動ウインチ58aに近い移動台車22に固定され、他端部は電動ウインチ58aに取り付けられている。一方、ワイヤロープ57bの
一端部は電動ウインチ58bに近い移動台車22に固定され、他端部は電動ウインチ58bに取り付けられている。
そして、ワイヤロープ57a,57bと電動ウインチ58a,58bとは、一方の電動ウインチ58aあるいは58bがワイヤロープ57aあるいわ57bを巻き取るとき、他方の電動ウインチ58bあるいわ58aがワイヤロープ57bあるいわ57aを送り出し、この動作によりワイヤロープ57aあるいは57bが第1走行レール5aと第2走行レール5b相互間を移動台車22,22…と一体に移動する構成になっている。
また、図示しないが、電動ウインチ58bに替えてシーブを用いることにより、ワイヤロープ57aだけでのエンドレスワイヤリングとすることも可能である。この場合、電動ウインチ58aは第1走行レール5aの端部に配置され、電動ウインチ58bに替えたシーブは第2走行レール5bの端部に配置されている。また、ワイヤロープ57aの一端部は電動ウインチ58aに近い移動台車22に固定され、他端部は電動ウインチ58aに巻き込みし、折り返し、電動ウインチ58bに替えたシーブで折り返し、電動ウインチ58bに替えたシーブに近い移動台車22に固定される。
図12は、複数連結された移動台車群の変形例を示す概略構成図である。図12に示す移動台車群60は、前側移動台車61aと、後側移動台車61bと、該前側移動台車61aと後側移動台車61bとの間に配設された3両の中間移動台車61c,61c,61cとでなる。
前記前側移動台車61aの後部は円弧状に窪んでいるメスの円弧部62aで、後側移動台車61bの前部は円弧状に突出しているオスの円弧部62bとして形成されている。また、中間移動台車61cの前部はオスの円弧部62bで、後部はメスの円弧部62aとして形成されている。なお、メスの円弧部62aとオスの円弧部62bの半径は、曲線走行する曲線部の半径よりも小さい半径で形成されている。
そして、各移動台車61aと移動台車61c,61c…と移動台車61は、メスの円弧部62aにオスの円弧部62bを当接配置した状態で、各オスの円弧部62bの円の平面中心で前記方向転換用走行レール21の中心位置を対応させ、該中心位置に連結ピン63を通して該前側の移動台車61cと後側の移動台車61cとの間を水平方向へ回動可能な状態で連結している。
この構造では、後押し運転または牽引運転にかかわらず、曲線走行時、各移動台車61a,61b,61c,61c…同士における前側のメスの円弧部62aと後側のオスの円弧部62bがそれぞれ接触したまま、連結ピン63を中心に回転しながら該方向転換用走行レール21の形状に倣って走行する。
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
例えば、矩形移動台車と円弧形状の2種類の移動台車のみ提案したが、移動台車上レール23の2本のレール間のみ各移動台車同士の前部と後部の接触面が移動台車走行方向に直角であって、レールの外側の角を落とした状態にする前後端を台形状にする方法もある。台形状にすることで、曲線部での外側の開きは小さくできる。
なお、この場合の連結位置を方向転換用走行レール21の中心とした場合は、連結ピンのピン孔を長孔にすることで対応できる。この場合の長孔の長さは、移動台車の曲線走行時における各移動台車相互の前部と後部の中心部の離れ量以上とすればよい。また、運転方法は、前記車両群を第1走行レール5aあるいは第2走行レール5bから移動台車に乗り移らせるとき及び第2走行レール5bあるいは第1走行レール5aに乗り移らせる時の各移動台車同士の前部と後部は隙間なく接触している必要から後押し運転となる。
また、移動台車22,61a,61b,61c及び車両群11はレールに案内されて走行移動するレールに限らず、通路上をタイヤで移動する構造、あるいはチエン等で牽引させて駆動する構造にしてもよいもので、本発明はこれらの走行方式で移動させる場合も含むものである。
さらに、連結手段30は、連結機構31,32での構成を主体に実施例を示したが、前側の移動台車22の後面22aから後側の移動台車22の前面22bそれぞれに、連結ピンを取り付けることのできる構造とし、ピン孔を設けた平板状をした一枚の連結片で構成することもできる。
この場合の連結手段30としては、移動台車22,22…の前後の面において、それぞれ左右(曲線の内側と外側)に分かれて設けられている左右1対の連結機構31と前記のピン孔を設けた平板状をした一枚の連結片のピン孔を長孔にしたものにより構成してもよい。
また、クランク状のように方向転換する向きが2方向となる場合の別の前記連結手段30は、移動台車22,22…の前後の面において、それぞれ左右(曲線の内側と外側)に分かれて設けられている左右1対共、前記のピン孔を設けた平板状をした一枚の連結片のピン孔を長孔にしたものにより構成してもよい。