以下、本発明に係る冷却用ファンの駆動制御装置の実施の形態について説明する。なお本実施形態では、ブルドーザ、ホイールローダ、ダンプトラック、油圧ショベル等の建設機械に、冷却用ファンが搭載される場合を想定している。しかし本発明としては建設機械に限定されることなく、他の作業機械、一般の自動車等の車両に、冷却用ファンを搭載した場合にも適用することができる。また本実施形態では、冷却用ファンとして油圧で駆動される油圧駆動ファンを想定している。しかし本発明としては、油圧駆動ファンに限定されることなく、電動ファンに対しても適用することができる。
図1は実施形態の車両20に搭載される各機器の配置関係を示している。
図1において車両20の長手方向をXとし、車幅方向をYとする。車両20は履帯24を備えており、この履帯24が回転することにより、長手方向Xに走行する。
すなわち同図1に示すように、車両20の運転室21に対して一方側に、エンジン5、ラジエータ23、冷却用ファン36が順次配置されている。
図4は冷却用ファン36と、この冷却用ファン36を駆動する駆動ユニットとしてのモータボディ11との配置関係を示している。
同図4に示すように、冷却用ファン36は大きくは、回転中心部としてのボス部32と、羽根部30とから構成されている。ボス部32と羽根部30とはボルト31で締結されることによって、接続されている。
ボス部30は凹部に形成されている。この凹部に形成されたボス部30内には、モータボディ11が収容されている。モータボディ11内には、油圧モータ1が内蔵されるとともに、後述する切換弁12が内蔵されている。この切換弁12は、油圧モータ1の回転方向を正回転方向と逆回転方向とに切り換える制御弁である。
油圧モータ1の回転軸は、冷却用ファン36のボス部32に固定されている。
このため油圧モータ1が回転駆動されることにより冷却用ファン36が回転する。また切換弁12によって油圧モータ1の回転方向が切り換えられることにより冷却用ファン36の回転方向が切り換えられる。
モータボディ11には、切換弁12に圧油を供給し切換弁12からの圧油を排出する配管33が接続されている。
このように切換弁12は、冷却用ファン36に近接して設けられている。しかもモータボディ11内に切換弁12が内蔵されている。
このため冷却用ファン36を駆動する駆動ユニットをコンパクトにでき、簡易な構造とすることができる。さらに切換弁12を内蔵したモータボディ11を、冷却用ファン36のボス部32内に収容するようにしているので、冷却用ファン36とモータボディ11とを合計した長さを短くすることができる。
図4を用いて従来の装置構成と比較する。従来の構成によれば、冷却用ファン36のボス部32は凹部に形成されていない。このため冷却用ファン36と、モータボディ11′とを合計した車両長手方向Xの長さは長大なものとなる。しかもモータボディ11′と切換弁12とは別体であるため、切換弁12に相当する分だけ余分に場積をとる。
これに対して本実施形態によれば、モータボディ11を、冷却用ファン36のボス部32内に収容しているため、冷却用ファン36と、モータボディ11とを合計した車両長手方向Xの長さが、従来のものよりもΔXだけ短くなる。さらに切換弁12はモータボディ11に内蔵されていため、これ以上の場積は不要となる。
このように本実施形態によれば冷却用ファン36と、油圧モータ1と、切換弁12とを、車両20内の小さな設置スペースに場積をとることなく設置することができる。
また切換弁12を、モータボディ11に内蔵したため、切換弁12と油圧モータ1とが別体である場合と比較して構造が簡易なものとなり、管路、継手等の部品点数を少なくでき装置コストを低く抑えることができる。
冷却用ファン36の回転切換制御は、オープンループ制御、クローズド制御(フィードバック制御)のいずれでも実施することができる。
オープンループ制御で切換制御を行う場合には、タイマ等の計時手段が設けられる。図10を併せ参照して冷却用ファン36の回転方向を切り換える制御の内容について説明する。
図10は実施形態のタイムチャートを示している。図10の横軸は時間を示し縦軸は「正回転」、「回転停止」、「逆回転」を示している。
すなわちタイマによってT1(たとえば15分)が計時されるまで、切換弁12が正回転位置に位置されており、冷却用ファン36が時間T1だけ正回転する。タイマによってT1が計時されると、後述するように油圧モータ1の回転駆動が停止される。タイマによってT2(たとえば10秒〜10数秒)が計時されるまで油圧モータ1の回転駆動が停止されており、冷却用ファン36の回転が時間T2だけ停止する。タイマによってT2が計時されると、切換弁12が逆回転位置に切り換えられる。タイマによってT3(たとえば2〜3分)が計時されるまで、切換弁12は逆回転位置に位置されており、冷却用ファン36が時間T3だけ逆回転する。
以上の処理が繰り返し実行される。
ここで冷却用ファン36を正回転から逆回転に、あるいは逆回転から正回転に切り換える場合に、油圧モータ1の回転駆動を所定時間T2だけ停止するようにしているのは、キャビテーションを防止したり異音の発生を防止する等のためである。
フィードバック制御で切換制御を行う場合には、ラジエータ23を通過する通過風量を検出する風量検出センサが設けられる。そこで風量検出センサの検出値に、しきい値が設定される。このしきい値は、ラジエータ23でゴミによる目詰まりが発生しているか否かを判定できる値に設定される。
風量検出センサの検出風量が、上記しきい値以上である場合には、ラジエータ23でゴミによる目詰まりが発生していないものと判定され、切換弁12の切換位置が正回転位置に維持され冷却用ファン36が正回転を維持する。
しかし風量検出センサの検出風量が、上記しきい値よりも小さくなった場合には、ラジエータ23でゴミによる目詰まりが発生したものと判定され、油圧モータ1の回転駆動が所定時間T2だけ停止された後、切換弁12の切換位置が逆回転位置に切り換えられ冷却用ファン36が逆回転する。
そこで更に風量検出センサの検出風量が、上記しきい値以上になった場合には、油圧モータ1の回転駆動が所定時間T2だけ停止された後、切換弁12の切換位置が正回転位置に切り換えられ冷却用ファン36が正回転する。
フィードバック制御で切換制御を行った場合には、必要最小限の時間だけ冷却用ファン36が逆回転するのでラジエータ23の冷却効率が、オープンループ制御と比較して向上する。
図1は冷却用ファン36の回転に伴う風の流れを示している。
図1(a)に示すように切換弁12が正回転位置に切り換えられ、冷却用ファン36が正回転方向に回転すると、矢印で示すようにラジエータ23を通過する空気が冷却用ファン36に吸い込まれ車両20の前方に空気を排出する。これによりラジエータ23が冷却される。
また図1(b)に示すように切換弁12が逆回転位置に切り換えられ、冷却用ファン36が逆回転方向に回転すると、矢印で示すように車両20の前方の空気が冷却用ファン36に吸い込まれラジエータ23に向けて排出される。これによりラジエータ23に詰まっていたゴミを吹き飛ばすことができる。またこのときエンジン室22内の暖かい空気が、運転室21側に向けて送風される。このためエンジン室22と運転室21とを仕切る壁25に、通風口を設けることによって、エンジン室22内の暖かい空気を運転室21内に導入することができる。このためヒータ等を設けることなく運転室21内を暖房することができる。またエンジン5の暖気を早めることができる。
図1ではエンジン5をその長手方向が車両長手方向Xに一致するように配置しているが、図2に示すように、エンジン5をその長手方向が車幅方向Yに一致するように配置してもよい。このような配置構成をとった場合には、エンジン室22の車両長手方向Xの長さを、更に短くでき、車両20内の小さな設置スペースに各種機器を場積をとることなく設置することが可能になる。
また図3に示すように、エンジン室22とラジエータ室27と壁26によって仕切るようにしてもよい。エンジン室22にはエンジン5が配置され、ラジエータ室27にはラジエータ23と冷却用ファン36が配置される。
図5は第1の実施形態の油圧回路を示している。
同図5に示すように実施形態の装置は、大きくは、油圧ポンプ2のポンプボディ110と、油圧モータ1のモータボディ11と、冷却用ファン36と、冷却用ファン36の回転方向を切換制御するコントローラ37とからなる。
油圧ポンプ2は可変容量型の油圧ポンプである。しかし定容量型の油圧ポンプを用いる実施も可能である。
油圧ポンプ2はエンジン5によって駆動され圧油をポンプ吐出油路7に吐出する。電磁比例制御弁38はコントローラ37から出力される電気指令信号に応じたパイロット圧を斜板駆動部39に導く。斜板駆動部39は電磁比例制御弁38から導かれたパイロット圧に応じて油圧ポンプ2の斜板2aを駆動し油圧ポンプ2の容量を変化させる。
ポンプ吐出油路7は切換弁40を介して切換弁12のポンプポートPに接続されている。
切換弁40は圧油供給位置40aと圧油遮断位置40bとを有した2位置切換弁である。切換弁40はポンプボディ110に内蔵されている。
電磁比例制御弁41はコントローラ37から出力される電気指令信号に応じたパイロット圧を切換弁40のパイロットポート40cに導く。
切換弁40はパイロットポート40cに作用するパイロット圧に応じて弁位置が変化する。切換弁40が圧油供給位置40aに切り換えられると油圧ポンプ2から吐出された圧油は切換弁40を通過して切換弁12のポンプポートPに供給される。切換弁40が圧油遮断位置40bに切り換えられると油圧ポンプ2から吐出された圧油は切換弁40で遮断され切換弁12のポンプポートPに供給されることなくタンク3に排出される。
切換弁12と油圧モータ1の圧油供給排出用ポートMA、MBとはそれぞれ油路74、75によって接続されている。
切換弁12は油路7を介してポンプ吐出圧油を入力し圧油の方向を制御して油圧モータ1のポートMAまたはポートMBに圧油を供給する。
切換弁12は正回転位置Aと逆回転位置Bとを有した2位置切換弁である。切換弁12は前述したようにモータボディ11に内蔵されている。
電磁比例制御弁42は低圧位置42aと高圧位置42bとを有した2位置切換弁である。電磁比例制御弁42は、コントローラ37から出力される電気指令信号に応じて弁位置が切り換えられる。電磁比例制御弁42が高圧位置42bに切り換えられると、ポンプ吐出油路7内の高圧のポンプ吐出圧をパイロット圧として油路44を介して切換弁12のパイロットポート12cに導く。また電磁比例制御弁42が低圧位置42aに切り換えられると、切換弁12のパイロットポート12cがタンク3に連通し切換弁12のパイロットポート12cに低圧のパイロット圧が作用する。
切換弁12は、パイロットポート12cに低圧のパイロット圧が作用すると正回転位置Aに位置され、パイロットポート12cに高圧のパイロット圧が作用すると逆回転位置Bに位置される。
切換弁12が正回転位置Aに位置すると、油圧モータ1のポートMAに圧油が供給され油圧モータ1が正方向に回転する。切換弁12が逆回転位置Bに位置すると、油圧モータ1のポートMBに圧油が供給され油圧モータ1が逆方向に回転する。
切換弁12の上流側には吸込弁13と安全弁4とが配置されている。
吸込弁13はモータボディ11に内蔵されている。安全弁4はポンプボディ110に内蔵されている。
切換弁12のタンクポートTは油路6に連通している。油路6とポンプ吐出油路7とは油路8によって連通されている。
油路8には吸込弁13が設けられており、この吸込弁13は、切換弁12のタンクポートTから排出される圧油を油路6からポンプ吐出油路7の方向のみに導く。
またポンプ吐出油路7は油路9に分岐しておりこの油路9上には安全弁4が設けられている。安全弁4は、ポンプ吐出油路7の油圧が設定圧以上になったときに圧油をタンク3に導く。
つぎに図5に示す第1の実施形態で行われる動作について説明する。
冷却用ファン36を正回転方向に切り換えるときには、コントローラ37から、切換弁40を圧油供給位置40aを位置させる電気指令信号が電磁比例制御弁41に出力されるとともに、電磁比例制御弁42を低圧位置42aに位置させ切換弁12を正回転位置Aを位置させる電気指令信号が電磁比例制御弁42に出力される。
切換弁40が圧油供給位置40aに位置し、切換弁12が正回転位置Aに位置すると、油圧ポンプ2から吐出された圧油はポンプ吐出油路7、切換弁40、切換弁12を通過し、油路74を介して油圧モータ1のポートMAに供給される。これにより油圧モータ1が正回転し、冷却用ファン36が正方向に回転する。
油圧モータ1の回転駆動を停止するときには、コントローラ37から、切換弁40を圧油遮断位置40bを位置させる電気指令信号が電磁比例制御弁41に出力される。
切換弁40が圧油遮断位置40bに位置すると、油圧ポンプ2から吐出された圧油は切換弁40で遮断され切換弁12のポンプポートPに圧油は供給されなくなる。このため油圧モータ1のポートMA、MBのいずれにも圧油は供給されなくなる。
油圧モータ1は、負荷から受ける駆動力や油圧モータ1自身の慣性により回転を続ける。このとき油圧モータ1はポートMBから圧油を吐出するポンプ作用を行う。このためポートMBに連通する油路6の圧油はポンプ吐出油路7と比較して高圧となる。このとき高圧となった油路6の圧油は油路8上の吸込弁13を介してポンプ吐出油路7に導かれる。このため高圧の圧油は油圧モータ1のポートMAに吸い込まれる。
冷却用ファン36を逆回転方向に切り換えるときには、コントローラ37から、切換弁40を圧油供給位置40aを位置させる電気指令信号が電磁比例制御弁41に出力されるとともに、電磁比例制御弁42を高圧位置42bに位置させ切換弁12を逆回転位置Bを位置させる電気指令信号が電磁比例制御弁42に出力される。
切換弁40が圧油供給位置40aに位置し、切換弁12が逆回転位置Bに位置すると、油圧ポンプ2から吐出された圧油はポンプ吐出油路7、切換弁40、切換弁12を通過し、油路75を介して油圧モータ1のポートMBに供給される。これにより油圧モータ1が逆回転し、冷却用ファン36が逆方向に回転する。
つぎに図6、図7を参照して第1の実施形態である油圧モータ1の構造例について説明する。
図6は油圧モータ1のモータボディ11の断面図である。
図7は図6に示すモータボディ11のA−A断面図である。
図7に示すようにモータボディ11内には切換弁12のスプール10が摺動自在に収容されている。スプール10の図中右側のパイロットポート12cには、電磁比例制御弁42を介してパイロット圧が作用する。
図7の動作について説明する。
電磁比例制御弁42を介して、スプール10のパイロットポート12cに低圧のパイロット圧が作用しているときには、図示のとおりスプール10が右側に位置している。この位置ではポンプポートPがポートMAに連通し、ポートMBがタンクポートTに連通する。したがって油圧ポンプ2から吐出された圧油はポンプ吐出油路7、スプール10の開口を介して、油圧モータ1のポートMAに供給される。これにより油圧モータ1が正回転する。
電磁比例制御弁42を介して、スプール10のパイロットポート12cに、油路7内の高圧のパイロット圧が作用しているときには、スプール10は図示している位置から左側に移動する。スプール10が図中左側に位置すると、ポンプポートPがポートMBに連通し、ポートMAがタンクポートTに連通する。したがって油圧ポンプ2から吐出された圧油はポンプ吐出油路7、スプール10の開口を介して、油圧モータ1のポートMBに供給される。これにより油圧モータ1が逆回転する。
以上のように第1の実施形態によれば、切換弁40を圧油供給位置40a、圧油遮断位置40bに切り換え制御するとともに、切換弁12を正回転位置A、逆回転位置Bに切り換え制御することによって、冷却用ファン36の正逆回転切換時に、エンジン5を停止させることなく油圧モータ1の回転駆動を停止させ冷却用ファン36の回転を停止させることができる。このため冷却用ファン36の正逆回転切換時に、エンジン5を一旦停止させ再度エンジン5を始動するという煩わしい操作が不要となり、作業効率を高めることができる。
上述した第1の実施形態では、モータボディ11内の切換弁12とは、別に切換弁40を設けるようにしているが、つぎに切換弁40を不要とする第2の実施形態について説明する。
図8は第2の実施形態の油圧回路を示している。以下図8において図5の第1の実施形態と同じ符号を使用するものについては同じ構成要素であるとして適宜説明を省略する。
図8に示すようにポンプ吐出油路7は切換弁120のポンプポートPに接続されている。
切換弁120は前述した切換弁12に相当するものであり、切換弁12と同様に、油路7を介してポンプ吐出圧油を入力し圧油の方向を制御して油圧モータ1のポートMAまたはポートMBに圧油を供給する。
切換弁120は正回転位置Aと逆回転位置Bに加えて停止位置Cを有した3位置切換弁である。
電磁比例制御弁42は低圧位置42aと高圧位置42bとを有した2位置切換弁である。電磁比例制御弁42は、コントローラ37から出力される電気指令信号に応じて弁位置が切り換えられる。電磁比例制御弁42が高圧位置42bに切り換えられると、ポンプ吐出油路7内の高圧のポンプ吐出圧をパイロット圧として油路44を介して切換弁120のパイロットポート120cに導く。また電磁比例制御弁42が低圧位置42aに切り換えられると、切換弁120のパイロットポート120cがタンク3に連通し切換弁120のパイロットポート120cに低圧のパイロット圧が作用する。
切換弁120のパイロットポート120cに対向する側には、ロッド45が設けられている。ロッド45はパイロットポート45cに作用するパイロット圧に応じて作動し、パイロットポート120cに作用するパイロット圧に対向する力を、切換弁120に付与する。
電磁比例制御弁43は低圧位置43aと高圧位置43bとを有した2位置切換弁である。電磁比例制御弁43は、コントローラ37から出力される電気指令信号に応じて弁位置が切り換えられる。電磁比例制御弁43が高圧位置43bに切り換えられると、ポンプ吐出油路7内の高圧のポンプ吐出圧をパイロット圧としてロッド45のパイロットポート45cに導く。また電磁比例制御弁43が低圧位置43aに切り換えられると、ロッド45のパイロットポート45cがタンク3に連通しロッド45のパイロットポート45cに低圧のパイロット圧が作用する。
切換弁120は、パイロットポート120cに低圧のパイロット圧が作用しロッド45のパイロットポート45cに高圧のパイロット圧が作用すると、正回転位置Aに位置される。また切換弁120は、パイロットポート120cに高圧のパイロット圧が作用しロッド45のパイロットポート45cに低圧のパイロット圧が作用すると、逆回転位置Bに位置される。また切換弁120は、パイロットポート120cに高圧のパイロット圧が作用しロッド45のパイロットポート45cに高圧のパイロット圧が作用すると、停止位置Cに位置される。
切換弁120が正回転位置Aに位置すると、油圧モータ1のポートMAに圧油が供給され油圧モータ1が正方向に回転する。切換弁120が逆回転位置Bに位置すると、油圧モータ1のポートMBに圧油が供給され油圧モータ1が逆方向に回転する。
また切換弁120が停止位置Cに位置すると、油圧モータ1のポートMA、MBの両方に圧油が供給される。またこのときポートMA、MBはいずれもタンク3に連通する。
つぎに図8に示す第2の実施形態で行われる動作について説明する。
冷却用ファン36を正回転方向に切り換えるときには、コントローラ37から、電磁比例制御弁42を低圧位置42aに位置させ、電磁比例制御弁43を高圧位置43bに位置させて、切換弁120を正回転位置Aを位置させる電気指令信号が電磁比例制御弁42、43に出力される。
切換弁120が正回転位置Aに位置すると、油圧ポンプ2から吐出された圧油はポンプ吐出油路7、切換弁120を通過し、油路74を介して油圧モータ1のポートMAに供給される。これにより油圧モータ1が正回転し、冷却用ファン36が正方向に回転する。
油圧モータ1の回転駆動を停止するときには、コントローラ37から、電磁比例制御弁42を高圧位置42bに位置させ、電磁比例制御弁43を高圧位置43bに位置させて、切換弁120を停止位置Cを位置させる電気指令信号が、電磁比例制御弁42、43に出力される。
切換弁120が停止位置Cに位置すると、油圧ポンプ2から吐出された圧油は油圧モータ1のポートMA、MBの両方に供給される。このとき油圧モータ1のポートMA、MBはタンク3に連通する。これにより油圧モータ1の回転駆動が停止し、冷却用ファン3の回転が停止する。
冷却用ファン36を逆回転方向に切り換えるときには、コントローラ37から、電磁比例制御弁42を高圧位置42bに位置させ、電磁比例制御弁43を低圧位置43aに位置させて、切換弁120を逆回転位置Bを位置させる電気指令信号が電磁比例制御弁42、43に出力される。
切換弁120が逆回転位置Bに位置すると、油圧ポンプ2から吐出された圧油はポンプ吐出油路7、切換弁120を通過し、油路75を介して油圧モータ1のポートMBに供給される。これにより油圧モータ1が逆回転し、冷却用ファン36が逆方向に回転する。
つぎに図9を参照して第2の実施形態である油圧モータ1の構造例について説明する。
図9は図6に示すモータボディ11のA−A断面図である。
図9に示すようにモータボディ11内には切換弁120のスプール100が摺動自在に収容されている。スプール100の図中右側のパイロットポート120cには、電磁比例制御弁42を介してパイロット圧が作用する。スプール100の図中左側のロッド45のパイロットポート45cには、電磁比例制御弁43を介してパイロット圧が作用する。
図9の動作について説明する。
電磁比例制御弁42を介して、スプール100のパイロットポート120cに低圧のパイロット圧が作用し、電磁比例制御弁43を介して、ロッド45のパイロットポート45cに、油路7内の高圧のパイロット圧が作用しているときには、図示のとおりスプール100が右側に位置している。この位置ではポンプポートPがポートMAに連通し、ポートMBがタンクポートTに連通する。したがって油圧ポンプ2から吐出された圧油はポンプ吐出油路7、スプール100の開口を介して、油圧モータ1のポートMAに供給される。これにより油圧モータ1が正回転する。
電磁比例制御弁42を介して、スプール100のパイロットポート120cに、油路7内の高圧のパイロット圧が作用し、ロッド45のパイロットポート45cにも、油路7内の高圧のパイロット圧が作用しているときには、スプール100は図示している位置から左側に移動し中立位置に位置決めされる。スプール100が図中左側の中立位置に位置決めされると、ポンプポートPがポートMA、MBの両方に連通し、ポートMA、MBの両方がタンクポートTに連通する。これにより油圧モータ1の回転駆動が停止する。
電磁比例制御弁42を介して、スプール100のパイロットポート120cに、油路7内の高圧のパイロット圧が作用し、ロッド45のパイロットポート45cに、低圧のパイロット圧が作用しているときには、スプール100は上述した中立位置から更に左側に移動する。スプール100が中立位置より更に左側に位置すると、ポンプポートPがポートMBに連通し、ポートMAがタンクポートTに連通する。したがって油圧ポンプ2から吐出された圧油はポンプ吐出油路7、スプール100の開口を介して、油圧モータ1のポートMBに供給される。これにより油圧モータ1が逆回転する。
以上のように第2の実施形態によれば、切換弁120を正回転位置A、停止位置C、逆回転位置Bに切り換え制御することによって、冷却用ファン36の正逆回転切換時に、エンジン5を停止させることなく油圧モータ1の回転駆動を停止させ冷却用ファン36の回転を停止させることができる。このため冷却用ファン36の正逆回転切換時に、エンジン5を一旦停止させ再度エンジン5を始動するという煩わしい操作が不要となり、作業効率を高めることができる。しかも第2の実施形態によれば、切換制御をするに際して第1の実施形態の切換弁40が不要となり、更に構造が簡易なものとなる。
以上説明した実施形態では、スプール10、100が直動することによって弁位置が切り換えられる切換弁12、120を想定して説明した。しかしスプールが回転することによって弁位置が切り換えられるいわゆるロータリタイプの切換弁を使用してもよい。
図11は、図5に示す第1の実施形態における切換弁12を、ロータリタイプの切換弁121に置換した第3の実施形態の油圧回路を示している。
すなわち図11に示すように、図5に示す電磁比例制御弁42の代わりにステッピングモータ113が設けられる。ステッピングモータ113の回転軸113aは、切換弁121のスプール130に接続している。
ステッピングモータ113の回転軸113aは、コントローラ37から出力される電気指令信号に応じて、回転する。回転軸113aの回転に伴い切換弁121のスプール130が回転する。スプール130が所定の各回転角度に位置決めされるに応じて、切換弁121は正回転位置A、逆回転位置Bに位置する。
切換弁121が正回転位置Aに位置すると、油圧モータ1のポートMAに圧油が供給され油圧モータ1が正方向に回転する。切換弁121が逆回転位置Bに位置すると、油圧モータ1のポートMBに圧油が供給され油圧モータ1が逆方向に回転する。
図12は図11に示すモータボディ11の断面図である。図12(a)は切換弁121が正回転位置Aに位置した状態を示し、図12(b)は切換弁121が逆回転位置Bに位置した状態の要部を示している。
図12に示すようにモータボディ11内には切換弁121のスプール130が、軸回りに回動自動に収容されている。スプール130には切欠き部131、132が形成されている。
図12の動作について説明する。
コントローラ37からステッピングモータ113に対して正回転位置Aにさせるための電気指令信号が与えられると、図12(a)に図示のとおりの回転角度にスプール130が位置決めされる。スプール130がこの回転角度に位置したときポンプポートPが切欠き部131を介してポートMAに連通し、ポートMBが切欠き部132を介してタンクポートTに連通する。したがって油圧ポンプ2から吐出された圧油はポンプ吐出油路7、切換弁121のポンプポートP、切欠き部131を介して、油圧モータ1のポートMAに供給される。これにより油圧モータ1が正回転する。
コントローラ37からステッピングモータ113に対して逆回転位置Bにさせるための電気指令信号が与えられると、スプール130は図12(a)の回転角度から更に図中右回りに90゜だけ回転し図12(b)に図示のとおりの回転角度に位置決めされる。スプール130がこの回転角度に位置したときポンプポートPが切欠き部131を介してポートMBに連通し、ポートMAが切欠き部132を介してタンクポートTに連通する。したがって油圧ポンプ2から吐出された圧油はポンプ吐出油路7、切換弁121のポンプポートP、切欠き部131を介して、油圧モータ1のポートMBに供給される。これにより油圧モータ1が逆回転する。
以上図5に示す第1の実施形態における切換弁12を、ロータリタイプの切換弁121に置換した場合を想定して説明したが、図8に示す第2の実施形態における切換弁120を、同じくロータリタイプの切換弁に置換する実施も可能である。
なお図1〜図3では運転室21に対して一方側に、エンジン5を配置させているが、この場合運転室21における運転席の配置方向は任意である。オペレータの視線の前方にエンジンが配置されるように運転席を配置してもよくオペレータの視線の後方にエンジンが配置されるように運転席を配置してもよい。