JP4918158B1 - 冷凍大根の製造方法及び冷凍大根 - Google Patents

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Abstract

【課題】食材としての用途に応じた加工によって調理後の風味、食感等を適切なものにできる冷凍大根の製造方法及び冷凍大根を提供すること
【解決手段】大根を加熱する加熱工程(ステップS3)と、加熱工程後、大根を冷却する冷却工程(ステップS4)と、冷却工程後、大根を凍結する凍結工程(ステップS5)と、を備え、凍結直前の大根は、食材としての用途に応じた加熱温度及び加熱時間で加熱することにより、解凍後の大根に施される調理内容を予め補うような硬度に調整されている。これにより、各用途に応じた所望の硬度と食感を有する冷凍大根を製造することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、冷凍保存後に調理される食材としての冷凍大根の製造方法及び冷凍大根に関する。
大根を冷凍保存することによって、品質が揃って調理しやすい食材として定常的に供給することが考えられている。例えば、冷凍大根の製造方法として、所要形状に切断した大根を加熱処理した後、これを冷却し、冷凍する方法がある(例えば、特許文献1参照)。このような冷凍保存については、長期保存に際しての鮮度維持や品質の均一化の観点から、冷凍前の熱処理に際して、大根の切断サイズ、加熱温度、加熱時間等の条件の最適化が図られていた。
特開2007−175039号公報
しかしながら、本発明者による鋭意研究の結果、大根については、後の調理内容を考慮しつつ冷凍前の熱処理条件の設定を行うことが重要であることが判明した。より具体的に説明すると、冷凍大根の調理については、冷凍変性が無く、大根を調理し食す時の適度な硬さ(柔らかさ)と食感(歯切れの良さ)とすっとした箸の入り方とを前提としている。例えば、レトルト食品として調理する場合、下煮してから調理(一般調理)する場合、早煮えによって迅速な調理を実現する場合、下味付きにしてレシピを簡素化する場合等が存在する。本発明者は、このような多様な調理に適合させて、大根の切断サイズ、形状、加熱温度、加熱時間等を要素とする冷凍前の熱処理条件を設定しなければ、風味、歯応えその他の食感等に関して高品位の料理を提供することが容易でなくなることを発見した。上記特許文献1の冷凍大根の製造方法では、冷凍水煮大根や冷凍味付大根に対する一般的な加熱温度、加熱時間等について開示されているが、特定の調理用途に限らず他の調理用途に適切な冷凍大根を製造するに際して、開示されている製造の工程や温度条件等をそのまま適用することが適切でない場合がある。
なお、根菜類には大根の他に芋等が存在するが、芋については、鮮度維持や均質化の観点から冷凍前の熱処理を行えば足り、解凍後の調理内容を考慮する必要がないことが分かっている。芋の場合、比較的水分が少なくデンプンの状態が適切に管理されて冷凍されておれば足り、冷凍前の熱処理条件が、調理後の風味、食感等にほとんど影響しないと考えられるからである。
そこで、本発明は、食材としての調理用途に応じた加工によって調理後の風味、食感等を適切なものにできる冷凍大根の製造方法及び冷凍大根を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明に係る冷凍大根の製造方法は、大根を加熱する加熱工程と、加熱工程後、大根を冷却する冷却工程と、冷却工程後、大根を凍結する凍結工程と、を備え、凍結直前の大根は、食材としての用途に応じた加熱温度及び加熱時間で加熱することにより、解凍後の大根に施される調理内容を予め補うような硬度と食感に調整されていることを特徴とする。ここで、食材としての用途には、例えばレトルト食品用や非レトルト食品(例えばチルド食品)用等がある。
上記冷凍大根の製造方法では、加熱工程において、加熱温度及び加熱時間を変えることにより解凍後の大根の硬度をコントロールすることができる。また、加熱の回数により食感もコントロールすることができる。これにより、レトルト食品用及び非レトルト食品用等の食材としての用途に応じた所望の硬度と食感を有する冷凍大根を製造することができ、その後の調理に適合した安定した特性を有する大根を消費者や工場生産者に提供することができる。この際、加熱工程における温度と時間の管理によって大根の硬度を調整しているため、比較的安定して所望の硬度を有する冷凍大根を製造することができる。また、製造工程の基本的な手順を共通にしているため、用途の異なる冷凍大根を製造する場合でも簡単に対応することができる。なお、製造された冷凍大根は、食材としての用途に応じた硬度となるが、この硬度は保存時の硬度であり、実際に調理・加工されると食する際の硬度は保存時の硬度より低くなる。
また、本発明の具体的な態様又は側面では、加熱時間は、加熱工程において、大根の加熱による硬度変化率が加熱開始時に比較して低くなる軟化飽和状態になる時間を基準とする。ここで、軟化飽和状態とは、所定温度で大根を加熱した際に一定の硬度以下に下がらなくなる状態をいう。軟化飽和状態になる時間は、温度によって異なり、予め試験により決定される。加熱時間を軟化飽和状態を基準として決定することにより、大根の特性を活かして硬度を効率よく調整することができる。
また、本発明の別の側面では、非レトルト食品用の用途の場合に、加熱工程と、冷却工程とを少なくとも2回行う。この場合、加熱工程と、冷却工程とを少なくとも2回行うことにより、大根を食す時の適度な硬さ(柔らかさ)と食感(歯切れの良さ)とすっとした箸の入り方とを比較的確実に実現することができる。
また、本発明のさらに別の側面では、非レトルト食品用の用途の場合に、凍結工程前、大根に味付けする浸漬工程をさらに備える。この場合、味付きの冷凍大根(例えばIQF(Individual Quick Freezing)凍結(バラ凍結)の状態)を製造することができる。
また、本発明のさらに別の側面では、加熱工程は、低温スチーム及びボイルのいずれか一方によって行う。この場合、大根の酸化を低減し、アクを除去することができる。特に、低温スチームの場合、大根の旨みや甘みを保ちつつ、加熱することができる。
また、本発明のさらに別の側面では、大根は、加熱工程前に維束管が除去される。この場合、硬い維束管を加熱工程前に予め除去することにより、大根の硬度の調整を容易にすることができる。また、食感の悪さの原因となる維束管を除去することにより、食感のよい冷凍大根を製造することができる。また、維束管を除去することにより味が均一に簡単に入るようになる。
また、本発明のさらに別の側面では、凍結工程を経た大根を解凍した後の当該大根の硬度が、レトルト食品用の場合に500g以上600g以下であり、非レトルト食品用の場合に150g以上500g未満である。この場合、用途に応じて上記範囲の硬度とすることにより、調理後の大根を適切な硬度に保つことができる。
本発明に係る冷凍大根は、上述の冷凍大根の製造方法を用いて製造する。
上記冷凍大根では、レトルト食品用及び非レトルト食品用等の食材としての用途に応じて大根の硬度と食感をコントロールすることができ、その後の調理に適した安定した特性を有する大根を消費者や工場生産者に提供することができる。これにより、調理後の大根を安定して適切な硬度と良い食感に保つことができる。
第1及び第2実施形態に係る冷凍大根の製造方法を説明するためのフロー図である。 加熱温度別の大根の硬度変化について説明する図である。 各工程における大根の硬度変化について説明する図である。 解凍時の大根の硬度変化について説明する図である。 第3実施形態に係る冷凍大根の製造方法を説明するためのフロー図である。 第4実施形態に係る冷凍大根の製造方法を説明するためのフロー図である。
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態である冷凍大根及び冷凍大根の製造方法ついて、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本実施形態では、非レトルト食品用、特に一般調理用の食材としての冷凍大根の製造方法等について説明する。ここで、一般調理用の食材としての冷凍大根とは、例えばふろふき大根等の一般調理に最適な所定の硬度を有する冷凍保存用の大根を意味する。この場合、冷凍大根の解凍後の硬度は、例えば350g〜450gである。詳細は後述するが、この冷凍大根は、解凍後、調理され、食される際の硬度が100g〜200g程度になる。
図1に示すように、本実施形態の冷凍大根の製造方法は、選別・洗浄工程(ステップS1)と、切削・切断工程(ステップS2)と、加熱工程(ステップS3)と、冷却工程(ステップS4)と、凍結工程(ステップS5)とを備える。
選別・洗浄工程(ステップS1)において、収穫した原料となる大根を形がそろっているか、傷んでいないか等を見て適切に選別し、洗浄する。洗浄は、流水中又は換水下で行われる。これにより、原料に残留している異物等があれば完全に除去することができる。ここで、本実施形態における冷凍大根の原料は、生育揃いの良い種であり、青首大根や白首大根等の各種の大根を用いることができる。なお、大根は、過熟しない等、収穫時期や鮮度に配慮し、適切なものを用いることが好ましい。大根は、収穫に適切な時期を過ぎても収穫せずに放置していると、老化が始まり身の部分にすが入る。また、適切な時期に収穫しても、常温又は冷蔵保管すると同様にすが入る。このように、原料の段階ですが発生していると、すの中にある多量の水分が凍結時に大きな結晶となり、解凍すれば水分が流出して変性しスポンジ状になる。したがって、原料の大根自体を加工前にすが入らないように管理する必要がある。そのため、収穫適期より数日前に収穫して収穫後数日以内に保存用の加工をするか、収穫の当日に保存用の加工することが好ましい。また、原料段階の大根の硬度は栽培環境や季節等によって異なるため、収穫時の硬度を参酌して保存用の加工工程を修正する必要がある。例えば、比較的暑い環境や春から夏にかけては大根の繊維が太く身が硬いので、冷凍後の調理用途が同じであっても加熱時間を長くする。一方、比較的寒い環境や秋から冬にかけては大根の繊維が細く身が柔らかいので、冷凍後の調理用途が同じであっても加熱時間を短くする。
切削・切断工程(ステップS2)において、選別・洗浄工程(ステップS1)を経た大根を切削及び切断する。まず、大根の余分な部分を切削又は切断する。大根は、根の先端から葉柄(茎と葉身とをつなぐ部分)に向かってひげ根がついた部分が根であり、その上部が茎である。大根には、根の先端から葉柄にかけて水分を運ぶ導管が表皮から2mm〜4mmの深さで表皮に沿って丸く上下に通っている。この導管部分は大根の身の部分より繊維質が強く硬い。そのため、大根は、大根の直径によって異なるが、その表面から深さ5mm〜10mmまでの部分、好ましくは5mm〜7mmまでの部分を導管を含めて切削除去しておく。つまり、切削片の厚さが5mm〜10mm、好ましくは5mm〜7mmとなるように、大根の表面部を切削する。なお、導管は、切削以外に型抜きによっても除去することができる。また、大根を食する際の不適当部分、具体的には大根の茎と葉柄とが結合する部分と、その反対側の根の先端部分とを切断除去する。次に、大根を用途に応じて所望の大きさ及び形状に切断する。つまり、切断の大きさ及び形状は、調理用途によって異なる。切断方法は、例えば、切断機を用いて輪切り、半月切り、銀杏切り、スライス、千切り、乱切り等に切断する方法がある。なお、この切削・切断工程(ステップS2)において、大根の煮崩れ防止のために面取りしたり、調味液の浸透を高めるために隠し包丁等の表面への切れ込み処理等をしたりしてもよい。
加熱工程(ステップS3)において、切削・切断工程(ステップS2)を経た大根を加熱する。加熱は、低温スチーム装置を用いて行う。低温スチームによって加熱処理することにより、大根の旨みや甘みを保ちつつ、大根の酸化を低減し、アクを除去することができる。低温スチーム装置は、処理室内を50℃〜95℃の蒸気が飽和している状態を保ちつつ対象を加熱するものである。切削・切断工程(ステップS2)において適切な大きさ及び形状に切断した大根は、予め所定の処理温度に保持した低温スチーム装置の処理室の中に入れられ、加熱処理される。加熱処理の温度は、例えば80℃〜95℃であり、好ましくは85℃である。加熱処理の時間は、例えば25分〜45分であり、好ましくは30分である。ここで、加熱温度が80℃よりも低いと、冷凍大根の硬度が上がり、一般調理の加工用として用いるには硬い大根となる。一方、加熱時間が95℃よりも高いと、冷凍大根の硬度が下がりすぎ、一般的用途で必要とされる以上に柔らかい大根となる。また、低温スチーム装置の処理室の容積に対して、大根の表面積が多いと加熱時間は短くなる。また、大根の体積が大きいと加熱時間は長くなる。また、原料段階での大根が硬いと、加熱時間は長くなる。よって、加熱温度及び加熱時間は、調理用途の標準値に基づきつつも原料の大根の状態、大きさ、形状等によって適宜調整される。
なお、加熱時間について詳述すると、加熱時間は大根の軟化飽和状態を基準として決定する。この際、大根の中心まで火が通る状態になる時間も考慮する。ここで、軟化飽和状態とは、所定温度で大根を加熱した際に一定の硬度以下に下がらなくなる状態をいう。軟化飽和状態になる時間は、温度によって異なり、予め試験により決定される。例えば、図2は、大根を輪切りにして65℃、80℃、及び95℃の温度で加熱した際の加熱時間と硬度との関係を示すものであるが、65℃において、大根は、加熱時間が20分程度で硬度が約720gから約670gに低下するが、20分より後で硬度の変化率(硬度変化率:硬度/時間)が0分〜20分の硬度変化率に比べて低くなる。80℃において、大根は、加熱時間が25分程度で硬度が約720gから約640gに低下するが、25分より後で硬度の変化率が0分〜25分の硬度変化率に比べて低くなる。95℃においても、大根は、加熱時間が30分程度で硬度が約750gから約510gに低下するが、30分より後で硬度の変化率が0分〜30分の硬度変化率に比べて低くなる。このように、大根は加熱時間によって軟化飽和状態になる性質を有している。すなわち、一定の温度で一定時間加熱すれば、所定の硬度の大根を得ることができる。そのため、加熱する温度を変えることにより、大根の硬度(最終的には解凍後の大根の硬度)をコントロールすることができる。芋類のように、品種によって加熱条件を変えるものはあるが、上述のように加熱温度の変化により硬度をコントロールするのは大根特有のものである。また、大根の中心まで火が通る状態とは、大根に含まれる酵素が失活する状態であり、温度が高いほど短い時間でこの状態に達する。なお、実際の加熱時間は大根の個体差によっても微調整されるものである。
本実施形態のように一般調理用途の場合、比較的高温の80℃〜95℃で25分〜45分間加熱することで、軟化飽和状態に達する程度となる。
冷却工程(ステップS4)において、加熱工程(ステップS3)を経た大根を冷却する。冷却は、まず常温水を用いて大根を常温まで冷やし、その後チラー水を用いて例えば5℃に冷却する。冷却処理時間は、例えば20分である。
凍結工程(ステップS5)において、冷却工程(ステップS4)を経た大根を凍結する。凍結は、例えば急速バラ凍結によって行う。凍結処理温度は、例えば−30℃〜−35℃、好ましくは−35℃である。また、凍結時間は、例えば20分である。この際、大根の中心温度は、−10℃〜−15℃となる。凍結した冷凍大根は、−18℃〜−48℃、好ましくは−20℃〜−48℃の温度に保管する。大根を凍結する際、大根を包装せずにそのまま凍結してもよいが、プラスチックの袋やプラスチックの容器に密封して凍結することもできる。なお、プラスチックの袋に包装する場合、真空包装することができる。
凍結した冷凍大根は、適宜包装袋への充填や検査等が行われ出荷される。
以下、冷凍大根の調理方法について説明する。用途に応じて硬度を調整した食材である冷凍大根は、用途に応じて調理方法が異なる。一例について説明すると、一般調理用の冷凍大根の場合、下煮として、冷凍の状態で大根を熱湯や蒸気によって例えば20分間加熱して解凍する。この下煮によって、目的の調理に応じた大根の最終的な硬度の調整をある程度行うことができる。解凍後、大根を流水中で常温まで冷却する。この冷却により大根はさらに柔らかくなる。その後、下煮をした大根に調味料や他の具材等を加えて味付け調理し、約15分間自然放冷することで味をしみ込ませる。なお、調理したものは、冷却後、凍結して冷凍保存することもできる。
以上のように製造された調理用冷凍大根の解凍後(すなわち調理前)の硬度は、例えば直径55mm、厚み20mmに切断した大根の場合、350g〜450g、好ましくは400gである。このように、一般調理用途の場合、解凍後の硬度が第2タイプすなわち中程度かわずかに高めとなっている。硬度の計測は、硬度計(株式会社藤原製作所製、果実硬度計(KM−1型))を用いて行った。大根の硬度は、計測する大根の丸い切断面をその中心から半径1cmを除いた部位、検体1個あたり片面の3箇所を測定し平均値を算出したときの値とした。なお、硬度計の先端部分は、円錐型針頭を用いている。硬度計の最大加圧重は1kgであり、一目盛は10gである。
以上説明した冷凍大根の製造方法によれば、加熱工程(ステップS3)において、加熱温度及び加熱時間を変えることにより解凍後の大根の硬度をコントロールすることができる。これにより、非レトルト食品用のうち一般調理用の用途に応じた所望の硬度(例えば400g)と食感を有する冷凍大根を製造することができ、その後の調理に適合した安定した特性を有する大根を消費者や工場生産者に提供することができる。そのため、冷凍大根を食材として用いる際に、所定の硬度を保ちつつ、加工調理の時間を短くすることができる。また、加熱工程(ステップS3)における温度と時間の管理によって大根の硬度を調整しているため、比較的安定して所定の硬度を有する冷凍大根を製造することができる。また、加熱時間を軟化飽和状態等を基準として決定することにより、大根の特性を活かして硬度を効率よく調整することができる。また、製造工程の手順を共通にしているため、用途の異なる冷凍大根を製造する場合でも簡単に対応することができる。また、上記製造方法を用いることにより、調理後の大根を安定して適切な硬度に保つことができる。
以下、本実施形態の各製造工程における大根の硬度変化について説明する。
図3に示すように、加熱工程前の大根の硬度は800gであり、加熱工程後の大根の硬度は430gであり、凍結工程直前の冷凍大根の硬度は430gであった。次に、製造した冷凍大根を解凍すると、大根の硬度は410gであった。なお、この冷凍大根の硬度は、上記一般調理用の冷凍大根の硬度の範囲を満たす。解凍した大根を調理のために加熱(下煮)や調理をすると最終的に硬度が100g〜200gとなった。
解凍時の大根の硬度についてさらに詳しく説明すると、100℃の熱湯で茹でて解凍した際の大根の硬度は、図4に示すように変化した。すなわち、茹で時間が10分の時に大根の硬度が440gであり、その後、12分の時に390g、14分の時に370g、16分の時に300g、18分の時に270g、20分の時に240gと略直線的に硬度が低下した。調理時の加熱時間を考慮すると、大根の硬度が200g前後のものを調理に用いるのが好ましいことから、この場合、20分が解凍時の適当な加熱時間といえる。
以下、本実施形態に係る冷凍大根の製造方法によって製造した冷凍大根を用いて調理した後の大根の硬度について説明する。
表1は、輪切りのふろふき大根の硬度を示す。なお、表1において、大根の硬度は、検体A〜Lである各大根の輪切りした表面のうち中心及び側面から5mm以外の異なる3箇所の位置を計測したものである。
Figure 0004918158
表1からわかるように、調理後の各検体A〜Lの大根の硬度の平均値は、117g〜210gの範囲であった。また、全体の硬度の平均値は、約160gであった。この硬度の値は、ふろふき大根の食感として最適なものとなっている。
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る冷凍大根及び冷凍大根の製造方法について説明する。なお、第2実施形態に係る冷凍大根及び冷凍大根の製造方法は、第1実施形態を変形したものであり、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様であるものとする。本実施形態では、特にレトルト食品用のための食材としてのレトルト用冷凍大根の製造方法等について説明する。ここで、食材としてのレトルト用冷凍大根とは、レトルト加工に最適な所定の硬度を有する冷凍保存用の大根を意味する。冷凍大根の解凍後の硬度は、例えば500g〜600gである。詳細は後述するが、この冷凍大根は、解凍後、調理され、食される際の硬度が100g〜200g程度になる。
図1に示すように、本実施形態の冷凍大根の製造方法は、選別・洗浄工程(ステップS1)と、切削・切断工程(ステップS2)と、加熱工程(ステップS3)と、冷却工程(ステップS4)と、凍結工程(ステップS5)とを備える。
本実施形態では、加熱工程(ステップS3)において、選別・洗浄工程(ステップS1)及び切削・切断工程(ステップS2)を経た大根を加熱する。加熱は、低温スチーム装置を用いて行う。加熱処理の温度は、例えば60℃〜70℃であり、好ましくは65℃である。加熱処理の時間は、例えば50分〜80分であり、好ましくは60分である。レトルト用冷凍大根の場合、加熱温度が比較的低く60℃〜70℃であり、図2に示すように軟化飽和状態になるのは20分程度であるが、大根の中心まで火を通すことを特に考慮して加熱時間を50分〜80分に設定している。つまり、加熱時間は、軟化飽和状態となるまでの時間の倍以上に設定される。
冷却工程(ステップS4)において、加熱工程(ステップS3)を経た大根を冷却する。冷却には、常温水及びチラー水を用いる。冷却処理時間は、例えば20分である。
凍結工程(ステップS5)において、冷却工程(ステップS4)を経た大根を冷凍する。冷凍処理時間は、例えば−30℃〜−35℃、好ましくは−35℃である。凍結した冷凍大根は、−18℃〜−48℃、好ましくは−20℃〜−48℃の温度に保管する。
以下、冷凍大根の調理方法の一例について説明する。レトルト用冷凍大根の場合、まず、冷凍の状態で大根を冷水によって流水解凍する。次に、大根に調味料や他の具材等を加えてレトルト用の袋に充填し、シールする。その後、レトルト釜で加圧加熱し、殺菌を兼ねて調理する。
以上のように製造されたレトルト用冷凍大根の解凍後の硬度は、例えば直径55mm、厚み20mmに切断した大根の場合、500g〜600g、好ましくは550gである。このように、レトルト用途の場合、解凍後の硬度が第1タイプすなわち比較的高めとなっている。
以上説明した冷凍大根の製造方法によれば、加熱工程(ステップS3)において、加熱温度及び加熱時間を変えることにより、レトルト食品用の用途に応じた所望の硬度(例えば550g)と食感を有する冷凍大根を製造することができる。なお、レトルト食品の加工では、高圧及び高温の処理がなされるため、レトルト食品用の冷凍大根の硬度は、非レトルト食品用の冷凍大根の硬度よりも相対的に高いものとなる。そのため、レトルト加工の際に大根が煮崩れするのを防ぐことができる。
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態に係る冷凍大根及び冷凍大根の製造方法について説明する。なお、第3実施形態に係る冷凍大根及び冷凍大根の製造方法は、第1実施形態を変形したものであり、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様であるものとする。本実施形態では、非レトルト食品用のうち特に食材としての早煮タイプの調理用冷凍大根の製造方法等について説明する。ここで、食材としての早煮タイプの調理用冷凍大根とは、早煮タイプの調理に最適な所定の硬度を有する冷凍保存用の大根を意味する。冷凍大根の解凍後の硬度は、例えば150g〜250gである。詳細は後述するが、この冷凍大根は、解凍後、調理され、食される際の硬度が100g〜200g程度になる。
図5に示すように、本実施形態の冷凍大根の製造方法は、選別・洗浄工程(ステップS1)と、切削・切断工程(ステップS2)と、第1加熱工程(ステップS33)と、第1冷却工程(ステップS34)と、第2加熱工程(ステップS36)と、第2冷却工程(ステップS37)と、凍結工程(ステップS35)とを備える。
ここで、加熱工程を2回に分けて行う理由について説明する。既に説明したとおり、図2に示すように、大根は、例えば95℃において、加熱時間が30分程度で硬度が約750gから約510gに低下する。さらに150分程度で高度が約420gに低下する。したがって、飽和軟化時(飽和軟化状態になる時間)をとおりこせば高度はさらに下がることは当然の理である。しかし、食感に問題が出る。この方法で硬度を下げると大根の身に粘りが出て食感が非常に悪くなる。また、大根は、加熱後、水に入れて冷却すると硬度が低くなるとともに大根の繊維が切れやすくなるという性質を有する。よって、加熱工程と冷却工程を経た大根を再度加熱、すなわち加熱工程を2回行うことにより、大根を食す時の適度な硬さ(柔らかさ)と食感(歯切れの良さ)とすっとした箸の入り方とを実現することができる。
図5に戻って、本実施形態では、第1加熱工程(ステップS33)において、選別・洗浄工程(ステップS1)及び切削・切断工程(ステップS2)を経た大根を加熱する。加熱は、低温スチーム装置を用いて行う。熱処理の温度は、例えば80℃〜95℃であり、好ましくは85℃である。熱処理の時間は、例えば25分〜45分であり、好ましくは30分である。つまり、比較的高温の80℃〜95℃で25分〜45分間加熱することで、軟化飽和状態に達する程度となる。
第1冷却工程(ステップS34)において、第1加熱工程(ステップS33)を経た大根を冷却する。冷却処理時間は、例えば20分である。
第2加熱工程(ステップS36)において、第1冷却工程(ステップS33)を経た大根を再度低温スチームによって加熱する。熱処理の温度は、例えば80℃〜95℃であり、好ましくは85℃である。熱処理の時間は、例えば25分〜45分であり、好ましくは30分である。
第2冷却工程(ステップS37)において、第2加熱工程(ステップS36)を経た大根を冷却する。冷却処理時間は、例えば20分である。
凍結工程(ステップS35)において、第2冷却工程(ステップS37)を経た大根を冷凍する。冷凍処理時間は、例えば−30℃〜−35℃、好ましくは−35℃である。凍結した冷凍大根は、−18℃〜−48℃、好ましくは−20℃〜−48℃の温度に保管する。
以下、冷凍大根の調理方法の一例について説明する。早煮タイプの調理用冷凍大根の場合、既にある程度柔らかいため、冷凍の状態で調味料と一緒に鍋等で加熱するだけで調理することができる。
以上のように製造された早煮タイプの調理用冷凍大根の解凍後の硬度は、例えば直径55mm、厚み20mmに切断した大根の場合、150g〜250g、好ましくは200gである。このように、早煮タイプの調理用途の場合、解凍後の硬度が第3タイプすなわち比較的低めとなっている。
以上説明した冷凍大根の製造方法によれば、加熱工程を2回行うことにより、非レトルト食品用のうち早煮タイプの調理用の用途に応じた所望の硬度(例えば200g)と食感を有する冷凍大根を製造することができる。つまり、大根を食す時の適度な硬さ(柔らかさ)と食感(歯切れの良さ)とすっとした箸の入り方とを実現することができる。
〔第4実施形態〕
以下、第4実施形態に係る冷凍大根及び冷凍大根の製造方法について説明する。なお、第4実施形態に係る冷凍大根及び冷凍大根の製造方法は、第1実施形態を変形したものであり、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様であるものとする。本実施形態では、非レトルト食品用のうち特に食材としての味付きタイプ用の冷凍味付大根の製造方法等について説明する。ここで、食材としての味付きタイプ用の冷凍大根とは、味付大根に最適な所定の硬度を有する冷凍保存用の大根を意味する。冷凍大根の解凍後の硬度は、例えば100g〜200gである。詳細は後述するが、この冷凍大根は、解凍後、調理され、食される際の硬度が100g〜200g程度になる。
図6に示すように、本実施形態の冷凍大根の製造方法は、選別・洗浄工程(ステップS1)と、切削・切断工程(ステップS2)と、第1加熱工程(ステップS43)と、第1冷却工程(ステップS44)と、第2加熱工程(ステップS46)と、第2冷却工程(ステップS47)と、浸漬工程と(ステップS48)と、凍結工程(ステップS45)とを備える。
本実施形態では、第1加熱工程(ステップS43)において、選別・洗浄工程(ステップS1)及び切削・切断工程(ステップS2)を経た大根を加熱する。加熱は、低温スチーム装置を用いて行う。熱処理の温度は、例えば80℃〜95℃であり、好ましくは85℃である。熱処理の時間は、軟化飽和時間以下であり、例えば25分〜45分であり、好ましくは30分である。つまり、比較的高温の80℃〜95℃で25分〜45分間加熱することで、軟化飽和状態に達する程度となる。
第1冷却工程(ステップS44)において、第1加熱工程(ステップS43)を経た大根を冷却する。冷却処理時間は、例えば20分である。
第2加熱工程(ステップS46)において、第1冷却工程(ステップS43)を経た大根を再度低温スチームによって加熱する。熱処理の温度は、例えば80℃〜95℃であり、好ましくは85℃である。熱処理の時間は、例えば25分〜45分であり、好ましくは30分である。
第2冷却工程(ステップS47)において、第2加熱工程(ステップS46)を経た大根を冷却する。冷却処理時間は、例えば20分である。
浸漬工程(ステップS48)において、第2冷却工程(ステップS47)は加熱した大根を加熱した調味液または冷却した調味液に浸漬して行う。浸漬処理時間は、60分〜120分、好ましくは90分である。冷凍味付大根に用いる調味料は、所望の味になるように、例えば和風の場合、砂糖、食塩、醤油、グルタミン酸ナトリウム(MSG(Monosodium Glutamate))その他のアミノ酸、酒、みりん、及びかつお節、昆布、鶏等のだし汁を用いる。また、和風の調味料以外にも、カレーやシチュー等の洋風の調味料や、中華風の調味料を用いることもできる。調味料と加熱した大根とを混合することにより、大根の内の水分と調味料とが置換し、大根に味が浸透する。調味料と加熱した大根とを袋に充填し浸漬する際、常圧下よりも減圧下におくことによって、浸透性を高め、短時間に調味料を大根に浸透させることができる。
凍結工程(ステップS45)において、浸漬工程(ステップS48)を経た大根を冷凍する。冷凍処理時間は、例えば−30℃〜−35℃、好ましくは−35℃である。凍結した冷凍大根は、−18℃〜−48℃、好ましくは−20℃〜−48℃の温度に保管する。
以下、冷凍大根の調理方法の一例について説明する。冷凍味付大根の場合、既に柔らかく、味も付いているため、冷凍の状態で大根を熱湯で20分〜30分解凍し、そのまま摂取することができる。また、冷蔵庫での中で自然解凍や、電子レンジによる解凍もできる。また、さらに調理してもよい。
以上のように製造された冷凍味付大根の解凍後の硬度は、例えば直径55mm、厚み20mmに切断した大根の場合、100g〜200g、好ましくは150gである。このように、味付大根の調理用途の場合、解凍後の硬度が第4タイプすなわち極めて低めとなっている。
以上説明した冷凍大根の製造方法によれば、加熱工程を2回行うことにより、非レトルト食品用のうち味付タイプ用の用途に応じた所望の硬度(例えば200g)と食感を有する冷凍大根を製造することができる。
〔第5実施形態〕
以下、第5実施形態に係る冷凍大根及び冷凍大根の製造方法について説明する。なお、第5実施形態に係る冷凍大根及び冷凍大根の製造方法は、第1実施形態を変形したものであり、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様であるものとする。
本実施形態において、加熱工程(ステップS3)の加熱は、ボイルによって行う。ボイルによって加熱処理することにより、簡易に大量の大根を加熱することができる。さらに、ボイル時に米糠を5%程度加えて大根と一緒にボイルすると、大根臭(沢庵臭/アク)を除去することができる。ボイルによる加熱処理は、湯を満たした釜や鍋に大根を投入することによって行う。湯の温度は、予め所定の処理温度に保持されている。加熱処理の温度は、例えば80℃〜95℃であり、好ましくは85℃である。加熱処理の時間は、例えば25分〜45分であり、好ましくは30分である。
なお、ボイルによる加熱は、第2実施形態の加熱工程(ステップS3)、第3実施形態の第1加熱工程(ステップS33)及び第2加熱工程(ステップS36)、第4実施形態の第1加熱工程(ステップS43)及び第2加熱工程(ステップS46)で行ってもよい。
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、第3及び第4実施形態において、加熱工程を2回行うが、各加熱工程において加熱条件を異なるものとすることができる。また、2回の加熱工程において、加熱方法は、低温スチームとボイルとを組み合わせて行ってもよい。
S1……選別・洗浄工程、 S2…切削・切断工程、 S3…加熱工程、 S4…冷却工程、 S5…凍結工程

Claims (5)

  1. 大根を加熱する加熱工程と、
    前記加熱工程後、前記大根を冷却する冷却工程と、
    前記冷却工程後、前記大根を凍結する凍結工程と、
    を備え、
    凍結直前の前記大根は、レトルト食品用の食材としての用途に応じた加熱温度である60℃以上70℃以下及び加熱時間である50分以上80分以下で加熱することにより、解凍後の前記大根に施されるレトルト加工を予め補うような硬度と食感に調整され、前記大根を調理することを含めて前記大根を2回加熱することで、食する際の硬度を非レトルト食品と同じにすることを特徴とする冷凍大根の製造方法。
  2. 前記加熱工程は、低温スチーム及びボイルのいずれか一方によって行うことを特徴とする請求項1に記載の冷凍大根の製造方法。
  3. 前記大根は、前記加熱工程前に維束管が除去されることを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか一項に記載の冷凍大根の製造方法。
  4. 前記凍結工程を経た大根を解凍した後の当該大根の硬度が、500g以上600g以下であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の冷凍大根の製造方法。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の冷凍大根の製造方法を用いて製造した冷凍大根。
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