JP4911235B2 - 車両用発電制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、乗用車やトラック等に搭載される車両用発電機の発電制御を行う車両用発電制御装置に関する。
近年、車両の燃費向上のため、低アイドル化や低フリクション化が進んでおり、補機の作動によるトルク変動が、エンジン回転変動に大きく影響するようになってきている。エンジン回転の安定化を図る技術としては、アイドル時に車両用発電機の発電増加速度を抑制する徐励制御を行って発電機トルクが急激に増加することを防止することにより、アイドル安定化を図るものが知られている。その際、電気負荷量が大きいときには発電の抑制によりバッテリ電圧が低下するが、このときにバッテリの充電状態が良好な場合は問題ないが、過度に放電していたり、バッテリが劣化して内部抵抗が大きくなっている状態、あるいは、バッテリ端子が接触不良の状態では、バッテリから動作電力が供給される車載機器の電源電圧が大きく低下し、例えば10V程度まで下がると、エンジンコントロールユニット等の車載機器が誤動作やシステムダウンするなどの不具合が発生する。
このような発電抑制の弊害に対処する従来技術として、徐励制御中に発電電圧が所定値以下に低下すると徐励制御を禁止して発電電圧を確実に回復させることで、車載機器の誤動作等を回避する手法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特開平9−107640号公報(第3−6頁、図1−11)
ところで、特許文献1に開示された手法では、発電電圧が所定値以下になったときに徐励制御(発電抑制)が禁止されるが、発電電圧がこの所定値を挟んで上下すると徐励制御の禁止と解除(徐励制御の再開)が頻繁に繰り返されることになり、これに伴ってエンジン回転の変動が大きくなって安定しにくくなるとともに、電源電圧の回復が困難あるいは遅くなるという問題があった。特に、エンジンによって駆動される車両用発電機の回転はエンジンの点火周期に同期して変動し、この回転変動に伴って発電電圧も変動する。このため、徐励制御を禁止する所定値近傍に発電電圧があると、回転変動に伴って発電電圧が所定値を挟んで上下することになり、上述した現象が顕著となる。
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、発電電圧の低下に対応して発電抑制を禁止する場合にエンジン回転の安定と発電電圧の回復を両立させることができる車両用発電制御装置を提供することにある。
上述した課題を解決するために、本発明の車両用発電制御装置は、エンジンによって駆動される車両用発電機の発電電圧が第1の設定値になるように車両用発電機の励磁電流を制御する電圧制御手段と、電圧制御手段によって励磁電流を増加させるときに励磁電流の増加を抑制する励磁電流抑制制御手段と、励磁電流抑制制御手段による抑制制御中に車両用発電機の発電電圧が第1の所定電圧よりも低い第2の所定電圧以下になったときに励磁電流抑制制御手段による抑制制御を禁止する抑制制御禁止手段と、励磁電流抑制制御手段による抑制制御が抑制制御禁止手段によって禁止された後に車両用発電機の発電電圧が第2の所定電圧よりも高くなった場合に、第2の所定電圧よりも高く第1の所定電圧よりも低い第3の所定電圧よりも車両用発電機の発電電圧が高くなるまで抑制制御禁止手段による抑制制御の禁止を維持する抑制制御禁止維持手段とを備えている。
発電抑制の禁止と解除の基準となる所定電圧を異ならせる電圧ヒステリシスを持たせることにより、発電抑制の有無が頻繁に切り替わることに伴う発電トルクの変動を防止することができるため、エンジン回転の変動が大きくなることを防止し、エンジン回転を安定させることが可能となる。また、発電抑制が一旦禁止された後この禁止状態が解除されるまである程度の期間が確保されることから、電源電圧を回復させることができる。
また、上述した第3の所定電圧と第2の所定電圧との差を、エンジンの点火制御周期に対応する車両用発電機の発電電圧の変動幅よりも大きく設定することが望ましい。これにより、エンジンの点火制御周期に同期して発生するエンジン回転の脈動に連動する発電抑制の禁止と解除の繰り返しを防止することができ、エンジン回転の安定と発電電圧の回復を両立させることができる。
また、上述した第3の所定電圧と第2の所定電圧との差を、車両用発電機の回転数および温度の少なくとも一方に基づいて可変設定することが望ましい。車両用発電機の回転数や温度に応じて発電能力が変化するため、回転変動等に伴う発電電圧の変動幅も変化する。したがって、車両用発電機の回転数や温度に応じて第3の所定電圧と第2の所定電圧の差を可変することにより(例えば、第2の所定電圧が一定の場合には第3の所定電圧の値を可変することにより)、発電量能力に応じて確実にエンジン回転の安定と発電電圧の回復を達成することが可能となる。
また、上述した第3の所定電圧と第2の所定電圧との差を、外部制御装置から送られてくる情報に基づいて可変設定することが望ましい。これにより、外部制御装置で収集した各種の情報に基づいて電圧ヒステリシスの程度を設定することが可能になり、確実にエンジン回転の安定と発電電圧の回復を図ることができる。
また、上述した外部制御装置は、エンジン回転数および車両温度の少なくとも一方を取得し、第3の所定電圧と第2の所定電圧との差を、エンジン回転数および車両温度の少なくとも一方に基づいて可変設定することが望ましい。エンジン回転数や車両温度に応じて発電能力が変化するため、回転変動等に伴う発電電圧の変動幅も変化する。したがって、エンジン回転数や車両温度に応じて第3の所定電圧と第2の所定電圧の差を可変することにより(例えば、第2の所定電圧が一定の場合には第3の所定電圧の値を可変することにより)、発電量能力に応じて確実にエンジン回転の安定と発電電圧の回復を達成することが可能となる。
また、本発明の車両用発電制御装置は、エンジンによって駆動される車両用発電機の発電電圧が第1の設定値になるように車両用発電機の励磁電流を制御する電圧制御手段と、電圧制御手段によって励磁電流を増加させるときに励磁電流の増加を抑制する励磁電流抑制制御手段と、励磁電流抑制制御手段による抑制制御中に車両用発電機の発電電圧が第1の所定電圧よりも低い第2の所定電圧以下になったときに励磁電流抑制制御手段による抑制制御を禁止する抑制制御禁止手段と、励磁電流抑制制御手段による抑制制御が抑制制御禁止手段によって禁止された時点から所定時間経過するまで、車両用発電機の発電電圧が第2の所定電圧よりも高くなった場合に抑制制御禁止手段による抑制制御の禁止を維持する抑制制御禁止維持手段とを備えている。
発電抑制を禁止してから解除するまでの時間間隔としてある程度の時間(所定時間)を確保することにより、発電抑制の有無が頻繁に切り替わることに伴う発電トルクの変動を防止することができるため、エンジン回転の変動が大きくなることを防止し、エンジン回転を安定させることが可能となる。また、発電抑制が一旦禁止された後この禁止状態が解除されるまである程度の期間が確保されることから、電源電圧を回復させることができる。
また、上述した所定時間を、エンジンの点火制御周期に相当する時間以上とすることが望ましい。これにより、エンジンの点火制御周期に同期して発生するエンジン回転の脈動に連動する発電抑制の禁止と解除の繰り返しを防止することができ、エンジン回転の安定と発電電圧の回復を両立させることができる。
また、上述した所定時間を、車両用発電機の回転数および温度の少なくとも一方に基づいて可変設定することが望ましい。車両用発電機の回転数や温度に応じて発電電圧の脈動の程度(周期や電圧の脈動幅)が変化する。したがって、車両用発電機の回転数や温度に応じて、発電抑制を禁止してから解除するまでの時間間隔の最小値として設定される所定時間を可変することにより、発電電圧の脈動の程度に応じて確実にエンジン回転の安定と発電電圧の回復を達成することが可能となる。
また、上述した所定時間を、外部制御装置から送られてくる情報に基づいて可変設定することが望ましい。これにより、外部制御装置で収集した各種の情報に基づいて電圧ヒステリシスの程度を設定することが可能になり、確実にエンジン回転の安定と発電電圧の回復を図ることができる。
また、上述した外部制御装置は、エンジン回転数および車両温度の少なくとも一方を取得し、所定時間を、エンジン回転数および車両温度の少なくとも一方に基づいて可変設定することが望ましい。エンジン回転数や車両温度に応じて発電電圧の脈動の程度(周期や電圧の脈動幅)が変化する。したがって、エンジン回転数や車両温度に応じて、発電抑制を禁止してから解除するまでの時間間隔の最小値として設定される所定時間を可変することにより、発電電圧の脈動の程度に応じて確実にエンジン回転の安定と発電電圧の回復を達成することが可能となる。
一実施形態の車両用発電制御装置の構成を示す図である。 アイドル時における電気負荷投入後の発電電圧の変化を示す図である。 アイドル時における電気負荷投入後のエンジン回転数の変化を示す図である。 車両用発電機の回転数および温度の少なくとも一方を検出して発電制御を行う車両用発電制御装置の変形例を示す図である。 外部制御装置から送られてくる情報に基づいて発電制御を行う車両用発電制御装置の変形例を示す図である。
以下、本発明を適用した一実施形態の車両用発電制御装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、一実施形態の車両用発電制御装置の構成を示す図であり、あわせてこの車両用発電制御装置と車両用発電機やバッテリとの接続状態が示されている。図1において、車両用発電制御装置2は、エンジンによって駆動される車両用発電機1の出力端子(B端子)の電圧が調整電圧設定値になるよう発電制御を行う。また、車両用発電制御装置2は、B端子以外にグランド端子(E端子)を有している。B端子は、所定の充電線を介してバッテリ3や各種の電気負荷(図示せず)に接続されている。E端子は、車両用発電機1のフレームに接続されている。なお、図1では、車両用発電制御装置2は、車両用発電機1と並行して図示したが、実際には車両用発電機1に内蔵されている。
車両用発電機1は、固定子に含まれる3相の固定子巻線101と、回転子を磁化する励磁巻線102と、固定子巻線101の3相出力を全波整流するために設けられた整流回路103とを含んで構成されている。この車両用発電機1の出力電圧の制御は、励磁巻線102に対する励磁電流の供給を車両用発電制御装置2によって適宜断続制御することにより行われる。
次に、車両用発電制御装置2の詳細構成および動作について説明する。図1に示すように、車両用発電制御装置2は、NチャネルMOS−FET201、環流ダイオード202、センス抵抗203、抵抗204、205、電圧制御回路206、励磁電流抑制制御回路207、励磁電流抑制制御禁止・解除回路208、アンド回路209を備えている。
MOS−FET201は、励磁巻線102に直列に接続されており、オン状態のときに励磁巻線102に励磁電流が流れる。環流ダイオード202は、励磁巻線102に並列に接続されており、MOS−FET201がオフ状態のときに励磁電流を環流させる。
抵抗204、205は分圧回路を構成しており、車両用発電機1の出力電圧(発電電圧)をこの分圧回路で分圧した電圧が電圧制御回路206に印加される。電圧制御回路206は、この分圧回路から印加される電圧に基づいて車両用発電機1の発電電圧を検出し、この発電電圧が調整電圧設定値(第1の所定電圧、例えば14V)になるよう車両用発電機1の励磁電流を制御する。例えば、電圧制御回路206は、調整電圧設定値と発電電圧との差に比例したオンデューティを有するPWM信号を出力する。このPWM信号は、アンド回路209を介して励磁駆動信号としてMOS−FET201に入力され、MOS−FET201がオンオフ制御される。
励磁電流抑制制御回路207は、電圧制御回路206によって励磁電流を増加させるときに励磁電流を徐々に増加させる発電抑制制御を行う。例えば、励磁電流抑制制御回路207は、直前のアンド回路209の出力信号を取り込み、この信号のデューティ比に所定の増分を加算したオンデューティを有する発電抑制信号を出力する。この発電抑制信号はアンド回路209に入力される。大きな電気負荷の投入に伴って電圧制御回路206から出力されるPWM信号のオンデューティが急激に増加しても、励磁電流抑制制御回路207から出力される発電抑制信号のオンデューティは所定の増分で決まる速度でしか増加しないため、アンド回路209からMOS−FET201に入力される励磁駆動信号のオンデューティも徐々に増加するだけであり、このようにして発電抑制制御が実施される。
励磁電流抑制制御禁止・解除回路208は、励磁電流抑制制御回路207による発電抑制制御中に車両用発電機1の発電電圧が第1の所定電圧よりも低い第2の所定電圧以下になったときに励磁電流抑制制御回路207による発電抑制制御を禁止する。また、励磁電流抑制制御禁止・解除回路208は、励磁電流抑制制御回路207による発電抑制制御を禁止した後に車両用発電機1の発電電圧が第2の所定電圧よりも高くなった場合に、第2の所定電圧よりも高く第1の所定電圧よりも低い第3の所定電圧よりも発電電圧が高くなるまで、発電抑制制御の禁止を維持する。さらに発電電圧が高くなって第3の所定電圧を超えると、励磁電流抑制制御禁止・解除回路208は、発電抑制制御の禁止を解除、すなわち、発電抑制制御を再開する指示を励磁電流抑制制御回路207に対して行う。
なお、励磁電流抑制制御禁止・解除回路208による発電抑制制御の禁止は、その旨の指示を励磁電流抑制制御回路207に向けて送り、励磁電流抑制制御回路207から出力される発電抑制信号を常時ハイレベルに維持することにより行われる。また、上述した第2の所定電圧はバッテリ3の開放端電圧以下の値に設定される。これにより、電気負荷急増時に発電量を増加させてバッテリ3の過度の放電を防止することが可能となる。
上述した電圧制御回路206が電圧制御手段に、励磁電流抑制制御回路207が励磁電流抑制制御手段に、励磁電流抑制制御禁止・解除回路208が抑制制御禁止手段、抑制制御禁止維持手段にそれぞれ対応する。
本実施形態の車両用発電制御装置2では、発電電圧が調整電圧設定値(第1の所定電圧)近傍で推移して励磁電流が小さい場合には、励磁電流抑制制御回路207による発電抑制制御は行われず、電圧制御回路206から出力されるPWM信号がアンド回路209を介して励磁駆動信号としてMOS−FET201に入力され、この励磁駆動信号に応じた励磁電流の制御が行われる。
また、電気負荷の投入によって発電電圧が調整電圧設定値より低下すると、電圧制御回路206から出力されるPWM信号のオンデューティは電圧低下の程度に応じて増加するが、励磁電流抑制制御回路207による発電抑制制御が行われるため、励磁電流は徐々に増加する。
また、発電電圧が第2の設定値以下になるような大きな電気負荷が投入された場合には、この発電電圧の大きな落ち込みを回復させるために励磁電流抑制制御禁止・解除回路208によって励磁電流抑制制御回路207による発電抑制制御が解除(禁止)される。この発電抑制制御の禁止状態は、発電電圧が第3の所定電圧を超えるまで維持される。
図2は、アイドル時における電気負荷投入後の発電電圧の変化を示す図である。図2において、横軸は時間経過を、縦軸は発電電圧をそれぞれ示している。また、点線Bで示した電圧変化は、発電電圧が第2の所定電圧以下になったときに発電抑制制御が禁止され、第2の所定電圧を超えたときに発電抑制制御の禁止が解除された従来例を示しており、実線Aで示された本発明の電圧変化と比較するために図示されている。
また、図3は、アイドル時における電気負荷投入後のエンジン回転数の変化を示す図である。図3において、横軸は時間経過を、縦軸はエンジン回転数をそれぞれ示している。また、点線Bで示したエンジン回転数変化は、発電電圧が第2の所定電圧以下になったときに発電抑制制御が禁止され、第2の所定電圧を超えたときに発電抑制制御の禁止が解除された従来例を示しており、実線Aで示された本発明の電圧変化と比較するために図示されている。
図2および図3に示すように、本実施形態の車両用発電制御装置2では、発電抑制の禁止と解除の基準となる所定電圧(第2の所定電圧と第3の所定電圧)を異ならせる電圧ヒステリシスを持たせることにより、発電抑制の有無が頻繁に切り替わることに伴う発電トルクの変動を防止することができるため、エンジン回転の変動が大きくなることを防止し、エンジン回転を安定させることが可能となる。また、発電抑制が一旦禁止された後この禁止状態が解除されるまである程度の期間が確保されることから、電源電圧を回復させることができる。
ところで、上述した第3の所定電圧(発電抑制制御の禁止を解除して発電抑制制御を再開する電圧)と第2の所定電圧(発電抑制制御を禁止する電圧)との差は、エンジンの点火制御周期に対応する車両用発電機1の発電電圧の変動幅よりも大きく設定することが望ましい。例えば、8気筒エンジンのアイドル時の回転数が700rpmとすると、その点火制御周期は約10ms(=1/((700×8)/60))となり、この周期でエンジン回転の脈動が生じ、車両用発電機1の発電電圧がこの周期で所定の変動幅で上下する。この変動幅で発電電圧が変動しても発電電圧が第3の所定電圧を超えないようにすることにより、エンジンの点火制御周期に同期して発生するエンジン回転の脈動に連動する発電抑制の禁止と解除の繰り返しを防止することができ、エンジン回転の安定と発電電圧の回復を両立させることができる。
また、上述した第3の所定電圧と第2の所定電圧との差は、車両用発電機1の回転数および温度の少なくとも一方に基づいて可変設定することが望ましい。図4は、車両用発電機1の回転数および温度の少なくとも一方を検出して発電制御を行う車両用発電制御装置の変形例を示す図である。図4に示す車両用発電制御装置2Aは、図1に示した車両用発電制御装置2に対して温度センサ210と回転検出回路211とを追加した点が異なっている。
温度センサ210は、車両用発電制御装置2Aの温度、すなわち、車両用発電制御装置2Aが内蔵された車両用発電機1の温度を検出する。例えば、サーミスタやダイオードが用いられ、温度によって変化するこれらの素子の両端電圧に基づいて車両用発電機1の温度検出が行われる。温度センサ210によって検出された温度が高いほど、車両用発電機1の発電能力が低下するため、回転変動に伴う発電電圧の変動幅が小さくなると考えられる。したがって、温度が高いほど、第3の所定電圧と第2の所定電圧との差を小さく設定し、反対に、温度が低いほど、第3の所定電圧と第2の所定電圧との差を大きく設定すればよい。この可変設定は、励磁電流抑制制御禁止・解除回路208において行われる。
回転検出回路211は、固定子巻線101のいずれかの相に現れる相電圧を監視することにより、車両用発電機1の回転数(発電機回転数)を検出し、検出した発電機回転数に対応する電圧を出力する。回転検出回路211によって検出された回転数が低いほど、車両用発電機1の発電能力が低下するため、回転変動に伴う発電電圧の変動幅が小さくなると考えられる。したがって、回転数が低いほど、第3の所定電圧と第2の所定電圧との差を小さく設定し、反対に、回転数が高いほど、第3の所定電圧と第2の所定電圧との差を大きく設定すればよい。この可変設定は、励磁電流抑制制御禁止・解除回路208において行われる。
このように、車両用発電機1の発電量力は、回転数や温度に応じて変化するため、回転変動等に伴う発電電圧の変動幅も変化する。したがって、車両用発電機1の回転数や温度に応じて第3の所定電圧と第2の所定電圧の差を可変することにより(例えば、第2の所定電圧が一定の場合には第3の所定電圧の値を可変することにより)、発電量能力に応じて確実にエンジン回転の安定と発電電圧の回復を達成することが可能となる。
また、上述した第3の所定電圧と第2の所定電圧との差は、外部制御装置から送られてくる情報に基づいて可変設定するようにしてもよい。図5は、外部制御装置から送られてくる情報に基づいて発電制御を行う車両用発電制御装置の変形例を示す図である。図5に示す車両用発電制御装置2Bは、図1に示した車両用発電制御装置2に対して通信制御回路213を追加した点が異なっている。
通信制御回路213は、C端子(通信端子)を介して外部制御装置4との間で双方向のシリアル通信(例えば、LIN(Local Interconnect Network)プロトコルを用いたLIN通信)を行い、外部制御装置4に向けて周期的に発電電圧等を送信するとともに、外部制御装置4から周期的に送られてくる情報(発電指示信号)を受信する。
外部制御装置4は、エンジン5を制御する機能以外に、温度センサ6を用いて車両温度(エンジン5や車両用発電機1周辺の温度)を検出し、エンジン回転数および車両温度の少なくとも一方を含む発電指示信号を車両用発電制御装置2Bに向けて送信する。車両用発電制御装置2Bでは、この発電指示信号を通信制御回路213によって受信し、励磁電流抑制制御禁止・解除回路208にエンジン回転数および車両温度の少なくとも一方を入力する。励磁電流抑制制御禁止・解除回路208は、通信制御回路213から入力されるエンジン回転数等に基づいて、第3の所定電圧と第2の所定電圧との差を可変設定する。可変設定の具体例については、図4に示した車両用発電制御装置2Aの場合と基本的に同じである。すなわち、車両温度と車両用発電機1の温度とは相関があるため、車両温度が高いと車両用発電機1の発電能力が低下する。また、エンジン回転数と車両用発電機1の回転数とは1対1に対応しているため、エンジン回転数が低いと車両用発電機1の発電能力が低下する。このように、発電能力の低下に対して、第3の所定電圧と第2の所定電圧との差が小さく設定され、反対の場合には、第3の所定電圧と第2の所定電圧との差が大きく設定される。このように、外部制御装置4で収集した各種の情報に基づいて電圧ヒステリシスの程度を設定することにより、発電量能力に応じて確実にエンジン回転の安定と発電電圧の回復を達成することが可能となる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、発電抑制の禁止と解除の基準となる所定電圧(第2の所定電圧と第3の所定電圧)を異ならせる電圧ヒステリシスを持たせることにより、発電抑制の有無が頻繁に切り替わることを防止したが、電圧ヒステリシスを持たせる代わりに、発電抑制を禁止した時点から所定時間の間は禁止を解除できないようにして(禁止状態を維持するようにして)、発電抑制の有無が頻繁に切り替わることを防止するようにしてもよい。この場合の基本構成は、図1に示した車両用発電制御装置2をそのまま用いることができる。
図1に示す励磁電流抑制制御禁止・解除回路208は、励磁電流抑制制御回路207による発電抑制制御を禁止した時点から所定時間経過するまで、車両用発電機1の発電電圧が第2の所定電圧よりも高くなった場合であっても発電抑制制御の禁止を維持する。所定時間経過した時点で発電電圧が第2の所定電圧よりも高い場合には、励磁電流抑制制御禁止・解除回路208は、発電抑制制御の禁止を解除、すなわち、発電抑制制御を再開する指示を励磁電流抑制制御回路207に対して行う。
発電抑制を禁止してから解除するまでの時間間隔としてある程度の時間(所定時間)を確保することにより、発電抑制の有無が頻繁に切り替わることに伴う発電トルクの変動を防止することができるため、エンジン回転の変動が大きくなることを防止し、エンジン回転を安定させることが可能となる。また、発電抑制が一旦禁止された後この禁止状態が解除されるまである程度の期間が確保されることから、電源電圧を回復させることができる。
また、上述した所定時間は、エンジンの点火制御周期に相当する時間以上とすることが望ましい。これにより、エンジンの点火制御周期に同期して発生するエンジン回転の脈動に連動する発電抑制の禁止と解除の繰り返しを防止することができ、エンジン回転の安定と発電電圧の回復を両立させることができる。
また、上述した所定時間は、車両用発電機1の回転数および温度の少なくとも一方に基づいて可変設定するようにしてもよい。この場合の基本構成は、図4に示した車両用発電制御装置2Aをそのまま用いることができる。車両用発電機1の回転数や温度に応じて発電電圧の脈動の程度(周期や電圧の脈動幅)が変化する。したがって、車両用発電機1の回転数や温度に応じて、発電抑制を禁止してから解除するまでの時間間隔の最小値として設定される所定時間を可変することにより、発電電圧の脈動の程度に応じて確実にエンジン回転の安定と発電電圧の回復を達成することが可能となる。
また、上述した所定時間は、外部制御装置から送られてくる情報に基づいて可変設定するようにしてもよい。この場合の基本構成は、図5に示した車両用発電制御装置2Bをそのまま用いることができる。これにより、外部制御装置4で収集した各種の情報に基づいて発電抑制制御を禁止してから禁止を解除するまでの時間遅れとしての所定時間を可変設定することが可能になり、確実にエンジン回転の安定と発電電圧の回復を図ることができる。
具体的には、外部制御装置4によってエンジン回転数および車両温度の少なくとも一方を取得し、上述した所定時間を、エンジン回転数および車両温度の少なくとも一方に基づいて可変設定する場合が考えられる。エンジン回転数や車両温度に応じて発電電圧の脈動の程度(周期や電圧の脈動幅)が変化する。したがって、エンジン回転数や車両温度に応じて、発電抑制を禁止してから解除するまでの時間間隔の最小値として設定される所定時間を可変することにより、発電電圧の脈動の程度に応じて確実にエンジン回転の安定と発電電圧の回復を達成することが可能となる。
また、上述した実施形態では、アイドル状態との関係については特に言及しなかったが、エンジン回転が特に不安定になりやすいアイドル時に(あるいは、アイドル時を含む所定回転数以下において)、上述した発電抑制制御の禁止とその解除を行うようにしてもよい。これにより、エンジン回転が不安定になりやすいアイドル時にエンジンストールが発生したり、電源電圧(発電電圧)が低下して回復しない事態を回避することが可能となる。
上述したように、本発明によれば、発電抑制の禁止と解除の基準となる所定電圧を異ならせる電圧ヒステリシスを持たせることにより、発電抑制の有無が頻繁に切り替わることに伴う発電トルクの変動を防止することができるため、エンジン回転の変動が大きくなることを防止し、エンジン回転を安定させることが可能となる。また、発電抑制が一旦禁止された後この禁止状態が解除されるまである程度の期間が確保されることから、電源電圧を回復させることができる。
1 車両用発電機
2、2A、2B 車両用発電制御装置
3 バッテリ
4 外部制御装置
5 エンジン
6、210 温度センサ
101 固定子巻線
102 励磁巻線
103 整流回路
201 NチャネルMOS−FET
202 環流ダイオード
203 センス抵抗
204、205 抵抗
206 電圧制御回路
207 励磁電流抑制制御回路
208 励磁電流抑制制御禁止・解除回路
209 アンド回路
211 回転検出回路
213 通信制御回路

Claims (10)

  1. エンジンによって駆動される車両用発電機の発電電圧が第1の設定値になるように前記車両用発電機の励磁電流を制御する電圧制御手段と、
    前記電圧制御手段によって励磁電流を増加させるときに励磁電流の増加を抑制する励磁電流抑制制御手段と、
    前記励磁電流抑制制御手段による抑制制御中に前記車両用発電機の発電電圧が前記第1の所定電圧よりも低い第2の所定電圧以下になったときに前記励磁電流抑制制御手段による抑制制御を禁止する抑制制御禁止手段と、
    前記励磁電流抑制制御手段による抑制制御が前記抑制制御禁止手段によって禁止された後に前記車両用発電機の発電電圧が前記第2の所定電圧よりも高くなった場合に、前記第2の所定電圧よりも高く前記第1の所定電圧よりも低い第3の所定電圧よりも前記車両用発電機の発電電圧が高くなるまで前記抑制制御禁止手段による抑制制御の禁止を維持する抑制制御禁止維持手段と、
    を備えることを特徴とする車両用発電制御装置。
  2. 請求項1において、
    前記第3の所定電圧と前記第2の所定電圧との差を、エンジンの点火制御周期に対応する前記車両用発電機の発電電圧の変動幅よりも大きく設定することを特徴とする車両用発電制御装置。
  3. 請求項1または2において、
    前記第3の所定電圧と前記第2の所定電圧との差を、前記車両用発電機の回転数および温度の少なくとも一方に基づいて可変設定することを特徴とする車両用発電制御装置。
  4. 請求項1または2において、
    前記第3の所定電圧と前記第2の所定電圧との差を、外部制御装置から送られてくる情報に基づいて可変設定することを特徴とする車両用発電制御装置。
  5. 請求項4において、
    前記外部制御装置は、エンジン回転数および車両温度の少なくとも一方を取得し、
    前記第3の所定電圧と前記第2の所定電圧との差を、前記エンジン回転数および前記車両温度の少なくとも一方に基づいて可変設定することを特徴とする車両用発電制御装置。
  6. エンジンによって駆動される車両用発電機の発電電圧が第1の設定値になるように前記車両用発電機の励磁電流を制御する電圧制御手段と、
    前記電圧制御手段によって励磁電流を増加させるときに励磁電流の増加を抑制する励磁電流抑制制御手段と、
    前記励磁電流抑制制御手段による抑制制御中に前記車両用発電機の発電電圧が前記第1の所定電圧よりも低い第2の所定電圧以下になったときに前記励磁電流抑制制御手段による抑制制御を禁止する抑制制御禁止手段と、
    前記励磁電流抑制制御手段による抑制制御が前記抑制制御禁止手段によって禁止された時点から所定時間経過するまで、前記車両用発電機の発電電圧が前記第2の所定電圧よりも高くなった場合に前記抑制制御禁止手段による抑制制御の禁止を維持する抑制制御禁止維持手段と、
    を備えることを特徴とする車両用発電制御装置。
  7. 請求項6において、
    前記所定時間を、エンジンの点火制御周期に相当する時間以上とすることを特徴とする車両用発電制御装置。
  8. 請求項6または7において、
    前記所定時間を、前記車両用発電機の回転数および温度の少なくとも一方に基づいて可変設定することを特徴とする車両用発電制御装置。
  9. 請求項6または7において、
    前記所定時間を、外部制御装置から送られてくる情報に基づいて可変設定することを特徴とする車両用発電制御装置。
  10. 請求項9において、
    前記外部制御装置は、エンジン回転数および車両温度の少なくとも一方を取得し、
    前記所定時間を、前記エンジン回転数および前記車両温度の少なくとも一方に基づいて可変設定することを特徴とする車両用発電制御装置。
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