JP4916069B2 - 結像素子ユニット、光書き込みユニットおよび画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、結像素子ユニット、光書き込みユニットおよび画像形成装置に関するもので、デジタル複写機、プリンタ、デジタルファクシミリなどのデジタル出力機器に適用可能なものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、デジタル複写機、プリンタ、デジタルファクシミリなどのデジタル画像出力機器の小型化に伴い、デジタル光書込を行うための光書込ユニットの小型化が要求されている。デジタル光書込方式として、現在では大きく分けて2種類に分類することができる。その一つは、半導体レーザ等の光源から出射された光束を光偏向器によって光走査し、走査結像レンズによって光スポットを形成する光走査方式であり、もう一つは、LEDアレイや有機ELアレイ等の発光素子アレイから出射された光束を、結像素子アレイによって光スポットを形成する固体光書込方式である。
【0003】
上記光走査方式は光偏向器によって光を走査するため、光路長が大きくなってしまうのに対し、上記固体光書込方式は光路長を非常に短くすることが可能であるため、光書込ユニットをコンパクトに構成することができるというメリットがある。また、光偏向器のような可動部品を用いないので、騒音を抑えることができる(低騒音)というメリットがある。
【0004】
以下に、固体光書込方式の光書込ユニットの概略を説明する。固体光書込方式の光書込ユニットは、複数の発光素子からなる発光素子アレイと、複数の結像素子からなる結像素子アレイとから構成される。一般的な固体光書込方式の光書込ユニットは、結像素子アレイとしてロッドレンズアレイを用いている。図37はその例を示している。図37において、発光素子アレイ324と感光体ドラムなどからなる像担持体326との間にロッドレンズアレイ322が配置されている。ロッドレンズアレイは結像作用を有し、発光素子アレイ324のオン・オフ状態を像担持体326の表面に例えば等倍像として結像させる。
【0005】
また、別の結像素子アレイを用いた例として、ルーフプリズムレンズアレイを用いた光書込ユニットの例を図38に示す。この光書込ユニットは、断面L字形のベース333の底部に発光素子アレイ331を配置するとともに、ベース333の角隅部にルーフプリズムレンズアレイ332を配置し、発光素子アレイ331からの光をルーフプリズムレンズアレイ332で集束させるとともにほぼ直角に光路を曲げ、像面334上に発光素子アレイ331の像を結像させるようになっている。
【0006】
上記従来例で用いられている発光素子アレイとしては、一般的に発光素子として発光ダイオード(LED)を所定の配列ピッチで配列したLEDアレイが用いられている。LEDアレイは、基板上に発光ダイオードアレイチップが実装されており、各発光ダイオードアレイチップ上には、発光ダイオード(LED)が数十〜数百個程度、所定間隔に配列されている。隣り合う発光ダイオードアレイチップは、その端部同士の発光ダイオードの間隔が、前記所定間隔になるように、基板上に実装されている。
【0007】
その他の発光素子アレイとしては、有機EL素子が配列されたELアレイや、半導体レーザ(LD)が配列されたLDアレイ等がある。LDアレイには、面発光型と端面発光型がある。また、蛍光管等の高出力光源に、液晶シャッタ等のシャッタアレイを用いたものも、発光素子アレイの一種として用いることが可能である。
【0008】
次に、固体光書込方式の光書込ユニットに用いられる結像素子アレイとしては、屈折率分布型のロッドレンズを複数個束ねたロッドレンズアレイが一般的に用いられている。図39はその例を示すもので、多数のロッドレンズ341が二列に俵積み状に束ねられ、周囲を側板342によって保持されている。ロッドレンズ341間の隙間には不透明部材343が充填され固化される。また、ロッドレンズが一列で構成されるものもある(図示しない)。
【0009】
その他の結像素子アレイの例として、図40に示すように、入射側レンズ面221、出射側レンズ面223、およびルーフプリズム223が一体的に形成されたルーフプリズムレンズアレイ(RPLA)220が提案されている。上記入射側レンズ面221、出射側レンズ面223、およびルーフプリズム223は複数個同じ方向に配列されている。ルーフプリズム223は、入射側レンズ面221から入射する光束を直角に曲げるように斜設されるとともに、一対の屋根型反射面で2回反射することにより、結像素子アレイの正立像を結像面に結ぶようになっている。
【0010】
発光素子アレイの従来例として、特開平11−78115号公報記載のものがある。これは、発光素子アレイ上に集積化して形成される個々の発光素子の放射角を狭化させるための反射構造を含む狭化光学系を備えることを特徴とする。個々の発光素子の放射角を狭めることにより、効率良く結像素子アレイに入射させることを狙ったものである。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
書き込む画像あるいは形成する画像の高密度化を図って、得られる画像の品質を高めるためには、個々の発光素子に微小な構造を作製する必要があり、発光素子アレイが大幅なコストアップとなる。
一方、結像素子アレイとしてロッドレンズアレイを用いた光書込ユニットが一般的に用いられているが、この結像素子アレイを用いた光書込ユニットを用いた画像形成装置において画像出力を行うと、その出力画像上に縦筋(モノクロ画像では白筋や黒筋)と呼ばれる濃度ムラが認識される。
【0012】
我々はこの濃度ムラの発生要因として、結像素子アレイに起因するビーム特性の不均一性と、発光素子アレイに起因する発光素子間隔の不均一性とがあることを実験によりつきとめた。
この要因の1つである結像素子アレイに起因するビーム特性の不均一性に対し、ロッドレンズアレイの構造が大きく影響していることが分かった。すなわち、ロッドレンズアレイは、図39に示すように、屈折率分布を持つロッドレンズ341が複数個束ねられて形成されていることから、隣り合うロッドレンズ間の光軸の向きにばらつきが生じやすい。1つの発光素子から放出された光束は複数のロッドレンズを介して結像されることから、各々のロッドレンズの光軸がばらつくことによって、各ロッドレンズを通過して得られる各々の像の形状や位置がばらついてしまう。そのため、合成される像はそのロッドレンズの光軸ばらつきに依存することになる。したがって、複数の発光素子に対応して結像される像は、そのロッドレンズアレイの光軸ばらつきに応じて変化することになる。すなわちビーム特性の不均一性をもたらす。また、光軸ばらつきの他にも、屈折率分布ばらつき、ロッド径ばらつき等の影響を受ける。
【0013】
そこで、発明者らは、複数の結像素子を一体的に形成することにより、光軸ばらつき等の加工誤差によるばらつきを低減できる結像素子としてルーフプリズムレンズを用いた光書込ユニットを提案している。
しかしながら、縦筋が認識できないような、ルーフプリズムレンズアレイを用いた光書込ユニットを達成する上では、ロッドレンズアレイを用いた光書込ユニットよりも、光学系の明るさにおいて不利であることが分かった。
【0014】
したがって、本発明では、ルーフプリズムレンズアレイを用いた結像素子ユニットにおいて、従来よりも明るさを向上できる光学系を実現することを目的とする。
また、ルーフプリズムレンズアレイを用いた光書込ユニットにおいて、従来よりも明るさを向上できる光書込ユニットを実現することを目的とする。
また、ルーフプリズムレンズアレイを用いた光書込ユニットを用いた画像形成装置において、従来よりも高速印字可能な画像形成装置を実現することを目的とする。
【0015】
環境対応面から見てみると、固体光書込方式を採用することにより、光走査方式に比べて、ユニット部品および材料の低減によって光書込ユニットをコンパクトに構成できるという利点、光偏向器のような可動部品がなく低騒音であるという利点がある。
さらに、従来よりも明るさを向上できることから、高速印字が可能な画像形成装置が実現でき、従来と同じ印字速度であれば、発光素子アレイの発光パワーを低減することができ、低電力(省エネルギー)を実現することができる。
【0016】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、第1長尺カップリングレンズと、入射レンズ面、ルーフプリズム部、出射レンズ面からなるルーフプリズムレンズが複数個一体的に配列されたルーフプリズムレンズアレイとを有してなる結像素子ユニットであって、第1長尺カップリングレンズは、ルーフプリズムレンズアレイの配列直交方向に正のパワーを有し、かつルーフプリズムレンズの入射レンズ面側に配置されていて、配列直交方向に正のパワーを有する第2長尺カップリングレンズがルーフプリズムレンズの出射レンズ側に配置され、配列直交方向に中間像が形成されるように構成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項2記載の発明は、光スポットを形成するための光書込ユニットにおいて、複数の発光素子が所定間隔で配列された発光素子アレイチップが複数配列されてなる発光素子アレイと、第1長尺カップリンズレンズおよびルーフプリズムレンズアレイを有してなる結像素子ユニットとを有し、第1長尺カップリングレンズは、ルーフプリズムレンズアレイの配列直交方向に正のパワーを有し、かつルーフプリズムレンズの入射レンズ面側に配置されていて、配列直交方向に正のパワーを有する第2長尺カップリングレンズがルーフプリズムレンズの出射レンズ側に配置され、配列直交方向に中間像が形成されるように構成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項3記載の発明は、複数の発光素子が所定間隔で配列された発光素子アレイチップが複数配列されてなる発光素子アレイと、第1長尺カップリンズレンズおよびルーフプリズムレンズアレイを有してなる結像素子ユニットとを有してなる光書込ユニットが露光ユニットとして用いられる画像形成装置において、第1長尺カップリングレンズは、ルーフプリズムレンズアレイの配列直交方向に正のパワーを有し、かつルーフプリズムレンズの入射レンズ面側に配置されていて、配列直交方向に正のパワーを有する第2長尺カップリングレンズがルーフプリズムレンズの出射レンズ側に配置され、配列直交方向に中間像が形成されるように構成されていることを特徴とする。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明にかかる結像素子ユニット、光書き込みユニットおよび画像形成装置の実施の形態について説明する。
第1長尺カップリングレンズとルーフプリズムレンズアレイから構成される結像素子ユニットの概略を、図1に配列直交方向の断面で示す。図1において、第1長尺カップリングレンズ1は、配列直交方向に正のパワーを有しており、かつルーフプリズムレンズアレイ2の入射レンズ面21側、すなわち、物体面3とルーフプリズムレンズアレイ2の間に配置されている。第1長尺カップリングレンズ1はメニスカス形状で、その斜視図を図2に示す。図2に示すように、第1長尺カップリングレンズ1は配列方向にはパワーを有していない。
【0022】
ルーフプリズムレンズアレイ2は、入射レンズ面21と、ルーフプリズム部22と、出射レンズ面23とからなるルーフプリズムレンズが複数個一体的に配列されている。その斜視図を図3に示す。物体面3に位置する発光素子から放出された光束は、第1長尺カップリングレンズ1により配列直交方向にカップリングされ、その正のパワーにより配列直交方向に収束される。その後、ルーフプリズムレンズアレイ2の入射レンズ面21を透過し、ルーフプリズム部22をなす略直角に配置された2つのルーフプリズム面で全反射され、出射レンズ面23を介して像面4に結像する。ルーフプリズムレンズの配列方向においては、第1長尺カップリングレンズ1はパワーを持たず、透過するのみで、ルーフプリズムレンズの入射レンズ面21と出射レンズ面23のパワーにより像面4に結像する。図1中のα’は、物体面3に位置する発光素子から放出された光束を結像素子ユニットが配列直交方向にカップリングし、取り込むことができる光束の角度を示す。
【0023】
上記第1長尺カップリングレンズ1が無く、ルーフプリズムレンズアレイ2のみから構成される結像素子ユニットの概略図(配列直交方向の断面図)を図4に示す。図4中のαは、物体面3に位置する発光素子から放出された光束をルーフプリズムレンズアレイ2のみからなる結像素子ユニットが配列直交方向にカップリングし、取り込むことができる光束の角度を示す。
【0024】
本発明の前記実施形態では、ルーフプリズムレンズの入射レンズ面21側に、ルーフプリズムレンズの配列直交方向に正のパワーを持つ第1長尺カップリングレンズ1を配置することにより、
α’>α
を達成することができる。なお、配列方向においては、第1長尺カップリングレンズ1がパワーを持っていないことから、第1長尺カップリングレンズ1による浮き上がりの影響で光路が平行シフトすることはあっても、光束を取り込む角度に差異はない。したがって、結像素子ユニットの明るさは、αに略比例する。したがって、第1長尺カップリングレンズ1を挿入することにより、結像素子ユニットの明るさは、略(α’/α)倍に向上する。
【0025】
上記実施形態をさらに具体的に説明する。図5に示すように、第1長尺カップリングレンズ1は正のパワーを持つメニスカス形状であり、ルーフプリズムレンズの入射レンズ面21側に凹となるように配置する。図5から分かるように、第1長尺カップリングレンズ1を挿入することにより、結像素子ユニットが取り込むことができる光束の角度(α’)は大きくなり、結像素子ユニットの明るさを向上させることができる。
【0026】
図6は、図5に示す例の展開図である。図示するように、各々の面間隔をd’、曲率半径をr、屈折率をNとしたとき、近軸光線追跡を行い、結像素子ユニットが取り込むことができる光束の角度(α’)を求める。なお、近軸光線追跡を行うにあたり、換算面間隔e’、面のパワーφを用いる。ここで、面番号をmとしたとき、換算面間隔e’、面のパワーφは次式で書くことができる。
em’=dm’/Nm’
φm=(Nm’−Nm)/rm
e’とφで表した展開図を図7に示す。
【0027】
以下に具体的な実施例を示す。なお、ルーフプリズムレンズについては同一の構成とし、第1長尺カップリングレンズ1に関するパラメータ(d0’、d1’、d2’、r1、r2)を変化させる。そのパラメータを表1に示す。
表1
【0028】
上記より、近軸光線追跡を行うための、結像素子ユニットに対するe'、φを表2に示す。なお、表2において「従来」とは、第1長尺カップリングレンズ1が無く、結像素子ユニットがルーフプリズムレンズアレイ2のみからなる場合を表している。
表2
【0029】
上記表の実施例1について、光線追跡した例を図8に示す。図8中の光線は最周辺の光線を追跡したものである。なお、最周辺の光線はルーフプリズムの入射レンズ面、もしくは出射レンズ面の開口径で制限され、この検討例ではh=0.46mmとした。これより得られたα’を表3に示す。
表3
表3から明らかなように、第1長尺カップリングレンズ1を挿入することにより、従来(α=0.05)よりα’は大きくなり、結像素子ユニットの明るさは向上している。
【0030】
ここで、物体面3から第1長尺カップリングレンズ1の出射レンズ面までの距離をS’(=d0’+d1’)、物体面3からルーフプリズムレンズの入射レンズ面21までの距離をL(=d0’+d1’+d2’)としたとき、
P=S’/L*ABS(φ1*φ2)
と置くと、Pと、明るさ向上率(α'/α)の関係は表4のようになる。ABS(x)は、xの絶対値を表す。
表4
Pと(α’/α)を図9にプロットする。これよりほぼ比例関係にあることが分かる。
【0031】
以下の理由により、0.03≦P≦0.15 を満たすことが望ましい。すなわち、物体面3から第1長尺カップリングレンズ1までの距離が小さい、すなわちS’が小さいと、明るさ向上を望むことができない。また、第1長尺カップリングレンズ1のパワーが小さい、すなわちABS(φ1*φ2)が小さいと、ルーフプリズムレンズが取り込める光束の角度を大きくすることができず、明るさ向上を望むことができない。したがって、5割以上の明るさ向上を得るために(α’/α≧1.5)、0.03≦Pとすることが望ましい。
【0032】
一方で、物体面3から第1長尺カップリングレンズ1までの距離が大きい、すなわち、S’が大きいと、第1長尺カップリングレンズ1のレンズ面の有効径が大きくなってしまい、収差劣化を引き起こすとともに、第1長尺カップリングレンズ1の加工が難しくなる。このことについて実施例3を用いて説明する。実施例3について光線追跡した例を図10に示す。第1長尺カップリングレンズ1の入射レンズ面の光線高さhは約0.8mmである。一方でその曲率半径はr1=1.2mmであり、曲率半径に対する光線高さがかなり大きくなっており(h/r1>0.5)、収差の劣化、および加工の難易度が高い。したがって、P≦0.15とすることが望ましい。
【0033】
上記実施例1〜12について、物体面と結像素子ユニットと像面との関係によって定まる配列直交方向の横倍率の絶対値Msを求めた結果を表5に示す。
表5
これより、第1長尺カップリングレンズ1を挿入することにより、ルーフプリズムレンズの配列直交方向の横倍率が大きくなっていることが分かる。また、明るさ向上率(α'/α)と横倍率Msとはほぼ比例関係にある。横倍率が大きくなると、ビームスポットが拡大されるため、あまり横倍率が大きくなると解像力の劣化を引き起こしてしまう。
【0034】
例えば、4辺が20μm(600dpi相当)の矩形の面状光源を考えた場合、Ms=1.0であれば、収差による結像特性の劣化(約20μm)を考慮すると、ビームスポット径は
20*1.0+20=40
より、約40μmレベルとなり、600dpiの画素サイズ(42.3μm)とほぼ同等のビームスポット径が得られる。
Ms=3.0とすると、
20*3.0+20=80
より、約80μmレベルとなり、ビームスポット径は約2倍となり、600dpi画素サイズの2倍となる。画素サイズの2倍程度であれば、実用上として用いることができる。したがって、5割以上の明るさ向上と、上記ビームスポット拡大による解像力の劣化を鑑みると、
1.5≦Ms≦3.0
を満たすことが望ましい。
【0035】
結像素子ユニットを構成するレンズ面の少なくとも1面は配列直交方向に非円弧形状とすることができる。非円弧形状とすることにより、配列直交方向に収差補正を行うことができる。例えば、ルーフプリズムレンズの入射レンズ面、または出射レンズ面を共軸非球面として、配列方向においても併せて収差補正することもできる。
【0036】
さらに、第1長尺カップリングレンズの入射レンズ面において、配列直交方向に非円弧形状とすることができる。図8や図10に示すように、結像素子ユニットを構成するレンズ面のうち、第1長尺カップリングレンズの入射レンズ面の有効径が最も大きくなっている。有効径の大きいレンズ面において収差の劣化は大きくなることから、このレンズ面に非円弧形状を用いることにより、より有効に収差補正を行うことができる。
【0037】
前記実施例1〜12において、ルーフプリズムレンズは、物体面と像面との関係において、配列方向に略正立等倍系、配列直交方向に略倒立等倍系をなしている。さらに、ルーフプリズムレンズの入射レンズ面と出射レンズ面は共軸系であり、アナモフィック面とするより、加工性に優れている。
【0038】
また、ルーフプリズムレンズは、物体面と像面との関係において、配列方向には略正立等倍系をなしているとともに、入射レンズ面、および/もしくは出射レンズ面をアナモフィック面とすることができる。アナモフィック面とは配列方向のパワーと配列直交方向のパワーが異なるような面であり、シリンドリカル面やトロイダル面、自由曲面等の面形状を表す。したがって、配列直交方向においては、第1長尺カップリングレンズの入射レンズ面および出射レンズ面、ルーフプリズムレンズの入射レンズ面および出射レンズ面の4面のパワーを設定することができ、設計の自由度を大きくすることができる。
【0039】
このような実施形態の具体例を以下に示す。図11に示すように、第1長尺カップリングレンズ11はシリンドリカル形状であり、かつルーフプリズムレンズ12はアナモフィックレンズすなわちアナモフィック面を持つレンズである。図12にシリンドリカル形状の第1長尺カップリングレンズ11を示す。第1長尺カップリングレンズ11は、配列直交方向において、一方の面はシリンドリカル面を有し、他方の面は平面である。
また、図13に示すように、ルーフプリズムレンズアレイ12は、配列方向には略正立等倍系をなしているので、ルーフプリズムレンズの配列直交方向において、入射レンズ面13および出射レンズ面14のいずれかは、配列方向のパワーと異なるパワーを持っており、アナモフィック面を形成している。
【0040】
図11から分かるように、第1長尺カップリングレンズ11を挿入することにより、結像素子ユニットの明るさ、すなわち、結像素子ユニットが取り込むことができる光束の角度(α’)は大きくなる。
【0041】
図14に、図11に示す実施形態の展開図を示し、以下に具体的な実施例を示す。第1長尺カップリングレンズ11に関するパラメータ(d0’、d1’、d2’、r1、r2)と、ルーフプリズムレンズに関するパラメータ(r3、r4)を変化させる。そのパラメータを表6に示す。なお、この表に示す実施例1〜9においては、第1長尺カップリングレンズ11は入射レンズ面がシリンドリカル面であるとし、出射レンズ面の曲率半径はr2=∞すなわち平面とした。もちろん、入射レンズ面を平面、出射レンズ面をシリンドリカル面とすることもできる。
表6
上記より、近軸光線追跡を行うための、結像素子ユニットに対するe'、φを表7に示す。
【0042】
表7
【0043】
上記表の実施例1について、光線追跡した例を図15に示す。図15中の光線は最周辺の光線を追跡したものである。なお、最周辺の光線はルーフプリズムの入射レンズ面、もしくは出射レンズ面の開口径で制限され、この検討例ではh=0.46mmとした。これより得られたα’を表8に示す。
表8
したがって、第1長尺カップリングレンズ11を挿入することにより、α’は大きくなり、結像素子ユニットの明るさは向上している。
【0044】
ここで、物体面3から第1長尺カップリングレンズの入射レンズ面までの距離をS(=d0’)、物体面からルーフプリズムレンズの入射レンズ面までの距離をL(=d0’+d1’+d2’)としたとき、
Q=S/L*φ12
と置くと、Qと、明るさ向上率(α'/α)の関係は表9のようになる。
表9
Qと(α’/α)を図16にプロットする。これよりほぼ比例関係にあることが分かる。
【0045】
以下の理由により、0.009≦Q≦0.033 を満たすことが望ましい。すなわち、物体面から第1長尺カップリングレンズまでの距離が小さい、すなわちSが小さいと、明るさ向上が望めない。また、第1長尺カップリングレンズのパワーが小さい、すなわちφ12が小さいと、ルーフプリズムレンズが取り込める光束の角度を大きくすることができず、明るさ向上が望めない。したがって、5割以上の明るさ向上を得るために、0.009≦Qとすることが望ましい。
一方で、物体面から第1長尺カップリングレンズまでの距離が大きい、すなわちSが大きいと、第1長尺カップリングレンズのレンズ面の有効径が大きくなってしまい、収差劣化を引き起こすとともに、第1長尺カップリングレンズの加工が難しくなる。
また、ルーフプリズムレンズの出射レンズ面が大きな負のパワーを持つようになると、結像素子ユニットの配列直交方向の横倍率が大きくなってしまう。
【0046】
このことについて実施例8、9を用いて説明する。まず実施例9について光線追跡した例を図17に示す。ルーフプリズムレンズの出射レンズ面のパワーはφ4=0であり、結像素子ユニットの配列直交方向横倍率の絶対値Msは、2.7倍である。
また実施例8について光線追跡した例を図18に示す。ルーフプリズムレンズの出射レンズ面のパワーはφ4=−0.06<0であり、結像素子ユニットの配列直交方向横倍率の絶対値Msは、3.2倍である。したがって、配列直交方向横倍率を3倍程度以下に抑えるためには、Q≦0.033とすることが望ましい。
【0047】
上記実施例1〜9について、物体面と結像素子ユニットと像面との関係によって定まる配列直交方向の横倍率の絶対値Msを求めた結果を表10に示す。
表10
表10より、第1長尺カップリングレンズを挿入することにより、配列直交方向の横倍率が大きくなっていることが分かる。横倍率が大きくなると、ビームスポットが拡大されるため、あまり横倍率が大きくなると解像力の劣化を引き起こしてしまう。
【0048】
したがって、5割以上の明るさ向上(α'/α≧1.5)と、上記ビームスポット拡大による解像力の劣化を鑑みると、
1.5≦Ms≦3.0を満たすことが望ましい。
【0049】
結像素子ユニットを構成するレンズ面の少なくとも1面は配列直交方向に非円弧形状とすることができる。非円弧形状とすることにより、配列直交方向に収差補正を行うことができる。さらに、第1長尺カップリングレンズのシリンドリカル面において、配列直交方向に非円弧形状とすることができる。図17や図18に示す例では、第1長尺カップリングレンズのシリンドリカル面の有効径が大きくなっている。有効径の大きいレンズ面において収差の劣化は大きくなることから、このレンズ面に非円弧形状を用いることにより、より有効に収差補正を行うことができる。
【0050】
この実施形態の具体的な例を以下に示す。図19に示すように、配列直交方向において正のパワーを有する第2長尺カップリングレンズ15をルーフプリズムレンズアレイ16の出射レンズ面17側に配置する。ルーフプリズムレンズアレイ16はアナモフィックレンズ(アナモフィック面を持つレンズ)である。本実施形態においては、第1および第2長尺カップリングレンズ15、20をシリンドリカルレンズとし、ルーフプリズムレンズアレイ16の出射レンズ面18を配列直交方向に平面としている。もちろん、第1および第2長尺カップリングレンズ15、20は両凸レンズでもよいし、メニスカスレンズでもよいのは言うまでもない。また、ルーフプリズムレンズの入射レンズ面をアナモフィック面としても良いし、出射レンズ面にパワーを持たせてもよい。
【0051】
図19から分かるように、第1および第2長尺カプリングレンズ15、20を挿入することにより、結像素子ユニットの明るさ、すなわち、結像素子ユニットが取り込むことができる光束の角度(α’)は大きくなる。
【0052】
図20に、図19に示す実施形態の展開図を示し、以下に具体的な実施例を示す。第1長尺カップリングレンズ15に関するパラメータ(d0’、d1’、d2’、r1)と、ルーフプリズムレンズに関するパラメータ(r3)と、第2長尺カップリングレンズ20に関するパラメータ(d4’、d5’、d6’、r6)を変化させる。そのパラメータを表11に示す。なお、本実施例1〜12では第1長尺カップリングレンズ15の出射レンズ面、ルーフプリズムレンズアレイ16の出射レンズ面18、第2長尺カップリングレンズ20の入射レンズ面は平面であるとする(r2=r4=r5=0)。
表11
【0053】
上記より、近軸光線追跡を行うための、結像素子ユニットに対するe'、φを表12に示す。
表12
【0054】
表12の実施例1について、光線追跡した例を図21に示す。図21中の光線は最周辺の光線を追跡したものである。なお、最周辺の光線はルーフプリズムの入射レンズ面17、もしくは出射レンズ面18の開口径で制限され、この検討例ではh=0.46mmとした。これより得られたα’を表13に示す。
表13
表13からわかるように、第1長尺カップリングレンズを挿入することにより、α’は大きくなり、結像素子ユニットの明るさは向上している。
【0055】
ここで、物体面から第1長尺カップリングレンズの入射レンズ面までの距離をS(=d0’)、物体面からルーフプリズムレンズの入射レンズ面までの距離をL(=d0’+d1’+d2’)、第1長尺カップリングレンズのパワーをφとしたとき、
R=S/L*φ2
と置くと、Rと、明るさ向上率(α'/α)の関係は表14のようになる。
(なお、φ=φ1+φ2−e1’*φ1*φ2であり、本実施例ではφ2=0であるので、φ=φ1となる)
表14
Rと(α’/α)を図22にプロットする。これよりほぼ2次関数で表せることが分かり、Rと(α’/α)には相関があることが分かる。
【0056】
以下の理由により、0.01≦R≦0.045 を満たすことが望ましい。すなわち、第1長尺カップリングレンズのパワーが小さい、すなわちφ2が小さいと、ルーフプリズムレンズが取り込める光束の角度を大きくすることができず、明るさ向上を望むことができない。したがって、5割以上の明るさ向上を得るために、0.01≦Rとすることが望ましい。
一方で、第1長尺カップリングレンズのパワーが大きい、すなわちφ2が大きいと曲率半径が小さくなってしまい、曲率半径に対する光線高さが大きくなってしまい、収差の劣化、および加工の難易度が高くなってしまう。
【0057】
このことについて、実施形態4を用いて説明する。実施形態4について光線追跡した例を図23に示す。第1長尺カップリングレンズの入射レンズ面の光線高さhは約0.71mmである。一方でその曲率半径はr1=1.35mmであり、曲率半径に対する光線高さがかなり大きくなっており(h/r1>0.5)、収差の劣化、および加工の難易度が高い。また、実施例3の光線追跡結果では、h=0.63mm、r1=1.4mmであり、h/r1<0.5となっている。
したがって、R≦0.045とすることが望ましい。
【0058】
上記実施例1〜12について、物体面と結像素子ユニットと像面との関係によって定まる配列直交方向の横倍率の絶対値Msを求めた結果を表15に示す。
表15
横倍率が大きくなると、ビームスポットが拡大されるため、あまり横倍率が大きくなると解像力の劣化を引き起こしてしまう。下記理由により、1.0≦Ms≦3.0を満たすことが望ましい。5割以上の明るさ向上を得るためには、Ms≧1.0であることが望ましい。実施例5はα’/α=1.4で、Ms=0.8となり、上記の範囲外となっている。ビームスポットの拡大による解像力の劣化を引き起こさない範囲として、Ms≦3.0であることが望ましい。
【0059】
実施例2について、光線追跡した例を図24に示す。光軸方向において、結像素子ユニットを対称系となる構成とすることで、配列直交方向の横倍率の絶対値Ms=1とすることができ、ビームスポットが拡大されることなく、結像素子ユニットの明るさを向上させることができる。
【0060】
結像素子ユニットを構成するレンズ面の少なくとも1面は配列直交方向に非円弧形状とすることができる。非円弧形状とすることにより、配列直交方向に収差補正を行うことができる。
さらに、第1長尺カップリングレンズの少なくとも1面は、配列直交方向に非円弧形状とすることができる。
【0061】
図23に示す例では、第1長尺カップリングレンズのシリンドリカル面の有効径が大きくなっている。このタイプ、すなわち、第1長尺カップリングレンズ+ルーフプリズムレンズアレイ+第2長尺カップリングレンズで構成されるタイプでは、第1長尺カップリングレンズの有効径が大きくなりがちである。したがって、有効径の大きいレンズ面において収差の劣化は大きくなることから、このレンズの少なくとも1面に非円弧形状を用いることにより、より有効に収差補正を行うことができる。
【0062】
本発明のさらに別の実施形態について説明する。図25において、ルーフプリズムレンズアレイの配列直交方向において正のパワーを有する第2長尺カップリングレンズ35がルーフプリズムレンズアレイ32の出射レンズ面34側に配置されるとともに、配列直交方向に中間像を形成するように構成されている。図25に示す例においては、第1および第2長尺カップリングレンズ31、35をシリンドリカルレンズとしている。もちろん、シリンドリカル面をルーフプリズムレンズアレイ32側に向けてもよいし、図26に示すような両凸レンズ36を用いてもよい。
【0063】
図25から分かるように、第1および第2長尺カップリングレンズ31、35を挿入することにより、結像素子ユニットの明るさ、すなわち、結像素子ユニットが取り込むことができる光束の角度は大きくなる。
【0064】
図27に、図25の実施形態の展開図を示す。結像素子ユニットは光軸方向において対称系な光学系(d0’=d6’、d1’=d5’、d2’=d4’、r1=−r6、r2=−r5、r3=−r4)とし、ルーフプリズムレンズ内部に中間像を形成することで、配列直交方向に略正立等倍系となり、ビームスポットの拡大を生じることなく、明るさを向上させることができる。
【0065】
以下に、上記実施形態の具体的な実施例を示す。第1長尺カップリングレンズ31、および第2長尺カップリングレンズ35に関するパラメータ(d0’、d1’、d2’、r1)を変化させる。そのパラメータを表16に示す。なお、本実施例においては第1長尺カップリングレンズ31の出射レンズ面、第2長尺カップリングレンズ35の入射レンズ面は平面であるとする(r2=r5=0)。
表16
【0066】
上記より、近軸光線追跡を行うための、結像素子ユニットに対するe'、φを表17に示す。
表17
【0067】
上記表中の実施例1について、光線追跡した例を図28に示す。図28中の光線は最周辺の光線を追跡したものである。なお、最周辺の光線は第1長尺カップリングレンズ、または第2長尺カップリングレンズを通過する光線高さで制限し、本検討ではh=0.5*r1とした。
これより得られたα’を表18に示す。
表18
【0068】
また、光線高さを大きく許容することによって、明るさを向上することができる。h=0.7*r1としたときの、実施例1について、光線追跡した例を図29に示す。また得られたα’を表19に示す。
表19
しかし、光線高さを大きく許したことにより、収差劣化が大きくなり、またレンズの加工難易度が高くなる。
【0069】
結像素子ユニットを構成するレンズ面の少なくとも1面は配列直交方向に非円弧形状とすることができる。非円弧形状とすることにより、配列直交方向に収差補正を行うことができる。
さらに、第1長尺カップリングレンズの少なくとも1面、および第2長尺カップリングレンズの少なくとも1面は、配列直交方向に非円弧形状とすることができ、なお望ましくは光軸に対して対称系な光学系となるように設けるとよい。
図28に示すように、明るさを大きく向上させるためには、第1長尺カップリングレンズ31の有効径が、曲率半径に対してかなり大きくなってくるので、非円弧形状を用いた収差補正が必要となる。
【0070】
上記表に示す実施例1〜3において、ルーフプリズムレンズは、物体面と像面との関係において、配列方向に略正立等倍系、配列直交方向に略倒立等倍系をなしている。さらに、ルーフプリズムレンズの入射レンズ面と出射レンズ面は共軸系であり、アナモフィック面とするよりも、加工性に優れている。
【0071】
また、ルーフプリズムレンズは、物体面と像面との関係において、配列方向には略正立等倍系をなしているとともに、入射レンズ面、および/もしくは出射レンズ面をアナモフィック面とすることができる。したがって、配列直交方向においては、第1長尺カップリングレンズの入射レンズ面および出射レンズ面、ルーフプリズムレンズの入射レンズ面および出射レンズ面、第2長尺カップリングレンズの入射レンズ面および出射レンズ面の6面のパワーを設定することができ、設計の自由度を大きくすることができる。また、光軸方向において対称形の光学系とする場合においても、第1長尺カップリングレンズ(すなわち第2長尺カップリングレンズも同形状)とルーフプリズムレンズの入射レンズ面(すなわち出射レンズ面も同形状)の3面のパワーを設定することができ、設計の自由度を大きくすることができる。
【0072】
本発明のさらに別の実施形態について説明する。図30において、ルーフプリズムレンズアレイ42の配列直交方向において負のパワーを有する第2長尺カップリングレンズ41をルーフプリズムレンズアレイ42の出射レンズ面43側に配置する。この実施形態においては、第1長尺カップリングレンズ41を正のパワーを持ったシリンドリカルレンズ、第2長尺カップリングレンズ45を、図31に示すように負のパワーを持ったシリンドリカルレンズとした。もちろん、第1および第2長尺カップリングレンズ41、45はシリンドリカルレンズのみに限られるものでないことはいうまでもない。
【0073】
図30から分かるように、第1および第2長尺カプリングレンズ41、45を挿入することにより、結像素子ユニットの明るさ、すなわち、結像素子ユニットが取り込むことができる光束の角度(α’)は大きくなる。
【0074】
図32に、図30に示す実施形態の展開図を示し、以下に具体的な実施例を示す。ここでは、d0’=d6’=4.033、d1’=d2’=d4’=d5’=3.0とし、第1長尺カップリングレンズ41に関するパラメータ(r1)と、ルーフプリズムレンズに関するパラメータ(r4)と、第2長尺カップリングレンズ45に関するパラメータ(r6)を変化させる。そのパラメータを表20に示す。なお、第1長尺カップリングレンズ41の出射レンズ面、第2長尺カップリングレンズ45の入射レンズ面は平面であるとする。
表20
【0075】
上記より、近軸光線追跡を行うための、結像素子ユニットに対するe'、φを表21に示す。
表21
【0076】
上記表中の実施例1について、光線追跡した例を図33に示す。図33中の光線は最周辺の光線を追跡したものである。なお、最周辺の光線はルーフプリズムの入射レンズ面、もしくは出射レンズ面の開口径で制限され、本検討ではh=0.46mmとした。
これより得られたα’を表22に示す。
表22
【0077】
結像素子ユニットを構成するレンズ面の少なくとも1面は配列直交方向に非円弧形状とすることができる。非円弧形状とすることにより、配列直交方向に収差補正を行うことができる。
さらに、第1長尺カップリングレンズの少なくとも1面は、配列直交方向に非円弧形状とすることができる。
図33に示すように、このタイプ、すなわち、第1長尺カップリングレンズ(正のパワー)+ルーフプリズムレンズアレイ+第2長尺カップリングレンズ(負のパワー)で構成されるタイプでは、第2長尺カップリングレンズの有効径は非常に小さくすることができる。したがって、ルーフプリズムレンズの入射レンズ面および出射レンズ面よりも、加工上有利である第1長尺カップリングレンズの少なくとも1面に非円弧形状を用いることにより、より有効に収差補正を行うことができる。
【0078】
これまで説明してきた結像素子アレイを用いて、発光素子アレイと合わせて光書込ユニットを構成することができる。
図34に本発明にかかる結像素子ユニットを用いた光書込ユニットの例を示す。この例は、図1から図3に示した結像素子ユニットを用いている。図34において、結像素子アレイを構成するルーフプリズムレンズアレイ2は図示しない保持部材に保持され、適宜の保持具によって、フレーム50に固定されている。また、例えばLEDアレイからなる発光素子アレイ51も、ルーフプリズムレンズアレイ2に対して位置決めされ、フレーム50に固定されている。発光素子アレイ51の発光面は物体面3と一致している。発光素子アレイ51の各発光素子(LED素子など)から放出された光は、ルーフプリズムレンズアレイ2によって、像面4、例えば感光体などからなる像担持体面に収束させられ、光スポットを形成する。
【0079】
発光素子アレイ51は、複数の発光素子が一定間隔を保ちながら配列されている。代表的な発光素子アレイとしては発光ダイオード(LED)アレイが用いられている。例として、LEDアレイの概略を図35に示す。図35(a)はLEDアレイの正面図、図35(b)は横断面図である。基板53上に、LEDアレイチップ54が複数個配列されており、その配列方向両側LEDを駆動するためのドライバIC55が実装されている。ドライバIC55はLEDアレイチップ54の配列方向片側にのみ配列される場合もある。また、ドライバIC55に画像信号等の情報を与える信号ケーブルを接続するためのコネクタ部56が設けてある。
【0080】
図35(c)はLEDアレイチップ54の模式図であり、チップ54上にはLED57が複数個配列されている。一般的には、1チップ54上に数十〜数百個のLED57が配列されており、基板53上には数十のLEDアレイチップ54が配列されている。例えば、600dpiでA4サイズを印字するためには、1チップ54上に128個のLEDが配列され、基板53上には40個のLEDアレイチップ54が配列されており、全部で128×40=5120個のLEDが配列されていることになる。
【0081】
これまで説明してきた結像素子アレイを用いて、上記のように光書込ユニットを構成することができ、さらに、この光書込ユニットを露光ユニットとして画像形成装置を構成することができる。
画像形成装置において、画像を形成するプロセスの1つとして、電子写真プロセスがある。この電子写真プロセス中の書き込みプロセスないしは露光プロセスを実行するために上記光書込ユニットを用いることにより、画像形成装置を構成することができる。以下、図36に基づいて、電子写真プロセスによる画像形成装置の例について概略を説明する。
【0082】
図36において、感光体ドラムからなる像担持体60の周囲には、図において時計回りに帯電ユニット61、光書込ユニット62、現像ユニット63、転写ユニット64、クリーニングユニット66、除電ユニット67が配置されるとともに、記録紙70に転写されたトナー像を定着する定着ユニット65が転写ユニット64の側方に配置されている。周知のとおり、時計方向に回転駆動される像担持体60に対して、帯電ユニット61で一様に電位を与え(帯電)、光書込ユニット62からの光スポットを像担持体60上に照射することにより潜像をつくり(露光)、その潜像に現像ユニット63でトナーを付着させトナー像をつくり(現像)、転写ユニット64で記録紙70にそのトナー像を写し(転写)、定着ユニット65で圧力や熱をかけ、記録紙70に融着させる(定着)させる。さらに、クリーニングユニット66で像担持体表面の残留トナーを除去し、除電ユニット67で残っている電荷を除去して一連の電子写真プロセスを終了する。
【0083】
上記光書込ユニット62として、前述の各実施形態にかかる結像素子ユニットが用いられている。例えば、この結像素子ユニットは、複数の発光素子が所定間隔で配列された発光素子アレイチップが複数配列されてなる発光素子アレイと、第1長尺カップリンズレンズおよびルーフプリズムレンズアレイを有してなり、第1長尺カップリングレンズは配列直交方向に正のパワーを有し、かつルーフプリズムレンズの入射レンズ面側に配置されてなるものである。さらには、第2長尺カップリングレンズを有するものであってもよく、前述の結像素子ユニットの実施形態のうち、いずれかを用いるものであればよい。
【0084】
また、本発明の光書込ユニットは、高速なカラー画像出力に有利な、タンデム型と呼ばれる画像形成装置にも適用できる。
【0085】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、配列直交方向に正のパワーを有するカップリングレンズを配置することで、光源から放出される光束を有効にルーフプリズムレンズに取り込むことができ、結像素子ユニットの明るさを向上させることができる。
【0086】
請求項2記載の発明によれば、1つのレンズの追加するのみで結像素子ユニットの明るさを向上させることができ、所期の効果を得るのに、コストアップを最小限に抑えることができる。
【0087】
請求項3記載の発明によれば、二つの長尺カップリングレンズを追加することにより、一つの長尺カップリングレンズを追加した場合よりも収差補正を良好に行うことができ、その上に結像素子ユニットの明るさを向上させることができる。また、第1、第2長尺カップリングレンズをシリンドリカルレンズにした場合は、部品の加工上有利な結像素子ユニットを得ることができる。
【0088】
請求項4記載の発明によれば、ルーフプリズムレンズアレイの配列方向直交方向に略正立等倍の結像径となり、ビームスポットが拡大されることなく、結像素子ユニットの明るさを向上させることができる。
【0089】
請求項5記載の発明によれば、結像素子ユニットの明るさを向上させることができるとともに、第2長尺カップリングレンズの有効径を小さくすることができ、光学部品加工上有利な結像素子ユニットを得ることができる。
【0090】
請求項6記載の発明によれば、上記のような効果を得ることができる結像素子ユニットを用いて光書き込みユニットを構成することにより、明るい光書き込みユニットを実現することができる。
【0091】
請求項7記載の発明によれば、上記の効果を得ることができる光書き込みユニットを用いて画像形成装置を構成することにより、印刷速度をより高速にすることができる画像形成装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる結像素子ユニットの実施形態を示す光学配置図である。
【図2】上記実施形態中の第1長尺カップリングレンズを示す斜視図である。
【図3】上記実施形態中のルーフプリズムレンズアレイを示す斜視図である。
【図4】従来の結像素子ユニットの例を示す光学配置図である。
【図5】上記実施形態の作用効果を説明するための光学配置図である。
【図6】上記実施形態の展開図である。
【図7】上記実施形態を各面の換算面間隔とパワーで表した展開図である。
【図8】上記実施形態の光線追跡図である。
【図9】上記実施形態によって得られる明るさ向上率の分布を示すグラフである。
【図10】本発明にかかる結像素子ユニットの別の実施形態の光線追跡図である。
【図11】同上実施形態の光学配置図である。
【図12】同上実施形態中の第1長尺カップリングレンズを示す斜視図である。
【図13】同上実施形態中のルーフプリズムレンズアレイを示す斜視図である。
【図14】同上実施形態の展開図である。
【図15】本発明にかかる結像素子ユニットのさらに別の実施形態の光線追跡図である。
【図16】同上実施形態によって得られる明るさ向上率の分布を示すグラフである。
【図17】本発明にかかる結像素子ユニットのさらに別の実施形態の光線追跡図である。
【図18】本発明にかかる結像素子ユニットのさらに別の実施形態の光線追跡図である。
【図19】同上実施形態の光学配置図である。
【図20】同上実施形態の展開図である。
【図21】本発明にかかる結像素子ユニットのさらに別の実施形態の光線追跡図である。
【図22】同上実施形態によって得られる明るさ向上率の分布を示すグラフである。
【図23】本発明にかかる結像素子ユニットのさらに別の実施形態の光線追跡図である。
【図24】本発明にかかる結像素子ユニットのさらに別の実施形態の光線追跡図である。
【図25】本発明にかかる結像素子ユニットのさらに別の実施形態を示す光学配置図である。
【図26】同上実施形態に適用可能な長尺カップリングレンズの別の例を示す斜視図である。
【図27】同上実施形態の展開図である。
【図28】本発明にかかる結像素子ユニットのさらに別の実施形態の光線追跡図である。
【図29】本発明にかかる結像素子ユニットのさらに別の実施形態の光線追跡図である。
【図30】同上実施形態の光学配置図である。
【図31】同上実施形態中の第2長尺カップリングレンズを示す斜視図である。
【図32】同上実施形態の展開図である。
【図33】本発明にかかる結像素子ユニットのさらに別の実施形態の光線追跡図である。
【図34】本発明にかかる光書き込みユニットの実施形態を示す断面図である。
【図35】本発明にかかる光書き込みユニットに用いることができる発光素子アレイの例を示す(a)は正面図、(b)は断面図、(c)は側面の模式図である。
【図36】本発明にかかる画像形成装置の例を概略的に示す正面図である。
【図37】従来の固体書き込み方式書き込みユニットの例を示す正面図である。
【図38】従来の固体書き込み方式書き込みユニットの別の例を示す断面図である。
【図39】従来の固体書き込み方式書き込みユニットに用いられるロッドレンズアレイの例を示す平面図である。
【図40】ルーフプリズムレンズアレイの例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 第1長尺カップリングレンズ
2 ルーフプリズムレンズアレイ
3 物体面
4 像面
21 入射側レンズ面
22 ルーフプリズム部
23 出射側レンズ面
15 第1長尺カップリングレンズ
20 第2長尺カップリングレンズ
Claims (3)
- 第1長尺カップリングレンズと、
入射レンズ面、ルーフプリズム部、出射レンズ面からなるルーフプリズムレンズが複数個一体的に配列されたルーフプリズムレンズアレイとを有してなる結像素子ユニットであって、
上記第1長尺カップリングレンズは、上記ルーフプリズムレンズアレイの配列直交方向に正のパワーを有し、かつ上記ルーフプリズムレンズの入射レンズ面側に配置されていて、
上記配列直交方向に正のパワーを有する第2長尺カップリングレンズが上記ルーフプリズムレンズの出射レンズ側に配置され、上記配列直交方向に中間像が形成されるように構成されていることを特徴とするデジタル出力機器に適用可能な結像素子ユニット。 - 光スポットを形成するための光書込ユニットにおいて、
複数の発光素子が所定間隔で配列された発光素子アレイチップが複数配列されてなる発光素子アレイと、
第1長尺カップリンズレンズおよびルーフプリズムレンズアレイを有してなる結像素子ユニットとを有し、
上記第1長尺カップリングレンズは、上記ルーフプリズムレンズアレイの配列直交方向に正のパワーを有し、かつ上記ルーフプリズムレンズの入射レンズ面側に配置されていて、
上記配列直交方向に正のパワーを有する第2長尺カップリングレンズが上記ルーフプリズムレンズの出射レンズ側に配置され、上記配列直交方向に中間像が形成されるように構成されていることを特徴とする光書き込みユニット。 - 複数の発光素子が所定間隔で配列された発光素子アレイチップが複数配列されてなる発光素子アレイと、
第1長尺カップリンズレンズおよびルーフプリズムレンズアレイを有してなる結像素子ユニットとを有してなる光書込ユニットが露光ユニットとして用いられる画像形成装置において、
上記第1長尺カップリングレンズは、上記ルーフプリズムレンズアレイの配列直交方向に正のパワーを有し、かつ上記ルーフプリズムレンズの入射レンズ面側に配置されていて、
上記配列直交方向に正のパワーを有する第2長尺カップリングレンズが上記ルーフプリズムレンズの出射レンズ側に配置され、上記配列直交方向に中間像が形成されるように構成されていることを特徴とする画像形成装置。
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