JP4899088B2 - 半導体インゴットの切断方法 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体インゴットの切断方法に関し、特に単結晶シリコンインゴットをワイヤーソー装置を用いて切断する方法に関するものである。
シリコンウェーハの切断工程では、ワイヤソー装置によって、単結晶シリコンインゴットが切断される。すなわち、単結晶シリコンインゴットの切断部位に砥粒を含むスラリが供給されるとともに、ローラに巻かれて走行するワイヤに引張荷重を加えつつ、ワイヤに対してシリコンインゴットを押し当てる方向に相対移動されると、複数枚のシリコンウェーハが取得される。ローラの長手軸方向には、所定ピッチでワイヤが巻かれており、図1(b)に示すように、ローラピッチ長さに応じた厚さのウェーハであって、インゴットが押し当てられた部分のワイヤ巻き数に応じた枚数のシリコンウェーハ1aが、1つのシリコンインゴット1から同時に生成される。
切断工程において、シリコンウェーハの取得率を向上させてシリコンウェーハ製造の歩留まり向上を図るには、「g/枚」を小さくして、製造ロスを最小にすることが要求される。ここで、「g/枚」とは、シリコンインゴットの重量を、シリコンインゴットから取得されるシリコンウェーハの枚数で割った値のことである。
「g/枚」を小さくするには、カーフロス(切断代)を少なくすればよいことがわかっている。
図1(a)は、ワイヤ6によって、インゴット1がウェーハ1aに切断される様子を概念的に示している。ワイヤ6と切断面との間にスラリ中の砥粒31が介在されることにより切断されるため、カーフロス(切断代)は、ワイヤ6の線径に砥粒の粒径の2倍を足し合わせた長さとなる。また、図1(b)に示すように、切断工程の後工程で、エッチング等の処理を施すための取代を確保する必要があることから、取代が大きくなるほど製造ロスが大きくなる。
また、切断して生成されるウェーハ1aは、切断面が完全に平坦であることが理想的であり、平坦度(TTV値)、面粗度(Ra値)は、極力小さい値を示すことが望ましい。
ウェーハ1aの切断面(ウェーハ1aの表面)の平坦度(TTV値)、面粗度(Ra値)が大きな値を示すと、後工程のラッピング工程、エッチング工程、研磨工程等に時間と手間を要し、ウェーハの製造効率が損なわれる。
また、ウェーハ1aの切断面には、図2に示すように、「うねり;waviness」と呼ばれる周期状の凹凸が発生することがある。
また、ウェーハ1aの切断面は、図3に示すように、warp(ワープ)と呼ばれる反りが発生することがある。
「うねり」や、ワープが発生すると、後工程のラッピング工程、エッチング工程、研磨工程等に時間と手間を要し、ウェーハの製造効率が損なわれる。
また、シリコンインゴットから取得された個々のウェーハ1a間で、ワープの方向、厚みがばらつくことがあり、これらバラツキが発生すると、後工程のラッピング工程、エッチング工程、研磨工程等に時間と手間を要し、ウェーハの製造効率が損なわれる。
図1からわかるように、砥粒31の粒径を小さくし、ワイヤ6の線径を小さく
するほど、製造ロスが小さくなり、「g/枚」を小さくでき、歩留まりを向上させることができる。また、砥粒31の粒度が小さくなるほど、切断されたウェーハ1aの表面に与えるダメージが小さくでき、ダメージ層を除去するために行われる後工程における取代を小さくすることができ、製造ロスの減少に寄与する。
以上のように、切断工程では、線径が小さいワイヤ6を使用し、粒径の小さい砥粒31を使用することが、製造ロスを小さくし、歩留まりを向上させることができるということがわかっている。
このため、従来よりカーフロスの低減を目的として、砥粒31の細粒化、ワイヤ6の細線化が行われてきた。
しかしながら、砥粒31の粒径を小さくし、砥粒31の番手を上げるほど、ワイヤ6と切断面との間で砥粒31が目詰まりしやすく、切れ味が悪くなり、切断速度が低下するとともに、ウェーハ1aの切断面の品質が劣化するというのが従来の技術常識であった。
すなわち、砥粒31の番手として、従来、JISで#600〜#1500相当のものが使用されていたが、これ以上の番手の砥粒31を使用すると、うねりが大きくなったり、面粗度(Ra値)が大きな値を示すなどの品質上の問題が予測されるということが従来の技術常識であった。
本発明はこうした実状に鑑みてなされたものであり、砥粒を、現状の粒径のものよりも更に微細化することにより、カーフロスの低減と、取代の低減を図り、ウェーハの取得率を向上させて、製造効率を向上させるとともに、ウェーハの品質を維持できるようにすることを解決課題とするものである。
第1発明は、
半導体インゴットの切断部位に砥粒を含むスラリを供給するとともに、ローラに巻かれて走行するワイヤに引張荷重を加えつつ、ワイヤに対して半導体インゴットを押し当てる方向に相対移動させて、半導体インゴットを切断するようにした半導体インゴットの切断方法において、
0.14mm以下の線径のワイヤを用いるとともに、2000番以下と3000番以上を除いた範囲の番手の砥粒を用いて半導体インゴットを切断するに際して、
ワイヤにインゴットが押し当てられたときの反発力を低減するために、2.5kg/fよりも低い引張荷重であって、線径が小さくなるに伴い、より低くくなる引張荷重をワイヤに加えて、半導体インゴットを切断する半導体インゴットの切断方法であることを特徴とする。
第2発明は、第1発明において、
ワイヤの線径が0.14mm以下で0.12mmを超えた値のときには、引張荷重が2.3kg/f以下で2.1kg/fを超えた値に設定され、
ワイヤの線径が0.12mm以下の値のときには、引張荷重が2.1kg/f以下に設定されることを特徴とする。
第3発明は、第1発明において、
切断しようとする半導体インゴットは、ローラの長手方向に沿って、2本以上一列に配置されていることを特徴とする。
すなわち、本発明者は、砥粒31の番手を、2000番以下と3000番以上を除いた範囲に上げて細粒化を図ると、砥粒31の切断能力が従来の技術常識に反して向上するものの、それによって、他の条件が従来条件と同じままでは、撓み量が小さくなり、ワープに関する品質の劣化が見られるという知見を得た。そして、そのワイヤの撓み量の低下は、ワイヤ6の反発力が強くなっていることが原因であると考え、そのワイヤ6の反発力を低減するために、ワイヤ6の線径が小さくなるに伴い引張荷重を低下させれば、ワープに関する品質が向上すると考えた。
図17(a)、(b)からわかるように、ワイヤ6の線径がφ0.12mmであれば、引張荷重を2.1kg/f以下に設定し、ワイヤ6の線径がφ0.14mmであれば、引張荷重を2.3kg/f以下に設定すれば、ワープの大きさの平均値AVE、ワープの大きさのバラツキσともにワープに関する品質基準レベル以下になることが確認された。さらにワイヤ6の線径を、変化させて実験を行ったところ、ワイヤ6の線径がφ0.14mm以下でφ0.12mmを超える場合については、引張荷重を2.3kg/f以下に設定し、ワイヤ6の線径がφ0.12mm以下の場合については、引張荷重を2.1kg/f以下に設定すれば、ワープの大きさの平均値AVE、ワープの大きさのバラツキσが基準レベル以下になることが確認された(第2発明)。
また、2本貼りの場合には特に高い品質改善効果がみられた(第3発明)。
さらに図17(a)、(b)、図18(a)、(b)(c)から、線形φ0.14mm以下のワイヤ6を使用し、#2000以下を除き#3000以上を除いた砥粒31を使用してインゴット1の切断を行うに際しては、ワイヤ6にインゴット1が押し当てられたときの反発力を低減するために、2.5kg/fよりも低い引張荷重であって、線径が小さくなるに伴い(たとえばφ0.14mm→φ0.12mm)、より低くなる引張荷重(たとえば2.5kg/f(従来条件)→2.3kg/f;あるいは2.3kg/f→2.1kg/f)をワイヤ6に加えることが、ワープに関する品質を向上させる上で必要である、ということが結論づけられた(第1発明)。
よって本発明によれば、砥粒を細粒化することでカーフロスの低減と、取代の低減を図ることができ、ウェーハの取得率が向上し、ウェーハの製造効率が向上する。加えて、ワープに関する品質が向上するためウェーハの品質を維持することができる。
以下、図面を参照して本発明に係る半導体インゴットの切断方法の実施の形態について説明する。なお、本実施形態では、直径200mmのシリコンウェーハ1aを製造する場合を想定している。しかし、本実施形態は、直径300mmのシリコンウェーハ等、任意の直径のウェーハを製造する場合にも同様に適用することができる。
図4は、実施例のワイヤソー装置の構成を斜視図にて示している。また、図5は、ワイヤ6によってシリコンインゴット1が切断される様子を示す図で、シリコンインゴット1を切断面方向からみた図である。
これら図に示すように、加工用ローラ7、8、9の長手軸方向がシリコンインゴット1の長手軸方向に一致するように、ローラ7、8、9が所定距離離間されて配置されている。加工用ローラ7、8は図中の上側に配置され、加工用ローラ9は図中の下側に配置される。各ローラ7、8、9には、ワイヤ6が巻かれている。ワイヤ6は、送り側リール10によって、ローラ7、8、9に送られ、図示しない巻き取り側リールによって、巻き取られる。送り側リール10はリール駆動用モータ11によって駆動される。
各ローラ7、8、9にはローラの長手方向に沿って一定のピッチでワイヤ6が巻かれている。このローラピッチ間距離は、ウェーハ1aの厚さに応じた長さに設定されている(図1(b))。
また、張力調整機構により、ローラ7、8、9間のワイヤ6には、一定の張力、つまり一定の引張荷重(テンション;kg/f)が付与される。すなわち、送り側リール10とローラ7、8、9との間には、張力調整用のガイドローラ12が設けられており、この張力調整用ガイドローラ12にワイヤ6が巻かれている。張力調整用ガイドローラ12の位置は、調整自在となっており、張力調整用ガイドローラ12の位置を調整することにより、ワイヤ6の引張荷重が調整される。たとえば、ワイヤ6の実際の引張荷重が、センサによって検出され、このセンサの検出結果をフィードバック量として、所望の一定の引張荷重が得られるように、張力調整用ガイドローラ12の位置が調整される。
各加工用ローラ7、8、9のいずれかのローラには、ローラ駆動用モータ13の回転軸が連結されている。ローラ駆動用モータ13が回転駆動することにより、たとえば7の加工用ローラが回転駆動し、これに伴い他のローラ8、9が従動回転し、ワイヤ6が走行する。
図5の図中で、ローラ7、8、9が左方向に回転することによって、ワイヤ6は左回りに走行する。ワイヤ6が一方向(左方向)に走行するに応じて、巻き取り側リールでワイヤ6が巻き取られていく。ワイヤ6が所定量、所定の一定速度で左方向に送られると、走行速度が低下されて一旦停止し、ローラ駆動用モータ13は逆方向(右方向)に回転駆動される。巻き取り側リールが送り側リールとして機能して、ワイヤ6が逆方向(右方向)に走行される。ワイヤ6の走行速度が上昇して一定速度に達すると、左方向の走行時と同様にワイヤ6が所定量、所定の一定の速度を維持して走行される。以下同様のサイクルが繰り返し行われる。このようなワイヤ6の往復走行を1サイクルとして、シリコンインゴット1が切断される。1分間(60s)当たりのワイヤ6の往復回数を、ワイヤサイクル数という。ワイヤサイクル数は、たとえば1(回/min)である。また、ワイヤ6の速度が低下してから、一旦停止を経て、逆方向に走行して、所定の一定速度に到達するまでの時間を、ワイヤ可変速度という。ワイヤ可変速度は、たとえば3〜6sである。また、ワイヤ6が走行する速度の平均値は、ワイヤ平均線速度と呼ばれ、たとえば500〜650(m/min)である。
以上のようにワイヤ6は往復走行しながらシリコンインゴット1を切断する。ワイヤ6の往復走行してシリコンインゴット1を切断する時間の増加に伴いワイヤ6は摩耗することから、送り側リール10は、所定の新線供給量(m/min)で、新しいワイヤ6を繰り出す。送り側リール10から供給された新しいワイヤ6は、巻き取り側リールによって巻き取られる。
インゴット1は、黒鉛からなるワークプレート2に接着されている。ワークプレート2は、セットプレート3に接着されている。インゴット1をワークプレート2に接着し、ワークプレート2をセットプレート3に接着するに際して、インゴット1の切断方向が結晶面に一致するようにインゴット1の姿勢が調整される。すなわち、インゴット1の結晶方位がワイヤ6による切断方向と垂直になるようにインゴット1の中心軸の方向が調整される。セットプレート3は昇降ベース4に取り付けられている。昇降ベース4は、図示しない昇降用モータによって図5の図中の上下方向に昇降する。
加工用ローラ7、8の上方には、スラリ供給用パイプ14が配置されている。スラリ供給用パイプ14には、供給口14aが開口しており、供給口14aからは、砥粒31を含むスラリ30が吐出される。スラリ供給用パイプ14は、移動機構によってインゴット1の切断部位近傍に接近自在となっている。
ここでスラリ30は、たとえば、鉱物系オイル(PS−LW−50)で、スラリ比重が1.48〜1.54(g/cc)で、スラリ粘度が160〜260(cp、25゜C、20rpm)のものが使用される。砥粒31の粒径については後述する。
ワイヤ6とインゴット1との切断部位に供給されたスラリ30は、スラリタンク15に回収される。スラリタンク15に回収されたスラリ30は、ポンプによって吸い込まれ、ポンプから吐出されて再度スラリ供給用パイプ14に供給される。なお、スラリ30は、インゴット1を切断する際に発生する熱を吸収して温度が上昇するため、回収されたスラリ30は、熱交換機によって一定温度まで冷却された上で、スラリ供給用パイプ14に供給される。
つぎに、上述した構成のワイヤソー装置で行われる切断作業について説明する。
上記昇降用モータが駆動制御され、昇降ベース4が下降し、インゴット1が一対の加工用ローラ7、8間のワイヤ6に押し当てられる。また、ローラ駆動用モータ13が駆動制御されてワイヤ6が走行する。これによりインゴット1の切断加工が行われる。このときスラリ供給用パイプ14は、インゴット1の切断部位近傍に接近されている。ワイヤ6が押し当てられているインゴット1の切断部位には、供給口14aからスラリ30が供給される。このためラッピング作用によりインゴット1が徐々に切断される。加工用ローラ7、8の長手軸方向には、所定のピッチでワイヤ6が巻かれていることから、このピッチ長さに応じた厚さであって、インゴット1が押し当てられた部分のローラ7、8の巻き数に応じた枚数のシリコンウェーハ1aが1つのインゴット1から生成される。
昇降用モータは、インゴット1の切断加工の進行に応じて、切断速度(μm/min)が変化するように駆動制御される。切断開始時にインゴット1の外周部を切断しているときの切断開始速度、インゴット1の中央部を切断しているときの切断中央速度、インゴット1の中央部を切断し終わりインゴット1の外周部を切断しているときの切断終了速度といった各ステージで、異なる速度が設定される。たとえば切断開始速度は、700〜830μm/minであり、切断中央速度は、400〜450μm/minであり、切断終了速度は、400〜620μm/minに設定される。
インゴット1の切断加工が終了すると、昇降ベース4が上昇し、スライスされたインゴット1が元の退避位置に移動される。切断温度は、たとえば25゜C以下の一定値に調整され、たとえば6.5(H/回)の切断時間で、1つのインゴット1の切断加工が行われる。
つぎに、上記ワイヤソー装置に使用されるスラリ30に含まれる砥粒31の番手(平均粒径)の決定方法について説明する。
まず、各種JIS番手の砥粒31、例えば#1000、#1500、#2000、#2500、#3000といった各大きさの粒径の砥粒31が用意される。
#2000、#2500、#3000といった各番手別の体積粒度分布を図6に示す。図6の横軸は粒径(μm)であり、縦軸は、砥粒31の粒径が全体積に占める体積割合(頻度)(%)を示している。図6(a)は、折れ線グラフで分布を示し、図6(b)は棒グラフで分布を示している。
図12(a)は、図6に示す粒径分布を表にて示している。
図12(b)は、#2000、#2500、#3000といった各番手毎に、D3%、D50%、D94%を測定した結果を示す。
さらに図12(c)は、#2000、#2500、#3000といった各番手毎に、粒径の最大値、平均値、最小値を測定した結果を示す。
これらより、#2000(2000番)とは、粒径の平均値が、4±0.5(μm)で、最大値が13(μm)、最小値が2(μm)の範囲に収まる粒径分布のことであり、#2500(2500番)とは、粒径の平均値が、5.6±0.5(μm)で、最大値が16(μm)、最小値が3(μm)の範囲に収まる粒径分布のことであり、#3000(3000番)とは、粒径の平均値が、6.9±0.5(μm)で、最大値が19(μm)、最小値が4(μm)の範囲に収まる粒径分布のことであると定義される。
つぎに、各番手の砥粒31が含まれるスラリ30を用いて、シリコンインゴット1をワイヤソー装置で切断加工し、切断後のウェーハ1aの表面の面粗さ(Ra値)を測定する。
図7は、シリコンウェーハ1aの表面各部の測定箇所(1)〜(9)を示している。図中左側は、新しいワイヤ6が供給される側(新線側)であり、図中右側が新線が巻き取られる側である。図中上側は、ウェーハ1aの切断終了側であり、図中下側は、ウェーハ1aの切断開始側である。
(1)、(2)、(3)、(8)、(9)は、ウェーハ直径方向の各測定箇所であり、新線側から巻き取り側へかけての各測定箇所を示す。(4)、(5)、(3)、(6)、(7)は、ウェーハ直径方向の各測定箇所であり、上側(切断終了側)から下側(切断開始側)へかけての各測定箇所を示す。ウェーハ1aの中心部は、測定箇所(3)に相当する。
測定条件は以下の通りである。
測定装置 サーフコーダ:SE−30H(小坂研究所製)
条件 縦倍率 5000
横倍率 20
測定長さ 2.5mm
カットオフ値 λc=0.25mm
測定速度 0.1mm/s

図8、図9は測定結果を示している。
図8(a)、(b)は、ウェーハ1aの表面の各測定箇所毎に面粗さの最大値Rmaxを示している。図8(a)は、新線側から巻き取り側へかけての各測定箇所(1)、(2)、(3)、(8)、(9)と面粗さ最大値Rmaxとの関係を、砥粒31の番手毎に示している。図8(b)は、上側(切断終了側)から下側(切断開始側)へかけての各測定箇所(4)、(5)、(3)、(6)、(7)と面粗さ最大値Rmaxとの関係を、砥粒31の番手毎に示している。
図9(a)、(b)は、ウェーハ1aの表面の各測定箇所毎に面粗さの平均値Raを示している。図9(a)は、新線側から巻き取り側へかけての各測定箇所(1)、(2)、(3)、(8)、(9)と面粗さ平均値Raとの関係を、砥粒31の番手毎に示している。図9(b)は、上側(切断終了側)から下側(切断開始側)へかけての各測定箇所(4)、(5)、(3)、(6)、(7)と面粗さ平均値Raとの関係を、砥粒31の番手毎に示している。
ここで、ウェーハ1aの中心部、つまり測定箇所(3)に着目すると、砥粒31の番手が#1000から#2500までは、砥粒31の番手の増加に応じて、つまり砥粒31の粒径が小さくなるほど、面粗さは低くなる傾向を示している。しかし、砥粒31の番手が#3000(以上)になると、逆に面粗さは、大きくなり悪化する。そして、このような図8、図9に示す傾向は、ワイヤ6の線径の大きさ如何にかかわらず普遍的な傾向であることが確認された。
このように予め砥粒31の番手と、切断されたシリコンウェーハ1aのウェーハ中心部の面粗さとの関係を求め、ウェーハ中心部の面粗さを、砥粒31の番手毎に比較することにより、適正な砥粒31の番手の範囲、つまりウェーハ中心部の面粗さの値を所定のしきい値以下にする番手の砥粒31を選択することができる。具体的には、カーフロスが小さくなり、かつウェーハ中心部の面粗さが小さくなる砥粒31の番手として、#2000以下と#3000以上を除いた範囲の番手の砥粒31が選択される。
この選択された範囲#2000〜#3000内の番手の砥粒、たとえば#2500の砥粒31を含むスラリ30を用いて、実施形態のワイヤソー装置を下記の条件で切断したところ、上述した面粗さのみならず、うねり、ワープ、平坦度等において、#1000の砥粒31を使用した場合よりも改善がみられた。

(本実施例1)
砥粒31の番手 #2500
ワイヤ6の線径 0.14mm
ワイヤ6の引張荷重 2.3kg /f

(本実施例2)
砥粒31の番手 #2500
ワイヤ6の線径 0.12mm
ワイヤ6の引張荷重 2.1kg /f

以下、上記実施例1、2の比較例として#1000の砥粒31を使用した場合の条件を掲げる。

(比較例1)
砥粒31の番手 #1000
ワイヤ6の線径 0.14mm
ワイヤ6の引張荷重 2.5kg /f

(比較例2)
砥粒31の番手 #1000
ワイヤ6の線径 0.12mm
ワイヤ6の引張荷重 2.3kg /f

図10(a)、(b)は、切断後のウェーハ1aの表面を撮影した写真を示す。図10(a)は#2500の砥粒31を用いて切断されたウェーハ1aの表面であり、ワイヤ6によって切断される方向を矢印で示している。図10(b)は#1000の砥粒31を用いて切断されたウェーハ1aの表面である。
図10(a)と図10(b)を対比すると、#1000の砥粒31を使用した場合には、うねりが明確に発生していることが写真から読みとれるが、#2500の砥粒31を使用した場合には、うねりは殆どみられない。
図11は更に、ナノトポグラフィーによる測定結果を示している。図11(a)、(b)、(c)はそれぞれ、0.5mm角、2.0mm角、10mm角におけるうねりの大きさの分布を示しており、横軸は、0.5mm角、2.0mm角、10mm角におけるうねりの大きさであり、縦軸は、割合(パーセント)である。図11(a)は、0.5mm角におけるうねりの大きさの分布を、#2500と#1000とで対比して示している。図11(b)は、2.0mm角におけるうねりの大きさの分布を、#2500と#1000とで対比して示している。図11(c)は、10mm角におけるうねりの大きさの分布を、#2500と#1000とで対比して示している。
これら図11から、#1000の砥粒31を使用した場合よりも#2500の砥粒31を使用した場合の方が、明らかに、ウェーハ1aの表面においてうねりの大きさのバラツキが小さいことがわかる。
以上のように、従来、JISで#600〜#1500相当のものが使用されており、これ以上の番手の砥粒31を使用すると、うねりが大きくなったり、面粗度(Ra値)が大きな値を示すなどの問題が予測されるということが従来の技術常識であったが、本実施例による方法を適用すると、それ以上の番手の砥粒であっても、確実に面粗さ等の品質を向上させることができる。
つぎに、砥粒31の番手と切断速度との関係について、本発明者が知見したところについて説明する。
前述したように、従来の技術常識では、砥粒31の番手を上げて細粒化すると、目詰まりによって切れ味が悪くなり、切断能力(切削力)が低下するとみられていた。
しかし、本発明者らによって実験を行ったところ、#2000〜#3000といった細かく径の小さい砥粒31を使用すると、ワイヤ6へ砥粒31が付着し易く、付着個数、付着密度が増大しており、それによって切断能力がむしろ向上しているという結果を得た。
しかし、このような砥粒の細粒化(#2000〜#3000)による切断能力向上は、ワイヤ6の撓み量の減少とそれによるワープに関する品質劣化を結果を招くこととなった。
図13は、撓み量を説明する図である。
すなわち、図13(a)に示すように、線径D(mm)のワイヤ6に引張荷重T(kg/f)を加えると、ワイヤ6は、実線の状態から破線の状態へと変形し、ワイヤ6の長さ方向に、伸び率ε(%)をもって伸張する。
図13(b)も示すように、ローラ7、8間のワイヤ6にインゴット1が押し当てられて切断されると、ワイヤ6は、各ローラ7、8間の距離L(mm)と伸び率εに応じた撓み量(伸び長さ)δをもって、押し当て方向に撓む。
#2000〜#3000の砥粒31を使用し、従来の番手(#600〜#1500)の砥粒使用時と同じ切断速度の条件で切断したところ、上述したように砥粒31の切断能力が従来よりも向上しているため、撓み量が従来に比べて小さくなっているという実験結果を得た。そして、この撓み量の減少に起因して、従来よりもワープの値(平均値)、ワープの大きさのバラツキ、、ワープの方向(反りの方向)のバラツキが大きくなっているという実験結果を得た。
特に、ワークプレート2に1本のインゴット1が接着される1本貼りの場合に比べて、2本のインゴット1、1が、ローラ7、8、9の長手方向に沿って一列に並べられ、ワークプレート2に接着される2本貼りの場合の方が、上述したワープに関する品質の劣化が顕著であるという結果を得た。
図14(a)は、2本貼りを説明する図である。
同図14(a)に示すように、2本貼りでは、ローラ7、8、9の長手方向に沿って、2本のインゴット1、1が一列に配置される。1本貼りでは、同図14(a)における2本のインゴット1、1の代わりに同姿勢で1本のインゴット1が配置される。
図14(b)は、ローラ7、8、9にワイヤ6が巻かれる方向とインゴット1との関係を示している。同図14(b)に示すように、ローラ7、8、9の両端のうち、新しいワイヤ6が供給される側の端部を新線側といい(図7参照)、切断に使用されたワイヤ6が巻き取られる側の端部を巻き取り側というものとする。これに対応させて、ローラ7、8、9の新線側に対応するインゴット1の端部を新線側といい、ローラ7、8、9の巻き取り側に対応するインゴット1の端部を巻き取り側という。そして、新線側から巻き取り側に向かう方向(ワイヤ6が巻かれる方向)を、ワイヤ送り方向というものとする。2本貼りのインゴット1、1の場合には、ローラ7、8、9の新線側に配置されるインゴット1のことを、「1本目」といい(図14(a))、ローラ7、8、9の巻き取り側に配置されるインゴット1のことを、「2本目」という(図14(b))ものとする。
図14(c)は、#2000〜#3000の砥粒31を使用し、従来の番手(#600〜#1500)の砥粒使用時と同じ切断速度の条件(以下従来条件)でインゴット1を切断したときに、インゴット1から取得される各ウェーハ1aのワープの状態を模式的に示している。
同図14(c)に示すように、1本のインゴット1から取得される各ウェーハ1aのワープの方向は揃っておらず、ワープの方向のバラツキは、大きいことがわかる。これは2本貼りのインゴット1、1の場合についても同様であった。
図15(a)は、従来条件で1本貼りのインゴット1を切断したときに取得される各ウェーハ1aのワープの大きさを、ワイヤ送り方向を横軸として示している。同図15(a)に示すように、ウェーハ1aのワープの大きさは、新線側から巻き取り側に向かうにつれて減少しており、ワープの大きさがばらついてることがわかる。また、ワープの大きさの平均値でみても、ウェーハの基準の品質を満足できるレベルに達していない。
図15(b)は、従来条件で2本貼りのインゴット1、1を切断したときに取得される各ウェーハ1aのワープの大きさを、ワイヤ送り方向を横軸として示している。同図15(b)に示すように、ワープの大きさは、新線側の1本目のインゴット1から取得されるウェーハ1aと巻き取り側の2本目のインゴット1から取得されるウェーハ1aとでは、大きさが大きく異なり、インゴット毎にワープの大きさがばらついていることがわかる。また、ワープの大きさの平均値でみても、ウェーハの基準の品質を満足できるレベルに達していない。
以上のように、本発明者は、砥粒31の番手を、2000番以下と3000番以上を除いた範囲に上げて細粒化を図ると、砥粒31の切断能力が従来の技術常識に反して向上するものの、それによって、他の条件が従来条件と同じままでは、撓み量が小さくなり、ワープに関する品質の劣化が見られるという知見を得た。
そして、そのワイヤの撓み量の低下は、ワイヤ6の強制力が弱くなっていることが原因であると考え、そのワイヤ6の強制力を上げるために、切断中央速度を上昇させれば、ワープに関する品質が向上すると考えた。
本実施例3と、この本実施例3に対する比較例3の各条件を下記に掲げる。
(実施例3)
砥粒の番手 #2500
切断中央速度 415μm/min以上
ワイヤの線径 φ0.12mm〜φ0.14mm
引張荷重 2.1kg/f〜2.3kg/f

(比較例3)
砥粒の番手 #2500
切断中央速度 400μm/min
ワイヤの線径 φ0.12mm〜φ0.14mm
引張荷重 2.1kg/f〜2.3kg/f

なお、切断開始速度は、800〜810μm/min程度に設定し、切断終了速度は、600〜610μm/min程度に設定した。
比較例3の切断中央速度400μm/minは、従来の番手(#600〜#1500)の砥粒使用時に設定されていた切断速度である(従来条件)。
比較例3の場合には、前述した図14(c)、図15(a)、図15(b)に示す結果が得られ、ワープの平均値、ワープの方向のバラツキ、ワープの大きさのバラツキが大きく、品質の基準レベルを満足できるものではなかった。
これに対して、本実施例3の条件で試験を行ったところ、比較例3の図14(c)、図15(a)、図15(b)それぞれに対応して、図14(d)、図15(c)、15(d)に示される結果が得られた。
比較例3の結果を示す図14(c)と、本実施例3の結果を示す図14(d)とを対比すると、本実施例3の場合には、1本のインゴット1から取得される各ウェーハ1aのワープの方向はほぼ揃い小さくなっており、ワープの方向のバラツキは、比較例3に比して大きく改善されたことがわかる。これは2本貼りのインゴット1、1の場合についても同様であった。
比較例3の結果を示す図15(a)と本実施例3の結果を示す図15(c)とを対比すると、本実施例3の場合には、ワープの大きさは、ワイヤ送り方向の各部でほぼ均一に揃っており、ワープの大きさのバラツキは、比較例3に比して大きく改善されたことがわかる。また、ワープの平均値についても比較例3に比して小さくなっており、品質の基準レベル以下となった。
比較例3の結果を示す図15(b)と、本実施例3の結果を示す図15(d)とを対比すると、本実施例3の場合には、巻き取り側の2本目のインゴット1から取得される各ウェーハ1aのワープの大きさと、新線側の1本目のインゴット1から取得される各ウェーハ1aのワープの大きさは、ほぼ同じ大きさとなり、均一に揃っており、インゴット毎のワープの大きさのバラツキは比較例3に比して大きく改善されたことがわかる。また、ワープの平均値についても比較例3にして小さくなっており、品質の基準レベル以下となった。
本実施例3では、#2500の番手の砥粒31を使用しているが、#2000以下を除き、#3000以上を除いた番手の砥粒31についても、切断中央速度を従来条件よりも上昇させて少なくとも415μm/min以上にすれば、比較例3に比して、ワープに関する品質が向上するという結果を得た。
また、本実施例3では、線径φ0.12mm〜φ0.14mmのワイヤ6を使用し、引張荷重を2.1kg/f〜2.3kg/fに設定しているが、これ以外の線径のワイヤ6、これ以外の引張荷重に設定した場合についても、切断中央速度を従来条件よりも上昇させて少なくとも415μm/min以上にすれば、比較例3に比して、ワープに関する品質が向上するという結果を得た。
つぎに、切断速度の大きさを変化させて、ワープに関する品質の改善効果について検討した。
実験では、切断中央速度を、400〜450μm/minの範囲で変化させて、各ウェーハ1aのワープの大きさの平均値AVE、ワープの大きさのバラツキσを求めた。
実験結果を図16に示す。
図16(a)、(b)は、横軸を、切断中央速度(400〜450μm/min)とし、縦軸を、ワープの大きさ(μm)として、切断中央速度とワープの大きさとの関係を示したグラフである。
図16(a)は、線径φ0.12mmのワイヤ6を使用し、引張荷重を2.1kg/fに設定した条件における切断中央速度とワープの大きさとの関係を示す。
図16(b)は、線径φ0.14mmのワイヤ6を使用し、引張荷重を2.3kg/fに設定した条件における切断中央速度とワープの大きさとの関係を示す。
砥粒31は、#2500のものを使用した。なお、#2000以下を除き、#3000以上を除いた範囲で番手を変化させたが、図16(a)、(b)に示す傾向は同じであった。
図16(a)、(b)からわかるように、切断中央速度を415μm/min以上に設定すれば、ワープの大きさの平均値AVE、ワープの大きさのバラツキσが基準レベル以下になり、ウェーハ表面の品質基準レベル以下に到達することが確認された。
つぎに、砥粒31の番手と引張荷重との関係について、本発明者が知見したところについて説明する。
前述したように、本発明者は、砥粒の細粒化(#2000〜#3000)による切断能力向上は、ワイヤ6の撓み量の減少とそれによるワープに関する品質の劣化という結果を招いているという知見を得た。切断中央速度のみならず引張荷重という条件も同様であり、従来条件のままで切断を行うと、撓み量が減少し、ワープに関する品質の劣化が確認された。
すなわち、#2000〜#3000の砥粒31を使用し、従来の番手(#600〜#1500)の砥粒使用時と同じ引張荷重の条件(以下従来条件)でインゴット1を切断し、インゴット1から取得される各ウェーハ1aのワープを測定したところ、前述した図14(c)、図15(a)、図15(b)と同様な結果が得られ、ワープに関する品質が従来番手の砥粒使用時よりも劣化しているという結果を得た。
以上のように、本発明者は、砥粒31の番手を、2000番以下と3000番以上を除いた範囲に上げて細粒化を図ると、砥粒31の切断能力が従来の技術常識に反して向上するものの、それによって、他の条件が従来条件と同じままでは、撓み量が小さくなり、ワープに関する品質の劣化が見られるという知見を得た。
そして、そのワイヤの撓み量の低下は、ワイヤ6の反発力が強くなっていることが原因であると考え、そのワイヤ6の反発力を低減するために、ワイヤ6の線径が小さくなるに伴い引張荷重を低下させれば、ワープに関する品質が向上すると考えた。
本実施例4、5と、比較例4、5の各条件を下記に掲げる。なお、実施例4、比較例4は、線径φ0.14mmのワイヤ6を使用した場合であり、実施例5、比較例5は、線径φ0.12mmのワイヤ6を使用した場合である。
(実施例4)
砥粒の番手 #2500
ワイヤの線径 φ0.14mm
引張荷重 2.3kg/f以下
切断中央速度 415μm/min
(実施例5)
砥粒の番手 #2500
ワイヤの線径 φ0.12mm
引張荷重 2.1kg/f以下
切断中央速度 415μm/min
(比較例4)
砥粒の番手 #2500
ワイヤの線径 φ0.14mm
引張荷重 2.5kg/f以下
切断中央速度 415μm/min
(比較例5)
砥粒の番手 #2500
ワイヤの線径 φ0.12mm
引張荷重 2.5kg/f以下
切断中央速度 415μm/min
比較例4、5の引張荷重2.5kg/fは、従来の番手(#600〜#1500)の砥粒使用時に設定されていた切断速度である(従来条件)。
比較例4、5の場合には、図14(c)、図15(a)、図15(b)に示す結果が得られ、ワープの平均値、ワープの方向のバラツキ、ワープの大きさのバラツキが大きく、品質基準レベルを満足できるものではなかった。
これに対して、本実施例4、5の条件で試験を行ったところ、図14(d)、図15(c)、15(d)に示される結果が得られた。
本実施例4、5の結果を示す図14(d)、図15(c)、15(d)と比較例4、5の結果を示す図14(c)、図15(a)、図15(b)とをそれぞれ対比してわかるように、前述したように、1本貼り、2本貼りいずれの場合も、ワープの方向のバラツキ、ワープの大きさのバラツキ、ワープの平均値が本実施例が比較例に比して向上しており、ワープに関する品質が基準レベル以下に到達しているということが確認された。
本実施例4、5では、#2500の番手の砥粒31を使用しているが、#2000以下を除き、#3000以上を除いた番手の砥粒31についても、引張荷重を従来条件よりも低下させれば、比較例4、5に比して、ワープに関する品質が向上するという結果を得た。
また、本実施例4、5では、切断中央速度を415μm/minに設定しているが、切断中央速度がこれを下回る値であっても従来条件(400μm/min)以上の切断速度であれば、比較例4、5に比して、ワープに関する品質が向上する。
つぎに、引張荷重の大きさを変化させて、ワープに関する品質の改善効果について検討した。
実験では、ワイヤ6の引張荷重を、ワイヤ6の線径がφ0.12mmの場合には.2.3〜1.8kg/fの範囲で変化させ、ワイヤ6の線径がφ0.14mmの場合には.2.5〜2.1kg/fの範囲で変化させて、各ウェーハ1aのワープの大きさの平均値AVE、ワープの大きさのバラツキσを求めた。
実験結果を図17に示す。
図17(a)、(b)は、横軸を、ワイヤ6の引張荷重(図17(a)は2.3〜1.8kg/f、図17(b)は2.5〜2.1kg/f)とし、縦軸を、ワープの大きさ(μm)として、ワイヤ6の引張荷重とワープの大きさとの関係を示したグラフである。
図17(a)は、線径φ0.12mmのワイヤ6を使用した場合の引張荷重とワープの大きさとの関係を示す。
図17(b)は、線径φ0.14mmのワイヤ6を使用した場合の引張荷重とワープの大きさとの関係を示す。
砥粒31は、#2500のものを使用した。なお、#2000以下を除き、#3000以上を除いた範囲で番手を変化させたが、図17(a)、(b)に示す傾向は同じであった。
図17(a)、(b)からわかるように、ワイヤ6の線径がφ0.12mmであれば、引張荷重を2.1kg/f以下に設定し、ワイヤ6の線径がφ0.14mmであれば、引張荷重を2.3kg/f以下に設定すれば、ワープの大きさの平均値AVE、ワープの大きさのバラツキσともにワープに関する品質基準レベル以下になることが確認された。さらにワイヤ6の線径を、変化させて実験を行ったところ、ワイヤ6の線径がφ0.14mm以下でφ0.12mmを超える場合については、引張荷重を2.3kg/f以下に設定し、ワイヤ6の線径がφ0.12mm以下の場合については、引張荷重を2.1kg/f以下に設定すれば、ワープの大きさの平均値AVE、ワープの大きさのバラツキσが基準レベル以下になることが確認された。
さらに図18(a)、(b)は、砥粒31の番手を#2500とし、ワイヤ6の線径をφ0.12mmとしたときの実験結果であり、図18(a)は引張荷重を2.3kg/fにしたときのワープの大きさの平均値AVE、ワープの大きさのバラツキσを、各切断回数毎に計測した結果であり、図18(b)は引張荷重を2.1kg/fにしたときのワープの大きさの平均値AVE、ワープの大きさのバラツキσを、各切断回数毎に計測した結果である。
図18(a)、(b)の横軸は、切断回数を示し、縦軸は、ワープの大きさであり、1回の切断で取得される各ウェーハ1aのワープの大きさの範囲(最大値〜最小値)と、ワープの大きさの平均値(黒丸●で示す)を示している。
また、ワイヤ6の線径をφ0.14と高くし、引張荷重を2.5kg/f(従来条件)と高くした場合についても同様に実験を行った。図18(c)は、砥粒31の番手を#2500とし、ワイヤ6の線径をφ0.14mmとし、引張荷重を2.5kg/f(従来条件)にしたときの計測結果である。
これら図18(a)、(b)、(c)を対比してわかるように、上述した本実施例5の条件(ワイヤ6の線径φ0.12mm、引張荷重2.1kg/f以下)に適合した図18(b)の場合には、そうでない場合(図18(a)、(c))よりも、ワープの大きさの平均値AVE、ワープの大きさのバラツキσともに、大きく改善されているのがわかる。実験では、1本貼り、2本貼りを混在させて複数回切断を行ったが、2本貼りの場合には特に効果が顕著であるという結果が得られた。
また、図18(a)、(c)は、実施例4、5の条件からは外れるものの、ワイヤ6の線径をφ0.14mmからφ0.12mmに低下させるにつれ(図18(c)→図18(a))、引張荷重を2.5kg/f(従来条件)から2.3kg/fに低下させることで(図18(c)→図18(a))、ワープの大きさの平均値AVE、ワープの大きさのバラツキσが小さくなり、品質が向上しているのがわかる。
以上のことから、線形φ0.14mm以下のワイヤ6を使用し、#2000以下を除き#3000以上を除いた砥粒31を使用してインゴット1の切断を行うに際しては、ワイヤ6にインゴット1が押し当てられたときの反発力を低減するために、2.5kg/fよりも低い引張荷重であって、線径が小さくなるに伴い(たとえばφ0.14mm→φ0.12mm)、より低くなる引張荷重(たとえば2.5kg/f(従来条件)→2.3kg/f;あるいは2.3kg/f→2.1kg/f)をワイヤ6に加えることが、ワープに関する品質を向上させる上で必要である、ということが結論づけられる。
また、上述した実施例4、5は、実施例3と組み合わせると、更にワープに関する品質改善の効果が高くなる。すなわち、切断中央速度を415μm/min以上に設定し、さらに、ワイヤ6の線径がφ0.14mm以下でφ0.12mmを超える場合については、引張荷重を2.3kg/f以下で2.1kg/fを超える値に設定し、ワイヤ6の線径がφ0.12mm以下の場合については、引張荷重を2.1kg/f以下の値に設定する条件で切断を行えば、切断中央速度が従来条件(400μm/min)のままである場合(引張荷重は上記同条件)よりも、更にワープに関する品質が向上する。
以上のように本実施例によれば、砥粒31を現状の粒径のものよりも更に微細化することにより、カーフロスの低減と、取代の低減を図ることができ、ウェーハの取得率が向上し、製造効率が向上する。加えて、上述したように、従来の技術常識に反して、ウェーハの品質についても、これを維持できるようになった。
本発明は、シリコンのみならずガリウム砒素等の他の半導体インゴットを切断する場合にも同様に適用することができる。
図1(a)、(b)は、カーフロスを説明する図で、ワイヤによって、インゴットがウェーハに切断される様子を概念的に示す図である。 図2は、うねりを説明する図である。 図3は、ワープを説明する図である。 図4は、実施例のワイヤソー装置の構成を示す斜視図である。 図5は、ワイヤによってシリコンインゴットが切断される様子を示す図で、シリコンインゴットを切断面方向からみた図である。 図6(a)、(b)は、砥粒の番手別の体積粒度分布を示す図である。 図7は、シリコンウェーハの表面各部の測定箇所(1)〜(9)を示した図である。 図8(a)、(b)は、ウェーハの表面の各測定箇所毎に、面粗さ最大値を示したグラフである。 図9(a)、(b)は、ウェーハの表面の各測定箇所毎に、面粗さ平均値を示したグラフである。 図10(a)、(b)は、切断後のウェーハの表面を撮影した写真である。 図11(a)、(b)、(c)は、ナノトポグラフィーによる測定結果を示したグラフである。 図12(a)、(b)、(c)は、図6(a)、(b)に対応する表である。 図13(a)、(b)はワイヤに引張荷重を与えたときの変形の様子を示す図である。 図14(a)、(b)は、ワイヤが巻かれる方向と、ローラと、インゴットとの関係を説明する図であり、図14(c)、(d)は、インゴットから取得あれる各ウェーハのワープの方向を模式的に示した図である。 図15(a)、(b)、(c)、(d)はワイヤ送り方向とワープの大きさとの関係を示したグラフである。 図16(a)、(b)は切断中央速度とワープの大きさ(平均値)、ワープの大きさのバラツキとの関係を示すグラフである。 図17(a)、(b)は引張荷重とワープの大きさ(平均値)、ワープの大きさのバラツキとの関係を示すグラフである。 図18(a)、(b)、(c)は、切断回数とワープの平均値、バラツキとの関係を示したグラフである。
符号の説明
1 シリコンインゴット 1a シリコンウェーハ 6 ワイヤ 30 スラリ 31 砥粒

Claims (2)

  1. 半導体インゴットの切断部位に砥粒を含むスラリを供給するとともに、ローラに巻かれて走行するワイヤに引張荷重を加えつつ、ワイヤに対して半導体インゴットを押し当てる方向に相対移動させて、半導体インゴットを切断するようにした半導体インゴットの切断方法において、
    0.14mm以下であって0.12mm以上の線径のワイヤを用いるとともに、2000番以下と3000番以上を除いた範囲の番手の砥粒を用いて半導体インゴットを切断するに際して、
    ワイヤにインゴットが押し当てられたときの反発力を低減するために、ワイヤの線径が0.14mmのときには、引張荷重を、2.3kgf以下で2.1kg以上の範囲内の値に設定するとともに、ワイヤの線径が0.12mmのときには、引張荷重を、2.1kgf以下で1.8kgf以上の範囲内の値に設定し、ワイヤの線径が、0.14mmから0.12mmに小さくなるに伴い、引張り荷重を徐々に低い値に設定して引張荷重をワイヤに加えて、半導体インゴットを切断する半導体インゴットの切断方法。
  2. 切断しようとする半導体インゴットは、ローラの長手方向に沿って、2本以上一列に配置されている請求項1記載の半導体インゴットの切断方法。
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