JP4918818B2 - 車両用走行支援装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両の外部環境情報を取得して走行支援を行う車両用走行支援装置に関する。
従来から、車両外部の情報を取得してステアリング制御を自動で行う車両用操舵装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この車両用操舵装置は、車両外部の情報として走行中の道路の前方車線状態を検知することによって車線維持に必要な目標舵角を算出する。そして、自動運転の途中にドライバーの意思による介入を受けてステアリングに操舵力が加えられると、その操舵量に応じて目標舵角に介入操舵角が付け加えられて、前輪を転舵させるものである。
特開平9−207800号公報
しかしながら、車両外部の情報が必ずしも正しい情報とは限らないため、自動運転中に運転者の介入操作があったとしても、上述の従来技術のように、車両外部の情報に基づき算出された目標値に介入操作量を単に付け加えるのではなく、車両外部の情報を勘案した上で自動運転と運転者の介入操作のどちらに重み付けすればよいのかを決定することが望ましい。
そこで、本発明は、自動運転中に運転者の介入操作があった場合であっても、当該介入操作を適切に処理して自動運転を実行することができる車両用走行支援装置の提供を目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の車両用走行支援装置は、
車両外部の環境情報を取得することにより車両の走行支援を行う車両用走行支援装置であって、
前記環境情報に応じて車両の走行支援に必要な走行支援制御量を決定する制御量決定手段と、
前記環境情報の信頼性を評価する環境情報評価手段とを備え、
運転者の介入操作があり且つ前記環境情報評価手段によって前記信頼性が高いと判断される場合、前記制御量決定手段によって決定された走行支援制御量を小さくする、ことを特徴とする。
本発明によれば、自動運転中に運転者の介入操作があった場合であっても、当該介入操作を適切に処理して自動運転を実行することができる。
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。本実施形態の車両用走行支援装置は、車両に搭載され、車両の外部から情報を得ながら車両の走行速度や走行位置などの走行状態を制御するシステム(例えば、インフラ協調自動運転システム)に適用可能である。
図1は、本実施形態の車両用走行支援装置を適用するインフラ協調自動運転システムを説明するための図である。車両100は、走行路50の路面に走行方向に沿って所定間隔毎に設置された磁気マーカMを通過するごとに、車両100に搭載したマーカセンサ(磁気センサ)から出力される磁気マーカMと車両100との相対的な位置関係を反映した検出信号に基づいて車両100の走行路50における横変位(磁気マーカMからの横変位(走行路50の面に水平で走行方向に垂直な方向))を検出している。そして、車両100がこの磁気マーカ通過ごとに検出される横変位に基づいて走行路50から外れないように、本実施形態の車両用走行支援装置がドライバーの操作によらずとも自動的に操舵制御を実行する。なお、GPS装置によって検出される車両位置データに基づいて、走行路50における横変位を検出することも可能である。GPS装置は、GPS受信機によるGPS衛星からの受信情報に基づいて、自身を搭載する車両の位置を2次元若しくは3次元の座標データによって特定する装置である。また、走行路50に予め目標速度が設定されている場合には、車両100の走行速度はその目標速度に追従するように自動制御される。車両100の実走行速度を目標速度に追従させる自動制御は、例えば、その目標速度に追従するように作成された走行速度パターンに従って行われる。
また、車両100は、車外からの所定の情報を取得可能にする無線通信機能を備えてもよい。走行路50には所定距離間隔毎に通信コイル(201,202,203,・・・)が車両の走行方向に沿って並べて敷設されている。通信コイルは、走行路50上に存在する車両100と通信可能な範囲に敷設され、例えば、道路脇に設置されたり路面下に埋設されたりする。各通信コイルは、適当な地点に所在する道路管理センタ300に接続される。
通信コイルは、走行路50を走行する自動運転車両100と道路管理センタ300との間でやり取りされるデータ(路車間通信データ)を送受信するためのアンテナである。通信コイルの具体例として、ループアンテナ、ダイポールアンテナ、ビームアンテナなどが挙げられる。
道路管理センタ300は、走行路50に関する情報を有し、通信コイルを介してそのような情報を車両100に伝送する施設である。通信施設200が走行路50上の車両100に伝送する情報として、例えば、走行路50上の工事情報や事故情報や特定区間における走行速度規制情報などが挙げられる。本実施形態の車両用走行支援装置は、走行路50に関するこれらの情報に基づいて、ドライバーの操作によらずとも自動的に操舵制御を実行する。また、道路管理センタ300は、路車間通信データを受信した通信コイルを特定することによって、車両100が走行路50上のどの地点を走行しているのかを認識することも可能である。また、道路管理センタ300は、車両100の走行を遠隔制御して、車両100の自動操舵運転を制御するようにしてもよい。
ところで、上述のような自動操舵制御中にドライバーがステアリング操作をして自動操舵制御に介入する場合(例えば、前方に障害物を見つけそれを回避するためにステアリング操作をした場合)、すでに自動操舵制御により操舵系には或る制御量が与えられているため、ドライバーのステアリング操作に基づく操舵量をどのように処理すればよいかが問題となる。
そこで、その点を鑑み、本発明に係る車両用走行支援装置の実施形態は、図2に示されるような構成を有する。図2は、本発明に係る車両用走行支援装置の一実施形態を示した図である。以下、各構成について説明する。
マーカセンサ11は、図1に示した磁気マーカMの発する磁界の強さに応じた検出信号を出力する。磁気マーカMから離れるほど、マーカセンサ11によって検出される磁界の強さは弱い。したがって、マーカセンサ11は、走行路50に沿って離散的に設置された各磁気マーカ上を車両が通過するときにはその磁気マーカとの車幅方向における相対的な位置関係に応じた検出信号を出力する。その検出信号に基づいて、制御装置1は車両の横位置Dを演算する。
操舵角センサ12は、ステアリングホイール部やそのステアリングホイールに連結するメインシャフト部に備えられている。操舵角センサ12は、ドライバーがステアリングホイールを操舵したときのステアリングホイールの操舵角の大きさと操舵方向を検出する。その検出値に応じて操舵角センサ12から出力される信号に基づいて、制御装置1は操舵角MAを演算する。このとき、操舵方向は正負の符号によって表され、例えば、右操舵には+が付与され、左操舵には−が付与される。また、制御装置1は、演算された操舵角MAに基づいて操舵角MAの微分値、すなわち操舵角速度dMAを演算する。
車速センサ13は、車輪の回転を検出する。その回転に応じて車速センサ13から出力されるパルス信号に基づいて、制御装置1は自車の車速VSPを演算する。
ヨーレートセンサ19は、車両にヨー方向の回転力が作用していることを検出する。その検出値に応じてヨーレートセンサ19から出力される信号に基づいて、制御装置1はヨー運動によって発生する車両の重心点回りの角速度、すなわちヨーレートYRを演算する。
トルクセンサ4は、ドライバーがステアリングホイールを操舵したときのトーションバーのねじれの大きさと方向を検出する。ステアリングホイール側の入力軸とステアリングギヤ側(車輪側)の出力軸はトーションバーを介して連結されており、入力軸の回転検出を担当する入力側トルクセンサと出力軸の回転検出を担当する出力側トルクセンサとを有する。その回転に応じて入力側トルクセンサ及び出力側トルクセンサのそれぞれから出力される信号に基づいて、制御装置1は操舵トルクMTを演算する。
ラックバー5は、車幅方向に延在し、その両端のそれぞれがタイロッドを介して左右の車輪に接続される。ラックバー5は、ピニオン軸を介してステアリングシャフト側に接続される。
ギヤモータ7は、ステアリングシャフトやコラムシャフトなどのステアリング系シャフトに減速機を介してその回転を伝達し、ラックバー5のストローク運動を発生させる電動モータである。モータ回転角センサ8は、ギヤモータ7の回転状態を検出する。その回転に応じてモータ回転角センサ8から出力される信号に基づいて、制御装置1はギヤモータ7の回転角度θmと回転数nを演算する。
制御装置1は、上記各センサによる検出値に基づいて操舵輪が所望の舵角となるようにギヤモータ7を駆動制御する。すなわち、制御装置1によって制御されるギヤモータ7によるトルクがラックバー5に作用することによって、ラックバー5はストロークする。そのストロークによってタイロッドを介して左右車輪が転舵し、車両の操舵が行われる。
図3は、制御装置1の機能ブロック図の一例である。制御装置1は、各種演算を行うマイクロプロセッサ、プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM及び電子回路等を内部に有している。それらによって、図3に示される各構成ブロックが構成される。
基本ステア制御量演算部20は、マーカセンサ11の検出信号に基づき演算した横位置Dの大きさに対してギヤモータ7にトルクを発生させることにより操舵輪を転舵させ横位置Dを零に収束させるため、基本ステア制御量として、ギヤモータ7に流すべき電流の指令値(基本ステア制御電流指令値)Iaを決定する。基本ステア制御量演算部20は、例えば図4に示される「横位置D」と「ギヤモータ7に発生させる基本ステアトルクTQa」との関係を規定するマップに基づいて、マーカセンサ11によって検出された横位置D及び車速センサ13によって検出された車速VSPから基本ステアトルクTQaを演算し、その基本ステアトルクTQaの発生に必要な基本ステア制御電流指令値Iaを決定する。図4の基本ステアトルクマップは、横位置Dが増えるにつれて基本ステアトルクTQaが増えるように設定され、車速が速くなるにつれて基本ステアトルクTQaが減るように設定されている(VSP1<VSP2)。なお、基本ステアトルクTQaの演算をヨーレートセンサ19によって検出されたヨーレートYRによって補正してもよい。また、基本ステアトルクTQaの演算方法は特にこれに限定するものではなく、基本ステアトルクに関連する発明を本出願人は出願済みである。
ドライバー操舵量演算部21は、ドライバーのステアリング操舵に対応するトルクをギヤモータ7に発生させるために、ドライバー操舵量として、アシスト制御電流指令値Ibを決定する。ドライバー操舵量演算部21は、例えば図5に示される「操舵トルクMT」と「ギヤモータ7に発生させるアシストトルクTQb」との関係を規定するマップに基づいて、トルクセンサ4によって検出された操舵トルクMT及び車速センサ13によって検出された車速VSPからアシストトルクTQbを演算し、そのアシストトルクTQbの発生に必要なアシスト制御電流指令値Ibを決定する。
また、ドライバー操舵量演算部21は、ドライバーのステアリングホイールの操舵動作に対して抵抗(手ごたえ感)を与えることを補償するために、ダンピングステア制御電流指令値Icを決定する。ドライバー操舵量演算部21は、例えば図6に示される「操舵角速度dMA」と「ダンピングトルクTQc」との関係を規定するマップに基づいて、操舵角速度演算部23が操舵角センサ12によって検出された操舵角MAを微分することにより得られた操舵角速度dMA及び車速センサ13によって検出された車速VSPからダンピングトルクを演算し、そのダンピングトルクの発生に必要なダンピングステア制御電流指令値Icを決定する。図6のダンピングトルクマップは、ダンピングトルクが操舵方向と反対方向に作用するように設定されている。また、操舵角速度が増えるにつれてダンピングトルクが増えるように設定され、車速が速くなるにつれてダンピングトルクが増えるように設定されている(VSP1<VSP2)。
加算部25は、基本ステア制御電流指令値Iaに、アシスト制御電流指令値Ibまたはダンピングステア制御電流指令値Icを加算することにより、横位置Dを零に収束させるように演算された基本ステアトルクTQaをアシストトルクTQbまたはダンピングトルクTQcで補正したステア制御電流指令値I*を決定する。
モータ駆動部28は、PWM(Pulse Width Modulation)チョッパなどの回路であって、ステア制御電流指令値I*に基づいてギヤモータ7を駆動する。例えば、三相(U,V,W)の駆動信号(PWM信号)に従ってインバータを制御することによって、直流電力が交流電力に変換されてギヤモータ7が駆動する。すなわち、ギヤモータ7の三相巻線に三相交流電流を流すと回転磁界が発生することを利用して、ギヤモータ7の回転が制御される。
環境情報評価部29は、車速センサ13によって検出された車速情報などの車両100自体に関する情報ではなく、車両100が外部のインフラから得た情報(外部環境情報)の信頼性を所定の評価基準に従って評価する。本実施例の場合、車両100が走行路50に設置された磁気マーカMが発する磁気を検出したマーカセンサ11の検出信号や道路管理センタ300から各通信コイルを介して通信部15によって取得された路車間通信データXが外部環境情報に相当する。環境情報評価部29は、たとえば、前回得た外部環境情報と今回得た外部環境情報とを比較し、両情報の内容に所定の基準以上の差がある場合には外部環境情報は信頼性が低いと判断し、両情報の内容の差が所定の基準より小さい場合には外部環境情報は信頼性が高いと判断する。
マーカセンサ11の検出信号の信頼性を環境情報評価部29が評価する場合、当該検出信号の連続性を観点にその信頼性が評価される。磁気マーカMは所定間隔毎に走行路50に敷設されていれば、マーカセンサ11の検出信号は、正常時には、車両100の走行速度に応じて定まる一定の時間間隔で検出されることになる。したがって、環境情報評価部29は、その一定の時間間隔でマーカセンサ11の検出信号が検出されない場合には、マーカセンサ11の検出信号の信頼性は低いと判断する。また、マーカセンサ11は、各磁気マーカMの磁界強度が同一であれば、正常時には、検出毎に一定の出力電圧の検出信号を出力することになる。したがって、環境情報評価部29は、その一定の出力電圧でマーカセンサ11の検出信号が検出されない場合には、マーカセンサ11の検出信号の信頼性は低いと判断する。
一方、路車間通信データXの信頼性を環境情報評価部29が評価する場合も、当該路車間通信データXの連続性を観点にその信頼性が評価される。図1に示される各通信コイル(201,203,・・・)が所定距離間隔毎に走行路50に敷設されていれば、路車間通信データXは、正常時には、車両100の走行速度に応じて定まる一定の時間間隔で取得されることになる。したがって、環境情報評価部29は、その一定の時間間隔で路車間通信データXが取得されない場合には、路車間通信データXの信頼性は低いと判断する。また、車両100が路車間通信データXに含まれる規制速度情報に従って一定の規制速度が設定された走行路50を自動操舵走行するシステムの場合、各通信コイルが送信する路車間通信データXには、それぞれ同じ規制速度情報(例えば、規制速度40km/h)が含まれていることになる。したがって、環境情報評価部29は、規制速度の情報が変化した場合には、路車間通信データXの信頼性は低いと判断する。
それでは、本実施形態の車両用走行支援装置の動作例について説明する。
[第1の動作例]
図7は、本実施形態の車両用走行支援装置の第1の動作例を示すフローである。自動操舵制御中において、制御装置1は、マーカセンサ11によって検出された横位置Dや車速センサ13によって検出された車速VSPやヨーレートセンサ19によって検出されたヨーレートYRなどのセンサ情報を取得する(ステップ10)。制御装置1の基本ステア制御量演算部20は、ステップ10で取得したセンサ情報に基づいて基本ステア制御電流指令値Iaを演算する(ステップ12)。
一方、制御装置1のドライバー操舵量演算部21は、トルクセンサ4によって検出された操舵トルクMT及び/又は操舵角センサ12によって検出されたステアリングホイールの操舵角MAに基づいて、ドライバーのステアリング操作があったか否かを判断する(ステップ14)。ドライバー操舵量演算部21は、ドライバーのステアリング操作がない場合にはアシスト制御電流指令値Ibとダンピングステア制御電流指令値Icのいずれも零に設定する。したがって、ステア制御電流指令値I*は、Ib及びIcが零のため基本ステア制御電流指令値Iaに等しくなる。その結果、モータ駆動部28によってステア制御電流指令値I*(=Ia)に基づいてギヤモータ7が駆動することによって、車両100の自動操舵がなされる(ステップ16)。
一方、環境情報評価部29は、操舵トルクMTや操舵角MAに基づいてドライバーのステアリング操作を認識した場合、インフラ情報(外部環境情報)の信頼性が高いか否かを判断する(ステップ18)。環境情報評価部29が、インフラ情報の信頼性が高いと判断した場合には、ドライバーのそのステアリング操作を制限する(ステップ20)。すなわち、ドライバーのステアリング操作よりも既にステップ10にて演算済みの基本ステア制御電流指令値Iaを優先することでステア制御電流指令値I*の急変を抑える。その結果、車両100の挙動の急変を防ぐことができる。この場合のステア制御電流指令値I*は、基本ステア制御電流指令値Iaにダンピングステア制御電流指令値Icを付加した値となる。ダンピングステア制御電流指令値Icを付加することによって、反力に反してドライバーは操舵動作を行うことになるので、ドライバーのステアリング操作が制限されることとなる。ドライバーのステアリング操作が制限されることによって、既に演算済みの基本ステア制御電流指令値Iaに与える影響も少なくなる。したがって、モータ駆動部28によってステア制御電流指令値I*(=Ia+Ic)に基づいてギヤモータ7が駆動することによって、車両100の操舵がなされる。
一方、環境情報評価部29が、インフラ情報の信頼性が低いと判断した場合には、ドライバーのそのステアリング操作を優先し、基本ステア制御電流指令値Iaを制限する(ステップ22)。例えば、ドライバーのそのステアリング操作を速やかに実現するために、基本ステア制御量演算部20は基本ステア制御電流指令値Iaを零に設定するとともに、ドライバー操舵量演算部21は、アシスト制御電流指令値Ibを演算する。この場合のステア制御電流指令値I*は、Iaが零のためアシスト制御電流指令値Ibに等しくなる。基本ステア制御電流指令値Iaを零にすることによって、横位置Dに基づく自動操舵によらないドライバーの操舵動作を直接車両の挙動に反映させることになる。したがって、モータ駆動部28によってステア制御電流指令値I*(=Ib)に基づいてギヤモータ7が駆動することによって、車両100の操舵がなされる。
ここで、ドライバーの操舵動作をそのまま実現するときに車両挙動が不安定になる場合には、図11に示される車両挙動安定化装置2によってその不安定挙動を抑えるようにしてもよい。図11は、車両挙動安定化装置2を作動させる一構成を示すブロック図である。車速センサ13及びヨーレートセンサ19の説明は上述したため省略する。加速度センサ14は、自車の車幅方向の加速度(横G)を検出する。自車の車幅方向の加速度(いわゆる、横G)を表す信号が制御装置1に出力される。したがって、制御装置1は、加速度センサ14が出力する信号に基づいて自車の横Gを演算することができる。
制御装置1は、車速センサ13、加速度センサ14及びヨーレートセンサ19からの信号に基づいて車両の挙動状態を把握し、車両の挙動状態を表すデータとして車体スリップ角βを演算する。車体スリップ角βは、例えば、
[数1]
β=∫{(横G−ヨーレート×車速)/車速}dt
によって演算可能である。
図12は、車体スリップ角βを説明するための図である。車体スリップ角βは、横滑り角とも言われ、図12に示されるように、車体の向きと車両重心の進行方向とのなす角をいう。車両はコーナリング速度を上げるほど車体スリップ角βが大きくなる特性を有する。そして、車体スリップ角βが大きくなるにつれて車両の挙動は不安定の度合が増し、車体スリップ角βが或る値以上になると車両はスピン等の操舵不能状態に陥る。操縦不能状態に陥る車体スリップ角βは、車種や路面状態といった周辺環境によって異なる。
制御装置1は、[数1]に従い演算した車体スリップ角βに基づいて車両の挙動が不安定である状態を判定する。例えば、制御装置1は、車両の挙動が不安定である状態を判定するための車体スリップ角βの閾値を10°と設定し、演算された車体スリップ角βが10°を超えた場合に車両の挙動が不安定である状態と判定する。車両の挙動が不安定である状態と判定した制御装置1は、車両挙動安定化装置2に対して所定の車両挙動安定制御の開始要求指令を出力する。車両挙動安定化装置2の具体例として、アンチロックブレーキシステム、横滑り防止システム、トラクションコントロールシステム、ブレーキアシストシステムなどが挙げられる。
ところで、車両100が可変ギヤレシオステアリング装着車の場合、ピニオンとステアリングホイールの間に介在する作動歯車機構によって、ステアリングギヤ比を任意に変更させることが可能であるため、操舵輪の舵角とステアリングホイールの操舵角が一対一に対応していない。例えば、運転者の操作によるステアリングホイールの操舵角を一定の状態で、ステアリングギヤ比を上げると、車輪の舵角は小さくなり、逆にステアリングギヤ比を下げると、車輪の舵角は大きくなる。また、ステアリングギヤ比を無限大、つまり、運転者がステアリングホイールを回転させても車輪に舵角がつかないようにすることもできる。すなわち、ステアリングホイールの回転とは関係なしに、差動歯車機構によってピニオンを回転させて車輪に舵角を付けることも可能である。したがって、ステアリングホイールが中立状態のままで操舵輪に舵角が生じている場合に、ドライバーがステアリングホイールを操作することによって操舵輪の舵角がそれ以上大きくならないようにするため、ドライバーに対して操舵輪に舵角が生じている旨の情報を知らせる必要がある(自動操舵運転中では、ステアリングホイールの操舵角を見るだけでは、ドライバーは操舵輪に舵角が生じていることがわからない場合がある)。
図8は、可変ギヤレシオステアリング装着車のステアリングホイールを回転制御する第1の動作例である。制御装置1は、インフラ協調ステア制御中(自動操舵制御中)か否かを判断し(ステップ30)、自動操舵制御中でない場合には可変ギヤレシオステアリングの通常の動作をさせる(ステップ32)。一方、制御装置1は、自動操舵制御中の場合には、所定の舵角センサによって検出された操舵輪の舵角が所定の閾値(例えば、5°)以上か否かを判断する(ステップ34)。制御装置1は、操舵輪の舵角が所定の閾値以上でない場合には、微小な操舵輪の舵角範囲でステアリングホイールをそれに合わせてステアリングホールを回転させるのはドライバーにとって煩わしいとして、ステアリングホイールを直進状態で保持させる(ステップ36)。また、制御装置1は、操舵輪の舵角が所定の所定値以上の場合には、操舵輪の舵角に合うようにステアリングホイールを回転させ、その状態に保持させる(ステップ38)。なお、ステアリングホイールを回転させるための閾値は、操舵輪の舵角ではなく、路車間通信データXに含まれる走行路50のコーナーの半径情報でもよい。たとえば、現走行中の走行路50の半径が所定値以上の場合に、操舵輪の舵角に合うようにステアリングホイールを回転させ、その状態に保持させるようにすればよい。
したがって、図8の動作例によれば、操舵輪の舵角の状態をドライバーに認識しやすくすることができるので、ドライバーが自動操舵運転中に過度のステアリング操作の介入を防ぐことができる。
[第2の動作例]
図9は、本実施形態の車両用走行支援装置の第2の動作例を示すフローである。自動操舵制御中において、制御装置1は、マーカセンサ11によって検出された横位置Dや車速センサ13によって検出された車速VSPやヨーレートセンサ19によって検出されたヨーレートYRなどのセンサ情報を取得する(ステップ50)。制御装置1の基本ステア制御量演算部20は、ステップ50で取得したセンサ情報に基づいて基本ステア制御電流指令値Iaを演算する(ステップ52)。
一方、制御装置1のドライバー操舵量演算部21は、トルクセンサ4によって検出された操舵トルクMT及び/又は操舵角センサ12によって検出されたステアリングホイールの操舵角MAに基づいて、ドライバーのステアリング操作があったか否かを判断する(ステップ54)。ドライバー操舵量演算部21は、ドライバーのステアリング操作がない場合にはアシスト制御電流指令値Ibとダンピングステア制御電流指令値Icのいずれも零に設定する。したがって、ステア制御電流指令値I*は、Ib及びIcが零のため基本ステア制御電流指令値Iaに等しくなる。その結果、モータ駆動部28によってステア制御電流指令値I*(=Ia)に基づいてギヤモータ7が駆動することによって、車両100の自動操舵がなされる(ステップ56)。
一方、ドライバー操舵量演算部21は、操舵トルクMTや操舵角MAに基づいてドライバーのステアリング操作を認識した場合、アシスト制御電流指令値Ibを演算する(ステップ56)。ステップ56の段階では、演算されたアシスト制御電流指令値Ibは、ギヤモータ7の駆動に反映されていない。ここで、操舵トルクMTや操舵角MAに基づいてドライバーのステアリング操作を認識した環境情報評価部29によって、インフラ情報の信頼性について高いか否かが判断される(ステップ58)。環境情報評価部29がインフラ情報の信頼性が高いと判断した場合には、ステップ52で基本ステア制御量演算部20によって演算された基本ステア制御電流指令値Iaとステップ56でドライバー操舵量演算部21によって演算されたアシスト制御電流指令値Ibの調停が行われ(ステップ60)、その調停結果が反映されたステア制御電流指令値I*が演算される(ステップ62)。
ステップ60における調停方法の具体例を挙げる。第1の調停方法は、基本ステア制御電流指令値Iaとアシスト制御電流指令値Ibを単純に加算後、徐々に基本ステア制御電流指令値Iaを小さくし最終的にアシスト制御電流指令値Ibだけでステア制御電流指令値I*を実現する方法である。第2の調停方法は、基本ステア制御電流指令値Iaとアシスト制御電流指令値Ibの大きいほうをステア制御電流指令値I*とする方法である。第3の調停方法は、上述したように、基本ステア制御電流指令値Iaにダンピングステア制御電流指令値Icを付加してステア制御電流指令値I*とする方法である。
そして、モータ駆動部28によってステップ62によって演算された調停後のステア制御電流指令値I*に基づいてギヤモータ7が駆動することによって、車両100の自動操舵がなされる(ステップ64)。
一方、環境情報評価部29が、インフラ情報の信頼性が低いと判断した場合には、ドライバーのそのステアリング操作を優先し、基本ステア制御電流指令値Iaを制限する(ステップ66)。例えば、ドライバーのそのステアリング操作を速やかに実現するために、基本ステア制御量演算部20は基本ステア制御電流指令値Iaを零に設定するとともに、ドライバー操舵量演算部21は、アシスト制御電流指令値Ibを演算する。この場合のステア制御電流指令値I*は、Iaが零のためアシスト制御電流指令値Ibに等しくなる。基本ステア制御電流指令値Iaを零にすることによって、横位置Dに基づく自動操舵によらないドライバーの操舵動作を直接車両の挙動に反映させることになる。したがって、モータ駆動部28によってステア制御電流指令値I*(=Ib)に基づいてギヤモータ7が駆動することによって、車両100の操舵がなされる。
したがって、図9に示される第2の動作例は、図7に示される第1の動作例と異なり、
環境情報評価部29によってインフラ情報の信頼性が高いと判断された場合には、ドライバーのステアリング操作を一律に制限するのではなく(図7のステップ20)、基本ステア制御電流指令値Iaとアシスト制御電流指令値Ibの調停を行うことによって、ドライバーのステアリング操作を制限するかしないかを決定することができる。
ここで、第1の動作例と同様に、ドライバーの操舵動作をそのまま実現するときに車両挙動が不安定になる場合には、図11に示される車両挙動安定化装置2によってその不安定挙動を抑えるようにしてもよい。
また、第1の動作例と同様に、車両100が可変ギヤレシオステアリング装着車の場合のステアリングホイールを回転制御する動作例について説明する。図10は、可変ギヤレシオステアリング装着車のステアリングホイールを回転制御する第2の動作例である。制御装置1は、インフラ協調ステア制御中(自動操舵制御中)か否かを判断し(ステップ70)、自走操舵制御中でない場合には可変ギヤレシオステアリングの通常の動作をさせる(ステップ72)。一方、制御装置1は、自動操舵制御中の場合には、所定の舵角センサによって検出された操舵輪の舵角が所定の閾値(例えば、5°)以上か否かを判断する(ステップ74)。制御装置1は、操舵輪の舵角が所定の閾値以上でない場合には、ステアリングギヤレシオをデフォルト値のままに設定する(ステップ76)。また、制御装置1は、操舵輪の舵角が所定の閾値以上の場合には、ステアリングホイールを切れにくくする側にステアリングギヤレシオを変更する(ステップ78)。
したがって、図10の動作例によれば、操舵輪の舵角がある量を超えていると、ドライバーはステアリングホイールの操舵操作がしにくくなるので、操舵輪の舵角の状態をドライバーに認識しやすくすることができ、ドライバーが自動操舵運転中に過度のステアリング操作の介入を防ぐことができる。
このように、上述の車両用走行支援装置の実施形態によれば、インフラ情報を利用したインフラ協調自動運転システムにおける自動操舵制御中にドライバーの介入操作があったとしても、インフラ情報の信頼性を勘案した上で自動操舵制御とドライバーの介入操作の重み付けを決定することによって、車両挙動の急変を避けるとともに、緊急回避したいといったドライバーの操作意思を阻害せずに違和感のないステアリング制御を実現することが可能となる。
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、本発明の実施例は、
車両外部の環境情報を取得することにより車両の走行支援を行う車両用走行支援装置であって、
前記環境情報に応じて車両の走行支援に必要な走行支援制御量を決定する制御量決定手段と、
前記環境情報の信頼性を評価する環境情報評価手段と、
前記制御量決定手段によって決定された走行支援制御量を変更する制御量変更手段とを有し、
前記制御量変更手段は、前記環境情報評価手段によって得られた信頼性が低い場合には高い場合に比して運転者の介入操作が車両挙動に反映されやすくなるように前記走行支援制御量を変更することを特徴とする。これにより、車両外部の環境情報の信頼性が低ければ、その環境情報に基づいて決定された自動走行の支援制御量よりも運転者の介入操作を優先するほうが望ましいとして、運転者の意思を反映した支援制御量に基づく走行支援制御を実行することが可能となる。
ここで、本発明の実施例は、
車両の挙動状態を検出する挙動検出手段と、
前記挙動検出手段により検出された挙動状態に基づいて車両の挙動が不安定である状態を判定する挙動判定手段と、
運転者の介入操作が車両挙動に反映されやすくなるように前記走行支援制御量が変更されたときに前記挙動判定手段により車両の挙動が不安定である状態と判定された場合車両の挙動を安定化させる動作を行う挙動安定化手段とを備えてもよい。これにより、運転者の介入操作を優先したことによって車両の挙動が不安定になったとしても、車両の挙動を安定化させることができる。
また、本発明の実施例は、
車両外部の環境情報を取得することにより車両の走行支援を行う車両用走行支援装置であって、
前記環境情報に応じて車両の走行支援に必要な走行支援制御量を決定する制御量決定手段と、
前記環境情報の信頼性を評価する環境情報評価手段とを有し、
前記環境情報評価手段によって得られた信頼性が高い場合には低い場合に比して前記制御量決定手段によって決定された走行支援制御量に与える影響が少なくなるように運転者の介入操作に基づく所定の運転操作量が制限されることを特徴とする。これにより、車両外部の環境情報の信頼性が高ければ、運転者の介入操作よりもその環境情報に基づいて決定された自動走行の支援制御量を優先するほうが望ましいとして、運転者の意思が支援制御量に影響を与えないように制限して、当該支援制御量に基づく走行支援制御を実行することが可能となる。この場合、運転者の意思が制限されているので、運転者の介入操作に伴う車両挙動の急変も防ぐことができる。
ここで、前記所定の運転操作量の制限は、当該運転操作量の単位時間当たりの変化量の抑制によって行われるようにしてよい。例えば、ステアリングホイールの操舵角の変化量を抑制することで、運転者の操舵動作は制限される。つまり、操舵角の微分値である操舵角速度が増えるにつれて操舵方向と反対方向の反力を付与すれば、運転者の操舵動作は制限される。
また、前記環境情報は所定間隔毎に取得され、前記環境情報評価手段は、今回取得した環境情報と前回取得した環境情報の連続性を評価し、前記連続性が低いと評価される場合には高いと評価される場合に比して前記信頼性を低いと評価するようにしてもよい。これにより、今回と前回の環境情報の乖離が大きい場合には、そのとき取得した環境情報の信頼性が低いと判断できる。また、そのとき取得した環境情報をノイズとみなして新たに信頼性を評価することもできる。
なお、前記環境情報は、路側に所定距離毎に設置されたインフラから取得されるものであれば、そのようなインフラから取得できる情報の連続性は高い(前回と今回との乖離が小さい)傾向があるため、連続性が低い場合には信頼できない情報が含まれていると判断することができる。
また、前記走行支援は操舵支援であって、前記運転者の介入操作は運転者のステアリング操作であると好適である。つまり、運転者のステアリング操作の意思を反映したステアリング操舵支援制御量に基づく自動操舵支援制御を実行することが可能となる。また、運転者のステアリング操作の意思が操舵支援制御量に影響を与えないように制限して、当該操舵支援制御量に基づく自動操舵支援制御を実行することが可能となるとともに、運転者の不必要なステアリング操作の介入によって車両の挙動の急変を抑えることができる。
本実施形態の車両用走行支援装置を適用するインフラ協調自動運転システムを説明するための図である。 本発明に係る車両用走行支援装置の一実施形態を示した図である。 制御装置1の機能ブロック図の一例である。 「横位置D」と「基本ステアトルクTQa」との関係を規定するマップである。 「操舵トルクMT」と「アシストトルクTQb」との関係を規定するマップである。 「操舵角速度dMA」と「ダンピングトルクTQc」との関係を規定するマップである。 本実施形態の車両用走行支援装置の第1の動作例を示すフローである。 可変ギヤレシオステアリング装着車のステアリングホイールを回転制御する第1の動作例である。 本実施形態の車両用走行支援装置の第2の動作例を示すフローである。 可変ギヤレシオステアリング装着車のステアリングホイールを回転制御する第2の動作例である。 車両挙動安定化装置2を作動させる一構成を示すブロック図である。 車体スリップ角βを説明するための図である。
符号の説明
1 制御装置
2 車両挙動安定化装置
4 トルクセンサ
5 ラックバー
7 ギヤモータ
11 マーカセンサ
12 操舵角センサ
13 車速センサ
14 加速度センサ
19 ヨーレートセンサ
15 通信部
20 基本ステア制御量演算部
21 ドライバー操舵量演算部
29 環境情報評価部
50 走行路
100 車両
201,202,203 通信コイル
300 道路管理センタ
M 磁気マーカ

Claims (6)

  1. 車両外部の環境情報を取得することにより車両の走行支援を行う車両用走行支援装置であって、
    前記環境情報に応じて車両の走行支援に必要な走行支援制御量を決定する制御量決定手段と、
    前記環境情報の信頼性を評価する環境情報評価手段とを備え、
    運転者の介入操作があり且つ前記環境情報評価手段によって前記信頼性が高いと判断される場合、前記制御量決定手段によって決定された走行支援制御量を小さくする、ことを特徴とする、車両用走行支援装置。
  2. 運転者の介入操作があり且つ前記環境情報評価手段によって前記信頼性が高いと判断される場合、前記制御量決定手段によって決定された走行支援制御量を小さくし、前記介入操作を車両の挙動に反映させる、請求項1に記載の車両用走行支援装置。
  3. 運転者の介入操作があり且つ前記環境情報評価手段によって前記信頼性が高いと判断される場合、前記制御量決定手段によって決定された走行支援制御量を小さくし、前記制御量決定手段によって決定された走行支援制御量よりも前記介入操作を車両の挙動に反映させる、請求項2に記載の車両用走行支援装置。
  4. 運転者の介入操作があり且つ前記環境情報評価手段によって前記信頼性が高いと判断される場合、前記制御量決定手段によって決定された走行支援制御量を徐々に小さくし、前記介入操作のみを最終的に車両の挙動に反映させる、請求項3に記載の車両用走行支援装置。
  5. 車両の挙動状態を検出する挙動検出手段と、
    前記挙動検出手段により検出された挙動状態に基づいて車両の挙動が不安定である状態を判定する挙動判定手段と、
    運転者の介入操作が車両挙動に反映されやすくなるように前記走行支援制御量が変更されたときに前記挙動判定手段により車両の挙動が不安定である状態と判定された場合車両の挙動を安定化させる動作を行う挙動安定化手段とを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用走行支援装置。
  6. 前記走行支援は操舵支援であって、前記運転者の介入操作は運転者のステアリング操作である、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用走行支援装置。
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