JP4911111B2 - 車両の制御装置 - Google Patents

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Description

この発明は、車両に要求される総駆動力に対して前輪で発生させる駆動力もしくは制動力と後輪で発生させる駆動力もしくは制動力との比率を制御することにより車両の挙動を制御する車両の制御装置に関するものである。
近年、電気自動車の一形態として、車輪(ホイール)の内部もしくはその近傍にモータを配置し、そのモータにより車輪を直接駆動する、いわゆるインホイールモータ方式の車両が開発されている。このインホイールモータ方式の車両の利点として、各車輪(駆動輪)毎に設けたモータを個別に回転制御すること、すなわち各モータを個別に力行制御もしくは回生制御することにより、各駆動輪に付与する駆動トルクもしくは制動トルクを個別に制御して、車両の駆動力および制動力を走行状態に応じて適宜に制御することができる点、また、従来のエンジンやトランスミッションなどのドライブトレーンを排除することにより、車両の室内やトランクルームなどの空間を広くできる点などが挙げられる。
そのうち、各車輪に付与する駆動トルクもしくは制動トルクを個別に制御できる点を利用して、バウンシングやピッチングなどの車両の挙動変化を抑制するようにした走行装置に関する発明が特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載された走行装置は、懸架装置のばね上における荷重変化を抑制する条件で、前輪用懸架装置のばね上における荷重と前輪用懸架装置のばね上に作用する前輪の駆動反力と車両の総駆動力との関係、および、後輪用懸架装置のばね上における荷重と後輪用懸架装置のばね上に作用する後輪の駆動反力と車両の総駆動力との関係から、前輪と後輪との間における駆動力の配分比を求め、その配分比に基づいて前輪および後輪を駆動するように構成されている。そして、車両のバウンシングを抑制する駆動力の配分比とピッチングを抑制する駆動力の配分比とを、懸架装置のばね上における荷重変化に応じて切り替えるようになっている。
特開2007−161032号公報
上記のように、特許文献1に記載されている走行装置では、車両に発生したバウンシングもしくはピッチングを抑制する車両挙動制御が実行される場合、前輪および後輪に対する駆動力の配分比が、バウンシングを抑制する場合とピッチングを抑制する場合とで変更されて選択的に設定される。また、車両がABS制御もしくはTRCの少なくとも一方が実行される状態の場合は、上記の車両挙動制御は中止されるようになっている。すなわち、バウンシングやピッチングを抑制する車両挙動制御に対してABS制御やTRCが優先して実行されるようになっている。
車両が摩擦係数の低い路面すなわちいわゆる低μ路を走行する場合、タイヤが路面をグリップする力が低下し、タイヤで滑りを起こさずに駆動力を発生させることのできる駆動力の上限であるいわゆるグリップ限界が低下する。そのため、低μ路では駆動輪の駆動力がこのグリップ限界を超えてスリップが発生し易くなり、ABS制御やTRCが実行される頻度が高くなる。したがって、特許文献1に記載されている走行装置では、車両が低μ路を走行する場合は、ABS制御やTRCが頻繁に実行されることにより、バウンシングやピッチングを抑制するための車両挙動制御が中止もしくは中断される頻度が高くなり、その結果、バウンシングやピッチングを適切に抑制することができず、車両のドライバビリティが低下してしまう場合があった。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、車両が低μ路を走行する場合であっても、バウンシングやピッチングなどの車両挙動の変動を適切に抑制することのできる車両の制御装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、少なくとも前輪と後輪とをそれぞれ独立して車体に支持するサスペンション機構と、少なくとも前記前輪と前記後輪とにそれぞれ独立して駆動力もしくは制動力を発生させる駆動力発生機構と、前記車体のピッチングもしくはバウンシングの状態に応じて、該ピッチングもしくはバウンシングを抑制するために、車両に要求される総駆動力を前記前後輪で分担して発生させる際の前記前後輪の駆動力配分を算出する駆動力配分算出手段とを備え、前記駆動力配分に基づいて前記駆動力発生機構を制御して前記前後輪に駆動力もしくは制動力を発生させる車両の制御装置において、前記車両の進行方向前方の前方路面の摩擦係数を検出する路面μ検出手段と、前記前方路面とタイヤとの間で滑りを起こさずに前記前輪に発生させることができる駆動力の上限である前輪グリップ限界および前記滑りを起こさずに前記後輪に発生させることができる駆動力の上限である後輪グリップ限界を算出するグリップ限界算出手段と、前記ピッチングを抑制するための駆動力配分と前記バウンシングを抑制するための駆動力配分との少なくともいずれか一方が、前記前輪グリップ限界内でかつ前記後輪グリップ限界内の領域であるクリップ限界領域を外れた場合に、該グリップ限界領域を外れた駆動力配分を、該グリップ限界領域内でかつ前記総駆動力の下で、該グリップ限界領域を外れた駆動力配分に最も近い駆動力配分に変更する駆動力配分変更手段とを備えていることを特徴とする制御装置である。
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記前方路面の勾配を検出する路面勾配検出手段を更に備え、前記駆動力配分変更手段が、前記路面勾配検出手段により前記前方路面が降坂路であることを検出した場合に、該降坂路の勾配に応じて前記総駆動力を低下させるとともに、前記グリップ限界領域を外れた駆動力配分を、前記グリップ限界領域内でかつ該低下させた総駆動力の下で、該グリップ限界領域を外れた駆動力配分に最も近い駆動力配分に変更する手段を含むことを特徴とする制御装置である。
また、請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記総駆動力を低下させるのに必要とする低下時間を算出する低下時間算出手段を更に備え、前記路面μ検出手段が、前記前方路面が前記滑りが生じ易くなる低μ路である場合に、該低μ路に前記前輪が到達する到達時間を算出する手段を含み、前記駆動力配分変更手段は、前記低下時間が前記到達時間よりも長い場合に、前記グリップ限界領域を外れた駆動力配分を、前記グリップ限界領域内でかつ前記総駆動力の下で、前記グリップ限界領域を外れた駆動力配分に最も近い駆動力配分に一旦変更した後に、前記総駆動力を低下させるとともに、該変更した駆動力配分を、前記グリップ限界領域内でかつ該低下させた総駆動力の下で、前記グリップ限界領域を外れた駆動力配分に最も近い駆動力配分に更に変更する手段を含むことを特徴とする制御装置である。
また、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記駆動力発生機構が、少なくとも前記前輪と前記後輪とにそれぞれ動力伝達可能に連結された電動機の回転を制御することにより、少なくとも前記前輪と前記後輪とにそれぞれ独立して駆動トルクもしくは制動トルクを付与する機構を含むことを特徴とする制御装置である。
そして、請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記電動機が、前記前後輪と共に前記サスペンション機構を介して前記車体に支持され、かつ前記前後輪にそれぞれ内蔵されるインホイールモータを含むことを特徴とする制御装置である。
請求項1の発明によれば、ピッチングやバウンシングなどの車両挙動の変動を抑制するために、前後輪においてそれぞれ独立して発生させる駆動力もしくは制動力の前後の駆動力配分、言い換えると、走行のために車両に要求される総駆動力を前輪と後輪とで分担して発生させる際の比率(もしくは分担率、分配率)を示す前後の駆動力配分が求められる。そして、その前後の駆動力配分に基づいて、前後輪で駆動力もしくは制動力を発生させることにより、車両のピッチングもしくはバウンシングの抑制制御が実行される。
その際に、この請求項1の発明では、車両が走行する前方路面の摩擦係数が検出されて、その摩擦係数に基づいて前後輪のスリップ限界が算出され、そして、ピッチングもしくはバウンシングを抑制するための駆動力配分が前後輪のスリップ限界によるスリップ限界領域から外れた場合には、総駆動力は変えられずに、スリップ限界領域外となった駆動力配分がスリップ限界領域内に入るように変更される。
すなわち、摩擦係数(路面μ)が低い路面を車両が走行する際にピッチングもしくはバウンシングの抑制制御が実行される場合には、そのピッチングもしくはバウンシングの抑制制御のための駆動力配分がスリップ限界を超えないように事前に設定される。したがって、ピッチングもしくはバウンシングの抑制制御のための駆動力配分に基づいて前後輪で駆動力を発生させる際に、その駆動力がスリップ限界を超えてしまうことが回避される。その結果、摩擦係数が低い路面を車両が走行する場合であっても、ピッチングもしくはバウンシングの抑制制御のための駆動力配分に基づいて前後輪に発生させる駆動力によるスリップの発生を回避することができる。そのため、例えばTRCなどによる操縦性の安定化制御と上記のピッチングもしくはバウンシングを抑制する制御との間で制御の干渉が生じてしまうことを回避することができ、車両のドライバビリティを低下させることなく、ピッチングおよびバウンシングを適切に抑制することができる。
また、請求項2の発明によれば、ピッチングもしくはバウンシングを抑制するための駆動力配分がスリップ限界領域から外れた場合、車両が走行する前方路面の路面勾配が更に検出され、その前方路面が下り坂であった場合には、その下り坂の勾配に応じて、車両に要求される総駆動力が低下させられる。そして、その低下させられた総駆動力に基づいてスリップ限界領域外となった駆動力配分がスリップ限界領域内になるように変更される。そのため、摩擦係数が低く、かつ降坂路を車両が走行する場合であっても、車両のドライバビリティを低下させることなく、ピッチングおよびバウンシングを適切に抑制することができる。
また、請求項3の発明によれば、車両が走行する前方路面が低μ路であって、ピッチングもしくはバウンシングを抑制するための駆動力配分がスリップ限界領域から外れ、かつその前方路面が下り坂であった場合、車両がその前方の低μ路に到達するまでの到達時間と、前方の下り坂の勾配に応じて総駆動力を低下させるのに要する低下時間とが比較される。そして、低下時間の方が到達時間よりも長い場合には、先ず、総駆動力を低下させる前に(すなわち総駆動力は変えられずに)、スリップ限界領域外となった駆動力配分がスリップ限界領域内になるように変更され、その後、前方の下り坂の勾配に応じて総駆動力が低下させられて、その低下させられた総駆動力に基づいてスリップ限界領域外となった駆動力配分がスリップ限界領域内になるように変更される。そのため、総駆動力が低下される前に車両が低μ路に到達することによりスリップが発生してしまうことを回避でき、低μ路でかつ降坂路を車両が走行する場合であっても、車両のドライバビリティを低下させることなく、ピッチングおよびバウンシングを適切に抑制することができる。
また、請求項4の発明によれば、前後輪にそれぞれ独立して動力伝達可能な電動機が設けられる。そのため、その電動機の回転を制御することにより、すなわちその電動機を力行制御もしくは回生制御することにより、前後輪にそれぞれ駆動トルクもしくは制動トルクを付与し、その駆動トルクもしくは制動トルクに応じた駆動力もしくは制動力を前後輪にそれぞれ発生させることができる。その結果、車両の駆動力もしくは制動力を容易に前後輪でそれぞれ独立して発生させることができる。
そして、請求項5の発明によれば、前後輪にそれぞれ独立して駆動トルクもしくは制動トルクを付与する電動機として、インホイールモータが搭載される。そのため、車両の駆動力もしくは制動力を一層容易に前後輪でそれぞれ独立して発生させることができる。
つぎに、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。まず、この発明で対象とする車両の構成および制御系統を図1に示す。この図1に示す車両Veは、それぞれ、タイヤ1a,2aとホイール1b,2bとから構成される左右の前輪1,2、および、タイヤ3a,4aとホイール3b,4bとから構成される左右の後輪3,4を有している。そして、前輪1,2は、互いにもしくはそれぞれ独立してサスペンション機構5,6を介して車両Veの車体Boに支持されていて、後輪3,4は、互いにもしくはそれぞれ独立してサスペンション機構7,8を介して車両Veの車体Boに支持されている。
各サスペンション機構5,〜8は、例えば、ショックアブソーバを内蔵したストラットおよびコイルスプリングおよびサスペンションアームなどから構成されるストラット形サスペンションや、コイルスプリングおよびショックアブソーバおよび上下のサスペンションアームなどから構成されるウィッシュボーン形サスペンションなどの公知のサスペンションであって、それら各種サスペンションが適宜に選択されて設置されている。
前輪1,2のホイール1b,2b内部には電動機9,10が、また後輪3,4のホイール3b,4b内部には電動機11,12が、それぞれ組み込まれていて、それぞれ前輪1,2および後輪3,4に動力伝達可能に連結されている。すなわち、それら前輪1,2の電動機9,10および後輪3,4の電動機11,12は、いわゆるインホイールモータ9,〜12であり、前輪1,2および後輪3,4と共に車両Veのばね下に配置されている。そして、各インホイールモータ9,〜12の回転をそれぞれ独立して制御することにより、前輪1,2および後輪3,4に発生させる駆動力および制動力をそれぞれ独立して制御することができるようになっている。
これらの各インホイールモータ9,〜12は、例えば交流同期モータにより構成されていて、インバータ13を介してバッテリやキャパシタなどの蓄電装置14に接続されている。したがって、各インホイールモータ9,〜12の駆動時には、蓄電装置14の直流電力がインバータ13によって交流電力に変換され、その交流電力が各インホイールモータ9,〜12に供給されることにより各インホイールモータ9,〜12が力行されて、前輪1,2および後輪3,4に駆動トルクが付与される。また、各インホイールモータ9,〜12は前輪1,2および後輪3,4の回転エネルギを利用して回生制御することも可能である。すなわち、各インホイールモータ9,〜12の回生・発電時には、前輪1,2および後輪3,4の回転(運動)エネルギが各インホイールモータ9,〜12によって電気エネルギに変換され、その際に生じる電力がインバータ13を介して蓄電装置14に蓄電される。このとき、前輪1,2および後輪3,4には回生・発電力に基づく制動トルクが付与される。
なお、蓄電装置14には、例えばエンジン(図示せず)などにより駆動されて電力を発生し、あるいは燃料電池(図示せず)などにより電力を発生する発電機30が、インバータ13を介して接続されている。したがって、発電機30の発電電力によって充電された蓄電装置14からインバータ13を介して各インホイールモータ9,〜12に電力を供することにより、それら各インホイールモータ9,〜12を力行することが可能になっていた、あるいは、発電機30の発電電力をインバータ13を介して各インホイールモータ9,〜12に直接供給することにより、それら各インホイールモータ9,〜12を力行することも可能になっている。
また、各車輪1,〜4と、それらに対応する各インホイールモータ9,〜12との間には、それぞれ、ブレーキ機構15,16,17,18が設けられている。各ブレーキ機構15,〜18は、例えば、ディスクブレーキあるいはドラムブレーキなどの公知の制動装置であって、それら各種の制動装置が適宜に選択されて設置されている。そして、これらのブレーキ機構15,〜18は、例えば、マスタシリンダ(図示せず)から圧送される油圧により、各車輪1,〜4に制動力を生じさせるブレーキキャリパのピストン(図示せず)あるいはブレーキシュー(図示せず)などを動作させるブレーキアクチュエータ19に接続されている。
上記のインバータ13およびブレーキアクチュエータ19は、各インホイールモータ9,〜12の回転状態、あるいはブレーキアクチュエータ19の動作状態などを制御する電子制御装置(ECU)20にそれぞれ接続されている。
この電子制御装置20には、例えば、アクセルペダルの踏み込み量(もしくは角度、圧力)などから運転者のアクセル操作量を検出するアクセルセンサ21、ブレーキペダルの踏み込み量(もしくは角度、圧力)などから運転者のブレーキ操作量を検出するブレーキセンサ22、車両Veの前後方向における加速度を検出する前後加速度センサ23、車体Boの上下方向におけるばね上変位加速度を検出する上下加速度センサ24、カメラ等を使用して進行方向前方の路面の摩擦係数を検出する路面センサ25、各車輪1,〜4の回転速度を検出する車輪速センサ26、各サスペンション機構5,〜8のストローク量を検出するストロークセンサ27、蓄電装置14の充電状態(充電量、温度等)を検出するバッテリセンサ28、あるいはナビゲーションシステム29などの各種センサ、装置類からの信号、および、インバータ13からの信号などが入力されるように構成されている。
このうち、アクセルセンサ21およびブレーキセンサ22から入力される信号に基づいて、運転者のアクセル操作量およびブレーキ操作量に応じた要求駆動力もしくは要求制動力、すなわち車両Veを走行もしくは制動させるための総駆動力が演算されて求められる。また、インバータ13から入力される信号に基づいて、各インホイールモータ9,〜12の出力トルク(モータトルク)がそれぞれ演算されて求められる。例えば、インバータ13からの入力信号により、各インホイールモータ9,〜12が力行制御されていることを検出した場合に、その際に各インホイールモータ9,〜12へ供給される電力量あるいは電流値を検出し、それに基づいて各インホイールモータ9,〜12のモータトルクをそれぞれ算出することができる。
また、上下加速度センサ24およびストロークセンサ27から入力される信号等を基に、車体Boに発生するバウンシングおよびピッチングを検出することができる。また、前後加速度センサ23および車輪速センサ26から入力される信号等を基に、車両Veの車速を検出することができ、その車速の検出値と車輪速センサ26による各車輪1,〜4の回転速度の検出値を基に、各車輪1,〜4のタイヤ1a,〜4aと路面との間で発生するスリップ(滑り)を検出することができる。なお、この発明における“スリップ”もしくは“滑り”とは、車両Veの走行安定性に影響を及ぼす程度のマクロ的なスリップ(滑り)のことを指している。例えばTRCやABSが作動する程度のスリップ(滑り)のことである。したがって、車両Veが安定走行している状態で各車輪1,〜4のタイヤ1a,〜4aと路面との間で常に発生している微細な(ミクロ的な)スリップ(滑り)は含まない。
また、路面センサ25から入力される信号、あるいはナビゲーションシステム29から入力される信号等を基に、車両Veの進行方向前方の路面の摩擦係数を推定して検出することができる。例えば、進行方向前方の路面が、路面摩擦係数が低くスリップが生じ易くなるいわゆる低μ路であるか否かを判定して検出することができる。また、前後加速度センサ23および車輪速センサ26から入力される信号、あるいはナビゲーションシステム29から入力される信号等を基に、車両Veの進行方向前方の路面の勾配(傾斜)を推定して検出することができる。例えば、前後加速度センサ23により検出した車体Boの前後加速度と、車輪速センサ26による各車輪1,〜4の回転速度の検出値を基に算出した各車輪1,〜4の加速度との差から、進行方向前方の路面の勾配を演算して求めることができる。さらに、上記の車輪速センサ26、路面センサ25、ナビゲーションシステム29などから得られる検出値や情報から、走行中の車両Veがその進行方向前方の所定の位置に到達するまでの時間を演算して求めることができる。例えば、走行中の車両Veの前輪1,2が、進行方向前方の低μ路に到達するまでの到達時間を算出することができる。
また、バッテリセンサ28から入力される信号、あるいはインバータ13からの入力信号等を基に、例えば充電量や温度などの蓄電装置14の充電状態を検出することができ、その蓄電装置14の充電状態の検出値を基に、各インホイールモータ9,〜12を回転制御する際の応答性、具体的には応答時間を推定して検出することができる。例えば、車両Veの総駆動力を低下させる場合、各インホイールモータ9,〜12の出力トルクを低下する制御が行われるが、その際に各インホイールモータ9,〜12の消費電力が急激に低下する。このとき各インホイールモータ9,〜12へ電力を供給していた発電機30の余剰電力がインバータ13を介して蓄電装置14に蓄電される。このとき、例えば蓄電装置14の充電量が飽和状態であったり、あるいは蓄電装置14の温度が低く蓄電装置14の性能が低下している状態であったりした場合は、発電電力を蓄電装置14に蓄電するのに時間がかかり、回生制御の応答時間が長くなる。すなわち、各インホイールモータ9,〜12を回転制御する際の応答性は、蓄電装置14の充電状態に影響を受けて変化することになる。したがって、蓄電装置14の充電状態を検出することにより、各インホイールモータ9,〜12の制御の応答性、言い換えると、各インホイールモータ9,〜12の総駆動力を低下させる際の応答時間を推定して求めることができる。
一方、電子制御装置20からは、インバータ13を介して各インホイールモータ9,〜12の回転をそれぞれ制御する信号、ブレーキアクチュエータ19を介して各ブレーキ機構15,〜18の動作をそれぞれ制御する信号が出力されるように構成されている。
したがって、上記のアクセルセンサ21およびブレーキセンサ22からの信号等に基づいて車両Veに要求される総駆動力が求められ、その総駆動力を発生させるように、各インホイールモータ9,〜12の力行・回生状態、およびブレーキアクチュエータ19すなわち各ブレーキ機構15,〜18の動作状態が制御されるようになっている。
また、上記の上下加速度センサ24あるいはストロークセンサ27からの信号等に基づいて車両Veのピッチングおよびバウンシングが検出され、そのピッチングもしくはバウンシングの状態に応じて、具体的には、車両Veに発生したピッチングもしくはバウンシングを抑制するように、車両Veに要求される総駆動力に対して前輪1,2で発生させる駆動力(もしくは制動力)と、後輪3,4で発生させる駆動力(もしくは制動力)との比率である駆動力配分が求められる。そして、その駆動力配分に基づいて、各インホイールモータ9,〜12の力行・回生状態、および各ブレーキ機構15,〜18の動作状態が制御されるようになっている。
さらに、上記の車輪速センサ26および前後加速度センサ23からの信号等に基づいて各車輪1,〜4の制動時におけるロック、あるいは駆動時におけるスリップが検出され、その各車輪1,〜4のロック状態もしくはスリップ状態に応じて、ABS(Antilock Braking System)制御もしくはTRC(Traction Control System)制御などの、操縦安定化制御が実行される。なお、これらABS制御およびTRC制御などの操縦安定化制御は、走行時の危険回避のための制御であり、安全性の観点から上記のピッチングもしくはバウンシングを抑制する制御に対して優先して実行されるようになっている。
前述したように、車両Veが低μ路を走行する場合は、各車輪1,〜4のタイヤ1a,〜4aが路面をグリップする力が低下するため、各車輪1,〜4で発生させた駆動力に対して各タイヤ1a,〜4aの路面(低μ路)に対するグリップ力が不足して、各車輪1,〜4が空転するスリップが生じ易くなる。車両VeがTRCを搭載している場合、このようなスリップが発生すると、TRCによる制御が優先的に実行されて、ピッチングおよびバウンシングを抑制する制御が中止もしくは中断されて、ピッチングやバウンシングを適切に抑制することができなくなり、車両Veのドライバビリティが低下する可能性がある。そこで、この発明の車両Veの制御装置は、車両Veが低μ路を走行する場合であっても、TRC制御などの操縦安定化制御との制御の干渉を回避して、バウンシングおよびピッチングを適切に抑制することができるように、以下の制御を実行するように構成されている。
(第1制御例)
図3は、この発明における第1制御例を説明するためのフローチャートであって、このフローチャートで示されるルーチンは、所定の短時間毎に繰り返し実行される。また、この制御例は、車両Veにピッチングもしくはバウンシングが発生した際に、そのピッチングもしくはバウンシングを抑制する制御を対象としていて、前述の上下加速度センサ23あるいはストロークセンサ24により車両Veのピッチングもしくはバウンシングが検出され、その検出されたピッチングもしくはバウンシングが、車両Veのドライバビリティに影響する可能性があり、抑制する必要があると判断された場合にこの制御が実行される。
図3において、先ず、車両Veが走行している前方の路面(前方路面)の摩擦係数(路面μ)が検出される(ステップS1)。例えば、カメラなどを使用した路面センサ25により前方路面の表面状態の映像データが取り込まれ、そのデータを分析・解析することにより前方路面の摩擦係数を推定して求めることができる。あるいは、ナビゲーションシステム29による道路状況に関するデータを基に前方路面の摩擦係数を推定して求めることもできる。なお前方路面は、車両Veが現在走行している位置から所定距離前方に位置する路面であり、ここでの所定距離は、車両Veの車速や制御の応答性などが考慮されて適宜に設定される。
続いて、上記のステップS1で求められた前方路面の摩擦係数を基に、前輪1,2の前輪グリップ限界、および後輪3,4の後輪グリップ限界が求められる(ステップS2)。言い換えると、前輪1,2および後輪3,4に対するグリップ限界の駆動力配分、すなわち前輪グリップ限界の駆動力配分と後輪グリップ限界の駆動力配分とが算出される。
具体的には、例えば、前述の図2に示すように、車両VeのホイールベースをL、前輪1,2の車軸に作用するばね上フロント荷重をWf、後輪3,4の車軸に作用するばね上リア荷重をWr、車両Veの重心Cgの高さ(すなわち車両Veの高さ方向における重心Cgの位置)をh、推定した前方路面の摩擦係数をμ、重力加速度をg、そして、車両Veの総駆動力(すなわち要求駆動力)Fに対して前輪1,2で発生させる駆動力をFf、総駆動力Fに対して後輪3,4で発生させる駆動力をFrとすると、前輪グリップ限界の駆動力配分および後輪グリップ限界の駆動力配分は、それぞれ、次の関係式で表すことができる。
Fr=−{(L+μ×h)/(μ×h)}×Ff+(L/h)×Wf×g ・・・・(1)
Fr={(μ×h)/(L−μ×h)}×Ff
+{(μ×L)/(L−μ×h)}×Wr×g ・・・・(2)
そして、上記の(1),(2)式で表される関係を、前輪1,2で発生させる駆動力Ffを横軸に、後輪3,4で発生させる駆動力Frを縦軸に取った直交座標上で表すと、図4において、それぞれ、前輪グリップ限界の駆動力配分を直線l1、後輪グリップ限界の駆動力配分を直線l2として示すことができる。
続いて、従来のピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御における、車両の総駆動力と、その総駆動力を前輪1,2に分担させて発生させる駆動力と、総駆動力を後輪3,4に分担させて発生させる駆動力とが算出される(ステップS3)。これは、前述したように、先ず、運転者のアクセル操作およびブレーキ操作に基づいて、車両Veを走行もしくは制動させるための総駆動力が求められ、その総駆動力を前輪1,2と後輪3,4とで分担して発生させる際に、言い換えると、その総駆動力の下で、車両Veに発生したピッチングもしくはバウンシングを抑制するように、前輪1,2と後輪3,4,とで駆動力を分担する比率すなわち前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分が求められる。そして、その駆動力配分に基づいて、前輪1,2に発生させる駆動力と、後輪3,4に発生させる駆動力とが求められる。
このうち、ピッチング抑制制御の際に各車輪1,〜4で発生させる駆動力の算出方法を説明すると、例えば、前述の図2に示すように、車両VeのホイールベースLに対して車両Veの前後方向(図2の左右方向)における車両Veの重心Cgと前輪1,2の車軸との間の距離をLf、ホイールベースLに対して車両Veの重心Cgと後輪3,4の車軸との間の距離をLr、前輪1,2のサスペンション機構5,6の瞬間回転角をθf、後輪3,4のサスペンション機構7,8の瞬間回転角をθrとし、車両Veの総駆動力(すなわち要求駆動力)Fに対して前輪1,2で発生させる駆動力をFf、総駆動力Fに対して後輪3,4で発生させる駆動力をFr、前輪1,2で発生させる駆動力Ffの車両Veの高さ方向(図2の上下方向)の分力をFf1、後輪3,4で発生させる駆動力Frの車両Veの高さ方向の分力をFr1、前輪1,2の車軸に作用するばね上フロント荷重をWf、後輪3,4の車軸に作用するばね上リア荷重をWr、前輪1,2の車軸に作用するばね上フロント側静荷重をWf0、後輪3,4の車軸に作用するばね上リア側静荷重をWr0、車両Veの重心Cgの高さ(すなわち車両Veの高さ方向における重心Cgの位置)をh、車体Boのピッチング方向における角加速度をP"、そして車体Boのピッチング方向における慣性モーメントをIpとすると、以下の(3)ないし(5)式の関係が成立する。
Ip×P"=Wr×Lr−Wf×Lf ・・・・(3)
Wf=Wf0−h×F/L+Ff1 ・・・・(4)
Wr=Wr0+h×F/L−Fr1 ・・・・(5)
ここで、車体Boのピッチング方向における角加速度P"が0となるように、すなわち、「Wr×Lr−Wf×Lf=0」として、駆動力Ffと駆動力Frとの関係について解くと、
Fr={(h−Lf×tanθf)/(Lr×tanθr−h)}×Ff ・・・・(6)
で表される関係が成立する。
上記のようにして得られた(6)式の関係を、前述の図4に示す直交座標上で表すと、図4において直線l3として示すことができる。そして、この直線l3と、図4の直交座標上で車両Veの総駆動力F(=Ff+Fr)を表した直線l0との交点Aから、車両Veに発生したピッチングを抑制するための駆動力配分が求められ、その駆動力配分に基づいて、ピッチングを抑制するために前輪1,2で発生させる駆動力Ffと後輪3,4で発生させる駆動力Frとが求められる。すなわち、図4の直交座標における交点Aの横軸成分が駆動力Ff、縦軸成分が駆動力Frとしてそれぞれ求められる。
一方、バウンシング抑制制御の際に各車輪1,〜4で発生させる駆動力の算出方法を説明すると、上記のように、車両VeのホイールベースをL、前輪1,2のサスペンション機構5,6の瞬間回転角をθf、後輪3,4のサスペンション機構7,8の瞬間回転角をθrとし、車両Veの総駆動力(要求駆動力)Fに対して前輪1,2で発生させる駆動力をFf、総駆動力Fに対して後輪3,4で発生させる駆動力をFr、前輪1,2で発生させる駆動力Ffの車両Veの高さ方向の分力をFf1、後輪3,4で発生させる駆動力Frの車両Veの高さ方向の分力をFr1、前輪1,2の車軸に作用するばね上フロント荷重をWf、後輪3,4の車軸に作用するばね上リア荷重をWr、前輪1,2の車軸に作用するばね上フロント側静荷重をWf0、後輪3,4の車軸に作用するばね上リア側静荷重をWr0、車両Veの重心Cgの高さをhとすると、以下の(7)ないし(10)式の関係が成立する。
Wf=Wf0−h×F/L+Ff1 ・・・・(7)
Wr=Wr0+h×F/L−Fr1 ・・・・(8)
Ff1=Ff×tanθf ・・・・(9)
Fr1=Fr×tanθr ・・・・(10)
ここで、車体Boのバウンシング方向における荷重変動が0となるように、すなわち、「Wf+Wr=Wf0+Wr0」として、駆動力Ffと駆動力Frとの関係について解くと、
Fr=(tanθf/tanθr)×Ff ・・・・(11)
で表される関係が成立する。
上記のようにして得られた(11)式の関係を、前述の図4の直交座標上に示すと、図4において直線l4として表すことができる。そして、この直線l4、図4の直交座標上で車両Veの総駆動力F(=Ff+Fr)を表した直線l0との交点Bから、車両Veに発生したバウンシングを抑制するための駆動力配分が求められ、その駆動力配分に基づいて、バウンシングを抑制するために前輪1,2で発生させる駆動力Ffと後輪3,4で発生させる駆動力Frとが求められる。すなわち、図4の直交座標における交点Bの横軸成分が駆動力Ff、縦軸成分が駆動力Frとしてそれぞれ求められる。
図3のフローチャートに戻り、上記のようにして、従来のピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御において前輪1,2に発生させる駆動力Ffと、後輪3,4に発生させる駆動力Frとが求められると、それら駆動力Ff,Frが、それぞれ、前述のステップS2で求められたグリップ限界未満であるか否か、言い換えると、ピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分が、ステップS2で求められた前輪グリップ限界の駆動力配分と後輪グリップ限界の駆動力配分とによるグリップ限界領域内の値であるか否かが判断される(ステップS4)。グリップ限界領域は、図4の直交座標上では、前輪グリップ限界の駆動力配分すなわち直線l1と、後輪グリップ限界の駆動力配分すなわち直線l2と、縦軸および横軸とで囲まれた領域となる。
図4に示した状態のように、ピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分がグリップ限界領域内の値であることにより、このステップS4で肯定的に判断された場合は、ステップS5へ進み、ここでは、上記のようにして求められた従来のピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分で、各車輪1,〜4で駆動力が発生させられる。言い換えると、上記のようにして求められた従来のピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分による駆動力を発生させるように、各インホイールモータ9,〜12が力行制御される。
すなわち、ステップS4で肯定された場合は、ピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分がグリップ限界領域内にあることにより、ピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御が実行されることでいずれかの駆動輪で発生させる駆動力がグリップ限界を超えてその駆動輪でスリップが生じることはないと判断できる。したがって、この発明における制御は実行されずに、従来通りのピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御が実行される。
これに対して、例えば、図5の直交座標上の交点A’で示されるピッチング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分のように、ピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分がグリップ限界領域外の値であることにより、ステップS4で否定的に判断された場合には、ステップS6へ進み、前輪1,2と後輪3,4とが共にグリップ限界となる駆動力配分が求められる。
このステップS6における前輪1,2と後輪3,4とが共にグリップ限界となる駆動力配分は、具体的には、前述の(1),(2)式が同時に成立する駆動力Ff,Frについて解くことにより算出することができる。すなわち、この場合の解としての駆動力配分は、前述の図4に示す直交座標上で、前輪グリップ限界の駆動力配分を表す直線l1と後輪グリップ限界の駆動力配分を表す直線l2との交点Pとして示されることになり、その交点Pの横軸成分が駆動力Ff、縦軸成分が駆動力Frとしてそれぞれ求められる。そして、この場合の駆動力Ff,Frは、車両Veの重量をWとすると、それぞれ、
Ff=μ×{Wf×g−(μ×h/L)×W×g} ・・・・(12)
Fr=μ×{Wr×g+(μ×h/L)×W×g} ・・・・(13)
として表すことができる。
続いて、上記で求めたグリップ限界領域内に、総駆動力Fの下での、ピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分が存在するか否かが判断される(ステップS7)。これは、上記の(12),(13)式で表される駆動力Ff,Frの和と総駆動力Fとを比較することにより判断できる。すなわち、(12),(13)式で表される駆動力Ff,Frの和が総駆動力Fよりも大きければ、グリップ限界領域内に、総駆動力Fの下での、ピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分が存在すると判断することができる。
したがって、(12),(13)式で表される駆動力Ff,Frの和が総駆動力Fよりも小さいことにより、このステップS7で否定的に判断された場合は、前述のステップS4で肯定的に判断された場合と同様に、ステップS5へ進み、ここでは、従来のピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分で、各車輪1,〜4で駆動力が発生させられる。すなわち、この発明における制御は実行されずに、従来通りのピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御が実行される。
これに対して、(12),(13)式で表される駆動力Ff,Frの和が総駆動力Fよりも大きいこと、すなわち、グリップ限界領域内に、総駆動力Fの下での、ピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分が存在することにより、ステップS7で肯定的に判断された場合には、ステップS8へ進み、車両Veが走行している路面(前方路面も含めて)の路面勾配が検出され、さらに、その検出した路面勾配を基に、走行している路面が登坂路であるか否か、すなわち車両Veが登坂走行状態であるか否かが判断される(ステップS9)。
このステップS9における登坂走行状態とは、傾斜が無い平坦路を走行している状態も含んでおり、このステップS9では、言い換えると、走行している路面が降坂路であるか否か、すなわち車両Veが降坂走行状態であるか否かが判断される。なお、登坂走行状態か降坂走行状態かの判断は、例えば、前述した前後加速度センサ23および車輪速センサ26の検出値から車体Boの車体加速度および各車輪1,〜4の車輪加速度を求め、それら車体加速度と車輪加速度との差に基づいて判断することができる。あるいは、ナビゲーションシステム29から得られる走行路面の路面状況に関する情報を基に判断することもできる。
車両Veが登坂走行状態であることにより、このステップS9で肯定的に判断された場合は、ステップS10へ進み、登坂走行時、言い換えると、降坂走行状態ではない通常の走行時の、グリップ限界領域内でのピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分が求められる。
図5の直交座標上で示すように、例えば、前方路面の摩擦係数が低く、すなわち前方路面がいわゆる低μ路になると、前輪1,2および後輪3,4のグリップ限界もそれぞれ低くなる。すなわち、低μ路では、前述の図4の直交座標上で直線l1および直線l2で表される前輪1,2および後輪3,4のグリップ限界に対する図5の直交座標上で直線l1'および直線l2'で表される前輪1,2および後輪3,4のグリップ限界のように、グリップ限界の値が低下する。そのため、上述したように、図5の直交座標上の交点A’で示されるピッチング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分のように、ピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分がグリップ限界領域外の値となる場合がある。その場合に、このステップS10では、グリップ限界領域を外れた駆動力配分が、総駆動力Fの下で、かつグリップ限界領域内でそのグリップ限界領域を外れた駆動力配分に最も近い駆動力配分に変更される。
具体的には、図5の直交座標上で、交点A’で表されるグリップ限界領域を外れた駆動力配分が、グリップ限界領域の境界(この例では、前輪グリップ限界を示す直線l1')と総駆動力Fを示す直線l0との交点Cで表されるグリップ限界領域内の駆動力配分に変更される。すなわち、グリップ限界領域を外れた駆動力配分(交点A’)が、総駆動力Fの下で、かつグリップ限界領域内で、なおかつそのグリップ限界領域を外れた駆動力配分(交点A’)に最も近い駆動力配分(交点C)に変更される。
登坂走行時のグリップ限界領域内でのピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分が求められると、ステップS5へ進み、ここでは、上記のように変更して求められた、すなわち図5の直交座標上で交点Cで表されるグリップ限界領域内の駆動力配分で、各車輪1,〜4で駆動力が発生させられる。すなわち、上記のようにして求められたこの発明のピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分による駆動力を発生させるように、各インホイールモータ9,〜12が力行制御される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
これに対して、車両Veが降坂走行状態であることにより、ステップS9で否定的に判断された場合には、ステップS11へ進み、降坂走行時における車両Veの総駆動力F’が算出される。車両Veが降坂路を走行する場合には、重力による車両Veを降坂させる方向(すなわち車両Veの進行方向)に力が作用するため、当初に求められた総駆動力Fからその重力による力に相当する分を差し引いた総駆動力F’が、この制御における新たな総駆動力として設定される。したがって、この総駆動力F’と前輪1,2および後輪3,4で発生させる駆動力Ff,Frとの関係は、降坂路の路面勾配をφとすると、
F’=F−k×W×g×sinφ=Ff+Fr ・・・・(14)
として表すことができる。なお、上記の関係式におけるkは、車両Veの構成や制御内容に基づいて、設計上あるいは実験等により予め定められた所定の係数である。
続いて、降坂走行時の、グリップ限界領域内でのピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分が求められる(ステップS12)。すなわち、車両Veが降坂路を走行していることにより、上記のように低下させられた総駆動力F’の下で、かつグリップ限界領域内でのピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分が求められる。
具体的には、図6の直交座標上で、交点A’で表されるグリップ限界領域を外れた駆動力配分が、グリップ限界領域の境界(この例では、前輪グリップ限界を示す直線l1')と、低下させられた総駆動力F’を示す直線l0'との交点Dで表されるグリップ限界領域内の駆動力配分に変更される。すなわち、グリップ限界領域を外れた駆動力配分(交点A’)が、低下させられた総駆動力F’の下で、かつグリップ限界領域内で、なおかつそのグリップ限界領域を外れた駆動力配分(交点A’)に最も近い駆動力配分(交点D)に変更される。
降坂走行時のグリップ限界領域内でのピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分が求められると、ステップS5へ進み、ここでは、上記のように変更して求められた、すなわち図6の直交座標上で交点Dで表されるグリップ限界領域内の駆動力配分で、各車輪1,〜4で駆動力が発生させられる。すなわち、上記のようにして求められたこの発明のピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分による駆動力を発生させるように、各インホイールモータ9,〜12が力行制御される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
(第2制御例)
図7は、この発明における第2制御例を説明するためのフローチャートであって、前述の第1制御例と同様、このフローチャートで示されるルーチンは、所定の短時間毎に繰り返し実行される。この第2制御例は、前述の第1制御例で示した車両Veの前方路面が低μ路でかつ降坂路である場合のピッチングもしくはバウンシングの抑制制御を実行する際に、制御の応答性、特に総駆動力Fを低下させる際の制御応答性を考慮して、この発明における車両挙動制御を適切に実行するようにした制御例である。したがって、この第2制御例は、前述の第1制御例と同様、車両Veにピッチングもしくはバウンシングが発生した際に、そのピッチングもしくはバウンシングを抑制する制御を対象としていて、さらに、車両Veが走行している前方路面が、低μ路でありかつ降坂路であることが検出された場合が制御の前提となっている。
図7において、先ず、前述の第1制御例において、前方路面が低μ路でありかつ降坂路である場合の、グリップ限界領域内でのピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分が求められる(ステップS21)。すなわち、前述の図3のフローチャートで示した第1制御例におけるステップS12の制御が実行される。
続いて、蓄電装置14の充電状態が検出される(ステップS22)。例えばバッテリセンサ28による検出値あるいはインバータ13からの入力信号等を基に、蓄電装置14の充電量や温度などの充電状況・充電環境に関する情報が検出される。そして、その検出された蓄電装置14の充電状態に関するデータに基づいて、現在、蓄電装置14で蓄電すること、すなわち蓄電装置14を充電することが可能か否かが判断される(ステップS23)。より具体的には、各インホイールモータ9,〜12の回転制御の応答性に影響を与えることなく蓄電装置14を充電することが可能か否かが判断される。
前述したように、蓄電装置14の充電量が飽和状態であったり、あるいは蓄電装置14が低温環境の下にありその性能が低下している状態である場合は、所定の電力を蓄電装置14に蓄電する時間が長くなったり、あるいは蓄電装置14に蓄電すること自体ができなくなってしまう場合がある。このことに着目して、このステップS22,S23では、蓄電装置14の充電状態を検出することにより、各インホイールモータ9,〜12の回転制御、特に回生時の制御の応答性への影響を判断するようになっている。
蓄電装置14の充電状態の検出結果から、各インホイールモータ9,〜12の回転制御の応答性に影響を与えずに蓄電装置14を充電することが可能と判断したことにより、このステップS23で肯定的に判断された場合は、この第2制御例による、総駆動力Fを低下させる際の制御の応答性低下を考慮した制御を実行する必要はないので、ステップS24へ進み、前述の第1制御例で求められた、前方路面が低μ路でありかつ降坂路である場合の、グリップ限界領域内でのピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分で、各車輪1,〜4で駆動力が発生させられる。すなわち、第1制御例で求められたピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分による駆動力を発生させるように、各インホイールモータ9,〜12が力行制御される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
これに対して、蓄電装置14の充電状態の検出結果から、各インホイールモータ9,〜12の回転制御の応答性に影響を与えずに蓄電装置14を充電することが不可能と判断したことにより、ステップS23で否定的に判断された場合には、ステップS25へ進み、総駆動力Fを低下させるのに要する時間T1が算出される。ステップS23で、各インホイールモータ9,〜12の回転制御の応答性に影響を与えずに蓄電装置14を充電することが不可能と判断された場合は、現在の蓄電装置14の充電状態の下では、通常の状態と比較して蓄電装置14で蓄電する際に要する時間が長くなっていて、各インホイールモータ9,〜12の総駆動力Fを低下させるのに要する時間T1も長くなる。したがって、このステップS25では、上記のようにして検出・判断された蓄電装置14の充電状態に基づいて、総駆動力Fを低下させるのに要する時間T1、すなわち、前述の第1制御例で通常時における車両Veの総駆動力Fを降坂走行時における車両Veの総駆動力F’に低下させる際の低下時間T1が推定されて求められる。
続いて、走行中の車両Veが前方路面すなわち前方の低μ路に到達するのに要する時間T2、言い換えると、現時点から車両Veが前方の低μ路に到達するまでの到達時間T2が推定されて求められる(ステップS26)。これは、前述したように、例えば、車輪速センサ26や路面センサ25あるいはナビゲーションシステム29などから得られる車速や前方路面の状況に関するデータに基づいて算出される。
そして、上記のようにして求められた低下時間T1と到達時間T2とが比較されて、低下時間T1が到達時間T2よりも長いか否かが判断される(ステップS27)。すなわち、前述の第1制御例で車両Veの総駆動力Fを総駆動力F’に低下させる際に、その低下が完了する時刻が、車両Veが前方の低μ路に到達する時刻よりも遅いか否かが判断される。
低下時間T1が到達時間T2以下であることにより、このステップS27で否定的に判断された場合は、車両Veが前方の低μ路に到達する前に、車両Veの総駆動力Fの総駆動力F’への低下を完了させることができる。したがって、この第2制御例による、総駆動力Fを低下させる際の制御の応答性低下を考慮した制御を実行する必要はないので、ステップS24へ進み、前述のステップS23で肯定的に判断された場合と同様に、第1制御例で求められたピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分による駆動力を発生させるように、各インホイールモータ9,〜12が力行制御される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
これに対して、低下時間T1が到達時間T2よりも長いことにより、ステップS27で肯定的に判断された場合には、ステップS28へ進み、先ず、グリップ限界領域内でのピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分が求められる。上記のステップS21で算出されたピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分が、依然グリップ限界領域内であれば、そのグリップ限界領域内での駆動力配分が維持され、ステップS21で算出されたピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分が、その後グリップ限界領域を外れていたならば、そのグリップ限界領域を外れた駆動力配分が、先ず、グリップ限界領域内の値となるように変更される。すなわち、グリップ限界領域を外れた駆動力配分が、総駆動力Fが低下させられる前に(すなわち総駆動力Fの下で)、かつグリップ限界領域内でそのグリップ限界領域を外れた駆動力配分に最も近い駆動力配分に変更される。
そして、上記のステップS28で変更されたグリップ限界領域内の駆動力配分で駆動力を発生させるように、各インホイールモータ9,〜12への力行制御が開始され(ステップS29)、ついで、その変更されたグリップ限界領域内の駆動力配分での前輪1,2および後輪3,4に対する駆動力の出力が完了したか否かが判断される(ステップS30)。
変更されたグリップ限界領域内の駆動力配分での前輪1,2および後輪3,4に対する駆動力の出力が未だ完了していないことにより、このステップS30で否定的に判断された場合は、ステップS29に戻り、従前の制御が繰り返される。すなわち、変更されたグリップ限界領域内の駆動力配分での前輪1,2および後輪3,4に対する駆動力の出力が完了するまで、言い換えると、グリップ限界領域内への駆動力配分の変更が完了するまで、上記のステップS29およびステップS30の制御が繰り返し実行される。
したがって、変更されたグリップ限界領域内の駆動力配分での前輪1,2および後輪3,4に対する駆動力の出力が完了したことにより、ステップS30で肯定的に判断された場合には、ステップS31へ進み、総駆動力Fが変化させられる。すなわち、車両Veの総駆動力Fを総駆動力F’に低下して変更する制御が開始される。
それとともに、その変更される総駆動力の下で、かつ上記のステップS30で変更が完了したグリップ限界領域内の駆動力配分で駆動力を発生させるように、各インホイールモータ9,〜12への力行制御が開始され(ステップS32)、ついで、総駆動力Fの総駆動力F’への変更(低下)が完了したか否かが判断される(ステップS33)
総駆動力Fの総駆動力F’への変更(低下)が未だ完了していないことにより、このステップS33で否定的に判断された場合は、ステップS32に戻り、従前の制御が繰り返される。すなわち、総駆動力Fの総駆動力F’への変更(低下)が完了するまで、上記のステップS32およびステップS33の制御が繰り返し実行される。
したがって、総駆動力Fの総駆動力F’への変更(低下)が完了したことにより、ステップS33で肯定的に判断された場合には、ステップS24へ進み、上記のようにして変更されて設定された総駆動力F’を、このピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分で発生させるように、各インホイールモータ9,〜12が力行制御される。すなわち、結果的には、前述の第1制御例の場合と同様のピッチング抑制制御もしくはバウンシング抑制制御における前輪1,2と後輪3,4との駆動力配分による駆動力の制御、すなわち各インホイールモータ9,〜12の力行制御が実行される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
上記の制御を図8の直交座標上で説明すると、図8において、交点A’で表されるグリップ限界領域を外れた駆動力配分が、先ず、総駆動力Fを示す直線l0と前輪グリップ限界を示す直線l1'とが交わる点である交点Eで表される駆動力配分に変更させられる。すなわち、グリップ限界領域を外れた駆動力配分(交点A’)が、先ず、総駆動力Fの下で、すなわち総駆動力Fが低下させられる前に、グリップ限界領域内で上記のグリップ限界領域を外れた駆動力配分(交点A’)に最も近い駆動力配分(交点E)に一旦変更させられる。
その後、直線l0で表される総駆動力Fが、直線l0'で表される総駆動力F’に変更させられる。すなわち総駆動力Fが総駆動力F’に低下させられる。そして、総駆動力Fが総駆動力F’に低下させられるのに併せて、交点Eで表される駆動力配分に一旦変更させられていた駆動力配分が、総駆動力F’を示す直線l0'と前輪グリップ限界を示す直線l1'とが交わる点である交点Dで表される駆動力配分に更に変更させられる。すなわち、グリップ限界領域内でかつ当初の総駆動力Fの下で、上記のグリップ限界領域を外れた駆動力配分(交点A’)に最も近い駆動力配分(交点E)に一旦変更させられていた総駆動力が、グリップ限界領域内でかつ低下させられた総駆動力F’の下で、上記のグリップ限界領域を外れた駆動力配分(交点A’)に最も近い駆動力配分(交点D)に最終的に変更させられる。
以上のように、この発明による車両Veのピッチングもしくはバウンシングの抑制制御によれば、ピッチングやバウンシングなどの車両挙動の変動を抑制するために、前後輪1,〜4においてそれぞれ独立して発生させる駆動力もしくは制動力の前後の駆動力配分、言い換えると、走行のために車両Veに要求される総駆動力Fを前輪1,2と後輪3,4とで分担して発生させる際の比率を示す前後の駆動力配分が求められる。そして、その前後の駆動力配分に基づいて、前後輪1,〜4で駆動力もしくは制動力を発生させることにより、車両Veのピッチングもしくはバウンシングの抑制制御が実行される。
その際にこの発明では、車両Veが走行する前方路面の摩擦係数が検出されて、その摩擦係数に基づいて前輪1,2と後輪3,4とのスリップ限界が算出され、そして、ピッチングもしくはバウンシングを抑制するための駆動力配分が、それら前輪1,2と後輪3,4とのスリップ限界によるスリップ限界領域から外れた場合には、総駆動力Fは変えられずに、スリップ限界領域外となった駆動力配分がスリップ限界領域内になるように変更される。
すなわち、摩擦係数が低い路面(低μ路)を車両Veが走行する際にピッチングもしくはバウンシングの抑制制御が実行される場合には、そのピッチングもしくはバウンシングの抑制制御のための駆動力配分がスリップ限界を超えないように事前に設定される。したがって、ピッチングもしくはバウンシングの抑制制御のための駆動力配分に基づいて前輪1,2と後輪3,4とで駆動力を発生させる際に、その駆動力がスリップ限界を超えてしまうことが回避される。その結果、低μ路を車両Veが走行する場合であっても、ピッチングもしくはバウンシングの抑制制御のための駆動力配分に基づいて前輪1,2と後輪3,4とに発生させる駆動力によるスリップの発生を回避することができる。そのため、例えばTRCなどによる操縦性の安定化制御と上記のピッチングもしくはバウンシングを抑制する制御との間で制御の干渉が生じてしまうことを回避することができ、車両Veのドライバビリティを低下させることなく、ピッチングおよびバウンシングを適切に抑制することができる。
また、ピッチングもしくはバウンシングを抑制するための駆動力配分がスリップ限界領域から外れた場合、車両Veが走行する前方路面の路面勾配が検出され、その前方路面が下り坂であった場合には、その下り坂の勾配に応じて、車両Veに要求される総駆動力Fが総駆動力F’に低下させられる。そして、その低下させられた総駆動力F’に基づいてスリップ限界領域外となった駆動力配分がスリップ限界領域内になるように変更される。そのため、低μ路で、かつ降坂路を車両Veが走行する場合であっても、車両Veのドライバビリティを低下させることなく、ピッチングおよびバウンシングを適切に抑制することができる。
そして、第2制御例で示したように、車両Veが走行する前方路面が低μ路であって、ピッチングもしくはバウンシングを抑制するための駆動力配分がスリップ限界領域から外れ、かつその前方路面が下り坂であった場合、車両Veがその前方の低μ路に到達するまでの到達時間T2と、前方の下り坂の勾配に応じて総駆動力Fを総駆動力F’まで低下させるのに要する低下時間T1とが比較される。そして、低下時間T1の方が到達時間T2よりも長い場合には、先ず、総駆動力Fを低下させる前に(すなわち総駆動力Fは変えられずに)、スリップ限界領域外となった駆動力配分がスリップ限界領域内になるように変更され、その後、前方の下り坂の勾配に応じて総駆動力Fが低下させられて、その低下させられた総駆動力F’に基づいてスリップ限界領域外となった駆動力配分がスリップ限界領域内になるように変更される。そのため、総駆動力が低下される前に車両Veが前方の低μ路に到達することによりスリップが発生してしまうことを回避でき、低μ路でかつ降坂路を車両Veが走行する場合であっても、車両Veのドライバビリティを低下させることなく、ピッチングおよびバウンシングを適切に抑制することができる。
ここで、上記のフローチャートに示す制御例と、この発明との関係を簡単に説明すると、上述したステップS3の機能的手段が、この発明の駆動力配分算出手段に相当し、ステップS1の機能的手段が、この発明の路面μ検出手段に相当する。また、ステップS2の機能的手段が、この発明のグリップ限界算出手段に相当し、ステップS7ないしS12,S27ないしS33の機能的手段が、この発明の駆動力配分変更手段に相当する。そして、ステップS8,S9の機能的手段が、この発明の路面勾配検出手段に相当し、ステップS26の機能的手段が、この発明の低下時間算出手段に相当する。
なお、上述した具体例では、各車輪1,〜4毎にそれぞれ各インホイールモータ9,〜12が設置されている構成例を示していて、各インホイールモータ9,〜12は、全て独立して回転制御される構成であっても良いが、この発明では、少なくとも前輪1,2と後輪3,4とに発生させる駆動力もしくは制動力を独立して制御できる構成、すなわち少なくともインホイールモータ9,10とインホイールモータ11,12とを独立して回転制御できる構成であればよい。また、インホイールモータは、前輪1,2のいずれか一方と後輪3,4のいずれか一方との少なくとも前後1輪ずつに設置される構成であってもよい。
さらに、少なくとも前輪1,2と後輪3,4とに発生させる駆動力もしくは制動力を独立して制御できる構成、すなわちこの発明における駆動力発生機構は、上述した具体例のように各車輪1,〜4毎にそれぞれ各インホイールモータ9,〜12を設置した構成に限定されるものではなく、例えば、前輪1,2と後輪3,4とに、それぞれ動力伝達可能に連結された2基の電動機(モーター・ジェネレータ)により、前輪1,2と後輪3,4とに発生させる駆動力もしくは制動力を独立して制御する構成であってもよい。
この発明の制御装置を適用可能な車両の構成および制御系統を模式的に示す概念図である。 この発明の制御装置を適用可能な車両を側面から視た図であって、車両の重心やサスペンション機構の瞬間回転中心等の位置関係を説明するための模式図である。 この発明の制御装置による第1制御例を説明するためのフローチャートである。 ピッチングおよびバウンシングを抑制する制御を実行する際に、従来の前後輪の駆動力配分の算出方法を説明するための模式図である。 ピッチングおよびバウンシングを抑制する制御を実行する際に、この発明の第1制御例の登坂走行時における前後輪の駆動力配分の算出方法を説明するための模式図である。 ピッチングおよびバウンシングを抑制する制御を実行する際に、この発明の第1制御例の降坂走行時における前後輪の駆動力配分の算出方法を説明するための模式図である。 この発明の制御装置による第2制御例を説明するためのフローチャートである。 ピッチングおよびバウンシングを抑制する制御を実行する際に、この発明の第2制御例における前後輪の駆動力配分の算出方法を説明するための模式図である。
符号の説明
1,2…前輪、 3,4…後輪、 1a,2a,3a,4a…タイヤ、 1b,2b,3b,4b…ホイール、 5,6,7,8…サスペンション機構、 9,10,11,12…インホイールモータ(電動機)、 15,16,17,18…ブレーキ機構、 20…電子制御装置(ECU)、 23…前後加速度センサ、 24…上下加速度センサ、 25…路面センサ、 26…車輪速センサ、 27…ストロークセンサ、 28…バッテリセンサ、 29…ナビゲーションシステム、 Bo…車体、 Ve…車両。

Claims (5)

  1. 少なくとも前輪と後輪とをそれぞれ独立して車体に支持するサスペンション機構と、少なくとも前記前輪と前記後輪とにそれぞれ独立して駆動力もしくは制動力を発生させる駆動力発生機構と、前記車体のピッチングもしくはバウンシングの状態に応じて、該ピッチングもしくはバウンシングを抑制するために、車両に要求される総駆動力を前記前後輪で分担して発生させる際の前記前後輪の駆動力配分を算出する駆動力配分算出手段とを備え、前記駆動力配分に基づいて前記駆動力発生機構を制御して前記前後輪に駆動力もしくは制動力を発生させる車両の制御装置において、
    前記車両の進行方向前方の前方路面の摩擦係数を検出する路面μ検出手段と、
    前記前方路面とタイヤとの間で滑りを起こさずに前記前輪に発生させることができる駆動力の上限である前輪グリップ限界および前記滑りを起こさずに前記後輪に発生させることができる駆動力の上限である後輪グリップ限界を算出するグリップ限界算出手段と、
    前記ピッチングを抑制するための駆動力配分と前記バウンシングを抑制するための駆動力配分との少なくともいずれか一方が、前記前輪グリップ限界内でかつ前記後輪グリップ限界内の領域であるグリップ限界領域を外れた場合に、該グリップ限界領域を外れた駆動力配分を、該グリップ限界領域内でかつ前記総駆動力の下で、該グリップ限界領域を外れた駆動力配分に最も近い駆動力配分に変更する駆動力配分変更手段と
    を備えていることを特徴とする車両の制御装置。
  2. 前記前方路面の勾配を検出する路面勾配検出手段を更に備え、
    前記駆動力配分変更手段は、前記路面勾配検出手段により前記前方路面が降坂路であることを検出した場合に、該降坂路の勾配に応じて前記総駆動力を低下させるとともに、前記グリップ限界領域を外れた駆動力配分を、前記グリップ限界領域内でかつ該低下させた総駆動力の下で、該グリップ限界領域を外れた駆動力配分に最も近い駆動力配分に変更する手段を含む
    ことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
  3. 前記総駆動力を低下させるのに必要とする低下時間を算出する低下時間算出手段を更に備え、
    前記路面μ検出手段は、前記前方路面が前記滑りが生じ易くなる低μ路である場合に、該低μ路に前記前輪が到達する到達時間を算出する手段を含み、
    前記駆動力配分変更手段は、前記低下時間が前記到達時間よりも長い場合に、前記グリップ限界領域を外れた駆動力配分を、前記グリップ限界領域内でかつ前記総駆動力の下で、前記グリップ限界領域を外れた駆動力配分に最も近い駆動力配分に一旦変更した後に、前記総駆動力を低下させるとともに、該変更した駆動力配分を、前記グリップ限界領域内でかつ該低下させた総駆動力の下で、前記グリップ限界領域を外れた駆動力配分に最も近い駆動力配分に更に変更する手段を含む
    ことを特徴とする請求項2に記載の車両の制御装置。
  4. 前記駆動力発生機構は、少なくとも前記前輪と前記後輪とにそれぞれ動力伝達可能に連結された電動機の回転を制御することにより、少なくとも前記前輪と前記後輪とにそれぞれ独立して駆動トルクもしくは制動トルクを付与する機構を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の車両の制御装置。
  5. 前記電動機は、前記前後輪と共に前記サスペンション機構を介して前記車体に支持され、かつ前記前後輪にそれぞれ内蔵されるインホイールモータを含むことを特徴とする請求項4に記載の車両の制御装置。
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