JP4089041B2 - 機能紙およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙の強度、特に湿潤強度、撥水性、耐水性に優れる機能紙およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
環境汚染、ごみ問題が社会問題となっている現代において、紙素材は再生紙としてのリサイクル性を持ち、また、焼却処理も容易な優れた素材の一つと言える。従来、金属やガラス、プラスチック等が用いられていた用途に、紙素材が取って代わるケースが少なくない。その結果、紙に対して、従来、以上の高い機能が要求されるようになっている。その機能の一例を挙げれば、強度や風合、印刷適性、耐水性、撥水性、吸水性、耐油性、耐熱性、耐熱水性等であり、特にパッケージ分野の液体容器や紙箱、段ボール等の紙容器について、高い撥水性や耐熱水性、湿潤強度が求めれている。
【0003】
そもそも、紙はパルプ繊維の絡みつきによりできており、構成単位となるセルロースは親水性で、さらに繊維間の毛細管作用により水や油を吸収しやすい素材である。従来から、印刷インキの滲み込み防止や、紙カップ、牛乳パック等の軽耐水(?)の目的で、パルプ繊維の親水性表面を疎水性コロイド物質で包み、吸水性を遮断するサイズ剤が抄紙時に内添されている。サイズ剤としてはロジン系やアルキルケテンダイマー、アルケニルコハク酸無水物等が一般的に用いられる。しかし、長時間水中に浸漬した後の湿潤強度は、乾燥時の強度の数%でしかない。
【0004】
紙の強度に関しては、種々の要素が複雑に絡み合って影響するものであるが、一般に、単繊維自体の強度、繊維の絡み合いによる摩擦強度、繊維間の接着強度の三要素に集約されると言われている。そのため、パルプ材料の選定やパルプの叩解が先ず、影響するが、濾水性や生産性を保つため、紙力増強剤を内添して繊維間の接着強度を向上させるのが一般的である。従来の紙力増強剤の中には、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミノアミドエピクロルヒドリン樹脂、ポリエチレン・イミンのように乾燥強度だけでなく、湿潤時の強度も向上させる薬剤もある。しかし、その湿潤強度は乾燥強度の10%程度であり、高い耐水性を求められる用途では、従来のガラス瓶や金属缶、プラスチック容器から切り替えることができないのが現状である。
【0005】
また、安価なワックスを紙に含浸して、パルプ繊維間の空隙を埋め、撥水性を高めた耐水紙が、撥水段ボール等の用途に、従来から使用されている。しかし、多量のワックスを含浸することは再生紙としてのリサイクル性を損ね、近年の環境意識の高まりから、ワックス含浸紙は市場から敬遠されるようになっている。
【0006】
さらにワックスやアクリル等の樹脂含浸紙は、有機溶剤や熱水への浸漬により、樹脂成分が溶出し、機能が低下してしまう。したがって、後工程や使用条件が制限されることになる。本発明者らは鋭意研究の結果、SiO2 のシロキサンネットワークを形成したシラン系薬剤含浸紙は溶剤や熱水抽出されにくく、機能が低下しにくいことを発見した。特開平10−183496号公報に記されるようなポリシラン化合物含浸紙は、強度や耐水性、特に湿潤強度に優れ、「JIS P8113 紙および板紙の引張り強さ試験方法」に従って測定した紙の引張り強度に対する、常温の蒸留水に浸漬後、同様に測定した湿潤引張強度の比が20%以上で、また、有機溶剤或いは熱水に浸漬しても機能劣化が少ない。また、該ポリシラン含浸紙は、再生紙としてリサイクルが可能である。
【0007】
しかし、該ポリシラン含浸紙は、その製造工程において、酸触媒を加えた上で高い熱量を与え、脱水重合によりシロキサンのネットワークを形成し機能を発現しているため、その性能は熱量に依存するとともに、微量ながら触媒の残存の問題がある。紙に高い熱量がかかると、紙の平衡水分も奪われ、水分低下による紙質の劣化を招き、後加工工程における印刷ピッチずれや容器成形時の不良率アップといった問題を引き起こしている。また、触媒の添加量は微量ではあるが、最近、焼却時の環境ホルモンの排出の問題がクローズアップされており、触媒を添加しないでシロキサンのネットワークを形成し、機能を発現させる製造法の出現が要望されている。
【0008】
一方、近年、大気圧プラズマによる表面処理技術の開発が著しい。従来、安定な低温プラズマは低圧下でないと発生できないと考えられていたが、電極の少なくとも一方の表面を誘電体で覆い、ヘリウム雰囲気に置換することで、大気圧下でグロー放電プラズマを発生する技術等が開発されている。また、極めて短いパルス幅の直流パルス高電圧を電極に印荷することで、放電距離が長く、放電が一部に集中しにくいコロナ放電を発生させる技術も開発されている。これらの大気圧プラズマ放電処理技術は、プラスチックや紙、繊維、粉体等の表面処理に応用されている。
【0009】
従来技術として特開平5−9897号に示される表面改質紙類は、含フッ素化合物と不活性ガスの混合ガスを用いて上記大気圧グロー放電プラズマ処理した紙類であるが、紙表面は疎水化され、撥水性は向上するが、湿潤強度まで向上するものではない。前述した紙の強度の構成要素である繊維間の接着強度を向上させるためには水に不溶で剛直な、ある程度の高分子量の物質が繊維間の接着部に付着する必要がある。しかし、該表面改質紙類は紙の表面層に含フッ素官能基が導入されているのみで、繊維間の接着を強化するものではない。
【0010】
また、特開平4−328135号のコロナ放電処理方法では、特定波形の高電圧パルスによるコロナ放電を発生させ、樹脂成形品を表面処理する方法が示されているが、特開平4−328135号に示されたシステムは印加電圧に特徴を有し、放電が長く伸びることから電極間隔を広げられ、三次元成形物の表面処理に適するものである。しかし、紙等のウエブの表面処理には電極間隔を広げる必要はなく、従来から高周波電圧を印荷したコロナ放電が用いられており、高電圧パルスによるコロナ放電はこれまで利用されてこなかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は紙の優れた特性であるリサイクル性や易焼却性を保持したまま、撥水性や耐水性、強度、特に高い湿潤強度を持ち、機能化薬剤の保持性が高く、さらに加熱による紙の水分低下や紙質の劣化のない、触媒添加が不要な機能紙およびその製造方法を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために考えられたものであり、
請求項1の発明は、予め、紙中に添加分散させておいたモノマー成分を、大気圧下での低温プラズマ放電によるエネルギーにより重合させることを特徴とする機能紙の製造方法である。
請求項2の発明は、一般式(1)で表されるシランカップリング剤の一種或いは数種を、予め、紙中に添加分散させておき、大気圧下でのプラズマ放電によるエネルギーにて、重合させることを特徴とする機能紙の製造方法である。
R1n −Si−(OR2)4-n …(1)
(式中、R1は水素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、ビニル基、エポキシ含有基、アミノ含有基のいずれかであり、R2は水素原子、メチル基、エチル基のいずれかであり、nは0〜3の整数である)
請求項3の発明は、直流パルスの高電圧を電極間に印加することにより発生させたコロナ放電プラズマによるエネルギーにて、予め、紙中に添加分散させておいたモノマー成分を重合させることを特徴とする上記請求項1又は請求項2記載の機能紙の製造方法である。
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3の何れかに記載示される機能紙の製造方法において、触媒を加えることなく、重合することを特徴とする機能紙の製造方法である。
請求項5の発明は、上記請求項1乃至請求項3の何れかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とする機能紙である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
先ず、機能化するための添加薬剤は、紙中に均一に分散している必要がある。添加方法としては内添、含浸、塗布、吹付け等が挙げられるが、いずれの手法でも紙中に均一に分散するためには、添加薬剤は低分子量の物質であることが望ましい。しかし、機能紙として高い湿潤強度を得るためには、パルプ繊維間の接着強度を向上させるに足る高分子量の物質でないとならない。したがって、本発明は紙中にモノマー成分を内添、含浸、塗布、吹付け等の手法により均一に添加分散後、触媒を添加することなく大気圧下での低温プラズマ放電によるエネルギーにて重合し、撥水性、耐熱水性、湿潤強度等の機能性を発現するものである。
【0014】
紙中に添加した機能化薬剤を、触媒添加の下で加熱重合あるいは熱硬化により高分子化させて機能化することは従来技術として前記しているが、加熱による紙水分率の低下が問題となっており、触媒の添加は環境ホルモンの問題を引き起こすという懸念がある。しかし、本発明の機能紙の製造方法および機能紙は低温プラズマのエネルギーにより重合させているため、触媒を添加しないことにより紙の平衡水分の変化も少なく抑えることができる。
【0015】
本発明に用いられるモノマー成分は、プラズマ放電のエネルギーにより重合し、撥水性を付与し、湿潤強度を向上させるものであれば、特に限定されるものではないが、残留モノマーの溶出による悪影響を考えると、シラン系の材料は有害性が低く、SiO2 の状態では剛直で、耐熱性が高く、有機溶剤による溶出もないことから特に好ましい。
【0016】
Si−OR(Rはメチル基或いはエチル基)は加水分解してSi−OHとなり、Si−ORとの脱アルコール反応によりSi−O−Siとなる。Siに−OR基が1つ以上配位したシランカップリング剤は加水分解してSiO2 のシロキサンネットワークを形成する。該シランカップリング剤がアルキル基、アルコキシ基、ビニル基、エポキシ含有基を有するとさらに疎水性が向上し、特にエポキシシクロヘキシル基、グリシドオキシプロピル基等のエポキシ基を有すると湿潤強度の向上が大きい。また、アミノ基を有するとパルプ繊維への定着が極めて良好となる。さらに数種のシランカップリング剤を混合使用することで、より高い機能を付与することが可能である。上記シロキサン結合の形成にはアルコールが脱離することから、大気圧プラズマ処理後、紙の水分に影響を与えない温度でエージング処理することで、より効果の高い機能紙が得られる。
【0017】
シランカップリング剤を紙中に添加分散させ、プラズマ放電のエネルギーでSiO2 のシロキサンネットワークを形成して機能化した機能紙は、少ない薬剤添加量で、高い撥水性や湿潤強度が得られることから、再生紙としてリサイクルすることが可能である。
【0018】
本発明に用いられるプラズマ放電は、特に大気圧下で発生する低温プラズマ放電に限定される。低圧系プラズマでは、生産性が低いだけではなく、紙が低圧雰囲気に曝されることによる水分率の低下や、紙中に添加したモノマー成分の飛散等の問題があるためである。しかし、大気圧下で安定な低温プラズマを発生させるには条件が限定される。特開平5−9897号に示される大気圧グロー放電プラズマでは、ヘリウム等の不活性ガスを主体とした雰囲気に限定される。紙の内部に分散したモノマー成分を重合させるためには、紙の内部まで充分なエネルギーを与える必要があり、紙の内部の空隙をヘリウム等の不活性ガスを主体としたガスで置換する必要がある。
【0019】
これに対し、コロナ放電は空気中で放電し、プラズマを発生可能であるが、通常の高周波電圧を電極に印加して発生させたコロナ放電は放電が集中しやすく、放電集中による熱のダメージを与えることなく紙の内部まで充分なエネルギーを与えることが難しい。しかし、放電が長く伸びることから従来、成形物の表面処理に利用されていた直流パルスの高電圧を電極間に印加して発生させたコロナ放電プラズマは、放電集中による熱のダメージが少なく、紙のようなポーラスな材料の内部まで効果的にプラズマのエネルギーを伝え、紙内部のモノマー成分を重合することが可能であることを本発明者らは発見した。
【0020】
本発明の紙の製造方法において、好ましくは、表面を誘電体で覆ったアース電極と対向する放電極に、電圧が50KV以上でパルス幅が10μ秒以下の極短波長の高電圧直流パルスを、1秒間に500回以上、印加することにより発生させたコロナ放電プラズマ中に、予め、モノマー成分を添加分散させた紙を曝すことによりモノマー成分を重合させ、本発明の機能紙を得る。該電気回路では高電圧のため、球ギャプスイッチによりパルスを形成することが望ましい。該コロナ放電プラズマは空気中で放電可能であり、紙中に分散したアルコキシシランの加水分解反応を触媒なしで進行させる。また、空気中に反応ガスを添加し、紙表面に吹き付けながらコロナ放電させても構わない。
【0021】
本発明の機能紙は、上記の製造方法により機能化されたことを特徴とし、木材パルプ、非木材パルプ、古紙からなるいずれの紙であっても構わず、洋紙、板紙、モールド等その形態も問わない。
【0022】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
(実施例1)
3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(サイラエースS510 チッソ社製)を酢酸エチルにて10%に希釈し、濾紙を浸漬して含浸させた。室温乾燥後、大気圧グロー放電プラズマ処理を行ない、実施例1の機能紙を得た。但し、大気圧グロー放電プラズマ処理では、上記含浸紙の片面側を排気手段を設けて陰圧雰囲気となるように誘電体部材で構成し、その状態で放電電極間の大気圧グロー放電プラズマ中に曝した。つまり、含浸紙のパルプ繊維間の空隙を雰囲気ガスで置換しながら大気圧グロー放電プラズマ処理を行なった。5KHz、5KVの交流電圧を印荷し、雰囲気はヘリウム95%、酸素5%の混合ガスとし、処理時間は30秒とした。得られた機能紙の含水分率は、原紙の水分率に対して10%以内の変化率であった。その後、40℃にて3日間エージングし、JIS P8111に基いて20℃65%RH環境下で24時間以上、調湿した。
【0023】
「JIS 8113 紙および板紙の引張り強さ試験方法」に従って引張り強さを測定し、さらに該機能紙を20℃の蒸留水に1時間浸漬し、湿潤状態のまま同様にして引張り強さを測定した。これらの強度比(湿潤状態での引張り強さ/調湿状態での引張り強さ×100;以下 wet/dry と表記)を算出したところ、21%であった。さらに該機能紙を酢酸エチルに1時間浸漬し、同様にwet/dryを測定したところ、20%で大きな低下は見られなかった。また、該機能紙は再生紙としてリサイクル可能であった。
【0024】
(実施例2)
2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(サイラエースS530 チッソ社製)を酢酸エチルにて10%に希釈し、濾紙を浸漬して含浸させた。室温乾燥後、直流パルスの高電圧を電極間に印加することにより発生させたコロナ放電プラズマ処理を行ない、実施例2の機能紙を得た。パルス電圧60KV、パルス幅2μ秒の直流パルスを1秒間に1500回印加し、処理時間は10秒とした。得られた機能紙の含水分率は、原紙の水分率に対して10%以内の変化率であった。その後、40℃にて3日間エージングし、JIS P8111に基いて20℃65%RH環境下で24時間以上、調湿した。
【0025】
「JIS P8113 紙および板紙の引張り強さ試験方法」に従って引張り強さを測定し、さらに該機能紙を20℃の蒸留水に1時間浸漬し、湿潤状態のまま、同様にして引張り強さを測定した。wet/dryを算出したところ、25%であった。さらに、該機能紙を酢酸エチルに1時間浸漬し、同様にwet/dryを測定したところ、22%で大きな低下は見られなかった。また、該機能紙は再生紙としてリサイクル可能であった。
【0026】
(実施例3)
メチルトリメトキシシラン(D031A チッソ社製)とN−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(サイラエースS320 チッソ社製)とをモル比2:1で混合し、イソプロピルアルコールにて希釈し内添薬剤を調整した。針葉樹晒しクラフトパルプ(叩解度400csf)のパルプスラリー中に、SiO2 濃度で乾燥パルプ重量の2重量%の内添薬剤を添加攪拌し、手漉き角形抄紙機を用いて抄紙を行ない、プレス、乾燥工程を経て坪量60g/m2 の試験紙を作成した。さらに直流パルスの高電圧を電極間に印加することにより発生させたコロナ放電プラズマ処理を行ない、実施例3の機能紙を得た。パルス電圧60KV、パルス幅2μ秒の直流パルスを1秒間に1000回印加し、処理時間は6秒とした。得られた機能紙の含水分率は、コロナ放電プラズマ処理前と比較して10%以内の変化率であった。該機能紙と、同様に抄造した無添加の試験紙を40℃にて3日間エージングし、JIS P8111に基いて20℃65%RH環境下で24時間以上、調湿した。
【0027】
該機能紙と無添加の試験紙について「JIS P8113 紙および板紙の引張り強さ試験方法」に従って引張り強さを測定し、さらに該機能紙を20℃の蒸留水に1時間浸漬し、湿潤状態のまま、同様にして引張り強さを測定した。該機能紙の湿潤状態での引張り強さと無添加の試験紙の調湿状態での引張り強さの比(wet/dry)を算出したところ、28%であった。さらに該機能紙を酢酸エチルに1時間浸漬し、同様にwet/dryを測定したところ、26%で大きな低下は見られなかった。また、該機能紙は再生紙としてリサイクル可能であった。
【0028】
(比較例1)
3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(サイラエースS510 チッソ社製)を酢酸エチルにて10%に希釈し、濾紙を浸漬して含浸させた。室温乾燥後、30KHz、2KWのコロナ放電処理を行ない、比較例1の機能紙を得た。処理時間は10秒とした。得られた機能紙の含水分率は、原紙の水分率に対して10%以内の変化率であったが、表面に点状の焦げ痕が付いた。その後、40℃にて3日間エージングし、JIS P8111に基づいて20℃65%RH環境下で24時間以上、調湿した。
【0029】
「JIS P8113 紙および板紙の引張り強さ試験方法」に従って引張り強さを測定し、さらに該機能紙を20℃の蒸留水に1時間浸漬し、湿潤状態のまま、同様にして引張り強さを測定した。wet/dryを算出したところ17%であった。
【0030】
(比較例2)
CF4 とHeの1:50混合ガス雰囲気下で、周波数15KHz、30W/cm2 の電力を電極に印加し、グロー放電プラズマを発生させ、該プラズマ雰囲気下に3分間濾紙を曝して比較例2の機能紙を得た。その後、40℃にて3日間エージングし、JIS P8111に基いて20℃65%RH環境下で24時間以上調湿して、「JIS P8113 紙および板紙の引張り強さ試験方法」に従って引張り強さを測定し、さらに該機能紙を20℃の蒸留水に1時間浸漬し、湿潤状態のまま、同様にして引張り強さを測定した。wet/dryを算出したところ、4%であった。
【0031】
(比較例3)
3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(サイラエースS510 チッソ社製)を酢酸エチルにて10%に希釈し、濾紙を浸漬して含浸させ、室温乾燥して比較例3の機能紙を得た。その後、40℃にて3日間エージングし、JISP8111に基いて20℃65%RH環境下で24時間以上、調湿した。
【0032】
「JIS P8113 紙および板紙の引張り強さ試験方法」に従って引張り強さを測定し、さらに該含浸紙を20℃の蒸留水に1時間浸漬し、湿潤状態のまま、同様にして引張り強さを測定した。wet/dryを算出したところ、3%であった。
【0033】
※(比較例4)
2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(サイラエースS530 チッソ社製)を123gとSnCl2 の0.003mol/gメタノール溶液0.08gを混合し、平均分子量50000のポリシラン化合物を得、これをIPA492gで希釈し、トルエンスルホン酸の50%IPA溶液を酸触媒として10g加え、含浸液とした。濾紙をこの含浸液に浸漬して含浸させ、150℃で1分間乾燥させ、比較例4の機能紙を得た。得られた機能紙の含水分率は、原紙の水分率の20%にまで低下していた。
【0034】
(比較例5)
アクリルポリオール(ダイヤナールLR209 三菱レーヨン社製)を酢酸エチルにて固形分10%に希釈し、濾紙を浸漬して含浸させ、室温乾燥して比較例4の機能紙を得た。その後、40℃にて3日間エージングし、JIS P8111に基いて20℃65%RH環境下で24時間以上、調湿した。
【0035】
「JIS P8113 紙および板紙の引張り強さ試験方法」に従って引張り強さを測定し、さらに該機能紙を20℃の蒸留水に1時間浸漬し、湿潤状態のまま、同様にして引張り強さを測定した。wet/dryを算出したところ、16%であった。さらに該機能紙を酢酸エチルに1時間浸漬し、同様にwet/dryを測定したところ、5%と大きく低下していた。
【0036】
【発明の効果】
本発明の機能紙は、「JIS P 8113 紙および板紙の引張り強さ試験方法」に従い測定した紙の湿潤引張り強度は、調湿時の引張り強さの約20%以上を示し、撥水性にも優れる。また、高温で加熱されていないことから平衡水分を保っており、調湿処理を経ることなく印刷等の次工程に回しても水分低下によるトラブルが発生しない。また、放電集中による熱のダメージもなく、紙中のモノマー成分は充分に硬化重合しているため、溶剤や熱水に抽出されて機能低下することがない。さらに少量の薬剤添加で効果的に機能を発揮しているため、再生紙としてリサイクルすることも可能である。
【0037】
また、酸触媒や金属触媒が不要なため、環境ホルモンの排出のおそれがない。
Claims (5)
- 予め、紙中に添加分散させておいたモノマー成分を、大気圧下での低温プラズマ放電によるエネルギーにより重合させることを特徴とする機能紙の製造方法。
- 一般式(1)で表されるシランカップリング剤の一種或いは数種を、予め、紙中に添加分散させておき、大気圧下でのプラズマ放電によるエネルギーにて、重合させることを特徴とする機能紙の製造方法。
R1n −Si−(OR2)4-n …(1)
(式中、R1は水素原子、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、ビニル基、エポキシ含有基、アミノ含有基のいずれかであり、R2は水素原子、メチル基、エチル基のいずれかであり、nは、0〜3の整数である) - 直流パルスの高電圧を電極間に印加することにより発生させたコロナ放電プラズマによるエネルギーにて、予め、紙中に添加分散させておいたモノマー成分を重合させることを特徴とする上記請求項1又は請求項2記載の機能紙の製造方法。
- 請求項1乃至請求項3の何れかに記載された機能紙の製造方法において、触媒を加えることなく、モノマー成分を重合することを特徴とする機能紙の製造方法。
- 上記請求項1乃至請求項4の何れかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とする機能紙。
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