JP4915877B2 - マイクロレンズ用金型、マイクロレンズおよびそれらの製法 - Google Patents
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Description
なお、本明細書においては、マイクロレンズとはマイクロレンズアレイとマイクロレンズ単体の両方を含む意味であり、とくに必要がある場合のみマイクロレンズアレイまたはマイクロレンズ単体の用語を用いている。
そこで、マイクロレンズには、つぎのような製法が用いられる。なお、マイクロレンズは屈折型と回折型に二分されるので、それぞれ分けて説明する。
前記イオン交換法により屈折型マイクロレンズアレイを製造する場合、マイクロレンズ作製箇所に穴を設けた金属膜をガラス基板に形成し、この状態で溶融塩に浸す。溶融塩としてタリウム硫酸塩を使用した場合、ガラス基板を100時間以上浸す。この製法では、時間がかかるばかりか、理想的な屈折率分布を得ることは困難で、特に、マイクロレンズ周辺部の収差が大きくなるという欠点がある。
(a)アルミニウム薄膜を石英基板に形成し、アルミニウム薄膜に15μm径の穴を形成する。(b)直径30μmの円形台座を前記穴の上に形成する。円形台座は溶媒に対して不溶解で、180℃以上の温度に対して安定となるように処理される。(c)フォトレジストによる直径25μm、高さ12μmの円柱を円形台座上に形成する。(d)140℃で15分加熱すると、球面状のマイクロレンズアレイが製造される。
上記のリフロー法における球面形への変形は、表面張力によって表面エネルギーを最少化する原理を利用したものである。
第2発明のマイクロレンズの製法は、基板に初期形状としての窪みを形成する初期形状工程と、前記窪みをイオン加工によりマイクロレンズ用凹部に形成するイオン加工工程とを順に実行する製法であって、前記基板が、等方性を有しない単結晶材料であり、
前記窪みは、貫通孔でなく底が点状または線状である非定形の凹所であり、前記イオン加工工程が、前記基板に対し不活性なガスをイオン化ガスとして用い、加速したイオンを前記基板に照射して物理的に原子を除去する除去加工であることを特徴とする。
第3発明のマイクロレンズ用金型は、請求項1の製法により得られた、サファイア製の基板上にマイクロレンズ成形用凹部を形成したことを特徴とする。
第4発明のマイクロレンズ用金型は、請求項1の製法により得られた、サファイア製の基板に複数個のマイクロレンズ成形用凹部を整列させて形成すると共に、各マイクロレンズ成形用凹部の周囲に非レンズ部分が無くなるように各マイクロレンズ成形用凹部が互いに接触して形成されていることを特徴とする。
第5発明のマイクロレンズは、請求項2の製法により得られた、サファイア製の基板上にマイクロレンズ用凹部を形成したことを特徴とする。
第6発明のマイクロレンズは、請求項2の製法により得られた、サファイア製の基板に複数個のマイクロレンズ用凹部を整列させて形成すると共に、各マイクロレンズ用凹部の周囲に非レンズ部分が無くなるように各マイクロレンズ用凹部が互いに接触して形成されていることを特徴とする。
A)イオンがシャワー状となって照射し、主に物理的な作用により窪みも含めた基板材料を除去する。この加工工程においては、イオン加工速度が基板へのイオン入射角に依存して変化し、特に、イオン入射角θが0度(試料面に垂直入射)からある角度θmaxの範囲において、イオン入射面の変化とともに一定速度で移動する座標系においてイオン入射面の法線方向の加工速度を求めた場合、この加工速度が一定になることから、窪みが真球度の高いマイクロレンズ成形用凹部に形成される。
B)イオン照射による除去量は加工時間と比例関係にあるので、加工の進展度合を時間で正確に制御することができ、マイクロレンズ単体用の金型も非レンズ部分を無くしたマイクロレンズアレイ用の金型も任意に製造することができる。
C)基板に等方性を有しない単結晶材料を使うので、従来製法のように等方性材料に制約されず、材料選択上の自由度が高くなる。
D)窪みの初期形状は底が点状または線状であればよく、不定形な形状であってよい。
第2発明の製法によれば、まず、初期形状工程により、基板の表面に窪みを形成し、ついで、イオン加工によって窪みを断面視で湾曲面となるように除去していって、球面状または円筒面状のマイクロレンズ用凹部を有するマイクロレンズを形成することができる。そして、この製法はつぎの利点がある。
A)イオンがシャワー状となって照射し、主に物理的な作用により窪みも含めた基板材料を除去する。この加工工程においては、イオン加工速度が基板へのイオン入射角に依存して変化し、特に、イオン入射角θが0度(試料面に垂直入射)からある角度θmaxの範囲において、イオン入射面の変化とともに一定速度で移動する座標系においてイオン入射面の法線方向の加工速度を求めた場合、この加工速度が一定になることから、窪みが真球度の高いマイクロレンズ用凹部に形成される。
B)イオン照射による除去量は加工時間と比例関係にあるので、加工の進展度合を時間で正確に制御することができ、マイクロレンズ単体も非レンズ部分を無くしたマイクロレンズアレイも任意に製造することができる。
C)基板に等方性を有しない単結晶材料を使うので、従来製法のように等方性材料に制約されず、材料選択上の自由度が高くなる。
D)窪みの初期形状は底が点状または線状であればよく、不定形な形状であってよい。
第3発明の金型によれば、マイクロレンズ成形用凹部をそのまま金型としたり、母型として用いることにより、マイクロレンズ単体またはマイクロレンズアレイの製造ができる。
また、材料がサファイヤであるので、融点が高く、硬度が高いため現在利用されているあらゆる光学材料(光学ガラス、光学プラスチック)によってマイクロレンズを成形するための金型が得られ、また、サファイヤ結晶欠陥が少ないので、金型表面に欠陥のない金型が得られる。
第4発明の金型によれば、光学的には不要で性能劣化の原因となる非レンズ部分が存在しないマイクロレンズ単体やマイクロレンズアレイを製造できる。
また、材料がサファイヤであるので、融点が高く、硬度が高いため現在利用されているあらゆる光学材料(光学ガラス、光学プラスチック)によってマイクロレンズを成形するための金型が得られ、また、サファイヤ結晶欠陥が少ないので、金型表面に欠陥のない金型が得られる。
第5発明によれば、マイクロレンズ用凹部をそのままレンズとしたマイクロレンズ単体またはマイクロレンズアレイが得られる。
また、材料がサファイヤであるので、融点が高いため高温環境下でも使用でき、硬度が高いため傷付きにくいので悪環境下でも使用でき、結晶欠陥が少ないので光学性能の優れたマイクロレンズが得られる。
第6発明によれば、光学的には不要で性能劣化の原因となる非レンズ部分が存在しないマイクロレンズ単体やマイクロレンズアレイが得られる。
また、材料がサファイヤであるので、融点が高いため高温環境下でも使用でき、硬度が高いため傷付きにくいので悪環境下でも使用でき、結晶欠陥が少ないので光学性能の優れたマイクロレンズが得られる。
本発明においてマイクロレンズ用金型もマイクロレンズも同じ製法が用いられる。以下それらの製法を、図1に基づき説明する。
本発明の製法は、単結晶材料の基板1に初期形状としての窪み2を形成する初期形状工程100と、前記窪み2をイオン加工により球面状凹部または円筒状凹部に形成するイオン加工工程200とを順に実行することを特徴とする。加工終了後の基板1は、金型としても使用でき、そのままマイクロレンズとしても使用できる。
また、その金型を直接、金型として用いたり母型として用いることによりマイクロレンズを製造できる。金型としての使用法は公知の転写法などを用いることができる。
なお、本明細書において、金型として使用するものの凹部をマイクロレンズ成形用凹部3といい、マイクロレンズとして使用するものの凹部をマイクロレンズ用凹部3という。
本発明の製法には、基板1として単結晶のある材料が用いられる。等方性である必要はない。代表的な基板材料としては、つぎのものを例示できる。
サファイア、シリコンウエハ、水晶などの結晶性の基板
サファイアは、工学の分野では不純物を含まないAl2O3の単結晶を指している。
人工的に製造されているものとして、不純物を含まないサファイア以外に、チタン(Ti)を不純物として含むサファイア(色は青い)と、クロム(Cr)を不純物として含むルビーがある。どちらも単結晶であり、本発明の対象とする金型用基板として利用できる。
(初期形状工程)
初期形状工程100は、基板1に窪み2を形成する工程である。図2(A)図および図3(A)図に示すように、窪み2は、四角錐である必要はなく、半球状や針状などの形状であって、底部があればよい。要するに貫通孔を除く非定形の凹所であればよい。本明細書では、このような非定形の凹所を「窪み」という。初期形状工程では、窪みを形成することができれば、種々の加工法を用いることができる。そして、後に詳述するように、窪み2の底が点状になっていれば球面状の凹部3ができ、窪み2の底が線状になっていれば円筒状の凹部3ができることになる。
図2(B)図および図3(B)図はイオン加工工程を示している。このイオン加工工程において、窪み2を形成した基板1にイオンを照射するイオン加工をする。本発明によるイオン加工は、物理的な作用によって窪み2を含む基板材料から原子、分子を除去する物理加工を主とする。このため、イオン種としては、基板材料に対して不活性なものを選択する。また、イオンはほぼ平行な状態にて、基板を照射するようにする。
イオン加工をしていくと、図2(B)における1工程から3工程への変化が示すように、初期形状の窪み2から球面あるいは円筒面の凹部3へ成長していく。これらの球面あるいは円筒面を断面視すると、湾曲面であり、イオン加工が進むにつれて、真球度に近い曲面(凹部3)となる。その理論的根拠は後述するとおりである。
また、図2から分るように、同じ基板1に複数の窪み2を形成しておくと、それぞれの窪み2から球面あるいは円筒面の凹部3が独立して成長していく。その過程では隣り合う球面あるいは円筒面の間に、非レンズ部分4が残っているが、さらに、イオン加工していくと、図2(C)の4工程に示すように、隣り合う窪み2から成長した球面あるいは円筒面の凹部3どうしが接触し、非レンズ部分が全くなくなった状態で、球面だけ、円筒面だけ、球面と円筒面だけ、からなる凹部3を得ることができる。これらの凹部3は、マイクロレンズ成形用凹部3となり、またマイクロレンズ用凹部3となる。なお、本明細書において、両方の凹部を総称するときは、単に凹部3という。
凹部3を球面にするか円筒面にするかは初期形状によって選択される。
図4に示すように、初期形状の窪み2が底部において1点で接する平面2eが存在するとき(A図参照)、イオン加工によって形成される凹部3は球面状となる(C図参照)。
図5に示すように、初期形状の窪み2が底部において直線状に接する平面2lが存在するとき(A図参照)、イオン加工によって形成される凹部3は円柱面(円筒面ともいう)となる(C図参照)。
なお、光学分野では、その曲面が球面の一部と一致する面を有するレンズを球面レンズ、その曲面が円筒面の一部と一致する面を有するレンズを円筒面レンズというので、本明細書でもその用法を用いる。また、円筒面のことを円柱面ともいう。
上記の製法により、基板1に凹部3が形成されると、その基板1を金型Mとして使用でき、また、基板1自体をマイクロレンズLとしても利用できる。
そして、前記金型Mを使って公知の用法でマイクロレンズを製作することができる。
本発明におけるマイクロレンズ用金型Mの製法の利点は、つぎのとおりである。
A)真球度の高いマイクロレンズ成形用凹部3を有する金型Mが得られる。
B)マイクロレンズ成形用凹部3の曲率半径はイオン加工量と共に拡大するので、隣接するマイクロレンズ成形用凹部3の周縁が接するまでイオン加工を続けることにより金型面に不要な非レンズ部分を無くすることができる。
C)イオン加工による加工量の制御が高精度に行えるので、超微細なものから比較的大きいものまで、種々の寸法の金型Mが得られる。
D)基板1への加工装置(イオン加工)は、加工対象である基板寸法に応じて製造可能であるので、大面積の基板1を使って、大面積の金型Mが得られる。
本発明におけるマイクロレンズLの製法の利点は、つぎのとおりである。
A)真球度の高いマイクロレンズ用凹部3を有する屈折形のマイクロレンズLが得られる。
B)マイクロレンズ用凹部3の曲率半径はイオン加工量と共に拡大するので、隣接するマイクロレンズ用凹部3の周縁が接するまでイオン加工を続けることにより、レンズ面に不要な非レンズ部分の無いマイクロレンズアレイLを作成することができる。
C)イオン加工による加工量の制御が高精度に行えるので、超微細なものから比較的大きいものまで、種々の寸法のマイクロレンズLが得られる。
D)基板への加工装置(イオン加工)は、加工対象である基板寸法に応じて製造可能であるので、大面積の基板を使って、大面積のマイクロレンズアレイLが得られる。
本発明の製法で得られた金型Mの利点は、つぎのとおりである。
a)マイクロレンズ成形用凹部3の真球度が高いので、完全に近い球面からなる屈折形のマイクロレンズLを再現性よく製造できる。
b)マイクロレンズ成形用凹部3の形状は球面も円筒面も可能なので、球面のみ、円筒面のみ、球面と円筒面の組合せなど種々の形状のマイクロレンズLやマイクロレンズアレイLを製造できる。
c)不要な非レンズ部分の無い金型Mを用いて、迷光を生じ、クロストークやノイズの原因となる非レンズ部分が全くないマイクロレンズアレイLを製造できる。
d)金型面に形成されるマイクロレンズ成形用凹部3自体が、超微細なものから比較的大きいものまで可能であるので、種々の寸法のマイクロレンズ単体LやマイクロレンズアレイLの作製が可能となる。
e)大面積の金型Mを用いることにより、大面積のマイクロレンズアレイLの作製が可能である。
本発明の製法で得られたマイクロレンズLの利点は、つぎのとおりである。
a)真球度の高い球面を有する屈折形のマイクロレンズLとなる。
b)球面のみ、円筒面のみ、球面と円筒面の組合せなど種々の形状のマイクロレンズ単体LやマイクロレンズアレイLとなる。
c)迷光を生じ、クロストークやノイズの原因となる非レンズ部分が全くないマイクロレンズアレイLとなる。
d)超微細なものから比較的大きいものまで種々の寸法のマイクロレンズ単体LやマイクロレンズアレイLとなる。
e)大面積のマイクロレンズアレイLとなる。
f) 口径、焦点距離、形状、寸法などの光学特性、レンズ配置などに対する設計の自由度が高いマイクロレンズ単体LやマイクロレンズアレイLとなる。
本発明で得られた金型Mを用いてマイクロレンズLを製作する場合、直接、金型として利用したり、母型として利用できる。直接、金型として利用する場合、(i)光硬化、(ii)樹脂への形状転写、光学ガラスへの転形転写、(iii)熱効果樹脂への形状転写等の転写技術が使える。母型として利用する場合は、プラスチック・フィルムに形状を転写する熱プレス用金型、溶融したプラスチック材料を高速度・高圧で充填し形状を転写する射出成形用金型、熱硬化樹脂を液状に近い状態で金型内に入れ、さらに加熱して樹脂を硬化させる熱硬化樹脂成形用金型などに利用できる。そして、このように使用する金型自体が上記の利点を有するので、つぎの利点を有するマイクロレンズLが得られる。
a)金型の真球度が高いので、完全に近い球面からなる光学性能の高いマイクロレンズLが得られる。
b)金型Mの形状は球面、円筒面、それらの組合わせが可能なので、同様の種々の形状のマイクロレンズ単体LやマイクロレンズアレイLが得られる。
c)不要な非レンズ部分の無い金型を用いて、迷光を生じ、クロストークやノイズの原因となる非レンズ部分が全くないマイクロレンズアレイLが得られる。
d)金型面に形成されるマイクロレンズ用凹部自体が、超微細なものから比較的大きいものまで可能であるので、種々の寸法のマイクロレンズ単体LやマイクロレンズアレイLが得られる。
e)大面積の金型Mを用いることにより、大面積のマイクロレンズアレイLが得られる。
f) 口径、焦点距離、形状、寸法などの光学特性、レンズ配置などに対する設計の自由度が高いマイクロレンズ単体LやマイクロレンズアレイLとなる。
基板1がサファイヤであると、融点が高く、硬度が高いため現在利用されているあらゆるマイクロレンズを成形するための金型が得られ、また、サファイヤ結晶欠陥が少ないので、金型表面に欠陥のない金型が得られる。サファイヤ製金型を用いた場合は、現在利用されている全ての光学ガラスにマイクロレンズが転写できる。このような転写技術はこれまで存在していないので、産業上の利用性を大きく拡大するものである。
(初期形状工程100の詳細)
初期形状加工は基板に窪みを形成できれば種々の加工法を利用できるのであるが、具体的には、つぎのとおりである。
サファイア基板に対しては下記1のとおりであり、シリコン基板に対しては下記2のとおりである。また、例示しないが、水晶にも、下記加工法のいずれか、あるいは例示以外の加工法を任意に適用することができる。
1. サファイア基板に対して
(1) レーザー加工
(2) イオン加工
・集束させたイオンビームによる加工
・マスクを介して、平行束のイオンを照射
(3) プラズマ加工
(4) 化学エッチング
2. シリコン基板に対して
異方性化学エッチング以外では、結晶面の限定が不要である。
(1) レーザー加工
(2) イオン加工
・集束させたイオンビームによる加工
・マスクを介して、平行束のイオンを照射
(3) プラズマ加工
(4) 化学エッチング
・等方性化学エッチング
・異方性エッチングの後に等方性エッチング
このイオン加工工程200は、先に形成された初期形状である非定形の窪み2を凹部3(球面状凹部や円筒面状凹部)に加工していく工程である。
本工程は、図3(A)に示すように、初期形状の窪み2を形成した基板1に、ほぼ平行な状態で運動するアルゴンイオンなどのイオンをシャワー状に照射することにより行う。
イオン照射すると、図3(B)に示すように、基板1の平面部分、すなわち表面と窪み2内の線状底部は平面を保ちながら除去加工が進行する。また、図4および図5に示すように、窪み2内の頂点、すなわち最深部の点2eや線部分2lの両端の点2eからは、湾曲面が広がっていく。イオン入射角が0である部分(表面や底の線状部分)のイオン加工速度は同じであるので、初期形状、すなわち窪み2の深さを保ったままで、イオン照射による除去加工は進行する。窪み2の頂点2eから形成されていく球面状凹部や円筒面状凹部が拡大していくと、それにつれて、窪み2内の平面部分はなくなっていき、やがて、窪み2が球面状凹部3や円筒面状凹部3に変化する。図4(C)および図5(C)は、そのようにして形成された球面の凹部3と円筒面の凹部3を示している。
上記のイオン加工では、加工対象と化学反応を起こさない不活性ガスをイオン化ガスとして用い、基板表面にイオンを照射して除去加工する。これはイオン照射効果の中の一つを使った物理的加工である。
数十eV以上の運動エネルギーを持って照射されたイオンは、基板表面の原子に衝突し、運動エネルギーを表面原子に与える。このとき、表面原子が基板原子との結合を断ち切るだけのエネルギーを獲得すると、基板表面から飛ばされていく。1個の照射イオンによって表面からはじき出される原子の数をスパッタ収量という。スパッタ収量はイオン入射角θ(基板表面の法線方向とイオン入射方向の交わる角度をいう。)に依存して変化する。スパッタ数量をY(θ)とすると、多くの材料のY(θ)は図6(A)に示すような曲線で表される。イオン入射角θを0から大きくしていくと、照射イオンが直接衝突した表面原子だけでなく、その原子から周りの原子にも運動エネルギーがつたわるようになり、Y(θ)は増大していく。θ=90°の場合、照射イオンの運動方向は基板表面に平行となり、イオンの運動エネルギーはほとんど表面原子につたわらない。このため、θ=90°ではY(θ)=0となる。このことからもわかるように、θが大きすぎてもイオンの運動エネルギーを表面原子に伝達する効率は低下する。このようなことから、Y(θ)が最大となるθの値が存在する。Y(θ)は、材料、イオン種、イオンの運動エネルギーなどによって変化する。スパッタ収量Y(θ)を反映したものが、イオン加工速度Vのイオン入射角θへの依存性V(θ)であり、θ=0における値をそれぞれY(0)=1、V(0)=1に規格化して、Y(θ)とV(θ)とを同一のスケールで表すと、両者は一致する。本発明では、V(θ)がθに依存して変化していることを利用して、初期形状から球面状凹部や円筒面状凹部を形成するものである。
上記のイオン加工には、イオン化した不活性ガス(He,Ne,Ar,Kr,Xe)を加速して、試料面を照射する機能をもち、物理的な作用を主体として除去加工を行うことができる装置でなければならず、それには、大別して下記の3種類がある。なお、本発明では、主として物理的な作用で基板を除去加工できればよく、N2(窒素)、CO2(炭酸ガス)、空気などのガスによるイオンも、加速電圧を大きくすれば、化学的作用よりも物理的作用による除去加工が大きくなるため、これらのガスを用いてもよい。
1 イオンビーム(イオンシャワー、イオンミリング)装置
ガス導入口を有し、そこから導入されたガスをイオン化する機能と、加速電圧を印加してイオンを加速する機能をもち、ほぼ平行なイオンビーム(イオンシャワーともいう)を発生するイオン源、試料を保持する機構を有し、イオンビームを試料に照射する加工室、イオン源、加工室など真空にする真空排気系を主な構成要素とした装置である。
2 平行平板形エッチング装置
高周波、あるいは直流電圧を印加するための平行平板、この平行平板の一方の電極面付近に設置した試料保持機構が、同じ真空容器内に設けられている。真空容器内に導入したガスを、高周波、あるいは直流電圧を平行平板に印加してイオン化する。ガスがイオン化すると、自己バイアスと呼ばれる電位差が試料保持機構のある電極位置付近に発生し、この電位差によってイオンが加速され試料面を照射する。これには、高周波放電を利用した装置(RFスパッタ装置、RFは13.56MHzの高周波のこと)や直流を利用した装置(直流(DC)スパッタ装置)がある。
3 マイクロ波プラズマエッチング装置
マグネトロンから発振される2.45GHzのマイクロ波でガスをイオン化する。高周波を試料保持具に印加して、試料に照射されるイオンの加速電圧を制御する。
(球面や円筒面加工ができる理由)
不活性ガスをイオン化し、加速したイオンを用いた物理的な除去加工であるイオン加工において、既述のごとくイオンを照射された試料のイオン加工速度Vは、試料表面へのイオン入射角θに依存して変化する。図6(B)に示すように、加工速度Vは、θの関数となり、V=V(θ)と表される。ここで、イオン加工速度Vは、試料表面の基準面からイオン進行方向に沿って測る。また、θ=0は、イオンの試料表面への垂直入射を示す。したがって、試料表面に平坦でない初期形状を形成しておくと、イオン加工が進むにつれて、初期形状がV(θ)に依存して変化する。この現象を利用して、球面状凹部や円筒面状凹部を形成する。
ここで、V(θ)が
V(θ)=(A+B/cosθ)V0 (A,B,V0:定数,A+B=1)
と表される場合、初期形状として試料表面に窪み2を形成しておくと、その窪み2は、イオン加工の進行とともに、完全な球面や円筒面で構成された凹部3へと変化していく。イオン入射角θが0≦θ≦θmaxの範囲において上式が成立することは、V(θ)に関する実験結果(図6(B)参照)から示すことができる。ここで、θmaxは、その実験結果から求めることができる。
初期形状の最も深いところには、入射角θ=0とみなすことができる点がある。一般には、基板表面(基板基準面)がθ=0になるように、イオン加工装置に基板をセットするので、初期形状の最深部でθ=0となる箇所(図4,図5に符号2e,2lで示す箇所)と、基板表面とのイオン加工速度は同じになる。イオン加工は、初期形状の深さを一定に保ちながら進行し、初期形状は基板表面と同一の方向に広がっていく。したがって、マイクロレンズの厚さは、初期形状の深さ以上にはできない。初期形状の最も深いところに、いったん球面状凹部や円筒面状凹部が形成されると、その後、イオン加工の進行にともなって、球面状凹部や円筒面状凹部が風船を膨らますような形で広がっていく。
上記を数学的に説明すると、以下のとおりである。
[1]物理的なイオン加工によって球面や円筒面が形成されることの理論的根拠
不活性ガスからなるイオンを基板に照射し、物理的に除去加工する場合を考える。イオンはビーム状で、各イオンは一定の方向に平行に進むものとする。基板が除去される速度Vは、基板表面へのイオン入射角θに依存して変化する.イオン照射条件が一定とすると、イオン照射方向の加工速度は、
ここで、V(θ)が、A+B=1の関係を有する定数A,B、およびV0=V(0)を用いて、
つぎに、z=g(x,y,t)が表す曲面の性質を求めるため、z=g(x,y,t)を
上記理論的根拠を実験的に確認した(図6参照)。
[2]シリコンに対するイオン加工速度Vのイオン入射角θの依存性の確認
(球面や円筒面加工ができる理由)
不活性ガスをイオン化し、加速したイオンを用いた物理的な除去加工であるイオン加工において、イオンを照射された試料のイオン加工速度Vは、試料表面へのイオン入射角θに依存して変化する。加工速度Vは、θの関数となり、V=V(θ)と表される。ここで、イオン加工速度Vは、試料表面の基準面からイオン進行方向に沿って測る。また、θ=0は、イオンの試料表面への垂直入射を示す。したがって、試料表面に平坦でない初期形状を形成しておくと、イオン加工が進むにつれて、初期形状がV(θ)に依存して変化する。この現象を利用して、球面状凹部や円筒面状凹部を形成する。
ここで、V(θ)が
V(θ)=(A+B/cosθ)V0 (A,B,V0:定数,A+B=1)
と表される場合、初期形状として試料表面に窪み2を形成しておくと、その窪み2は、イオン加工の進行とともに、完全な球面状や円筒面状で構成された凹部へと変化していく。イオン入射角θが0≦θ≦θmaxの範囲において上式が成立することは、V(θ)に関する実験結果(図6(B)参照)から示すことができる。ここで、θmaxは、その実験結果から求めることができる。
初期形状の最も深いところには、入射角θ=0とみなすことができる点がある。一般には、試料表面(試料基準面)がθ=0になるように、イオン加工装置に試料をセットするので、初期形状の最深部でθ=0となる箇所と、試料表面とのイオン加工速度は同じになる。イオン加工は、初期形状の深さを一定に保ちながら進行し、初期形状は試料表面と同一の方向に広がっていく。したがって、マイクロレンズの厚さは、初期形状の深さ以上にはできない。初期形状の最も深いところに、一旦、球面状凹部や円筒面状凹部が形成されると、その後、イオン加工の進行にともなって、球面状凹部や円筒面状凹部が、風船を膨らますような形で広がっていく。
図6はイオン加工速度のイオン入射角依存性を説明するためのグラフであり、この図6の(A),(B),(C)を重ねたものが、図8である。
試料には、表面が(100)面で、表面を鏡面研磨した(100)シリコンウエハ((100) Si)を用い、底面の一辺が40μmの窪み2を結晶異方性エッチングより初期形状として形成した。イオン加工装置には、カウフマン形イオン源を備えたイオンビーム装置を用いた。イオン化ガスにはアルゴン(Ar)を用いた。Arイオン照射条件は、加速電圧;2kV、イオン電流密度;13mA/cm2とし、このときイオン照射室内圧力は5×10−3Paであった。
適当な大きさのSiウエハで(100)Siウエハの一部分をマスクしてイオン照射し、(100)Siウエハ表面にイオン照射部と未照射部を形成した。イオン照射時間2時間毎に試料をイオン照射室から取り出し、イオン照射部と未照射部の段差を表面粗さ計で測定して、イオン加工量(加工深さ)を求めた。同時に、初期形状が加工時間とともに変化する様子を、表面粗さ計により断面形状の測定、光学顕微鏡による形状観察から求めた。表面粗さ計の触針には、曲率半径5μmのものを用いた。
イオン加工の特性を図7に基づき説明する。(A)図は加工時間と加工量の関係を示す。加工量が加工時間に比例して増加しており、加工速度は5μm/hである。後述するように、形成される球面状凹部や円筒面状凹部の曲率半径は加工量によって制御することができる。しかし、イオン加工の進行中にイオン加工量を正確に測定することは一般に困難とされている。一方、加工時間の測定は容易であり、正確な値を得ることができる。(A)図に示す加工量と加工時間の比例関係は、加工時間によって加工量を正確に制御できることを示している。
(B)図は、初期形状の形状変化に関して加工量と曲率半径の関係を示す。窪み2の底部からは球面状凹部が形成されるので、球面状の部分における曲率半径を求めた。いったん球面状凹部が形成されると、(B)図からわかるように、その曲率半径は加工量に比例して増加している。このことは、曲率半径が加工量によって正確に制御可能なことを示している。
図9に基づきサファイヤ中に対するイオン加工速度のイオン入射角依存性を説明する。
<0001>サファイア形状(Al2O3)基板のイオン加工速度について、イオン入射角依存性V(θ)を測定した。イオン加工装置には、カウフマン形イオン源を備えたイオンシャワー装置を用いた。イオン化ガスにはアルゴン(Ar)を用いた。Arイオン照射条件は、加速電圧;2kV、イオン電流密度;13mA/cm2とし、このときイオン照射室内圧力は5×10−3Paであった。イオン照射部と未照射部を形成し、それらの部分の段差からイオン加工速度を求める。このため、適当な大きさのシリコンウエハを用いて、サファイア基板の一部分をマスクし、イオンを照射し、イオン照射部と未照射部の段差を表面粗さ計で測定して、イオン加工量(加工深さ)を求めた。加工量をイオン照射時間で割り、加工速度を求めた。イオン照射方向に対するサファイア基板表面の傾き角を変えながら、このような加工速度の測定を繰り返した。一つの傾き角に対して、3時間イオンを照射した.入射角0において、加工速度は約1.98μm/hであった。
実験結果を図9に示す。θ=0°,10°,20°の3点のデータから、最小二乗法を用いて式(5)の係数を求めたところ、
以上の結果は、イオン入射角θが0°から35°付近までは、実験から測定したV(θ)が式(5)の形で表現できることを示している。したがって、このイオン入射角の範囲において、<0001>サファイア形状基板表面に球面、円柱面、平面からなる形状を物理的なイオン加工により形成することができる。
上記に述べた式(10)のVgnを実験から求めた場合、イオン入射角0°からある角度θまで、Vgnが一定の基板があれば、初期形状を形成し、そこから球面状凹部、円柱面状凹部を成長させることができる。
このことを理論と実験から明らかにしたことに本発明の意義が存する。したがって、Vgn一定の材料を見つけることができれば、その材料からなる基板上に球面状凹部、円柱面状凹部を形成できるので、以下の実施例に示すもの以外の材料についても、本発明の技術原理が適用でき、本発明に含まれるものである。なお、初期形状の形成法は、とくに制限されず、種々の方法を採用してよい。
実施例1:サファイア基板を用い、初期形状をイオン加工で作ったもの
実施例2:サファイア基板を用い、初期形状をレーザー加工で作ったもの
実施例3:シリコン基板を用い、初期形状をイオン加工で作ったもの
実施例4:シリコン基板を用い、初期形状を化学エッチング加工で作ったもの
実施例5:シリコン基板を用い、初期形状を異方性エッチングの後に等法性エッチングで作ったもの
実施例6:シリコン基板を用い、初期形状をレーザー加工で作ったもの
(初期形状工程)
初期形状を形成するため、厚さ0.05mmのステンレス製の薄板に、直径60μmの貫通孔を形成したステンシル・マスク5を作製した。このステンシル・マスクをサファイア基板1表面に設置した状態で、加速電圧;2kV、イオン電流密度;13mA/cm2でArイオンを照射し、貫通孔を通過するイオンにより初期形状を形成した。イオン照射時間を5時間とした。5時間照射後には、ステンシル・マスク5が殆どなくなっている状態となる。この結果、図10(B)の光学顕微鏡写真に示すような凹部をサファイア基板表面に形成できた。図11(A)は、粗さ測定機にて、凹部の形状を測定した結果を示し、凹部の深さは4.7μmであった。図10、図11において、基板表面付近において凹部が下部よりも広がっているのは、ステンシル・マスク5とサファイア基板1との間に隙間があり、サファイア表面とマスク裏面の間で照射イオンが反射して、穴径を広げるためと考えられる。
(イオン加工工程)
このようにして初期形状を形成したサファイア基板1に、加速電圧;2kV、イオン電流密度;13mA/cm2でArイオンを照射した。イオン照射時間5時間ごとにイオンシャワー装置から取り出し、サファイア基板表面の凹部を測定した。図11〜図15に、それぞれ、イオン照射時間5時間、10時間、15時間、20時間、25時間における光学顕微鏡写真と粗さ測定機による断面形状測定結果を示す。また、図16〜図18に、断面形状に円弧をフィッテングさせた場合をしめす。図11の初期形状断面と比較すると、イオン照射時間が長くなるにつれて、初期形状が球面状に変化していることがわかる。イオン照射が15時間以上になると、明らかに球面が成長し、断面形状においてはそれに一致する円弧を描くことができる。球面状凹部の周辺部のリング状の部分は、イオン照射をさらに続けて行えば、原理上なくなる。
以上のように、穴状の凹部を初期形状としてサファイア基板に形成し、そのサファイア基板に物理的なイオン加工をおこなうことによって球面状凹部が形成できることがわかる。
(初期形状工程)
サファイア基板へ微細な穴を加工する方法として、集光したレーザー光を照射し、局所的に材料を除去する方法が周知の技術となっている。サファイアでは、光の透過率は波長に依存し、紫外線領域になると透過率が低下する。このため、サファイアの加工には、波長193nm、248nmなどのエキシマレーサー光、波長355nmのYAGレーザー光(これはYAGレーザー光の第3高調波)用いられている。レーザー光の集光状態、照射パワーなどの制御によって、微細穴の口径や深さを制御できる。このような集光シーザー光では、断面形状が針状の穴を形成できる。
また、化学エッチングにより初期形状を形成することも可能である。この場合、H2SO4とH3PO4の混合液、320℃でエッチングするとよい。
(イオン加工工程)
本実施例2においても実施例1と同様に球面状凹部3を形成することができた。
(初期形状工程)
初期形状を形成するために、厚さ0.05mmのステンレス製の薄板に、直径60μm の貫通孔を形成したステンシル・マスクを作製した。このステンシル・マスクをシリコン基板表面に設置した状態で、加速電圧;2kV、イオン電流密度;13mA/cm2でArイオンを照射し、貫通孔を通過するイオンにより初期形状を形成した。イオン照射時間を5時間とした。5時間照射後には、ステンシル・マスクが殆どなくなっている状態となる。この結果、図19(B)の光学顕微鏡写真に示すような凹部をシリコン基板表面に形成できた。図19(A)は、粗さ測定機にて、凹部の形状を測定した結果を示し、凹部の深さは28μmであった。
(イオン加工工程)
このようにして初期形状を形成したシリコン基板に、加速電圧;2kV、イオン電流密度;13mA/cm2でArイオンを照射した。イオン照射時間2時間ごとにイオンシャワー装置から取り出し、シリコン基板表面の凹部を測定した。図20〜図25に、それぞれ、イオン照射時間2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間後における光学顕微鏡写真と粗さ測定機による断面形状測定結果を示す。イオン照射時間が8〜12時間と長くなると、断面形状は円弧でフィッテングできる。すなわち、初期形状は球面状凹部に変化している。イオン照射時間が10時間を過ぎると、隣り合う球面状凹部の縁が接触し、隣り合う球面状凹部の接触部は線状になる。
(初期形状工程)
シリコンに用いられる化学エッチングには、用いるエッチング液の組成によって、他の方向と比較して極端にエッチ速度が遅くなる結晶方向が存在する異方性エッチング、おおむね等方的に進行する等方性エッチング、転位などの結晶欠陥が存在する箇所にエッチピットを形成するエッチングがある。
異方性エッチング液には、1.KOH水溶液、2.EDP(エチレンジアミン、ピロカテコール)水溶液、3.TMAH(tetramethyl ammonium hydroxide)水溶液、などがある。いずれのエッチング液においても、SiO2、あるいはSi3N4をマスク材に用いることができる。
等方性エッチング液には、ふっ酸(HF)、硝酸(HNO3)、酢酸(CH3COOH)の混合液が用いられる。マスク材にはSiO2、Si3N4、 Auなどが用いられる。これら3液の混合比によって、エッチ速度の結晶方向依存性が変化し、エッチ面の粗さも変化する。さらに、完全な等方性を発現することは非常に困難である。
等方性エッチングを用いる場合、シリコンウエハの結晶面はなんでもよい。シリコンウエハの表面だけ、あるいは全面にマスク材からなる薄膜を付着させる。所定の位置に所定の大きさのピンホールをあける。ピンホールの形状は、円形、正方形、長方形などの適当な形でよい。この後、シリコンウエハをエッチング液の中に入れ、エッチングする。なお、このようなエッチング工程は、半導体デバイスの製造工程の一つであり、周知のことである。エッチングが終了すると、ピンホールの位置に凹部が形成される。この凹部の形状は、一般に球面にはならない。
(イオン加工工程)
つぎに、シリコン基板上のマスク材を除去する。このようにして、形成された凹部を初期形状にもつウエハに、イオン照射して、初期形状を球面状凹部に変化させる。イオン照射条件は、実施例3と同様でよい。
なお、マスク材からなる薄膜がシリコンウエハに残っていてもよいが、この場合、イオン照射すると、ピンホールを通過したイオンにより、初期形状の中心部が加工されて深くなっていく。この現象がマスク材が除去されるまで継続する。このように形成された凹部を初期形状として、イオン照射により球面状凹部が成長していく。
本製造法の長所としては、シリコンウエハの選択において、結晶面に関係なく、どのような結晶面のウエハも利用できる、という点が挙げられる。
(初期形状工程)
異方性エッチングの後に等方性エッチングを用いる場合、(100)面を表面にもつシリコンウエハを基板に用いる。まず、結晶面方向に異方性をもつ化学エッチングにより、四角錐状の凹部あるいは、V溝状の凹部を形成する。その後、このウエハに対して、等方性の化学エッチングを施す。このようにして形成した凹部を初期形状とする。
(イオン加工工程)
初期形状を形成したウエハにイオン照射を施し、各初期形状から球面状凹部、あるいは円筒面状凹部を成長させる。
(初期形状工程)
シリコンウエハへ微細な穴を加工する方法として、集光したレーザー光を照射し、局所的に材料を除去する方法が周知の技術となっている。シリコンは、波長1.2〜15μmの光に対して透過性が高い。したがって、波長1.2μm 以下の光を発生するレーザー光によって穴加工をおこなうことができる。シリコン基板に、集光したレーザー光で穴加工することは周知の技術であり、断面形状が針状の穴を形成できる。
(イオン加工工程)
このように、初期形状としてレーザー光で形成した穴を有する基板にイオン照射する。イオン加工量が増大するにつれて、初期形状が球面状凹部に変化していく。
Claims (6)
- 基板に初期形状としての窪みを形成する初期形状工程と、
前記窪みをイオン加工によりマイクロレンズ成形用凹部に形成するイオン加工工程とを順に実行する製法であって、
前記基板が、等方性を有しない単結晶材料であり、
前記窪みは、貫通孔でなく底が点状または線状である非定形の凹所であり、
前記イオン加工工程が、前記基板に対し不活性なガスをイオン化ガスとして用い、加速したイオンを前記基板に照射して物理的に原子を除去する除去加工である
ことを特徴とするマイクロレンズ用金型の製法。 - 基板に初期形状としての窪みを形成する初期形状工程と、
前記窪みをイオン加工によりマイクロレンズ用凹部に形成するイオン加工工程とを順に実行する製法であって、
前記基板が、等方性を有しない単結晶材料であり、
前記窪みは、貫通孔でなく底が点状または線状である非定形の凹所であり、
前記イオン加工工程が、前記基板に対し不活性なガスをイオン化ガスとして用い、加速したイオンを前記基板に照射して物理的に原子を除去する除去加工である
ことを特徴とするマイクロレンズの製法。 - 請求項1の製法により得られた、サファイア製の基板上にマイクロレンズ成形用凹部を形成した
ことを特徴とするマイクロレンズ用金型。 - 請求項1の製法により得られた、サファイア製の基板に複数個のマイクロレンズ成形用凹部を整列させて形成すると共に、各マイクロレンズ成形用凹部の周囲に非レンズ部分が無くなるように各マイクロレンズ成形用凹部が互いに接触して形成されている
ことを特徴とするマイクロレンズ用金型。 - 請求項2の製法により得られた、サファイア製の基板上にマイクロレンズ用凹部を形成した
ことを特徴とするマイクロレンズ。 - 請求項2の製法により得られた、サファイア製の基板に複数個のマイクロレンズ用凹部を整列させて形成すると共に、各マイクロレンズ用凹部の周囲に非レンズ部分が無くなるように各マイクロレンズ用凹部が互いに接触して形成されている
ことを特徴とするマイクロレンズ。
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