JP4914546B2 - 紙の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、シラン系化合物を溶解した有機溶剤を流体媒質として、植物繊維を膠着させて紙を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
紙の製造工程では、植物繊維を膠着するにあたって、水を流体媒質として使用している。このような従来の製造方法によって製造された、従来の紙は、その構造中に、通常約4から6%の水を含んでいるが、この水は、植物繊維中のセルロースの水酸基と水素結合を形成し、繊維どうしの結合を強く役割を担っている。そして、このセルロースの水酸基と水との水素結合による化学的結合力に加えて、植物繊維どうしの絡み合いによる物理的結合力の両方の力により、紙の強度は保たれるのである。
【0003】
上記したセルロースの水酸基と水との水素結合力は強固であるが、しかしながら、水は紙が100℃以上に加熱されると蒸発してしまうため、かかる水素結合を維持できなくなり、紙の強度は必然的に低下する。また、逆に、紙に水が滲入した場合にも、植物繊維中のセルロースの水酸基どうしは、水との水素結合を介して間接的に結合し得なくなってしまうため、紙の強度は低下する。そしてこれらの結果、従来の紙は、高温状態で使用される製品や、水と接触したり、又は湿潤な状態で使用される紙製品の原料として使用するわけにはいかず、おのずと使用範囲が制限されるのである。
【0004】
そこで、紙の強度を増す目的で、従来は、流体媒質である水に添加剤を添加することが行われている。従来添加されている添加剤には、紙が乾いている状態での引張強度(乾燥紙力)を増強する乾燥紙力増強剤と、紙が湿っている状態での引張強度(湿潤紙力)を増強する湿潤紙力増強剤とがある。
【0005】
前記乾燥紙力増強剤としては、ポリアクリルアミド系の高分子化合物や、カチオン化でんぷん、ジアルデヒドでんぷん、植物ガムなどが使用されている。これらは、各化合物内のアミド基や水酸基が、繊維中のセルロースの水酸基と水素結合したり、高分子間凝集力を発揮したりすることにより、乾燥紙力を増強するものである。一方、前記湿潤紙力増強剤としては、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂が使用されている。ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂は、カチオン性で、繊維に自己定着してセルロースと架橋し、三次元的な網目構造を作り、水の浸透を防ぎながら親水性基を封鎖することにより、湿潤紙力を増強するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記したように、従来、紙を製造するにあたっては、水を流体媒質として使用しつつ、湿潤紙力増強剤や乾燥紙力増強剤などの添加剤を用いることにより、紙が有する課題を補っているのが現状である。
【0007】
しかしながら、乾燥紙力増強剤を使用して乾燥紙力を増強した紙では、湿潤状態において重大な課題がある。すなわち、紙が水と接触し、その内部に水が滲入すると、乾燥紙力増強剤中のアミド基や水酸基が紙を構成する繊維中のセルロースの水酸基との間で形成している水素結合が切れ、紙力が大きく減少してしまうという課題がある。このため、乾燥紙力増強剤を使用して製造した紙は、表面を適当な材でコーティングするなどしなければ、水と接触する紙製品を製造するための原料として使用できないのである。
【0008】
また、湿潤紙力増強剤を使用して湿潤紙力を増強した紙では、それ自体が植物繊維中のセルロースと架橋して三次元的な網目構造を形成し、該網目構造内に親水性基を封鎖することで湿潤紙力を増強するため、湿潤状態における水の滲入に対しては高い耐性を発揮するが、乾燥状態における紙力の維持については、なおも改善の余地がある。
【0009】
そして、従来の紙の製造方法においてもっとも重大な課題は、上記乾燥紙力増強剤と湿潤紙力増強剤とを同時に使用して、乾燥及び湿潤の両方に対する紙力が増強された紙を製造することができなかったことにある。
【0010】
ところで本願出願人は、先に、その表面上にガラス質のコーティング膜を形成したコーティング紙を提案した(例えば、特願2000−242269号など)。この、本願出願人が先に提案したコーティング紙は、引張強度などの機械的強度を通常の紙と比較して飛躍的に向上し、加えて紙の耐熱性も向上したものである。しかしながら、このコーティング紙においては、実用上十分な乾燥紙力と湿潤紙力を発揮し得るものの、紙表面へのガラス質のコーティングという付加的な作業が必須となるなど、おのずと製造コストが上昇するという課題を有していた。
【0011】
そこで本願発明の目的は、乾燥状態及び湿潤状態の両方において十分な紙力を発揮し得、しかもコストが安価な、従来の紙と比較して使用範囲の制限が少ない、新規な紙の製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本願発明者は、前記課題を目的を達成すべく鋭意検討を行い、植物繊維などを膠着させて紙を製造する際の流体媒質に着目することにより本願発明を完成するに至った。乾燥状態及び湿潤状態の両方において十分な紙力を維持し得、しかもコストが安価な、新規な紙の製造方法である本発明は、植物繊維又はそれに類する繊維を膠着させて紙を製造するにあたり、その流体媒質として、シラン系化合物を含有してなる有機溶剤を使用する紙の製造方法である。
【0013】
本願請求項1の発明は、植物繊維を膠着させて紙を製造するにあたり、その流体媒質として、下記式1で示される化合物を主成分とするシラン系化合物を含有してなる有機溶剤を使用することを特徴とする。
【式1】
(式1において、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ同一でも異なっていても良く、水素、アルキル基又はアルケニル基からなる単量体であり、R1O、R2O、R3O及びR4OとSiとの結合はシロキサン結合からなる縮合体である)
【0014】
本願請求項2の発明は、植物繊維を膠着させて紙を製造するにあたり、その流体媒質として、下記式2で示される、3個の加水分解可能な置換基と、1個の加水分解不可能な置換基とを有する化合物を主成分とするシラン系化合物を含有してなる有機溶剤を使用することを特徴とする。
【式2】
(式2において、R5、R6及びR7は、それぞれ同一又は異なっていても良く、水素、アルキル基又はアルケニル基からなる単量体であり、R5O、R6O及びR7OとSiとの結合はシロキサン結合からなる縮合体であり、R8はその分子内にエポキシ基又はグリシジル基を含んでも良い、アルキル基、アルケニル基又はフェニル基である)
【0015】
本願請求項3の発明は、植物繊維を膠着させて紙を製造するにあたり、その流体媒質として、下記式3で示される、2個の加水分解可能な置換基と、2個の加水分解不可能な置換基とを有する化合物を主成分とするシラン系化合物を含有してなる有機溶剤を使用することを特徴とする。
【式3】
(式3において、R9及びR11はそれぞれ同一又は異なっていても良く、水素、アルキル基又はアルケニル基からなる単量体であり、R9O及びR11OとSiとの結合はロキサン結合からなる縮合体であり、R10及びR12はそれらの分子内にエポキシ基又はグリシジル基を含んでも良い、アルキル基、アルケニル基又はフェニル基である)
【0016】
本願請求項4の発明は、植物繊維を膠着させて紙を製造するにあたり、その流体媒質として、下記式1、式2及び式3で示される化合物のうちの、少なくとも2種類以上を含むシラン系化合物を含有してなる有機溶剤を使用することを特徴とする。
【式1】
(式1において、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ同一でも異なっていても良く、水素、アルキル基又はアルケニル基からなる単量体であり、R1O、R2O、R3O及びR4OとSiとの結合はシロキサン結合からなる縮合体である)
【式2】
(式2において、R5、R6及びR7は、それぞれ同一又は異なっていても良く、水素、アルキル基又はアルケニル基からなる単量体であり、R5O、R6O及びR7OとSiとの結合はシロキサン結合からなる縮合体であり、R8はその分子内にエポキシ基又はグリシジル基を含んでも良い、アルキル基、アルケニル基又はフェニル基である)
【式3】
(式3において、R9及びR11はそれぞれ同一又は異なっていても良く、水素、アルキル基又はアルケニル基からなる単量体であり、R9O及びR11OとSiとの結合はロキサン結合からなる縮合体であり、R10及びR12はそれらの分子内にエポキシ基又はグリシジル基を含んでも良い、アルキル基、アルケニル基又はフェニル基である)
【0017】
本願請求項5の発明は、植物繊維を膠着させて紙を製造するにあたり、その流体媒質として、下記式1、式2及び式3で示される3種類の化合物を全て同時に含むシラン系化合物を含有してなる有機溶剤を使用することを特徴とする。
【式1】
(式1において、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ同一でも異なっていても良く、水素、アルキル基又はアルケニル基からなる単量体であり、R1O、R2O、R3O及びR4OとSiとの結合はシロキサン結合からなる縮合体である)
【式2】
(式2において、R5、R6及びR7は、それぞれ同一又は異なっていても良く、水素、アルキル基又はアルケニル基からなる単量体であり、R5O、R6O及びR7OとSiとの結合はシロキサン結合からなる縮合体であり、R8はその分子内にエポキシ基又はグリシジル基を含んでも良い、アルキル基、アルケニル基又はフェニル基である)
【式3】
(式3において、R9及びR11はそれぞれ同一又は異なっていても良く、水素、アルキル基又はアルケニル基からなる単量体であり、R9O及びR11OとSiとの結合はロキサン結合からなる縮合体であり、R10及びR12はそれらの分子内にエポキシ基又はグリシジル基を含んでも良い、アルキル基、アルケニル基又はフェニル基である)
【0018】
本願請求項6の発明は、前記請求項1ないし5いずれか1項の発明に係り、加水分解可能な有機金属化合物を触媒として使用して、前記シラン系化合物を硬化させることを特徴とする。そして本願請求項7の発明は、前記請求項6の発明に係り、前記加水分解可能な有機金属化合物が、チタン、ジルコン、アルミ又はスズからなる群から選ばれる一種以上の有機金属化合物であることを特徴とする。以下、本願発明を詳細に説明する。
【0019】
前記したとおり、紙は、植物繊維を膠着させるにあたり、その流体媒質として水を使用して製造されることが特徴である。紙中に含まれる水の量は、紙の製造工程を経るにつれて急激に低下し、最終的には約4から6%となる。そして前記のとおり、この、紙中に含まれる流体媒質である水が、植物繊維中のセルロースの水酸基と水素結合を形成し、繊維どうしを間接的に強固に結合するのである。これに対して本願発明は、流体媒質として、水の代わりにシラン系化合物を含有してなる有機溶剤を使用することを特徴とする。
【0020】
本願発明で使用するシラン系化合物は、アルコキシシラン化合物である。アルコキシシラン化合物は、加水分解されてポリマー化し、ネットワークを形成して、植物繊維を結合するバインダーとして機能するのである。すなわち、植物繊維と混ぜ合わせた後、アルコキシシラン化合物が触媒などの作用により加水分解されるとシラノールが生成するが、生成したシラノールは、植物繊維中のセルロースの水酸基と化学的に結合する。ここで、シラノールとセルロースとの結合は直接結合であり、強固である。したがって、流体媒質として水を使用して製造する従来の紙と比較して、本願発明により製造された紙は、引張強度などの機械的強度が増強されるのである。
【0021】
アルコキシシラン化合物とセルロースとの結合反応の様子を模式図として示せば、反応式(1)のとおりである。なお、反応式1においては、アルコキシシラン化合物を便宜上、HOーSiーOHと表記しているが、HOー基がROー基となっているアルコキシシラン化合物がこれに含まれることは言うまでもない。
【反応式1】
【0022】
一般にアルコキシシラン化合物を加水分解すると、下記反応式(2)から(4)に示す反応を経て、シロキサン結合(≡Si−O−Si≡)が生成し、シロキサン結合のネットワークが広がる。そしてこの場合は、前記したシラノ−ルとセルロースの水酸基との間の化学結合とは異なり、このネットワークそのものが植物繊維と絡み合い、その結果、植物繊維とネットワークを形成したシロキサン(ポリシロキサン)との間の付着強度が増加するのである。したがって、前記したセルロースとの化学的結合に加えて、このシロキサンが形成するネットワークによっても、流体媒質として水を使用して製造された従来の紙と比較して、本願発明により製造された紙は、引張強度などの機械的強度が増加するのである。
【反応式2】
【反応式3】
【反応式4】
【0023】
また、シロキサン結合内の≡Si−Oの結合エネルギーは、106kcal/molであるが、有機化合物の典型的な結合であるCーC結合の結合エネルギーは、82.6kcal/molである。本願発明の製造方法により製造される紙は、シラン系化合物の加水分解により生成したシロキサン結合を有し、したがって、有機化合物と比較して、熱的に、はるかに安定である。このように熱的に安定な結合を有しているために、本願発明により製造される紙は、耐熱性や耐摩耗性などの物理的特性においても、優れたものとなる。
【0024】
本願発明で使用されるシラン系化合物は、アルコキシシラン化合物である。具体的には、例えば式1で示される化合物が例示できる。
【式1】
【0025】
式1において、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ同一でも異なっていても良く、水素、アルキル基又はアルケニル基からなる単量体であり、R1O、R2O、R3O及びR4OとSiとの結合はシロキサン結合からなる縮合体である。また、例えば式1で示される化合物の1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を混合して使用しても良い。さらには、使用する化合物は単量体でも良いし、その1種又は2種類以上の化合物の縮合体でも良いが、単量体を使用する場合、一般的に単量体はそのポリマー化に時間がかかるため、短時間で十分な強度を持った紙を製造することが困難になる可能性がある。したがって本願発明においては、式1で示される化合物の縮合体を使用することが好ましい。もっとも、縮合体を使用するの場合、その縮合度が大きすぎると、植物繊維上でのポリマー化のためのアルコキシ基の数が不足し、十分な強度を持った紙を製造することが困難になる可能性があるため、縮合度が2から10、特に3から8の縮合体を使用することが好ましい。なお、一般には単量体から縮合体を合成する場合、その縮合度を正確に制御することはきわめて困難であるため、縮合度が2から10となるように反応を制御したとしても、実際には縮合度が11以上の縮合体が含まれることが一般的である。本願発明においても、縮合度を厳密に制御することは必須ではなく、例えば縮合度が11以上の化合物が含まれていたとしてもなんら差し支えはない。
【0026】
本願発明において使用するシラン系化合物のうち、式1で示される化合物としては、具体的には、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、ジメトキシジプロポキシシラン、ジメトキシジブトキシシラン、ジエトキシジプロポキシシラン、ジエトキシジブトキシシラン、ジプロポキシジブトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン、メトキシトリプロポキシシラン、メトキシトリブトキシシラン、エトキシトリメトキシシラン、エトキシトリプロポキシシラン、エトキシトリブトキシシラン、プロポキシトリメトキシシラン、プロポキシトリエトキシシラン、プロポキシトリブトキシシランなどの単量体や、又はそれらの縮合体を例示できる。前記したように、これらの中から1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を混合して使用しても良い。またさらに、これらの化合物は単量体でも良いし、これらの中から選んだ1種又は2種類以上の化合物の縮合体でも良い。
【0027】
シロキサン結合は、前記したように、耐熱性や耐摩耗性などに優れた結合であるが、その一方では、いわゆる「硬い」結合でもある。この「硬さ」により、本願発明によって製造される紙に耐熱性や耐摩耗性などの、優れた物理的特性を付与することが可能となるのであるが、しかしながら、紙を原料として紙製品を製造する場合には、物理的特性などに優れているばかりでなく、従来の紙が有している柔軟性が必要とされる場合もある。
【0028】
テトラアルコキシシラン(Si(OR)4)や、式1で示されるテトラアルコキシシランのオリゴマー体は、前記反応式(2)から(4)に示した加水分解反応が完全に生じると、ケイ素原子の4個の結合全てが反応し、硬いシロキサン結合のネットワークのみで形成されたバインダーとなる。このものはセラミックと同様に硬いが、しかし、反面脆く、本願発明において柔軟性を有する紙を製造しようとする場合には必ずしも好適ではない。そこで、本願発明において、柔軟性を有する紙を製造する場合には、シラン系化合物として、ケイ素原子の4個の置換基のうち、1個が加水分解されないものを使用する。
【0029】
ケイ素原子の4個の置換基のうち、1個が加水分解されない置換基であるシラン系化合物としては、式2で示される化合物を例示することができる。
【式2】
【0030】
式2において、R5、R6及びR7は、それぞれ同一又は異なっていても良く、水素、アルキル基又はアルケニル基からなる単量体であり、R5O、R6O及びR7OとSiとの結合はシロキサン結合からなる縮合体であり、R8はその分子内にエポキシ基又はグリシジル基を含んでも良い、アルキル基、アルケニル基又はフェニル基である。この、式2で示されるシラン系化合物は、隣接するケイ素原子との間で、加水分解、縮合反応に関与しないR8が、いわば「宙ぶらりん」の形で残るため、形成されるネットワークには柔軟性が付与され、式1で表されるシロキサン化合物のみを使用して製造した紙と比較して、より柔軟性に富む紙を製造することが可能となる。
【0031】
また同様に、柔軟性を有する紙を製造する場合には、シラン系化合物として、ケイ素原子の4個の置換基のうち、2個が加水分解されない置換基であるシラン系化合物を使用する。ケイ素原子の4個の置換基のうち、2個が加水分解されない置換基であるシラン系化合物としては、式3で示されるものを例示することができる。
【式3】
【0032】
式3において、R9及びR11はそれぞれ同一又は異なっていても良く、水素、アルキル基又はアルケニル基からなる単量体であり、R9O及びR11OとSiとの結合はロキサン結合からなる縮合体であり、R10及びR12はそれらの分子内にエポキシ基又はグリシジル基を含んでも良い、アルキル基、アルケニル基又はフェニル基である。この、式3で示されるシラン系化合物もまた、隣接するケイ素原子との間で、加水分解、縮合反応に関与しないR10及びR12が「宙ぶらりん」の形で残るため、形成されるネットワークには柔軟性が付与され、式1で表されるシロキサン化合物のみを用いて製造した紙と比較して、より柔軟性に富む紙を製造することが可能となる。
【0033】
前記式2で示されるシラン系化合物としては、具体的には、例えばメチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γー(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γーグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、βー(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γー(メタクリロキシプロピル)トリエトキシシラン、γーグリシドキシプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリスーβーメトキシエトキシシランなどの単量体や、又はそれらの縮合体を例示できる。そして、式1で示される化合物と同様に、式2で示される化合物においても、これらの中から1種類を単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても良く、またさらには、これらの化合物は単量体でも良いし、これらの中から選んだ1種又は2種類以上の化合物の縮合体でも良い。縮合体を使用する場合には、前記と同様の理由から、縮合度が2から10、特に3から8の縮合体を使用することが好ましい。
【0034】
前記式3で示されるシラン系化合物としては、具体的には、例えばジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシランなどの単量体や、又はそれらの縮合体を例示できる。そして、式1や式2で示される化合物と同様に、式3で示される化合物においても、これらの中から1種類を単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても良く、またさらには、これらの化合物は単量体でも良いし、これらの中から選んだ1種又は2種類以上の化合物の縮合体でも良い。縮合体を使用する場合には、前記と同様の理由から、縮合度が2から10、特に3から8の縮合体を使用することが好ましい。
【0035】
式2又は式3で示される、加水分解されず、したがって縮合反応に関与しない置換基を1個又は2個有するシラン系化合物は、それ単独で使用することが可能であるが、本願発明では、式1、式2及び式3で示されるシラン系化合物のうちの、少なくとも2種類以上を含む有機溶剤を流体媒質として使用することもできる。ここで、流体媒質中に含まれる各シラン系化合物は、それぞれが各式で示される化合物の1種類又は2種類以上の混合であり、またさらには、各化合物は単量体でも良いし、各式で示される化合物の中から選んだ1種又は2種類以上の化合物の縮合体でも良い。そしてさらには、各式で示される3種以上の化合物の縮合体であっても良い。なお縮合体を使用する場合には、前記と同様の理由から、縮合度が2から10、特に3から8の縮合体を使用することが好ましい。
【0036】
また本願発明では、式1、式2及び式3で示される3種類の化合物を全て同時に含む有機溶剤を流体媒質として使用することにより、製造される紙を、より柔軟性に富むものとすることができる。この場合においても、流体媒質中に含まれる各シラン系化合物は、それぞれが各式で示される化合物の1種類又は2種類以上の混合であり、またさらには、各化合物は単量体でも良いし、各式で示される化合物の中から選んだ1種又は2種類以上の化合物の縮合体でも良い。そしてさらには、各式で示される3種以上の化合物の縮合体であっても良い。なお縮合体を使用する場合には、前記と同様の理由から、縮合度が2から10、特に3から8の縮合体を使用することが好ましい。
【0037】
上記のように、式1、式2及び式3で示されるシラン系化合物の、少なくとも2種類以上又は3種類全てを含む有機溶剤を流体媒質として使用することにより、本願発明により製造される紙の柔軟性を意図的に変化させることが可能となり、従来の製造方法によって製造された紙と同等の柔軟性と、より優れた耐熱性や耐摩耗性などの物理特性を併せ持つ紙を製造することが可能となる。各式で示される化合物の割合については、実際に使用するシラン系化合物の種類、単量体か縮合体かの別、そして製造しようとする紙に要求される柔軟性、耐熱性、そして耐摩耗性などの物理特性を明らかにしたうで、予備的な製造試験を行って決定することが好ましい。かかる予備的な製造試験において、式1で示される化合物を主成分として、式2及び/又は式3で示される化合物を加え、製造される紙の柔軟性、耐熱性そして耐摩耗性を検討することが、意図する紙を製造するための流体媒質の組成を決定するうえで最も適当である。なお、本願発明者らの知見によれば、流体媒質中のシラン系化合物の総量に対し、式2及び/又は式3で示される化合物の合計量を50%未満とすることが、製造される紙の耐熱性及び耐摩耗性を十分に確保しつつ、同時に柔軟性を付与するうえで好適である。
【0038】
式2及び式3で示されるシラン系化合物中の、加水分解不可能な置換基、すなわちR8、R10及びR12として、有機性置換基を有するシラン系化合物を使用すれば、該シラン系化合物が加水分解、縮合して形成するネットワークに柔軟性を与えるのと同時に、該ネットワークに撥水性を付与することも可能となる。かかる目的のために有機性置換基を有するシラン系化合物を使用する際には、一般に有機性置換基はその炭素数が増えるにしたがって有機性、すなわち撥水性が増加するものの、炭素数があまりに大きくなると、立体障害によりネットワーク内に歪が生じ、バインダーとしての強度が低下しかねないことを考慮のうえ、予備的な実験を行って有機性置換基の種類や量を調節することが好ましい。
【0039】
これまで説明してきた、式1、式2及び/又は式3で示されるシラン系化合物の加水分解、縮合反応を進行させ、硬化、固化させるための触媒としては、広く一般に使用れている酸触媒や塩基触媒を使用することができる。酸触媒としては具体的に、例えば塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ギ酸又は酢酸などを例示することができる。また塩基触媒としては具体的に、例えばアンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化2ーヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、エタノールアミン、ジエタノールアミン又はトリエタノールアミンなどを例示することができる。これらの触媒を使用して式1、式2及び/又は式3で示されるシラン系化合物の加水分解、縮合反応を進行させ、硬化、固化させるためには、流体媒質中に反応水が存在している必要がある。
【0040】
上記反応水は、流体媒質中に水を加え、流体媒質の一部として提供することも可能であるが、シラン系化合物、反応水及び触媒を共存させた流体媒質は、ゲル化し易く、長期保存が難しいため、本願発明を実施するうえで好ましいとは言えないものである。そこで本願発明では、反応水を共存させる必要のない、加水分解可能な有機金属化合物を触媒として含む有機溶剤を、流体媒質として使用することが特に好ましい。この、加水分解可能な有機金属化合物を触媒として共存させた流体媒質は、長期保存安定性が高いからである。
【0041】
反応水の共存を必要としない触媒である、有機金属化合物は、流体媒質に添加され、植物繊維と接触した場合、植物繊維上の、及び/又は、空気中の水分(湿気)を吸収して、自ら加水分解するが、この時、同時に、共存しているアルコキシシランなどのシラン系化合物とネットワークを形成し、植物繊維間のバインダーとなるのである。この時の反応を、例えば有機金属化合物としてテトラブトキシチタネートを使用した場合を一例として説明すると、下記反応式(5)及び(6)のようになる。
【反応式5】
【反応式6】
【0042】
ここで、上記反応式における「≡Ti−O」結合がネットワーク中に導入されることにより、シロキサン結合のみのバインダーよりも、さらに耐熱性や耐摩耗性などの物理特性が向上することになる。したがって、本願発明において、触媒として有機金属化合物を使用することは、反応水の共存を不要として流体媒質の長期保存安定性を向上せしめるという効果のみならず、本願発明により得られる紙の耐熱性や耐摩耗性をさらに向上するうえでも効果的である。本願発明において、触媒として使用し得る、加水分解可能な有機金属化合物としては、具体的に、例えばチタン、ジルコン、アルミ又はスズを含むものが例示できる。より具体的には、例えばテトラプロポキシチタネート、テトラブトキシチタネート、テトラプロポキシジルコネート、テトラブトキシジルコネート、トリプロポキシアルミネート、アルミニウムアセチルアセトナート、ジブチルスズジアセテート又はジブチルスズジラウレートなどが例示できる。これら有機金属化合物は、その1種を使用するか、又はその2種類以上を混合して使用すれば良い。
【0043】
以上に説明したシラン系化合物、触媒、そして必要に応じて共存させる反応水は、これらを均一に混合するための有機溶剤に添加したうえで、流体媒質として紙の製造に使用する。本願発明における有機溶剤としては、例えばアルコール類を使用することができる。具体的には、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール又はヘキサノールなどを例示できる。使用する有機溶剤の種類によって、流体媒質の粘度や紙を製造する工程での乾燥速度が変化するため、これらを勘案のうえ、使用する有機溶剤を決定することが好ましい。本願発明で使用することが可能な、粘度や沸点の高い有機溶剤の例としては、上記例示したアルコール類の他に、具体的に例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコールあるいはポリプロピレングリコールなどのグリコール類、又は、メトキシエタノール、プロポキシエタノール、ブトキシエタノール、メトキシプロパノール、エトキシプロパノール、プロポキシプロパノールあるいはブトキシプロパノールなどのセルソルブ類が例示できる。またさらには、流体媒質に界面活性剤を添加することによっても、その粘度などを調整することが可能である。
【0044】
有機溶剤として前記例示したグリコール類又はセルソルブ類を使用した場合には、これらがその分子内に水酸基を有しているため、シラン系化合物が縮合してシロキサン結合のネットワークを形成する際に、シラン系化合物と反応し、形成されるネットワーク中にかかる有機性の分子が導入され、その柔軟性がさらに向上することがある。したがって、本願発明においては上記のような有機溶剤を積極的に使用して有機性の分子がシロキサン結合のネットワーク中に導入されるようにし、ネットワークの柔軟性をさらに向上させても良い。
【0045】
紙を製造するための主たる原料は、植物繊維である。本願発明においても、植物繊維を原料として紙を製造するが、ここで、植物繊維としては、通常の紙の製造に使用されているものであれば特に制限なく使用することができる。例えば、市販されているNDKP(商品名:PV−60、バッカイ製)などに代表される、従来紙の製造に使用されている木材チップから調製した化学パルプなどを使用することができる。また本願発明においては、前記例示したような化学パルプの他、古紙原料から再生された再生パルプや機械パルプなどを繊維原料として使用することもできる。したがって本願発明は、近年、盛んに再利用の必要性が指摘されている紙資源をリサイクルして、有効に利用することにも貢献するものである。 なお、本実施の形態においては、「紙」とは、植物繊維その他の繊維をこう(膠)着させて製造したもの。なお、広義には、素材として合成高分子物質を用いて製造した合成紙のほか、繊維状無機材料を配合した紙も含む(JISP0001(1998)4004)。一般の製紙工程では、流体メジュームは水であるが、新規に開発した空気、その他の流体を利用したものを含む(同参考1)。
また、従来から植物繊維を原料として紙を製造する際には、植物繊維にガラス繊維や炭素繊維など、他の繊維を混ぜ合わせることが行われることがある。本発明においても、主原料の植物繊維に、これらガラス繊維や炭素繊維などの、植物繊維以外の繊維を混ぜ合わせて、紙を製造することも可能である。
【0046】
本願発明における、紙の製造工程は、植物繊維であるパルプを漉いて膠着させる際に、流体媒質として、水に代えて式1で示されるシラン系化合物などを含む有機溶剤を使用すること以外は、従来の紙の製造工程と同様の工程により実施することが可能である。以下に、本願発明における紙の製造工程について、一例をあげて具体的に説明する。
【0047】
まず、木材パルプを離解、叩解して原料を調製する。例えば、適当量の木材パルプを、適当量の水中にてちぎり、所定時間、静置し、回流する水中に徐々に加え、所定時間、回流する。続いて、このようにして離解した木材パルプを、叩解する。叩解は、通常の方法により実施することができる。そして叩解を終了したものは、乾燥して原料とし、次の工程に供する。
【0048】
以上のように木材パルプを離解、叩解して調製した原料を、次に、紙漉機に供して抄紙する。むろん、紙漉機を使用せず、手で漉いても良い。この段階において、乾燥した原料を懸濁する流体媒質として、従来の水に代えて前記式1などで示されるシラン系化合物を含む有機溶剤を使用する。
【0049】
具体的には、前記のようにして離解、叩解した木材パルプを、前記式1などで示されるシラン系化合物を含む有機溶剤である流体媒質にて懸濁(希釈)し、多孔板などを利用してかき混ぜ、流体媒質と十分に混合する。両者を十分に混合した後、混合液の適当量を紙漉用の容器に流し込んだ後、余分の流体媒質を除去し、ドラムドライヤーなどで乾燥すれば、その際にシラン系化合物の加水分解、縮合反応が生じ、シロキサン結合のネットワークにより、植物繊維中のセルロースが強固に結合される。そしてその結果、引張強度などの機械的強度はもとより、耐熱性や耐摩耗性などの物理的特性にも優れた、乾燥状態及び湿潤状態の両方において十分な紙力を発揮し得る紙が製造されるのである。
【0050】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明をさらに詳細に説明する目的で、発明の実施例を記載するが、これらは本願発明の一実施形態にすぎず、本願発明を限定するものではない。
【0051】
実施例1 流体媒質の調製1
シラン系化合物として、3200gのテトラエトキシシランオリゴマー体(商品名ES−40、コルコート社製、縮合度(n)=4から5)を、1800gのイソプロピルアルコールに溶解し、触媒として180gのジブチルスズジアセテートを加え、十分に撹拌、混合して、紙の製造に使用する流体媒質を得た。以下、本実施例において調製した流体媒質を、流体媒質1と記載する。
【0052】
実施例2 流体媒質の調製2
シラン系化合物として、1600gのテトラエトキシシランオリゴマー体(商品名ES−40、コルコート社製、縮合度(n)=4から5)を、3490gのイソプロピルアルコールに溶解し、触媒として90gのジブチルスズジアセテートを加え、十分に撹拌、混合して、紙の製造に使用する流体媒質を得た。以下、本実施例において調製した流体媒質を、流体媒質2と記載する。
【0053】
実施例3 流体媒質の調製3
シラン系化合物として、800gのテトラエトキシシランオリゴマー体(商品名ES−40、コルコート社製、縮合度(n)=4から5)を、4330gのイソプロピルアルコールに溶解し、触媒として45gのジブチルスズジアセテートを加え、十分に撹拌、混合して、紙の製造に使用する流体媒質を得た。以下、本実施例において調製した流体媒質を、流体媒質3と記載する。
【0054】
実施例4 流体媒質の調製4
500ml三つ口フラスコに、181gのメチルトリメトキシシラン、50gのメタノール及び18gの純水を加えて十分に攪拌した。これらの混合液に、さらに2gの61%硝酸を加え、攪拌しながら3時間、加熱、環流させた。以上の反応を終了した後、加熱しながら反応容器内を減圧にし、メタノールを除去し、メチルトリメトキシシランオリゴマー体(以下、MTMとする)を調製した。調製したMTMをガスクロマトグラフィー分析に供した結果、調製されたオリゴマー体は3から4量体が中心であることが確認された。
以上のようにして調製した、2320gのMTMを、2500gのイソプロピルアルコールに溶解し、触媒として180gのジブチルスズジアセテートを加え、十分に撹拌、混合して、紙の製造に使用する流体媒質を得た。以下、本実施例において調製した流体媒質を、流体媒質4と記載する。
【0055】
実施例5 流体媒質の調製5
シラン系化合物として、実施例4で調製した、1160gのMTMを、3750gのイソプロピルアルコールに溶解し、触媒として90gのジブチルスズジアセテートを加え、十分に撹拌、混合して、紙の製造に使用する流体媒質を得た。以下、本実施例において調製した流体媒質を、流体媒質5と記載する。
【0056】
実施例6 流体媒質の調製6
シラン系化合物として、実施例4で調製した、2000gのMTM、及び320gのジメチルジエトキシシランとの混合物を、1800gのイソプロピルアルコールに溶解し、触媒として180gのジブチルスズジアセテートを加え、十分に撹拌、混合して、紙の製造に使用する流体媒質を得た。以下、本実施例において調製した流体媒質を、流体媒質6と記載する。
【0057】
実施例7 紙の製造と、製造された紙の試験
以上に記載した実施例1から6に示した流体媒質を使用して、以下に示す工程により紙を製造した後、各々、以下に示したような試験を行って、製造された紙の「厚み」、「密度」、「透気度」、「引張強度」、「引張破断伸び」、「耐折強さ」、「吸水度」及び「湿紙強度」を測定した。また比較のため、実施例1から6に示したような本願発明の実施に特徴的な流体媒質ではなく、従来の紙の製造工程において流体媒質として使用されている水を使用し、同様の工程を実施して製造した紙についても、同様の試験を行った。
【0058】
まず、JIS規格(JIS P 8221−1(1998))に準拠して、市販の木材パルプ(NDKP、商品名 PV−60、バッカイ製)を原料として使用して、以下の工程を実施することにより、化学パルプを調製した。
(1)前記木材パルプを、有姿で約600g採取し、10リットルの水中にて25mm角程度にちぎり、水中にて約10分間静置した。
(2)上記(1)のようにした木材パルプを、ビーター中で回流する13リットルの水中に徐々に加え、5分間、回流して離解した。
(3)上記(2)の、5分間の回流による離解の終了後、テコに錘をかけ、テコの止めをはずし、叩解を始めた。なお叩解時間は、30分間とした。
(4)叩解後、テコの錘を降ろし、テコ止めをして5分間回流した後、製造物を乾燥して原料を得た。
【0059】
上記のようにして調整した原料を、3g(絶乾重量)/1リットルの割合で採取し、JIS規格(JIS P 8121(1998);パルプのろ水度試験方法)に準拠して、ろ水度を測定した。その結果、ろ水度は、595cc(CSF)であった。
【0060】
次に、JIS規格(JIS P 8222(1998))に準拠して、上記のようにして調製した原料を漉き、紙を製造した。なお、目標米坪は60g/m2であり、240mm角サイズの紙を、下記のようにして手漉きで10枚、製造した。
(1)前記のようにして調製した原料を、実施例1から6において調製した流体媒質1ないし6、又は水で所定量に希釈後、必要量を採取し、原質用容器に流し込み、続いて容器の基準線まで、各流体媒質又は水を加えた。
(2)多孔板かき混ぜ機を、往復6回、ゆっくり上下動させ、原料と流体媒質を混合した。その10秒後、排水バルブを全開にして、流体媒質を原質用容器から排出した。
(3)湿紙から流体体質をきった後、約5秒程度静置し、原質用容器の排水バルブを閉め、放置した。その後、湿った状態の紙に吸取紙を積み重ねてプレスし、続いてドラムドライヤーにより乾燥した。この段階で、実施例1から6で製造した流体媒質を使用して漉いた紙では、シラン系化合物の加水分解、縮合反応が生じ、シロキサン結合のネットワークが形成されて、パルプ中のセルロースを結合するバインダーとなる。
(4)以上のようにして製造した紙を、240mm角サイズにカットし、調湿した。
【0061】
前記のようにして製造した紙について、まず、その厚さを試験した。試験は、JIS規格(JIS P 8118(1998))に準拠して、加圧面間の圧力を50kPaに設定したマイクロメーターを使用し、この加圧面間に試験片(紙)を置き、試験片が加圧面で保持されていることを確認したうえで、メーターが安定した直後の値を読みとった。なお、試験は、各試験片について、1から2箇所で行った。
【0062】
前記のようにして製造した紙について、次に、その秤量を試験した。試験は、JIS規格(JIS P 8124(1998))に準拠して、各試験片(240mm角サイズ)の重量を測定し、下記式で算出した。なお、下記式において、Gは、各の試験片の坪量(g/m2)、mは、各試験片の重量(g)、そしてAは、各試験片の面積(cm2)である。
G=m/A×10000
【0063】
前記のようにして製造した紙について、次に、その密度を試験した。試験は、JIS規格(JIS P 8118(1998))に準拠して、前記のようにして試験した各試験片の厚さと秤量から、下記式で算出した。なお、下記式において、Dは、密度(g/cm3)、Wは、坪量(g/m2)、そしてTは、厚さ(mm)である。
D=W/(T×1000)
【0064】
前記のようにして製造した紙について、次に、透気度を試験した。試験は、JIS規格(JIS P 8117(1998))に準拠して実施した。まず、製造した紙を50×50mm角サイズにカットし、試験片とした。円筒が垂直になるように試験機を垂直に置き、最初に内筒の頂部が掛金に支えられるまで内筒を引き上げ、次に締付板の間に試験片を締め付け、円筒が浮くまで静かに下降させた。そして、円筒の動きが安定した状態の時、0から100mlまでの目盛りが外筒の縁を通過するのに要する時間を測定した。
【0065】
前記のようにして製造した紙について、次に、引張強度を試験した。試験は、JIS規格(JIS P 8113(1998))に準拠して実施した。まず、製造した紙を15mm幅にカットし、試験片とした。そして定速伸張型引張試験器を用い、試験片をつかみ具で軽くつかんで、長辺が荷重のかかる方向と平行になるようにそろえて、つかみ具を堅く締め付けた。なお引張速度は、毎分10mmにセットした。
【0066】
上記の引張強度の試験において、試験時に試験器が表示した値を引張破断伸び(%)の値とした。
【0067】
前記のようにして製造した紙について、次に、耐折強さを試験した。試験は、JIS規格(JIS P 8115(1994))に準拠して実施した。まず、製造した紙を15mm幅にカットし、試験片とした。そして、試験片に4.9Nの荷重をかけ、毎分175プラスマイナス10回の速度で試験片が切れるまで試験片を曲げ、その往復曲げ回数を耐折強さの値とした。
【0068】
前記のようにして製造した紙について、次に、クレム法による吸水度を試験した。試験は、JIS規格(JIS P 8141(1996))に準拠して実施した。まず、製造した紙を幅15mm×長さ200mmにカットし、試験片とした。また浸漬容器に入れる水としては、20℃プラスマイナス1℃の蒸留水を使用した。まず、試験片の短辺から15mmのところに標線を書き、目盛板の0位置に合わせて試験片をつり下げ具に固定し、垂直に保持した。次に、標線までを素早く蒸留水に入れ、タイマーをスタートさせた。そして、10分間に上昇した水の巾方向の平均的な高さをmm単位で読みとった。
【0069】
前記のようにして製造した紙について、最後に、湿紙強度を試験した。
試験方法は、JIS P8113(1998)に規定する定速伸張型引張試験機を用いる。試験片は、15mm巾にカットし、あらかじめ20℃に調整した蒸留水に試験片の中央部を浸漬させ、試験片を吸取紙に載せ、別の吸取紙を試験片の上に載せ、軽く押さえ、過剰の水分を除く。直ちにJIS P8113(1998)に準拠し、引張試験を行う。試験片が破断した最大荷重を湿紙強度とする。
【0070】
【表1】
【0071】
表1は、前記のようにして製造した紙について、以上のようにして実施した試験の結果を示すものである。表1から明らかなように、本願発明によって製造された紙、すなわち、実施例1から6の流体媒質を使用することにより製造された紙では、「透気度」、「引張強度」、「引張破断伸び」、「吸水度」及び「湿紙強度」のいずれの試験においても、従来の水を流体媒質として製造した紙と比較して、より好ましい結果となっている。このことは、本願発明の製造方法が、従来の紙の製造方法と比較して、乾燥状態及び湿潤状態の両方において十分な紙力を発揮し得る、言い換えれば従来の紙に比較して、機械的強度が大幅に増強された紙を製造するうえで効果的であることを意味するものである。
【0072】
表1の結果において、「耐折強さ」については、流体媒質として水を使用して製造した紙よりも劣っており、本願発明により製造された紙は、従来の水を流体媒質として製造した紙よりも、柔軟性の点において劣ることを意味するものである。これは、本願発明ではシラン系化合物を流体媒質として紙を製造するが、これにより形成されるシロキサン結合のネットワークが非常に強固な結合であることに起因するものである。このように、実施例1から6で調製した流体媒質を使用して製造された紙は、柔軟性においてなおも課題を有するものの、前記したように、その他の点において従来の紙を凌駕する機械的強度などを有するものである。また、柔軟性に劣るという課題は、上述したように、前記式2及び式3で示されるシラン系化合物を適宜使用することにより、改善され得ることが明らかである。
【0073】
【発明の効果】
これまで説明してきたように、前記式1で示されるシラン系化合物を含有する有機溶剤を流体媒質として使用する本願発明では、漉いた紙を成型、乾燥する段階で、該シラン系化合物や時にはこれを加水分解する触媒などの加水分解、縮合反応を生じさせ、植物繊維中のセルロースと化学的に結合させ、また隣接するシラン系化合物どうしを縮合させてポリマー化し、シロキサン結合のネットワークを形成させる。またこの時、シラン系化合物はセルロースの微細な部分へ入り込むため、セルロースとの物理的結合により、機械的な絡み合いや有機部分どうしの疎水結合を生じさせる。したがって、本願発明によれば、引張強度などの機械的強度が増強され、さらに、熱的に安定なシロキサン結合により植物繊維を膠着させるものであることから、耐熱性や耐摩耗性などの物理的特性にも優れた紙を提供することが可能である。
【0074】
なお、上記のように、引張強度などの機械的強度や、耐熱性及び耐摩耗性などの物理的特性に優れる一方で、本願発明により製造される紙は、柔軟性においては水を流体媒質として製造した従来の紙に劣る場合がある。しかしながら、柔軟性においてはなおも課題を有するものの、機械的強度や物理的特性の向上は、これまで使用範囲が制限されていた紙の概念を覆すものである。またかかる課題についても、上述したように、加水分解不可能な置換基を1個又は2個有するシラン系化合物を適宜使用することにより、適宜改善され得ることは、前記説明した通りである。
【0075】
さらに本願発明の製造方法は、従来の紙の製造工程自体を変える必要なしに実施可能であることから、既存の設備などを生かして実施し得るものであり、また、従来の製造工程そのままで、単に流体媒質として使用していた水を、シラン系化合物を含む有機溶剤に変えるだけで実施し得るため、紙の製造コストを大幅に上昇させることもないという、工業的な利点を有するものである。
Claims (7)
- 植物繊維を膠着させて紙を製造するにあたり、その流体媒質として、下記式1、式2及び式3で示される化合物のうちの、少なくとも2種類以上を含むシラン系化合物を含有してなる有機溶剤を使用することを特徴とする、紙の製造方法。
【式1】
(式1において、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ同一でも異なっていても良く、水素、アルキル基又はアルケニル基からなる単量体であり、R1O、R2O、R3O及びR4OとSiとの結合はシロキサン結合からなる縮合体である)
【式2】
(式2において、R5、R6及びR7は、それぞれ同一又は異なっていても良く、水素、アルキル基又はアルケニル基からなる単量体であり、R5O、R6O及びR7OとSiとの結合はシロキサン結合からなる縮合体であり、R8はその分子内にエポキシ基又はグリシジル基を含んでも良い、アルキル基、アルケニル基又はフェニル基である)
【式3】
(式3において、R9及びR11はそれぞれ同一又は異なっていても良く、水素、アルキル基又はアルケニル基からなる単量体であり、R9O及びR11OとSiとの結合はロキサン結合からなる縮合体であり、R10及びR12はそれらの分子内にエポキシ基又はグリシジル基を含んでも良い、アルキル基、アルケニル基又はフェニル基である) - 植物繊維を膠着させて紙を製造するにあたり、その流体媒質として、下記式1、式2及び式3で示される3種類の化合物を全て同時に含むシラン系化合物を含有してなる有機溶剤を使用することを特徴とする、紙の製造方法。
【式1】
(式1において、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ同一でも異なっていても良く、水素、アルキル基又はアルケニル基からなる単量体であり、R1O、R2O、R3O及びR4OとSiとの結合はシロキサン結合からなる縮合体である)
【式2】
(式2において、R5、R6及びR7は、それぞれ同一又は異なっていても良く、水素、アルキル基又はアルケニル基からなる単量体であり、R5O、R6O及びR7OとSiとの結合はシロキサン結合からなる縮合体であり、R8はその分子内にエポキシ基又はグリシジル基を含んでも良い、アルキル基、アルケニル基又はフェニル基である)
【式3】
(式3において、R9及びR11はそれぞれ同一又は異なっていても良く、水素、アルキル基又はアルケニル基からなる単量体であり、R9O及びR11OとSiとの結合はロキサン結合からなる縮合体であり、R10及びR12はそれらの分子内にエポキシ基又はグリシジル基を含んでも良い、アルキル基、アルケニル基又はフェニル基である) - 加水分解可能な有機金属化合物を触媒として使用して、前記シラン系化合物を硬化させることを特徴とする、請求項1ないし5いずれか1項に記載の紙の製造方法。
- 前記加水分解可能な有機金属化合物は、チタン、ジルコン、アルミ又はスズからなる群から選ばれる一種以上の有機金属化合物であることを特徴とする、請求項6記載の紙の製造方法。
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