以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、ドットパターンとともに所定の図が印刷出力された紙などのシート(以下、「図面」という。)を用いて手書きにより図面上に記入された記入情報を図面データ化する情報処理システムに本発明の入力支援システム、図面データ化方法及び図面データ化処理プログラムを適用した場合の実施形態である。
1.第1実施形態
はじめに、図1〜図11の各図を用いて情報処理システムの第1実施形態について説明する。
[情報処理システムのシステム構成]
まず、情報処理システムSの構成について説明する。なお、図1は、情報処理システムSの構成を示すシステム構成図である。
情報処理システムSは、図1に示すように、ユーザによって後述するドットパターンを読み取ることにより、手書きにより図面上に記入された記入情報を生成する電子ペン1と、建物、機械又は電気回路の形状や設計図、施工図又は透視図などの建築図、機械図又は電気回路図などの所定の図を描画するための図面化プログラムを実行するとともに、電子ペン1から記入情報を受信して所定の処理を行うコンピュータ装置2と備える。また、この情報処理システムSは、電子ペン1をコンピュータ装置2に有線接続させるための接続機器であるクレードル3と、ドットパターンとともに建築図、機械図又は電気回路図を紙その他のシートに図面5(以下、「ドットパターン付き図面」ともいう。)として印刷出力するプリンタ4とを備える。
なお、例えば、電子ペン1は、本発明の読取手段及び算出手段を構成するとともに、コンピュータ装置2は、本発明の出力制御部、データ化手段、入力手段及び登録手段を構成し、プリンタ4は、本発明の出力手段を構成する。
[プリンタ]
次に、プリンタ4について説明する。プリンタ4は、コンピュータ装置2の制御の下に当該コンピュータ装置2によって生成された図面データに基づいて描画された建築図、機械図又は電気回路図をシートに図面として印刷する。そして、このプリンタ4は、これらの図とともに、後述するドットパターンを印刷する。ただし、プリンタ4は、建築図、機械図又は電気回路図については赤外線を吸収しないインク(例えば、カーボンを含まないインク)によって印刷するとともに、ドットパターンについてはカーボンなどの赤外線を吸収するインクによって印刷する。
[ドットパターン付き図面]
次に、図2および図3を用いてプリンタ4によって出力されるドットパターン付き図面(シート)5および当該図面に印刷されているアノト方式のドットパターン(コード化パターン)について説明する。なお、図2は、ドットパターン付き図面5に印刷されるドットパターンのドットとそのドットが変換される値との関係を説明する図である。また、図3は、ドットパターンを説明するための図であり、特に、図3(a)は、ドットパターンを模式的に示し、図3(b)は、それに対応する情報の例を示す図である。
ドットパターン付き図面5は、建築図、機械図または電気回路図をドットパターン(コード化パターン)とともに印刷された図面である。この図面5に印刷されたドットパターンの各ドットは、図2に示すように、その位置によって所定の値に対応付けられており、このドットパターンは、図面5における相対的な位置座標(以下、「X、Y座標」という。)およびドットパターンアドレス(コード化パターンアドレス)を保持している。
具体的には、各ドットは、ドットの位置を仮想格子の基準位置(縦線および横線の交差点)から上下左右のどの方向にシフトされているかによって、0〜3の値に対応付けられている。また、各ドットの値は、X座標用の第1ビット値およびY座標用の第2ビット値に変換することができる。そして、この各ドットは、このようにして対応付けられた情報の組合せにより、図面5上の位置を示すX座標とY座標が決定されるように構成されている。
図3(a)は、ある位置のドットパターンの配列を示している。図3(a)に示すように、縦横約2mmの範囲内に6×6の36個のドット(以下、「6×6ドット」という。)が形成されており、これらの各6×6ドットは、図面5上のどの部分から6×6のドットを取ってもユニークなパターンとなるように当該図面5上に配置されている。特に、図3(b)は、図3(a)に示す各ドットを、格子の基準位置からのシフト方向によって、図3に示す規則性に基づいて対応づけられた値に変換したものである。ただし、この変換は、ドットパターンの画像を撮影する電子ペン1によって行われる。
また、ドットパターン付き図面5には、ユニークなパターンを有するドットパターンから図面の大きさに合わせて一部の領域のドットパターンが予め定めた順序によって割り当てられる。そして、この割り当てられた各ドットパターン付き図面5のドットパターンは、ドットパターンにおける座標によって特定することが可能であり、例えば、割り当てられたドットパターンの基準となる座標(以下、「基準座標(Xn、Yn)」という。)と当該基準座標から一のドットパターン群上の座標におけるx軸(幅(Width)方向)及びy軸(高さ(Hight)方向)における距離(以下、座標距離(Wn、Hn)という。)によって特定される。
なお、このドットパターンは、赤外線を吸収するカーボンを含有するインクによって印刷されているとともに、建築図、機械図または電気回路図は、赤外線を吸収しないインクによって印刷されている。したがって、後述するように、電子ペン1は、ドットパターンのみ読み取ることが可能になっている。
[電子ペン]
次に、図4を用いて電子ペン1の構造とその動作について説明する。なお、図4は、電子ペン1の構造を示す概略図であるとともに、その機能を示すブロック図である。
電子ペン1は、ドットパターン付き図面5への文字や記号または図形の記入に用いられる。また、この電子ペン1は、ユーザによって当該電子ペン1を用いてドットパターン付き図面5上に文字、記号または図形が描かれると、当該電子ペン1(具体的には、後述するペン先部103)の移動軌跡、すなわち、移動経路に沿って、当該ドットパターン付き図面5に印刷されたドットパターンを局所的、かつ、連続的に読み取る。そして、この電子ペン1は、ドットパターン付き図面5におけるその局所位置の座標を算出するとともに、その算出した電子データ、すなわち、記入情報をストローク情報毎にメモリ109に保持する、または、コンピュータ装置2へ逐次送信する。
具体的には、電子ペン1は、図4に示すように、その筐体101の内部に、ペン部104と、LED105と、CMOSカメラ106と、圧力センサ107と、CPU等により構成されるプロセッサ108と、ROMやRAMといったメモリ109と、リアルタイムクロック110と、アンテナ等により構成される通信ユニット111と、バッテリー112と、クレードル3とデータの授受及び充電を行うための端子113とを備える。
ペン部104は、その先端にペン先部103を有しており、このペン先部103は、文字などの記入を行う際に、ユーザによってドットパターン付き図面5に当接される。ペン部104には、インクが充填されている。
バッテリー112は、電子ペン1内の各部材に電力を供給するためのものであり、例えば、電子ペン1のキャップ(図示せず)の脱着により電子ペン1自体の電源のオン/オフを行うように構成されている。また、このバッテリー112は、リチウムイオン電池などの充電可能な電池から構成され、クレードル3から供給された電源に基づいて、端子113を介して充電が行われる。
リアルタイムクロック110は、現在時刻(タイムスタンプ)を示す時刻情報を発信し、プロセッサ108に供給する。また、圧力センサ107は、ユーザが電子ペン1によりドットパターン付き図面5に文字やマーク等の記入を行う際にペン先部103からペン部104を通じて与えられる圧力、すなわち、筆圧を検出し、その値をプロセッサ108へ伝送する。
プロセッサ108は、圧力センサ107から与えられる筆圧データに基づいて、電子ペン1のペンダウン(ペン先部103の図面5への接触)およびペンアップ(ペン先部103の図面5からの離脱)を判定してLED105およびCMOSカメラ106のスイッチのオン/オフを切換える。すなわち、ユーザが電子ペン1によってドットパターン付き図面5に文字などを記入すると、ペン先部103に筆圧がかかるので、圧力センサ107によって所定値以上の筆圧が検出された際に、プロセッサ108は、ユーザが記入を開始したと(ペンダウンと)判定して、LED105およびCMOSカメラ106を作動させる。そして、ユーザがドットパターン付き図面5から電子ペン1を離すと、圧力センサ107によって所定値以上の筆圧の検出がされなくなるので、その際には、プロセッサ108は、ユーザが一つのストロークの記入を終了したと(ペンアップと)判定して、LED105およびCMOSカメラ106の作動を終了させる。
LED105およびCMOSカメラ106は、電子ペン1のペン先部103付近に取り付けられており、筐体101におけるLED105およびCMOSカメラ106と対向する部分には、開口部102が形成されている。特に、LED105は、スクリーン4上のペン先部103近傍に向けて赤外線を照射する。なお、その赤外線が照射される領域は、ペン先部103がドットパターン付き図面5に接触する位置とはわずかにずれるように構成されている。また、CMOSカメラ106は、LED105によって照明された領域内における上述したドットパターンを撮影し、そのドットパターンの画像データをプロセッサ108に供給する。
なお、上述のように、ドットパターンのみ、赤外線を吸収するカーボンを含有するインクによって印刷されているので、LED105によって照射された赤外線は、ドットの位置においては吸収される。そのため、ドットの部分は、赤外線の反射量が少なく、ドット以外の部分は赤外線の反射量が多くなる。このため、CMOSカメラ106の撮影により、赤外線の反射量の違いから閾値を設けることによって、カーボンを含むドットの領域とそれ以外の領域を区別することが可能である。
また、CMOSカメラ106による撮影領域は、図3(a)に示すような約2mm×約2mmの大きさを含む範囲であり、CMOSカメラ106の撮影は毎秒50〜100回程度の定間隔で行われる。
プロセッサ108は、ユーザによって文字や記号または図形が記入されている間に、すなわち、圧力センサ107から与えられる筆圧データに基づいて、LED105およびCMOSカメラ106のスイッチがオンの状態のときに、CMOSカメラ106によって供給される各画像データのドットパターン毎に、ドットパターン付き図面5上におけるX、Y座標(以下、単に「位置座標」、「座標データ」ともいう。)と当該図面5に固有のドットパターンアドレス(コード化パターンアドレス)とを個々に演算する。
具体的には、プロセッサ108は、CMOSカメラ106によって供給される、図3(a)に示されるような各ドットパターンの画像データを、図3(b)に示すデータ配列に変換し、さらに、X座標ビット値及びY座標ビット値に変換して、そのデータ配列から所定の演算方法によりX、Y座標データ及びドットパターンアドレスを演算する。そして、プロセッサ108は、リアルタイムクロック110から発信される現在時刻(タイムスタンプ:記入された時刻情報)と、筆圧データと、ドットパターンアドレスと、X、Y座標データと、を関連付けて一の記入情報を生成する。すなわち、プロセッサ108は、圧力センサ107によって検出された筆圧に基づいて、ユーザが記入を開始したと判定してから当該記入が終了したと判定されるまで、各画像データのドットパターン毎に、それぞれに対応するX、Y座標データおよびドットパターンアドレスを演算し、現在時刻および筆圧データとともに一の記入情報を生成する。
なお、ペンダウンが検出されて記入情報の生成が開始され、ペンアップが検出されて記入情報の生成が終了するまでの一連の記入情報を、ペンダウン及びペンアップのデータを含めてストローク情報といい、後述するように各ストローク情報毎にベクトルデータの生成、すなわち、記入情報のベクトルデータへの変換が行われる。
また、ドットパターン付き図面5における6×6ドットは、各ドットパターン付き図面5内において重複することはないため、ユーザが電子ペン1で文字等を記入すると、当該記入により取得された記入情報に含まれるX、Y座標がドットパターン付き図面5のどの位置に当たるかを特定することが可能である。そして、この6×6ドットは、何れの他のドットパターン付き図面5に割り当てられるドットパターンに含まれる6×6とも重複しないので、他のドットパターン付き図面5との識別、すなわち、電子ペン1が記入情報(ドットパターン)を読み取ったドットパターン付き図面5の特定を行うことも可能である。ただし、後述するように、このドットパターン付き図面5の特定においてはコンピュータ装置2において実行される。
メモリ109には、電子ペン1を識別するための「pen01」といったペンID、ペン製造者番号、ペンソフトウェアのバージョン等のプロパティ情報が記憶されている。また、メモリ109には、後述するように通信ユニット111によって生成された記入情報を逐次的にコンピュータ装置2に送信しない場合には、ストローク情報毎に生成された各記入情報が記憶される。
通信ユニット111は、関連づけられたペンID(電子ペン識別情報)、時刻情報(タイムスタンプ)および筆圧データとともに生成されたドットパターンアドレスおよびX、Y座標データの各記入情報をコンピュータ装置2へ順次送信する。特に、この通信ユニット111は、Bluetooth(登録商標)などのコンピュータ装置2と近距離無線通信を行うための構成を有し、所定の条件の成立時に当該近距離無線通信におけるコンピュータ装置2との通信回線を確立し、データの授受を行う。例えば、電子ペン1がコンピュータ装置2から所定の範囲内(10m)に存在し、かつ、ユーザの操作などにより、通信回線が確立された際に、当該コンピュータ装置2からの制御に基づいて、近距離無線通信によってデータの授受が行われる。
端子113は、電子ペン1が後述するクレードル3におけるキャップに装着された際に、当該キャップ内の端子と接続可能に構成されている。そして、この端子113を介して充電またはメモリ109に記憶された記入情報などのデータのコンピュータ装置2への送信が、クレードル3を介して実行される。
[クレードル]
次に、電子ペン1とコンピュータ装置2を有線接続するためのクレードル3について説明する。クレードル3は、USB(Universal Serial Bus)規格の通信ケーブルの端部に、電子ペン1を装着し載置するためのキャップと、電子ペン1をキャップとともに把持し台座として機能するベースとが設けられたものである。キャップ内に設けられた端子は、通信ケーブルによってコンピュータ装置2と電気的に接続されるよう構成されている。そして、キャップ内に電子ペン1が挿入されることで、キャップ内の端子と電子ペン1の端子113とが接続されて、電子ペン1とコンピュータ装置2とが電気的に接続されることとなり、そのために電子ペン1とコンピュータ装置2との間の通信が可能となり、電子ペン1の充電も可能となる(特開2006−260345号公報参照)。
[コンピュータ装置]
次に、図5を用いてコンピュータ装置2について説明する。なお、図5は、コンピュータ装置2の各機能を示す機能ブロック図である。
コンピュータ装置2は、例えば、パーソナルコンピュータであって、図5に示すように、ハードウェアとして、CPU等のプロセッサ、ROMやRAMなどのメモリ、ディスプレイ、マウスやキーボードなど入力インターフェース及びその他の周辺機器によって構成される。また、コンピュータ装置2は、マウスやキーボードなどの入力手段21と、クレードル3を介して電子ペン1とのデータの授受を行うためのインターフェース22と、図面化プログラムその他の処理を実行する処理手段24と、所定のデータを記憶する記憶手段25と、ディスプレイなどの表示手段26と、プリンタ4へのデータの送信制御を行う送信手段27とを備える。そして、このコンピュータ装置2は、入力手段21からのユーザ指示又は電子ペン1から受信した各記入情報に基づいて所定の処理を行う。
入力手段21は、マウス、キーボード又はタブレットなどの入力インターフェースで構成され、CAD(Computer Aided Design)などの図面化プログラムの起動時における種々の指示の入力の他に、ベクトルデータなどの図面化されるデータの入力、入力されたデータおよび当該データに基づいて図面化される図面データの表示手段26への表示制御及び図面化された図面データの印刷指示を行うために用いられる。
インターフェース22は、例えば、USB規格に従ってクレードル3を介して電子ペン1に充電を行うための電源を供給するとともに、当該電子ペン1から送信された記入情報を受信する。
処理手段24は、CPU等のプロセッサによって構成され、CADなどの図面化プログラムを実行する図面化プログラム実行部31と、図面化プログラムによって生成された図面データをドットパターンとともに印刷するための制御を行う出力制御部32とを有している。また、この処理手段24は、記入情報をベクトルベータに変換して図面データを構成する図面構成データを生成するデータ変換部33と、図面データや当該図面データによって図面化された図面に関する属性情報(以下、「図面属性情報」という。)を管理する属性情報管理部34とを有している。なお、この処理手段24の各部の詳細については後述する。
記憶手段25は、ハードディスク、ROMやRAMなどのメモリによって構成される。この記憶手段25には、CADなどの図面化プログラム及び当該プログラムに必要な各種のデータと、記入情報をベクトルデータ又は図面データを構成する図面構成データに変換する変換プログラムと、dxf(Drawing Interchange File)データなどの図面化プログラムによって生成された各種の図面データ(CADデータ)とが記憶される。また、この記憶手段25には、図面化プログラムによって生成された図面データを印刷出力する際に割り当てられるドットパターン群に関する各情報と、後述するように、当該ドットパターン付き図面5に実際に割り当てられた各ドットパターンの領域に関する情報(以下、「ドットパターン領域情報」)とが記憶される。特に、この記憶手段25には、このドットパターン領域情報が、例えば、印刷出力された図面データを特定可能なファイル名に対応付けて記憶される。そして、このドットパターン領域情報は、上述のように、一のドットパターン群の所定の座標を示す基準座標(Xn、Yn)と当該基準座標からのX方向及びY方向の座標距離(Wn、Hn)の情報とから構成される。
表示手段26は、ディスプレイ等によって構成され、生成された図面データの描画表示その他の処理手段24によって指示された内容を表示する。また、送信手段27は、処理手段24の指示によって、生成された図面データをドットパターン付き図面5として出力するための各種のデータをプリンタ4に送信する。
[処理手段]
次に、上述した図5並びに図6〜図9の各図を用いて上述した処理手段24の各部の詳細について説明する。なお、図6は、図面化プログラムが実行されている際の表示手段26に表示される画面の一例であり、図7は、図6における図面データがプリンタ4から印刷出力されたときのドットパターン付き図面5の一例である。また、図8は、図7に示すドットパターン付き図面5に電子ペン1により記入する様子を示す例であり、図9は、図8において記入された記入情報が図面データ化されて図面化プログラムにより表示された画面の一例である。
図面化プログラム実行部31は、記憶手段25に記憶されたアプリケーションプログラムである図面化プログラム(例えば、CAD用のプログラム)を実行させ、入力手段21及び表示手段26と連動し、表示手段26に設計図等の所定の画像を表示させつつ、入力された各種の情報からベクトルデータを生成して図面構成データを生成する。例えば、この図面化プログラム実行部31は、図6に示すように、図面構成データを生成させるための入力指示又は図面データの管理に関するプルダウンメニュー261と、図面構成データを生成させるための入力指示に関するツールバー262と、図面構成データを生成するための図面表示領域263を表示手段26に表示させつつ、図面表示領域263内に生成された複数の図面構成データからなる図面データ264を重畳的に表示手段26に表示させる。なお、図6は、図面データとして建築図の場合を例にした際の表示手段26に表示される画面260であって、図面表示領域263に図面データとして建築図264が表示されている場合の一例である。
出力制御部32は、図面化プログラム実行部31、入力手段21及び送信手段27と連動し、図面化プログラム実行部31によって生成された図面データをドットパターン付き図面5としてプリンタ4において印刷出力を行う際の各処理(以下、これらの処理を「印刷出力処理」という。)を行う。
具体的には、この出力性制御部32は、印刷出力を行う図面データをプリンタ4に印刷可能なデータに変換して出力するとともに、当該図面データとともに当該図面の略全体に印刷するための固有のドットパターンを割り当てて、当該割り当てられたドットパターンを図面上に印刷させるために必要なデータを、送信手段27を介してプリンタ4に出力する。そして、この出力制御部32は、各ドットパターン付き図面5毎にドットパターンを特定するための情報(すなわち、上述のドットパターン領域情報)と印刷出力された図面データ(例えば、図面データのファイル名)とを対応付けて記憶手段25に記憶させる。
また、出力制御部32は、後述するように、ドットパターン付き図面5を印刷出力する際に当該図面5上に図面属性情報の印刷出力が指示された場合には、当該図面属性情報がドットパターン付き図面5上の所定の領域に印刷されるように、プリンタ4に所定のデータを送信する。例えば、図6における図面表示領域263に表示された建築図の図面データをドットパターン付き図面5として印刷出力する際には、この出力制御部32は、図7に示すようなドットパターン付き図面5をプリンタ4が印刷出力するように、図面データ、ドットパターン及び図面属性情報などの種々のデータを、送信手段27を介してプリンタ4に出力する。
データ変換部33は、ドットパターン付き図面5においてユーザの記入により電子ペン1が記入情報を生成し、当該電子ペン1から各ストローク情報の各記入情報を取得した場合には、ストローク情報の記入情報に基づいて、当該ドットパターン付き図面5を印刷出力された際に用いた図面データを特定する。そして、このデータ変換部33は、取得した各ストローク情報をベクトルデータに変換して図面構成データを生成する処理(以下、「図面データ化処理」という。)を行う。具体的には、このデータ変換部33は、電子ペン1によって生成された記入情報により構成されるストローク情報を取得し、当該取得したストローク情報の少なくとも一の記入情報におけるX、Y座標が含まれるドットパターン領域情報を、記憶手段2を参照して検出し、さらに当該ドットパターン領域情報に対応付けて記憶されている図面データを、当該記入情報が電子ペン1によって読み取られた際に使用されたドットパターン付き図面5として特定する。また、このデータ変換部33は、ストローク情報毎に、ストローク情報を構成する記入情報に含まれるX、Y座標を、特定された図面データ上にプロットし、当該プロットされたポイントを一のベクトルデータに変換する。そして、このデータ変換部33は、変換されたベクトルデータを画像データとして表示手段26に表示させつつ、図面構成データに図面データ化して登録する。
例えば、データ変換部33は、図8に示すようなストローク53が手書きされて電子ペン1が当該移動経路に沿ってドットパターンを読み取った場合には、電子ペン1から受信した各ストローク情報毎の各記入情報と記憶手段25に記憶されたドットパターン領域情報とに基づいて、図8に示されるドットパターン付き図面5が印刷出力された際に用いた図面データを特定する。そして、このデータ変換部33は、各記入情報をストローク情報毎に図面データ上にプロットして一のベクトルデータに変換し、図9に示すように、当該変換されたベクトルデータを、特定された図面構成データ265として図面データ化する。
すなわち、データ変換部33は、ドットパターン付き図面5の一部でも記入情報として読み取ると、当該読み取った記入情報に基づいて一のドットパターン、具体的には、当該図面5に割り当てたドットパターンを特定することができるので、特定された図面、割り当てたドットパターン及び読み取った記入情報からドットパターン付き図面5における各記入情報のX、Y座標を特定することが可能となる。そして、データ変換部33は、特定されたX、Y座標をプロットしてベクトルデータに変換させつつ、一の図面構成データとして図面データ化して他の図面構成データと結合させる。なお、このデータ変換部33は、記入情報に基づいて図面データ化した図面構成データについては、既に印刷出力された他の図面構成データとは異なるレイヤに図面データ化する。
属性情報管理部34は、ドットパターン付き図面5の印字出力が実行された場合には、すなわち、出力制御部32における印刷処理が実行された場合には、当該ドットパターン付き図面5の所定の領域に、図面属性情報領域52を印刷する指示を出力制御部32に送信するとともに、図面属性情報領域52内に印刷される図面属性情報の提供を出力制御部32に行う。例えば、属性情報管理部34は、建築図における物件名の情報(以下、「物件情報」という。)、正面図または側面図などの図面の種別(以下、「種別情報」という。)等の各情報がドットパターン付き図面5の所定の領域(例えば、図7における領域52)に印刷されるように、当該各情報の提供を出力制御部32に行う。なお、図面属性情報は、図面データの生成過程において登録されているデータを用いるが、当該各情報が登録されていない場合には、印刷出力処理が実行される際に、ユーザの指示に基づいて登録される。
一方、この属性情報管理部34は、データ変換処理が実行される場合であって、上述のように、ドットパターン付き図面5上に図面属性情報が印刷されたエリア内に記入情報が検出された場合には、電子ペン1によって生成した記入情報に基づいて当該エリア内に存在する各ストロークの各記入情報をそのままストロークに変換して表示する。ドットパターン付き図面5の所定の領域に図面属性情報領域52が設定されている場合であって、当該図面属性情報領域52の領域内に図8に示すような記入情報を検出した場合には、属性情報管理部34は、当該取得された各ストローク情報の各記入情報に基づいて、「現場検査日」として、その年、月、日を意味する数字として「2009」、「6」及び「19」のストローク情報を、「検査項目」として、(「ひび(クラッキング)」のストロークを記憶手段25に登録する。そして、図9に示すように、属性情報管理部34は、登録されたストロークを、画面260の所定の領域267に、図面属性情報として表示する。
なお、属性情報管理部34は、これらストロークに関連付けられた図面属性情報を図面データ化されたベクトルデータと関連づけて登録及び表示する。例えば、属性情報管理部34は、図9に示すように、図面データ化された図面構成データの線種を図面属性情報が表示されている領域267にも表示させ、当該図面構成データの属性であることを明示する。
[印刷出力処理]
次に、図10を用いてコンピュータ装置2における印刷出力処理の動作について説明する。なお、図10は、プリンタ4と連動して実行されるコンピュータ装置2の印刷出力処理の動作を示すフローチャートである。
本動作においては、CADプログラム等の図面化プログラムを用いて既に建築図などの印刷出力可能な図面データが作成されているものとし、ドットパターン付き図面5に割り当てられるドットパターンが、予め定められた順序によりドットパターン群から所定の領域毎に割り当てられるように記憶手段25に記憶されているものとする。また、本動作においては、既に図面化プログラム実行部31は、図面化プログラム(CADプログラム)を起動しているものとする。
まず、図面化プログラム実行部31は、入力手段21からの指示に基づいて印刷出力すべき図面データの画面(例えば図6に示すCAD画面)を表示手段26に表示させる(ステップS101)。なお、既に印刷出力すべき図面データの画面が表示手段26に表示されている場合には、当該処理は省略される。
次いで、当該入力手段21から画面表示されている図面データの印刷出力の指示(印刷指示)を検知すると(ステップS102)、出力制御部32は、図面の略全体にドットパターンが印刷されるように記憶手段25に記憶されたドットパターン群から所定の領域のドットパターンを割り当てるとともに、当該割り当てたドットパターンと印刷指示がなされた図面データ(当該図面データのファイル名)を対応付けて記憶手段25に記憶する(ステップS103)。なお、図面属性情報を印刷出力する際には、属性情報管理部34は、図面化プログラム実行部31と連動して図面属性情報に関する情報を収集して又はユーザに登録させて出力制御部32に提供する。
次いで、出力制御部32は、印刷指示がなされた図面データの図面属性情報とともに、割り当てられたドットパターン及び図面データを、送信手段27を介してプリンタ4に印刷させるよう出力し(ステップS104)、コンピュータ装置2は、印刷出力処理を終了させる。なおこのとき、出力制御部32は、ドットパターンを赤外線吸収(カーボン含有)インクにより印刷出力し、図面データその他の情報を非赤外線吸収インクにより印刷出力するようにプリンタ4に指示する。
一方、プリンタ4は、ドットパターンと図面データを用紙などの所定のシートに印刷出力してドットパターン付き図面5を出力する(ステップS201)。このとき、プリンタ4は、ドットパターンを赤外線吸収インクによって、また、図面データその他の情報を非赤外線吸収インクによって印刷出力する。そして、プリンタ4は、ドットパターン付き図面5を印刷出力すると本動作を終了させる。
[図面データ化処理]
次に、図11を用いてコンピュータ装置2における図面データ化処理の動作について説明する。なお、図11は、電子ペン1によって保持されている記入情報を図面データ化する図面データ化処理の動作を示すフローチャートである。
ここで、電子ペン1によって保持される記入情報は、図8に示すストローク53によるものとし、このストローク53は、図面データ264で示される設計図面に基づき実際に建築された現場の建築物にユーザが赴き、現物の建築物に発生したひび(クラッキング)をスケッチしたものである。そして、本動作においては、電子ペン1には、ドットパターン付き図面5にストローク53を記入したことにより、既にストローク情報の記入情報が記憶されているとともに、当該電子ペン1が既にクレードル3にセットされてコンピュータ装置2との通信が可能状態になっているものとする。また、コンピュータ装置2は、既に図面化プログラムが起動されているものとし、記憶手段25には、ドットパターン付き図面5に割り当てられたドットパターンと図面データとが対応付けられた図面属性情報など種々の情報が記憶されているものとする。
まず、入力手段21に電子ペン1に記憶された各ストロークにおける各記入情報の読み出しの指示がなされると、電子ペン1は、各ストローク情報毎の各記入情報をコンピュータ装置2に転送する(ステップS301)。この電子ペン1は、全てのストローク情報を転送すると本動作を終了させる。なお、当該ステップS301の処理において、入力手段21の指示ではなく、電子ペン1がクレードル3にセットされたことを検出し、これを検出した際に自動的にコンピュータ装置2に各ストローク情報の各記入情報を転送するように構成してもよい。
一方、コンピュータ装置2においては、各ストローク情報毎の各記入情報を受信すると(ステップS401)、データ変換部33は、記入情報に含まれるX、Y座標に基づいて記憶手段25に記憶されている一のドットパターン領域情報を検出し、当該特定されたドットパターン領域情報に対応付けられて記憶されている図面データ(CADファイル)を特定する(ステップS402)。なお、データ変換部33は、複数のストローク情報を受信した場合には、ストローク情報毎にX、Y座標に基づいて図面データを特定する。
次いで、データ変換部33は、受信した各ストローク情報毎に、各ストローク情報の各記入情報を、すなわち、ストローク情報に含まれるX、Y座標をベクトルデータに変換し、その変換されたベクトルデータを画像データ(例えば、Bitmapデータ又はGif(Graphics Interchange Format)データ)として、又は、図面構成データとして(例えば、dxfと呼ばれるCADデータ)として保存する(ステップS403)。具体的には、データ変換部33は、各記入情報に含まれるX、Y座標を図面データ内の座標にプロットしてストローク情報毎に一の線図となるようにベクトルデータに変換し、画像データ又は図面構成データとして保存する。
なお、このとき、属性情報管理部34は、図面属性情報領域52内に電子ペン1により記入されることで電子ペン1から受信した、検査日や検査項目などの記入情報を、そのストロークとして特定する。
次いで、データ変換部33は、新たなレイヤ(例えば、検査レイヤ)を生成し、記入情報から変換された図面構成データを他の当該図面構成データと結合させて図面データ化する(ステップS404)。なお、既に検査レイヤなど新たなレイヤがある場合には、更に新たなレイヤ(例えば、検査第2レイヤ)を生成して図面データ化してもよいし、既に存在する検査レイヤにおける図面構成データとして図面データ化するようにしてもよい。
次いで、データ変換部33は、他の図面データに結合された図面データを、すなわち、既に生成されている図面データに重畳された図面データを表示手段26の画面(例えば、CAD画面)に表示させ(ステップS405)、本動作を終了させる。なお、このとき、属性情報管理部34は、表示手段26を制御して登録された情報を特定された図面データの所定の領域267に表示させる。
[第1実施形態の効果]
以上のように、情報処理システムSは、ユーザがこのドットパターン付き図面5上に記入した記入情報を既に図面化された図面データに重畳して容易にかつ的確に図面データ化することができるとともに、記入情報に基づいて入力された図面構成データと既に図面化された図面構成データとを異なる階層により図面データ化することができるので、図面構成データの表示や非表示または編集動作を無効にするロックなど図面データ構成の管理を容易することができる。
また、ユーザにとっては、建築物が建てられた現場には、コンピュータ装置2やプリンタ4を持って行かなくとも、印刷出力したドットパターン付き図面5と電子ペン1とを持参して、ドットパターン付き図面5に検査結果を書き込みさえすればよく、検査結果に関する記入情報を保持させた電子ペン1をクレードル3に装着することで簡易にコンピュータ装置2に記入情報を取り込ませることができる。また、同じ建築物に対して検査日を変えて検査結果をドットパターン付き図面5に書き込むようにすれば、検査結果のデータを重畳的に図面表示領域263に表示させることができ、ひび等の経時的な変化を確認することができる。このとき、前回までのひび等のストロークが反映されたドットパターン付き図面5を印刷出力して、現場で電子ペン1による記入を行うようにし、コンピュータ装置2が検査日毎に異なる検査レイヤを生成し、ひび等のストロークを検査日毎に異なる色で表示させるようにするとよい。
また、情報処理システムSは、ドットパターン付き図面5を出力する際に、印刷出力される図面データに関する図面属性情報を登録することができるので、出力された図面の検索など出力された図面またはそれに用いた図面データの管理を容易に行うことができるとともに、記入情報を図面データ化する際に、当該記入情報に関する属性情報を生成して登録するので、図面データ化された記入情報に基づくデータの管理を容易することができる。
また、情報処理システムSは、ドットパターン付き図面5を印刷出力する際に、ドットパターンを電子ペン1によって検出可能なインクにより形成させるとともに、図面に関する部分については、電子ペン1によって検出不能なインクにより形成させるので、ドットパターンのみを検出することが可能となり、的確にドットパターンを読み取ることができる。
また、情報処理システムSは、記入情報を例えばCADデータとして図面データ化するので、記入情報を図面データ化することが可能なシステムを幅広く種々のものに適合させることができる。
[変形例]
なお、本実施形態では、図面属性情報が印刷出力されたパターン付き図面5上の図面属性情報領域52内において記入情報が検出されたとしても、図面データ化することなく、ストロークのまま図面属性情報として他の図面属性情報とともに所定の画像を表示するように構成されているが、当該図面属性情報領域52になる記入情報を文字認識して登録表示するようにしてもよい。すなわち、属性情報管理部34は、ドットパターン付き図面5が印刷出力される際に、図面属性情報に関連して記入情報に基づいて文字認識を行うための処理(以下、「文字認識処理」という。)を実行することができるように、ドットパターン付き図面5毎に図面属性情報領域52のような文字認識エリアがある旨とそのドットパターンの領域とを各図面属性情報及び割り当てられたドットパターン領域情報に対応付けて記憶手段25に記憶させる。そして、この属性情報管理部34は、データ変換処理が実行される際に、上述のように、ドットパターン付き図面5上に予め文字認識を行うエリアが設定されている場合には、電子ペン1によって生成された記入情報に基づいて当該図面属性情報領域52内に存在する各ストローク情報の各記入情報に基づいてパターン認識を実行して文字認識処理を実行する。そして、この属性情報管理部34は、認識された文字や記号を属性情報として登録して図面データの所定の領域267に表示させる。
また、ドットパターン付き図面5のうち、図面属性情報領域52や建築物の図面部分以外の余白領域にあるいは図面部分に重ねて電子ペン1によって記入されたことによって記入情報が得られていた場合には、その記入情報は、検査により発見された「ひび」を示すストローク53に関する知見など、図面に関する情報であるから、属性情報管理部34が、余白領域や図面部分における記入情報も画像データとしてストローク53に関連付けて記憶手段25に記憶させるようにしてもよい。
2.第2実施形態
次に、図12〜図20の各図を用いて情報処理システムSの第2実施形態について説明する。第2実施形態の情報処理システムSは、ドットパターン付き図面5を印刷出力する際の図面データの出力範囲における所定の基準に対する縮尺及び当該出力範囲の原点座標(すなわち、図面データ上の所定の座標点)を設定して記憶する点、及び、当該記憶された縮尺の情報(以下、「縮尺情報」という。)及び原点座標の情報(以下、「原点座標情報」という。)基づいて記入情報の図面データ化を行う点に特徴がある。また、コンピュータ装置2において、図面データの出力範囲に関連して、物件に対する部位の名称等を登録することができる。その他の点は、第1実施形態と略同様であるため、同様の機能を有する部材については同一符号を付してその説明を省略し、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
なお、図面データの出力範囲とは、印刷出力される際に拡大または縮小されてドットパターン付き図面5として印刷される部分の図面範囲であり、この出力範囲は、図面化プログラム上、入力手段21を介して入力されたユーザの指示に基づいて設定される。
[記憶手段]
まず、図12を用いてドットパターン付き図面5が印刷出力される毎に記憶手段25に記憶される各種のデータから構成されるデータ構造について説明する。なお、図12は、ドットパターン付き図面5が印刷出力される毎に記憶手段25に記憶される各種のデータから構成されるデータ構造の一例である。
記憶手段25には、設定されたドットパターン付き図面5が印刷出力される際の出力範囲に関する縮尺情報及び当該出力範囲における原点座標情報が、物件情報や部位情報などの図面属性情報、図面データのファイル名及び印刷出力されるドットパターン付き図面5に割り当てられるドットパターンのドットパターン領域情報とともに記憶される。
例えば、この記憶手段25には、ドットパターン付き図面5が印刷出力される毎に、ドットパターン領域情報、すなわち、割り当てられたドットパターンを特定するための上述したドットパターン群の座標上における基準座標(Xn、Yn)および当該基準座標からの距離(Hn、Wn)を示す割り当てドットパターンの領域、CADファイル名「○○マンション」(図面データのファイル名)、「物件名○○マンション」(物件情報)、部位名「東側1階、2階」(部位情報)、CAD図面の原点座標「Xs、Ys」(原点座標情報)及び縮尺「N/M」(縮尺情報)が記憶される。なお、物件情報としての物件名、部位情報としての部位名は、後述するように、ドットパターン付き図面5の印刷出力が実行される際に、入力手段21、表示手段26及び出力制御部32が連動し、ユーザの入力指示に基づいて入力されて記憶される。
[出力制御部]
次に、図13〜図15の各図を用いて出力制御部32の詳細について説明する。なお、図13は、図面化プログラムが実行されている際の表示手段26に表示される画面の一例であり、図14は、図面化プログラムが実行されている際、出力範囲に伴って拡大された拡大画面の一例である。また、図15は、図14における図面データがプリンタ4から印刷出力されたときの出力範囲におけるドットパターン付き図面5である。
出力制御部32は、第1実施形態と同様に、印刷出力を行う図面データをプリンタ4に印刷可能なデータに変換して出力するとともに、当該図面データとともに印刷するための固有のドットパターンを割り当てて、当該割り当てられたドットパターンが出力される図面上に印刷させるために必要なデータを、送信手段27を介してプリンタ4に出力する。また、この出力制御部32は、ドットパターンを割り当てた後に、入力手段21のユーザの指示に基づいて、図面化プログラム実行部31及び表示手段26と連動し、印刷出力する図面データにおける図面属性情報の登録を実行する。例えば、この出力制御部32は、建築図における物件名の情報(物件情報)、図面の物件に対する部位の名称(部位情報)、正面図、側面図など図面の種別(種別情報)、及び、検査日や検査項目等の使用目的情報等の各情報をユーザに入力させるための入力指示に関する画像を表示手段26に表示させるとともに、当該表示に伴って入力された情報をそれぞれ図面属性情報として記憶手段25に記憶させる。さらに、この出力制御部32は、出力される図面データにおける所定の基準(以下、「基準縮尺」という。)に基づいて当該図面データの印刷出力される出力範囲の縮尺を算出するとともに、当該出力範囲の原点座標を定める。そして、この出力制御部32は、算出された縮尺を縮尺情報として、また、定められた原点座標を原点座標情報として、記憶手段25に記憶された図面属性情報に対応付けて当該記憶手段25に記憶させる。
特に、出力制御部32は、入力手段21のマウスによるユーザのドラッグ操作等に基づいて、印刷出力される図面データの出力範囲が確定した場合に、図面データの作成時に設定された基準縮尺として原寸に対する縮尺と、当該基準縮尺によって図面データが100%の倍率で図面表示領域263に表示されている画面に対して拡大表示又は縮小表示された出力範囲の図面表示領域263における算出した倍率とに基づいて縮尺を算出する。例えば、図13に示すように、建築図の図面データ264がB/A(例えば、1/100)の縮尺によって生成されて図面表示領域263に全体的に表示されている状態から、ユーザのマウス操作によりカーソル266を座標点269からドラッグ操作して図面データの一部をZ倍に拡大して印刷出力する出力範囲267が設定された場合には、出力制御部32は、出力範囲の縮尺を「(B/A)×Z」=「N/M」と算出し、当該算出された縮尺「N/M」を縮尺情報として記憶手段25に記憶させる。また、出力制御部32は、図13に示すように、印刷出力される図面データの出力範囲267が確定された際における一の頂点の座標(例えば、出力範囲267に図13に向かって左上隅)269を原点座標に設定する。
図13に示す出力範囲267が原点座標269を基準に100%の倍率で図面表示領域263に表示された例を図14に示す。ここで、図14において表示される属性情報表示欄268には、出力制御部32によって演算された縮尺「N/M」、及び原点座標情報によって示されるCAD原点(Xs、Ys)等の図面属性情報が、属性情報管理部34により表示される。また、属性情報表示欄268には、物件名及び部位名を入力手段21のキーボードにより入力でき、図14に示す例では、物件名として「○○マンション」、部位名として「東側1,2階」がキーボード入力されている。属性情報管理部34は、入力された物件名及び部位名を、縮尺情報、原点座標情報とともに図面属性情報として記憶手段25に記憶させる。
このように、出力制御部32は、図面化プログラム実行部31、入力手段21及び表示手段26と連動して縮尺情報、原点座標情報を設定して記憶手段25に記憶させかつ、各種の図面属性情報を登録して縮尺情報及び原点座標情報を記憶手段25に記憶させる。そして、出力制御部32は、図15に示すような、原点座標54がCAD原点(Xs、Ys)と対応するドットパターン付き図面5をプリンタ4から印刷出力させる。
[データ変換部]
次に、図16〜図18の各図を用いてデータ変換部33について説明する。なお、図16は、図15におけるドットパターン付き図面5において記入される記入情報の一例であり、図17は、図16において記入された記入情報に基づいて図面データ化された出力範囲における図面データの一例である。また、図18は、図16に示す図面を100%の倍率で表示された表示画面例である。
データ変換部33は、第1実施形態と同様に、図16に示すように、手書きされて電子ペン1が当該移動経路に沿ってドットパターンを読み取った場合には、電子ペン1から受信した当該手書きされたストローク情報の各記入情報を取得し、当該取得したストローク情報毎の各記入情報に基づいて、当該記入情報が電子ペン1によって読み取られた際に使用されたドットパターン付き図面5に対応する図面データを特定する。そして、このデータ変換部33は、当該図面データの情報として記憶された原点座標情報(原点座標54の値を有する情報)及び縮尺情報に基づいて座標変換を行いつつ、各ストローク情報の各記入情報を図面データ上にプロットするとともに当該プロットしたポイントを一のベクトルデータに変換して図面構成データを生成する。
すなわち、記入情報が記入される際に用いられたドットパターン付き図面5に図面化された図面データについては、出力範囲が特定されており、図面データが100%の倍率によって図面化されていないので、記入情報を原点座標情報及び縮尺情報に基づいて座標変換せずに図面データ化すると、記入情報が手書きされた際の座標及び図面データ化されたベクトルデータ又は図面構成データの大きさが一致しないこととなる。したがって、このデータ変換部33は、当該図面データの情報として記憶された原点座標情報及び縮尺情報に基づいて座標変換を行いつつ、当該変換されたベクトルデータを、特定された図面構成データ266として図面データ化する。
データ変換部33は、図17に示すように、特定された図面データに対応付けて記憶手段25に記憶されている原点座標情報に示されるCAD原点(Xs、Ys))及び縮尺情報に示される縮尺「N/M」に基づいて、出力範囲における図面データを表示手段26に表示させる。また、第1実施形態と同様に、属性情報管理部34は、各図面属性情報を所定の領域268に表示させるとともに、一部の図面属性情報(例えば、検査日や検査項目の図面の使用目的を示す目的情報)を所定の領域267に表示させる。なお、データ変換部33は、例えば、ドットパターン付き図面5が印刷出力された際の出力範囲が特定された図(例えば、図17に示す図)に代えて、図18に示すように、図面データが100%の倍率によって表示手段26に表示させてもよい。
[印刷出力処理]
次に、図19を用いてコンピュータ装置2における印刷出力処理の動作について説明する。なお、図19は、プリンタ4と連動して実行されるコンピュータ装置2の印刷出力処理の動作を示すフローチャートである。
本動作においては、CADプログラム等の図面化プログラムを用いて既に建築図などの印刷出力可能な図面データが作成されているものとし、ドットパターン付き図面5に割り当てられるドットパターンが、予め定められた順序によってドットパターン群から所定の領域毎に割り当てられるように記憶手段25に記憶されているものとする。また、本動作においては、既に図面化プログラム実行部31は、図面化プログラム(CADプログラム)を起動しているものとする。
まず、図面化プログラム実行部31は、入力手段21からの指示に基づいて印刷出力すべき図面データの画面(例えば図14に示すCAD画面)を表示手段26に表示させる(ステップS501)。なお、既に印刷出力すべき図面データの画面が表示手段26に表示されている場合には、当該処理は省略される。
次いで、当該入力手段21から画面表示されている図面データの印刷出力の指示(印刷指示)を検知すると(ステップS502)、出力制御部32は、図面の略全体にドットパターンが印刷されるように記憶手段25に記憶されたドットパターン群から所定の領域のドットパターンを割り当てるとともに、当該割り当てたドットパターンと印刷指示がなされた図面データを対応付けて記憶手段25に記憶する(ステップS503)。
次いで、出力制御部32は、入力手段21及び表示手段26と連動して図面属性情報をユーザに入力させて登録(記憶)するとともに、画面に表示されている出力範囲に基づいて原点座標情報及び縮尺情報を算出して記憶する(ステップS504)。なお、当該ステップS504の動作、すなわち、図面属性情報における登録処理の動作の詳細については後述する。
次いで、出力制御部32は、印刷指示がなされた図面データの図面属性情報とともに、割り当てられたドットパターン及び図面データを、送信手段27を介してプリンタ4に出力し(ステップS505)、コンピュータ装置2は、印刷出力処理を終了させる。なお、出力制御部32は、当該ドットパターン及び図面データとともに受信した図面属性情報を所定のシートの領域(図面属性情報領域52)に印刷させるようにプリンタ4を制御する。また、出力制御部32は、ドットパターンを赤外線吸収インクによって印刷出力し、図面データその他の情報を非赤外線吸収インクによって印刷出力するように、プリンタ4を制御する。
一方、プリンタ4は、ドットパターンと図面データを用紙などの所定のシートに印刷出力してトパターン付き図面5を出力する(ステップS601)。このとき、プリンタ4は、ドットパターンを赤外線吸収インクによって図面データその他の情報を非赤外線吸収インクによって印刷出力する。そして、プリンタ4は、ドットパターン付き図面5を印刷出力すると本動作を終了させる。
[図面属性情報の登録処理]
次に、図20を用いてコンピュータ装置2の図面属性情報における登録処理の動作について説明する。なお、図20は、プリンタ4と連動して実行されるコンピュータ装置2の図面属性情報における登録処理の動作を示すフローチャートである。
まず、出力制御部32は、印刷出力すべき図面データのファイル名(例えば、CADファイル名)を記憶手段25に登録するとともに(ステップS504A)、入力手段21及び表示手段26と連動して物件情報及び部位情報をユーザにキーボート入力させて記憶手段25に登録する(ステップS504B)。なおこのとき、入力が完了したことを確認するため、特定のキーを押下させるようにするとよい。
次いで、出力制御部32は、出力範囲における原点情報および縮尺情報を算出して記憶手段25に登録して(ステップS504C)本動作を終了させる。なお、出力制御部32は、原点情報および縮尺情報を出力範囲が設定されたときに算出し、物件情報及び部位情報を登録した後に、原点情報および縮尺情報を登録するようにしてもよい。本動作終了後には、記憶手段25には、印刷出力されるべきドットパターン付き図面5毎に図12に示すようなデータ構造により各種の情報が記憶される。
[図面データ化処理]
次に、図21を用いてコンピュータ装置2における図面データ化処理の動作について説明する。なお、図21は、電子ペン1と連動し、電子ペン1によって保持されている記入情報を図面データ化する図面データ化処理の動作を示すフローチャートである。
ここで、電子ペン1によって保持される記入情報は、図16に示すストローク53によるものとし、このストローク53は、図面データ264で示される設計図面に基づき実際に建築された現場の建築物にユーザが赴き、現物の建築物に発生したひび(クラッキング)をスケッチしたものである。そして、本動作においては、電子ペン1には、ドットパターン付き図面5にストローク53を記入したことにより、既にストローク情報の記入情報が記憶されているとともに、当該電子ペン1が既にクレードル3にセットされてコンピュータ装置2との通信が可能状態になっているものとする。また、コンピュータ装置2は、既に図面化プログラムが起動されているものとする。さらに、記憶手段25には、ドットパターンと図面データとが対応付けられた図面属性情報など種々の情報が記憶されているものとする。
まず、入力手段21に電子ペン1に記憶された各ストロークにおける各記入情報の読み出しの指示がなされると、電子ペン1は、各ストローク情報毎の各記入情報をコンピュータ装置2に転送する(ステップS701)。この電子ペン1は、全てのストローク情報を転送すると本動作を終了させる。なお、当該ステップS701の処理において、入力手段21の指示ではなく、電子ペン1がクレードル3にセットされたことを検出し、これを検出した際に自動的にコンピュータ装置2に各ストローク情報の各記入情報を転送するように構成してもよい。
一方、コンピュータ装置2においては、各ストローク情報毎の各記入情報を受信すると(ステップS801)、データ変換部33は、記入情報に含まれるX、Y座標に基づいて記憶手段25に記憶されている一のドットパターン領域情報を検出し、当該特定されたドットパターン領域情報に対応付けられて記憶されている図面データ(CADファイル)を特定する(ステップS802)。なお、データ変換部33は、複数のストローク情報を受信した場合には、ストローク情報毎にX、Y座標に基づいて図面データを特定する。
次いで、データ変換部33は、受信したストローク情報毎に、各ストローク情報の各記入情報、すなわち、ストローク情報に含まれる各X、Y座標(座標データ)を、該当する原点情報及び縮尺情報に基づいて座標変換、すなわち、補正する(ステップS803)。
次いで、データ変換部33は、座標変換されたX、Y座標をベクトルデータに変換し、その変換されたベクトルデータを画像データ(例えば、Bitmapデータ又はGif(Graphics Interchange Format)データ)として、又は、図面構成データとして(例えば、dxfと呼ばれるCADデータ)として保存する(ステップS804)。具体的には、データ変換部33は、座標変換されたX、Y座標を図面データ内の座標にプロットしてストローク情報毎に一の線図となるようにベクトルデータに変換し、画像データ又は図面構成データとして保存する。
なお、このとき、属性情報管理部34は、図面属性情報領域52内に電子ペン1により記入されることで電子ペン1から受信した、検査日や検査項目などの記入情報を、そのストローク(ベクトル)として特定し、その特定されたストロークを画像データとして登録する。
次いで、データ変換部33は、新たなレイヤ(例えば、検査レイヤ)を生成し、記入情報から変換されたベクトルデータを当該レイヤにおける図面構成データとして当該図面データを構成する他の図面構成データと結合させて図面データ化する(ステップS805)。なお、既に検査レイヤなど新たなレイヤがある場合には、更に新たなレイヤ(例えば、検査第2レイヤ)を生成して図面データ化してもよいし、既に存在する検査レイヤにおける図面構成データとして図面データ化するようにしてもよい。
次いで、データ変換部33は、他の図面構成データに結合された図面構成データを、すなわち、既に生成されている図面構成データに重畳された図面構成データを表示手段26の画面(例えば、CAD画面)に表示させ(ステップS806)、本動作を終了させる。なお、このとき、属性情報管理部34は、表示手段26を制御して登録された情報を特定された図面データの所定の領域267に表示させる。
[第2実施形態の効果]
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、情報処理システムSは、ユーザがこのドットパターン付き図面5上に記入した記入情報を既に図面化された図面データに重畳して容易にかつ的確に図面データ化することができるとともに、記入情報に基づいて入力された図面データと既に図面化された図面データとを異なる階層により図面データ化することができるので、図面データの表示や非表示または編集動作を無効にするロックなど図面データの管理を容易することができる。
また、ユーザにとっては、建築物が建てられた現場には、コンピュータ装置2やプリンタ4を持って行かなくとも、印刷出力したドットパターン付き図面5と電子ペン1とを持参して、ドットパターン付き図面5に検査結果を書き込みさえすればよく、検査結果に関する記入情報を保持させた電子ペン1をクレードル3に装着することで簡易にコンピュータ装置2に記入情報を取り込ませることができる。また、同じ建築物に対して検査日を変えて検査結果をドットパターン付き図面5に書き込むようにすれば、検査結果のデータを重畳的に図面表示領域263に表示させることができ、ひび等の経時的な変化を確認することができる。
また、情報処理システムSは、ドットパターン付き図面5を出力する際に、印刷出力される図面データに関する図面属性情報を登録することができるので、出力された図面の検索など出力された図面またはそれに用いた図面データの管理を容易に行うことができるとともに、記入情報を図面データ化する際に、当該記入情報に関する属性情報を生成して登録するので、図面データ化された記入情報に基づくデータの管理を容易することができる。
また、情報処理システムSは、ドットパターン付き図面5を印刷出力する際に、ドットパターンを電子ペン1によって検出可能なインクにより形成させるとともに、図面に関する部分については、電子ペン1によって検出不能なインクにより形成させるので、ドットパターンのみを検出することが可能となり、的確にドットパターンを読み取ることができる。
また、情報処理システムSは、記入情報を例えばCADデータとして図面データ化するので、記入情報を図面データ化することが可能なシステムを幅広く種々のものに適合させることができる。
また、情報処理システムSは、ドットパターン付き図面5を出力する際に、原点座標及び縮尺情報を設定するとともに、当該原点座標及び縮尺情報に基づいて記入情報を図面データ化するので、ドットパターン付き図面5が、図面化された図面データの基準となるサイズに対して拡大または縮小されている場合であっても、すなわち、出力範囲によって異なるサイズによって印刷出力されている場合であっても、記入情報を図面データの縮尺に合わせて的確に図面データ化することができる。特に、情報処理システムSは、ドットパターン付き図面5を印刷出力する際に、原点座標及び縮小情報を設定することができるので、簡易にかつ確実に基準座標点及び縮尺情報を設定することができる。
[変形例]
なお、本実施形態では、基準縮尺と出力範囲の倍率に基づいて縮尺情報によって示される縮尺を算出するようになっているが、単に図面データが100%の倍率で図面表示領域263に表示されている画面に対して拡大表示又は縮小表示された出力範囲の倍率に基づいて当該縮尺を算出するようにしてもよい。また、第1実施形態における変形例を適用してもよい。
3.第3実施形態
次に、図22〜図25を参照して、情報処理システムSの第3実施形態について説明する。第3実施形態の情報処理システムSは、主に、第2実施形態におけるコンピュータ装置2のドットパターンの割当て、図面化プログラムファイル(CADファイル)や図面属性情報の保存、記入情報に基づく検査レイヤの生成等を、コンピュータ装置2にネットワークNを介して接続され、かつ、当該コンピュータ装置2と離隔した所定の場所に設置されたサーバ7によって実行する点で異なる。すなわち、第2実施形態におけるコンピュータ装置2の出力制御部32、データ変換部33、属性情報管理部34の機能をサーバ7に持たせる。第3実施形態の説明にあたっては、第2実施形態と同様の機能を有する部分については同一符号を付してその説明を省略し、第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
図22に示すように、第3実施形態における情報処理システムSは、ユーザによって用いられドットパターンを読み取ることにより、手書きにより図面上に記入された記入情報を生成する電子ペン1と、図面化プログラムを実行するコンピュータ装置2と、電子ペン1をコンピュータ装置2に有線で接続させ、電子ペン1に記憶された記入情報をコンピュータ装置2へ送信するクレードル3と、ネットワーク7を介してコンピュータ装置2に接続され、ドットパターンの割当て、図面化プログラムファイルや図面属性情報の保存、記入情報に基づく検査レイヤの生成等を行うサーバ7と、サーバ7によって割当てられたドットパターンと図面化プログラムによって作成された図面を重畳的にドットパターン付き図面5として印刷出力するプリンタ4とを備える。
[印刷出力処理]
続いて、図23を参照して、第3実施形態の情報処理システムSにおける印刷出力処理の動作について説明する。図23は、サーバ7、コンピュータ装置2、及びプリンタ4が連動して実行される印刷出力処理の動作を示すフローチャートである。
コンピュータ装置2にある図面化プログラム実行部3を用いて作成された図面のCADファイルのデータは、サーバ7に保存されている。したがって、ユーザは、まずコンピュータ装置2によりサーバ7に対して特定のCADデータを読み出してダウンロードするため、CADデータ読出要求を送信させる(ステップS1001)。サーバ7は、コンピュータ装置2からネットワークNを介してCADデータの読出要求を受信すると、特定されたCADデータをサーバ7にある図示しない記憶手段(CADデータ・データベース)から読み出し(ステップS1101)、そのCADデータを、ネットワークNを介してコンピュータ装置2へ送信する(ステップS1102)。コンピュータ装置2は、サーバ7からCADデータを受信すると(ステップS1002)、図面化プログラム実行部31は、CADデータを図面化しCAD画面を表示手段26に表示させる(ステップS1003)。
ユーザは、コンピュータ装置2の表示手段26により表示されたCAD画面において、マウスのドラッグ操作を行うことにより、図面化プログラム実行部31は、ドットパターンとともに印刷出力したい所望の領域を拡大または縮小して表示させる(図13参照)。そのうえで、ユーザは、表示されたCAD画面の印刷出力の指示操作を行う。コンピュータ装置2の処理手段24は、印刷指示を検知すると(ステップS1004)、印刷出力する大きさに応じたドットパターンの割当て要求をサーバ7へ送信する(ステップS1005)。サーバ7は、コンピュータ装置2から送信されたドットパターンの割当要求を受信すると、図示しない記憶手段(ドットパターン・データベース)から印刷出力の大きさに応じて、ドットパターンを割当て(ステップS1103)、その割当てたドットパターンのデータをコンピュータ装置2へ送信する(ステップS1104)。
コンピュータ装置2では、サーバ7からドットパターン・データを受信すると(ステップS1006)、図面化プログラム実行部31は、拡大または縮小表示された結果の画面におけるCAD原点(Xs、Ys)及び縮尺「N/M」を求め、CAD画面上に属性情報表示欄268を表示させる(図14参照)。ユーザが、キーボード入力により、属性情報表示欄268の物件名欄、及び部位名欄に記入する。これにより、図面属性情報であるCADファイル名、CAD原点(Xs、Ys)、縮尺「N/M」、物件情報、部位情報等が設定されたため、図面化プログラム実行部31は、これらの情報を、サーバ7へ送信する(ステップS1007)。
サーバ7は、コンピュータ装置2から送信された図面属性情報を受信すると、割当てたドットパターンの領域と関連付けて、図面属性情報を図示しない記憶手段に記憶する(ステップS1105:図12参照)。一方、コンピュータ装置2の処理手段24は、印刷指示がなされた範囲の図面データと図面属性情報とを赤外線を吸収しないインクにより印刷し、重畳的に印刷される割当てられたドットパターンを赤外線吸収(カーボン含有)インクにより印刷するよう、送信手段27を介してプリンタ4に印刷指示を出力する(ステップS1008)。プリンタ4は、コンピュータ装置2から送信された印刷指示に応じて、ドットパターン付き図面5(図15参照)を印刷出力する(ステップS1201)。
[図面属性情報の設定・送信処理]
次に、図24を参照して、コンピュータ装置2における図面属性情報の設定・送信処理の動作について説明する。この図面属性情報の設定・送信処理は、図23におけるステップS1007にあたる。
コンピュータ装置2において、サーバ7からドットパターン・データを受信すると、図面属性情報の送信準備のため、印刷しようとするCADファイルのファイル名を送信情報として設定する(ステップS1007A)。続けて、図面化プログラム実行部31は属性情報表示欄268を表示し、ユーザにより入力された物件情報及び部位情報を送信情報として設定する(ステップS1007B)。さらに、図面化プログラム実行部31は、求めたCAD原点(Xs、Ys)、縮尺「N/M」も送信情報として設定する(ステップS1007C)。そのうえで、図面化プログラム実行部31は、これらの情報を、サーバ7へ送信する(ステップS1007D)。なお、ステップS1007A〜S1007Cの順序はこれに限られず、適宜変更してもよい。
[図面データ化処理]
次に、図25を参照して、電子ペン1でドットパターン付き図面5に記入されることによって生成された記入情報を、図面データ化する処理について説明する。図25は、電子ペン1、コンピュータ装置2及びサーバ7の連動により、電子ペン1によって保持されている記入情報を図面データ化する図面データ化処理の動作を示すフローチャートである。
ユーザが、設計図面に基づき実際に建築された現場の建築物に赴き、現物の建築物に発生したひび(クラッキング)をスケッチしたり、検査日や検査項目を記入すると(図16参照)、電子ペン1は、筆跡に沿って極小的にドットパターンを読み取って位置座標を演算による求めて記入情報を生成し、メモリ109に記憶する。そして、電子ペン1をクレードル3に差し込む(図22参照)。そして、コンピュータ装置2の入力手段21の操作により、記入情報の読み出し指示がされると、電子ペン1は、クレードル3を介してメモリ109に記憶していた各ストロークの記入情報をコンピュータ装置2へ送信する(ステップS1301)。なおここで、電子ペン1をクレードル3に差し込むことで、電子ペン1が自動的に記入情報をコンピュータ装置2へ送信するようにしてもよい。
コンピュータ装置2は、インターフェース22により記入情報を受信すると、処理手段24は、その記入情報をサーバ7へ送信する(ステップS1401)。サーバ7は記入情報を受信すると(ステップS1501)、ドットパターン領域情報を参照して記入情報に含まれるX、Y座標に基づき、対応付けられているCADファイルを特定する(ステップS1502)。続いて、サーバ7は、受信した各ストローク情報の記入情報に含まれるX,Y座標(座標データ)を、該当する原点情報及び縮尺情報に基づいて座標変換して補正する(ステップS1503)。さらに、サーバ7は、座標変換されたX、Y座標をベクトルデータに変換し、そのベクトルデータを画像データ(例えば、Bitmapデータ又はGif(Graphics Interchange Format)データ)として、又は、図面構成データとして(例えば、dxfと呼ばれるCADデータ)として保存する(ステップS1504)。なおこのとき、図面属性情報領域52(図16参照)に電子ペン1により記入された検査日や検査項目などの記入情報を、そのストローク(ベクトル)として特定し、その特定されたストロークを画像データとして登録する。
次いで、サーバ7は、新たなレイヤ(例えば、検査レイヤ)を生成し、記入情報から変換されたベクトルデータをそのレイヤにおける図面構成データとして図面データを構成する他の図面構成データと結合させて図面データ化する(ステップS1505)。なお、既に検査レイヤなど新たなレイヤがある場合には、更に新たなレイヤ(例えば、検査第2レイヤ)を生成して図面データ化してもよいし、既に存在する検査レイヤにおける図面構成データとして図面データ化するようにしてもよい。さらに、サーバ7は、このようにして記入情報を反映したCADデータをコンピュータ装置2へ送信する(ステップS1506)。コンピュータ装置2は、サーバ7からCADデータを受信すると、図面化プログラム実行部31は、送信されたCADデータに基づいて、記入情報が反映されたCAD画面(図17及び図18参照)を表示手段26に表示させる(ステップS1402)。
[第3実施形態の効果]
第3実施形態においては、第2実施形態における効果に加えて、コンピュータ装置2にドットパターンを管理し割当てる権限がなくとも、ドットパターンを管理し割当てるサーバ7にアクセスすることで、ドットパターン付き図面5をプリンタ4に印刷出力させることができる。また、コンピュータ装置2に、印刷する範囲を拡大または縮小させる場合に、それに対応させて割当てられたドットパターンを管理する機能がなくとも、サーバ7にその機能を代用させることもできる。また、コンピュータ装置2の記憶手段25の記憶容量が少なくとも、サーバ7に、CADファイルやドットパターン領域情報等の情報を記憶させることができる。
[変形例]
第2実施形態の変形例と同様に、第3実施形態においても、図面データが100%の倍率で図面表示領域263に表示されている画面に対して拡大表示又は縮小表示された出力範囲の倍率に基づいて縮尺を算出するようにしてもよい。また、第1,2実施形態で述べた変形例を第3実施形態に適用してもよい。
また、図面データ化処理においては、記入情報の原点座標及び縮尺に基づく座標データの補正、記入情報の画像データ又はCADデータへの変換、検査レイヤの生成をサーバ7で行うようにしたが(ステップS1503〜S1504:図25参照)、これに限らず、これらの機能をコンピュータ装置2に持たせ、ステップS1502においてCADファイルを特定した段階で、そのCADファイル及びドットパターン領域情報等の必要な情報をサーバ7からコンピュータ装置2にダウンロードさせ、コンピュータ装置2によりこれらの機能を実行させて、記入情報が反映されたCAD画面を表示させるようにしてもよい。そして、ユーザがコンピュータ装置2において適宜CAD画面上でCADデータを編集したうえで、サーバ7にCADデータをアップロードして上書き保存などをするように構成してもよい。
また、上記第3実施形態では、CADデータはサーバ7に保存されていたが、コンピュータ装置2に保存するようにしてもよい。この場合、図23のステップS1001、1002、1101、1102は、コンピュータ装置2の記憶手段25に記憶したCADデータを読み出すこととなる。そして、図25における図面データ化処理においては、サーバ7へ記入情報が送信され、サーバ7によって原点座標及び縮尺を基に補正された座標データがコンピュータ装置2へ送信され、その座標データがコンピュータ装置2においてCADデータとして取り込まれて表示、保存されるように構成するとよい。
また、上記第3実施形態においては、印刷出力する用紙のサイズを変えることができるようにしたが、予め印刷出力する用紙のサイズを固定し、割当てるドットパターンの領域の大きさも用紙サイズの大きさに対応して固定してもよい。また、上記第3実施形態では、第2実施形態のように、CAD図面を画面上で拡大または縮小させて印刷出力する範囲を変え、図面属性情報を設定できるようにしたが、第1実施形態のようにそのような機能を省略してもよい。