JP7163009B2 - 高温摺動部材および蒸気タービン - Google Patents

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Description

本発明は、高温で使用される摺動部材および蒸気タービンに関するものである。
例えば蒸気タービンの蒸気弁における弁体や弁座については、熱衝撃やエロ―ジョン、コロージョン等による摩耗や亀裂の発生、損傷を防止するため、耐熱衝撃性と耐食性を有し、Cr鋼等の鉄基材料からなる母材よりも高硬度のCo-Cr系耐熱合金、すなわち商品名「ステライト」として知られる合金を含む耐熱合金を、相手材と当接する部位に肉盛溶接することが、従来から行われている。
この種のCo-Cr系耐熱合金を肉盛溶接した部位(相手材との当接部位)の性能を向上させるための技術、とりわけ肉盛溶接部位の亀裂発生を抑制するための試みが従来からなされている。
例えば特許文献1では、蒸気タービン等に用いられる蒸気弁として、ステライト肉盛部の周方向に間隔をもってスリット部を形成し、そのスリット部に、埋め込み部材、望ましくは弁母材の線膨張係数とステライト材の線膨張係数との中間の線膨張係数を有する埋め込み部材を設けた蒸気弁が提案されている。この提案では、ステライト肉盛部の周方向の残留応力が緩和されて、肉盛部における亀裂発生を緩和できるとされている。
また特許文献2では、蒸気タービン弁等の高温摺動部材として、ステライト肉盛に先立ち、延性の大きいNi基合金を母材表面に肉盛形成し、その上にステライト肉盛を行うことが示されている。この特許文献2の技術によれば、主として熱応力による亀裂発生を防ぐことができるとされている。
特開2010-236385号公報 特開平8-215842号公報
蒸気タービン等に用いられる蒸気弁の弁体や弁座は、使用中に高温蒸気によって例えば500~700℃程度の高温に曝される。しかるに、鉄基材料からなる母材の表面にステライト肉盛を行った従来の一般的な弁体、弁座では、肉盛溶接時における高温での運転中に肉盛溶接部の硬度が異常に高くなって靭性が低下することがある。そのため、使用中の弁開閉動作による衝撃や熱応力によって、肉盛溶接部に亀裂が発生してしまうことがある。
しかしながら特許文献1の技術では、上記のような運転中の高温で異常硬化が生じることは避け得ず、その異常硬化に起因する開閉衝撃等による亀裂発生の問題を確実に回避することは困難である。
また特許文献2の技術では、ステライト肉盛に先立ってNi基合金を肉盛するため、その製造のために高コスト化を招かざるを得ず、また工期の点でも問題がある。
本発明は以上の事情を背景としてなされたもので、高温下で相手材に接する高温摺動部材として、使用中の高温によって肉盛溶接部に異常硬化が生じることを防止し、異常硬化に伴う靭性の低下によって肉盛溶接部に亀裂が発生することを防止し得る高温摺動部材であって、且つその製造にあたって高コスト化や工期の問題も生じないようにした高温摺動部材、およびそれを用いた蒸気タービンを提供することを課題としている。
本発明者等が、上記の課題を解決するべく、鋭意実験、検討を重ねたところ、肉盛金属中への母材成分の溶け込み(希釈)の状況・程度が、高温での使用による異常硬化の発生に大きく影響を与えていることを新規に知見した。そして、母材成分による希釈を適切に管理することによって、前記課題を解決し得ることを見い出し、本発明をなすに至った。
具体的には本発明の基本的な態様(第1の態様)の高温摺動部材は、鉄基材料からなる母材部と、Co-Cr系耐熱合金によって前記母材部の表面に形成された厚み2~5mmの肉盛溶接部とを有し、前記肉盛溶接部の厚み方向に前記母材部との界面から0.2mm~0.8mmの範囲内の領域での、母材成分による希釈率が10~30%の範囲内であり、前記Co-Cr系耐熱合金の成分組成が、質量%で、Cr:24.0~32.0%、C:0.2~3.5%、Fe:3.0%未満、残部がCo及び不純物のみからなり、前記希釈率は、前記界面から0.2mm~0.8mmの前記範囲内の前記領域における分析した溶接金属(肉盛溶接後の前記肉盛溶接部の金属)の特定成分の成分量(濃度)をQ1、前記肉盛溶接のために供給される肉盛材料(溶加材)の同じ特定成分の成分量(濃度)をQ2、前記母材の同じ特定成分の成分量(濃度)をQ3とすれば、下記式(2)によって表されることを特徴とするものである。
希釈率Pz(%)={(Q1-Q2)/(Q3-Q2)}×100・・・(2)
ここで、母材部の表面に肉盛溶接部を形成するにあたっては、母材成分が溶接金属中に溶け込み、肉盛材料(溶加材)の成分が母材成分によって希釈される。そして本発明者等の知見によれば、母材の主成分であるFeが、Co-Cr系耐熱合金からなる肉盛溶接部に多量に溶け込んでいる場合、500℃から700℃程度の高温での使用中に、熱時効によって、肉盛溶接部にFe-Cr系金属間化合物であるσ相が析出することが判明している。σ相は著しく硬いため、σ相が多量に析出すれば、肉盛溶接部が異常硬化し、靭性が低下して、弁の開閉の衝撃や高温による熱応力などにより肉盛溶接部に亀裂が発生しやすくなる。
しかるに、上記の第1の態様によれば、肉盛溶接部の厚み方向に母材部との界面から0.2mm~0.8mmの範囲内の領域での、母材成分による希釈率を30%以下に規制することによって、高温での使用中における熱時効に起因してσ相が生成することを抑制し、これによって異常硬化を回避し、肉盛溶接部における割れ発生の危険性を最小限に抑えることが可能となる。また、上記の希釈率を10%以上とすることによって、肉盛溶接部と母材部との界面における融合不良の発生を回避することができる。また、特許文献2に示される技術のような、ステライト(Co-Cr系耐熱合金)の肉盛に先立ってNi基合金を肉盛しなくて済むため、その製造にあたってのコストの上昇も少なく、また生産性を阻害することもない。
また本発明の第2の態様の高温摺動部材は、前記第1の態様の高温摺動部材において、前記希釈率が、12~28%の範囲内であることを特徴とすることを特徴とする。
また本発明の第3の態様の高温摺動部材は、前記第1の態様もしくは第2の態様の高温摺動部材において、前記希釈率が、前記肉盛溶接部の前記領域内のFe濃度とCo濃度とのうち、いずれか一方の濃度により算出した値、もしくはFe濃度により算出した値とCo濃度により算出した値との平均値であることを特徴とする。
また本発明の第の態様の高温摺動部材は、前記第1~第のいずれかの態様の高温摺動部材において、前記母材部を構成する鉄基材料が、Feを75mass%以上含む耐熱鋼であることを特徴とする。
また本発明の第の態様の高温摺動部材は、前記第1~第のいずれかの態様の高温摺動部材において、その高温摺動部材が、蒸気タービンにおける蒸気弁の弁体もしくは弁座であることを特徴とする。
また本発明の第の態様の蒸気タービンは、前記第1~第のいずれかの態様の高温摺動部材が、蒸気弁の弁体もしくは弁座に用いられていることを特徴とする。
本発明の1態様の高温摺動部材によれば、使用中の高温によって肉盛溶接部に異常硬化が生じることを防止し、異常硬化に伴う靭性の低下によって肉盛溶接部に亀裂が発生することを防止することができ、且つその製造にあたって高コスト化や工期の問題も生じない。
本発明の一実施形態の高温摺動部材として、蒸気タービンの蒸気弁に使用される弁体の一例を示す縦断面図である。 図1における丸囲い部分IIの拡大図である。 鉄基材料からなる母材にCo-Cr系耐熱合金を肉盛溶接した部材について、600℃に加熱した場合の、種々の希釈率での、加熱時間とビッカース硬さとの関係を示すグラフである。 肉盛溶接部の希釈率と、実機蒸気タービンにおける運転後の肉盛溶接部のビッカース硬さとの関係を示すグラフである。 肉盛溶接部の希釈率と融合不良発生確率との関係を示すグラフである。
以下に本発明の一実施形態の高温摺動部材について説明する。なお以下の実施形態は、蒸気タービンの蒸気弁の弁体に適用した例として示す。
<弁体の全体構成>
図1には、高温摺動部材としての蒸気弁の弁体1の全体形状を示す。
図1において、弁体1の全体の形状は、従来から蒸気タービンの蒸気弁の形状と同様であればよい。この弁体1は、鉄基材料からなる母材部2のうち、相手材である弁座(図示せず)の弁座シート部に当接する部位、すなわち先端側の周縁部2Aに、Co-Cr系耐熱合金が肉盛溶接されて、肉盛溶接部3が形成されている。この肉盛溶接部3を拡大して図2に示している。
肉盛溶接部3においては、既に述べたように、肉盛溶接施工時に、母材表面部位も溶融される結果、母材成分が溶け込み、肉盛材料であるCo-Cr系耐熱合金が、母材成分によって希釈される。母材部2の成分が肉盛溶接部3に溶け込んでいる状況を、図2においてドットで模式的に表現している。
このように母材成分により溶接金属が希釈された度合を一般に希釈率と称しているが、本実施形態では、後に改めて説明するように、肉盛溶接部3において、その厚み方向に、母材部との界面4から0.2mm~0.8mmの範囲内の領域Zでの、母材成分による希釈率Pzを規定している。すなわち、上記領域Zにおける希釈率を10~30%の範囲内、好ましくは12~28%の範囲内としている。
なお肉盛溶接部3の厚み(母材部の表面に対して垂直な方向の肉盛溶接部断面の厚み)は特に限定しないが、一般的な蒸気タービンの蒸気弁の弁体や弁座の場合、2~5mm程度である。
<母材の材料>
母材部の材料(母材)である鉄基材料は、従来から蒸気弁の弁体や弁座に使用されているFe基の耐熱材料、すなわち耐熱鋼と称されるものが好ましく、基本的には限定されないが、例えばFeを75mass%以上含み、Cr、Mo、V、W、Nb等の耐熱性向上のための合金元素を1種以上含む耐熱鋼が好ましい。その耐熱鋼の鋼種、鋼成分も特に限定されないが、例えば9Cr鋼や12Cr鋼等のCr鋼、Cr-Mo鋼、Cr-Mo―V鋼などが代表的である。具体的には、例えばJIS G 4311で規定されるSUH1、SUH3、SUH4、SUH11、SUH600、SUH616、あるいはそれらに類する耐熱鋼が挙げられる。
<肉盛材料>
肉盛溶接時に加える肉盛材料(溶加材)としては、商品名「ステライト」として知られるCo-Cr系耐熱合金、もしくはステライトに類するCo-Cr系耐熱合金を使用する。このCo-Cr系耐熱合金の成分組成は、例えば、質量%で、Cr:24~32%、W:0~20%、C:0.2~3.5%、Mo:0~6%、Ni:0~25%、Fe:3%以下、残部がCo及び不純物であることが好ましい。
<希釈率>
一般的に肉盛溶接部における母材成分による希釈率は、肉盛溶接部全体の平均的な希釈率Pとしては、母材表面に対して垂直な断面で見て、肉盛溶接部全体の断面積をA、肉盛溶接時に溶融した母材部分の断面積をBとすれば、次の(1)式、
(%)=(B/A)×100・・・(1)
によって規定するのが通常である。
しかしながら、蒸気弁の弁体や弁座のように、ある程度の厚みを有する肉盛溶接部では、母材との界面近傍では母材成分の溶け込み量が大きく、肉盛溶接部表面では母材成分の溶け込み量が小さいかまたはゼロとなる。また一般に、実際の弁体や弁座等の肉盛溶接においては、複数回の肉盛溶接パスを繰り返して、複数層のビードを積層した構造とされるのが一般的であり、その場合、母材側の最初のパスによるビード部位では、母材成分の溶け込み量が大きく、上層のビード部位ほど母材成分の溶け込み量が小さくなる。
これらの結果、母材の主成分であるFeの溶け込みに起因する、加熱時効によるσ相の生成量も、母材との界面近傍で大きくなり、またそれに伴う硬度上昇による亀裂発生のおそれも、界面近傍で大きくなる。
そこで本実施形態では、肉盛溶接部の全体の平均的な希釈率Pではなく、界面から肉盛溶接部の厚み方向に0.2mm~0.8mmの領域における希釈率Pzを規定している。
具体的には、上記領域Zにおける分析した溶接金属(肉盛溶接後の肉盛溶接部の金属)の特定成分の成分量(濃度)をQ1、肉盛溶接のために供給される肉盛材料(溶加材)の同じ特定成分の成分量(濃度)をQ2、母材の同じ特定成分の成分量(濃度)をQ3とすれば、
希釈率Pz(%)={(Q1-Q2)/(Q3-Q2)}×100・・・(2)
によって、領域Zにおける希釈率Pz(%)を算出することができる。
ここで、母材はFeを主成分とし、一方肉盛材料にはFeが含まれていないか又は含まれても微量であるところから、上記の特定成分としてはFeを使用し、Fe量によって上記(2)式を計算することが好ましい。
また一方、母材はCoを含まないか又は含んでも微量であり、肉盛材料にはCoを多量に含まれている。そして肉盛金属が希釈されてCo量が減少した度合いも希釈率とみなすことができる。そこで、上記の特定成分としてはCoを使用し、Co量によって上記(2)式を計算することもできる。
ここで、特定元素をFeとして算出した希釈率Pzの値と、特定元素をCoとして算出した希釈率Pzの値とは、同一となるから、上記(2)式により希釈率Pz(%)を算出するにあたっては、特定元素として、FeとCoのいずれを用いてもよい。
但し、希釈成分の分布のばらつきや分析誤差等によって、特定元素をFeとして算出した希釈率Pzの値と、特定元素をCoとして算出した希釈率Pzの値とに差が生じることがある。そこで、そのような事態が懸念される場合には、Feによって(2)式の希釈率Pzを算出するとともに、Coによって(2)式の希釈率Pzを算出し、それらの平均値をもって、最終的な希釈率とすることが望ましい。
なお、(2)式における溶接金属中の特定成分の成分量(濃度)の測定方法は特に限定しないが、例えば電子線マイクロアナライザによって測定した半定量値を用いることができる。
また、界面から肉盛溶接部の厚み方向に0.2mm~0.8mmの領域における希釈率Pzとは、その0.2mm~0.8mmの厚み方向に等間隔で5箇所を測定し、その平均値を求めた値を意味する。
<希釈率限定理由:上限>
ここで、上記の領域Zにおける希釈率Pzが30%を超えれば、500~700℃程度の温度に加熱された際に、σ相が急速に析出しやすくなり、短時間でσ相析出による硬度上昇が生じて、亀裂発生の可能性が増大する。このような希釈率と硬度との関係は、本発明者等の新規な知見である。
すなわち、先ず本発明者等が、希釈率Pzを種々変化させた肉盛溶接試験片について、700℃で3時間の応力除去焼鈍(SR)を行った後、高温での使用環境を模した時効加熱として、600℃に種々の時間加熱したときの、加熱時間と肉盛溶接部のビッカース硬さとの関係を調べた結果を、図3に示す。なおこの実験では、母材として12Cr鋼を用い、肉盛材料のCo-Cr系耐熱合金として、Cr:24.0~32.0%、C:0.2~3.5%、Fe<3.0%、残部がCo及び不純物からなる合金を用いて、プラズマ紛体肉盛溶接法によって肉盛溶接を実施した。
図3に示すように、希釈率Pzが52.0%では、600℃での加熱時間が1000時間を超える付近から急激に硬さが大きくなり、異常硬化が生じていることが判る。これに対して希釈率Pzが30%以下では、1000時間を超えても、硬さがほとんど上昇せず、異常硬化が生じていないことが判る。
図3に示す実験結果を踏まえ、さらに本発明者等が、蒸気タービンにおける蒸気弁の弁体についての多数の実機データとして、500℃以上の高温蒸気に曝された後の肉盛溶接部のビッカース硬さとの関係を調べた結果を図4に示す。
なおこの実機データの弁体は、母材として12Cr鋼及び2.25CrMo鋼を用い、肉盛材料のCo-Cr系耐熱合金として、Cr:24.0~32.0%、C:0.2~3.5%、Fe<3.0%、残部がCo及び不純物からなる合金を用いて、プラズマ紛体肉盛溶接法によって肉盛溶接を実施したものである。
図4から、希釈率が高いほど硬さが高くなり、特に希釈率が30%附近で硬さが急上昇することが判る。希釈率が30%以下となれば、硬さは高くならず、特に28%以下では安定したレベルで硬さを維持できることが判明した。そこで、希釈率Pzの上限は30%、好ましくは28%とした。
<希釈率限定理由:下限>
一方、希釈率Pzが10%未満では、肉盛溶接部と母材との間の融合不良が生じやすくなる。すなわち、母材と溶接金属との界面が充分に融合されず、その境界から割れが発生してしまう危険性が大きくなる。
すなわち、本発明者等は、実機の蒸気タービンにおける蒸気弁の弁体についての多数の実機データから、希釈率と融合不良発生確率が、概ね図5に示すような関係となることを知見している。
なおここで対象とした実機弁体は、母材として12Cr鋼及び2.25CrMo鋼を用い、肉盛材料のCo-Cr系耐熱合金として、Cr:24.0~32.0%、C:0.2~3.5%、Fe<3.0%、残部がCo及び不純物からなる合金を用いて、プラズマ紛体肉盛溶接法によって肉盛溶接を行ったものである。
図5から、希釈率が低いほど融合不良が生じやすく、特に希釈率が10%未満では、融合不良が著しく生じやすいことが判る。希釈率が10%以上となれば、融合不良発生の低下傾向は飽和し、特に12%以上では融合不良発生傾向がほとんど変化しない。そこで、前記希釈率Pzの下限は10%、好ましくは12%とした。
<希釈率調整方法>
希釈率Pzを10~30%、好ましくは12~28%に制御するための方法は特に限定されるものではないが、例えば肉盛溶接時において、肉盛材料の供給速度(紛体肉盛溶接では紛体の単位時間当たりの供給量)や、肉盛溶接速度(ビード進行速度)を制御することによって、希釈率を調整することができる。例えば肉盛材料の供給速度もしくは溶接速度を大きくすれば、肉盛溶接部への母材成分の溶け込みが小さくなって、希釈率は小さくなる。したがって、実験や実績データによって肉盛材料の供給速度、溶接速度と希釈度との関係を求めておき、それに基づいて、希釈率が前記範囲内となるように、肉盛材料の供給速度、溶接速度を適切に設定して肉盛溶接を行えばよい。
なお肉盛溶接方法は特に限定されないが、蒸気タービンの蒸気弁の弁体や弁座では、プラズマ紛体肉盛溶接法が好適であり、そのほか、TIG溶接法、レーザ溶接法なども適用可能である。
本発明の高温摺動部材は、蒸気タービンの蒸気弁の弁体もしくは弁座に最適であるが、そのほかの用途の弁、例えばエンジンバルブの弁体もしくは弁座にも適用することができ、さらには、弁以外の高温で使用される摺動部品、例えばブッシュ等にも適用することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、この実施形態は、あくまで本発明の要旨の範囲内の一つの例に過ぎず、本発明の要旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。すなわち本発明は、前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲内で適宜変更可能であることはもちろんである。
1・・・高温摺動部材としての弁体
2・・・母材部
3・・・肉盛溶接部
4・・・界面
Z・・・領域

Claims (6)

  1. 鉄基材料からなる母材部と、Co-Cr系耐熱合金によって前記母材部の表面に形成された厚み2~5mmの肉盛溶接部とを有し、
    前記肉盛溶接部の厚み方向に前記母材部との界面から0.2mm~0.8mmの範囲内の領域での、母材成分による希釈率が10~30%の範囲内であり、
    前記Co-Cr系耐熱合金の成分組成が、質量%で、Cr:24.0~32.0%、C:0.2~3.5%、Fe:3.0%未満、残部がCo及び不純物のみからなり、
    前記希釈率は、前記界面から0.2mm~0.8mmの前記範囲内の前記領域における分析した溶接金属(肉盛溶接後の前記肉盛溶接部の金属)の特定成分の成分量(濃度)をQ1、前記肉盛溶接のために供給される肉盛材料(溶加材)の同じ特定成分の成分量(濃度)をQ2、前記母材の同じ特定成分の成分量(濃度)をQ3とすれば、下記式(2)によって表されることを特徴とする高温摺動部材。
    希釈率Pz(%)={(Q1-Q2)/(Q3-Q2)}×100・・・(2)
  2. 前記希釈率が、12~28%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の高温摺動部材。
  3. 前記希釈率が、Fe濃度とCo濃度とのうち、いずれか一方の濃度により算出した値、もしくはFe濃度により算出した値とCo濃度により算出した値との平均値であることを特徴とする請求項1、請求項2のいずれかの請求項に記載の高温摺動部材。
  4. 前記鉄基材料が、Feを75mass%以上含有する耐熱鋼であることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかの請求項に記載の高温摺動部材。
  5. 蒸気タービンにおける蒸気弁の弁体もしくは弁座であることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかの請求項に記載の高温摺動部材。
  6. 請求項1~請求項4のいずれかの請求項に記載の高温摺動部材が、蒸気弁の弁体もしくは弁座に用いられていることを特徴とする蒸気タービン。
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