JP4922117B2 - 画像形成装置及び画像形成装置の制御方法 - Google Patents

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Description

この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に搭載される、誘導加熱方式を用いた、定着装置及び定着装置の制御方法に関する。
近年電子写真方式の複写機やプリンタ等の画像形成装置に使用される誘導加熱方式の定着装置がある。この誘導加熱方式の定着装置は、誘導加熱コイルを用いて、定着装置の金属層に渦電流を発生させて定着装置を発熱させている。そして従来は、誘導加熱コイルに供給する電力をオン・オフ制御して定着装置の温度を一定に保持する装置がある。
但し、画像形成装置をクイックスタートしあるいは、消費エネルギーを節約する観点から、熱容量の小さい定着装置を用いる場合がある。このように熱容量の小さい定着装置の場合、誘導加熱コイルの供給電力をオン・オフ制御するのみでは、定着装置の温度変動が大きくなる。このため定着性能に悪影響を生じるおそれがある。そこで誘導加熱コイルの供給電力をより細かく制御するように、CPUを用いて、高電力側は、インバータ回路のスイッチング素子の制御をオン幅制御し、小電力側は、インバータ回路のスイッチング素子をON−OFF制御して、誘導加熱コイルに供給する電力量を可変して、定着装置の温度をよりなめらかにするよう制御する装置もある(例えば特許文献1)。
日本特許特開2002−231427号公報((0084)〜(0104)カラム、図11)
しかしながら特許文献1では、電力を平均化するために、小電力についてスイッチング素子をON−OFF制御するものであり、誘導加熱コイルへの供給電力は、あくまでも電力を可変して行っている。このため、CPUの処理速度によっては、瞬時に供給電力を調整制御できない恐れがある。この様な制御遅れにより、定着装置の温度リップルが拡大し、更にはオーバーシュートを生じるおそれがある。定着装置がオーバーシュートすると、高温オフセットを原因とする画質の劣化を生じる可能性がある。更には、CPUが制御不能になるおそれもあり、安全上十分とはいえない。
このため、誘導加熱方式の定着装置において、誘導加熱コイルへの供給電力を調整制御して、熱容量の小さい定着装置であっても、均一な定着温度を保持し、高画質の定着画像を得る画像形成装置の定着装置の開発が望まれる。しかも十分な安全性を得て、信頼性の高い画像形成装置の定着装置の開発が望まれる。
そこで本発明は上記課題を解決するものであり、発熱部材の熱容量の大きさにかかわらず、発熱部材の温度変動を低減し、定着性能を向上して高画質を得るとともに、安全性の高い画像形成装置及び画像形成装置の制御方法を提供することを目的とする。
本発明は上記課題を解決するための手段として、金属導電層を有する発熱部材と、前記発熱部材の周囲に配置される誘導電流発生コイルと、前記誘導電流発生コイルに電力を出力する電力供給部と、前記発熱部材の周囲に配置される温度センサと、画像形成装置全体を制御し第1の基準温度と前記温度センサの検知結果とを比較して前記電力供給部の出力を制御する制御部と、第2の基準温度と前記温度センサの検知結果とを比較して前記電力供給部をスイッチングするオンオフ回路とを有するものである。
本発明によれば、発熱部材をより適した電力量でより高精度に温度制御出来、発熱部材の表面温度を一定温度に容易に保持して、定着性能向上及び電力の節約を得る。且つ制御遅れを防止して、発熱部材の温度制御の安全性を高めることが出来る。
以下この発明の実施例について図1乃至図9を参照して詳細に説明する。図1はこの発明の実施例の画像形成装置1を示す概略構成図である。画像形成装置1は、原稿を読み取るスキャナ部6及び、画像を形成するプリンタ部2並びにシート紙Pを供給する給紙部3を備えている。スキャナ部6は、上面に設けられる自動原稿送り装置4により供給される原稿を読み取り、読み取った画像情報を、アナログ信号に変換する。
プリンタ部2は、矢印q方向に回転される転写ベルト10aに沿って、イエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像形成ステーション18Y、18M、18C、18Kがタンデムに並べられた画像形成ユニット10を備える。更に画像形成ユニット10は、各色の画像形成ステーション18Y、18M、18C、18Kの感光体ドラム12Y、12M、12C、12Kに画像情報に応じたレーザビームを照射するレーザ露光装置19を備える。更にプリンタ部2は、定着装置11、排紙ローラ40を備え、定着後のシート紙Pを排紙部5に搬送する排紙搬送路41を有している。
画像形成ユニット10のイエロ(Y)の画像形成ステーション18Yは、矢印r方向に回転する感光体ドラム12Yの周囲に、帯電器13Y、現像装置14Y、転写ローラ15Y、クリーナ16Y、除電器17Yを配置してなっている。マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像形成ステーション18M、18C、18Kは、イエロ(Y)の画像形成ステーション18Yと同様の構成とされる。
給紙部3は第1及び第2の給紙カセット3a、3bを備える。給紙カセット3a、3bから、画像形成ユニット10に至るシート紙Pの搬送路7には、給紙カセット3a、3bからシート紙Pを取り出すピックアップローラ7a、7b、分離搬送ローラ7c、7d、搬送ローラ7e及びレジストローラ8が設けられる。
プリント操作開始により、プリンタ部2のイエロ(Y)の画像形成ステーション18Yでは、感光体ドラム12Yが矢印r方向に回転され、帯電器13Yにより一様に帯電される。次いで感光体ドラム12Yは、レーザ露光装置19により、スキャナ部6で読取ったイエロの画像情報に対応する露光々を照射され静電潜像を形成される。この後感光体ドラム12Yは現像装置14Yによりトナーを供給され、感光体ドラム12Y上にイエロ(Y)のトナー像が形成される。このイエロ(Y)のトナー像は、転写ローラ15Y位置で、転写ベルト10a上を矢印q方向に搬送されるシート紙Pに転写される。トナー像を転写終了後、感光体ドラム12Yはクリーナ16Yにより残留トナーをクリーニングされ、除電器17Yにより感光体ドラム12Y表面を除電され、次のプリント可能とされる。
マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像形成ステーション18M、18C、18Kにおいても、イエロ(Y)の画像形成ステーション18Yと同様にして、トナー像を形成する。画像形成ステーション18M、18C、18Kで形成された各色のトナー像は、各転写ローラ15M、15C、15K位置にて、イエロのトナー像を形成されたシート紙Pに順次転写される。このようにしてカラートナー像を形成されたシート紙Pは、定着装置11により加熱加圧定着されプリント画像を完成され排紙部5に排紙される。
次に定着装置11について述べる。図2は、定着装置11を示す概略構成図である。定着装置11は、発熱部材であるヒートローラ20とプレスローラ30を有する。ヒートローラ20とプレスローラ30はそれぞれ直径40mmとされる。ヒートローラ20は、定着モータ36により矢印s方向に駆動される。プレスローラ30は、スプリング44を有する加圧機構によりヒートローラ20に加圧接触される。これによりヒートローラ20及びプレスローラ30間に一定幅のニップ37が形成される。プレスローラ30は、ヒートローラ20に従動して矢印t方向に回転される。
ヒートローラ20は、芯金20aの周囲に厚さ5mmの発泡ゴム(スポンジ)20b、ニッケル(Ni)からなる厚さ40μmの金属導電層20c、厚さ200μmのソリッドゴム層20d及び、厚さ30μmの離型層20eを有している。金属導電層20cは、ニッケルに限らず、ステンレス、アルミニウム、あるいはステンレスとアルミニウムの複合材等であっても良い。金属導電層20c、ソリッドゴム層20d及び、離型層20eは、これ等を一体として、発泡ゴム(スポンジ)20bに接着しないで、発泡ゴム(スポンジ)20bに対してスライド可能となるように構成しても良い。
プレスローラ30は、芯金30a周囲に、シリコンゴム層30b及び、離型層30dを被覆して構成される。
更にヒートローラ20の外周には、剥離爪54、誘導電流発生コイルである誘導加熱コイル50、温度センサであるサーモパイル式の赤外線センサ56及び、サーモスタット57が設けられる。剥離爪54は、定着後のシート紙Pがヒートローラ20に巻きつくのを防止する。剥離爪54は、接触式あるいは非接触式のいずれであっても良い。誘導加熱コイル50は、ヒートローラ20の外周に所定のギャップを介して設けられ、ヒートローラ20の金属導電層20cを発熱させる。赤外線センサ56は、非接触でヒートローラ20のほぼ中央部の表面温度を検出し電圧に変換する。サーモスタット57は、ヒートローラ20の表面温度の異常を検知して、誘導加熱コイル50への電力供給を強制的にオフする。サーモスタット57は、例えば後述するCPU62の暴走等によりヒートローラ20の表面温度が上昇し、あらかじめ設定された第3の基準温度に達した場合に、誘導加熱コイル50への電力供給を強制的にオフする。
誘導加熱コイル50は、ヒートローラ20と略同軸形状を有し、ヒートローラ20に磁束を集中させるための磁性体コア52に線材を周回して形成されている。線材として、例えば耐熱性のポリアミドイミドで被覆して、お互いに絶縁された銅線材を複数本束ねて構成されるリッツ線を用いている。線材をリッツ線とすることにより、線材の径を磁界の浸透深さより小さくすることが出来る。これにより線材に高周波電流を有効に流すことが可能になる。本実施例においては、直径0.5mmの銅線材を19本束ねてリッツ線としている。
この様なリッツ線に所定の高周波電流を供給すると、誘導加熱コイル50は磁束を発生する。この磁束により、金属導電層20cに、磁界の変化を妨げるように渦電流を発生させる。この渦電流と金属導電層20cの抵抗値によりジュール熱が発生して、ヒートローラ20は瞬時に発熱される。
次にヒートローラ20を発熱させる誘導加熱コイル50の制御系70について図3を参照して述べる。制御系70は、二次側70aに、オンオフ回路である温度比較回路61及び、制御部であるCPU62を有する。制御系70は、一次側70bに、電力供給部であり誘導加熱コイル50に駆動電力を供給するインバータ回路71、商用交流電源76からの電流を整流してインバータ回路71に供給する整流回路72、コイル制御回路73、整流回路72の出力を検出して、電力が一定になるようにフィードバックする電力検出回路74及びヒューズ75を有する。
二次側70aの温度比較回路61並びにCPU62からの信号は、フォトカプラ64を介して、一次側70bのコイル制御回路73に送信される。フォトカプラ64を使用することにより、制御系70の二次側70aと一次側70bとを絶縁できる。
温度比較回路61からコイル制御回路73には、インバータ回路71による電力供給をオンあるいはオフするよう指示する信号を送る。CPU62からコイル制御回路73には、インバータ回路71からの電力供給を調整するよう指示する信号を送る。制御系70の二次側70aからフォトカプラ64に信号が送られると、フォトカプラ64がオンすることで、コイル制御回路73、更にインバータ回路71が作動し、誘導加熱コイル50に高周波電流が流され、電力値を調整され、更には高周波電力がオフされる。
温度比較回路61は、CPU62による誘導加熱コイル50への出力値が、調整可能な最低出力値になっても、ヒートローラ20が、第2の基準温度を超えてしまった場合に作動する。温度比較回路61は、図4に示すように、基準値入力端子42から入力される第2の基準温度に相当する基準電圧と、測定値入力端子43から入力される赤外線センサ56の検知結果に相当する検知電圧とを比較するコンパレータ45を有する。コンパレータ45で、検知電圧が基準電圧を超えた場合、温度比較回路61は、フォトカプラ64にオフ信号を送る。コンパレータ45で、検知電圧が基準電圧未満の場合、温度比較回路61は、フォトカプラ64へのオン信号を出力する。第2の基準温度は、変動可能であり、例えば後述する第1の基準温度との相対的な関係に従い設定される。
CPU62は、画像形成装置1全体を制御すると共に、フォトカプラ64に送る信号のビット値を変えることで、インバータ回路71が誘導加熱コイル50に供給する高周波電力を調整するよう、コイル制御回路73に指示する。コイル制御回路73は、赤外線センサ56の検出結果に応じてインバータ回路71により誘導加熱コイル50に供給する電力である高周波電力をフィードバック制御する。CPU62は、第1の基準温度と、赤外線センサ56の検知結果とを比較して、フォトカプラ64へ送る信号を制御する。第1の基準温度は、定着装置11の各種モード時のヒートローラ20の制御温度に応じて、予め、複数設定される。
赤外線センサ56の検知結果が第1の基準温度未満の場合、CPU62は、誘導加熱コイル50に供給する電力を増加するよう制御する。赤外線センサ56の検知結果が第1の基準温度より大きい場合、CPU62は、誘導加熱コイル50に供給する電力を低減するよう制御する。CPU62は、第1〜第3の基準温度等を記憶するメモリ62aを有する。
インバータ回路71は、例えば図5に示す、準E級インバータ回路71aあるいは、図6に示す、ハーフブリッジインバータ回路71b等を用いることが可能である。本実施例で、例えばハーフブリッジインバータ回路71bを用いた場合、商用交流電源76をダイオードブリッジからなる整流回路72で整流する。整流した電流の駆動周波数を、ハーフブリッジインバータ回路71bにより、変動する。ハーフブリッジインバータ回路71bは、CPU62から信号を受けたコイル制御回路73により駆動されるドライバ84により制御される。
即ちドライバ84により、2個の直列に接続されたスイッチングトランジスタ82、83を交互に通電する。これにより直列共振回路の誘導加熱コイル50と、共振コンデンサ86に高周波電流を供給する。高周波電流の動作周波数は、商用交流電源76から整流回路72にいたる間の電流を検知するカレントトランス87の電流値がCPU62に指示された電流値となるよう、スイッチングトランジスタ82、83のオン・オフ時間を制御する。カレントトランス87の電流値をCPU62に指示された電流値と一致させることにより所望の動作周波数を得られる。これにより、誘導加熱コイル50に供給する電力を所望の電力値に調整出来る。
尚制御系70の一次側70bのインバータ回路71として、図5に示すように、準E級インバータ回路71aを用いても良い。準E級インバータ回路71aは、単一のスイッチング素子77のオン−オフ時間をコイル制御回路73で制御して、誘導加熱コイル50に供給する電流の駆動周波数を変動する。駆動周波数を変動することで、誘導加熱コイル50に供給する電力を調整可能となる。
次に、制御系70による、ヒートローラ20の温度制御及び、基準温度の設定について述べる。画像形成装置1の待機モードにおいては、第1の基準温度であるヒートローラ20のローラ制御温度はCPU62によりあらかじめ例えば150℃に設定される。この待機モード時、インバータ回路71により誘導加熱コイル50には500Wの電力が供給される。又、画像形成装置1の定着モードにおいては、第1の基準温度であるヒートローラ20のローラ制御温度は、CPU62によりあらかじめ例えば170℃に設定される。この定着モード時、インバータ回路71により誘導加熱コイル50には900Wの電力が供給される。
電源投入によりウォーミングアップが開始されると、誘導加熱コイル50には、インバータ回路71により、先ず例えば900Wの電力が供給される。これによりヒートローラ20が制御温度まで加熱されたら、その後、誘導加熱コイル50には、インバータ回路71により500Wの電力が供給されることとなる。ヒートローラ20が待機モードの制御温度に達すると、CPU62は、ヒートローラ20が制御温度150℃を保持するように、赤外線センサ56の検知結果に応じて、コイル制御回路73を制御する。これによりインバータ回路71は誘導加熱コイル50に供給する電力値を調整する。又印刷命令により、画像形成装置1が定着モードになり、ヒートローラ20が定着モードの制御温度に達すると、CPU62は、ヒートローラ20が制御温度170℃を保持するように、赤外線センサ56の検知結果に応じて、コイル制御回路73を制御する。これによりインバータ回路71は誘導加熱コイル50に供給する電力値を調整する。
次にヒートローラ20を第1の基準温度に保持するための温度制御について述べる。ヒートローラ20の温度制御は、CPU62による誘導加熱コイル50に供給する電力値の調整制御と、温度比較回路61による誘導加熱コイル50への電力のオン・オフ制御の2段階で行われる。いずれも赤外線センサ56によりヒートローラ20の表面温度を検知して、フィードバック制御する。
図7に、先ず温度比較回路61の第2の基準温度を設定するためのフローチャートを示す。温度制御操作を開始すると、定着装置11のモードに応じてメモリ62aから、第1の基準温度である制御温度を読み出す(ステップ100)。定着装置11が待機モードであれば、メモリ62aから制御温度150℃を読み出す一方、定着装置11が定着モードであれば、制御温度170℃を読み出す。次いで赤外線センサ56による、ヒートローラ20の表面温度の検知結果に相当する検知電圧を獲得する(ステップ101)。
この後、後述する図8に示すフローチャートに従い、CPU62により、誘導加熱コイル50に供給する電力値を設定する(ステップ102)。ステップ102で設定された電力値が、誘導加熱コイル50への出力調整が可能な、最低限度である最低出力値(例えば200W以下)で有るかを比較する(ステップ103)。設定された誘導加熱コイル50に供給する電力値が、最低出力値であれば、ステップ104に進み第2の基準温度を、第1の基準温度と同じとなるように設定変更する。例えば定着モードの場合、第2の基準温度を、制御温度である170℃と同じ温度に設定変更する。この後図9に示す温度比較回路制御ルーチンに進む(ステップ106)。
これは後述するCPU62による、供給電力の調整制御では、電力値が調整可能な最低出力値(例えば200W以下)に達すると、それ以下には電力値を下げることができない、ということを考慮したものである。例えば、通常ヒートローラ20の表面温度が、目標とする制御温度より高ければ、CPU62によるインバータ回路71からの供給電力を徐々に低減することにより制御温度を保持する。但し供給電力を200Wまで低減してもヒートローラ20の表面温度が、目標とする制御温度を越えている場合には、電力値をこれ以上低減できず、電力値の調整による温度制御が不能となる。従ってこの様に電力値が調整可能な最低出力値に達している場合は、CPU62に代わって温度比較回路61により温度制御を行う。このため、第2の基準温度を、制御温度である170℃と同じになるように設定変更しておき、ヒートローラ20の表面温度が170℃に達したら、直ちに温度比較回路61により、インバータ回路71をオフ制御する。この様にすることによりヒートローラ20を、制御温度に保持する。
一方図7のステップ103で、設定された電力値が、最低出力値で無ければ、ステップ107に進み第2の基準温度を、(第1の基準温度+20℃)となるように設定する。即ち例えば定着モードの場合、通常は第2の基準温度は、制御温度より20℃高い190℃に設定される。この後図9に示す温度比較回路制御ルーチンに進む(ステップ108)。
これは、ヒートローラ20の温度制御を、先ずは後述するCPU62の、供給電力の調整制御により行うためである。即ち温度比較回路61による制御は、CPU62によるヒートローラ20の温度制御が十分でない場合に、次にとる制御手段としている。このため、CPU62の制御に先立ち、温度比較回路61が先に作動しないように、第2の基準温度を、制御温度より20℃高く設定する。尚この実施例にて、通常設定される第2の基準温度(例えば190℃)は、トナー定着時に画像性能に問題を生じる事のない、温度の上限値としている。第2の基準温度をこのように設定すれば、CPU62により温度調整制御可能な温度領域が広くなる。
次にヒートローラ20を第1の基準温度に保持するための、CPU62による、インバータ回路71の電力値の調整制御(ステップ102に相当)について述べる。図8に、フローチャートを示す。例えば定着モード時に、ヒートローラ20を制御温度170℃に保持するよう、電力値調整制御ルーチンがスタートされる(ステップ110)。メモリ62aから、第1の基準温度である、定着モード時の制御温度(170℃)をCPU62に入力する(ステップ111)。赤外線センサ56からの検知結果を電圧として獲得する(ステップ112)。制御温度(170℃)と検知結果とを比較して(ステップ113)、検知結果が制御温度未満であればステップ114に進む。
ステップ114では、検知結果が、制御温度に対して、単位時間当たりどの位低下したかに応じて、インバータ回路71から誘導加熱コイル50に供給する電力値を設定する。例えば、ヒートローラ20の表面温度が1秒間で5℃低下した場合には、供給電力を100W増加するよう設定して、誘導加熱コイル50に、1000Wを供給するよう設定する。即ちCPU62は、フォトカプラ64を介して、一次側70bのコイル制御回路73に制御信号を送る。これによりコイル制御回路73に駆動されるインバータ回路71が、誘導加熱コイル50に供給する電力を増加するよう調整制御され、誘導加熱コイル50に1000Wの電力が供給される(ステップ116)。この後ステップ112に戻り、ヒートローラ20の温度制御を繰り返す。
ステップ113で、検知結果が制御温度より大きければステップ117に進む。ステップ117では、検知結果が、制御温度に対して、単位時間当たりどの位上昇したかに応じて、インバータ回路71から誘導加熱コイル50に供給する電力を設定する。例えば、ヒートローラ20の表面温度が1秒間で10℃上昇した場合には、供給電力を200W低減するよう設定して、誘導加熱コイル50に、700Wを供給するよう設定する。CPU62は、フォトカプラ64を介して、コイル制御回路73に制御信号を送る。コイル制御回路73に駆動されるインバータ回路71が、誘導加熱コイル50に供給する電力を低減するよう調整制御され、誘導加熱コイルに700Wの電力が供給される(ステップ118)。この後ステップ112に戻り、ヒートローラ20の温度制御を繰り返す。
即ちヒートローラ20の制御温度のために、インバータ回路71をオン・オフ制御するのではなく、インバータ回路71の出力電圧を調整制御する。尚、画像形成装置1が待機モードの場合においても、同様にして、インバータ回路71の出力値を調整制御する。但しこの実施例では、待機モードの時のヒートローラ20の制御温度は150℃とされる。
尚、インバータ回路71の調整制御は、ヒートローラ20の温度変動率に応じて調整することに限定されない。例えば、ヒートローラ20の表面温度が制御温度に到達した場合には供給電力を一定量低減する一方、制御温度より所定温度低下した場合には供給電力を一定量増加する、というように調整制御しても良い。
次にヒートローラ20を第1の基準温度に保持するために、温度比較回路61により、誘導加熱コイル50に供給する電力をオン・オフ制御する場合について述べる。この温度比較回路61による供給電力のオン・オフ制御は、CPU62による、供給電力値の調整制御を行っても、ヒートローラ20の表面温度を制御しきれなかった場合に行う。これにより、ヒートローラ20の温度リップルを低減して定着性向上を得ると共に、画像形成装置1の安全性を向上する。図9にフローチャートを示す。
図7のステップ104あるいはステップ107で設定された条件にて、温度比較回路制御ルーチンがスタートされる(ステップ120)。この時、ヒートローラ20の表面温度が制御温度を超えていて、誘導加熱コイル50に供給する電力値が、最低出力値まで低減されていたとする。この場合、例えば定着モード時であれば、第2の基準温度は、定着モード時の170℃と同じ温度に変更されている。一方、誘導加熱コイル50に供給する電力値が、最低出力値より大きい場合には、第2の基準温度は、定着モード時の170℃+20℃=190℃に設定される。この様な状態において赤外線センサ56からの検知結果を電圧として獲得する(ステップ121)。
次いでステップ104あるいはステップ107で設定された第2の基準温度と検知結果とを比較して(ステップ122)、検知結果が第2の基準温度より大きければステップ123に進む。ステップ123では、温度比較回路61は、コイル制御回路73にオフ信号を出力して、インバータ回路71による誘導加熱コイル50への電力供給をオフする。この後ステップ121に戻る(ステップ124)。
即ちステップ123では、温度比較回路61は、インバータ回路71による誘導加熱コイル50への電力供給をオフする。この温度比較回路61による誘導加熱コイル50への電力供給のオフ制御は、CPU62を介していないので、制御速度が速い。従って、CPU62による電力値調整制御速度が遅い時に、温度比較回路61が作動することにより、ヒートローラ20を迅速に温度制御でき、ヒートローラ20の温度リップルを防止できる。
例えば熱容量が小さいヒートローラ20にあっては、ヒートローラ20表面の温度変動が急激となる。このため、CPU62による電力値調整の制御が遅いと、ヒートローラ20は、目標とする制御温度を大きく超える恐れがある。この様な場合に、温度比較回路61により、直ちに供給電力をオフ制御すれば、ヒートローラ20の温度リップルを有効に防止出来る。この結果、良質の定着画像を得られる。又例えば、CPU62が別の動作を行っている間にあっては、ヒートローラ20の温度制御のための処理速度が遅くなる場合がある。そしてCPU62による処理速度が遅くなると、ヒートローラ20は制御温度を超えるおそれがある。この様な場には、ヒートローラ20が第2の基準温度に達すると、温度比較回路61により、直ちに供給電力をオフ制御する。従って温度リップルを低減出来良質の定着画像を保持可能となる。
更には例えばCPU62による電力値調整制御が不能となった場合でも、ヒートローラ20が第2の基準温度に達すると、温度比較回路61は、直ちに供給電力をオフ制御する。従って、ヒートローラ20は異常温度まで加熱される恐れがない。しかも温度比較回路61は、コンパレータ45を用いるのみであることから、故障が極めて少なく、画像形成装置1の安全性をより確実に得ることとなる。
一方ステップ122で、検知結果が第2の基準温度未満であればステップ126に進む。ステップ126では、温度比較回路61は、コイル制御回路73にオン信号を出力して、インバータ回路71による誘導加熱コイル50への電力供給をオンする。この後図7のステップ100に戻る(ステップ127)。
このようにCPU62及び温度比較回路61により、ヒートローラ20の温度制御を行う間に、不具合により、インバータ回路71の制御が不能となった場合は、サーモスタット57が作動する。即ちヒートローラ20の表面温度が第2の基準温度に達しても温度比較回路61が作動せず、ヒートローラ20の表面温度が第3の基準温度に達すると、サーモスタット57は温度異常を検知して、インバータ回路71を強制的にオフする。これにより、ヒートローラ20は異常に発熱されることが無く、画像形成装置1の安全性のいっそうの向上を得られる。
この実施例の定着装置11によれば、誘導加熱コイル50の制御系70は、CPU62制御により、インバータ回路71による誘導加熱コイル50に供給する電力値を調整制御している。従って、ヒートローラ20をより適した電力量でより高精度に温度制御可能となる。これによりヒートローラ20の表面温度をより温度リップルの少ない一定温度に容易に保持出来、定着性能の向上を図れ、更には電力の節約を得られる。
更に、誘導加熱コイル50の制御系70は、温度比較回路61を備え、インバータ回路71による誘導加熱コイル50に供給する電力値をオン・オフ制御して、CPU62による電力値の調整制御をカバーしている。温度比較回路61は、ヒートローラ20の熱容量が小さい場合、あるいはCPU62の制御速度が遅い場合等に、CPU62より先に作動する。この温度比較回路61による迅速なオン・オフ制御により、CPU62の制御の遅れを原因とする温度リップルを防止でき、定着性能を良好に維持できる。しかも構造が簡単な温度比較回路61は故障が少なく、ヒートローラ20の温度制御の安全性を高めることが出来る。
尚この発明は、上記実施例に限られるものではなく、この発明の範囲内で種々変更可能である。例えば発熱部材の制御温度を含む第1〜第3の基準温度は、画像形成装置の性能、あるいは定着装置の特性等に応じて任意であるし、誘導電流発生コイルに供給する電力値も、定着装置の熱容量等に従い任意である。又、誘導加熱コイルは単体でなく、複数個に分割して、発熱部材の所定の領域をそれぞれに発熱させるようにしても良い。
例えば、図10に示す変形例のように、第1の誘導加熱コイル150によりヒートローラ20の中央部を発熱し、直列に接続される第2及び第3の誘導加熱コイル151、152によりヒートローラ20の両側部を発熱しても良い。この変形例では、第1のセンサ157による検知結果をフィードバックして、CPU62と第1の温度比較回路154とで、第1の誘導加熱コイル150の電力制御を行う。又、第2のセンサ158による検知結果をフィードバックして、CPU62と第2の温度比較回路156とで、第2及び第3の誘導加熱コイル151、152の電力制御を行うこととなる。又このように複数の誘導加熱コイル150−152を用いる場合に、ヒートローラ20の表面温度を全長にわたり均一にするために、CPU62は、第1及び第2のセンサ157、158の検知結果を比較して、ヒートローラ20の表面温度が低い側の誘導加熱コイルに電力を供給するように制御する等も可能である。
本発明の実施例の画像形成装置を示す概略構成図である。 本発明の実施例の定着装置を示す概略構成図である。 本発明の実施例の誘導加熱コイルの制御系を示す概略ブロック図である。 本発明の実施例の温度比較回路を示すブロック図である。 本発明の実施例の制御系の一部に準E級インバータ回路を用いる状態を示す概略構成図である。 本発明の実施例の制御系の一部にハーフブリッジインバータ回路を用いる状態を示す概略構成図である。 本発明の実施例の第2の基準温度を設定する方法を示すフローチャートである。 本発明の実施例のCPUによるヒートローラの温度制御を示すフローチャートである。 本発明の実施例の温度比較回路によるヒートローラの温度制御を示すフローチャートである。 本発明の変形例の誘導加熱コイルの制御系を示す概略ブロック図である。
符号の説明
1…画像形成装置
2…プリンタ部
10…画像形成ユニット
10a…転写ベルト
11…定着装置
20…ヒートローラ
20c…金属導電層
30…プレスローラ
36…定着モータ
40…加圧機構
44…スプリング
50…誘導加熱コイル
56…赤外線センサ
57…サーモスタット
61…温度比較回路
62…CPU
62a…メモリ
64…フォトカプラ
70…制御系
70a…二次側
70b…一次側
71…インバータ回路
71b…ハーフブリッジインバータ回路
73…コイル制御回路
74…電力検出回路
84…ドライバ
87…カレントトランス

Claims (7)

  1. 金属導電層を有する発熱部材と、
    前記発熱部材の周囲に配置される誘導電流発生コイルと、
    前記誘導電流発生コイルに電力を出力する電力供給部と、
    前記発熱部材の周囲に配置される温度センサと、
    画像形成装置全体を制御し第1の基準温度と前記温度センサの検知結果とを比較して前記電力供給部の出力を制御する制御部と、
    第2の基準温度と前記温度センサの検知結果とを比較して前記電力供給部をスイッチングするオンオフ回路とを具備することを特徴とする画像形成装置
  2. 前記第2の基準温度は、前記第1の基準温度より高く設定されることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置
  3. 前記制御部は、前記第1の基準温度と前記温度センサの検知結果との差に応じて前記電力供給部の出力を変動するよう制御することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の画像形成装置
  4. 前記制御部は、前記電力供給部の出力が、調整可能限度の最低出力である場合に、前記温度センサからの検知結果が所定温度を超えたら、前記第2の基準温度の設定を前記第1の基準温度と同じになるように変更することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の画像形成装置
  5. 発熱部材周囲の誘導電流発生コイルへの供給電力を調整するための制御に用いる第1の基準温度及び、前記誘導電流発生コイルへの供給電力をスイッチングするための第2の基準温度を設定する工程と、
    前記第1の基準温度と前記発熱部材の温度とを比較する工程と、
    前記第1の基準温度と前記発熱部材の温度との比較結果から、前記誘導電流発生コイルへの前記供給電力を調整するよう制御する工程と、
    前記第2の基準温度と前記発熱部材の温度とを比較する工程と、
    前記第2の基準温度と前記発熱部材の温度との比較結果から、前記誘導電流発生コイルへの前記供給電力をスイッチングする工程とを具備することを特徴とする画像形成装置の制御方法。
  6. 前記第2の基準温度を、前記第1の基準温度より高く設定することを特徴とする請求項5記載の画像形成装置の制御方法。
  7. 前記誘導電流発生コイルへの前記供給電力が、調整可能限度の最低出力である場合に、前記発熱部材の温度が所定温度を超えたら、前記第2の基準温度の設定を前記第1の基準温度と同じになるように変更することを特徴とする請求項5又は請求項6記載の画像形成装置の制御方法。
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