JP4913943B2 - 海塩製造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、海水中の水分を蒸発させて塩を製造するための製造システムに関し、
特に海水中のミネラル分を自然の状態のままに残した、美味しい海塩を製造するための海塩製造システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、塩専売法の廃止に伴い、自然塩が各種製造されるようになった。わが国では、諸外国のように、広大な塩田を用い、天日塩を製造することは困難であるため、伝統的な入浜式塩田法や流下式塩田法に見られるように、海水から直接、塩を製造するのではなく、一旦海水を濃縮させて濃い塩水とし、濃縮された塩水を、再度天日蒸発または、加熱蒸発させて結晶化する方法がとれていた。
【0003】
近年では、ガスバーナーなどの強力な加熱源を用いて、蒸発釜による加熱蒸発のみで結晶化させ、遠心分離機で脱水、乾燥装置で乾燥させて製造されることも行われるようになってきた。
【0004】
また、特願平11−29321号などのように、海水を加熱された回転ドラムに滴下して瞬時に蒸発させて結晶化することにより海塩を製造する方法も開示されている。
【0005】
海水から塩を結晶化させることは、化学的に塩化ナトリウムのみを分離させることとは違い、海水中の微量元素であるミネラル分をバランス良く含んだ状態で結晶化させることが重要とされている。
【0006】
このミネラル分が含まれることにより、従来のイオン交換膜による製塩法でできた塩のような「しおからさ」のみの食塩とは異なり、甘味のあるまろやかな美味しい塩となるのであり、これが自然塩として、現在、消費者に強く望まれている食塩である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、現在の自然塩と呼ばれている商品においても、海水から直接製造されたものは少なく、輸入塩(外国の広大な塩田で生産された天日塩:不純物が多く含まれている)を水に溶かし、再度蒸発させて結晶化させたものや、ミネラル分を添加したものなどもある。
【0008】
これらの再結晶化させた自然塩の場合には、輸送過程において、密封状態での輸送は困難であるため、かなりのミネラル分が失われてしまっているものである。ミネラル分は、通常の状態では、空気中の水分を吸収して溶け出てしまうため、自然塩を製造した場合には、密封容器にパック詰めされるのが一般的である。
【0009】
従って、大量の自然塩を通常の状態で長期間、山積みされて保存された場合には、ミネラル分が失われてしまうこととなる。
【0010】
また、前記に示す特願平11−29321号などのように、海水を加熱された回転ドラムに滴下して瞬時に蒸発させて結晶化させた場合には、連続的に塩を生産することは可能となるが、ミネラル分もかなり蒸発してしまう。また、加熱温度により、焦げついてしまい、品質に問題がある。
【0011】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、海水より効率良く塩を結晶化させ、かつ海水中のミネラル分を自然の状態のままで残すことのできる海塩製造システムを提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明では、天井を有し、側壁部に多数の通風口が設けられた建造物の内天井部に、多数の放射状蒸発体が吊り下げられており、該放射状蒸発体の上部から海水を降り注ぎ、通風により蒸発濃縮させる海水濃縮手段と、該海水濃縮手段により濃縮された海水を塩分濃度が一定の濃度となるまで処理海水を循環させるための海水循環手段と、濃縮された海水中の水分を蒸発させて結晶化させる蒸発手段とからなる海塩製造システムを構成した。
【0013】
該建造物は、放射状蒸発体を吊り下げる天井部を有し、側壁に外部から風を取り入れるための多数の通風口を有する建造物であり、例えば、鉄筋コンクリート製の方形建造物の側壁部分に多数の窓を設け、通風性を有するようにしたものでも良い。
【0014】
該放射状蒸発体は、上部より振り注がれた海水が蒸発体の表面を流れ落ちる時に、自然蒸発及び外部からの通風により、海水中の水分を蒸発させるためのものであり、下方になるに従って放射状に枝分かれし、蒸発しやすくしたものである。例えば、多数の竹の枝を束ねて、逆さに吊るして放射状蒸発体としても良い。
【0015】
該海水循環手段は、上記の放射状蒸発体より滴り落ちた海水を、再度放射状蒸発体の上部に送り、再度振り注いで蒸発濃縮を繰り返すためのものであり、例えば、放射状蒸発体の設けられた建造物の底部に濃縮海水の回収タンクなどを設け、該回収タンク内に溜まった濃縮海水をポンプで建造物の天井部に送り、散水装置で再び放射状蒸発体に降り注ぐようにしたものでも良い。濃縮度は、10〜15%程度となるまで循環濃縮すると良い。
【0016】
該蒸発手段は、濃縮された海水が結晶化して塩が析出されるものであればいずれでも良く、平釜などによる加熱蒸発で結晶化させても良く、また、太陽光で天日蒸発させて結晶化させたものでも良い。
【0017】
また、本発明では、前記の海水濃縮手段が設けられた建造物の天井下部に熱パイプを設置したものである。この温熱パイプは、前記の放射状蒸発体が吊り下げられた建造物の内天井下部を暖めることができるものであればいずれでも良く、燃焼排気を通した熱パイプを設置しても良く、高温水を通した熱パイプあるいは、加熱蒸気を通した熱パイプなどでも良い。
【0018】
海水濃縮手段が設けられた建造物の上部の温度を熱パイプで暖めることにより、建造物の内部に上昇気流が発生し、建造物の下部側面の通気口から外気を取り込み、上部の通気口から排気させることとなり、蒸発効率が良くなる。
【0019】
また、本発明では、前記の放射状蒸発体による濃縮手段が設けられた建造物の屋上部に、濃縮海水から水分を天日蒸発させて塩を結晶化させるための天日蒸発手段が設けられており、該天日蒸発手段は、上部が開放された蒸発槽と、その上部に太陽光を透過する透光板が設けられたものであり、該蒸発槽は、その内面がタイル張りされたコンクリート製蒸発槽としたものである。
【0020】
屋上部であるため、通気性が非常に良く、透過板により、雨や空気中のごみ、ちりの混入を防止できる。また、この透過板と蒸発槽の上面との隙間をわずかに開けて蒸気を排出できるように設置すると良い。
【0021】
該透過板は、太陽光を透過できるもので、その熱に耐えうるものであればいずれでも良く、例えば、各種のガラス板や透明な硬質樹脂板などでも良い。
【0022】
また、蒸発槽は、内面をタイル張りとすることで長期間の防水性と高温耐久性を確保でき、高品質の結晶塩を製造できる。
【0023】
また、本発明では、蒸発槽の側壁部に連通口を設けたものである。この連通口は、外部からの雨やちりなどが進入しないように、吐き出し口は下方に開口させることが望ましい。この連通口を設けることにより、透過板と蒸発槽の上面との隙間を開けることなく、常時十分な蒸発が行われることとなる。
【0024】
また、本発明では、海水を加熱して塩を結晶化させる加熱蒸発装置において、結晶用蒸発釜の外周部に、釜の中央部で結晶化した塩を掻き寄せ、一時貯めておくための凹状溝を設けたものである。
【0025】
該凹状溝は、結晶用蒸発釜の外周部分を凹状に加工したものであり、結晶化した塩を中央部から掻き寄せて、この溝に掻き入れるためのものであり、例えば、四角形の平釜の外周の1辺または相対する2辺において、凹状に溝加工を施したものでも良い。この溝に溜まった塩は適時取り出して、脱水処理する。
【0026】
通常は、加熱状態の最も良好となる結晶用蒸発釜の中央部分で多く結晶化する。このため、中央部分に結晶化した塩を釜の外周部に掻き寄せることにより、効率よく塩を結晶化させることが大切であり、そのままにしておくと、焦げ付いて、塩の品質が低下する。
【0027】
また本発明では、濃縮された海水を加熱して塩を結晶化させる加熱蒸発装置において、加熱炉の排気通路に、結晶用蒸発釜と連続する複数の濃縮用蒸発釜を設けたものである。
【0028】
該結晶用蒸発釜は、濃縮された海水を加熱して塩を結晶化させるための蒸発釜であり、濃縮用蒸発釜は、予め一定濃度に濃縮処理された濃縮海水をさらに加熱して高濃度の塩水とするための蒸発釜である。
【0029】
通常、海水を濃縮してから加熱して結晶化する製塩方法では、最初の濃縮濃度は10〜15%程度であるため、この濃度からさらに加熱して結晶化させるためには、かなりの蒸発時間を要する。
【0030】
このため、結晶用蒸発釜の熱源となる加熱炉の排気熱を有効利用し、この排気熱で一定濃度に濃縮された海水をさらに加熱蒸発させて高濃度の塩水とし、より結晶化しやすくしたものである。
【0031】
また本発明では、蒸気の濃縮用蒸発釜を複数設け、各々の濃縮用蒸発釜を排気側になるに従って順次高くなるように設置したものである。また、この排気通路の底面も濃縮用蒸発釜の設置に従って順次高くなるように設けたものである。
【0032】
排気側になるに従って順次階段状に排気通路が形成されることになり、結晶用蒸発釜の熱源である加熱炉の排気がスムースになり、燃焼しやすくなる。
【0033】
また、本発明では、前記の濃縮用蒸発釜を加熱するための加熱バーナーを排気通路の側壁に設けたものである。該加熱バーナーは、排気通路の側壁側から炎を放射して濃縮用蒸発釜を加熱することができるものであれば良い。例えば、小型の重油バーナーなどを側壁部に取り付けたものでも良い。
【0034】
【発明の実施の形態】
本発明は、海塩を製造することを業務とし、長年実績を積み重ねてきた中で、塩の中にミネラル分を自然な状態で残しながら、かつ安価で効率良く、高品質な海塩を製造する方法について鋭意研究を重ねてきた結果、海水を放射状蒸発体を用いて通気蒸発させて海水を一旦濃縮処理した後に、濃縮海水を天日蒸発または加熱蒸発させて結晶化させること、また、天日蒸発においては、タイル張り蒸発槽で結晶化させること、また、加熱蒸発においては、排熱を有効利用して濃縮させながら加熱蒸発させることにより、効率的に高品質な海塩を製造できることを見出し、発明を完成させたものである。
【0035】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。
【0036】
図1は、本発明による海塩製造システムの実施例を示す概略構成図である。本実施例は、取水した海水を濾過する濾過システム1と、濾過した海水を一定程度の濃度まで濃縮するための放射状蒸発体による海水濃縮装置2と、濃縮した海水中の水分を蒸発させて塩を結晶化させるための蒸発装置とで構成される。
【0037】
該蒸発装置は、太陽光で蒸発させる天日蒸発装置3と、蒸発釜で加熱して蒸発させる加熱蒸発装置4とが設けられている。
【0038】
本濾過システム1は、海水5を取水するためのポンプ6と、海水中のごみなどを除去するための濾過フィルターによるフィルター濾過装置7と、細かな混入物を沈殿させて除去するための沈殿槽8とで構成されている。
【0039】
本海水濃縮装置2は、側壁9に多数の通気口9aを有し、通気性が良好な箱型の建造物10の内部に、多数の放射状蒸発体11が吊り下げられており、該建造物10の内部天井部10aには、この放射状蒸発体11に前記の濾過された海水を散布するための海水散布配管12と、その上部に熱パイプ13が設置されている。
【0040】
本放射状蒸発体11は、葉を除去した孟宗竹の十分に分枝した竹枝を逆さに吊り下げて使用されている。竹枝が逆さに吊されているため、海水は竹枝を分枝しながら滴り落ち、蒸発面積が下方になるに従って増加するようになっており、通気性も良く、蒸発効率が高められている。
【0041】
この放射状蒸発体11の素材として、竹枝状に樹脂材や金属材などで人口的に製造しても良い。なお、樹脂や金属製の場合には、塩分に対する耐久性やその成分溶出や腐食などの問題があり、あまり好ましくない。
【0042】
本放射状発熱体11に使用する竹は、イネ科のタケ亜科の常緑木質植物であればいずれでも良く、葉を除去して使用する。竹類は、耐久性が高く、木質成分の溶出もほとんどなく、安全である。特に孟宗竹は分枝状態が非常に良く、通気性が良くなり、蒸発効率が非常に良くなる。
【0043】
また、本散水配管12は、前記の放射状蒸発体11に濾過した海水を降り注ぐために、パイプに多数の小孔が開けられたものである。海水を散水できるものであればいずれでも良いが、噴霧ノズルを設けたものでは、散水する海水が循環して濃縮されるため、目詰まりを起こす恐れがあり、あまり好ましくない。
【0044】
また、前記の熱パイプ13は、後述する加熱蒸発装置4の排気煙突14から分岐させた排気配管15を前記建造物10の天井下部10aに配設したものである。排気熱により、建造物10の上部が暖められ、図2の矢印に示すように、建造物10の内部に上昇気流が発生し、側壁9の各通気口9aより外気が取り込まれ、上部の通気口9bより外部へ排気される。上昇気流の発生により通気性が非常に良好となり、蒸発効率が大幅に高められる。
【0045】
該熱パイプ13は、建築物10の上部を暖めることができ、上昇気流を発生させることができるものであればいずれでも良い。燃焼排気パイプの他に、温水パイプや蒸気パイプを配管しても良い。
【0046】
また、該建造物10の床面レベル10bより下部に濃縮海水タンク16が設けられている。該濃縮海水タンク16は、前記の建造物10の床面10bからのドレン配管10cで接続されている。また、該濃縮海水タンク16は、海水循環ポンプ17を介して、前記の海水散布配管12に接続されている。
【0047】
このように、放射状蒸発体11で蒸発濃縮される海水は、濃縮海水タンク16に流下し、海水循環ポンプ17で再び海水散水配管12より散水され、循環を繰り返して濃縮される。塩分濃縮濃度は15度程度まで濃縮する。
【0048】
本実施例では、循環量が3.0m3/時で、36時間循環を繰り返し、15度の濃縮海水を3トン得た。
【0049】
また、前記の海水循環ポンプ17は、前記建造物の屋上に設置されている天日蒸発装置3及び加熱蒸発装置4に送水することができるように接続されている。前記の循環工程で濃縮された塩分濃度15%の海水は、海水循環ポンプ17の送水バルブ18を切り替えて、各々天日蒸発装置3及び加熱蒸発装置4に送水される。
【0050】
該天日蒸発装置3は、前記の建造物10の屋上部に設置されており、前記の海水濃縮装置2により濃縮された海水を太陽光で蒸発結晶化して塩を得るための蒸発槽19が多数設置されているものである。
【0051】
該蒸発槽19は、図3に示すように、上部が開放され、内面にタイル19aが施工された浅い箱型のコンクリート製槽19bであり、サイズは、幅1m×長さ1.5m×高さ0.5m程度で、濃縮海水20を深さ20cm程度入れ、屋上に多数設置したものである。該蒸発槽19の上部には、太陽光を透過するように、枠付の硬質ガラス製の上蓋19cが設けられている。
【0052】
タイル張りであるため、蓄熱性、耐久性、防水性が高く、しかも変質や成分の溶出などの問題もなく、高品質の塩を結晶化できる。また、タイル19aは焼き物であるため、遠赤外線効果が得られ、海水中のミネラル成分が塩の結晶に吸着されやすく、まろやかな塩が得られる。
【0053】
また、該蒸発槽19の側壁部には、槽内部と外部とを連通する連通口19dが設けられ、該連通口19dの外部に連通ノズル19eが突出して取り付けられている。該ノズル19eの先端部は、屈曲しており、下部側に開口している。
【0054】
このため、蒸発槽19は、ガラス張りの温室内などに設置する必要はなく、天日蒸発に最適な通風性の高い屋上に設置でき、急な気象の変化による雨などの心配もない。
【0055】
また、本実施例による加熱蒸発装置4は、図4に示すように、2台の濃縮用蒸発釜21、22と1台の結晶用蒸発釜23とで濃縮海水を結晶化させる構成となっている。これらの蒸発釜は、結晶用蒸発釜23に対して階段上に連続して、第2濃縮用蒸発釜22、次に第1濃縮用蒸発釜21と、順次高くなるように設置されている。
【0056】
また、結晶用蒸発釜23は、薪を燃焼させる燃焼炉24で加熱するようになっており、この燃焼炉24の排気通路30に、各々濃縮用蒸発釜21,22が階段上に設置されており、この排気通路30も、各々の濃縮用蒸発釜21、22に対応してその床面25,26が順次階段状に高くなるように設けられている。
【0057】
該排気通路30が階段状に設けられているため、排気がスムースになり、燃焼効率が良く、排熱を有効に利用することができる。また、濃縮用蒸発釜21,22を設けることにより、一度に高温で、かつ急速に結晶化させるのではなく、排熱を有効利用して、段階的に濃縮し、ゆっくりと蒸発させるもので、急速な煮沸によりミネラル分の損失を最小限に抑えることができる。
【0058】
また、本結晶用蒸発釜23は、四角形の平釜であり、図4(2)のA−A断面図に示すように、その左右の両端部に凹状溝27が各々設けられている。これは、結晶用蒸発釜23を煮詰めていくと、塩が結晶化してくるが、この結晶化した塩28は、通常、温度が高い釜23の中央部から結晶化し始める。この結晶化した塩28をかき寄せてこの凹状溝27に一旦貯めて、この貯めた塩を取り出し、脱水して塩を得ることができるようにしたものである。
【0059】
結晶用蒸発釜23で、煮詰める場合には、火力が強すぎると、結晶化した塩28が焦げ付いてしまい、品質の低下となる。また、火力が適切であっても、釜23の中央部で結晶化した塩28を取り除かずにそのままにしておいた場合には、やはり焦げ付いてしまう。
【0060】
このため、火力の調整とともに、釜23の中央部にできる結晶化した塩28を絶えず取り出す必要がある。結晶化した塩28を適時に取り出しながら結晶化を進めることが高品質の塩を製造する重要なポイントである。
【0061】
前記の凹状溝27が設けられていると、釜23の中央部で結晶化した塩28を頻繁に取り出す作業の必要はなく、適時、掻き寄せ具29などで凹状溝27に掻き寄せながら、次々と結晶化を進めることができる。なお、この凹状溝27は、結晶用蒸発釜23の外周端部であり、燃焼炉で直接加熱されないため、焦げ付くことはない。
【0062】
また、本加熱蒸発装置4においては、第1濃縮用蒸発釜21内の濃縮塩水の液温は、60℃〜70℃程度であり、第2濃縮用蒸発釜22内の液温は、70℃〜80℃程度であり、結晶用蒸発釜23内の液温は、100℃程度となるが、濃縮用蒸発釜を直接加熱するための加熱バーナーを設けることにより、さらに効率よく濃縮することができる。
【0063】
図5は、第2濃縮用蒸発釜22を直接加熱するための加熱バーナー31を排気通路30の側壁部32に取り付けた場合の実施例を示す図4(1)のB−B断面図である。この加熱バーナー31は、側壁32側から第2濃縮用蒸発釜22に向けて火炎を放射するように取り付けられたもので、市販される小型の重油バーナーなどでも良く、第2濃縮用蒸発釜22を直接加熱することができるものであればいずれでも良い。
【0064】
本実施例では、第2濃縮用蒸発釜22の液温が100℃程度となるように、重油バーナー31で加熱した。この加熱により、第1濃縮用蒸発釜21は、70℃〜80℃程度に昇温した。通常、第1濃縮用蒸発釜21では、海水を20%程度まで濃縮し、第2濃縮用蒸発釜22では、30%程度まで濃縮するが、この加熱バーナーを用いることにより、濃縮時間を30%程度短縮することができ、濃縮濃度を35%〜40%まで高めることができた。
【0065】
尚、本実施例では、加熱バーナー31を第2濃縮用蒸発釜22のみを加熱するために設けられているが、第1濃縮用蒸発釜21を加熱するための加熱バーナーを設けても良く、複数段に構成される濃縮用蒸発釜すべてに加熱バーナーを取り付けても良い。
【0066】
次に実際に本実施例に示す海塩製造システムによる製造例を示す。海水50トンより本海水濃縮装置により、7日間循環濃縮させ、15%の濃縮海水が12トン得らた。また、この濃縮海水12トンから本天日蒸発装置により、20日間天日蒸発させて1.8トンの塩が得られた。さらにまた、この濃縮海水12トンから本加熱蒸発装置により、12時間処理して、1.8トンの塩が得られた。
【0067】
以下にその得られた塩の分析結果を示す。
【0068】
このように、ミネラル成分が非常に多く含まれており、海水の自然な状態に近い状態で結晶化された、高品質の塩を製造することができた。
【0069】
【発明の効果】
以上詳細に説明した本発明では、以下に示すような効果がある。
【0070】
1) 放射状蒸発体を用い、水分を通気蒸発させて、循環濃縮処理することにより、海水中のミネラル成分のバランスを崩すことなく、また、強制的な熱源を用いずに効率良く、海水を濃縮することができる。
【0071】
2) 熱パイプを設置することにより、上昇気琉が発生し、通気性が高まり、蒸発効率を向上させることができる。
【0072】
3) 屋上部に天日蒸発手段が設けられることにより、通気性が良好となる。また、タイル張りの蒸発槽に透光板の蓋体を設けることにより、蒸発槽を小型化でき多数の蒸発槽を個々に管理することが可能となり、高品質な塩を効率的に結晶化することができる。
【0073】
4) 前記の蒸発槽に通気ノズルを設けることにより、蒸発槽の蓋体となる透光板を浮かせて通気する必要がなく、蒸気を常時放出することができ、雨や埃などが混入する心配もない。
【0074】
5) 結晶用蒸発釜の外周部に凹状溝が設けられていることにより、結晶化した塩を掻き寄せて、該凹状溝に一旦貯めて作業できるため、その都度蒸発釜より取り出す必要がないため、作業性が良くなる。
【0075】
6) 複数の濃縮用蒸発釜を結晶用蒸発釜に連続して設けることにより、燃焼炉の排気熱を有効利用することができ、さらに濃縮度を高めてから結晶用蒸発釜で塩を結晶化することができるため、効率良く塩を結晶させることができる。
【0076】
7) 燃焼炉の排気通路を階段状に設けることにより、燃焼炉の排煙がスムースに排気され、燃焼しやすくなる。
【0077】
8) 濃縮用蒸発釜を加熱する加熱バーナーが設けられることにより、濃縮海水をより高濃度にかつ早く濃縮させることができ、塩の結晶化時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による海塩製造システムの実施例を示す全体構成図である。
【図2】本発明による海水濃縮装置の熱パイプにより発生する通気状態を示す図である。
【図3】本発明による天日蒸発装置の実施例を示す図である。
【図4】本発明による加熱蒸発装置の実施例を示す図である。
【図5】本発明による加熱バーナーの実施例を示す図である。
【符号の説明】
1 濾過システム
2 海水濃縮装置
3 天日蒸発装置
4 加熱蒸発装置
6 取水ポンプ
7 フィルター濾過装置
8 沈殿槽
9 建造物の側壁
9a、9b 通気口
10 建造物
11 放射状蒸発体
12 海水散水配管
13 熱パイプ
16 濃縮海水タンク
17 海水循環ポンプ
19 蒸発槽
21 第1濃縮用蒸発釜
22 第2濃縮用蒸発釜
23 結晶用蒸発釜
24 燃焼炉
27 凹状溝
30 排気通路
31 加熱バーナー
Claims (3)
- 取水した海水を濾過する濾過部と、
側壁に複数の通風口を有し、天井から複数の放射状蒸発体が吊り下げられた建造物内で、前記の放射状蒸発体の上方から前記の濾過した海水を滴下し、建造物内の通気によって放射状蒸発体を滴り落ちる海水を蒸発させて海水の塩分濃度を高める海水濃縮部と、
海水濃縮部により濃縮された海水を塩分濃度が一定の濃度となるまで海水を循環させるための海水循環部と、
加熱手段を備えた最下段の平釜を含む階段状に設置された複数の平釜に順次上の段から下の段に前記の塩分濃度が高められた海水が移されることで海水を加熱して結晶化する加熱蒸発部と
からなる海塩製造装置において、
前記の平釜を熱した際に生じた排熱を通すパイプを前記の建造物の天井部分に設けた
ことを特徴とする海塩製造装置。 - 取水した海水を濾過する濾過部と、
側壁に複数の通風口を有し、天井から複数の放射状蒸発体が吊り下げられた建造物内で、前記の放射状蒸発体の上方から前記の濾過した海水を滴下し、建造物内の通気によって放射状蒸発体を滴り落ちる海水を蒸発させて海水の塩分濃度を高める海水濃縮部と、
海水濃縮部により濃縮された海水を塩分濃度が一定の濃度となるまで海水を循環させるための海水循環部と、
加熱手段を備えた最下段の平釜を含む階段状に設置された複数の平釜に順次上の段から下の段に前記の塩分濃度が高められた海水が移されることで海水を加熱して結晶化する加熱蒸発部と
からなる海塩製造装置において、
前記の建造物には、
天井部分に、前記の平釜を熱した際に生じた排熱を通すパイプが設けられ、
屋上に、内面がタイル張りされたコンクリート製の蒸発槽と前記の蒸発槽の上面を覆う太陽光を透過する透光板とからなり、前記蒸発槽内に濾過部で濾過した海水若しくは海水濃縮部で濃縮された海水を移して太陽光によって海水の水分を蒸発させ、海塩を結晶化させる天日蒸発部が設けられている
ことを特徴とする海塩製造装置。 - 請求項1または請求項2に記載の海塩製造装置において、
加熱手段を備えた最下段の平釜の外周端部に凹状の溝が設けられた
ことを特徴とする海塩製造装置。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2000360360A JP4913943B2 (ja) | 2000-11-27 | 2000-11-27 | 海塩製造装置 |
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Publications (2)
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