JP4899116B2 - 硼化珪素−炭化硼素−炭化珪素系複合材料及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性及び機械的特性に優れたセラミックス複合材料及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、宇宙空間への進出に対する国際的な取組が始まっていることも含め、導電性及び機械的特性の優れたセラミックス材料の需要はますます高まっている。
【0003】
硼化珪素は高融点、高強度、優れた化学的安定性そして、良好な電気伝導性を有する。また、炭化硼素はダイアモンドに次ぐ硬度を有する有用な工業材料である。しかしながら炭化硼素は難焼結性材料であり、安価に焼結体を製造することができず、また緻密な焼結体を得ることが極めて困難であるという問題点を有する。
【0004】
従来、非酸化物系セラミックス材料の単味焼結体の製造において、一軸加圧下でのホットプレス法が主たる方法の一つとして用いられており、非酸化物系セラミックス材料の複合焼結体の製造においても該ホットプレス法の利用が考えられる。しかし、焼結体を得ることが非常に困難である炭化硼素のような非酸化物系セラミックス材料を主成分として含有するセラミックス複合材料の製造においては、一軸加圧下でのホットプレス法を用いたとしても緻密質で各成分の優れた特性を備えたセラミックス複合材料を得ることは困難であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる事情に鑑みなされたものであり、焼結体を得ることが非常に困難な非酸化物系セラミックス材料を主成分として含みつつも、緻密質で且つ導電性及び機械的特性の優れたセラミックス複合材料を低温度で製造できる複合焼結体製造方法、並びに該方法を用いて製造された導電性及び機械的特性に優れたセラミックス複合材料を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、硼化珪素が優れた電気伝導性を有し、また炭化硼素が難焼結性ではあるが硬度が高く優れた機械的特性を有することに着目した。そして、該硼化珪素と炭化硼素とを主成分として含有するセラミックス複合材料を開発することにより上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、硼化珪素粉末と炭素粉末との混合物を作り、この混合物を焼結することにより、低温度で硼化珪素−炭化硼素−炭化珪素系複合材料が得られることを見出した。この技術により得られるセラミックス複合材料は、焼結体を得ることが非常に困難な炭化硼素を主成分として含みつつも緻密質であり、且つ伝導性及び機械的特性にも優れる。
【0007】
本発明はかかる知見に基づき完成されたものであり、以下の構成からなることを特徴とする。
すなわち、本発明は、硼化珪素粉末と炭素粉末との混合物を焼結してなる硼化珪素−炭化硼素−炭化珪素系複合材料を提供するものである。
また、本発明は、硼化珪素の粉末に炭素粉末を添加して混合物を作り、この混合物を焼結することを特徴とする硼化珪素−炭化硼素−炭化珪素系複合材料の製造方法を提供するものである。
【0008】
本発明において、前記炭素粉末の添加量は、好ましくは硼化珪素粉末の全量に対し5〜20質量%であり、より好ましくは7.5〜15質量%である。また、前記混合物の焼結は、非酸化雰囲気下又は真空下で行うことが好ましく、焼結温度は好ましくは1500〜1900℃、より好ましくは1700〜1800℃である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は硼化珪素−炭化硼素−炭化珪素系セラミックス複合材料の製造技術に係わり、原料として硼化珪素粉末と炭素粉末とからなる混合粉末を用いたことを特徴とする。
すなわち、本発明の硼化珪素−炭化硼素−炭化珪素系セラミックス複合材料の製造方法は、硼化珪素粉末に炭素粉末を添加して混合物を作り、この混合物を焼結することを特徴とするものであり、該製造方法によれば難焼結性の炭化硼素を含有しつつも低温度で緻密質の複合セラミックス材料を得ることができ、さらに該複合セラミックス材料は導電性及び機械的特性に優れている。
【0010】
本発明において、炭素粉末の好ましい添加量は硼化珪素粉末の全量に対し5〜20質量%である。炭素粉末の添加量が5質量%未満では機械的特性の観点から好ましくなく、一方20質量%を超えると緻密質の焼結体を得ることが困難となる。より好ましい炭素粉末の添加量は、硼化珪素粉末の全量に対し7.5〜15質量%である。
【0011】
本発明においては、得られた混合物を焼結するが、好ましくは非酸化雰囲気下又は真空下において焼結する。既述のごとく、炭化硼素は難焼結性材料でありその焼結温度は通常2000℃を超えるため、炭化硼素を主成分として含むセラミックス複合材料を得るためには極めて高温の焼結温度を必要とし、安価に製造することはできない。しかし、本発明によれば、原料として硼化珪素粉末と炭素粉末からなる混合物を用い、これを焼結することにより炭化硼素を含むセラミックス複合材料が得られるため、焼結温度を低めることができ、更に該方法により得られる本発明の焼結体は極めて緻密質である。
【0012】
図1は本発明のセラミックス複合材料の製造方法の一例を示す概略図であり、ここでは一軸加圧下でのホットプレス法を用いている。真空中で焼結温度1500〜1900℃、プレス圧20〜50MPaの条件で行うことが好ましい。焼結温度が1500℃未満あるいはプレス圧が20MPa未満であると十分に緻密な焼結体を得ることができず、焼結温度あるいはプレス圧が過度に高いと製造コストが高騰するため、上記範囲とすることが好ましい。より好ましい焼結温度は1700〜1800℃であり、より好ましいプレス圧は30〜40MPaである。ただし、本発明において製造手段は一軸加圧下でのホットプレス法に限られるものではなく、常圧焼結法、熱間等方圧(HIP)焼結法等も好ましく用いることができる。
【0013】
【実施例】
以下、具体例を挙げて本発明をより詳細に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではない。
硼化珪素粉末に炭素粉末を、硼化珪素粉末全量に対し5〜15質量%加え、ボールミルを用いエタノール中で25時間湿式混合した後これを乾燥させることにより、硼化珪素と炭素との混合粉末を得た。この混合粉末を、1.33×10−2Paの真空中にて、焼結温度1700℃、焼結時間1時間、昇温速度0.17K/sの条件で25MPaの一軸加圧下でホットプレス焼結を行い硼化珪素−炭化硼素−炭化珪素系複合材料を製造した。得られた本発明の硼化珪素−炭化硼素−炭化珪素系複合材料について緻密性、導電性及び機械的特性に関する評価を行った。評価方法及び結果を以下に示す。
【0014】
[緻密性]
前記方法で得られた本発明の硼化珪素−炭化硼素−炭化珪素系複合材料の緻密性(焼結性)を評価するにあたり、硼化珪素の単味焼結体に対する相対密度と炭素添加量との関係としてその測定結果を図2に示す。
[導電性]
導電性は室温において直流四端子法を用いて電気伝導度を測定することにより評価した。測定結果を図3に示す。
[機械的特性]
機械的特性はビッカース硬度計を用いて硬度測定、及び圧子圧入試験の負荷−除荷曲線からヤング率を算出し評価した。ビッカース硬度測定における測定条件は圧子にダイアモンド圧子を使用し、荷重9.8N、荷重時間30秒とした。また、圧子圧入試験の測定条件は圧子にダイアモンド圧子を使用し、クロスヘッドスピード0.01mm/分、荷重9.8N、荷重時間30秒とした。測定結果を図4に示す。
【0015】
図2から分かるように、炭素添加量が15質量%においても相対密度は95%を超えており、本発明の硼化珪素−炭化硼素−炭化珪素系複合材料はいずれも十分緻密質であることが示された。さらに、図3及び図4から、これら緻密質である本発明の硼化珪素−炭化硼素−炭化珪素系複合材料は、硼化珪素単味の焼結体に比べ電気伝導性度びビッカース硬度が向上しており、優れた導電性及び機械的特性を有することが示された。
【0016】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明により緻密質で且つ導電性及び機械的特性に優れる硼化珪素−炭化硼素−炭化珪素系複合材料が提供された。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の硼化珪素−炭化硼素−炭化珪素系複合材料の製造方法の一例を示す概略図。
【図2】 本発明の硼化珪素−炭化硼素−炭化珪素系複合材料の相対密度の測定結果を示すグラフ。
【図3】 本発明の硼化珪素−炭化硼素−炭化珪素系複合材料の電気伝導度の測定結果を示すグラフ。
【図4】 本発明の硼化珪素−炭化硼素−炭化珪素系複合材料のビッカース硬度の測定結果を示すグラフ。
【符号の簡単な説明】
1・・・硼化珪素粉末と炭素粉末との混合粉末、2・・・ホットプレス用カーボン冶具、3・・・一軸加圧装置、4・・・硼化珪素−炭化硼素−炭化珪素系複合材料
Claims (6)
- 硼化珪素粉末と該硼化珪素粉末に対し5−15質量%の炭素粉末との混合物を、一軸加圧下のホットプレス法により、非酸化雰囲気下又は真空下、20−50MPaのプレス圧において1500〜1900℃の焼結温度で焼結してなる硼化珪素−炭化硼素−炭化珪素系複合材料であって、硼化珪素−炭化硼素−炭化珪素系複合材料の、硼化珪素の単味焼結体に対する相対密度が95%超であり、且つ、ビッカース硬度が20GPa以上30GPa未満である硼化珪素−炭化硼素−炭化珪素系複合材料。
- 焼結温度が1700〜1800℃である請求項1に記載の硼化珪素−炭化硼素−炭化珪素系複合材料。
- 硼化珪素粉末に対する炭素粉末の混合割合が硼化珪素粉末に対し7.5〜15質量%である請求項1又は2に記載の硼化珪素−炭化硼素−炭化珪素系複合材料。
- 硼化珪素の粉末に、該硼化珪素粉末に対し5−15質量%の炭素粉末を添加して混合物を作り、この混合物を一軸加圧下のホットプレス法により、非酸化雰囲気下又は真空下、20−50MPaのプレス圧において1500〜1900℃の焼結温度で焼結することを特徴とする硼化珪素−炭化硼素−炭化珪素系複合材料の製造方法。
- 炭素粉末の添加量が硼化珪素粉末に対し7.5〜15質量%である請求項4に記載の製造方法。
- 焼結温度が1700〜1800℃である請求項4又は5に記載の製造方法。
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