JP4900705B2 - 焼酎、その製造方法及び濃縮物 - Google Patents

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本発明は、焼酎醪を蒸留することなく、醪液部と醪固形物に固液分離し、得られた醪液部を新規に利用する焼酎、その製造方法及び濃縮物に関する。
焼酎の製造工程は、製麹、一次仕込み、二次仕込み、蒸留の工程からなる。通常、蒸煮した米、麦、サツマイモ等の糖質原料に麹菌を加えて培養(製麹)して麹を作る。次いで一次仕込み(麹、糖質材料、酵母、水、クエン酸からなる仕込み)で一次醪をつくる。次いで二次仕込み(一次醪、糖質材料、水からなる仕込み)でアルコール発酵を行わせて二次醪を得る。前記各仕込みに用いられる糖質材料には、例えば、蒸煮した澱粉質材料、例えば、代表的には米、麦等の穀類、芋類があげられる。得られた二次醪(本明細書において、単に「醪」、「焼酎醪」と呼ぶときは、焼酎製造のための二次醪のことを意味する)を蒸留することによって焼酎が製造される。醪を蒸留した後の残渣はいわゆる「焼酎粕」(「蒸留残渣」ともいう)と呼ばれ、アルコール蒸留した残りの液体と固形物の混合体からなる。
これまで、焼酎は、前記のように焼酎醪を固液分離することなく蒸留されることが一般的であり、焼酎醪を蒸留することなく固液分離して得た醪固形物を原料とした焼酎の報告はなされていない。
従来の焼酎の一般的な製造方法において、アルコール蒸留する対象は焼酎醪であり、焼酎醪は糖質原料がそのままアルコール発酵されたものであり、繊維質成分を含んだものである。これに対して、特開平11−32751号公報(特許文献1)に、芋類原料から繊維質を除去して抽出した澱粉を液化させた澱粉液化液を発酵、蒸留して芋の臭いが少なく、風味のよい焼酎を製造する方法が報告されている。
一方、焼酎粕は、大部分は海洋投機、大地還元、焼却処分、生物学的処理により廃棄処分されているが、近年、モロミ酢の原料として利用されていたり、家畜用飼料として利用されている。モロミ酢は、一般的には、焼酎粕をそのままスクリュープレス等の圧搾ろ過又は遠心分離等によって清澄液を得ることによって製造されている。また、焼酎粕に糖分を加え、酢酸菌で酢酸発酵させて醸造酢を製造することが報告されている(特開平10−155471号公報:特許文献2)。しかしながら、焼酎醪を蒸留することなく醪液部と醪固形部に固液分離して得た醪固形物を、焼酎、飲食品、飼料等の原料として利用した例について、報告はなされていない。
特開平11−32751号公報 特開平10−155471号公報
本発明は、焼酎製造過程において、廃棄物を限りなくゼロにするシステムを構築することを課題とし、さらに、本発明は、焼酎醪に対して、蒸留する前に固液分離を行い、得られた醪液部、醪固形部を利用して、新規な、焼酎、発酵物、食品、飼料及びそれらの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記した課題を解決すべき鋭意研究を重ねた結果、焼酎醪を蒸留することなく醪液部と醪固形部を固液分離し、これらの醪液部と醪固形部を有効に利用することにより、新規な焼酎、飲食品、飼料、発酵物を製造できることを見出した。
図1に、本発明の焼酎、飲食品、飼料、発酵物の各製造の骨格となる醪液部と醪固形部を製造するプロセスを利用した、出発原料から各最終製品に至るまでのコース1〜8の製造プロセスが統括されたシステムを示す。
図1のコース1〜8の製造プロセスに示すように、蒸煮した米、麦、サツマイモ等の糖質材料に麹菌を加えて培養して製麹し、次いで一次仕込み(麹、糖質材料、酵母、水、クエン酸からなる仕込み)で一次醪をつくり、次いで二次仕込み(一次醪、糖質材料、水からなる仕込み)でアルコール発酵を行わせて二次醪(焼酎醪)とし、次いで、得られた焼酎醪を固液分離し、醪液部、醪固形部を製造する。該醪液部及び醪固形部から製造される本発明の焼酎、飲食品、飼料、発酵物は以下の各発明である。
図1のコース1で示す本発明の芳醇型焼酎の製造方法は、(1)焼酎醪を蒸留することなく醪液部と醪固形部に固液分離し、(2)前記工程(1)で得られた醪固形部に天然空隙材を添加した後に固体蒸留して芳醇型焼酎を得る焼酎の製造方法であって、(3)該天然空隙材は、ばら状態の複数個の粒状またはもみ殻状物質で、組み合わせたときに空隙を生ずる形態の物質であって、米、でん粉粕、麹米、さつまいもダイス、焼き芋ダイス、粟、ヒエ、麦、トーモロコシ、ごま、落花生、アーモンド、ナッツ類、種子、レーズン、果実、果皮、殻皮、豆腐おから、コーヒー粕、ホップ粕、アニス、グリーンペッパー、ホワイトペッパー、クミン及びそれらの蒸煮物、焙煎物から選ばれた物質であることを特徴とする焼酎の製造方法である。
図1のコース2で示す本発明の芳醇型焼酎の製造方法は、前記コース1の焼酎の製造における固体蒸留時に残る固体蒸留残渣を利用するものであり、(1)焼酎醪を蒸留することなく醪液部と醪固形部に固液分離し、(2)前記工程(1)で得られた醪固形部を固体蒸留してアルコールを留去し、(3)前記工程(2)の固体蒸留により残った固体蒸留残渣に糖質材料を添加し、発酵してアルコールを産生させ、(4)前記工程(3)で得られたアルコールを含有する醪を蒸留して芳醇型焼酎を得ることを特徴とする。
前記コース1及びコース2の焼酎製造方法において、醪固形部に天然空隙材を添加することにより醪固形部中に間隙を増加させて、アルコールの透過の通路をつくり、その後、アルコールを蒸留することによりアルコールの回収を容易にすることができる。前記コース2の芳醇型焼酎の製造方法において、固体残留残渣に糖質原料等を添加してアルコール発酵した後に、蒸留する場合に、該蒸留が固体蒸留である場合に、蒸留前の醪に天然空隙材を添加してアルコールの回収を容易にしてもよい。
天然空隙材は、ばら状態の複数個の粒状又は籾殻状物質で、組み合わせたときに空隙を生ずる形態の物質であって、アルコール発酵材料としての糖質材料、焼酎に焼き芋の香りを付与することが可能な焼き芋キューブ又は、焼酎に芳香を付与することが可能な芳香性植物材料が用いられる。該芳香性植物材料には、果皮、果実、果物の種子等があげられる。
前記のコース1及びコース2の芳醇型焼酎の製造方法において、前記工程(1)で得られた醪固形部の一部又は全部を焼酎醪を製造する際の酵母として使用することができる。
図1のコース3で示す本発明の飲食品又は飼料の製造方法は、前記コース1の焼酎の製造における固体蒸留時に残る固体蒸留残渣を利用するものであり、(1)焼酎醪を蒸留することなく醪液部と醪固形部に固液分離し、(2)前記工程(1)で得られた醪固形部を固体蒸留してアルコールを留去してなる蒸留残渣を含有させた飲食品又は飼料とするものである。コース3で示す飲食品の例には、さつまあげ、かまぼこ、ちくわ、魚肉ソーセージ等の水産練り製品;ハム、ソーセージ等の畜肉加工品;めん類等のパスタ、ピザ、パン、アイスクリーム、飲料等があげられる。
図1のコース4で示す本発明の発酵物の製造方法は、前記コース1の焼酎の製造における固体蒸留時に残る固体蒸留残渣を利用するものであり、(1)焼酎醪を蒸留することなく醪液部と醪固形部に固液分離し、(2)前記工程(1)で得られた醪固形部を固体蒸留してアルコールを留去し、(3)前記工程(2)で残った固体蒸留残渣に、水、糖質材料及び基質(副原料)のいずれか1種以上を添加し、発酵して発酵物を産生させることを特徴とする。発酵の種類により、乳酸発酵の場合には乳酸が産生され、乳酸含有物が発酵物として得られる。また、酢酸発酵の場合には酢酸が産生され酢酸含有物が発酵物として得られる。得られた発酵物を精製して乳酸、酢酸等を得ることができる。
図1のコース5で示す本発明の飲食品又は飼料の製造方法は、前記コース1の焼酎の製造における固体蒸留時に残る固体蒸留残渣を利用するものであり、(1)焼酎醪を蒸留することなく醪液部と醪固形部に固液分離し、(2)前記工程(1)で得られた醪固形部を固体蒸留してアルコールを留去し、(3)前記工程(2)で残った固体蒸留残渣に糖質材料を添加し、発酵してアルコールを産生させ、(4)前記工程(3)で得られたアルコールを含有する醪を蒸留してアルコールを留去して蒸留残渣を得、(5)前記工程(4)で得られた蒸留残渣を含有させて飲食品とするものである。コース5で示す飲食品の例には、さつまあげ、かまぼこ、ちくわ、魚肉ソーセージ等の水産練り製品;ハム、ソーセージ等の畜肉加工品;アイスクリーム、飲料等があげられる。
図1のコース6で示す本発明の淡麗型焼酎の製造方法は、醪液部を利用するものであり、(1)焼酎醪を蒸留することなく醪液部と醪固形部に固液分離し、(2)前記工程(1)で得られた醪液部を蒸留して淡麗型焼酎を得る焼酎の製造方法であって、(3)前記工程(1)で得られた醪固形部の一部又は全部を焼酎醪製造用の酵母として使用することを特徴とする。
図1のコース6で示す本発明の淡麗型焼酎の製造方法の変法は、(1)焼酎醪を蒸留することなく醪液部と醪固形部に固液分離し、(2)前記工程(1)で得られた醪液部を蒸留して淡麗型焼酎を得る焼酎の製造方法であって、(3)前記工程(2)で残った醪液部蒸留残液の一部又は全部を焼酎醪製造用の一次仕込み用、二次仕込み用、又は両方の仕込み水として使用する(図1のコース8)焼酎の製造方法である。蒸留は減圧又は常圧の何れでも可能であるが、減圧蒸留の場合には、減圧蒸留残液には、耐酸性アミラーゼが失活せずに残っている可能性があり、その場合には麹米(酵素源)の使用量を減らすことができる。
図1のコース6の淡麗型焼酎の製造方法のさらに別の変法として、醪固形部の一部を醪液部に適宜添加して、前記の淡麗型焼酎を製造することにより、淡麗型焼酎に酵母由来の旨味を付与させてもよい。淡麗型焼酎に酵母由来の旨味を付与する別の方法として、醪液部と醪固形部に固液分離する際に、醪固形部の一部が醪液部に移行する条件で行ってもよい。例えば、スクリュープレス等の圧搾ろ過にて酵母菌体を液部に移行させたり、また、遠心分離等において、液部に酵母菌体が残るような緩やかな条件で固液分離を行わせてもよい。
図1のコース7で示す本発明の濃縮物の製造方法は、前記した淡麗型焼酎の製造過程の工程(3)で残った醪液部蒸留残液をさらに減圧蒸留することにより濃縮して得ることができる。
図1の前記コース1又はコース2の製造方法により得られた芳醇型焼酎と、前記コース6の製造方法により得られた淡麗型焼酎をブレンドすることにより、ブレンド焼酎を得ることができる。本発明のブレンド焼酎は、原料が同一で、醪製造の段階までは同一製造工程を経たものから派生して製造される種類の異なる複数種類の焼酎をブレンドするものであり、同一原料及び同一製造工程に起因して風味が均質化したバリエーションが生じ、ブレンドしても両者が違和感のない親和性の高い状態で、各々の風味の特徴点を融合させて段階的に変化させることができる。
本発明の各種焼酎の製造方法において、いも焼酎の原料から製造したいも焼酎醪を用いることにより、芳醇型、淡麗型、これらのブレンド型のいも焼酎を製造することができる。
本発明の飲食品又は飼料は、前記飲食品又は飼料の製造方法により得られたものである。飲食品には、例えば、さつまあげ、かまぼこ、ちくわ、魚肉ソーセージ等の水産練り製品;ハム、ソーセージ等の畜肉加工品;アイスクリーム、飲料等が好適である。
図2に、一次仕込み(麹、糖質材料、酵母、水、クエン酸を混合して仕込む)を行なわない焼酎製造システムを示し、具体的には、図1における醪固形部を二次仕込みに差し戻すことにより醪固形部に含まれる酵母を利用し、図1における仕込み水(コース8)を二次仕込みに差し戻すことにより、クエン酸酸性の水を二次仕込み水として利用し、さらに製麹された麹(例えば、麹米)、糖質原料を添加して二次仕込みを行い、アルコール発酵を行わせて醪を得るシステムを示す。図2における各生産物を得るコース1〜8は全て、図1と同じコースである。
前記コース1で示す芳醇型焼酎の製造方法によれば、(1)焼酎醪を蒸留することなく醪液部と醪固形部に固液分離し、(2)前記工程(1)で得られた醪固形部を固体蒸留して芳醇型焼酎を得ているので、アルコール分が残存している醪固形部からアルコールを回収できると共に、醪固形部に豊富に含まれている芳香成分を揮発させて、芳香性に富んだ芳醇型焼酎を得ることができる。
前記コース2で示す芳醇型焼酎の製造方法によれば、醪固形部を固体蒸留して残った固体蒸留残渣を出発原料として芳醇型焼酎を製造しているので、固体蒸留残渣を有効利用することができる。
前記コース1及びコース2の芳醇型焼酎の製造方法において、醪固形物、或いはコース2の醪に天然空隙材を添加混合して固体蒸留を行っているので、アルコール蒸気の通過を容易にし、アルコールの回収を容易にすることができる。天然空隙材として焼き芋キューブを用いた場合には、焼酎に焼き芋の香りを付与することができ、また、天然空隙材として果皮、果実、果物の種子を用いた場合には、焼酎に果物香を付与することができる。
前記のコース1及びコース2の芳醇型焼酎の製造方法において、前記工程(1)で得られた醪固形部の一部又は全部を焼酎醪を製造する際の酵母として使用することができる。前記コース1及びコース2の芳醇型焼酎の製造方法において、前記工程(1)で得られた醪固形部の一部又は全部を焼酎醪を製造する際の酵母とする場合には、二次仕込みにおいて酵母の添加を省略することができるか、或いは添加する酵母の量を減じることができる。
前記コース3、及びコース5の製造プロセスで示す本発明の飲食品、飼料によれば、固体蒸留残渣は繊維質、菌体が豊富に含まれているので、飲食品、飼料にこれらの成分を付与することができ、有用な飲食品、飼料とすることができる。
前記コース4で示す発酵物の製造方法によれば、醪固形部を固体発酵して乳酸又は酢酸等の発酵物を産生させることにより、乳酸含有発酵物又は酢酸発酵含有物は、繊維質、菌体が豊富に含まれているので、機能性飲食品として、或いは、食品素材として各種飲食品、或いは飼料素材として飼料に含有させて利用することができる。或いは、乳酸又は酢酸等の発酵物を抽出することができる。
前記コース6の製造プロセスで示す淡麗型焼酎の製造方法によれば、(1)醪液部と醪固形部に固液分離し、(2)前記工程(1)で得られた醪液部を蒸留して淡麗型焼酎を得ているので、焼酎醪に対して直接固液分離が行われることから、焼酎醪に含まれている芳香成分の多くが醪固形部に移行することになり、芳香成分が減じられた醪液部を蒸留することにより、淡麗型焼酎を得ることができる。
前記コース6の淡麗型焼酎製造プロセスの変法の一つとして、焼酎醪の固液分離の際に生じた醪固形部の一部又は全部を焼酎醪製造用の酵母として使用する方法では、醪固形部を有効利用することができる。
前記コース6の淡麗型焼酎製造プロセスの変法の一つとして、焼酎醪の固液分離の際に生じた醪固形部の一部を醪液部に適宜量添加することにより、淡麗型焼酎に酵母由来の旨味を付与させることができる。
前記コース6の淡麗型焼酎製造プロセスの変法の一つとして、焼酎醪の固液分離の際に醪固形部の一部が醪液部に移行する条件で固液分離を行うことにより、淡麗型焼酎に酵母由来の旨味を付与させることができる。
前記コース7の濃縮物の製造方法によれば、醪液部の蒸留後に残った醪液部蒸留残液を濃縮して濃縮物としているので、得られた濃縮物は、クエン酸が高度に濃縮される。さらに、該濃縮物には、リンゴ酸、コハク酸、酢酸などの有機酸のほか、ナトリウム、カリウムなどのミネラル、種々のアミノ酸も多量に含んでいるので、そのままで、または希釈して或いは他の成分を配合して酸味調味液として、或いは飲食品或いは飼料に配合して利用できる。
前記コース8の製造プロセスで示す仕込み水を利用する焼酎製造方法によれば、醪液部の蒸留後に残った醪液部蒸留残液の一部又は全部を、焼酎醪製造用の仕込み水(一次仕込み水及び/又は二次仕込み用水)として使用するので、醪液部蒸留残液を有効利用することができる。該醪液部蒸留残液には、クエン酸が豊富に含まれ、その他にリンゴ酸、コハク酸、酢酸などの有機酸、ナトリウム、カリウムなどのミネラル、種々のアミノ酸も含まれているので、水で適宜希釈して仕込み水として有用である。製麹は、一般的には当初約24時間前後、高温で培養して酵素を産生させ、後半では約15時間前後、低温にて培養しクエン酸を製造しているが、醪液部蒸留残液はクエン酸酸性であるので、本発明では、醪液部蒸留残液を一次仕込み水として培養した場合には、製麹時間を短縮させることができる。
図2に示す、一次仕込み(麹、糖質材料、酵母、水、クエン酸を混合して仕込む)を行なわずに、焼酎、飲食品、飼料、発酵物を製造するシステムは、系外から導入する原料としては、少なくとも麹米、糖質原料を添加するだけでよいので、時間と手間を要する一次仕込みを省略することができ、焼酎製造プロセスを簡略化することができる。
本発明における製造システムで用いる「焼酎醪」は、焼酎の原料である、米、麦等に麹菌を作用させて製麹したものに、酵母を作用させて得られる、いわゆる「二次もろみ」をいう。また、本発明でいう「焼酎」とは、焼酎乙類として分類される焼酎を一般的に意味し、連続式蒸留で精製した焼酎甲類は含まない。また、焼酎乙類であれば、その種類は問わず、例えば、米焼酎、麦焼酎、いも焼酎、きび焼酎、黒糖焼酎、白糠焼酎、そば焼酎等が挙げられる。
本発明における製造システムで用いる「焼酎醪」の取得までは、焼酎の通常の製造工程に従って製造することができる。まず、蒸米、蒸麦等の澱粉質材料に麹菌(種麹)を接種して十分に撹拌混合し、35℃〜45℃の範囲で送風し、撹拌し、静置を繰り返して培養し、焼酎製造用の麹を得る(製麹)。麹菌としては、白麹菌、黒麹菌、黄麹菌、泡盛麹菌等の通常、焼酎に用いられる麹菌のいずれでもよく、具体的には、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi )、アスペルギルス・ウサミ(Aspergillus usamii )、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)などが挙げられる。次いで、製造された麹に酵母と水を加えて発酵させ、さらに主原料(焼酎の種類によって異なる)を投入して発酵させると、焼酎醪が得られる。
続いて、得られた焼酎醪を固液分離し、醪液部と醪固形部を得る。固液分離手段としては、例えば、フィルターろ過、スクリュープレス等の圧搾ろ過機、真空脱水機、又は遠心分離機などの装置を用いて分離したり、或いは天然ろ過助剤を用いてろ床をつくり、これに焼酎醪を透過させる方法が挙げられる。醪固形部には酵母が多量に含まれているので、該醪固形部の一部又は全部を前記発酵工程に用いる酵母として差し戻して利用することができる。また、醪固形部の一部を醪液部に適宜添加して、前記の淡麗型焼酎を製造することにより、淡麗型焼酎に旨味を付与させることができる。淡麗型焼酎に酵母由来の旨味を付与する別の方法として、醪液部と醪固形部に固液分離する際に、醪固形部の一部が醪液部に移行する条件で固液分離を行うことが望ましい。例えば、ろ過条件を緩やかにして酵母菌体を通過させて液部に移行させたり、また、遠心分離等において、液部に酵母菌体が残るような緩やかな条件で固液分離を行わせる。
次に、分離した醪液部を蒸留(減圧蒸留又は常圧蒸留)し、アルコールを溜出させて回収する。醪液部から溜出させたアルコール分は、40〜42%のアルコール濃度を有している。溜出したアルコール濃度が約10%程度になった時点でアルコール回収を終了して、本発明の淡麗型焼酎を得る。ここで回収されたアルコール分は、焼酎醪からの固形分が除去されたものが蒸留されたものであるので、焼酎醪を直接蒸留した従来の焼酎とは異なり、原料特有の香りや臭いが減じられたものとなり、味についても原料特性が弱く、全体として淡麗である。従って、前記製造方法により得られた焼酎は、従来の焼酎とは異なる酒質の焼酎として提供できる。淡麗型焼酎に酵母由来の旨味を付与するには、前記に説明したように、醪固形部の一部を醪液部に添加したり、或いは、醪液部と醪固形部に固液分離する際に、醪固形部の一部が醪液部に移行する条件で行うことで酵母由来の旨味を付与することができる。
前記淡麗型焼酎を回収した残りの蒸留残液を水で適宜に希釈して焼酎醪の製造用の仕込み水として用いることができる。
一方、前記淡麗型焼酎を回収した残りの蒸留残液をさらに減圧濃縮することにより、醪液部蒸留残液濃縮物を得る。濃縮度は基本的に大きい方が好ましいが、初発醪液部に対して2〜20倍に濃縮することが好ましい。濃縮度が2倍未満であると、濃縮物としての特徴が発揮できず、また20倍を超えると、成分変化はないが、粘稠度が増し、内容物が蒸留器に付着して洗浄が困難になるので好ましくない。
前記減圧蒸留は、通常の飲食品分野で使用されている減圧濃縮装置を用いて行えばよく、例えば、真空度−720〜−600mmHg程度の減圧下、32〜60℃で2時間程度行う。
前記醪液部蒸留残液濃縮物は、麹菌により生成されたクエン酸が高度に濃縮され、その濃度は1〜10g/100mlである。さらに、該醪液部蒸留残液濃縮物は、リンゴ酸、コハク酸、酢酸などの有機酸のほか、ナトリウム、カリウムなどのミネラル、種々のアミノ酸も多量に含んでいるので、そのままで、または希釈して、或いは他の成分を配合して、酸味調味料、飲料、食品、飼料に使用可能である。
醪液部蒸留残液濃縮物を調味料とする場合は、単独で食酢様の酸味調味料として利用でき、或いは他の原料または調味(旨味)成分を配合してドレッシング、マヨネーズ等としても利用できる。配合できる他の原料又は調味成分としては、しょうゆ、みりん、みそ、香辛料、食用油、卵、動物性タンパク質加水分解物、植物性タンパク質加水分解物、かつおぶし、乾燥たまねぎ、乾燥にんじん、魚介エキス、酵母エキス、果物エキス等が挙げられる。また、調味料には必要に応じ、食品添加物として許容されている増粘剤、安定剤、乳化剤、酸化防止剤などを添加してもよい。
醪液部蒸留残液濃縮物を飲料とする場合は、単独で高濃度のクエン酸飲料として利用できるが、リンゴ、レモン、オレンジ等の絞り汁を配合し、必要に応じて甘味料、香料、色素などを添加してもよい。
醪液部蒸留残液濃縮物を食品に含有させる場合は、該濃縮物の量は特に限定されないが、例えば、該濃縮物を食品中の0.01%から100質量%とすることができる。
一方、前記固液分離により得られた醪固形部には、未だアルコールが残存しているため、固体蒸留して芳醇型焼酎を得る。蒸留には減圧蒸留又は常圧蒸留を適用でき、溜出したアルコール濃度が約10%程度になった時点でアルコール回収を終了して、本発明の芳醇型焼酎を得る。このとき残りの成分として、繊維、酵母が主たる成分の蒸留残渣が得られる。固体蒸留する前に、天然空隙材を醪固形部に添加、混合してもよく、天然空隙材を含んだ状態で固体蒸留することにより、アルコール蒸気の透過を速めるので、固体蒸留を効率よく行わせることができる。
天然空隙材には、醪固形部と混合したときに、アルコール蒸気の通過を容易にするための空隙を形成できる天然材料であれば何でもよい。適度な粒度(直径0.1−10mm)を有することが好ましく、例えば、米、でん粉粕、麹米、さつまいもダイス、粟、ヒエ、麦、トーモロコシ、ごま、落花生、アーモンドなどのナッツ類、レーズン、果皮、殻皮、豆腐おから、コーヒー粕、ホップ粕、アニス、グリーンペッパー、ホワイトペッパー、クミン及びそれらの蒸煮物、焙煎物が好適に用いられる。焼き芋ダイスを空隙材として用いた場合には、焼酎中に香気成分イソブタナール、ペンタナールが格段に増大し、イソブテナールも検出される。コーヒー粕を空隙材として用いた場合には、ガスマス分析の結果では区別ができなかったが、その焼酎は官能的には醪固形部のみの場合と全く異なり、コーヒー臭がきちんと感じられた。
また、醪固形部には、未だアルコールが残存しているため、これを食品に添加してアルコール付与、天然繊維付与、食感改善、水分保持作用による鮮度保持効果を付与した食品とすることができる。例えば、醪固形部を配合して機能性を付与または改善できる食品としては、ソーセージ、ハムなどの畜肉加工品、さつま揚げ、ちくわ、かまぼこ等の水産練り製品、ギョウザ、コロッケなどの冷凍食品、パン、菓子、アイスクリーム、飲料等が一例として挙げられる。また、醪固形物は、賦形剤などを配合して、家畜用、魚肉用飼料としても好適に用いることができる。
また、前記醪固形部を固体蒸留してアルコールを留去して残った蒸留残渣は、飲食品への天然繊維成分強化、食感改善、水分保持作用による鮮度保持強化などの種々の機能を各種飲食品に付与することができることから、機能性飲食品素材として用いることができる。例えば、そのまま、或いは乾燥して粉末化したものは、そのままの形態でサプリメントとして、或いは、機能性を付与又は改善すべき飲食品に配合して用いることができる。このような飲食品の例としては、ソーセージ、ハムなどの畜肉加工食品、さつま揚げ、かまぼこ、ちくわなどの水産練り製品、ギョウザ、コロッケなどの冷凍食品、パン、菓子、アイスクリーム、飲料等が一例として挙げられる。また、前記蒸留残渣は、賦形剤などを配合して家畜用、ペット用、魚用飼料として好適に用いることができる。
[実施例1]:淡麗型焼酎その1の製造(図1のコース6)
(1)製麹工程
試験用河内型自動製麹回転ドラムに原料米20kgを投入し、洗米し、1時間浸漬した後、30分間水切りし水分30.3%とした。次いで、60分間1回目蒸しをした後、1.4L打ち水した。次いで、30分間2 回目蒸しをした後、送風冷却を行った。40℃に冷却された蒸し米(水分36.0%) に、種麹(河内白麹菌)を200g(0.1 %)種付けし、自動製麹を開始した。製麹時間は40時間とし、この間、品温設定を38℃から30℃でプログラム制御した。得られた麹は、破精まわり良く、水分24.9%、酸度5.5であった。
(2)一次仕込み工程
一次発酵タンク(60L容)に、前記工程(1)で得られた麹全量と汲水24L、純酵母(鹿児島2号)400mLを加え、一次発酵を開始した。発酵日数5日とし、その間、品温は、32℃上限制御した。最終日、アルコール分15.2%、酸度25の一次焼酎醪を得た。
(3)二次仕込み工程
前記工程(2)で得られた一次焼酎醪全量を、二次発酵タンク(240L容)に移した。一方、主原料としてサツマイモ(品種:コガネセンガン)100kgを蒸し器で蒸し、放冷後粉砕したものを、同二次発酵タンクに投入し、汲水84L加え、二次発酵を開始した。発酵日数を8日間とし、品温制御上限温度を30℃に設定し、アルコール発酵を行った。最終日、焼酎醪量180L、アルコール分14.1%、試留酸度1.2の二次焼酎醪を得た。
(4)焼酎醪固液分離工程
前記工程(3)で得られた二次焼酎醪180Lを振動篩(16メッシュ)で予め、粗大センイを除き、篩いパス液を、遠心分離機( 機種:コクサンH−130EIH上部排出型、回転速度3120rpm)で、連続遠心分離して、醪固形部と醪液部を分取した。醪固形部と醪液部の分離比は32:68、固形部水分85%、醪液部中へ移行した醪固形部(酵母菌体+芋センイ)は、1.49%であった。
(5)常圧蒸留工程
固液分離した醪液部50Lを50L試験蒸留機に投入し、常圧蒸留した。常圧蒸留の条件を蒸気量10kg/h、カット度数11%とし、蒸留は1時間50分で終了し、16.2L、アルコール分39.3%の原酒焼酎(図1のコース6に示す淡麗型焼酎)を得た。
[実施例2]淡麗型焼酎その2の製造(図1のコース6)
前記実施例1の淡麗型焼酎の製造において、工程(5)の常圧蒸留を、減圧蒸留に変えた以外は、前記実施例1と同様にして淡麗型焼酎その2を得た。即ち、固液分離した醪液部50Lを50L試験蒸留機に投入し、減圧蒸留した。減圧蒸留の条件を蒸気量8kg/h、カット度数11%とし、蒸留は1 時間45分で終了し、16.5L、アルコール分38.0%の原酒焼酎(図1のコース6に示す淡麗型焼酎)を得た。
[実施例3]芳醇型焼酎その1の製造(図1のコース1)
前記実施例1で固液分離した醪固形部500gを、試作した電子レンジ式減圧固体蒸留機を用い、減圧度−700mmHgの条件で30分間、固体蒸留を行い、85mL、アルコール分34.0%の原酒焼酎(図1のコース1に示す芳醇型焼酎) を得た。
[実施例4]醪液部残留残液濃縮物の製造(図1のコース7)
前記実施例2の減圧蒸留でアルコール回収後、残った醪液部残留残液をそのままの条件でさらに減圧蒸留を2時間続けた。液量を20Lに濃縮したところで、蒸留を止め、濃縮率2.5倍、酸度(クエン酸として)0.97%の濃縮物(図1のコース7)を得た。
[実施例5]芳醇型焼酎その2の製造(図1のコース1)
前記実施例1で固液分離した醪固形部500gに対し、天然空隙材として米麹120gを添加した。次いで、前記実施例3の固体蒸留と同様の方法、条件で、25分間減圧蒸留を行い、89mL、アルコール分34.5%の原酒焼酎(図1のコース1に示す芳醇型焼酎)を得た。前記実施例3と比較すると、本実施例5の芳醇型焼酎の製造方法は、天然空隙材を入れないときに較べ、蒸留時間が短縮され、アルコール回収率も上がったことが判る。
[実施例6]芳醇型焼酎その3の製造(図1のコース1)
前記実施例1で得られたアルコール14.1%の二次焼酎醪を4重ガーゼで固液分離して液部を除去し、残った固形部を得た(醪固形部)。
固液分離した醪固形部に対して天然空隙材として、焼き芋キューブ、コーヒーかすを加えてから常圧蒸留することにより、香気に特徴のある焼酎が製造できるかを次の実験例で検討した。また、添加物を入れることで、醪固形部での水蒸気の通りが良くなり、アルコール回収の効果があるかを次の実験例で検討した。
蒸留サンプルとして次の3種類を用意した。
(イ)醪固形部300g
(ロ)醪固形部300g+焼き芋キューブ60g
(ハ)醪固形部300g+コーヒーかす60g
焼き芋は、5mm角に切り(皮付き)、オーブンで200℃、30分間焼いたものを使用した。
コーヒー豆は、モカ(粗挽き)を使用し、一度抽出したコーヒーかすを使用した。
上記(イ)、(ロ)、(ハ)の蒸留サンプルを前記実施例4の方法により自家製せいろ式常圧蒸留機を使用して常圧蒸留して芳醇型焼酎を得た。得られた焼酎は60mLづつ3つの留分にわけた。常圧蒸留は、始め、水の状態で水を張り、醪固形部をセットして強火で加熱をした。沸騰したら弱火にすることで、醪固形部からアルコールがよく回収できるようにして、アルコールを回収した。
蒸留時間と、アルコール度数の測定をすることにより、水蒸気の通りについて下記の表1に、アルコール回収の効果について調べた結果を下記の表2に示す。また、特徴のある香気は、GC/MS(HS,TRAP法)で分析した。3種類の焼酎は、アルコール度数を3.5%に揃え、バイアル瓶に5mL入れて分析した。また、焼き芋は、オーブンで焼いたものをすぐにバイアル瓶に0.5g、コーヒーかすも同様に0.5g入れて分析した。
Figure 0004900705
表1中の数値は(分:秒)を表す。
表1によれば、天然空隙材を加えることで、蒸留時間の短縮が少し見られた。
Figure 0004900705
表2によれば、天然空隙材を加えていない醪固形部では、留分1 のアルコール度数が低く、その後もだらだら出てきている傾向にあった。これに対し、天然空隙材を加えると、アルコールの回収率が高い。
醪固形部から回収されたアルコールについてGC/MS分析を行ったところ焼き芋と、コーヒーかすの香気成分を確認した。焼き芋を添加した焼酎では、他の焼酎に見られない成分や、他の焼酎に比べAREA値が大きい成分があった。焼き芋のみ、コーヒーかすのみでは、それぞれに特有の香気成分を検出した。また、コーヒーかすの香気成分の種類は非常に多く、量も非常に多かった。
[実施例7]固体蒸留残渣を用いた芳醇型焼酎の製造(図1のコース2)
前記実施例3の固体蒸留後に残った固体蒸留残渣に、糖質原料として、蒸して粉砕したさつまいも500gと、汲み水450mlを加え、2L 容発酵タンクでアルコール発酵を行った。発酵は順調に推移し、7日で終了し、アルコール分13.1%の焼酎醪を得た。この焼酎醪を常圧蒸留し、320mL、アルコール分37.5%の原酒焼酎(芳醇型)を得た。
[実施例8]さつま揚げの製造(図1のコース3)
前記実施例1の固液分離後に得られた醪固形部(アルコール含有、クエン酸含有)をそのまま焼酎ファイバーAとした。
前記焼酎ファイバーAを、試作した蒸籠式固体蒸留器に入れて30分加熱し、アルコール除去して得た固体蒸留残渣(アルコール除去、クエン酸含有)を焼酎ファイバーBとした。
前記焼酎ファイバーBを水洗することによりクエン酸を除去した後、遠心分離で固形部を捕集したものを焼酎ファイバーCとした。
通常の蒸留廃液を固液分離して得た、蒸留残渣の固形部を焼酎ファイバーDとした。
前記ファイバーBを苛性ソーダで処理して、含まれているクエン酸を中和して得た固体蒸留残渣を焼酎ファイバーEとした。
1)さつま揚げの製造
塩分などを調整した魚肉すり身500gに、最終濃度が10%、20%、30%となるよう添加量の異なる上記焼酎ファイバーA〜Eを添加・混練し、常法により油揚げすることによりさつま揚げを製造した。得られたさつま揚げの味、食感についての評価を下記の表3に示す。
Figure 0004900705
アルコール含有の焼酎ファイバーAの添加試験については、すり身原料に対し、焼酎ファイバーAの添加量が10%以上については、添加量が増すほど元のすり身の香りが消え、弾力性のない食感になり品質が悪くなった。
アルコール除去の焼酎ファイバーBの添加試験については、20%添加までもろみ臭も感じられず、添加量に応じて、破断点までの距離が短くなり、食感がソフトになった。総合評価として、さほど大きな品質の低下は起きないことが分かった。
洗浄してクエン酸を除去した焼酎ファイバーCの添加試験については、ソフト感に加えて、すり身の弾力性も復活し、高級さつま揚げの質感が増強されることが判明した。
以上の結果より「焼酎ファイバー」はさつま揚げに対し、品質劣化を生じずに20%程度は添加可能であるばかりでなく、むしろ、食感がソフトになり高級さつま揚げ用の物性改良剤として十分有効であることが実証できた。
[実施例9]アイスクリームの製造(図1のコース3)
前記実施例8の焼酎ファイバーBを用いて下記の表4に示す材料を用いて以下のようにしてアイスクリームを製造した。
Figure 0004900705
鍋に、砂糖、小麦粉、塩、焼酎ファイバーBを混合しておき、それに牛乳1100mlと卵を泡立て器で良く混ぜ合わせたものを加え、なめらかになるまで混ぜ、弱火でとろみがでるまで加熱した。冷却後、残りの牛乳、生クリーム、エッセンスを加えて混ぜ、冷凍用容器に移した。冷凍庫に4時間置き、柔らかく凍ったクリームを泡立て器で滑らかになるまで良くかき混ぜた。調製後冷凍保存した。対照として焼酎ファイバーBを添加せず、表4の配合の材料を用いて上記と同様にしてアイスクリームを得た。
得られた本実施例9のアイスクリームは、醪固形部に由来の酵母、ミネラル、アミノ酸、ビタミンなどの有効成分が含まれているため滋養成分が強化されたものとなる。また、主要成分である原料さつまいも由来の食物繊維がアイスクリームの組織に混ざり込み、堅くなりすぎないで適度な柔らかさを保つ効果がある。
[実施例10]パスタの製造(図1のコース3)
前記実施例8の焼酎ファイバーBを用いて下記の表5に示す材料を用いて以下のようにしてパスタを製造した。
Figure 0004900705
小麦粉100gと焼酎ファイバーBを含む他の上記材料を全部加え混合した。さらに、残りの小麦粉を加えて、木べらでよくかき混ぜ、柔らかな生地にした。かるく打ち粉をした台の上で、ねばり強く滑らかになるまで10分ほどこね、できた生地をパラフィン紙で包み、30分ねかせた。その後、スパゲッティなどパスタの形状に成形し、熱湯で10分茹でた。
本実施例10のパスタのテクスチャーは対照と殆ど変わらなかった。焼酎ファイバーBを2倍量添加した場合には少し柔らかくべとつくようになった。得られたパスタは、醪固形部に由来の酵母、ミネラル、アミノ酸、ビタミンなどの有効成分が含まれているため滋養成分が強化されたものとなる。また、現代の食生活で不足しがちな食物繊維の補充になる。
[実施例11]ピザの製造(図1のコース3)
前記実施例8の焼酎ファイバーBを用いて下記の表6に示す材料を用いて以下のようにしてピザを製造した。
Figure 0004900705
温水200mlに砂糖6gを溶かし、ドライイースト5gを振り混ぜて予備発酵させた。ボールに強力粉、薄力粉、塩を合わせて篩に通し、ぬるま湯、サラダ油、焼酎ファイバーB、予備発酵させた酵母水を加えて、もち状になるまで良くこねた。サラダ油をぬったボールに生地を入れサランラップで覆い、40℃程度のオーブンに50分放置し一次発酵させた。得られた生地を押してガス抜きを行い円形に成形し、オーブン220℃で20分焼いて、焼成されたピザ生地を得た。対照として焼酎ファイバーBを添加しない以外は前記と同じように製造してピザ生地を得た。
焼酎ファイバーBには、焼酎酵母などが含まれるが、ピザ生地の発酵に特に影響がでることはなかった。ピザ生地だけを焼いた場合には、すこし焼酎臭がするがチーズなどトッピングした場合には焼酎臭は感じられず、対照品と変わらなかった。
得られたピザには、醪固形部に由来の酵母、ミネラル、アミノ酸、ビタミンなどの有効成分が含まれているため滋養成分強化されたものとなる。また、現代の食生活で不足しがちな食物繊維の補充になる。
[実施例12]食パンの製造(図1のコース3)
前記実施例8の焼酎ファイバーBを用いて下記の表7に示す材料を用いて以下のようにして食パンを製造した。
Figure 0004900705
スキムミルク、水、バター、乳化剤の入った鍋に加え、約50℃に加熱する。あらかじめ小麦粉300gに、焼酎ファイバーB、砂糖、ドライイースト、塩を混ぜておいたボールに、混ぜながら徐々に加え、しゃぶしゃぶの生地を製造した。これに残りの小麦粉を加えて、柔らかい生地をつくり、打ち粉をひいた台の上で弾力がでるまで10分こねた。サラダ油を塗ったボールに生地を入れてサランラップで覆い、40℃程度のオーブンで保温して1時間発酵させた。ガス抜きをしてまた15分放置した。ローフ型に成形し、ぬれ布巾で覆って30℃に保温し再び1時間発酵させ、オーブンで200℃、30分焼いて食パンを得た。対照として焼酎ファイバーBを添加しない以外は前記と同じように製造して食パンを得た。
生地の混練時にべとつくことはなく、生地はきめが細かく、しっとりしていた。発酵、焼成時のふくらみも良好であった。
得られた食パンについて、山電のクリープメーターを用い、常温貯蔵9日目に圧縮試験を行った。試料厚は、4.5 cm、圧縮スピード50mm/min、直径15mmの平板プランジャーで、10mm圧縮し測定した。得られた測定値を下記の表8に示す。表8によれば、本実施例12と対照との間に物性はほとんど変わらなかった。
Figure 0004900705
得られた焼成された食パンは、醪固形部に由来の酵母、ミネラル、アミノ酸、ビタミンなどの有効成分が含まれているため滋養成分が強化されたものとなる。また、現代の食生活で不足しがちな食物繊維の補充になる。
[実施例13]ソーセージの製造(図1のコース3)
前記実施例8の焼酎ファイバーBを用いて下記の表9に示す材料を用いて以下のようにしてソーセージを製造した。
Figure 0004900705
豚肉角切りを肉挽き器で粗挽きし、ボールに入れた。パセリ、塩、セージ、こしょう、焼酎ファイバーBを加えてよく混ぜ、約3時間半、冷蔵庫で良く冷やした。味付けした肉を肉ひき器にセットし、あらかじめぬるま湯につけておいたソーセージ皮を肉挽きの柄にセットし、少しずつ肉をつめた。5cmの長さに皮をよじり節を作ってソーセージに成形した。半分の長さに斜めにカットしたソーセージ8本をオーブンで200℃で20分焼いてソーセージを得た。対照として焼酎ファイバーBを添加しない以外は前記と同じように製造してソーセージを得た。
本実施例13と対照の各ソーセージについての初期重量と、加熱調理後の重量と、重量歩留りを下記の表10に示す。
Figure 0004900705
本実施例13のソーセージは対照に比べて焼いたときに肉汁を保持し、保水性がよかった。この特徴は、表10の加熱調理後の重量歩留りからも実証される。
得られた焼成されたソーセージは、醪固形部に由来の酵母、ミネラル、アミノ酸、ビタミンなどの有効成分が含まれているため滋養成分が強化されたものとなる。また、現代の食生活で不足しがちな食物繊維の補充になる。
[実施例14]魚用飼料の製造(図1のコース5)
前記実施例8の焼酎ファイバーB、或いは前記実施例7における焼酎醪を常圧蒸留して芳醇型焼酎を得た後に残った蒸留残渣を用いて下記の表11に示す材料を用いて以下のようにして魚用飼料を製造した。
Figure 0004900705
脱脂米ぬかに大豆油を加え混合した。これに水以外の表11の粉末材料を入れ撹拌混合した。水で練って生地状の塊をつくった。該塊を直径5mmの麺状に引き延ばし、それを1cmの長さに切断し、ペレットに成形して魚用飼料とした。対照として市販のビール酵母菌体を用いて上記表11の配合の材料により同様にして魚用飼料を製造した。
得られた本実施例14の焼酎ファイバーBを用いた魚用飼料、或いは図1のコース5における蒸留残渣を用いた魚用飼料は、ビール酵母を含む対照の魚用飼料より、魚の食いつきが良く、飼料効率も遜色がなかった。
本実施例14の魚用飼料は、醪固形部に由来のミネラル成分に富むのでミネラル添加を省くことができる。また、本実施例14の魚用飼料は、醪固形部に由来の植物繊維成分に富むので、鯉などの雑食性魚類に対して好適である。
[実施例15]ヨーグルトの製造(図1のコース4)
前記実施例8の焼酎ファイバーBを用いて下記の表12に示す材料を用いて以下のようにしてヨーグルトを製造した。
Figure 0004900705
脱脂粉乳を水に溶解し沸騰させ、約40℃まで冷却したとき、市販ヨーグルトのスターターを添加しよくかき混ぜ、小型容器に振り分け、30℃の保温器で2日間放置してヨーグルトを製造した。得られたヨーグルトには、醪固形部由来のクエン酸が含まれるので市販のヨーグルトより酸味がやや強く感じられた。醪固形部由来の酵母菌体が含まれていても、乳酸発酵は正常に進行した。
[実施例16]酢酸発酵物の製造(図1のコース4)
前記実施例8の焼酎ファイバーBを用いて下記の表13に示す材料を用いて以下のようにして酢酸発酵物を製造した。
Figure 0004900705
前記実施例1の工程(4)で得られた醪固形部を減圧固体蒸留して、アルコールを除去した固体蒸留残渣10kgと糖質原料として米麹10kgと汲み水30Lを70L 容ジャーファーメンタに投入し、酵母は添加せず、そのままアルコール発酵させた。品温は30℃に制御した。発酵は順調に進み、5日後にアルコール分6.1%の焼酎醪が得られた。次に酢酸菌を添加し、通気攪拌培養(30℃、攪拌速度250rpm、通気量1vvm) で酢酸発酵を行った。5日後、酢酸濃度4.2%の酢酸発酵物を得た。
得られた酢酸発酵物には、醪固形部由来のアミノ酸やクエン酸が含まれているので、いわゆる黒酢に近いものとなった。
[実施例17]返し仕込み(図1のコース8)
回転ドラムで製麹した24時間後の若い麹を1kgに対して、前記実施例2で減圧蒸留してアルコールを除去した後の醪液部残液1.2Lを一次仕込み水として仕込んだ。以降の工程は前記実施例1〜16同様にして、焼酎、飲食品、飼料、発酵物、濃縮物を得た。
従来の製麹は40時間を要するが、本実施例17では24時間目の製麹が使用できるため、仕込みの時間が短縮できる。
[実施例18]一次仕込み工程を省略した焼酎製造システム(図2)
前記実施例1の常圧蒸留工程において、アルコール分を蒸留したあとに残った、醪液部蒸留残渣336mLを仕込み水とし、糖質原料として芋400g、麹80g、酵母として前記実施例1の焼酎醪固液分離工程で分取した醪固形部40gを用い、一次仕込みを省略してそのまま二次仕込みを行った。芋は、冷凍芋を蒸し器で26分間蒸したものを用いて、以後の工程は、図1のコース6と同様にして、淡麗型焼酎を製造した。
二次仕込み後、24時間毎によく攪拌した後、もろみを少量サンプリングし、遠心分離(12000rpm,10min)して上澄みを採取した。この上澄みを、アルコール度数測定キット(F−キット, エタノール) で測定した。測定結果を下記の表14及び図3のグラフに示す。
Figure 0004900705
表14及び図3のグラフによれば、二次仕込みの後、時間経過とともに、アルコールが産生されていることがわかる。
[実施例19]醪液部における酵母含量の影響
固液分離手段によって、醪液部に含まれる酵母含量が異なるため、本実施例19では、焼酎醪を通常の方法で常圧蒸留、或いは減圧蒸留して製造した焼酎と、焼酎醪を布ろ過して固液分離した得た醪液部を常圧蒸留、或いは減圧蒸留して製造した焼酎と、焼酎醪を連続遠心分離して得た醪液部を常圧蒸留、或いは減圧蒸留して製造した焼酎と、焼酎醪を酵母除去して得た醪液部を常圧蒸留、或いは減圧蒸留して製造した焼酎について、酵母含量に対して得られた焼酎の濁り及び香りを官能検査により測定した。また、これらの各種焼酎の香気成分についてGC/MS(HS,TRAP法)分析により芳香成分を分析した。その結果を常圧蒸留にて得た焼酎を図4に、減圧蒸留にて得た焼酎を図5に示す。
表15に上記の各種手段により得た焼酎の符号をJ1〜J4、G1〜G4にて示し、併せて蒸留対象の酵母含量(Wet%)、蒸留して得られた焼酎のアルコール含量(Alc.%)、濁り、香りの官能評価を示す。図4に、常圧蒸留により得た各種焼酎J1〜J4の芳香成分の分析値のグラフを示す。図5に減圧蒸留により得た各種焼酎G1〜G4の芳香成分の分析値のグラフを示す。なお、J2は布ろ過による自然ろ過であり、J4は連続遠心分離機での醪固液分離して得た液部J3をさらに高速遠心分離機10000G、15分で沈殿させ酵母を除去したものを意味する。
Figure 0004900705
表15及び図5によれば、ガスマス香気分析の結果で分かるように、香気成分のピークと醪液部中の醪固形部(酵母)量との間に比例関係が認められた。醪そのままを蒸留した場合に比べて、固液分離後の液部は減圧蒸留でも常圧蒸留でも、得られた焼酎サンプルは、蒸留直後でもガス臭が殆どなく、エステル香気成分が小さな数値を示す傾向が認められた。
[実施例20]芳醇型焼酎と淡麗型焼酎のGC/MS(HS,TRAP法)分析
前記実施例3で得られた芳醇型焼酎と、前記実施例1で得られた淡麗型焼酎について、GC/MS(HS,TRAP法)分析し、各種焼酎の香気成分を定量した。
得られた結果をグラフとして図6に示す。図6によれば、淡麗型焼酎に比べ芳醇型焼酎の方が殆どの各種芳香成分含量が多いことがわかる。
本発明は、廃棄物を限りなくゼロにすることができる新規な焼酎製造システムを提供するものとして有用である。該システムにより新しい風味を有する焼酎の製造が可能となり、また該システムにおいて派生する産物は、飲食品素材、飼料として利用可能である。
本発明の焼酎、飲食品、飼料、発酵物の各製造の骨格となる醪液部と醪固形部を製造するプロセスを利用した、出発原料から各最終製品に至るまでの製造プロセスが統括されたシステムを示す図である。 一次仕込みを行うことなく、図1における醪固形部を二次仕込みに差し戻すことにより醪固形部に含まれる酵母を利用し、図1における仕込み水を二次仕込みに差し戻すことにより、クエン酸酸性の水を二次仕込み水として利用し、さらに麹米等の麹、糖質原料を添加して二次仕込みを行い、アルコール発酵を行わせて醪を得るシステムを示す図である。 一次仕込み工程を省略した焼酎製造システムにより製造される淡麗型焼酎について、発酵時間の経過とともに産生するアルコール量の変化のグラフを示す図である。 醪液部における酵母含量の違いから来る、常圧蒸留にて得た焼酎の香気成分についてGC/MS(HS,TRAP法)分析による結果のグラフを示す図である。 醪液部における酵母含量の違いから来る、減圧蒸留にて得た焼酎の香気成分についてGC/MS(HS,TRAP法)分析による結果のグラフを示す図である。 芳醇型焼酎と淡麗型焼酎の芳香について、GC/MS(HS,TRAP法)分析による結果のグラフを示す図である。

Claims (4)

  1. (1)焼酎醪を蒸留することなく醪液部と醪固形部に固液分離し、
    (2)前記工程(1)で得られた醪固形部に天然空隙材を添加した後に固体蒸留して芳醇型焼酎を得る焼酎の製造方法であって、
    (3)該天然空隙材は、ばら状態の複数個の粒状またはもみ殻状物質で、組み合わせたときに空隙を生ずる形態の物質であって、米、でん粉粕、麹米、さつまいもダイス、焼き芋ダイス、粟、ヒエ、麦、トーモロコシ、ごま、落花生、アーモンド、ナッツ類、種子、レーズン、果実、果皮、殻皮、豆腐おから、コーヒー粕、ホップ粕、アニス、グリーンペッパー、ホワイトペッパー、クミン及びそれらの蒸煮物、焙煎物から選ばれた物質であることを特徴とする焼酎の製造方法。
  2. (1)焼酎醪を蒸留することなく醪液部と醪固形部に固液分離し、
    (2)前記工程(1)で得られた醪固形部の一部を前記工程(1)で得られた醪液部に移行させ、
    (3)前記工程(2)で得られた醪液部を蒸留して淡麗型焼酎を得、
    (4)前記工程(3)で得られた淡麗型焼酎と請求項1の製造方法で得られた芳醇型焼酎をブレンドすることを特徴とする焼酎の製造方法。
  3. 請求項2の工程(2)における、醪固形部の一部を醪液部に移行させる条件は、酵母が通過するろ過条件又は酵母が液部に移行する圧搾ろ過又は遠心分離条件である請求項2に記載の焼酎の製造方法。
  4. 前記焼酎醪がいも焼酎醪である請求項1乃至3の何れか1項に記載の焼酎の製造方法。
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