JP4911226B2 - 下肢動脈閉塞症の運動療法用装置及び診断装置 - Google Patents

下肢動脈閉塞症の運動療法用装置及び診断装置 Download PDF

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Description

本発明は、下肢動脈閉塞症の運動療法に用いられる運動療法用装置及び下肢動脈閉塞症の診断装置に関する。
近年、生活習慣等の変化によって、閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis oblierans;ASO)や末梢循環障害(peripheralarterial occlusive diseases;PAOD)等の慢性下肢動脈閉塞症を発症する患者が増えてきている。閉塞性動脈硬化症の症状は、フォンテイン分類によってI度からIV度の4つに分類されている。フォンテイン分類I度の症状は、下肢に冷えやしびれを感じる程度の軽い症状である。また、フォンテイン分類II度の症状は、一定の距離を歩くと下肢にひきつりを感じて歩けなくなるが、しばらく休むと回復して再び歩くことができる症状である。この症状を間歇性跛行といい、歩行開始から痛みによって歩けなくなるまでの距離を疼痛出現距離(跛行距離)という。この間歇性跛行は、閉塞性動脈硬化症の患者が最も多く訴える症状であり、歩いていると下肢のふくらはぎ辺りが締め付けられるように痛くなり、階段の昇りが特に辛くなるのが特徴である。フォンテイン分類III度の症状は、夜間等に安静にしていても下肢が強く痛む症状である。フォンテイン分類IV度の症状は、下肢に潰瘍ができ、壊死する症状である。疫学調査によれば、フォンテイン分類I度及びII度に分類される比較的軽度な症例の年間発生数は、人口100万人当たり5万〜10万人であり、フォンテイン分類III度及びIV度に分類される比較的重症な症状は、同500〜1000人くらいである。
閉塞性動脈硬化症や末梢循環障害の一般的な治療ガイドラインでは、軽症例では、運動療法に代表される保存的治療が推奨されており、また、重症例では、すみやかな血行再建術が推奨されている。運動療法は、運動負荷をかけることで低酸素状態に対する許容力を増すことを目的に行われるもので、一般的には、患者を歩行させることによって行う。この運動療法による症状の改善目標は、治療開始後、3ヶ月での疼痛出現距離を治療前の約1.5倍から2倍程度に延ばすことである。これ以上の症状の改善を望む症例には、血行再建術が考慮されることになる。また、重症例では、診断が付き次第、可及的早期に、カテーテルによる血管内治療もしくはバイパス手術等による直接的血行再建術が必要である。この血行再建術によっても改善が見られない場合には、肢切断が必要になってくる。重症例に対する直接的血行再建術や脚切断は侵襲が大きいので、そのような重症となる前に、下肢動脈閉塞症の早期発見、重症度の正確な判定に基づく的確な治療が望まれている。
下肢動脈閉塞症の重症度を判定する場合に、例えば、特許文献1に開示されている装置を用いることが考えられる。この装置は、患者の測定部位に測定光を照射し、測定部位からの透過散乱光を受光部で受光して体内の酸素状態を測定するように構成されている。
特開2002−136505号公報
ところが、特許文献1の装置では、光を用いて患者の体内の酸素状態を測定するようにしており、この光の透過度合いや散乱度合いは患者の体質等によって異なることがあるので、測定によって得られた酸素状態が、必ずしも患者の実際の酸素状態に対応しているとは限らない。よって、下肢動脈閉塞症の重症度を正確に判定できないことが考えられる。
下肢動脈閉塞症の重症度を正確に得ることは、その後の治療方針を患者の重症度に適したものにするために重要なことである。特に、運動療法が適応の重症度の場合には、歩行による運動負荷をかける必要があるが、この運動負荷は、患者の重症度によって異なるものであるため、重症度が正確に判定できなければ、適切な運動負荷をかけることができず、治療効果が十分に得られないことになる。
また、下肢動脈閉塞症の軽症例の症状は、神経系疾患が原因の症状と同じような症状であることがある。従って、患者の痛みに関する説明だけでは、下肢動脈閉塞症と神経系疾患とのどちらであるかを判定するのが難しい場合があり、潜在化している下肢動脈閉塞症の患者を見逃してしまう虞れがある。さらに、下肢動脈閉塞症の重症例の2〜3割は、慢性血液透析を受けている患者に見られる。血液透析中は、徐水とともに循環血液量が減少し、この循環血液量の減少とともに下肢の虚血症状が発現するが、糖尿病腎症で血液透析が必要になった患者においては、神経障害も持っていることがあり、この場合、下肢が虚血状態になっても下肢に痛みを感じないことが多い。このことが、下肢動脈閉塞症の早期発見を妨げることになり、症状を進行させて重症化してしまう原因になるとが考えられる。
本発明の第1の目的は、下肢動脈閉塞症の患者の運動療法をサポートして治療効果を高めて症状の早期改善を図ることにあり、また、本発明の第2の目的は、下肢動脈閉塞症を的確に診断できるようにして早期発見及び早期治療を実現できるようにすることにある。
上記第1の目的及び第2の目的を達成するために、本発明では、患者の下肢の脈波を検出して利用するようにした。
具体的には、第1の発明では、下肢動脈閉塞症の運動療法に用いられる運動療法用装置において、歩行中の患者の下肢に取り付けられ、歩行中又は歩行直後の患者の下肢の脈波を検出する脈波検出部と、患者の歩行距離を検出する歩行距離検出部と、上記脈波検出部及び上記歩行距離検出部が接続され、上記脈波検出部で検出された歩行中又は歩行直後の患者の脈波のピークが動脈圧波形のピークの一定以下となって該脈波が動脈圧波形よりも平坦に近い所定形状の波形となったときに、その脈波が所定形状となるまで歩行した患者の歩行距離に基づいて、運動療法用の目標歩行距離を設定する目標歩行距離設定部とを備えている構成とする。
この構成によれば、脈波検出部によって患者の下肢の脈波が検出されるとともに、歩行距離検出部によって患者の歩行による歩行距離も検出される。
ここで、一般に、四肢末梢の脈波は、正常であれば、動脈圧波形と相似形で観察されるものである。本発明者らは、下肢動脈閉塞症の軽症例の患者を観察した結果、安静時の脈波は動脈圧波形に近い形で観察される一方、歩行による運動負荷をかけて歩けなくなる限界に近づいて虚血症状が出現すると脈波が動脈圧波形よりも平坦に近い所定形状になることを見出した。このことに基づくと、運動療法中に、脈波検出部で検出された脈波が動脈圧波形よりも平坦に近い所定形状になると、その患者の状態が歩行限界に近いことが分かる。安静時から歩行限界に近い状態となるまでの患者の歩行距離は、下肢動脈閉塞症の重症度が高いほど短くなるものなので、脈波と歩行距離とに基づいて下肢動脈閉塞症の重症度の判定が可能になる。この歩行距離に基づいて目標歩行距離設定部が運動療法用の目標歩行距離を設定するので、重症度に応じた運動負荷を患者にかけることが可能になる。
第2の発明では、第1の発明において、目標歩行距離設定部で設定された目標歩行距離を表示する表示部を備えている構成とする。
この構成によれば、目標歩行距離設定部で設定された目標歩行距離を表示することが可能になる。
第3の発明では、第1または2の発明において、患者の歩行距離が目標歩行距離設定部で設定された目標歩行距離となったか否か判定し、歩行距離が目標歩行距離となった場合に報知信号を出力するように構成され、目標歩行距離設定部に接続された報知部を備え、上記報知部に上記報知信号が入力されるようになっている構成とする。
この構成によれば、歩行距離が目標歩行距離となった場合に、そのことが報知部によって報知される。
第4の発明では、第3の発明において、報知部は、スピーカー、発光部及び振動部の少なくとも1つで構成されているものとする。
この構成によれば、歩行距離が目標歩行距離となったことを確実に報知することが可能になる。
第5の発明では、第1から4のいずれか1つに記載の下肢動脈閉塞症の運動療法用装置において、患者の歩行距離が目標歩行距離設定部で設定された目標歩行距離に達するまでの残距離を表示する残距離表示部を備えている構成とする。
この構成によれば、目標歩行距離に達するまでの残距離を表示することが可能になる。
第6の発明では、第1から5のいずれか1つの発明において、装置本体には、脈波検出部で検出された脈波及び歩行距離検出部で検出された歩行距離を記憶する記憶部が設けられている構成とする。
この構成によれば、患者の過去の脈波及び歩行距離を得ることが可能になる。
第7の発明では、下肢動脈閉塞症の診断装置であって、歩行中の患者の下肢に取り付けられ、歩行中又は歩行直後の患者の下肢の脈波を検出する脈波検出部と、上記脈波検出部が接続され、該脈波検出部で検出された脈波が入力される制御部とを備え、上記制御部は、上記脈波検出部で検出された歩行中又は歩行直後の患者の脈波のピークが動脈圧波形のピークの一定以下となって該脈波が動脈圧波形よりも平坦に近い所定形状の波形となったときに報知するように構成されているものとする。
この構成によれば、脈波検出部によって患者の下肢の脈波が検出され、この脈波が動脈圧波形よりも平坦に近い所定形状の波形となったときに、そのことが報知される。この下肢の脈波は、上記したように下肢動脈閉塞症の虚血症状が出現すると動脈圧波形よりも平坦に近い波形になるものなので、患者が下肢の痛みを訴えている場合に、下肢動脈閉塞症による痛みか、神経系疾患による痛みかを判定することが可能になる。また、例えば、血液透析中に脈波検出部によって下肢の脈波を検出することにより、下肢が下肢動脈閉塞症による虚血状態になっているか否かを、患者が痛みを訴えなくても、判定することが可能になる。これにより、下肢動脈閉塞症を早期の段階で発見することが可能になる。
第1の発明によれば、脈波検出部で検出された脈波が動脈圧波形よりも平坦に近い所定形状の波形となったときに、その波形となるまで歩行した患者の歩行距離に基づいて運動療法用の目標歩行距離を設定するようにしたので、患者の重症度に応じた運動負荷を患者に対しかけることができ、治療効果を十分に得ることができる。
第2の発明によれば、目標歩行距離を表示する表示部を設けたので、目標歩行距離を患者本人や医療従事者が簡単に把握できる。
第3の発明によれば、患者の歩行距離が目標歩行距離となった場合に報知部により報知することができるので、患者が目標歩行距離まで歩行したことを患者本人や医療従事者に知らせることができる。
第4の発明によれば、報知部をスピーカー、発光部及び振動部の少なくとも1つで構成したので、患者が目標歩行距離まで歩行したことを患者本人や医療従事者に確実に知らせることができる。
第5の発明によれば、残距離を表示する残距離表示部を設けたので、目標歩行距離に達するまでの残距離を患者本人や医療従事者が簡単に把握できる。
第6の発明によれば、脈波及び歩行距離を記憶部に記憶することができるので、歩行後にこれらデータを見ることで、症状の改善度合いを容易に把握できる。
第7の発明によれば、脈波検出部で検出された脈波が動脈圧波形よりも平坦に近い所定形状の波形となったときに報知するようにしたので、下肢動脈閉塞症を早期に発見し、かつ、的確に診断することができ、早期治療を実現できる。
図1は、実施形態1に係る下肢動脈閉塞症の運動療法用装置の使用状態を説明する図である。 図2は、運動療法用装置の斜視図である。 図3は、運動療法用装置のブロック図である。 図4は、固定ベルトの一部を示す斜視図である。 図5は、運動療法用装置の動作を示すフローチャートである。 図6(a)は、正常な場合の脈波を示し、(b)は、下肢動脈閉塞症患者の下肢が虚血状態にある場合の脈波を示している。 図7は、実施形態1の変形例1に係る図2相当図である。 図8は、実施形態1の変形例2に係る図2相当図である。 図9は、実施形態1の変形例3に係る図1相当図である。 図10は、実施形態1の変形例4に係る図1相当図である。 図11は、実施形態2に係る下肢動脈閉塞症の診断装置のブロック図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は、本発明の実施形態に係る下肢動脈閉塞症の運動療法用装置1の使用状態を示すものである。この運動療法用装置1は、下肢動脈閉塞症の患者Aが運動療法を行う際に使用するものであり、図2に示すように、装置本体2と、装置本体2を患者Aの下肢、例えば、足首近傍に固定するための固定バンド(固定部)3とを備えている。固定バンド3は、面ファスナー等を有しており、下肢に巻き付けた状態で外れないようになっている。装置本体2は、固定バンド3以外にも、例えば、ベルト等を用いて固定するようにしてもよい。
図3に示すように、装置本体2には、中央処理装置(CPU)10が内蔵されている。このCPU10には、ROM11、RAM12、GPS13、時計部14、歩行センサー15、脈波センサー(脈波検出部)16、ON/OFFスイッチ17、2倍スイッチ18、ランプ(発光部)19、スピーカー20、振動器(振動部)21、送信部22、距離表示部23、記憶部24、入力スイッチ25、痛み報知スイッチ26及び痛み解消スイッチ27が信号線を介して接続されている。上記CPU10、ROM11及びRAM12により本発明の制御部が構成されている。また、図示しないが、装置本体2には、電源としての充電池が内蔵されている。尚、装置本体2には、充電池の代わりに乾電池を内蔵するようにしてもよいし、太陽電池を搭載するようにしてもよい。
ROM11には、本装置1を作動させるためのプログラムが記憶されている。RAM12には、本装置1の動作途中のデータが随時記憶されるようになっている。GPS13は、global positioning systemであり、所定の人工衛星から発信される電波を受信して現在位置を測定する周知の構造のものである。このGPS13による現在位置の測定結果は、位置データとしてCPU10へ随時出力されるようになっている。時計部14は、現在の年月日及び時刻をCPU10に随時出力するように構成されている。
歩行センサー15は、2軸の加速度センサーを有しており、患者Aが歩いているか否かを検出するためのものである。歩行センサー15は、周知のデジタル歩数計等に搭載されている歩数カウンタと同様な構造である。歩行センサー15からは、1歩に付き1つのパルス波が出力されるようになっている。尚、歩行センサー15としては、上記加速度センサーを有するものに限られず、例えば、足裏の圧力変化を検出するセンサーや、左右の脚やズボン等に付けた金属ワイヤーの伸び縮みによる電位変化を検出するセンサー等を用いてもよい。
脈波センサー16、16、…は、周知の圧力検出センサー(例えば圧電センサー)で構成されており、図4に示すように、固定バンド3に取り付けられている。各脈波センサー16は、患者Aの足首近傍の皮膚に接触するように向いており、皮下を走行する動脈の脈波を非侵襲的に検出することができるようになっている。尚、脈波センサー16は下肢において脈波の検出可能な部位であればどの部位に接触させてもよく、例えば脂肪層の厚い肥満体型の患者の場合には、足の甲や足裏等に脈波センサー16を接触させるようにしてもよい。脈波センサー16を接触させる部位は、医療従事者が指で触れたときに脈が取れる部位が好ましいが、これに限られるものではない。
脈波センサー16、16、…は、固定バンド3の幅方向に複数並び、かつ、長さ方向にも複数並ぶように配置されている。これにより、脈波を検出可能な範囲を広く確保することが可能になるので、固定バンド3の固定位置が多少ずれても脈波の検出が行える。上記複数の脈波センサー16、16、…のうち、定期的に検出値が変動している脈波センサー16の信号をCPU10が利用するようになっている。尚、脈波センサー16の位置は、上記に限られるものではなく、例えば、固定バンド3の幅方向にのみ並べてもよいし、長さ方向にのみ並べてもよいし、千鳥格子状に並べてもよい。また、脈波センサー16の数は1つであってもよい。
脈波センサー16で検出される脈波について図6(a)に基づいて説明すると、脈波は、心臓が収縮することによって発生する駆出波と、その駆出波が全身に行き渡る際に末梢動脈や動脈分岐部等で反射することによって発生する反射波とで構成されており、正常であれば、下肢の脈波は、動脈圧波形と相似形で検出されるものである。
ON/OFFスイッチ17は、装置本体2の電源をON又はOFFするためのスイッチである。2倍スイッチ18は、目標歩行距離を設定するためのスイッチである。痛み報知スイッチ26は、患者Aが歩行中に下肢に疼痛が出現したときに操作するためのスイッチである。痛み解消スイッチ27は、一旦出現した疼痛が解消したときに患者が操作するためのスイッチである。
ランプ19は、患者Aが疼痛の出現によって歩けなくなったとき(疼痛出現距離まで歩行したとき)、及び、患者Aの歩行距離が目標歩行距離となったときに点灯するものである。スピーカー20は、同様に、患者Aが疼痛出現距離まで歩行したとき、及び、患者Aの歩行距離が目標歩行距離となったときに所定の音声を発するものである。振動器21は、同様に、患者Aが疼痛出現距離まで歩行したとき、及び、患者Aの歩行距離が目標歩行距離となったときに振動するものである。振動器21は、周知の電動式バイブレータで構成されている。これらランプ19、スピーカー20及び振動器21は、本発明の報知部を構成している。尚、ランプ19は、点灯状態で保持するようにしてもよいし、点滅させるようにしてもよい。
記憶部24は、周知のメモリーカード等の記憶媒体で構成されており、装置本体2に着脱可能となっている。この記憶部24には、本装置1を用いて運動療法を行った日時及び場所、歩行経路、歩行中の脈波、疼痛出現距離、歩行開始から疼痛出現距離まで歩行するのに要した時間、目標歩行距離、歩行開始から目標歩行距離まで歩行するのに要した時間、痛み報知スイッチ26が押された日時及び歩行距離、痛み解消スイッチ27が押された日時及び歩行距離、歩行中に休憩した場合の休憩時間、疼痛が出現してからほぼ消えるまでの回復時間等のデータが記憶されるようになっている。運動療法を行った場所及び歩行医経路は、上記GPS13により得ることができるようになっている。
送信部22は、記憶部24に記憶されている各種データを、例えば医療従事者が操作するパソコン等の端末機器104(図2に示す)へ送信するためのものであり、周知の送信機とアンテナとで構成されている。送信方法としては、図2に示すように、周知の携帯電話やPHS用の受信端末100及び通信網101を利用してインターネット102にアクセスする方法としている。各種データは、インターネット102を経由して医療機関の患者データサーバ103に蓄積されるようになっている。患者データサーバ103に送信されたデータは、医療従事者や管理者が要求する形態に処理された後、医療従事者や管理者の端末機器104に送信されるようになっている。医療従事者や管理者が要求する形態とは、各種数値のグラフ化等である。
また、距離表示部23は、疼痛出現距離と、目標歩行距離に達するまでの残距離とを表示するためのものであり、デジタル表示器で構成されている。入力スイッチ25は、患者Aの歩幅を装置本体2に入力するためのものである。
上記CPU10は、ROM11に記憶されたプログラムに従って動作するようになっている。CPU10には、初期設定として、入力スイッチ25により患者Aの歩幅が入力されるようになっている。CPU10は、歩行センサー15から入力されたパルス波に基づいて歩数を得て、この歩数に歩幅を乗じて歩行距離を算出するようになっている。歩行センサー15及びCPU10が本発明の歩行距離検出部を構成している。
歩行距離の算出は、ON/OFFスイッチ17により電源がON状態になった後、歩行センサー15からパルス波が入力され始めると開始されるようになっている。算出された歩行距離は、データとしてCPU10から距離表示部23に出力され、距離表示部23に表示されるようになっている。歩行距離は、GPS13によっても得られるようになっており、初期設定時に歩幅を入力していない場合には、GPS13によって得られた移動距離を歩行距離として本装置1の制御に用いるようになっている。GPS13を用いると、歩幅に関係なく、患者Aの移動距離を歩行距離とすることができるので、歩行途中で歩幅が変化した場合にも正確な歩行距離を得ることができる。また、GPS13を用いることで、患者Aの歩行場所や歩行経路を正確に把握することが可能である。
CPU10には、図3に示すように、脈波センサー16から入力された下肢の脈波が、動脈圧波形よりも平坦に近い所定形状の波形であるか否かを判定する脈波判定部10aが設けられている。脈波判定部10aは、脈波センサー16により検出した平常時(安静時)の脈波(図6(a)に示す)を記憶しておき、この脈波と比べてピークが大幅に低い脈波(図6(b)に示す)が脈波センサー16により検出されたときに、患者の現在の脈波が所定形状の波形であると判定するように構成されている。これは、本発明者らが知見した、下肢動脈閉塞症患者Aの脈波の特徴を利用したものである。すなわち、一般に、四肢末梢の脈波は、正常であれば、動脈圧波形と相似形で観察されるものであるが、下肢動脈閉塞症の軽症例の患者の脈波は、安静時には動脈圧波形に近い形で観察される一方、歩行による運動負荷をかけて歩けなくなる限界に近づいて虚血症状が出現すると動脈圧波形よりも平坦に近い波形になる。つまり、脈波判定部10aによって、脈波が所定形状の波形であると判定されるということは、患者が痛みのために歩けなくなっているということになる。尚、所定形状の波形とは、該波形のピークが安静時の脈波のピークの一定以下となっていて、脈波に基づいて下肢が虚血状態であると判定できる形状のことであり、1つの波形に限られるものではなく、複数の形状がある。所定形状の波形のピークは、安静時の脈波のピークの1/5以下が好ましく、より好ましくは1/10以下である。この所定形状の波形は、患者A毎に変えてもよいし、共通にしてもよい。
この脈波判定部10aによって脈波が所定形状の波形であると判定されたときに、CPU10は歩行距離の算出を停止するようになっている。この歩行開始から、脈波が所定形状の波形と判定されるまでに歩行した距離は、疼痛出現距離としてRAM12に記憶され、また、歩行開始から、脈波が所定形状の波形と判定されるまでに歩行した時間も、疼痛出現距離まで歩行するのに要した時間(疼痛出現時間)としてRAM12に記憶されるようになっている。脈波判定部10aによって、脈波が所定形状の波形であると判定されると、CPU10は、報知信号を出力するように構成されている。この報知信号を受けたランプ19は点灯し、スピーカー20は所定の音声を発し、振動器21は振動する。これにより、脈波が所定形状になったことが報知されるようになっている。
脈波判定部10aによって、脈波が所定形状の波形であると判定された後に、2倍スイッチ18を押すと、疼痛出現距離が2倍にされ、この2倍にされた距離が目標歩行距離として得られるようになっている。この目標歩行距離は、CPU10から距離表示部23に出力され、距離表示部23に一時的に表示されるようになっている。
また、CPU10は、2倍スイッチ18が押された後、歩行センサー15からパルス波が入力され始めたことを検出すると、上記のようにして歩行距離の算出を開始するようになっている。また、CPU10は、目標歩行距離から患者の歩行距離を差し引くことによって、目標歩行距離に達するまでの残距離を得て、この残距離を距離表示部23に出力するようになっている。距離表示部23は残距離表示部としても使用される。
さらに、CPU10は、全歩行距離が目標歩行距離に達すると、報知信号を出力するように構成されている。ランプ19、スピーカー20及び振動器21は、報知信号を受けて動作し、これにより、患者Aの全歩行距離が目標歩行距離になったことが報知されるようになっている。
つまり、CPU10及び2倍スイッチ18は、本発明の目標歩行距離設定部30(図3参照)を構成しており、脈波センサー16で検出された脈波が動脈圧波形よりも平坦に近い所定形状の波形となったときに、その脈波が所定形状となるまで歩行した患者の歩行距離に基づいて、運動療法用の目標歩行距離を設定することができるようになっている。尚、目標歩行距離は、CPU10で自動設定するようにしてもよい。すなわち、脈波判定部10aによって脈波が所定形状の波形であると判定された後に、CPU10は、それまでに歩行した距離を2倍にして目標歩行距離とする。これにより、患者Aは2倍スイッチ18の操作が不要になる。
CPU10は、目標歩行距離に達する前に痛み報知スイッチ26が押されたことを検出すると、スイッチ26が押された時刻及び歩行距離をRAM12に記憶させる。さらに、痛み報知スイッチ26が押された後、痛み解消スイッチ27が押されたことをCPU10が検出すると、スイッチ27が押された時刻及び歩行距離をRAM12に記憶させる。
また、患者Aが歩行を止めた場合には、歩行センサー15からパルス波が出力されなくなるので、これによりCPU10は患者Aが歩行を止めたことを検出することができるようになっている。CPU10は、患者Aが歩行を止めた時刻及びそれまで歩行した距離をRAM12に記憶させ、歩行を再開したことを検出すると、再開した時刻をRAM12に記憶させる。患者Aが歩行を止めたこと、及び再開したことは、GPS13を利用して検出するようにしてもよいし、モーションセンサー(加速度センサー)を別途設け、それを利用して検出するようにしてもよい。
CPU10には、本装置1を患者Aに適応させるための自動調整機能が設けられている。これは、患者A毎に脈波のピークの現れ方が異なるとともに、皮膚の状態も異なるので、脈波の検出感度を常に同一にすると、ある患者Aに対しては感度が適していたとしても、他の患者Aに対しては感度が高すぎてノイズが目立ったり、逆に感度が低すぎて検出不能になったりすることが考えられる。自動調整機能は、本装置1を下肢に装着する前に、患者Aの上肢(例えば手首)の動脈(例えば橈骨動脈)の脈波を検出して、脈波が現れやすい患者Aの場合には検出感度を低めに設定し、現れ難い患者Aの場合には高めに設定するようにしている。下肢動脈閉塞症の患者Aであっても、上肢は下肢に比べると脈波が現れやすいので検出感度を調整するのに適している。
また、CPU10は、歩行センサー15から出力されていたパルス波が出力されなくなってから再度出力されるようになるまでの時間を休憩時間としてRAM12に記憶させるようになっている。また、脈波センサー16は、歩行センサー15からパルス波が出力されていないときも継続して脈波を検出するように構成されている。さらに、CPU10は、脈波が所定形状の波形になったときから安静時の波形に近くなるまで回復するのに要した時間を回復時間としてRAM12に記憶させる。
上記RAM12に記憶された各種データは、記憶部24に記憶されるようになっている。
次に、上記のように構成された運動療法用装置1を使用する場合について図5に示すフローチャートに基づいて説明する。運動療法用装置1を使用する場合には、始めに、装置本体2を固定バンド3により患者Aの下肢に固定する。このとき、脈波センサー16を皮膚に押し当て、この状態で固定バンド3を縛る。そして、ON/OFFスイッチ17を押すと電源が入る。また、患者Aの歩幅を測定した後、歩幅を装置本体2に入力スイッチ25により入力する。さらに、安静時の脈波を検出して、入力スイッチ25の所定の操作により該脈波をRAM12に記憶させておく。
歩幅の入力後、患者Aが歩行を開始すると、フローチャートにおけるステップS1に進み、患者Aの歩行距離が検出される。すなわち、このステップS1では、CPU10において、歩行センサー15から入力されたパルス波の数に歩幅を乗じて算出された距離が歩行距離とされる。この歩行距離は、距離表示部24に表示される。また、歩行開始時刻や場所、歩行経路もRAM12に記憶される。ステップS1に続くステップS2では、脈波センサー16で検出された脈波がCPUに入力される。
その後、ステップS3に進んで、ステップS2で検出された脈波がRAM12に記憶されている安静時の脈波よりも平坦に近い所定形状であるか否かを判定する。
このステップS3において、脈波のピークが一定の値よりも高く、上記した所定形状でない場合は、NOと判定されてステップS1に戻り、再度ステップS2を経てステップS3に進む。このステップS3でNOと判定されるということは、患者Aの下肢は未だ虚血状態になっていないということであり、患者Aは、歩行時にそれほど強い痛みを感じておらず、歩行を継続できる状態である。
ステップS3において、脈波が所定形状であるYESと判定されると、ステップS4に進む。ステップS3でYESと判定されるということは、患者Aの下肢が虚血状態となっていて、患者Aが痛みを感じ、歩行の困難な状態になっているということである。歩行開始から、ステップS3においてYESと判定されるまでの時間が疼痛出現時間であり、この時間をRAM12に記憶しておく。
ステップS3でYESと判定されて進んだステップS4では、歩行開始からステップS3でYESと判定されるまでに歩行した距離を疼痛出現距離としてRAM12に記憶する。患者Aの重症度が高い場合には、低い場合に比べて長い距離を一度に歩くことができないので、疼痛出現距離は、患者Aの重症度が高いほど短くなる。このとき、患者Aが痛み報知スイッチ26を押せば、そのことが時刻及び歩行距離と共にRAM12に一旦記憶される。
その後、ステップS5に進み、ランプ19を点灯させるとともに、スピーカー20から音声を発し、さらに、振動器21を振動させて、脈波が所定形状となったことを報知する。続くステップS6では、2倍スイッチ18が押されたか否かを判定する。ステップS6で2倍スイッチ18が押されていない場合はNOと判定されてステップS5に戻り、報知が継続して行われる。2倍スイッチ18が押されてステップS6でYESと判定された場合には、ステップS7に進み、運動療法用の目標歩行距離が算出される。この目標歩行距離は、疼痛出現距離を2倍にした距離であり、疼痛出現距離が患者Aの重症度に対応した距離であることから、目標歩行距離も患者Aの重症度に応じた距離となる。尚、2倍スイッチ18が押されたら報知は終了する。尚、ステップS4において、ランプ19、スピーカー20及び振動器21のうち、1つのみを用いて報知するようにしてもよいし、任意の2つを用いて報知するようにしてもよい。
患者Aは、しばらく休んで下肢の痛みがやわらいでから歩行を開始する。歩行を開始するまでの時間は、休憩時間であり、RAM12に記憶される。痛みがやわらいだときに患者Aが痛み解消スイッチ27を押せば、そのことが時刻及び歩行距離と共にRAM12に一旦記憶される。患者Aが歩行を止めているときにも、脈波センサー3によって脈波が検出されているので、脈波の形状が元の安静時の形状に近くなると、患者Aの痛みは殆ど無くなっている状態であることが分かる。これにより、回復時間が得られるようになっており、この回復時間もRAM12に記憶されるようになっている。脈波の形状が安静時の形状に近くなっても患者Aが歩行を開始しない場合には、信号待ちや用事のために止まったままであると推測できる。
ステップS7に続くステップS8では、ステップS1と同様に患者Aの歩行距離を得る。続くステップS9では、目標歩行距離以上歩行したか否かを判定する。ステップS9において目標歩行距離以上歩行していないNOと判定されると、ステップS8に戻る。
目標歩行距離以上歩行して、ステップS9においてYESと判定されると、ステップS10に進む。このステップS10では、ランプ19を点灯させるとともに、スピーカー20から音声を発し、さらに、振動器21を振動させて、目標歩行距離以上歩行したことを患者A本人及び周囲の者に報知する。つまり、患者Aは、全歩行距離が疼痛出現距離の2倍となるまで、痛みが発生したら休みながらでも歩行することになる。これにより、患者Aにおいては運動負荷がかかって低酸素状態に対する許容力を増すことができる。この運動療法は、例えば、1週間に3回の頻度で、3ヶ月以上継続して行えばよい。これによって症状が改善していけば、疼痛出現距離が長くなり、ひいては、目標歩行距離も長くなる。これら距離は距離表示部23に表示されるので、患者A自身も症状の改善度合いを数値で把握することが可能になり、治療効果を実感することができる。
また、患者Aが本装置1により運動療法を行うと、そのことが記録部24に記録される。記録部24に記録された各種データは、送信部22により、インターネット102を介して患者データサーバ103に送信される。この患者データサーバ103に送信されたデータは、医療従事者の端末機器104に送信される。これにより、医療従事者が、患者Aの症状の改善度合いをグラフや数値で具体的に把握することができる。尚、記憶部24を装置本体2から取り外して患者データベース103に接続し、記憶部24のデータを患者データベース103に直接送るようにしてもよい。
以上説明したように、この実施形態に係る運動療法用装置1によれば、脈波センサー16で検出された脈波が平坦に近い所定形状の波形となったときに、その波形となるまで歩行した患者Aの歩行距離に基づいて運動療法用の目標歩行距離を設定するようにしたので、患者Aの重症度に応じた運動負荷を患者にかけることができ、治療効果を十分に得ることができる。
また、装置本体2に目標歩行距離を表示する距離表示部23を設けたので、目標歩行距離を患者A本人や医療従事者が簡単に把握できる。
また、患者Aが目標歩行距離まで歩行したとき、ランプ19、スピーカー20及び振動器21により報知することができるので、患者Aが目標歩行距離まで歩行したことを患者A本人や医療従事者に知らせることができる。
また、装置本体2の距離表示部23に目標歩行距離に達するまでの残距離を表示するようにしたので、残距離を患者A本人や医療従事者が簡単に把握できる。
また、脈波データ及び歩行距離データを装置本体2の記憶部24に記憶して患者データサーバ103に送信することができるので、医療従事者はデータを見ることで、症状の改善度合いを容易に把握できる。
尚、この実施形態では、疼痛出現距離を2倍にして目標歩行距離とするようにしているが、これに限らず、疼痛出現距離を2倍よりも小さい倍率、例えば1.5倍にして目標歩行距離とするようにしてもよいし、2倍よりも大きい倍率、例えば、2.5倍にして目標歩行距離とするようにしてもよい。また、この倍率は、段階的に複数通りに設定できるようにしてもよいし、無段階に設定できるようにしてもよいし、患者Aに応じて変更するよにしてもよい。
また、図7に示す変形例1のように、装置本体1に、目標歩行距離に達するまでの残距離の目安を表示するための第1〜第3ランプ31、32、33を設けてもよい。第1ランプ31は、緑色に点灯するランプであり、残距離が例えば10m以下の場合に点灯させるものである。第2ランプ32は、残距離が10mよりも長く50m以下の場合に点灯させるものである。第3ランプ33は、残距離が50mよりも長く100m以下の長い場合に点灯させるものである。これらランプ31〜33は、CPU10に接続されている。CPU10は、残距離が10m以下になると第1ランプ31のみを点灯させ、50m以下で10mよりも長ければ第2ランプ32のみを点灯させ、100m以下で50mよりも長ければ第3ランプ33のみを点灯させるように構成されている。第1〜第3ランプ31〜33を点灯させる残距離は、上記した距離に限られるものではなく、任意に設定することができる。第1〜第3ランプ31〜33の色も任意に設定することができる。
また、図8に示す変形例2のように、バー型のランプ34を複数設けて、変形例1のように残距離に応じて点灯させるようにしてもよい。上記変形例1、2では、距離表示部23を省略してもよい。また、残距離は、スピーカー20から音声で報知するようにしてもよい。
また、実施形態1では、装置本体2に、ランプ19、スピーカー20及び振動器21の3つを設けているが、これらのうち1つ又は2つを設けてもよい。
また、本装置1を用いた運動療法は、医療従事者の監督の下で行うようにしてもよいし、患者Aが在宅で行うようにしてもよい。また、患者Aの症状によっては、本装置1を用いた運動療法と並行して薬物療法等の他の療法を行うようにしてもよい。
また、実施形態1では、脈波センサー16を歩行センサー15やGPS13と一体化して下肢に固定するようにしているが、図9に示す変形例3のように、脈波センサー16と、CPU10やGPS13と、距離表示部23とを別体にして、脈波センサー16のみを下肢に固定し、CPU10やGPS13を腰に固定し、距離表示部23を腕に固定するようにしてもよい。この場合、CPU10と脈波センサー16とを有線接続してもよいし、無線接続してもよい。また、CPU10と距離表示部23とも、有線接続であってもよいし、無線接続であってもよい。無線接続の形態としては、通信距離が10m程度の近距離無線接続が好ましく、例えば、Bluetooth等の形態がある。
また、図10に示す変形例4のように、脈波センサー16のみ固定バンド28により下肢に固定し、他のCPU10やGPS13等を手首に固定バンド29により固定するようにしてもよい。この場合も上記変形例3と同様に、CPU10と脈波センサー16とを有線接続してもよいし、無線接続してもよい。
(実施形態2)
図11は、本発明の実施形態2に係る下肢動脈閉塞症の診断装置50のブロック図である。この診断装置50は、実施形態1の運動療法用装置1のGPS13、歩行センサー15、2倍スイッチ18、痛み報知スイッチ26及び痛み解消スイッチ27が省略されたものであり、主要構成は同じであるため、以下同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分を詳細に説明する。
CPU10は、脈波センサー16で検出された脈波が、患者Aの動脈圧波形よりも平坦に近い所定形状の波形となったときにランプ19、スピーカー20及び振動器21に報知信号を出力するように構成されている。この報知信号を受けたランプ19は点灯し、また、スピーカー20は所定の音声を発し、さらに、振動器21は振動する。つまり、CPU10は、脈波センサー16で検出された脈波が動脈圧波形よりも平坦に近い所定形状の波形となったときに、そのことを周囲の者に報知するように構成されている。このCPU10が本発明の制御部を構成している。
次に、この診断装置50を使用する場合について説明する。診断装置50を、実施形態1の装置1と同様に患者Aの足首近傍に装着する。この診断装置50には、患者Aの動脈圧波形を記憶させておく。動脈圧波形は上肢の動脈から得ることができる。
そして、ON/OFFスイッチ17を押して電源を入れる。すると、脈波センサー16によって下肢の脈波が検出され、CPU10に入力される。この脈波が所定形状の波形となっていない場合には、CPU10は報知信号を出力しないので、ランプ19、スピーカー20及び振動器21は動作しない。一方、脈波が所定形状の波形となったときには、報知信号を出力し、ランプ19、スピーカー20及び振動器21が動作し、下肢が虚血状態にあることを患者A及び周囲の者に報知することができる。
このように、診断装置1を使用することで、患者Aが下肢の痛みを訴えている場合に、下肢動脈閉塞症による痛みか、神経系疾患による痛みかを判定することが可能になる。また、例えば、血液透析中に下肢の脈波を検出することにより、下肢が虚血状態になっているか否かを、患者Aが痛みを訴えなくても、判定することが可能になる。これにより、下肢動脈閉塞症を早期の段階で発見することが可能になる。
したがって、この実施形態2に係る振動装置50によれば、下肢の脈波が動脈圧波形よりも平坦に近い所定形状の波形となったときに報知することができるので、下肢動脈閉塞症を早期に、かつ、的確に診断することができ、早期治療を実現できる。
尚、実施形態2では、装置本体2に、ランプ19、スピーカー20及び振動器21の3つを設けているが、これらのうち1つ又は2つを設けてもよい。
また、実施形態1の運動療法用装置1を、実施形態2で説明した下肢動脈閉塞症の診断に使用するようにしてもよい。この場合、運動療法装置1のROM11に、実施形態2の診断装置50のプログラムを組み込んでおき、運動療法装置用のプログラムと、診断装置用のプログラムとを切り替え可能に構成するのが好ましいが、これに限られるものではない。
以上説明したように、本発明に係る下肢動脈閉塞症の運動療法用装置及び診断装置は、閉塞性動脈硬化症及び末梢循環障害の治療や診断に用いることができる。
1 下肢動脈閉塞症の運動療法用装置
2 装置本体
3 固定バンド(固定部)
10 CPU
15 歩行センサー
16 脈波センサー
19 ランプ(報知部)
20 スピーカー(報知部)
21 振動器(報知部)
23 距離表示部(残距離表示部)
24 記憶部
50 下肢動脈閉塞症の診断装置

Claims (7)

  1. 下肢動脈閉塞症の運動療法に用いられる運動療法用装置において、
    歩行中の患者の下肢に取り付けられ、歩行中又は歩行直後の患者の下肢の脈波を検出する脈波検出部と、
    患者の歩行距離を検出する歩行距離検出部と、
    上記脈波検出部及び上記歩行距離検出部が接続され、上記脈波検出部で検出された歩行中又は歩行直後の患者の脈波のピークが動脈圧波形のピークの一定以下となって該脈波が動脈圧波形よりも平坦に近い所定形状の波形となったときに、その脈波が所定形状となるまで歩行した患者の歩行距離に基づいて、運動療法用の目標歩行距離を設定する目標歩行距離設定部とを備えていることを特徴とする下肢動脈閉塞症の運動療法用装置。
  2. 請求項1に記載の下肢動脈閉塞症の運動療法用装置において、
    目標歩行距離設定部で設定された目標歩行距離を表示する表示部を備えていることを特徴とする下肢動脈閉塞症の運動療法用装置。
  3. 請求項1または2に記載の下肢動脈閉塞症の運動療法用装置において、
    患者の歩行距離が目標歩行距離設定部で設定された目標歩行距離となったか否か判定し、歩行距離が目標歩行距離となった場合に報知信号を出力するように構成され、
    目標歩行距離設定部に接続された報知部を備え、
    上記報知部に上記報知信号が入力されるようになっていることを特徴とする下肢動脈閉塞症の運動療法用装置。
  4. 請求項3に記載の下肢動脈閉塞症の運動療法用装置において、
    報知部は、スピーカー、発光部及び振動部の少なくとも1つで構成されていることを特徴とする下肢動脈閉塞症の運動療法用装置。
  5. 請求項1から4のいずれか1つに記載の下肢動脈閉塞症の運動療法用装置において、
    患者の歩行距離が目標歩行距離設定部で設定された目標歩行距離に達するまでの残距離を表示する残距離表示部を備えていることを特徴とする下肢動脈閉塞症の運動療法用装置。
  6. 請求項1から5のいずれか1つに記載の下肢動脈閉塞症の運動療法用装置において、
    脈波検出部で検出された脈波及び歩行距離検出部で検出された歩行距離を記憶する記憶部を備えていることを特徴とする下肢動脈閉塞症の運動療法用装置。
  7. 下肢動脈閉塞症の診断装置であって、
    歩行中の患者の下肢に取り付けられ、歩行中又は歩行直後の患者の下肢の脈波を検出する脈波検出部と、
    上記脈波検出部が接続され、該脈波検出部で検出された脈波が入力される制御部とを備え、
    上記制御部は、上記脈波検出部で検出された歩行中又は歩行直後の患者の脈波のピークが動脈圧波形のピークの一定以下となって該脈波が動脈圧波形よりも平坦に近い所定形状の波形となったときに報知するように構成されていることを特徴とする下肢動脈閉塞症の診断装置。
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