JP2007228870A - アクアガスを用いた農産物のフード供給システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】農産物をアクアガスを用いて低侵襲的に加熱処理することによって、ビタミンCの減少及び/又は糖類の増加の抑制、及び歩留まりの向上を図り、食材に次の優位性:高い歩留まり、旬の高品質維持、官能性の向上、簡便性の向上、長期間冷蔵保存性及びその保存安定性を付与して、冷蔵及び/又は輸送することを特徴とする農産物のフード供給システム、及び農産物の加工処理方法。
【効果】農産物を機能性を損なうことなしに、高い歩留まり、旬の高品質維持、官能性の向上、簡便性の向上、長期間冷蔵保存性及びその保存安定性等の優位性を付与した食材として供給することが可能な農産物のフード供給システム及び農産物の加工処理方法を提供することができる。
【選択図】図2
Description
(1)農産物をアクアガスを用いて低侵襲的に加熱処理することによって、ビタミンCの減少及び/又は糖類の増加の抑制、及び歩留まりの向上を図り、食材に次の優位性:高い歩留まり、旬の高品質維持、官能性の向上、簡便性の向上、長期間冷蔵保存性及びその保存安定性を付与して、冷蔵及び/又は輸送することを特徴とする農産物のフード供給システム。
(2)農産物が、馬鈴薯、大根、南瓜、トウモロコシ、枝豆である前記(1)記載の農産物のフード供給システム。
(3)食材が、農産物の加熱済み食材又はそれを含む調理済み食品である前記(1)記載の農産物のフード供給システム。
(4)農産物をアクアガスを用いて低侵襲的に加熱処理することによって、ビタミンCの減少及び/又は糖類の増加の抑制、及び歩留まりの向上を図り、食材に次の優位性:高い歩留まり、旬の高品質維持、官能性の向上、簡便性の向上、長期間冷蔵保存性及びその保存安定性を付与して、冷蔵及び/又は輸送することを特徴とする農産物の加工処理方法。
(5)農産物が、馬鈴薯、大根、南瓜、トウモロコシ、枝豆である前記(4)記載の農産物の加工処理方法。
(6)食材が、農産物の加熱済み食材又はそれを含む調理済み食品である前記(4)記載の農産物の加工処理方法。
本発明は、葉菜を除く収穫農産物を速やかに冷蔵保管し、下拵えを行い、保冷車で加工場に搬入し、これをアクアガス加熱装置で低侵襲的、且つ迅速に芯温70〜95℃、又は、調理済み温度まで加熱し、冷蔵庫内でこれを無菌的、且つ低侵襲的に芯温3〜5℃まで素早く余熱を徐熱し、これを直接、あるいはバリアー性の高い包材で無菌包装して、冷蔵庫内でその端境期まで長期間保管し、下拵え及び/又は加工し、必要により、アクアガス装置で低侵襲的に所定温度まで加熱及び殺菌して、冷蔵及び/又は輸送により食材として供給することを特徴とするものである。
(1)農産物を機能性を損なうことなしに、高い歩留まり、旬の高品質維持、官能性の向上、簡便性の向上、長期間冷蔵保存性及びその保存安定性等の優位性を付与した食材として供給することが可能な農産物のフード供給システム及び農産物の加工処理方法を提供することができる。
(2)農産物の高品質食材・食品への加工及び供給が可能となり、生産農家には作物の高付加価値化と出荷調整が、産地加工業者には産地振興が、そして、消費者には食の安心と安全確保と食生活の健全化が実現する。
本試験例では、上述のアクアガス発生装置を用いて、アクアガスの発生試験を実施した。アクアガス発生装置の運転を開始し、準密閉状態の加熱室(加熱チャンバー)を水蒸気温度と同温度に加熱し、次いで、該チャンバーに300℃に加熱された水蒸気を連続的に噴射させて、チャンバーの内部を常圧状態のまま水蒸気で充満させた。運転開始から25分経過後に微細水滴と湿熱水蒸気の混合状態を作り出し、約7分後に湿度99.9%、酸素濃度0.01%のアクアガスの状態に達した。上記アクアガス発生装置による気体生成過程におけるチャンバー内の温度、湿度、酸素濃度、排気温度を測定した結果、25分経過後に、チャンバー内の酸素濃度の急激な低下及び湿度の急激な上昇を経て、アクアガスが生成された。
本試験例では、水蒸気発生用パネルヒータ(2kw)、加熱室内の加熱ヒータ(10kw)を用いて、アクアガス発生装置の運転時の100℃から300℃までの水蒸気吐出温度と、装置内温度、装置内湿度、及び装置内酸素濃度との関係を調べた。上記パネルヒータは100℃以上において、連続最大運転とし、上記加熱ヒータは110℃以上において、連続最大運転とした。ただし、100℃以下においては、その設定温度に設定した。その結果、約100〜115℃の気化発生期の水蒸気では、温度上昇に時間を要し、約120℃以上の水蒸気は装置内温度に連動して短時間、かつ安定な温度上昇を示し、装置内温度と水蒸気温度がきわめて安定に制御し得ることが分かった。他方、115℃前後の水蒸気は、準安定状態ではあるが、高密度で高い潜熱量を有する熱媒体として利用し得ると考えられる。これにより、本発明では、これらの準安定及び安定状態のアクアガスを、その特性を生かして、農産物の種類、加熱加工の目的等に応じて任意に選択し、使用することが可能であることが分かった。
本試験例では、アクアガス発生時における水蒸気及び微細水滴噴射ノズル付近の温度変化を調べた。その結果、約95〜150℃の温度領域で約10〜40℃の温度差の振幅で連続的かつ短時間の温度変化が生起することが分かった。また、上記温度差の振幅と、微細水滴と湿熱水蒸気及び乾熱水蒸気の組成は、噴射する水蒸気の温度と装置内温度を調節することにより、変化させ得ることが分かった。また、アクアガス発生時における装置内温度と気体水温度を比較した。供給水を加熱装置で余熱し、供給水量は定量ポンプ115spm(3.62l/h)とした。その結果、装置内温度を約120〜150℃の温度範囲で調節することにより、アクアガスの約20〜50℃の温度差の振幅の条件で連続振幅加熱できることが分かった。
ジャガイモの表面温度については、アクアガスと熱湯による処理において、ほぼ等しい上昇が見られたが、過熱水蒸気による処理においては、アクアガス、熱湯と比較して、表面温度上昇は遅くなった。これは、それぞれの加熱媒体の熱伝達率の違いによるものと考えられる。しかしながら、ジャガイモの中心温度については、いずれの処理においても大きな違いは見られなかった。これはいずれの加熱方法においてもジャガイモ表面における熱流束がジャガイモ内部への熱流に対してほぼ飽和しており、ジャガイモ中心温度の上昇はジャガイモ自身の熱拡散係数に律速されていたためと考えられる。
加熱処理によるジャガイモの力学特性の変化をクリープメーターRE−33005(株式会社山電製)を用い、Φ2mm 円柱プランジャをジャガイモ中心部に挿入して破断応力と破断歪率を測定した。破断応力についてはアクアガス、過熱水蒸気により処理したものが熱湯にて処理したものよりも大きく、また、破断歪率についてもアクアガス、過熱水蒸気により処理したものが大きくなった。熱湯で処理したジャガイモは軟化が著しく非常に崩れやすくなっていたが、アクアガスならびに過熱水蒸気にて処理したジャガイモは熱湯で処理したものと比較して、軟化が抑えられ形状も良く保たれていた。
色彩の測定は色彩色差計CR−300(ミノルタ株式会社製)で、表色系にはL*a*b*(CIE1976)を用いた。加熱処理により全体的に明度と彩度が下がる傾向が見られた。ジャガイモ表皮の色に着目すると、熱湯で処理したジャガイモとアクアガス、過熱水蒸気で処理したジャガイモの間に有意な差が見られた。しかしながら、ジャガイモ内部の色については各処理間に差は見られなかった。
目減りについては、図2に示した様に、過熱水蒸気で処理したジャガイモの目減りは3%弱であったが、アクアガス処理では約1%であった。また、熱湯で処理したものはアクアガスによるものとほぼ等しい結果となった。アクアガス処理ではアクアガス中に分散する微細水滴がジャガイモ表面に付着するために、目減りが抑制されたと考えられた。
殺菌試験の結果、枯草菌胞子を接菌した後、加熱処理を施していないものでは1ml当たり10の6乗の菌が検出されたが、30分間のアクアガス処理を施したジャガイモでは枯草菌は死滅した。尚、一般生菌数も検出されなかった。
アクアガス処理したジャガイモを貯蔵した後の特異性に関しては、図3に示した。
還元糖類の含有量については、収穫後、生の状態で冷蔵貯蔵した物については増加が見られたが、アクアガス処理をした後貯蔵したものについては、収穫直後の含有量とほぼ等しいという結果になった。アクアガス処理により、冷蔵貯蔵中のジャガイモの品質低下を抑制できたものと考えられた。
アクアガス処理をせずに冷蔵貯蔵したものに比べて、アクアガス処理を施してから4ヶ月間冷蔵貯蔵したジャガイモのビタミンC残存率は有意に高かった。
ジャガイモの組織構造の観察結果を図4に示した。上が未処理のジャガイモのSEM写真で、下段左側がアクアガス処理をせずに冷蔵貯蔵したもので、右側がアクアガス処理を施してから冷蔵貯蔵したジャガイモのSEM写真である。両者を比較すると、アクアガス処理を施してから貯蔵したジャガイモには明瞭な構造が確認できる。これは、アクアガス処理をせずに冷蔵したジャガイモでは澱粉の分解等と共に、細胞壁など組織構造の劣化や分解が進んだためと考えられた。
優位性;1)歩留まりが高い、2)低侵襲性である(ビタミンCの損耗を抑制し、組織の損傷も無く、長期間に亘って旬の高品質を維持できる)、3)殺菌性があるため、冷蔵保存性が高い、4)農産物食材との相性が良く、長期間冷蔵保存後も旬の官能性を維持できる、5)下拵え済みであり、簡便性は高い、6)以上から、残飯率が低く消費地における環境負荷が少ない。
薯畑で収穫した男爵新薯を10k入り段ボール10個で試験室に搬入し、直ちに5〜10℃の専用冷蔵ケースに段ボールごと収納し、保管した。原料薯の対照サンプルを調製するために、各段ボールから任意に選んで真空パックして冷凍保存に供した(原薯の対照)。また、各段ボールから任意に選んで開封包装して冷蔵保存に供した。(冷蔵保存原薯の対照)。原料薯の澱粉価測定は、規定濃度食塩水浸漬簡便法によった。男爵新薯の165個の平均でその澱粉価は13.1であった。
平均8℃で保管中の男爵新薯2.240gを冷清水に浸漬後、表皮の損傷を最小限に留めるために、柔らかいスポンジで泥を落とし、除菌型冷蔵庫で3±2℃まで冷却後、パンチングトレーに入れて、アクアガス加熱装置で芯温80℃到達まで14分50秒間加熱した(以降、「アクアガス80皮付きラウンド新薯」と言うことがある。)。当該トレーごと無菌的に3±2℃の除菌型冷蔵庫内に移し、速やかに余熱を除去、品温10℃まで下げた。このトレーをクリーンベンチ内に移して、手早く市販実験用無菌パックで包装後、3℃の冷蔵庫内で120日間保存した(表1)。収率99%。
AQG男爵芋 :46.4%(上記で調製したものを破砕して使用)
AQG人参 :10%(3mmイチョウ切りのAQG60秒間加熱したものを使用)
AQGキャベツ:10%(4割カットをAQG2分間加熱後乱切りしたものを使用)
AQG胡瓜 :10% (1本をAQG60秒間加熱後スライスしたものを使用)
AQG玉葱 :7.1% (5mmスライスをAQG30秒間加熱したものを使用)
マヨネーズ :15%
上白糖 :1%
生クリーム :0.4%
食塩 :0.1%
胡椒 :0.01%
大根 :48%(上記で調製したものを半割にして使用)
醤油 :3.94%
上白糖 :5.91%
風味だし :1.75%(顆粒)
鶏がらスープ:0.88%(顆粒)
水 :39.6%
新筍 :49.5%(上記で調製したものを銀杏切にして使用)
醤油 :4.94%
みりん :4%
上白糖 :3.2%
風味だし :0.82%(顆粒)
鶏がらスープ:0.16%(顆粒)
こく味調味料:0.16%
鰹節破片 :0.2%
水 :37%
南瓜 :1kg
調味液(噴霧):10g(調味液;醤油14.2%、合せ出汁14.2%、
水71.6%)
上白糖 :80g(まぶす)
上記処方をアクアガスで4分間加熱した「南瓜煮」は、初発一般生菌数及び10℃4日間保存後が共に300以下であった。市販冷凍南瓜を使った蒸し加熱で11分間加熱調理した対照は、初発は300以下であるが、10℃4日間保存後は1.1×104となった。
Claims (6)
- 農産物をアクアガスを用いて低侵襲的に加熱処理することによって、ビタミンCの減少及び/又は糖類の増加の抑制、及び歩留まりの向上を図り、食材に次の優位性:高い歩留まり、旬の高品質維持、官能性の向上、簡便性の向上、長期間冷蔵保存性及びその保存安定性を付与して、冷蔵及び/又は輸送することを特徴とする農産物のフード供給システム。
- 農産物が、馬鈴薯、大根、南瓜、トウモロコシ、枝豆である請求項1記載の農産物のフード供給システム。
- 食材が、農産物の加熱済み食材又はそれを含む調理済み食品である請求項1記載の農産物のフード供給システム。
- 農産物をアクアガスを用いて低侵襲的に加熱処理することによって、ビタミンCの減少及び/又は糖類の増加の抑制、及び歩留まりの向上を図り、食材に次の優位性:高い歩留まり、旬の高品質維持、官能性の向上、簡便性の向上、長期間冷蔵保存性及びその保存安定性を付与して、冷蔵及び/又は輸送することを特徴とする農産物の加工処理方法。
- 農産物が、馬鈴薯、大根、南瓜、トウモロコシ、枝豆である請求項4記載の農産物の加工処理方法。
- 食材が、農産物の加熱済み食材又はそれを含む調理済み食品である請求項4記載の農産物の加工処理方法。
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