JP2014020328A - タービンロータの製造方法、タービンロータ、および、溶接方法 - Google Patents

タービンロータの製造方法、タービンロータ、および、溶接方法 Download PDF

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忠士 近藤
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善宏 藤田
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Abstract

【課題】タービンロータの信頼性を向上させる。
【解決手段】実施形態のタービンロータの製造方法は、Ni基合金によって形成されているNi基合金ロータ部と、フェライト鋼によって形成されているフェライト鋼ロータ部とを溶接する溶接工程を有する。溶接工程においては、フェライト鋼を溶加材として用いてNi基合金ロータ部と前記フェライト鋼ロータ部とを溶接する。
【選択図】図2

Description

本発明の実施形態は、タービンロータの製造方法、タービンロータ、および、溶接方法に関する。
蒸気タービンは、発電効率の向上のために、大型化と共に、より高い蒸気温度で運転させることが要求されている。このため、蒸気タービンにおいて、蒸気タービンロータは、高い蒸気温度に耐える金属材料を用いて形成されている。
具体的には、A−USC(次世代超々臨界圧)蒸気タービンでは、700℃以上の蒸気温度での運転を実現するために、617合金、TOS1XなどのNi基合金を用いて蒸気タービンロータが形成されている(たとえば、特許文献1参照)。
また、近時、タービンの入口温度が高温でかつ高圧の超臨界二酸化炭素(CO)を作動流体として用いる超臨界COタービンも提案されている。
COタービンは天然ガスを燃焼させ、COと水が生成し、超臨界COを媒体としてタービンを回し発電するシステムである。COを100%回収し、外部にCOが排出されないことから地球環境保護の観点から注目されている。
COタービンにおいても、タービンロータが高温高圧の作動流体と直接接するため、上記のように、高温下で高い強度を有する金属材料を用いて形成する必要がある。
しかし、Ni基合金を用いた場合、大型のタービンロータを鍛造により一体型で製造することは、容易ではない。また、Ni基合金は、高価である。このため、蒸気タービンロータにおいて運転時に高温になる高温用ロータ部については、Ni基合金を用い、軸端部のように高温にならない低温用ロータ部については、フェライト鋼(Fe基合金)を用いることが提案されている。
この提案では、Ni基合金からなる高温用ロータ部とフェライト鋼からなる低温用ロータ部は、Ni基合金の溶加材を用いて溶接されている(たとえば、特許文献2参照)。
特開2009−280858号公報 特開2010−234397号公報
しかしながら、Ni基合金からなる高温用ロータ部とフェライト鋼からなる低温用ロータ部とをNi基合金の溶加材を用いて溶接した場合、溶接部の強度が十分でなく、溶接部で脆性的な破壊が生ずることがある。
また、Ni基合金の溶加材を用いて溶接した場合には、溶接部について超音波探傷検査(UT:Ultrasonic Testing)を行う際に、溶接欠陥を高精度に検出することが困難な場合がある。この欠陥検出精度の低下は、溶接部においてNi基合金の結晶粒径(グレインサイズ)が大きく、超音波探傷検査の際に超音波の減衰が大きいために生ずる。
上記のような事情により、Ni基合金からなるロータ部とフェライト鋼からなるロータ部とが溶接されたタービンロータにおいては、信頼性が低下する場合がある。つまり、Ni基合金母材とフェライト鋼母材との溶接部について高い信頼性を得ることは容易でない。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、溶接部の信頼性を向上させたタービンロータの製造方法、タービンロータ、および、溶接方法を提供することにある。
実施形態のタービンロータの製造方法は、Ni基合金によって形成されているNi基合金ロータ部と、フェライト鋼によって形成されているフェライト鋼ロータ部とを溶接する溶接工程を有する。溶接工程においては、フェライト鋼を溶加材として用いてNi基合金ロータ部とフェライト鋼ロータ部とを溶接する。
本発明によれば、信頼性を向上させることができる、タービンロータの製造方法、タービンロータ、および、溶接方法を提供することができる。
図1は、第1実施形態に係るタービンロータを模式的に示す断面図である。 図2は、第1実施形態に係るタービンロータの製造工程を示す断面図である。 図3は、第2実施形態に係るタービンロータを模式的に示す断面図である。 図4は、第3実施形態に係るタービンロータの製造工程を示す断面図である。 図5は、第4実施形態に係るタービンロータの製造工程を示す断面図である。 図6は、第5実施形態に係るタービンロータの製造工程を示す断面図である。 図7は、第5実施形態に係るタービンロータの製造工程を示す断面図である。 図8は、第6実施形態に係るタービンロータの製造工程を示す断面図である。
実施形態について、図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
[A]構成
図1は、第1実施形態に係るタービンロータを模式的に示す断面図である。
図1に示すように、第1実施形態に係るタービンロータは、Ni基合金ロータ部1、第1フェライト鋼ロータ部2、第2フェライト鋼ロータ部3、第1溶接金属部4、および、第2溶接金属部5を備える。
Ni基合金ロータ部1は、Ni基合金によって形成されており、第1フェライト鋼ロータ部2と第2フェライト鋼ロータ部3との間に設けられている。
第1フェライト鋼ロータ部2は、フェライト鋼によって形成されており、Ni基合金ロータ部1の一方の端部に溶接されている。第1フェライト鋼ロータ部2は、Ni基合金ロータ部1との間に第1溶接金属部4が介在している。
第2フェライト鋼ロータ部3は、第1フェライト鋼ロータ部2と組成が同じフェライト鋼によって形成されており、Ni基合金ロータ部1の他方の端部に溶接されている。第2フェライト鋼ロータ部3は、Ni基合金ロータ部1との間に第2溶接金属部5が介在している。
第1溶接金属部4は、フェライト鋼を溶加材として用いてNi基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2間を溶接することによって形成されている。第1溶接金属部4は、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との間の中空部分6Aの周りを囲うように形成されている。
第2溶接金属部5は、第1溶接金属部4と同じフェライト鋼を溶加材として用いてNi基合金ロータ部1と第2フェライト鋼ロータ部3間を溶接することによって形成されている。第2溶接金属部5は、Ni基合金ロータ部1と第2フェライト鋼ロータ部3との間の中空部分6Bの周りを囲うように形成されている。
具体的には、上記のNi基合金ロータ部1は、たとえば、質量%で、C:0.01〜0.15%、Cr:18〜28%、Co:10〜15%、Mo:8〜12%、Al:0.5〜1.5%未満、Ti:0.7〜3.0%、B:0.001〜0.006%を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなる組成のNi基合金によって形成されている。
また、第1フェライト鋼ロータ部2および第2フェライト鋼ロータ部3は、たとえば、質量%で、Cr:0.5〜3%、Mo:0.5〜2.0%、V:0.1〜0.5%を含有するフェライト鋼で形成されている。
具体的には、第1フェライト鋼ロータ部2および第2フェライト鋼ロータ部3は、たとえば、質量%で、C:0.26〜0.33%、Mn:0.5〜0.85%、Cr:0.9〜1.9%、Mo:0.7〜1.5%、V:0.2〜0.35%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成のCrMoV鋼によって形成されている。
また、第1溶接金属部4および第2溶接金属部5は、たとえば、質量%で、C:0.11〜0.15%、Mn:0.3〜0.6%、Cr:2.00〜2.50%、Mo:0.90〜1.10%、V:0.25〜0.35%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成のフェライト鋼を溶加材として用いて溶接を行うことによって形成されている。
[B]製造方法
図2は、第1実施形態に係るタービンロータの製造工程を示す断面図である。
図2では、図1のA部分を示しており、(a),(b)に示す工程を順次実施することによってタービンロータを製造する。
本実施形態では、図2に示すように、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との両者を溶接する。また、図示を省略しているが、Ni基合金ロータ部1と第2フェライト鋼ロータ部3(図1参照)との両者についても、同様に溶接する。
以下より、本実施形態においてタービンロータを製造するときの各工程について詳細に説明する。
(1)突き合わせ
Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との両者を溶接する際には、図2(a)に示すように、まず、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2とを同一軸線上で互いに突き合わせる。
本工程では、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2とにおいて、予め開先が形成された開先面を対面させる。
本実施形態においては、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との継手部分には、たとえば、U形の開先が形成されている。開先は、狭開先であって、開先角度が45°未満である。たとえば、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2とを突き合わせた継手部分が、下記に示す条件になるようにすることが好適である。
(継手部分の条件)
・継手部分の厚みt:150mm
・開先の上端部の幅W:25mm
・開先角度:0.5〜1°
・ルート面:2.5〜3mm
・ルート間隔:0
(2)溶接
つぎに、図2(b)に示すように、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との間を溶接する。
本工程では、上述したように、フェライト鋼を溶加材として用いて、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との両者を溶接する。これにより、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との間には、第1溶接金属部4が形成される。
具体的には、最初に、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との両者について仮付けを行う。その後、ホットワイヤTIG(Tungsten Inert Gas)溶接によって、本溶接を行う。本溶接では、溶接姿勢が全て下向き姿勢であって、入熱量が25000J/cm以下の条件下において1層について1パスで形成することを繰り返し、複数の層を積層する。これにより、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との継手部分が溶融して、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との間に第1溶接金属部4が形成される。
本工程では、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との接続位置を、両者の接続部が、タービン運転時において、フェライト鋼のクリープ温度以下となる位置に設けられるように設定して、第1フェライト鋼ロータ部2とNi基合金ロータ部1とを接続する。
具体的には、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との接続位置を、この接続部が、運転時において500℃以下、より好ましくはクリープ変形が起こらない480℃以下となる位置に設けられるように設定して、第1フェライト鋼ロータ部2とNi基合金ロータ部1とを接続する。
Ni基合金ロータ部1と第2フェライト鋼ロータ部3(図1参照)との間についても、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との間の場合と同様に、互いを突き合わせた状態で両者を溶接する。
(3)熱処理
つぎに、Ni基合金ロータ部1に対して第1フェライト鋼ロータ部2および第2フェライト鋼ロータ部3が溶接された溶接構造物について、熱処理を行う。
本工程では、第1フェライト鋼ロータ部2および第2フェライト鋼ロータ部3を構成するフェライト鋼のテンパー温度以下の熱処理温度で熱処理を行うことによって、溶接構造物から残留応力を除去する。つまり、いわゆる、溶接後熱処理(PWHT:Post Weld Heat Treatment)を行う。より具体的には、下記の条件によって、熱処理を行うことによって、金属を変態させる。
(熱処理条件)
・熱処理温度:610〜640℃
・熱処理時間:6〜8時間保持
・冷却方法:徐冷(10〜35℃/Hr)
本実施形態においては、上記の熱処理のほか、熱安定性試験(HIT:Heat Indication test。以下、HITと示す。)を行うこともできる。
上記の熱処理およびHITは、溶接構造物を溶接工程時の姿勢のまま、すなわち横向きの状態としたまま行う。
Ni基合金ロータ部1は、単体での長さが短く、Ni基合金ロータ部1単体に対してHITすることが難しいため、上記の溶接工程後、溶接構造物全体をHITする。これにより、タービンロータの振れを保証する。
(4)検査
つぎに、上記のように熱処理が行われた溶接構造物について検査を行う。
本工程では、第1溶接金属部4および第2溶接金属部5(図1参照)が形成された溶接部について超音波探傷検査を行う。
上記のように各工程を経て、図1に示すように、タービンロータを完成させる。
[C]まとめ
以上のように、本実施形態においては、Ni基合金によって形成されているNi基合金ロータ部1に対して、フェライト鋼によって形成されている第1フェライト鋼ロータ部2,第2フェライト鋼ロータ部3の両者を溶接する。ここでは、フェライト鋼を溶加材として用いて、Ni基合金ロータ部1に対して、第1フェライト鋼ロータ部2および第2フェライト鋼ロータ部3を溶接している。
このため、本実施形態においては、下記に示すように、タービンロータの信頼性を向上させることができる。
本実施形態と異なり、Ni基合金を溶加材として用いて溶接を行った場合についてクリープ試験を行ったところ、溶接部において脆性的な破壊が生じた。この原因を調査したところ、高温環境下において、Fe基−Ni基の境界部に存在する炭素が、母材と溶接部との間のCr濃度差に依存して、Fe基からNi基に著しく拡散する現象が確認された。そして、その炭素の拡散によって、炭素が欠乏した境界近傍のFe基に軟化域が生成され、濃化したNi基側に硬化域が生成されて、クリープ特性が悪化することが分かった。これに対して、本実施形態のように、フェライト鋼を溶加材として用いて溶接を行った場合には、母材と溶接部との間においてCr濃度の差が小さく、炭素の拡散量が減少する。このため、本実施形態では、溶接部の延性により、脆性破壊が生じなかった。したがって、本実施形態においては、タービンロータの信頼性を向上させることができる。
また、本実施形態と異なり、Ni基合金を溶加材として用いて溶接を行った場合には、溶接部の結晶粒径(グレインサイズ)は、300μm程度であった。このため、既に述べたように、超音波探傷検査の際には、超音波の減衰が大きく、溶接欠陥を高精度に検出することが困難な場合がある。しかしながら、本実施形態の場合には、フェライト鋼を溶加材として用いて溶接を行うことによって形成されているので、溶接部の結晶粒径(グレインサイズ)は、50μm程度であった。したがって、本実施形態においては、超音波探傷検査の際に超音波が減衰することが抑制され、溶接の欠陥を高精度に検出することができるので、タービンロータの信頼性を向上させることができる。
本実施形態においては、上述したように、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との間において狭開先が設けられた継手部分を、ホットワイヤTIG溶接もしくはTIG溶接により1層について1パスで溶接する。Ni基合金ロータ部1と第2フェライト鋼ロータ部3との間についても同様に溶接する。このため、本実施形態では、溶接のときの入熱量が低いため、Ni基合金ロータ部1のNi基合金が溶け込んで溶接金属の成分が希釈されることを抑制できるので、溶接継手の強度を向上させることができる。したがって、本実施形態は、タービンロータの信頼性を更に向上させることができる。
本実施形態においては、上述したように、第1フェライト鋼ロータ部2および第2フェライト鋼ロータ部3を、質量%で、Cr:0.5〜3%、Mo:0.5〜2.0%、V:0.1〜0.5%を含有するフェライト鋼で形成する。そして、溶接工程においては、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2、第2フェライト鋼ロータ部3との接続位置を、これらの接続部が、運転時においてフェライト鋼のクリープ温度以下となる位置に設けられるように設定して、第1フェライト鋼ロータ部2とNi基合金ロータ部1とを接続し、溶接する。
本実施形態では、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2、第2フェライト鋼ロータ部3との接続位置を上記のように設定しているので、溶接構造体におけるクリープ変形が抑制され、運転時における強度低下が生じ難いものとすることができる。このため、タービンロータの信頼性を更に向上させることができる。
<第2実施形態>
[A]構成
図3は、第2実施形態に係るタービンロータを模式的に示す断面図である。
図3に示すように、第2実施形態に係るタービンロータは、第1実施形態に係るタービンロータと同様、Ni基合金ロータ部1、第1フェライト鋼ロータ部2、第2フェライト鋼ロータ部3、第1溶接金属部4、および、第2溶接金属部5を備える。
タービンロータは、その内部に、第2フェライト鋼ロータ部3、Ni基合金ロータ部1、第1フェライト鋼ロータ部2にかけて、軸線に沿った中空部分6Cを有している。
第1溶接金属部4は、第1実施形態と同様、第1フェライト鋼ロータ部2とNi基合金ロータ部1との間に介在しており、フェライト鋼を溶加材として用いてNi基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2間を溶接することによって形成されている。第1溶接金属部4は、中空部分6Cの周りを囲うように形成されている。
第2溶接金属部5は、第1実施形態と同様、第2フェライト鋼ロータ部3とNi基合金ロータ部1との間に介在しており、第1溶接金属部4と同じフェライト鋼を溶加材として用いてNi基合金ロータ部1と第2フェライト鋼ロータ部3間を溶接することによって形成されたものである。第2溶接金属部5は、中空部分6Cの周りを囲うように形成されている。
Ni基合金ロータ部1には、中空部分6CからNi基合金ロータ部1の側面にかけて連通する冷却孔71が設けられている。
また、第2フェライト鋼ロータ部3には、中空部分6Cから第2フェライト鋼ロータ部3の側面にかけて連通する冷却孔72が、第2溶接金属部5の近傍の位置に設けられている。冷却孔72は、冷却孔71よりやや太径に形成されている。
[B]製造方法
本実施形態においては、冷却孔形成工程を含む点で、タービンロータの製造工程の一部が、第1実施形態と異なる。本実施形態は、この点、および、これに関連する点を除き、第1実施形態の場合と同様である。このため、本実施形態において、重複する個所については、適宜、説明を省略する。
本実施形態においては、溶接工程は、上述した第1実施形態と同様に行うことから、第1実施形態の説明で用いた図2を用いて説明する。
図2では、図3のA部分を示しており、(a),(b)に示す工程を順次実施することによってタービンロータを製造する。
本実施形態では、図2に示すように、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との両者を溶接する。また、図示を省略しているが、Ni基合金ロータ部1と第2フェライト鋼ロータ部3(図2参照)との両者についても、同様に溶接する。
以下より、本実施形態においてタービンロータを製造するときの各工程について詳細に説明する。
(1)冷却孔71、72の形成
まず、Ni基合金ロータ部1、第2フェライト鋼ロータ部3について、それぞれ、冷却孔71、72を形成する。
(2)突き合わせ
つぎに、図2(a)に示すように、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2とを同一軸線上で互いに突き合わせる。
本工程では、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2とにおいて、予め開先が形成された開先面を対面させる。
(3)溶接
つぎに、図2(b)に示すように、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との間を溶接する。
本工程では、上記の実施形態の場合と同様に、フェライト鋼を溶加材として用いて、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との両者の間を溶接する。これにより、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との間には、第1溶接金属部4が形成される。
Ni基合金ロータ部1と第2フェライト鋼ロータ部3(図3参照)との間についても、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との間の場合と同様に、互いを突き合わせた後に両者を溶接する。
(4)熱処理,検査
つぎに、Ni基合金ロータ部1に第1フェライト鋼ロータ部2と第2フェライト鋼ロータ部3とが溶接された溶接構造物について、上記の実施形態の場合と同様に、熱処理を行い、残留応力を除去する。そして、熱処理を行った後に、その溶接構造物について検査を行う。
本実施形態においては、上述した超音波探傷検査のほか、冷却孔71、72を用いた検査を行うことができる。具体的には、例えば、ファイバースコープ、CCDカメラ等の撮像機器を、冷却孔71、72から溶接工程終了後の中空部6C内に挿入し、第1溶接金属部4および第2溶接金属部5(図3参照)が形成された溶接部の内周面を撮像して得られた撮像画像により、溶接部の内周面の状態を検査する。
上記のように各工程を経て、タービンロータを完成させる。
[C]まとめ
以上のように、本実施形態では、Ni基合金ロータ部1、第2フェライト鋼ロータ部3に、冷却孔71、72を形成する。このため、運転時において、たとえば、CO等の作動ガスを太径の冷却孔72から中空部分6Cに通気するとともに、中空部分6C内の作動ガスを細径の冷却孔71から外部に放出することにより、タービンロータ本体、さらにNi基合金ロータ部1の側面に設置されるタービン翼を迅速に冷却することができる。
また、本実施形態においては、上記の溶接部について、冷却孔を用いた検査を行うことができる。このため、溶接の欠陥を、より高精度に検出することができる。このような冷却孔を用いた検査は、製造工程時だけでなく、運転時の定期検査の際にも行うことができるので、タービンロータの信頼性を向上させることができる。また、本実施形態においては、溶接工程終了後、冷却孔からシールドガスを注入することができるため、金属成分の酸化を抑制する効果を、より高く得ることができる。
<第3実施形態>
[A]製造方法
図4は、第3実施形態に係るタービンロータの製造工程を示す断面図である。
図4では、図2と同様に、図1または図3のA部分を拡大して示しており、(a),(b),(c),(d)に順次示す工程により、タービンロータを製造する。
図4に示すように、本実施形態においては、タービンロータの製造工程の一部が、第1実施形態、第2実施形態と異なる。本実施形態は、この点、および、これに関連する点を除き、第1実施形態または第2実施形態の場合と同様である。このため、本実施形態において、重複する個所については、適宜、説明を省略する。なお、以下の説明においては、本実施形態を、上述した第2実施形態に適用した場合を例に説明する。
本実施形態では、図4に示すように、フェライト鋼の継手部12が開先面に形成されたNi基合金ロータ部1に、第1フェライト鋼ロータ部2を溶接する。図示を省略しているが、これと同様に、Ni基合金ロータ部1に、第2フェライト鋼ロータ部3を溶接する。
以下より、本実施形態においてタービンロータを製造するときの各工程の詳細について説明する。
(1)バタリング溶接金属部11の形成
まず、図4(a)に示すように、Ni基合金ロータ部1の開先面にフェライト鋼のバタリング溶接金属部11を形成する。
本工程では、開先面が突き合わせ方向に対して直交しているNi基合金ロータ部1を準備する。そして、Ni基合金ロータ部1の開先面に、第1バタリング溶接層111と第2バタリング溶接層112とを、順次、バタリング溶接することによって、バタリング溶接金属部11を形成する。第1バタリング溶接層111および第2バタリング溶接層112については、Ni基合金ロータ部1の開先面において開先およびルート面が設けられる全面に積層させる。
具体的には、バタリング溶接金属部11の形成においては、フェライト鋼を溶加材として用いる。本実施形態では、後工程においてNi基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との両者の間を本溶接するときに用いるフェライト鋼と同じ組成のフェライト鋼を用いて、バタリング溶接を行い、バタリング溶接金属部11を形成する。
上記のバタリング溶接は、たとえば、TIG溶接により行う。この他に、MIG(Metal Inert Gas)溶接、サブマージアーク溶接により、上記のバタリング溶接を行ってもよい。
この他に、バタリング溶接金属部11の形成においては、第1バタリング溶接層111をバタリング溶接するときの入熱量が、第2バタリング溶接層112をバタリング溶接するときの入熱量よりも低い条件にする。これと共に、第1バタリング溶接層111をバタリング溶接で形成するときの入熱量が、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2とを溶接するときの入熱量よりも低い条件にする。たとえば、下記の入熱量条件で第1バタリング溶接層111と第2バタリング溶接層112とを形成する。
(入熱量条件)
・第1バタリング溶接層111の場合:15000J/cm程度
・第2バタリング溶接層112の場合:25000J/cm程度以下
つぎに、バタリング溶接金属部11が形成されたNi基合金ロータ部1について、熱処理を行う。本工程では、フェライト鋼のテンパー温度以上Ni基合金の時効温度以下で熱処理を行い、バタリング溶接後のNi基合金ロータ部1の強度を回復させる。より具体的には、たとえば、下記の条件によって、熱処理を行う。
(熱処理条件)
・熱処理温度:660〜800℃
・熱処理時間:2〜10時間保持
・冷却方法:徐冷(10〜35℃/Hr)
(2)継手部12の形成
つぎに、図4(b)に示すように、フェライト鋼の継手部12を形成する。
本工程では、前工程で形成したフェライト鋼のバタリング溶接金属部11(図4(a)参照)について開先加工を行うことによって、Ni基合金ロータ部1の開先面に開先を形成する。これにより、Ni基合金ロータ部1の開先面の全体に、フェライト鋼の継手部12を設ける。
(3)冷却孔71、72の形成
つぎに、Ni基合金ロータ部1、第2フェライト鋼ロータ部3について、それぞれ、冷却孔71、72を形成する。
なお、本実施形態においては、必ずしも冷却孔を設ける必要はなく、図1に示す構造のタービンロータに適用することも可能である。
(4)突き合わせ
つぎに、図4(c)に示すように、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2とを同一軸線上で互いに突き合わせる。
本工程では、Ni基合金ロータ部1においてフェライト鋼の継手部12が形成された開先面に、第1フェライト鋼ロータ部2の開先面を対面させる。
(5)溶接
つぎに、図4(d)に示すように、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との間を溶接する。
本工程では、上記の実施形態の場合と同様に、フェライト鋼を溶加材として用いて、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との両者の間を溶接する。これにより、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との間には、第1溶接金属部4が形成される。
Ni基合金ロータ部1と第2フェライト鋼ロータ部3(図3参照)との間についても、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との間の場合と同様に、互いを突き合わせた後に両者を溶接する。
(6)熱処理,検査
つぎに、Ni基合金ロータ部1に第1フェライト鋼ロータ部2と第2フェライト鋼ロータ部3とが溶接された溶接構造物について、上記の実施形態2の場合と同様に、熱処理を行い、残留応力を除去する。そして、熱処理を行った後に、その溶接構造物について検査を行う。本実施形態においては、超音波探傷検査のほか、冷却孔71、72を用いた検査を行うことができる。
上記のように各工程を経て、タービンロータを完成させる。
[B]まとめ
以上のように、本実施形態では、Ni基合金ロータ部1の開先面の全体にフェライト鋼の継手部12を形成する。その後、Ni基合金ロータ部1においてフェライト鋼の継手部12が形成された開先面と、第1フェライト鋼ロータ部2の開先面とを突き合わせた状態で、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2とを溶接する。このように、本実施形態においては、Ni基合金ロータ部1の開先面にフェライト鋼の継手部12が設けられているので、第1溶接金属部4にNi基合金ロータ部1のNi基合金が多量に溶け込んで、溶接金属の成分が希釈されることを防止できる。その結果、溶接部の強度を向上させることができる。Ni基合金ロータ部1と第2フェライト鋼ロータ部3とについても、同様に溶接しているので、溶接部の強度を向上させることができる。
本実施形態では、上述したように、Ni基合金ロータ部1の開先面にフェライト鋼をバタリング溶接することによってバタリング溶接金属部11を形成後、そのバタリング溶接金属部11について開先加工することにより、フェライト鋼の継手部12を形成する。バタリング溶接金属部11については、第1バタリング溶接層111と第2バタリング溶接層112とを、順次、バタリング溶接で積層させることで形成する。このとき、第1バタリング溶接層111をバタリング溶接で形成するときの入熱量は、第2バタリング溶接層112をバタリング溶接で形成するときの入熱量よりも低い。また、第1バタリング溶接層111をバタリング溶接で形成するときの入熱量は、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2とを本溶接するときの入熱量よりも低い。このため、本実施形態では、第1バタリング溶接層111の形成の際にNi基合金ロータ部1のNi基合金が第1バタリング溶接層111に溶け込んで成分が希釈されることを抑制できるので、溶接部の強度を向上させることができる。
本実施形態では、上述したように、バタリング溶接金属部11が形成されたNi基合金ロータ部1について、Ni基合金の時効温度で熱処理した後、当該バタリング溶接金属部11について開先加工する。このため、本実施形態では、バタリング溶接により劣化したNi基合金ロータ部1の強度を回復させることができ、タービンロータの信頼性を更に向上させることができる。また、本実施形態では、冷却孔の形成を、Ni基合金ロータ部1についての熱処理後、溶接工程前に行っているため、熱処理による冷却孔の変形を防止しつつ、効率的な製造を行うことができる。
したがって、本実施形態は、タービンロータの信頼性を更に向上させることができる。
[C]変形例
本実施形態では、バタリング溶接金属部11について、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との両者の間を本溶接するときに用いるフェライト鋼と同じ組成のフェライト鋼を用いて形成する場合について示したが、これに限らない。Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との両者の間を本溶接するときに用いるフェライト鋼と同じでなく、これに近い組成のフェライト鋼を用いて、バタリング溶接金属部11を形成してもよい。たとえば、質量%で、C:0.11〜0.33、Mn:0.3〜0.85、Cr:0.9〜2.5、Mo:0.7〜1.5、V:0.2〜0.35残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成(フェライト鋼ロータ部と本溶接で用いる溶加材との中間組成)のフェライト鋼を用いて、バタリング溶接金属部11を形成してもよい。
<第4実施形態>
[A]製造方法
図5は、第4実施形態に係るタービンロータの製造工程を示す断面図である。
図5では、図2と同様に、図1または図3のA部分を拡大して示しており、(a),(b),(c),(d)に順次示す工程により、タービンロータを製造する。
図5に示すように、本実施形態においては、タービンロータの製造工程の一部が、第3実施形態と異なる。本実施形態は、この点、および、これに関連する点を除き、第3実施形態の場合と同様である。このため、本実施形態において、重複する個所については、適宜、説明を省略する。
本実施形態では、図5に示すように、フェライト鋼の第1継手部12Aとフェライト鋼の第2継手部12Bとが開先面に形成されたNi基合金ロータ部1に、第1フェライト鋼ロータ部2を溶接する。図示を省略しているが、これと同様に、Ni基合金ロータ部1に、第2フェライト鋼ロータ部3を溶接する。
以下より、本実施形態においてタービンロータを製造するときの各工程の詳細について説明する。
(1)バタリング溶接金属部11A,11Bの形成
まず、図5(a)に示すように、Ni基合金ロータ部1の開先面に、バタリング溶接金属部11A,11Bを形成する。
本工程では、最初に、Ni基合金ロータ部1の開先面において、複数のバタリング溶接金属部11A,11Bを形成する部分を加工する。
一方のバタリング溶接金属部11Aを形成する部分は、Ni基合金ロータ部1の開先面のうちルート面が設けられる部分であり、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との突き合わせ方向に対して直交する面を含むように加工される。
他方のバタリング溶接金属部11Bを形成する部分は、Ni基合金ロータ部1の開先面に設けられる開先のうち、ルート面側の端部に対して反対側の端部に位置する開先開口部であり、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との突き合わせ方向に対して傾斜する面を含むように加工される。
その後、フェライト鋼を溶加材として用いてバタリング溶接を行うことによって、バタリング溶接金属部11A,11Bを形成する。
具体的には、上記の実施形態の場合と同様に、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との両者の間を本溶接するときに用いるフェライト鋼と同じ材料を溶加材として用いてバタリング溶接を行うことにより、バタリング溶接金属部11A,11Bを形成する。
上記の実施形態の場合と同様に、バタリング溶接金属部11A,11Bの形成においては、第1バタリング溶接層(図示省略)と第2バタリング溶接層(図示省略)との2層を積層させる。
(2)第1継手部12A,第2継手部12Bの形成
つぎに、図5(b)に示すように、第1継手部12A,第2継手部12Bを形成する。
本工程では、一方のバタリング溶接金属部11A(図5(a)参照)を開先加工することによって、第1継手部12Aを形成する。ここでは、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との突き合わせ方向に対して側面が直交するようにバタリング溶接金属部11Aを加工することによって、第1継手部12Aを形成する。
また、他方のバタリング溶接金属部11B(図5(a)参照)を開先加工することによって第2継手部12Bを形成する。ここでは、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との突き合わせ方向に上面が沿うようにバタリング溶接金属部11Bを加工することによって、第2継手部12Bを形成する。
(3)突き合わせ
つぎに、図5(c)に示すように、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2とを同一軸線上で互いに突き合わせる。
本工程では、Ni基合金ロータ部1において第1継手部12Aおよび第2継手部12Bが形成された開先面と、第1フェライト鋼ロータ部2の開先面とを突き合わせる。
(4)溶接
つぎに、図5(d)に示すように、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との間を溶接する。
本工程では、上記の実施形態の場合と同様に、フェライト鋼を溶加材として用いて、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との両者の間を溶接する。これにより、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との間には、第1溶接金属部4が形成される。
Ni基合金ロータ部1と第2フェライト鋼ロータ部3(図1または図3参照)との間についても、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との間の場合と同様に、互いを突き合わせた後に両者を溶接する。
(5)熱処理,検査
つぎに、Ni基合金ロータ部1に対して第1フェライト鋼ロータ部2および第2フェライト鋼ロータ部3を溶接した溶接構造物について、上記の実施形態の場合と同様に、熱処理を行って残留応力を除去した後、検査を行う。本実施形態においては、超音波探傷検査のほか、冷却孔71、72を形成した場合には、これら冷却孔を用いた検査を行うことができる。
上記のように各工程を経て、タービンロータを完成させる。
[B]まとめ
以上のように、本実施形態では、Ni基合金ロータ部1の開先面のうちルート面が設けられる部分に、フェライト鋼の第1継手部12Aを形成している。このため、本実施形態では、ルート面が設けられたルート部において、第1溶接金属部4にNi基合金ロータ部1のNi基合金が多量に溶け込んで溶接金属の成分が希釈されることを防止できるので、溶接部の強度を向上させることができる。
本実施形態では、上述したように、Ni基合金ロータ部1の開先面のうち開先開口部に、フェライト鋼の第2継手部12Bを形成している。このため、本実施形態では、開先開口部において、第1溶接金属部4にNi基合金ロータ部1のNi基合金が多量に溶け込んで溶接金属の成分が希釈されることを防止できるので、溶接部の強度を向上させることができる。
したがって、本実施形態は、タービンロータの信頼性を更に向上させることができる。
<第5実施形態>
[A]製造方法
図6,図7は、第5実施形態に係るタービンロータの製造工程を示す断面図である。
図6,図7では、図5と同様に、図1または図3のA部分を拡大して示しており、(a),(b),(c),(d),(e)に順次示す工程により、タービンロータを製造する。
図6,図7に示すように、本実施形態においては、タービンロータの製造工程の一部が、第4実施形態と異なる。本実施形態は、この点、および、これに関連する点を除き、第4実施形態の場合と同様である。このため、本実施形態において、重複する個所については、適宜、説明を省略する。
本実施形態では、図6,図7に示すように、フェライト鋼の第1継手部12AとNi基合金の第1開先延長部12Cとが設けられたNi基合金ロータ部1に、第2開先延長部22Cが設けられた第1フェライト鋼ロータ部2を溶接する。図示を省略しているが、これと同様に、Ni基合金ロータ部1に第2フェライト鋼ロータ部3を溶接する。
以下より、本実施形態において、タービンロータを製造する各工程の詳細について説明する。
(1)バタリング溶接金属部11A,11C,21Cの形成
まず、図6(a)に示すように、Ni基合金ロータ部1にバタリング溶接金属部11A,11Cを形成する。この他に、第1フェライト鋼ロータ部2にバタリング溶接金属部21Cを形成する。
本工程では、最初に、Ni基合金ロータ部1の開先面においてバタリング溶接金属部11Aを形成する部分について加工する。上記の実施形態と同様に、バタリング溶接金属部11Aを形成する部分は、Ni基合金ロータ部1の開先面のうちルート面が設けられる部分であり、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との突き合わせ方向に対して直交する面に加工される。その後、フェライト鋼を溶加材として用いてバタリング溶接を行うことによって、バタリング溶接金属部11Aを形成する。
そして、Ni基合金ロータ部1の開先開口部側の面において当該開先開口部の近傍にバタリング溶接金属部11Cを形成する。バタリング溶接金属部11Cについては、Ni基合金を溶加材として用いてバタリング溶接を行うことで形成する。たとえば、質量%で、C:0.05〜0.15、Cr:20〜24、Mo:8〜10、Al:0.8〜1.5、Co:10〜15、残部がNiおよび不可避的不純物からなる組成のNi基合金によって、バタリング溶接金属部11Cを形成する。
また、第1フェライト鋼ロータ部2の開先開口部側の面において当該開先開口部の近傍にバタリング溶接金属部21Cを設ける。バタリング溶接金属部21Cについては、上記の実施形態においてNi基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との両者の間を本溶接するときに用いるフェライト鋼と同じ材料を溶加材として用いて、上記のバタリング溶接を行うことで形成する。
上記のバタリング溶接は、たとえば、TIG溶接により行う。この他に、MIG溶接、サブマージアーク溶接により、上記のバタリング溶接を行ってもよい。
上記の実施形態の場合と同様に、バタリング溶接金属部11A,11C,21Cの形成においては、第1バタリング溶接層(図示省略)と第2バタリング溶接層(図示省略)との2層を積層させる。
(2)第1継手部12A,第1開先延長部12C,第2開先延長部22Cの形成
つぎに、図5(b)に示すように、第1継手部12A,第1開先延長部12C,第2開先延長部22Cを形成する。
本工程では、フェライト鋼のバタリング溶接金属部11A(図6(a)参照)を加工することによって、図6(b)に示すように、第1継手部12Aを形成する。ここでは、上記の実施形態の場合と同様に、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との突き合わせ方向に対して第1継手部12Aの側面が直交するように、バタリング溶接金属部11Aについて開先加工を行う。
また、Ni基合金のバタリング溶接金属部11C(図6(a)参照)を加工することによって、図6(b)に示すように、第1開先延長部12Cを形成する。ここでは、第1開先延長部12Cにおいて開先側の側面がNi基合金ロータ部1の開先面に沿うように、バタリング溶接金属部11Cについて開先加工を行って開先を上方へ延長させる。
この他に、フェライト鋼のバタリング溶接金属部21C(図6(a)参照)を加工することによって、図6(b)に示すように、第2開先延長部22Cを形成する。ここでは、第2開先延長部22Cにおいて開先側の側面が第1フェライト鋼ロータ部2の開先面に沿うように、バタリング溶接金属部21Cについて開先加工を行って開先を上方へ延長させる。この開先加工では、第2開先延長部22Cの形成と共に、第1フェライト鋼ロータ部2の開先面に開先を形成する。
(3)突き合わせ
つぎに、図6(c)に示すように、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2とを同一軸線上で互いに突き合わせる。
本工程では、Ni基合金ロータ部1において第1継手部12Aが形成された開先面と、第1フェライト鋼ロータ部2の開先面とを突き合わせる。また、第1開先延長部12Cの側面と第2開先延長部22Cの側面とが開先を介して対面するように、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2とを突き合わせる。
(4)溶接
つぎに、図7(d)に示すように、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との間を溶接する。
本工程では、上記の実施形態の場合と同様に、フェライト鋼を溶加材として用いて、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との両者の間を溶接する。これにより、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との間には、第1溶接金属部4が形成される。
本実施形態では、第1開先延長部12Cと第2開先延長部22Cとを第1溶接金属部4が被覆するように、Ni基合金ロータ部1とフェライト鋼ロータ部2とを溶接する。
(5)第1開先延長部12C、第2開先延長部22C、第1溶接金属部4の余盛部分の除去
つぎに、図7(e)に示すように、第1開先延長部12C、第2開先延長部22C、および、第1溶接金属部4の余盛部分について除去する。
本工程では、Ni基合金ロータ部1において開先が形成された面から上方へ突き出た第1開先延長部12C(図7(d)参照)を除去する。また、第1フェライト鋼ロータ部2において開先が形成された面から上方へ突き出た第2開先延長部22C(図7(d)参照)を除去する。これと共に、第1溶接金属部4において開先が形成された面から上方に突き出た余盛部分(図7(d)参照)について除去する。これにより、Ni基合金ロータ部1および第1フェライト鋼ロータ部2において開先が形成された面を平坦にする。
Ni基合金ロータ部1と第2フェライト鋼ロータ部3(図1または図3参照)との間についても、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との間の場合と同様に溶接する。
(6)熱処理,検査
つぎに、Ni基合金ロータ部1に対して第1フェライト鋼ロータ部2および第2フェライト鋼ロータ部3を溶接した溶接構造物について、上記の実施形態の場合と同様に、熱処理を行って残留応力を除去した後、検査を行う。本実施形態においては、超音波探傷検査のほか、冷却孔71、72を形成した場合には、これら冷却孔を用いた検査を行うことができる。
上記のように各工程を経て、タービンロータを完成させる。
[B]まとめ
以上のように、本実施形態においては、Ni基合金ロータ部1の開先開口部側の面において当該開先開口部の近傍に、Ni基合金の第1開先延長部12Cを設ける。これと共に、第1フェライト鋼ロータ部2の開先開口部側の面において当該開先開口部の近傍に、フェライト鋼の第2開先延長部22Cを設ける。そして、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2とを溶接するときには、第1開先延長部12Cの上面と第2開先延長部22Cの上面とを第1溶接金属部4で被覆させる。その後、第1開先延長部12Cと第2開先延長部22Cと共に第1溶接金属部4の余盛部分を除去する。
このように、本実施形態では、第1開先延長部12Cと第2開先延長部22Cとが開先の上方において開先を延長しているので、本溶接を行ったときには、開先の上端において溶接金属の成分が希釈される部分が、第1開先延長部12Cと第2開先延長部22Cとの間の余盛部分に移る。そして、その後、その余盛部分を除去している。このため、本実施形態では、溶接金属の成分が希釈された部分を減少できるので、溶接部の強度を向上させることができる。
本実施形態においては、上述したように、第1開先延長部12Cは、Ni基合金を用いてNi基合金ロータ部1に形成されているので、Ni基合金ロータ部1に密着している。また、第2開先延長部22Cは、フェライト鋼を用いて第1フェライト鋼ロータ部2に形成されているので、第1フェライト鋼ロータ部2に密着している。このため、本実施形態では、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との溶接を的確に行うことができる。
したがって、本実施形態は、タービンロータの信頼性を更に向上させることができる。
[C]変形例
本実施形態では、Ni基合金を用いて第1開先延長部12CをNi基合金ロータ部1に形成しているが、これに限らない。たとえば、フェライト鋼を用いて第1開先延長部12CをNi基合金ロータ部1に形成してもよい。
<第6実施形態>
[A]構成
上述した実施形態では、第1フェライト鋼ロータ部2および第2フェライト鋼ロータ部3を、Cr:0.5〜3%、Mo:0.5〜2.0%、V:0.1〜0.5%を含有するフェライト鋼で形成する構成としたが、本発明は、このような態様に限定されず、第1フェライト鋼ロータ部2および第2フェライト鋼ロータ部3を、質量%で、Cr:9〜12%、Mo:0.5〜1.5%、V:0.1〜0.3%、W:0.5〜1.5%を含有するフェライト鋼で形成することもできる。
[B]製造方法
図8は、第6実施形態に係るタービンロータの製造工程を示す断面図である。
図8では、図2と同様に、図1または図3のA部分を拡大して示しており、(a),(b),(c),(d)に順次示す工程により、タービンロータを製造する。
図8に示すように、本実施形態においては、タービンロータの製造工程の一部が、第3実施形態と異なる。本実施形態は、この点、および、これに関連する点を除き、第3実施形態の場合と同様である。このため、本実施形態において、重複する個所については、適宜、説明を省略する。
本実施形態では、図8に示すように、Ni基合金の継手部12が開先面に形成された第1フェライト鋼ロータ部2に、Ni基合金を溶加材として用いて、Ni基合金ロータ部1を溶接する。図示を省略しているが、これと同様に、第2フェライト鋼ロータ部3に、Ni基合金ロータ部1を溶接する。
以下より、本実施形態においてタービンロータを製造するときの各工程の詳細について説明する。
(1)バタリング溶接金属部11の形成
まず、図8(a)に示すように、第1フェライト鋼ロータ部2の開先面にNi基合金のバタリング溶接金属部11を形成する。
本工程では、開先面が突き合わせ方向に対して直交している第1フェライト鋼ロータ部2を準備する。そして、第1フェライト鋼ロータ部2の開先面に、第1バタリング溶接層111と第2バタリング溶接層112とを、順次、バタリング溶接することによって、バタリング溶接金属部11を形成する。第1バタリング溶接層111および第2バタリング溶接層112については、第1フェライト鋼ロータ部2の開先面において開先およびルート面が設けられる全面に積層させる。
具体的には、バタリング溶接金属部11の形成においては、Ni基合金を溶加材として用いる。本実施形態では、後工程において第1フェライト鋼ロータ部2とNi基合金ロータ部1との両者の間を本溶接するときに用いるNi基合金と同じ組成のNi基合金を用いて、バタリング溶接を行い、バタリング溶接金属部11を形成する。
上記のバタリング溶接は、たとえば、TIG溶接により行う。この他に、MIG(Metal Inert Gas)溶接、サブマージアーク溶接により、上記のバタリング溶接を行ってもよい。
つぎに、バタリング溶接金属部11が形成された第1フェライト鋼ロータ部2について、熱処理を行う。
本工程では、第1フェライト鋼ロータ部2を構成するフェライト鋼のテンパー温度以下の熱処理温度で熱処理を行い、バタリング溶接後の第1フェライト鋼ロータ部2の強度を回復させる。
具体的には、たとえば、下記の条件によって、熱処理を行う。
(熱処理条件)
・熱処理温度:630〜650℃
・熱処理時間:6〜12時間保持
・冷却方法:徐冷(10〜35℃/Hr)
(2)継手部12の形成
つぎに、図8(b)に示すように、Ni基合金の継手部12を形成する。
本工程では、前工程で形成したNi基合金のバタリング溶接金属部11(図8(a)参照)について開先加工を行うことによって、第1フェライト鋼ロータ部2の開先面に開先を形成する。これにより、第1フェライト鋼ロータ部2の開先面の全体に、Ni基合金の継手部12を設ける。
(3)突き合わせ
つぎに、図8(c)に示すように、第1フェライト鋼ロータ部2とNi基合金ロータ部1とを同一軸線上で互いに突き合わせる。
本工程では、第1フェライト鋼ロータ部2においてNi基合金の継手部12が形成された開先面に、Ni基合金ロータ部1の開先面を対面させる。
(4)溶接
つぎに、図8(d)に示すように、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との間を溶接する。
本工程では、Ni基合金を溶加材として用いて、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との両者の間を溶接する。これにより、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との間には、第1溶接金属部4が形成される。
本実施形態においては、溶加材としてNi基合金を用いるため、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2とを、予熱を行わずに接続した後、溶接する。
本工程では、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との接続位置を、両者の接続部が、運転時においてフェライト鋼のテンパー温度を超える位置に設けられるように設定してもよい。ただし、第1フェライト鋼ロータ部2の耐熱性の観点から、両者の接続位置は、運転時において、この接続部が560℃以下、より好ましくは、480℃以上560℃以下となる位置に設けられるように設定して、接続することが好ましい。
Ni基合金ロータ部1と第2フェライト鋼ロータ部3(図1または図3参照)との間についても、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2との間の場合と同様に、同一軸線上で互いを突き合わせた後に両者を溶接する。
(5)検査
つぎに、Ni基合金ロータ部1に第1フェライト鋼ロータ部2と第2フェライト鋼ロータ部3とが溶接された溶接構造物について、検査を行う。なお、本実施形態においては、溶加材としてNi基合金を用いるため、溶接構造物についての熱処理は行わない。本実施形態においては、冷却孔71、72を形成した場合には、これら冷却孔を用いた検査を行うことができる。
なお、本実施形態においては、他の各実施形態と同様、冷却孔形成工程を設けることも可能である。この場合、(2)継手部12の形成工程の後、(3)突き合わせ工程の前に、Ni基合金ロータ部1、第1フェライト鋼ロータ部2、第2フェライト鋼ロータ部3について、冷却孔71、72の形成を行うことができる。
上記のように各工程を経て、タービンロータを完成させる。
[C]まとめ
以上のように、本実施形態においては、質量%で、Cr:9〜12%、Mo:0.5〜1.5%、V:0.1〜0.3%、W:0.5〜1.5%を含有するフェライト鋼によって形成されている第1フェライト鋼ロータ部2,第2フェライト鋼ロータ部3を、Ni基合金ロータ部1に溶接する。本実施形態では、Ni基合金を溶加材として用いて、Ni基合金ロータ部1に、第1フェライト鋼ロータ部2と第2フェライト鋼ロータ部3とを溶接している。
このため、本実施形態においては、下記に示すように、タービンロータの信頼性を向上させることができる。
本実施形態と異なり、第1フェライト鋼ロータ部2,第2フェライト鋼ロータ部3を、質量%で、Cr:0.5〜3%、Mo:0.5〜2.0%、V:0.1〜0.5%を含有するフェライト鋼で形成した場合は、上述したように、溶接構造体のクリープ変形による強度低下を抑制するために、Ni基合金ロータ部1との接続位置を、両者の接続部が、運転時においてフェライト鋼のクリープ温度以下となる位置に設けられるように設定する必要がある。
これに対し、本実施形態では、第1フェライト鋼ロータ部2,第2フェライト鋼ロータ部3を、質量%で、Cr:9〜12%、Mo:0.5〜1.5%、V:0.1〜0.3%、W:0.5〜1.5%を含有するフェライト鋼で形成しているため、Ni基合金ロータ部1との接続位置を、両者の接続部が、運転時においてCr:0.5〜3%、Mo:0.5〜2.0%、V:0.1〜0.5%を含有するフェライト鋼のクリープ温度を超える位置に設けられるように設定しても、溶接構造体において、クリープ変形による強度低下が生じ難い。
すなわち、本実施形態においては、Ni基合金ロータ部1と第1フェライト鋼ロータ部2,第2フェライト鋼ロータ部3との接続位置を、より高温側の領域に設定できるため、タービンロータ全体における第1フェライト鋼ロータ部2,第2フェライト鋼ロータ部3の使用割合を増大し、Ni基合金ロータ部1の使用割合を低減して、効率的かつ経済的にタービンロータの製造を行うことができる。
また、本実施形態では、溶加材としてNi基合金を用いているため、溶接前の予熱や、溶接後の熱処理を行うことなく、Ni基合金ロータ部1に第1フェライト鋼ロータ部2と第2フェライト鋼ロータ部3とを溶接することができる。したがって、本実施形態においては、効率的かつ経済的にタービンロータの製造を行うことができる。
また、本実施形態では、溶接前の予熱や、溶接後の熱処理を行うことなく、Ni基合金ロータ部1に対する第1フェライト鋼ロータ部2と第2フェライト鋼ロータ部3との溶接を行っているため、第1溶接金属部4、第2溶接金属部5の割れを防止することができる。したがって、本実施形態においては、タービンロータの信頼性を向上させることができる。
なお、上述した各実施形態に係るタービンロータは、COタービン、ガスタービン、蒸気タービンのいずれにも適用することが可能である。
<その他>
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…Ni基合金ロータ部(Ni基合金母材)、2,3…フェライト鋼ロータ部(フェライト鋼母材)、4,5…溶接金属部、6A,6B,6C…中空部分、11,11A,11B,11C,21C…バタリング溶接金属部、12,12A,12B…継手部、12C,22C…開先延長部、111,112…バタリング溶接層、71,72…冷却孔

Claims (32)

  1. Ni基合金によって形成されているNi基合金ロータ部と、フェライト鋼によって形成されているフェライト鋼ロータ部とを溶接する溶接工程
    を有し、
    前記溶接工程においては、フェライト鋼を溶加材として用いて、前記Ni基合金ロータ部と前記フェライト鋼ロータ部とを溶接することを特徴とする、
    タービンロータの製造方法。
  2. 前記タービンロータを冷却する冷却孔を形成する冷却孔形成工程を有することを特徴とする、請求項1に記載のタービンロータの製造方法。
  3. 前記フェライト鋼ロータ部を、質量%で、Cr:0.5〜3%、Mo:0.5〜2.0%、V:0.1〜0.5%を含有するフェライト鋼で形成し、
    前記溶接工程では、前記フェライト鋼ロータ部と前記Ni基合金ロータ部との接続位置を、当該フェライト鋼ロータ部とNi基合金ロータ部との接続部が、運転時においてクリープ温度以下となる位置に設けられるように設定して、前記フェライト鋼ロータ部と前記Ni基合金ロータ部とを接続することを特徴とする、請求項1または2に記載のタービンロータの製造方法。
  4. 前記溶接工程では、前記Ni基合金ロータ部と前記フェライト鋼ロータ部との間において狭開先が設けられた継手を、ホットワイヤTIG溶接またはTIG溶接により1層について1パスで溶接することを特徴とする、
    請求項1から3のいずれか1に記載のタービンロータの製造方法。
  5. 前記Ni基合金ロータ部の開先面にフェライト鋼の継手部を形成する継手部形成工程を有し、
    前記溶接工程では、前記Ni基合金ロータ部において前記フェライト鋼の継手部が形成された開先面と、前記フェライト鋼ロータ部の開先面とを突き合わせた状態で、前記Ni基合金ロータ部と前記フェライト鋼ロータ部とを溶接することを特徴とする、
    請求項1から4のいずれか1に記載のタービンロータの製造方法。
  6. 前記継手部形成工程では、前記Ni基合金ロータ部の開先面の全体にフェライト鋼の継手部を形成する、
    請求項5に記載のタービンロータの製造方法。
  7. 前記継手部形成工程では、前記Ni基合金ロータ部の開先面のうちルート面が設けられる部分に、前記フェライト鋼の継手部を形成する、
    請求項5に記載のタービンロータの製造方法。
  8. 前記継手部形成工程では、前記Ni基合金ロータ部の開先面のうち開先開口部に、前記フェライト鋼の継手部を形成する、
    請求項5または7に記載のタービンロータの製造方法。
  9. 前記継手部形成工程は、前記Ni基合金ロータ部の開先面にフェライト鋼をバタリング溶接することによってバタリング溶接金属部を形成した後に、当該バタリング溶接金属部について開先加工を行うことによって前記フェライト鋼の継手部を形成することを特徴とする、請求項5から8のいずれか1に記載のタービンロータの製造方法。
  10. 前記継手部形成工程は、前記Ni基合金ロータ部の開先面に前記バタリング溶接金属部を形成し、フェライト鋼のテンパー温度以上Ni基合金の時効温度以下にて熱処理を行った後に、当該バタリング溶接金属部について開先加工を行い、
    前記溶接工程では、前記Ni基合金ロータ部を、開先加工された前記フェライト鋼ロータ部と溶接することを特徴とする、請求項9に記載のタービンロータの製造方法。
  11. 前記継手部形成工程における熱処理後、前記溶接工程前に、前記冷却孔形成工程を行うことを特徴とする、請求項10に記載のタービンロータの製造方法。
  12. 前記継手部形成工程では、第1バタリング溶接層と第2バタリング溶接層とを順次バタリング溶接することによって、前記バタリング溶接金属部を形成し、
    前記第1バタリング溶接層をバタリング溶接で形成するときの入熱量が、前記第2バタリング溶接層をバタリング溶接で形成するときの入熱量、および、前記溶接工程において前記Ni基合金ロータ部と前記フェライト鋼ロータ部とを溶接するときの入熱量よりも低いことを特徴とする、請求項9から11のいずれか1に記載のタービンロータの製造方法。
  13. 前記Ni基合金ロータ部の開先開口部側の面において当該開先開口部の近傍に第1開先延長部を設ける第1開先延長部形成工程と、
    前記フェライト鋼ロータ部の開先開口部側の面において当該開先開口部の近傍に第2開先延長部を設ける第2開先延長部形成工程と
    を有し、
    前記溶接工程において前記第1開先延長部と前記第2開先延長部とを溶接金属が被覆するように前記Ni基合金ロータ部と前記フェライト鋼ロータ部とを溶接した後に、前記第1開先延長部と前記第2開先延長部と共に前記溶接金属の余盛部分を除去することを特徴とする、
    請求項1から12のいずれか1に記載のタービンロータの製造方法。
  14. 前記第1開先延長部形成工程では、ニッケル基合金をバタリング溶接することによってバタリング溶接金属部を形成した後に、当該バタリング溶接金属部について加工を行うことによって前記第1開先延長部を形成し、
    前記第2開先延長部形成工程では、フェライト鋼をバタリング溶接することによってバタリング溶接金属部を形成した後に、当該バタリング溶接金属部について加工を行うことによって前記第2開先延長部を形成する、
    請求項13に記載のタービンロータの製造方法。
  15. 前記第1開先延長部形成工程および前記第2開先延長部形成工程では、第1バタリング溶接層と第2バタリング溶接層とを順次バタリング溶接することによって、前記バタリング溶接金属部を形成し、
    前記第1バタリング溶接層をバタリング溶接で形成するときの入熱量が、前記第2バタリング溶接層をバタリング溶接で形成するときの入熱量、および、前記溶接工程において前記Ni基合金ロータ部と前記フェライト鋼ロータ部とを溶接するときの入熱量よりも低いことを特徴とする、
    請求項14に記載のタービンロータの製造方法。
  16. TIG溶接、MIG溶接、サブマージアーク溶接のいずれかにより、前記バタリング溶接金属部を形成することを特徴とする、
    請求項9から12,14,15のいずれか1に記載のタービンロータの製造方法。
  17. 前記溶接工程において前記Ni基合金ロータ部と前記フェライト鋼ロータ部とを溶接した後に、前記フェライト鋼ロータ部のテンパー温度以下で熱処理を行うことによって残留応力を除去する熱処理工程と、
    前記熱処理工程の実施後に、前記Ni基合金ロータ部と前記フェライト鋼ロータ部との溶接部について超音波探傷検査を行う検査工程
    を更に有する、
    請求項1から16のいずれか1に記載のタービンロータの製造方法。
  18. 前記溶接工程において、前記Ni基合金ロータ部の開先面に形成した前記バタリング溶接金属部と前記フェライト鋼ロータ部とを、フェライト鋼を溶加材として用いて溶接した後、前記熱処理工程を行うことを特徴とする、請求項17に記載のタービンロータの製造方法。
  19. 前記フェライト鋼ロータ部を、質量%で、Cr:9〜12%、Mo:0.5〜1.5%、V:0.1〜0.3%、W:0.5〜1.5%をを含有するフェライト鋼で形成することを特徴とする、請求項1に記載のタービンロータの製造方法。
  20. 前記タービンロータを冷却する冷却孔を形成する冷却孔形成工程を有することを特徴とする、請求項19に記載のタービンロータの製造方法。
  21. 前記フェライト鋼ロータ部の開先面にNi基合金をバタリング溶接することによってNi基合金のバタリング溶接金属部を形成し、前記フェライト鋼ロータ部のテンパー温度以下で熱処理を行った後、前記Ni基合金のバタリング溶接金属部について開先加工を行い、
    前記溶接工程においては、Ni基合金を溶加材として用いて、前記フェライト鋼ロータ部と、前記Ni基合金ロータ部とを溶接することを特徴とする、請求項19または20に記載のタービンロータの製造方法。
  22. 前記溶接工程においては、前記Ni基合金の溶加材を用いて溶接する際に予熱を行わず、かつ前記溶接工程後の熱処理を行わないことを特徴とする、請求項21に記載のタービンロータの製造方法。
  23. 前記Ni基合金ロータ部と前記フェライト鋼ロータ部との溶接部の内周面の状態を、前記冷却孔から検査する工程を更に有することを特徴とする、請求項2から18または請求項20から22のいずれか1に記載のタービンロータの製造方法。
  24. 前記Ni基合金ロータ部と前記フェライト鋼ロータ部との溶接部について超音波探傷検査を行う検査工程を更に有する、
    請求項19から23のいずれか1に記載のタービンロータの製造方法。
  25. 前記溶接工程では、溶接姿勢を全て下向き姿勢として、TIG溶接により行い、かつ、前記Ni基合金ロータ部と前記フェライト鋼ロータ部との溶接構造体を横向き状態としたまま、前記熱処理を行うことを特徴とする、請求項10から18または請求項21から24のいずれか1に記載のタービンロータの製造方法。
  26. Ni基合金によって形成されているNi基合金ロータ部と、
    フェライト鋼によって形成されているフェライト鋼ロータ部と
    を有し、
    前記Ni基合金ロータ部と前記フェライト鋼ロータ部とが、フェライト鋼を溶加材として用いて溶接されていることを特徴とする、タービンロータ。
  27. Ni基合金によって形成されているNi基合金ロータ部と、
    フェライト鋼によって形成されているフェライト鋼ロータ部と
    を有し、
    前記Ni基合金ロータ部と前記フェライト鋼ロータ部とが、Ni基合金を溶加材として用いて溶接されていることを特徴とする、タービンロータ。
  28. 前記タービンロータを冷却する冷却孔を有することを特徴とする、請求項26または27に記載のタービンロータ。
  29. 前記フェライト鋼ロータ部が、質量%で、Cr:0.5〜3%、Mo:0.5〜2.0%、V:0.1〜0.5%をを含有するフェライト鋼で形成されることを特徴とする、請求項26または28に記載のタービンロータ。
  30. フェライト鋼ロータ部が、質量%で、Cr:9〜12%、Mo:0.5〜1.5%、V:0.1〜0.3%、W:0.5〜1.5%をを含有するフェライト鋼で形成されることを特徴とする、請求項27または28に記載のタービンロータ。
  31. Ni基合金母材と、フェライト鋼母材とを溶接する溶接工程
    を有し、
    前記溶接工程においては、フェライト鋼を溶加材として用いて、前記Ni基合金母材と前記フェライト鋼母材とを溶接することを特徴とする、
    溶接方法。
  32. Ni基合金母材と、フェライト鋼母材とを溶接する溶接工程
    を有し、
    前記溶接工程においては、Ni基合金を溶加材として用いて、前記Ni基合金母材と前記フェライト鋼母材とを溶接することを特徴とする、
    溶接方法。
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