JP6794308B2 - マイクロレンズアレイ製造用金型の作製方法 - Google Patents
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Description
この金型を用いるマイクロレンズアレイの製造においては、まず、基板となるフィルム(シート状物)の表面に熱硬化性樹脂あるいは紫外線硬化性樹脂からなる樹脂層を形成する。次いで、この樹脂層に金型を押圧することで、金型の形状を転写して、この状態で樹脂層を硬化する。最後に、金型を硬化した樹脂層から剥離することで、マイクロレンズアレイを製造する。
また。特許文献2には、上面に開口を有し、断面が少なくとも2段の凹部を基板本体に形成し、凹部が形成された基板本体を、凹部の内周面を基点として等方的にエッチングすることにより、レンズ形状を形成することが記載されている。
しかしながら、この方法では、複数回のフォトリソグラフィが必要であるために、工程が複雑で、高い生産性を得ることが困難である。また、複数回のフォトリソグラフィを行うため、露光時におけるフォトマスクの位置ズレ(アライメントズレ)によって、レンズ形状精度の悪化、レンズ間の形状バラツキの増大等の精度低下が生じやすい。特に、マイクロレンズが微細な場合には、露光時におけるフォトマスクの位置ズレの影響が無視できなくなる。
この方法では、露光工程が1回であるため、複数回の露光を行うことで生じるフォトマスクの位置ズレの問題は生じない。
ここで、マイクロレンズの形状精度を高くするためには、基板に形成する階段状構造の段数を多くする必要がある。しかしながら、特許文献3に記載される方法では、2段を超える階段状構造を形成することは困難である。そのため、特許文献3に記載される方法では、微細な構造のマイクロレンズに対応して、金型を高精度に形成することは、困難である。特にレンズの直径とレンズの厚さとの比率(厚さ/直径)が低いマイクロレンズを製造する場合には、2段の階段状構造を起点に基板を球面化するエッチング処理では、所望の形状および球面精度を有する金型を得ることは難しい。
レジストマスクを介した基板の選択的なエッチング、および、レジストマスクのスリミングを、複数回、繰り返し行うことにより、基板に、マイクロレンズに対応する仮の凹部を形成する凹部形成工程、
基板からレジストマスクを除去する除去工程、および、
基板をエッチングすることにより、仮の凹部を製造用凹部とする仕上げ工程、を行うことを特徴とするマイクロレンズアレイ製造用金型の作製方法を提供する。
また、凹部形成工程におけるレジストマスクを介した基板の選択的なエッチングが、等方性エッチングであるのが好ましい。
また、凹部形成工程におけるレジストマスクのスリミングの基板の面方向の大きさを、漸次、少なくするのが好ましい。
また、製造するマイクロレンズアレイにおけるマイクロレンズの厚さをt[μm]、直径をd[μm]とした場合に、『t/d』で示されるアスペクト比が0.5以下であるのが好ましい。
また、凹部形成工程において、レジストマスクを介した基板の選択的なエッチングを、3〜10回行うのが好ましい。
また、マスク形成工程において、製造するマイクロレンズアレイのパターンとして、形成するマイクロレンズの直径の半分以下の開口パターンをレジストマスクに形成するのが好ましい。
さらに、マスク形成工程で形成するレジストマスクの厚さが、形成するマイクロレンズの半径以上であるのが好ましい。
なお、以下の説明では、『マイクロレンズアレイ製造用金型』を、単に『金型』とも言う。
本発明の金型の作製方法は、基板10の一方の表面にレジストマスク12を形成し、このレジストマスク12に、製造するマイクロレンズアレイのパターンを有する開口パターン(レジストホール)12aを形成し(マスク形成工程)、その後、レジストマスク12を介した基板10の選択的なエッチングおよびレジストマスク12のスリミングを、交互に複数回、繰り返し行って、仮の凹部14を形成し(凹部形成工程)、レジストマスク12を除去した後(除去工程)、基板10をエッチングすることで、仮の凹部を製造用凹部16として(仕上げ工程)、マイクロレンズアレイ製造用の金型を作製するものである。
なお、本発明において、エッチングおよびスリミングは、共に、複数回、行うが、図1および図5に示すように、エッチングの方が、1回、回数が多い。
構成を明確に示し、かつ、基板10とレジストマスク12とを明確に区別するために、図1ではハッチングを省略し、図1および図2において、レジストマスク12に斜線を付す。
また、製造するマイクロレンズアレイにおけるマイクロレンズの配列にも、特に制限はない。従って、マイクロレンズの配列は、図2に示す六方細密充填に対応するような千鳥配列(ハニカム配列)以外にも、例えば、正方格子状の配列であってもよく、あるいは、規則性を有さない配列であってもよい。
中でも、表面の平坦性、欠陥の少なさ、清浄性、純度、および、エッチング加工性等の点で、半導体用シリコンウエハを基板10として用いるのが好ましい。
マスク形成工程では、まず、図1の左側上段に示すように、基板10の一方の主面に、レジストマスク12を形成する。
レジストマスク12には、特に制限はなく、リソグラフィ等で用いられている公知のレジスト材料からなるレジストマスクが、全て利用可能である。従って、レジストマスク12としては、基板10の形成材料、目的とするマイクロレンズの形状およびサイズ等に応じた、公知の材料からなる物を用いれば良い。レジストマスク12としては、一例として、市販のi線露光用レジスト、g線露光用レジスト、KrF露光用レジスト、ArF露光用レジスト、液浸ArF用レジスト、および、電子線用レジスト等が例示される。
例えば、基板10として半導体用シリコンウエハを用いる場合、膜厚の均一性および欠陥低減等の観点から、塗布方法はスピン塗布を利用するのが好ましい。なお、レジスト材料を塗布した後は、残留溶媒を除去するために、レジスト材料の種類および塗布膜厚等に応じたベーキング処理(加熱処理(ベーク))を施すのが好ましい。
HMDS処理方法には、特に制限はなく、ベーパー処理法、ならびに、HMDS液のスピン塗布およびベーキング処理による方法等、公知の方法が利用可能である。
ここで、レジストマスク12は、エッチングおよびスリミングを繰り返し行う、後述する凹部形成工程における最後のエッチングが完了するまで残存する必要がある。従って、必要なレジストマスク12の膜厚については、予め各種のエッチング条件でのレジストマスク12のエッチング速度を調べておき、その結果に応じて、最適な厚さを、適宜、設定するのが好ましい。なお、エッチング速度の測定方法は、公知の方法がすべて利用可能である。エッチング速度の測定方法としては、一例として、後述する実施例で行っている方法が例示される。
特に、酸素プラズマ(O2プラズマ)によるレジストマスク12のスリミング(水平方向寸法削減)時には、レジストマスク12の膜厚の減少すなわち垂直方向寸法も減少量が大きい。この点を考慮すると、レジストマスク12の厚さは、金型が形成するマイクロレンズの半径以上が好ましく、半径の1.5倍以上がより好ましく、半径の2倍以上がさらに好ましい。
その反面、レジストマスク12が厚すぎると、レジスト材料の塗布性および貫通孔を形成する際の露光性が低減する可能性がある。この点を考慮すると、レジストマスク12の厚さは、1〜50μmとするのが好ましい。
これにより、マスク形成工程が終了する。
開口パターン12aは、壁面が基板10の表面に対して垂直となるように形成するのが好ましい。
ここで、開口パターン12aが大きすぎると、後述する仕上げ工程におけるエッチングで十分な球面化を行うことが困難になり、場合によっては、製造用凹部16の底面すなわち形成するマイクロレンズの中心が平面状になってしまう。この点を考慮すると、開口パターン12aの大きさは、形成するマイクロレンズの直径の半分以下が好ましく、1/4以下がより好ましく、1/5以下がさらに好ましい。
なお、後述する正六角形など、形成する製造用凹部の開口面すなわち形成するマイクロレンズの形状(平面形状)が、円形ではなく、多角形あるいは不定形である場合には、製造用凹部の開口面に内接する最大の円の直径を、マクロレンズの直径と見なせばよい。この点に関しては、前述のマイクロレンズの半径も同様である。
従って、レジストマスク12の露光では、レジストマスク12の形成材料、形成するマイクロレンズアレイのパターンおよびサイズ、ならびに、開口パターン12aの形成面積等に応じて、露光光源および露光装置を、適宜、選択すればよい。一例として、マスクアナライザーおよびステッパー等のマスク露光装置による露光、ならびに、電子線描画装置およびレーザ描画装置等の描画装置による露光が利用可能である。
凹部形成工程では、まず、レジストマスク12を介して、基板10の選択的なエッチングを行い、図1の左側3段目に示すように、1段目の凹部を基板10に形成する。この1段目の凹部の領域が、仮の凹部14の底すなわち製造用凹部16の底で、マイクロレンズの中心すなわち頂点に対応する。
図1および図2に示す例では、基板10のエッチングは、基板10の厚さ方向のみにエッチングを行う異方性エッチングである。凹部形成工程において、基板10の選択的なエッチングを異方性エッチングで行う方法は、形成するマイクロレンズの厚さtと直径dとのアスペクト比『t/d』が大きいマイクロレンズアレイを製造する金型の作製に好適である。このアスペクト比については、後に詳述する。
このエッチングは、基板10を選択的にエッチングするものであるが、図1に示されるように、レジストマスク12もエッチングされて、若干、厚さが減る。
中でも、エッチング量の高精度な制御が可能である、および、エッチングの再現性等のの観点からプラズマエッチングが好ましい。プラズマエッチングの方式には特に制限は無いが、プラズマ密度と基板10に印加するバイアスとを独立して制御できる方式が好ましい。この方法を実現できるプラズマ方式として、例えば、ICP(Inductively Coupled Plasm)方式、2周波CCP(Capacitively Coupled Plasma)方式、および、ECR(Electron Cyclotron Resonance)方式等が例示される。
例えば、基板10が半導体用シリコンウエハである場合には、フッ素元素、塩素元素、および臭素元素等を含有するガスをプラズマ中で分解して発生するフッ素ラジカル、塩素ラジカル、および、臭素ラジカル等によるエッチングが例示される。フッ素ラジカルを効率良く発生させるガスとしては、SF6、CF4、および、CHF3等が例示される。塩素ラジカルを効率良く発生させるガスとしては、Cl2等が例示される。臭素ラジカルを効率よく発生させるガスとしては、Br2、および、HBr等が例示される。
また、プラズマを生成させるガスには、プラズマ密度を向上させるため、アルゴンガス等を添加ガスとして混合してもよい。
基板10に印加するバイアス電力(バイアスパワー)にも、特に制限はない。しかしながら、バイアス電力を増加させすぎると、基板10側に引き込むイオンの加速エネルギーが増大し、基板10の異方性エッチングが進む反面、基板10とレジストマスク12とのエッチング選択性が低下してしまう。そのため、基板10に印加するバイアス電力は、この点を考慮して決定するのが好ましい。
従って、スリミングを行うことにより、基板10の表面では、最初に形成した凹部の周辺もレジストマスク12から露出する。
なお、スリミングに用いるガス(スリミングガス)は、基板10をエッチングすることなく、レジストマスク12のみをエッチングするラジカルを生成できるものであれば、各種のガスが利用可能である。本発明において、スリミングは、酸素ラジカルによるエッチングが好適に例示される。従って、スリミングにおけるラジカルの生成に用いるガスは、酸素元素を含有するガスが好ましく用いられる。酸素元素を含有するガスには、特に制限はないが、通常は酸素ガス(O2ガス)が用いられる。
また、レジストマスク12のスリミングの際には、基板10にバイアス電力を印加すると、レジストマスク12の厚さ方向(垂直方向)のエッチング速度が増加してしまう。そのため、レジストマスク12のスリミングの際には、基板10にバイアス電力を印加しないことが好ましい。
前述のように、基板10には、先に開口パターン12aを広げる前のレジストマスク12を介して凹部が形成されてる。従って、2回目の基板10の選択的なエッチングを行うと、基板10には、図1の右側上段および図2の2段目に示されるように、2段の階段状の凹部が形成される。
2回目のレジストマスク12のスリミングを行ったら、先と同様にして、3回目の基板10の選択的なエッチングを行う。前述のように、基板10には、2段の階段状の凹部が形成されている。従って、開口パターン12aをさらに広げた状態で基板10のエッチングを行うと、基板10には図1の右側3段目および図2の3段目に示されるように、3段の階段状の凹部が形成される。
これにより、凹部形成工程が終了する。
金型の作製コストおよび生産性等を考慮すると、エッチングおよびスリミングに使用するガス等に応じて、可能であれば、基板10の選択的なエッチング、および、レジストマスク12のスリミングは、同じエッチング装置で行うのが好ましい。
従って、凹部形成工程では、図1の右側4段目に破線で示す、仮の凹部14が近似する球面が、目標とする製造用凹部16すなわち形成するマイクロレンズに対応する形状となるように、基板10のエッチング量および回数、および、レジストマスク12のスリミング量を、適宜、設定する。
また、仕上げ工程におけるエッチングで、仮の凹部14の開口径すなわちマイクロレンズの直径は増大する。
実質的には、仮の凹部14の開口が、製造用凹部16の開口より小さくなり、かつ、仮の凹部14の深さと、製造用凹部16の深さとが等しくなるように、凹部形成工程における基板10のエッチング量および回数、ならびに、レジストマスク12のスリミング量を、適宜、設定すればよい。
なお、基板10のエッチング量および回数、ならびに、レジストマスク12のスリミング量を、適宜、設定し、仮の凹部14の球面誤差をより減少させて、仕上げ工程における基板10のエッチング時間を低減し、仮の凹部14の開口径の増大がほぼ無視できる場合には、仮の凹部14が近似する球面と、製造用凹部16の球面とを、等しくしてもよい。
基板10の選択的なエッチングの回数は、多い程、仮の凹部14の球面近似精度を向上できため、高精度な金型を作製できる。その反面、基板10の選択的なエッチングの回数が多いと、基板10のエッチングで使用するガスとレジストマスク12のスリミングで使用するガスとの切り換え回数、プラズマエッチングを利用する場合のプラズマ再点灯の回数が増大する。その結果、処理時間の長時間化、エッチング装置内のパーティクルの発生リスクが増加する。この点を考慮すると、基板10の選択的なエッチングの回数は、10回以下とするのが好ましい。
除去工程におけるレジストマスク12の除去方法には、特に制限はなく、レジストマスク12の形成材料に応じて、公知の方法で行えばよい。従って、レジストマスク12の除去は、有機溶剤による剥離でも、プラズマアッシング装置を用いて行ってよい。
また、レジストマスク12の除去は、レジストマスク12のスリミングと同じエッチング装置で行ってもよい。レジストマスク12の除去を、レジストマスク12のスリミングと同じエッチング装置で行う場合には、処理効率を高くするために、物理的なスパッタリングによる基板10のエッチングが発生しない範囲で、基板10にバイアス電力を印加してもよい。
仕上げ工程では、図1の右側4段目に破線で示す、階段状の仮の凹部14が近似する球面に応じて、製造用凹部16がマイクロレンズに対応する目標とする球面となるように、仮の凹部14を球面化するためのエッチングを行う。例えば、仮の凹部14が、ある程度、球面になった後は、その後のエッチングを制御することで、製造用凹部16すなわち形成するマイクロレンズの曲率半径をコントロールできる。
加えて、本発明では、基板10のエッチングおよびレジストマスク12のスリミングを繰り返し行うことで、階段状の仮の凹部14を形成するので、仮の凹部14の段数すなわち基板10のエッチング回数を任意に設定でき、最適なエッチング回数によって、球面近似精度が高い階段状の仮の凹部14を形成できる。
従って、本発明の金型の作製方法によれば、微細なマイクロレンズを配列してなるマイクロレンズアレイを高精度に製造できるマイクロレンズアレイ製造用金型を、高い球面形状精度で作製できる。
また、仮の凹部を後述するように等方性のエッチングで形成する場合における、エッチング装置およびエッチング条件を用いてもよい。
これに対し、図3の下段に示すような、隣接するマイクロレンズ同士が面方向の全域で接触しているマイクロレンズアレイを製造する金型の作製を行う場合には、仮の凹部が近似する球面の深さを製造用凹部よりも深くし、また、仮の凹部が近似する球面の開口を製造用凹部の開口以下とする。実質的には、先と同様、仮の凹部の深さを、製造用凹部の深さよりも深くし、かつ、仮の凹部の開口を、製造用凹部の開口以下とすればよい。
なお、図3において、左側は図2と同様の平面図で、右側は図1と同様の断面を概念的に示す図である。
以下の説明では、隣接するマイクロレンズ同士が面方向の全域で接触しているマイクロレンズアレイを便宜的に『ギャップレス型のマイクロレンズアレイ』とも言う。
次いで、同様に、仕上げ工程において、基板10に等方性エッチングを行う。
先の例と同様、仕上げ工程でエッチングを行うと、仮の凹部24の開口径が拡大する。ここで、ギャップレス型のマイクロレンズアレイを製造する金型を作製する場合には、隣接する仮の凹部24同士で、最も離間する開口端を含めて、開口端を面方向の全域で合体させる必要がある。
また、仮の凹部24の開口端が合体した後は、隣接する仮の凹部24同士で合体した開口端は同速度で拡大するので、開口端は直線状になる。従って、例えば、図3に示す六方細密充填(ハニカム配列)のように仮の凹部24を形成すると、ギャップレス型のマイクロレンズアレイを製造する金型では、基板10の表面における製造用凹部26は、ハニカム構造のようになる。
さらに、前述のように、ギャップレス型のマイクロレンズアレイに対応する金型を作製するためには、隣接する仮の凹部24間の最も離れた開口同士が接触するまでエッチングする必要が有る。
その結果、図3の3段目から下段に示すように、図1に示すように隣接する仮の凹部24間が離れている間はほぼ一定であった仮の凹部24の深さが急激に減少し、レンズ面となる仮の凹部24(すなわちマイクロレンズ)の曲率半径が急激に増大する。
従って、ギャップレス型のマイクロレンズアレイを製造する金型28を作製するためには、少なくとも、仮の凹部24の深さを、最終的に形成する製造用凹部26の深さよりも深くしないと、所望する形状および曲率半径のマイクロレンズアレイを製造できる金型を作製することができない。
従って、この構造を実現した後、さらに追加のエッチングを施すことで、ギャップレス型のマイクロレンズアレイに対応する球面性を維持したまま、境界部の高さのみ減少し、曲率半径を増大させることができ、所望の曲率半径のギャップレス型のマイクロレンズアレイを製造できる金型28を作製できる。
この方法は、製造するマイクロレンズアレイのマイクロレンズの厚さをt[μm]、直径をd[μm]とした場合に、『t/d』で示されるアスペクト比が大きい場合に、好適に利用される。図4に概念的に示すように、マイクロレンズの厚さtは、製造用凹部16の深さに対応し、マイクロレンズの直径dは、製造用凹部16の開口径に対応する。
なお、マイクロレンズの形状が円形ではない場合には、マイクロレンズの直径dは、開口パターン12aの大きさと同様に対応すればよい。
通常、フッ素ラジカル、塩素ラジカル、および,臭素ラジカルによるシリコンのエッチング作用は等方的である。そのため、異方性のエッチングを実現するにはシリコンの側壁保護物質をプラズマ中で生成し、基板へ供給する必要がある。
例えば、エッチングにフッ素含有ガスを使用する場合は、堆積性を有するCF系の解離生成物を発生させるのが好ましく、シリコンの垂直方向のエッチングストップが発生しない範囲で、炭素元素を含有するガス比率を増加させればよい。塩素含有ガスあるいは臭素含有ガスを使用する場合は、適量のO2ガスを添加することで、エッチングされたシリコンの揮発生成物と酸素とが結びつき、レジストおよびシリコン非エッチング面側壁にSiO2被膜が形成されて異方性エッチングを実現することができる。
また、十分なレジスト膜厚を確保できる場合は、バイアス電力を増加させてより異方性を高めてもよい。
特に、アスペクト比が小さいマイクロレンズを形成する場合には、凹部形成工程における基板10の選択的なエッチングを、等方性エッチングで行うのが好ましい。中でも、アスペクト比(『t/d』)が0.5以下のマイクロレンズを形成する場合には、凹部形成工程における基板10の選択的なエッチングを、等方性エッチングで行うのが好ましい。
また、仮の凹部30の球面近似精度を高くできるため、図5の右側中段から下段に到る、仮の凹部30を球面化して製造用凹部16とするための仕上げ工程における基板10のエッチング時間を短縮できる。さらに、仕上げ工程におけるエッチングで仮の凹部30が球面化する前に、隣接する仮の凹部30の端部が不要に合体することも防止できる。
従って、等方性エッチングで仮の凹部30を形成することにより、高い生産効率で、高精度、かつ、パーティクルに起因する欠陥が少ない、目的とするマイクロレンズアレイを高精度に製造できる金型を作製できる。
また、基板10に印加するバイアス電力を低減、あるいは、基板10にバイアスを印加しないのも好ましい。
本発明は、これに制限はされず、例えば、図7に概念的に示すように、凹部形成工程におけるスリミングによって除去するレジストマスク12の幅を、漸次、狭くしてもよい。この方法も、アスペクト比が小さいマイクロレンズを形成する場合に好適であり、特にアスペクト比(『t/d』)が0.5以下のマイクロレンズを形成する場合にはより好適である。
最初にエッチングを行われた後、その後のエッチングを行われると、角が削られて球面化が行われた状態になる。従って、1つの領域に行われるエッチング回数が多い程、角が削られて、より、仮の凹部14が近似する球面に近い形状になる。すなわち、エッチングを受ける回数が多い領域は、スリミング量すなわち面方向のエッチング領域を、ある程度、大きくして、その後のエッチングを行っても、仮の凹部14が近似する球面に近い形状にできる。
一方、仮の凹部14は、周辺部に行くほど、エッチングの回数が少なくなる。しかも、一般的に、マイクロレンズすなわち製造用凹部16は、周辺部に行くほど、勾配が大きくなる。従って、球面近似精度が高い仮の凹部14を形成するためには、周辺部に向かうに応じて、より細かく近似して、仮の凹部14の階段形状を、仮の凹部14が近似する球面に近付けるのが好ましい。
基板10のエッチング回数を、n回とする。従って、スリミングの回数は、n−1回となる。
基板10の厚さ方向のエッチングレートをRy、レジストマスク12の面方向のスリミングのレートをRx、n回目のエッチングにおける基板10の厚さ方向のエッチング量をYn、n回目のスリミングにおける面方向のレジストマスク12のスリミング量をXnとする。なお、X0は、開口パターン12aの大きさである。
この場合において、n回目の基板10のエッチング時間Tynは、Yn/Ryで算出すればよい。また、n回目のレジストパターンのスリミング時間Txnは、Xn/Rxで算出すればよい。
基板として、半導体用シリコンウエハを用意した。
この基板に、東京応化工業社製のOAPを3000rpm(Revolutions Per Minute)、30秒の条件で、スピン塗布した。次いで、ホットプレートによって120℃で15分間、ベーキング処理して、基板のHMDS密着処理を行った。
次に、ポジ型レジスト(東京応化工業社製、PMER−P−LA900)を、2000rpm、30秒の条件で、基板10にスピン塗布し、110℃で30分のベーキング処理を行い、厚さ15μmのレジスト塗布膜を形成して、レジストマスクとした。
形成したレジストマスクにコンタクトアライナー(ズースマイクロテック社製、MA6)を用いて露光を施したのち、2.38%−TMAH溶液で180秒の現像を行い、さらに、純水で60秒のリンス処理を行った。
これにより、基板10の表面に設けたレジストマスクに、20μm間隔でハニカム状に配列(ハニカム配列)した、円筒状の開口パターンを形成した。なお、開口パターンの間隔は、円筒の中心間の間隔である。
基板のエッチングおよびレジストマスクのスリミングは、ICP方式のプラズマエッチング装置(パナソニック社製、IPCエッチャーE620)を用いて行った。
・ 基板(シリコン)の異方性エッチング条件
プラズマ励起電力は800W、基板に印加するバイアス電力は30W、基板温度は50℃とした。
エッチングガスは、SF6およびCHF4を用いた。流量は、SF6が10sccm、CHF4が40sccmとし、圧力は0.6Paとした。
・ レジストマスクのスリミング条件
プラズマ励起電力は800W、基板に印加するバイアス電力は0W、基板温度は50℃とした。
スリミングガスは、02を用い、流量は300sccm、圧力は10Paとした。
・ レジストマスクのアッシング条件
プラズマ励起電力は800W、基板に印加するバイアス電力は100W、基板温度は50℃とした。
アッシングガスは、02を用い、流量は300sccm、圧力は10Paとした。
・ 基板(シリコン)の等方性エッチングおよび仕上げ工程(仮の凹部の球面化)におけるエッチングの条件
プラズマ励起電力は800W、基板に印加するバイアス電力は10W、基板温度は50℃とした。
エッチングガスは、SF6を用い、流量は50sccm、圧力は1Paとした。
前述の基板表面へのレジストマスクの形成と全く同様にして、図8に概念的に示すように、基板の表面に、厚さ15μmのレジストマスク(斜線)を形成し、直径5μmの円筒状の開口を形成したサンプルを作製した。
このサンプルに、上記の条件で、120秒間、基板の異方性エッチング(矢印a)、レジストマスクのスリミング(矢印b)、および、基板の等方性エッチング(矢印c)を行った。
エッチングを行った後のサンプルの断面形状を、電界放出型走査電子顕微鏡で観察して、レジストマスクの厚さ方向および面方向の寸法変化量、および、基板の厚さ方向のエッチング量から、エッチングレートを算出した。
その結果、基板の異方性エッチングにおける、基板の厚さ方向のエッチングレートは6nm/秒、レジストマスクの厚さ方向のエッチングレートは2nm/秒、
レジストマスクのスリミングにおける、レジストマスクの面方向のエッチングレートは32nm/秒、レジストマスクの厚さ方向のエッチングレートは44nm/秒(基板はエッチングされない)、
レジストマスクのアッシングにおける、レジストマスクの厚さ方向のエッチングレートは75nm/秒(基板はエッチングされない)、
基板の等方性エッチングにおける基板の厚さ方向のエッチングレートは8nm/秒、レジストマスクの厚さ方向のエッチングレートは1.5nm/秒、であった。
前述のように、基板の表面に開口パターンを形成したレジストマスクを作製した。開口パターンの直径は3μmとした。
この基板およびレジストマスクに、異方性エッチングによる基板のエッチング、および、レジストマスクのスリミングを、繰り返し行うことで、基板に仮の凹部を形成した。本例では、レジストマスクのスリミング量は均一にした。
エッチングおよびスリミングの詳細を、以下の表1に示す。なお、PRとは、フォトレジストであり、すなわちレジストマスクを示す。
図9に、目標とする製造用凹部の球面形状(目標球面形状、破線)、仮の凹部が近似する球面形状(近似球面形状、一点鎖線)、および、設計上の仮の凹部の形状(設計段差形状、実線)を示す。また、図10に、作製した金型の顕微鏡写真(平面図)を示す。
なお、図9は、凹部の半分を示すものであり、縦軸が底面からの高さ、横軸は中心からの面方向の距離を示す。以上の点は、後述する図11および図13も同様である。
前述のように、基板の表面に開口パターンを形成したレジストマスクを作製した。開口パターンの直径は5μmとした。
この基板およびレジストマスクに、等方性エッチングによる基板のエッチング、および、レジストマスクのスリミングを、繰り返し行うことで、基板に仮の凹部を形成した。本例では、レジストマスクのスリミング量を、漸次、低減した。
エッチングおよびスリミングの詳細を、以下の表2に示す。
図11に、目標とする製造用凹部の球面形状(目標球面形状、破線)、仮の凹部が近似する球面形状(近似球面形状、一点鎖線)、および、設計上の仮の凹部の形状(設計段差形状、実線)を示す。また、図12に、作製した金型の顕微鏡写真(平面図)を示す。
前述のように、基板の表面に開口パターンを形成したレジストマスクを作製した。開口パターンの直径は5.5μmとした。
この基板およびレジストマスクに、等方性エッチングによる基板のエッチング、および、レジストマスクのスリミングを、繰り返し行うことで、基板に仮の凹部を形成した。本例では、レジストマスクのスリミング量を、漸次、低減した。
エッチングおよびスリミングの詳細を、以下の表3に示す。
図11に、目標とする製造用凹部の球面形状(目標球面形状、破線)、仮の凹部が近似する球面形状(近似球面形状、一点鎖線)、および、設計上の仮の凹部の形状(設計段差形状、実線)を示す。また、図14に、作製した金型の顕微鏡写真(平面図)を示す。
製造用凹部の中心部の形状プロファイルデータを、最小二乗法による球面フィッティングを行って、製造用凹部の曲率半径を算出した。目標とする製造用凹部の曲率半径に対して、10点の凹部の平均の曲率半径が±10%以内に入っている場合に、合格とした。
また、形成した製造用凹部を測定し、形成した製造用凹部の最大深さ(ピーク・トゥ・バレー)と、目標とする製造用凹部の最大深さとを比較して、その差を球面誤差とした。10点の凹部の平均の球面誤差が0.1μm以下の場合に、合格とした。
その結果、実施例1〜3の金型は、曲率半径および球面誤差は、共に合格であった。結果を下記の表4に示す。
12 レジストマスク
12a 開口パターン
14、24、30 仮の凹部
16、26 製造用凹部
18
20、28 (マイクロレンズ製造用)金型
Claims (7)
- 基板の一方の表面に、製造するマイクロレンズアレイのパターンを有するレジストマスクを形成するマスク形成工程、
前記レジストマスクを介した前記基板の選択的なエッチング、および、前記レジストマスクのスリミングを、複数回、繰り返し行うことにより、前記基板に、マイクロレンズに対応する仮の凹部を形成する凹部形成工程、
前記基板から前記レジストマスクを除去する除去工程、および、
前記基板をエッチングすることにより、前記仮の凹部を製造用凹部とする仕上げ工程、を行うものであり、
前記マスク形成工程において、製造する前記マイクロレンズアレイのパターンとして、形成するマイクロレンズの直径の半分以下の開口パターンを前記レジストマスクに形成することを特徴とするマイクロレンズアレイ製造用金型の作製方法。 - 基板の一方の表面に、製造するマイクロレンズアレイのパターンを有するレジストマスクを形成するマスク形成工程、
前記レジストマスクを介した前記基板の選択的なエッチング、および、前記レジストマスクのスリミングを、複数回、繰り返し行うことにより、前記基板に、マイクロレンズに対応する仮の凹部を形成する凹部形成工程、
前記基板から前記レジストマスクを除去する除去工程、および、
前記基板をエッチングすることにより、前記仮の凹部を製造用凹部とする仕上げ工程、を行うものであり、
前記マスク形成工程で形成する前記レジストマスクの厚さが、形成するマイクロレンズの半径以上であることを特徴とするマイクロレンズアレイ製造用金型の作製方法。 - 前記凹部形成工程で形成する前記仮の凹部の深さを、前記仕上げ工程で形成する前記製造用凹部よりも深くする、請求項1または2に記載のマイクロレンズアレイ製造用金型の作製方法。
- 前記凹部形成工程における前記レジストマスクを介した前記基板の選択的なエッチングが、等方性エッチングである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のマイクロレンズアレイ製造用金型の作製方法。
- 前記凹部形成工程における前記レジストマスクのスリミングの前記基板の面方向の大きさを、漸次、少なくする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のマイクロレンズアレイ製造用金型の作製方法。
- 製造する前記マイクロレンズアレイにおけるマイクロレンズの厚さをt[μm]、直径をd[μm]とした場合に、『t/d』で示されるアスペクト比が0.5以下である、請求項4または5に記載のマイクロレンズアレイ製造用金型の作製方法。
- 前記凹部形成工程において、前記レジストマスクを介した前記基板の選択的なエッチングを、3〜10回行う、請求項1〜6のいずれか1項に記載のマイクロレンズアレイ製造用金型の作製方法。
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