JP4901413B2 - 浸食防止方法と浸食防止部を備えた部材 - Google Patents
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Description
本発明は、浸食環境下で使用されるタービン翼などの部材の浸食防止技術に係り、特に、硬質材料をレーザや電子ビームなどの高密度エネルギー照射で肉盛溶接する浸食防止方法および浸食防止部を備えた部材に関するものである。
一般に、タービン機器内にはタービン回転翼などの部材が使用されている。図4は蒸気タービンの構造を示す断面図であり、図4中の符号1は主蒸気管、2は再熱蒸気管、3はタービンロータ、4は低圧外部ケーシング、6はクロスオーバー管である。低圧外部ケーシング4内部には低圧内部ケーシング5が収納され、この低圧内部ケーシング5の内側にタービン動翼7およびタービン静翼8が配置されている。
タービン動翼7およびタービン静翼8は、蒸気中に含まれる水滴や酸化スケールの微粉によって浸食を受ける浸食環境下にある。特に、タービン駆動用の蒸気に水滴が混じる後方段階では、その水滴により多大な浸食が発生する。また、タービン後方の翼列では、翼長の大きな部材が用いられるので、周速が大きくなり、厳しい浸食環境となる。このようなタービン翼の浸食は、浸食による減肉化はもちろん問題であるが、浸食部位を起点としたタービン翼の疲労破壊が過去の蒸気タービンの事故原因にもなっているため、疲労破壊を起こすリスクが最も危惧されている。
そこでタービン翼など浸食を受け易い部材に関しては、その耐久性を高めて安全性を確保するために、従来、様々な浸食防止対策がなされてきた。すなわち、浸食の発生が予想される部位に局部的に火炎もしくは高周波を用いた焼入れを施す手法、翼形状に整形したステライトなどの鍛造品をろう付けや溶接によって取り付ける手法、プラズマ溶接を用いて部材自体に直接肉盛溶接する手法などが提案されている。
また近年では、電子ビームやレーザといった105W・cm2以上の高エネルギー密度熱源を用いた低入熱の肉盛溶接方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このうち、電子ビームを用いた溶接方法は、タービン翼の浸食防止に数多くの実績があり、鍛造のステライトをタービン回転翼に溶接する方法は1970年代から盛んに適用されている。また、レーザを用いた溶接方法は、90年代から試験研究が行われており、1−2mm程度のステライト層を翼面に肉盛する方式が適用されている。
このような電子ビームやレーザを用いた肉盛溶接方法によれば、低入熱であるため、部材の劣化や変形を最小限に抑えることができ、しかも部材上に肉盛部のみを形成するだけで済む。したがって、部材への負荷が少なく、部材に対し浸食防止機能を安価に付与できる手法として有効である。具体的には、特許文献1に記載されているように、コバルト基の硬質材料であるステライトを翼形状の母材上に直接肉盛溶接することが既に実用化されている。
特開平9−314364号公報
以上述べたように、浸食を受け易い部材の浸食防止方法は、部材の耐久性向上と、部材を組み込んだ機器の安定性・安全性を確保する上で不可欠な技術であり、常にその改善が望まれている。特に、厳しい浸食環境下にあるタービン翼においては、その先端部近傍の周速の大きな部分や、周縁部などの体積当たりの表面積が大きな部分、あるいは部材厚さが薄い部分などに発生する浸食に対しては、十分な対策をとることが要請されている。
中でも、翼長の大きなタービン翼は、部材の軽量化を図るべく翼の肉厚を薄くする傾向にあり、部材を薄くする分、高強度の材料を用いることが多い。高強度の材料は部材を薄くして軽量化には寄与するが、溶接加工は難しいという難点がある。例えば、高強度の鋼種を用いて厚さを10mm以下とした薄いタービン回転翼を製造した場合、このような薄い部材に対し大きな入熱を与える焼入れや焼き戻しといった手法では、材料特性を低下させる懸念がある。また、タービン翼の厚さが薄ければ、僅かな変形が生じただけでも、タービンの性能に与える影響も大きくなる。そのため、浸食の防止に関してはいっそう注意が必要となっている。
ところで、高強度の材料を得るために、焼き入れや焼き戻しで強度を調整する鋼以外にも、析出強化型の17−4PHのような鋼を用いる場合もある。しかし、析出強化型の鋼を用いたタービン回転翼では、焼き入れによる硬さの改善は期待できない。これは、ろう付けのように800度以上の温度で処理した場合、広範囲で部材の強度が低下してしまい、本来の材料特性を発揮できないためである。
また、翼形状に整形したステライトなどの鍛造硬質材料を、ろう付けや溶接によって浸食対策の必要な部位に取り付ける手法は、浸食防止手法として広く認知されているが、硬質材料となるコバルト基のステライト鍛造品が非常に高価である点が問題となっている。その上、ステライトの開先加工が難しく、加工コストが高いので、タービン翼製造コストの上昇要因となっていた。
入熱量の大きな溶接方法が持つ上記の課題、すなわち材料の劣化や変形、さらにはコストの増大といった課題を解消する方法としては、前記特許文献1などのように、電子ビームやレーザといった高密度エネルギーを用いた肉盛溶接方法が有効であると考えられている。しかしながら、従来の肉盛溶接方法には次のような課題が指摘されていた。すなわち、ステライトは通常、1.0wt%程度の多くの炭素を含むため、低入熱であっても溶接によって母材とステライト層が混ざり合うことで複雑な炭素の希釈層が形成される。この炭素希釈層は、肉盛溶接部分に高温割れを招きやすく、溶接施工上、好ましくなかった。
また、炭素の希釈層形成といった問題以外にも、ステライトの肉盛量が大きくなると、肉盛溶接による収縮の残留応力(引張残留応力)が増大するが、この残留応力は溶接後の熱処理で大きく改善することが難しく、タービンの運転環境下で、残留応力に起因して肉盛部分の端部が剥れるような割れや、溶接金属部での割れが発生することがある。
しかも、レーザを用いてステライトの肉盛溶接を実施すると、ステライト溶接金属部の硬さが通常の鍛造品に比べて非常に大きな値になる。例えば、ステライトNo.6を用いた場合、鍛造品がロックウェルCスケールで35から40前後であるのに対し、レーザを用いた肉盛溶接部では50以上の高い値を示す。つまりレーザを用いた肉盛溶接部は極めて硬いため、溶接部の割れ感受性も高い状態となる。このような肉盛溶接部の硬さの上昇は、強度が高くなる反面、延靭性の低下を伴うことになる。つまり、肉盛溶接部の硬さが、かえって肉盛部分の端部が剥れるような割れや溶接金属部での割れの発生を助長させている。
以上のように、従来技術においては、タービン翼など浸食が発生し易い部位を有する部材に対し、低コストで浸食を防止可能であり、しかも浸食防止部分に割れなどが生じることなく施工効率が良好な浸食防止技術の開発が待たれていた。
本発明は、上記の事情に鑑みて提案されたものであり、浸食が発生し易い部位を有する部材に対し、浸食防止機能を安価且つ確実に付与することができ、製造時および使用時にかけて浸食防止機能を安定して発揮できる経済性・信頼性に優れた浸食防止方法を提供し、さらに、そのような方法を用いることにより安価で安定した浸食防止部を備えた部材を提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために、本発明の浸食防止方法は、浸食環境下で使用される部材の浸食防止方法において、硬質材料の粉末を高密度エネルギー照射で溶融させ肉盛溶接して硬質層を形成し、前記部材の一部を局部的に前記硬質層に置き換えて浸食防止部を設けることを特徴としている。
また、本発明の浸食防止部を備えた部材は、以上のような浸食防止方法により浸食防止部を設けた点に特徴がある。
本発明によれば、浸食環境下で使用される部材の一部に、硬質材料の粉末を高密度エネルギー照射で溶融させ肉盛溶接して硬質層を形成することで、局部的に部材の材料を硬質層に置き換えることができ、浸食防止部を所望の領域に容易に設けられるので、高価な硬質材料の鍛造品を溶接する場合に比べて、大幅に製造コストを低減することが可能である。
[代表的な実施形態]
(構成)
以下、本発明を適用した浸食防止方法の代表的な実施形態について、図1〜図3を参照して具体的に説明する。
(構成)
以下、本発明を適用した浸食防止方法の代表的な実施形態について、図1〜図3を参照して具体的に説明する。
図1は本実施形態に係る浸食防止方法の一例を示しており、図1中の(a)はタービン回転翼41を示す斜視図、(b)は(a)に示すタービン回転翼41の先端部を示す拡大図、(c)はタービン回転翼41の先端部の対象部位42(点線で囲んだ部分)に代えて浸食防止部43を設けた状態を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の浸食防止方法は、浸食環境下で使用されるタービン回転翼41を対象部材とした浸食防止方法であって、その翼リーディングエッジ部を浸食対策が必要な対象部位42として、ここに硬質材料の粉末をレーザで溶融させ肉盛溶接し、翼形状の一部を局部的に硬質材料に置き換えることで浸食防止部43を設けたことを特徴としている。なお、前述した特許文献1では翼形状をなす母材の上に肉盛溶接するバタリング方式であったが、本実施形態はこの方式ではなく、翼形状の一部だけを肉盛溶接で形成して置き換える翼形状の成形方式を採用している。
すなわち、図1の(b)に示すように、タービン回転翼41における浸食対策が必要な対象部位42を切り取って、切り取った部分に粉末の硬質材料を肉盛溶接して浸食防止部43を設けている。つまり、対象部位42を、図1の(c)に示すように浸食防止部43にて復元形成させている。
浸食対策が必要な対象部位42とは、使用環境下で液滴および固体粒子による浸食が発生し易い部位であって、ここでは、タービン回転翼41における先端部近傍の周速の大きな部位などの、対象部材1における動作速度が局部的に大きな部位、対象部材1における周縁部などの体積あたりの表面積が局部的に大きな部位、あるいは局部的に厚さが薄い部位などである。
続いて、図2を用いて本実施形態の施工方法の概略について説明する。図2は、本実施形態の施工方法の概略について説明するための図であり、図2中の(a)は、本実施形態に係る浸食防止方法を示すイメージ図、(b)は(a)の模式的なA矢視断面図である。図2に示すように、タービン回転翼41などの対象部材1において、タービン回転翼41運転時での液滴および固体粒子による浸食が発生し易い部位に対し、中間層2および硬質層3の材料となる粉末材料7を溶接材料供給手段5により供給しながら、レーザ光源6からレーザ照射して、レーザによる肉盛溶接を実施し、上下2層構造の浸食防止部4を形成する。
中間層2は、延靭性に優れた材料の粉末をレーザで溶融させ肉盛溶接して形成した部分であり、硬質層3と対象部材1の母材との中間部分に0.5〜3.0mmの厚さで形成される。また、中間層2を構成する材料としては、ステライトなどの硬質材料に比べて強度と硬さの低いオーステナイト系ステンレスあるいはオーステナイト組織で特に炭素を固溶しない固溶強化型のNi基合金が用いられている。
硬質層3はステライトなどの硬質材料の粉末をレーザで溶融させ肉盛溶接して形成した部分であり、次の表1に示すような材料が使用されている。
(作用効果)
以上のような本実施形態の作用効果は、次の通りである。すなわち、本実施形態では、タービン回転翼41の翼形状の一部である翼リーディングエッジ部を浸食対策が必要な対象部位42とし、これをいったん切り取り、ここにレーザによる肉盛溶接を用いた浸食防止部43を復元形成することにより、タービン回転翼41における浸食が発生し易い部位に対して優れた浸食防止機能を持たせることが可能であり、信頼性の向上を図ることができる。特に、翼長が大きく、翼の肉厚の薄い高強度材を用いたタービン回転翼41の浸食防止に大きな効果を発揮する。
以上のような本実施形態の作用効果は、次の通りである。すなわち、本実施形態では、タービン回転翼41の翼形状の一部である翼リーディングエッジ部を浸食対策が必要な対象部位42とし、これをいったん切り取り、ここにレーザによる肉盛溶接を用いた浸食防止部43を復元形成することにより、タービン回転翼41における浸食が発生し易い部位に対して優れた浸食防止機能を持たせることが可能であり、信頼性の向上を図ることができる。特に、翼長が大きく、翼の肉厚の薄い高強度材を用いたタービン回転翼41の浸食防止に大きな効果を発揮する。
しかも、浸食対策が必要な対象部位42を切り取って、切り取った形状と同じ形状の鍛造品を溶接接合する方式は従来存在するが、前述したように、この方式はコストが高く、経済的に不利であった。このような従来方式に比べて、硬質材料の粉末をレーザにて肉盛溶接することにより切り取った部分だけを復元する本実施形態の方式は、製作コストの削減に大きな効果をもたらすことが期待できる。
さらに、本実施形態では、対象部材1の母材の上に硬質層3を直接形成するのではなく、母材と硬質層3との間に0.5mm以上の中間層2を介在させているので、次のような利点がある。まず、対象部材1の母材と硬質層3の硬質材料が混ざり合うことがない。このため、中間層2として炭素含有量の少ない材料を使用することで、炭素含有量の多い材料を母材上に直接肉盛溶接した場合に生じていた炭素希釈層の形成を回避可能である。したがって、対象部材1の母材が鉄基である場合に炭素を固溶しないNi基合金を中間層2とすれば、硬質層3における炭素希釈層の形成を極めて効果的に防止でき、溶接施工上の信頼性を大幅に改善することができる。
また、中間層2の存在は、製造時の収縮の残留応力(引張残留応力)に起因する肉盛部分の端部が剥れるような割れや溶接金属部での割れ発生に対しても大きな効果がある。この点について図3を参照して説明する。図3の(a)は、中間層2による残留応力の軽減効果を説明するためのグラフであって、中間層2を設けない場合(従来例)の最大残留応力と、中間層2を設けた場合(本実施形態)の最大残留応力の計測結果を示している。
このグラフからも明らかなように、中間層2を有する本実施形態の最大残留応力は低い値となっており、応力腐食割れの発生するリスクを軽減させることが可能であり、残留応力に起因する肉盛部分端部や溶接金属部の割れを確実に防ぐことができる。なお、図4の(b)は、残留応力の計測に使用した試験片21とその計測位置22を示す模式的な斜視図である。
また、中間層2の介在していることで、万が一硬質層3で割れが生じたとしても、硬質層3から伸展してきた割れの伝播を遅らせるかまたは阻止することができるといった効果もある。さらに、中間層2の厚さは、3mmを上限としたので、溶接継手部の高サイクル疲労強度や、翼面に露出する中間層の耐浸食性も確保することができる。
さらに、本実施形態は粉末材料7を用いたレーザ溶接で中間層2を形成させることにより、低入熱の条件で肉盛溶接を実施しており、溶接入熱による対象部材1の母材における材料特性の低下を回避することができる。一般に用いられるEBWやTIGによる溶接施工では母材の熱影響部が1mm以上となるのに対し、本実施形態によれば、熱影響部を1mm以下に抑えることが可能となる。
[他の実施形態]
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で他にも多種多様な変形例が実施可能である。例えば、実施形態中で記載した材料は一例にすぎず、本発明において、硬質材料や中間層を構成する材料としては、他にも各種の材料を適宜選択可能である。
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で他にも多種多様な変形例が実施可能である。例えば、実施形態中で記載した材料は一例にすぎず、本発明において、硬質材料や中間層を構成する材料としては、他にも各種の材料を適宜選択可能である。
また、上記実施形態では浸食防止部4を2層構造としているが、硬さの異なる3種類以上の材料を肉盛溶接することで、浸食防止部4の硬さを段階的に変化させる実施形態も包含する。このような実施形態によれば、母材から硬質層に至る断面の硬さをより滑らかにすることができ、残留応力はいっそう低減する。
さらに、本発明は、タービン回転翼を対象部材とした浸食防止手法として好適であるが、タービン静翼などの他のタービン部品に対しても同様に適用可能であり、同様に優れた効果が得られるものである。さらに、タービン以外の各種の機器についても、浸食環境下で使用される各種の部材に対して同様に適用可能であり、同様に優れた効果が得られるものである。
硬質層3を構成する硬質材料としては、ステライトだけでなく、コバルト基合金を用いてもよい。耐浸食性に優れるコバルト基合金の積層高さは、部材の経年的な損傷状態に直接影響するので、鉄基合金からなる部材を母材とする場合、鉄基合金の母材に比べてコバルト基合金の浸食速度は半分以下に改善できる。タービン回転翼41にコバルト基合金の硬質層3を適用する場合、翼リーディングエッジ部の浸食は、エッジ部分付近から始まるため、積層高さ5mm以上のコバルト基合金を用いることで、浸食防止効果をより高めることができる。
また、粉末材料をレーザで溶融させ肉盛溶接する際、1バスあたりの積層高さが1mm以下の小入熱の溶接ビードを多層で積層した方法も包含する。このような浸食防止方法を用いて、タービン回転翼41のリーディングエッジ先端部分を翼形状に形成した場合、中間層2、硬質層3に関わらず、1パスあたりの積層高さが1mm以下とする小入熱の溶接ビードを多層で積層させる。この実施形態によれば、溶接入熱による母材の材料特性の低下や翼の変形が生じるおそれがない。特に、1パスあたりの積層高さを1mm以下としたことで、溶接施工時に発生する融合不良を確実に防ぐことができる。
レーザを用いた肉盛溶接で、溶接中150℃以上に予熱した状態で、中間層2としては線膨張係数の大きなオーステナイト系ステンレスを、硬質層3としてはステライトを用いて多層盛させて、浸食防止部4を設けるようにしてもよい。すなわち、硬質層3にステライトの粉末を用いる場合、溶接による収縮が大きいため残留応力が大きくなる傾向がある。そこで、150℃の予熱状態で線膨張係数の大きな中間層2を設けることにより残留応力の低減化を図っている。これにより、製造時の収縮の残留応力(引張残留応力)に起因する肉盛部分端部が剥れや溶接金属部の割れを、いっそそう確実に抑える効果があり、製造時および運転時での信頼性が向上する。
また、レーザで溶融させ肉盛溶接した後、溶接部を研磨仕上げする浸食防止方法も含まれる。この方法によれば、溶接部を研磨して表面を滑らかな表面に仕上げることができるため、溶接ビード端部のノッチ効果による疲労強度の低下やタービン翼の性能への悪影響がない。
さらに、部材の材質が析出強化型の鋼である場合、溶体化時効状態でレーザを用いた肉盛溶接を行い、溶接後、再度、時効熱処理を行っても良い。一般的に析出強化型の鋼を材料とした部材では、時効熱処理後は母材の強度が増して溶接性が悪くなる。そのため、溶体化状態で溶接している。本手法では、レーザにより溶接入熱を小さく抑えていることから、時効熱処理後の状態でも溶接可能なのが特徴である。また、溶接後に母材の熱影響部で溶体化状態になる部位が生じるため、溶接後、再度、時効熱処理を行うことで母材強度を回復させ、継手強度を回復させることが可能である。
また、前記実施形態においては、高密度エネルギー照射としてレーザを用いた場合について説明したが、本発明においては、レーザに限らず、電子ビームなどの他の高密度エネルギー照射を適用することも可能であり、同様に優れた効果が得られるものである。
1…対象部材
2…中間層
3…硬質層
4…浸食防止部
5…溶接材料供給手段
6…レーザ光源
7…粉末材料
21…試験片
22…計測位置
41…タービン回転翼
42…対象部位
43…浸食防止部
2…中間層
3…硬質層
4…浸食防止部
5…溶接材料供給手段
6…レーザ光源
7…粉末材料
21…試験片
22…計測位置
41…タービン回転翼
42…対象部位
43…浸食防止部
Claims (12)
- 浸食環境下で使用される部材の浸食防止方法において、
硬質材料の粉末を高密度エネルギー照射で溶融させ肉盛溶接して硬質層を形成し、前記部材の一部を局部的に前記硬質層に置き換えて浸食防止部を設けることを特徴とする浸食防止方法。 - 前記部材がタービン翼であり、該タービン翼の翼リーディングエッジ部に前記浸食防止部を設けることを特徴とする請求項1に記載の浸食防止方法。
- 前記硬質層と前記部材の母材の中間部分に延靭性に優れた材料からなる中間層を形成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の浸食防止方法。
- 前記中間層を0.5〜3.0mmの厚さに形成することを特徴とする請求項3に記載の浸食防止方法。
- 前記延靭性に優れた材料の粉末を高密度エネルギー照射で溶融させ肉盛溶接することにより前記中間層を形成することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の浸食防止方法。
- 高密度エネルギー照射で溶融させ肉盛溶接する際、溶接中150℃以上に予熱した状態で、前記延靭性に優れた材料として線膨張係数の大きなオーステナイト系ステンレスを用いて多層盛することを特徴とする請求項5に記載の浸食防止方法。
- 前記延靭性に優れた材料として固溶強化型のNi基合金を用いることを特徴とする請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載の浸食防止方法。
- 前記硬質材料として積層高さ5mm以上のコバルト基合金を用いることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の浸食防止方法。
- 高密度エネルギー照射で溶融させ肉盛溶接する際、1バスあたりの積層高さが1mm以下の小入熱の溶接ビードを多層で積層することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の浸食防止方法。
- 高密度エネルギー照射で溶融させ肉盛溶接した後、溶接部を研磨仕上げすることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の浸食防止方法。
- 前記部材に用いる材質が析出強化型の鋼である場合、溶体化時効状態で高密度エネルギー照射で溶融させ肉盛溶接を行い、溶接後、再度、時効熱処理を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の浸食防止方法。
- 浸食環境下で使用される部材であって、硬質材料の粉末を高密度エネルギー照射で溶融させ肉盛溶接し、前記部材の一部を局部的に硬質層に置き換えて浸食防止部を設けたことを特徴とする浸食防止部を備えた部材。
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