JP4897490B2 - 転移抑制のための抗pecam治療 - Google Patents

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Description

発明の詳細な説明
相互参照
本願は、2003年11月13日に出願された米国仮特許出願第60/519,986号に優先権を主張し、それは参照により本明細書に包含される。
発明の分野
本発明は、患者において新生物細胞の転移能を阻害するための方法および関連組成物の同定に関する。本方法および組成物には、抗体などのPECAM結合物質、ならびに新生物細胞の浸潤性および転移能を調節するためにPECAM結合物質を用いて疾患を処置または防止する方法が含まれる。
発明の背景
腫瘍形成は、Foulds(1958)により多段階の生物学的過程として記載され、それは現在、遺伝子損傷の蓄積により生じることが分かっている。分子レベルでの多段階過程の腫瘍形成は、正および負の調節エフェクターの両方の破壊を伴う(Weinberg, 1989)。ヒト結腸癌についての分子機序には、多くの癌遺伝子、腫瘍抑制遺伝子および修復遺伝子が関係することがVogelsteinおよびcoworkers(1990)により主張されている。同様に、網膜芽腫の進行をもたらす欠損には、別の腫瘍抑制遺伝子が関連している(Lee et al., 1987)。さらに他の癌遺伝子および腫瘍抑制遺伝子も、様々な他の悪性腫瘍において同定されている。残念ながら、不適切な数の処置可能な癌が残っており、癌の影響は、米国だけで一年に50万人以上の死をもたらすほど壊滅的である。
癌は、基本的に細胞DNAへの損傷が細胞増殖を制御する正常な機構の崩壊をもたらす遺伝子疾患である。腫瘍抑制因子がゲノムの完全性を維持する2つの作用機構は、細胞周期を停止し、それにより損傷DNAの修復をすること、またはアポトーシスによる損傷DNAの除去を可能にすることである(Ellisen and Haber, 1998; Evan and Littlewood, 1998)。アポトーシスは、他に“プログラムされた細胞死”とも称され、不可逆的に損傷を受けた細胞の除去を目的とした細胞の自殺プログラムとして働く緻密に制御されたネットワークの生化学的事象である。アポトーシスは、腫瘍壊死因子の結合、DNA損傷、増殖因子の停止、およびFas受容体の抗体架橋を含む多くの方法で引き起こされ得る。アポトーシス過程に役割を果たすいくつかの遺伝子が同定されているが、アポトーシスを誘導する経路は十分に明らかにされていない。多くの研究者が、新規のアポトーシス促進遺伝子の同定を、かかる遺伝子が患者の癌を処置するために新生物細胞のアポトーシス感受性を誘導する手段を提供するだろうという目的を持って、試みている。
癌を処置するための別の方法には、エンドスタチン(商標)または抗VEGF抗体などの薬剤を用いる血管形成の抑制が含まれる。この方法にて、その目標は、原発腫瘍のさらなる血管形成を防止すること、および場合によっては実質的な血管増殖なしに新生物細胞の生存を支持し得る程度に転移病変のサイズを抑制することである。
血小板内皮細胞接着分子(PECAM−1;CD31)は、内皮細胞および好中球で発見されたタンパク質であり、内皮細胞を越える白血球の遊走に関係していることが示されている。血栓症、血管閉塞、卒中などの心血管状態の処置のため、および血液凝固疾患を処置するためまたは発症を減ずるためのPECAM−1の活性の調節は、WO03055516A1で開示される。PECAM−1はまた、炎症過程に関係があるとされ、抗PECAM−1モノクローナル抗体は、インビボでの好中球動員を阻止することが報告されている(Nakada et al. (2000) J. Immunol. 164: 452-462)。正常な白血球遊走、血小板凝集、および血管生長を有することが明らかなPECAM−1ノックアウトマウスが報告されており、それはPECAM−1の欠失を補うことができる余分な接着分子があることを示唆する(Duncan et al. (1999) J. Immunol. 162: 3022-3030)。PECAM−1に対するモノクローナル抗体は、マウス内皮管形成を防止することが報告されており、それは腫瘍移植モデル(Zhou et al. (1999) Angiogenesis 3: 181−188)およびヒト皮膚移植モデル(Cao et al. (2002) Am. J. Physiol. Cell Physiol. 282: C1181-C1190)での血管形成の関連指標である。しかしながら、腫瘍血管形成におけるPECAM−1の役割は、あるとしても、未だ明らかにされないままである。
抗血管形成法を用いる癌および腫瘍の転移を阻害する実質的な効果にも関わらず、今日までに、血管形成の阻害のみによって癌を処置するための、承認され、かつ市販されている薬剤はない。実際に、新生物形成および転移の過程におけるPECAM−1を含む様々な接着分子の特別な役割は知られていない。
患者における癌細胞の転移能を阻害するための方法および関連組成物が、当技術分野で必要とされている。本発明は、この必要を満たし、本分野における当業者により望まれる関連局面を提供する。
本明細書中に言及した引用文献は、本出願の出願日前にそれらが発表されたことについてのためのみ提供する。ここでは、先の発明によってかかる開示内容に先立つ権利がないとの発明者らの容認と解釈されてはならない。本明細書中にて参照されるすべての特許および刊行物は、その開示の全体の内容が本明細書にて機械的または電子的に複製されたかのように、すべての目的のために参照により包含される。
発明の概要
本発明は、PECAM−1と結合する抗体の全身的投与が、一般的にヒトにおいて致命的な多種多様な異なる腫瘍型の転移拡散を抑制するという予期せぬ発見に関係し、この効果は、あるとすれば、血管形成の何らかの阻害とは独立して達成される。この予期せぬ発見は、新規の抗癌処置剤および医薬の作製の基礎を提供し、ここで全身的投与量の抗PECAM抗体または同様の機能的結果を提供する代用物の供給が、患者における新生物細胞の侵襲性および/または転移能を阻害または低下するために患者に投与される。
本発明は、細胞における悪性形質転換を抑制または防止するための方法であって、形質転換された表現型を阻害し、かつ細胞の検出可能な侵襲性および/または転移能を低下するための有効量で全身的に抗PECAM抗体を投与することを含む方法を提供する。1つの態様にて、前記抗PECAM抗体は、非新生物性体細胞に位置するPECAMに結合し得るか、または新生物細胞に存在するPECAMあるいは交差反応性の高分子と結合し得る。
抗PECAM結合種を、新生物を有すると診断された患者に当業者に公知の何らかの様々な手段により接触するか、または導入することができるが、抗PECAM結合剤を全身的に送達することが好ましいことが多い。本発明に関して、抗PECAM結合種には、ヒト化またはヒト配列モノクローナル抗体などの抗体、およびF(ab)2、F(ab’)2、F9ab、F(ab)、Dab、Fv、scFv、Fcまたは少なくとも約1×10Mの親和性でヒトPECAM−1と結合する特性を有する抗体の最小認識単位を含む抗体断片が含まれ得る。他の結合種にはまた、US20030157561A1に記載のタンパク質性の結合多量体、高親和性のペプチドおよび等価体が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様にて、前記抗PECAM結合種は、30Kの直鎖PEGなどのポリ(エチレン)グリコール(PEG)、または、40K、60Kもしくはより大きな分岐鎖PEG部分、またはより大きな直鎖または分岐鎖PEG部分と、単結合または多重結合のいずれかにより共有結合する。
本発明のいくつかの態様にて、全身的に投与された抗PECAM結合種が転移を阻害し得るという本発明者らの発見は、他の抗形質転換/抗癌治療と併用して用いられるだろう。これらの他の治療は、本出願時に公知であり得るか、または本出願の日後に明らかとなり得る。例えば、ヒト化またはヒト配列抗PECAM抗体を、他の治療ポリペプチド、他の治療ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または化学療法剤と併用することができる。1つの代表的な態様では、前記化学療法剤はタキソールである。前記抗PECAM結合種はまた、放射線治療と併用することもできる。放射線治療を構成する電離放射線の型は、X線、γ線、およびマイクロ波を含む群から選択され得る。任意の態様にて、電離放射線は、外部ビーム照射によるか、または放射性核種の投与によりもたらされ得る。前記抗PECAM結合種はまた、遺伝子治療レジメンと共に用いられ得る。
本発明はまた、多くのヒト癌のための処置方法を提供する。その処置方法には、新生物、典型的には癌腫または肉腫または他の固形癌種を有すると診断された患者を、好ましくは皮下または静脈内投与によるか、または脳転移を阻害するために脳内への鞘内投与により送達される全身的投与量の抗PECAM結合種で処置することが含まれる。好ましい変法には、皮下または静脈などの全身的経路によりヒト化またはヒト配列抗PECAMモノクローナル抗体などの抗PECAM結合種の有効投与量を投与することにより、乳癌、肺癌、または結腸癌を有すると診断された患者を処置することが含まれる。
本発明の任意の他の局面にて、適する容器中に抗PECAM結合種の製剤を含む治療キットが提供される。かかるキットは、治療ポリペプチド、治療ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または化学療法剤の製剤をさらに含み得る。かかるキットは、増感剤、新生物−特に肺癌、結腸癌、あるいは乳癌、または様々な黒色腫−を有すると診断されたヒト患者への全身的送達による抗PECAM結合種の投与のための説明書を含み得る。好ましい変法にて、前記キットは、PEG化されるヒト化またはヒト配列抗PECAMモノクローナル抗体を含む。
本発明はまた、少なくとも約1×10−1の親和性でヒトPECAM−1と結合し、かつ他のPECAM関連ポリペプチドに対する特異的高親和性結合を欠く抗体を提供する。かかる抗体は、全身的、頭蓋内、または(例えば、カチオン化によるか、またはリポソームもしくは免疫リポソーム送達による)新生物細胞への標的化送達により、治療的に用いられ得る。
本発明はまた、PECAM−1機能を調整することにより、新生物形成、侵襲性および/または転移を阻害し、かつ血管形成を阻害しない治療薬を提供する;かかる薬剤は、医薬として用いることができる。
本発明は、固形腫瘍を有すると診断された患者であって、その血管形成阻害が弊害をもたらすかもしれない患者、例えば、心筋梗塞、鬱血性心不全、卒中、冠状動脈または大脳血管系のアテローム性動脈硬化症に最近罹患した患者、または損傷もしくは大手術の結果として生じ、かつ循環系の治癒または回復を補助するために血管形成の恩恵を受ける重大な創傷治癒過程にある者などを処置するための方法を提供する。
本発明の変法にて、免疫原性の用量の変性ヒトPECAM−1、または霊長類、マウス、ラット、イヌあるいはブタのPECAM−1タンパク質もしくはその一部分などの非ヒトPCAM−1を、新生物を有すると診断されたヒト患者に対して、典型的にはアジュバントおよび/またはDynavax社またはColey Pharmaceuticals社により開示されたような共有結合あるいは非結合の免疫刺激性ポリヌクレオチドと併用して投与する。本方法にて、前記ヒト患者は、抗体応答を含む免疫応答を起こすことができ、それはこうしなければ寛容である患者自身のPECAM−1タンパク質と交差反応し得る。
本発明の性質および利点のさらなる理解は、本明細書の残りの部分および図面を参照することにより明らかとなるであろう。
本発明の他の目的、特徴、および利点は下記の詳しい説明で明らかになるだろう。しかしながら、詳しい説明および具体的な実施例は、本発明の精神および範囲内の様々な変化および修飾がこの詳しい説明から当業者に明らかになり得るため、本発明の好ましい態様を示すが、説明のためだけに供されると理解されるべきである。
図面の説明
図1Aおよび1Bは、マウスにおける抗体処理の効果を示す。
図2Aおよび2Bは、抗体処理の効果を示す。
図3Aおよび3Bは、マウスにおける抗体処理の効果を示す。
図4Aおよび4Bは、マウスにおける抗体処理の効果を示す。
図5Aおよび5Bは、抗体処理の効果を示す。
好ましい態様の説明
他に定義されない限り、本明細書中に用いられるすべての技術的および化学的用語は、本発明の属する技術分野における当業者に通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載の何らかの方法および材料と同じかまたは等価なものを、本発明の実施または試験に用いることができるが、好ましい方法および材料が記載される。本発明の目的に関して、下記の用語を以下に定義する。
下記の特許文献は参照により本明細書中に含まれる:米国特許第5,968,511号;WO0155178;米国特許第6,639,055号;米国特許第6,133,426号;WO03055516;WO02085405;および、米国特許第6,627,196号−それらの中に記載の方法および材料を包含する。
定義
物について用いられるような、本明細書で用いる用語“天然に存在する”とは、その物を天然において発見することができるという事実を示す。例えば、天然源から単離され得、それらが研究室で人間により意図的に改変されていない、生物(ウイルスを含む)に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、天然に存在する。一般的に、天然に存在するという用語は、種に典型的であり得るように、非病理学的(病気でない)個体に存在するものを示す。
下記の用語は、2個またはそれ以上のポリヌクレオチド間の配列関係を記載するのに用いられる:“参照配列”、“比較ウインドウ(comparison window)”、“配列同一性”、“配列同一性の割合”、および“実質的同一性”。“参照配列”とは、配列比較の基準として用いられる定義された配列である;参照配列は、例えば、図2のポリヌクレオチド配列などの配列表に与えられる全長cDNAまたは遺伝子配列の断片のような、より大きな配列の下位集団であり得るか、または完全なcDNAまたは遺伝子配列を含み得る。一般的に、参照配列は、少なくとも20ヌクレオチド長、しばしば少なくとも25ヌクレオチド長、およびしばしば少なくとも50ヌクレオチド長である。2個のポリヌクレオチドは、それぞれ(1)2個のポリヌクレオチド間で類似の配列(すなわち、完全ポリヌクレオチド配列の一部)を含み得、そして(2)2つのポリヌクレオチド間で相違する配列をさらに含み得るため、2個(またはそれ以上)のポリヌクレオチド間の配列比較は一般的に、配列類似性の領域を同定および比較するために“比較ウインドウ”上で2個のポリヌクレオチドの配列を比較することにより行われる。
本明細書で用いる“比較ウインドウ”は、少なくとも20個の隣接ヌクレオチドの位置の概念的断片を示し、ここでポリヌクレオチド配列は、少なくとも20個の隣接ヌクレオチドの参照配列と比較され得、比較ウインドウにおけるポリヌクレオチド配列の一部は、2個の配列の最適なアライメントのために参照配列(付加または欠失を含まないもの)と比較して20パーセントまたはそれ以下の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。比較ウインドウをアライニングするための配列の最適なアライメントは、SmithおよびWatermanの局所相同性アルゴリズム(1981) Adv. Appl. Math. 2: 482、NeedlemanおよびWunschの相同性アライメントアルゴリズム(1970) J. Mol. Biol. 48: 443、PearsonおよびLipmanの類似法の探求(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 85: 2444、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実行により(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または検査により行われ得、そして様々な方法により得られた最も良いアライメント(すなわち、比較ウインドウ上での最高の相同性割合をもたらす)を選択する。
用語“配列同一性”は、2個のポリヌクレオチド配列が比較ウインドウ上で(すなわち、ヌクレオチド−ヌクレオチド塩基ごとに)同一であることを意味する。用語“配列同一性の割合”を、比較ウインドウ上で2個の最適に整列された配列を比較し、一致した位置の数を得るため同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、UまたはI)が両配列に生じる位置の数を決定し、比較ウインドウ(すなわち、ウインドウサイズ)中で一致する位置の数を位置の全数で割り、そして結果を100倍し、配列同一性の割合を得ることにより計算する。本明細書で用いる用語“実質的同一性”は、ポリヌクレオチド配列の特徴を示し、ここで前記ポリヌクレオチドは、少なくとも20個のヌクレオチド位置の比較ウインドウ上(しばしば少なくとも25−50ヌクレオチドのウインドウ上)で参照配列と比較して少なくとも80%の配列同一性、好ましくは少なくとも85パーセントの同一性およびしばしば90から95パーセントの配列同一性、より通常には少なくとも99パーセントの配列同一性を有する配列を含み、ここで、配列同一性の割合は、参照配列と、比較ウインドウ上で全体で20パーセントまたはそれ以下の参照配列の欠失または付加を含み得るポリヌクレオチド配列を比較することにより計算する。前記参照配列は、より大きな配列の下位集団であり得る。
ポリペプチドについて用いられるような、用語“実質的同一性”は、2個のペプチド配列が規定値のギャップ重量を用いてGAPまたはBESTFITプログラムによるなどして最適に整列されるとき、少なくとも80%の配列同一性、好ましくは少なくとも90パーセントの配列同一性、より好ましくは少なくとも95パーセントまたはそれ以上の配列同一性(例えば、99パーセントの配列同一性)を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換により異なる。
保存的アミノ酸置換とは、類似の側鎖を有する残基の互換性を示す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり;脂肪族−ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、セリンおよびスレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族性側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リシン、アルギニン、およびヒスチジンであり;そして、硫黄含有側鎖を有するアミノ酸は、システインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換基は、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リシン−アルギニン、アラニン−バリン、およびアスパラギン−グルタミンである。
本明細書で用いる用語“断片”は、アミノ末端および/またはカルボキシ末端欠失を有するが、残りのアミノ酸配列は、全長cDNAから推定された配列における対応する位置と同一であるポリペプチドを示す。断片は一般的に、少なくとも14のアミノ酸長、好ましくは少なくとも20のアミノ酸長、通常少なくとも50のアミノ酸長またはそれ以上、天然に存在するポリペプチドの全長までの長さである。
本明細書で用いる用語“薬剤”は、化合物、化合物の混合物、空間的に限局された化合物のアレイ(例えば、VLSIPSペプチドアレイ、ポリヌクレオチドアレイ、および/または組合せ小分子アレイ)、生体高分子、バクテリオファージペプチド提示ライブラリ、バクテリオファージ抗体(例えば、scFv)提示ライブラリ、ポリソームペプチド提示ライブラリ、または細菌、植物、真菌もしくは動物(特に、哺乳動物)の細胞または組織などの生物学的材料から作製された抽出物を示す。薬剤を、以下に記載のスクリーニング分析に付すことにより抗新生物薬、抗炎症薬、またはアポトーシス調節薬としての潜在的活性について評価する。薬剤を、以下に記載のスクリーニング分析に付すことにより特定のタンパク質相互作用阻害剤(すなわち、2個の所定のポリペプチド間の結合相互作用を選択的に阻害するが、細胞生存能を実質的に妨げない薬剤)としての潜在的活性について評価する。
本明細書で用いる用語“タンパク質相互作用阻害剤”は、第一の相互作用ポリペプチドおよび第二の相互作用ポリペプチド間のタンパク質−タンパク質結合を選択的に阻害する薬剤として、本発明の1個またはそれ以上のスクリーニング方法により同定される薬剤を示す。いくつかのタンパク質相互作用阻害剤は、ヒトが使用するための薬剤として治療可能性を有し得、および/または研究室での研究またはバイオプロセス制御のための市販薬として供給され得る。故に、候補薬剤であるタンパク質相互作用阻害剤はさらに、非ヒト動物へのインビボ投与、およびしばしば承認された臨床試験でのヒトへの投与を含む、ヒトおよび動物用薬剤としての使用への適性を予測するために常套的に用いられる分析にて活性について試験される。
本明細書で用いる用語“抗新生物薬”は、ヒトにおける新生物、特に転移性の固形腫瘍型の発症または進行を阻害する機能的特性を有する薬剤である。
本明細書で用いる用語“標識”または“標識した”とは、例えば、放射標識したアミノ酸の挿入、または標識アビジン(例えば、光学的方法または熱量測定法により検出することができる蛍光マーカーまたは酵素活性を含むストレプトアビジン)により検出され得るビオチニル部分のポリペプチドへの結合によるなどの、検出可能マーカーの挿入を示す。ポリペプチドおよび糖タンパク質を標識する様々な方法が当技術分野で公知であり、用いられ得る。ポリペプチドの標識の例には、以下:放射性同位体(例えば、H、14C、35S、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、蛍光ランタニド)、酵素標識(例えば、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、ビオチニル基、二次レポーターにより認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体のための結合部位、転写活性ポリペプチド、金属結合ドメイン、エピトープタグ)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様にて、標識は、可能性のある立体障害を減ずるために様々な長さのスペースアームにより結合される。
本明細書で用いる“実質的に純粋”は、目的種が優先的に存在する種であることを意味し(すなわち、モルを基準として、それは組成物中のいずれかの他の個々の高分子種よりも多く存在する)、そして好ましくは実質的に純粋な画分は、前記目的種が存在するすべての高分子種の少なくとも約50%(モルを基準に)を含む組成物である。一般に、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在するすべての高分子種の約80から90%以上を構成するだろう。最も好ましくは、前記目的種は、前記組成物が本質的に単一の高分子種からなる、本質的に均一となる(混入種が、常套的な検出方法により組成物中に検出されない)まで精製される。溶媒種、小分子(<500ダルトン)、および元素イオン種は、高分子種とは見なされない。
本明細書で用いる“正常な血液”または“正常なヒト血液”は、活動性新生物疾患あるいはリンパ球増殖の他の障害、または新生物疾患の発症に関する確認された素因を有さない健常なヒト個体に由来する血液を示す。同様に、“正常細胞”、“正常細胞試料”、“正常組織”および“正常リンパ節”は、活動性新生物疾患または他のリンパ球増殖性疾患を有さない健康なヒト個体から得られたそれぞれの試料を示す。
本明細書で用いる用語“生理的条件”は、生存生物に適合し、および/または生存培養酵母細胞または哺乳動物細胞の細胞内に一般的に存在する温度、pH、イオン強度、粘度などの生化学的パラメータを示す。例えば、典型的な実験培養条件下で増殖する酵母細胞の細胞内条件は、生理的条件である。インビトロ転写カクテルに適するインビトロ反応条件は一般に、生理的条件である。一般的に、インビトロ生理的条件には、50−200mMのNaClまたはKCl、pH6.5−8.5、20−45℃および0.001−10mMの二価陽イオン(例えば、Mg++、Ca++)が含まれる;好ましくは、約150mMのNaClまたはKCl、pH7.2−7.6、5mMの二価陽イオン、およびしばしば0.01−1.0%非特異的タンパク質(例えば、BSA)が含まれる。非イオン性界面活性剤(トウィーン、NP−40、トライトンX−100)はしばしば、通常約0.001から2%、典型的に0.05−0.2%(v/v)存在し得る。特定の水性条件は、常套法に従い当業者が選択することができる。一般的な手引きに関して、以下の緩衝水性条件を適用することができる:10−250mM NaCl、5−50mMトリスHCl、pH5−8、所望により二価陽イオン(複数)および/または金属キレート剤および/または非イオン性界面活性剤および/または膜画分および/または消泡剤および/またはシンチラントを加えて良い。
本明細書で用いる用語“相互作用ポリペプチド断片”および“相互作用ポリペプチド配列”は、適する結合条件下にて第二のハイブリッドタンパク質の一部と特異的な結合相互作用を形成し得るハイブリッドタンパク質の一部を示す。一般的に、第一のハイブリッドタンパク質の一部は、第二のハイブリッドタンパク質の一部と選択的に結合し、第一および第二のハイブリッドタンパク質を含むヘテロ二量体またはより高次のヘテロ多量体を形成する;各ハイブリッドタンパク質の結合部分は、相互作用ポリペプチド断片と称される。一般的に、相互作用ポリペプチドは、適する生理的条件下で、少なくとも約1×10−1、通常少なくとも1×10−1、一般的には少なくとも1×10−1、好ましくは少なくとも1×10−1から1×10−1またはそれ以上の解離定数(K)を有するヘテロ二量体を形成し得る。
本明細書で用いる用語“多量体”は、二量体およびより高次の複合体(三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体など)を含む。“ホモ多量体”は、同じサブユニット種を含む複合体を示す。“ヘテロ多量体”は、2以上のサブユニット種を含む複合体を示す。
本明細書で用いる用語“組換え”は、タンパク質をコードする遺伝子が、既知の組換えDNA技術によりクローニングされる、組換えDNA技術により作製されたPECAM−1を示す。例えば、PECAM−1についてのヒト遺伝子は、細菌プラスミドおよび適する宿主を形質転換するために用いられるプラスミドなどの適するDNAベクターに挿入され得る。故に、前記遺伝子は、組換えタンパク質を製造するために宿主にて発現される。形質転換された宿主は、哺乳動物、酵母、アスペルギルス(Aspergillus)および昆虫細胞を含む、原核または真核であり得る。
“抗体”(Ab)および“免疫グロブリン”(Ig)は、同じ構造的特徴を有する糖タンパク質である。抗体は、特定の抗原に対して結合特異性を示すが、免疫グロブリンは、抗体および他の抗体様分子の両方を含み抗原特異性を欠く。後者の種類のポリペプチドは、例えば、リンパ系で低レベル、かつ骨髄腫で高レベルで産される。用語“抗体”は、広義の意味で用いられ、特に無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2個の無傷の抗体から形成される多重特異的抗体(例えば、二重特異的抗体)、および、それらが所望の生物学的活性を示す限りは抗体断片を含むが、これらに限定されない。
“天然の抗体”および“天然の免疫グロブリン”は通常、2個の同じ軽鎖(L)および2個の同じ重鎖(H)を含む、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。それぞれの軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合により重鎖と結合しているが、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンのイソ型の重鎖によって変わる。重鎖および軽鎖のそれぞれはまた、規則的な間隔の鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、一方の端の可変ドメイン(VH)の後に多数の定常ドメインを有する。各軽鎖は、一方の末端に可変ドメイン(VL)およびその他方の末端に定常ドメインを有する;前記軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第一定常ドメインと整列され、前記軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列される。特定のアミノ酸残基は、軽鎖および重鎖可変ドメイン間の接点を形成すると考えられている。
用語“可変”とは、可変ドメインの任意の部分が抗体間の配列で広範に異なり、その特定の抗原について各特定の抗体の結合および特異性に用いられるという事実を示す。しかしながら、その可変性は、抗体の可変ドメイン中に均一に分散されない。それは、軽鎖および重鎖可変ドメイン中の相補性決定領域(CDR)または超可変領域とも称される3つの断片に関する。可変ドメインのより高度な保存部分は、フレームワーク(FR)領域と称される。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、3つのCDRでつながっている大きなβシート構造をとる4個のFR領域を含み、それはループ結合を形成し、そしていくつかの場合にはβシート構造の一部を形成する。各鎖におけるCDRは、FR領域により他の鎖からのCDRと互いに接近してつながり、抗体の抗原結合部位の形成に貢献する(Kabat et al., NIH Publ. No. 91-3242, Vol. I, pages 647-669 (1991)を参照のこと)。定常ドメインは、抗原への抗体の結合に直接関与しないが、抗体依存性の細胞毒性における抗体の関与などの様々なエフェクター機能を示す。
本明細書で用いる用語“超可変領域”は、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を示す。超可変領域は、“相補性決定領域”または“CDR”に由来するアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメインの残基24−34(L1)、50−56(L2)および89−97(L3)、ならびに重鎖可変ドメインの31−35(H1)、50−65(H2)および95−102(H3);Kabat et al.,Sequence of proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institute of Health, Bethesda, Md. [1991])、および/または“超可変ループ”に由来するそれらの残基(すなわち、軽鎖可変ドメインの残基26−32(L1)、50−52(L2)および91−96(L3)、ならびに重鎖可変ドメインの26−32(H1)、53−55(H2)および96−101(H3);Clothia and Lesk, J. Mol. Biol., 196:901-917 [1987])を含む。“フレームワーク”または“FR”残基は、本明細書に定義のような超可変領域残基以外のそれらの可変ドメイン残基である。
“抗体断片”は、無傷の抗体の一部、好ましくは無傷の抗体の抗原結合または可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)、およびFv断片;二重特異性抗体(diabody);直鎖抗体(Zapata et al., protein Eng., 8(10): 1057-1062 [1995]);単鎖抗体分子;および、抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれる。
抗体のパパイン消化は、2個の同一の抗原結合断片、いわゆる“Fab”断片(それぞれ、単一の抗原結合部位を有する)および残りの“Fc”断片(その名称は、すぐに結晶化するその能力を示す)を産する。パパイン処理は、2個の抗原結合部位を有し、抗原を架橋する能力を依然有するF(ab’)断片を産する。
“Fv”は、完全な抗原認識部位および抗原結合部位を含む最小抗体断片である。この領域は、強い、非共有結合での1個の重鎖および1個の軽鎖可変ドメインの二量体からなる。それは、この構造中、それぞれの可変ドメインの3個のCDRがV−V二量体の表面上の抗原結合部位を定義するために相互作用する。合わせて、6個のCDRが、抗体に対する抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(または、抗原に特異的な3個のCDRのみを含むFvの半分)でも、全体の結合部位よりも低い親和性ではあるが、抗原を認識および結合する能力を有する。
Fab断片はまた、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第一の定常ドメイン(CH1)を含む。Fab断片は、抗体のヒンジ領域由来の1個またはそれ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に少しの残基を付加することにより、Fab’断片とは異なる。Fab’−SHは、本明細書中、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を生じるFab’を意味する。F(ab’)2抗体断片は本来、それらの間にヒンジシステインを有する一対のFab’断片として製造された。抗体断片の他の化学結合もまた公知である。
脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の“軽鎖”は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、2個の明確に異なる型のうちの1つ、いわゆるκ(.kappa.)およびλ(.lambda.)を表し得る。
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列により、免疫グロブリンは、異なるクラスを示し得る。免疫グロブリンには5個の主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのうちいくつかは、さらにサブクラス(イソ型)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgA2に分けられる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γおよびμと称される。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元構造は公知である。
本明細書に用いるような用語“モノクローナル抗体”は、実質的に相同性の抗体集団から得られる抗体、すなわち前記集団を含む個々の抗体が、少量で存在し得る天然に存在する変異の可能性を除いて同一であるものを示す。モノクローナル抗体は、単一の抗原部位に対する高い特異性を有する。さらに、典型的には、異なる決定基(エピトープ)に向けられた異なる抗体を含む通常の(ポリクローナル)抗体製造とは対照的に、それぞれのモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して向けられる。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、有利なことに、他の免疫グロブリンが混入していない、ハイブリドーマ培養により合成される。その修飾“モノクローナル”は、実質的に相同性の抗体の集団から得られるような抗体の特性を示し、何らかの特定の方法による抗体の製造を要すると解釈されてはならない。例えば、本発明に用いられるモノクローナル抗体は、最初にKohler et al., Nature 256:495 [1975]に記載されたハイブリドーマ法により製造され得るか、または組換えDNA法により製造され得る(例えば、米国特許番号第4,816,567号を参照のこと)。前記“モノクローナル抗体”はまた、例えば、Clackson et al., Nature, 352:624-628 [1991] and Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)に記載の技術を用いてファージ抗体ライブラリから単離され得る。
本明細書中のモノクローナル抗体は特に、重鎖および/または軽鎖の一部は、特定の種に由来する抗体または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同じかまたは相同性であるが、残りの鎖(複数可)は、それらが所望の生物学的活性を示す限りは、他の種に由来する抗体または他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体、ならびにかかる抗体の断片における対応する配列と同じかまたは相同性である“キメラ”抗体(免疫グロブリン)を含む(米国特許番号第4,816,567号; Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 [1984])。
非ヒト(例えば、マウス)抗体の“ヒト化”形態は、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖または非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むその断片(抗体のFv、Fab、Fab’、F(ab’)または他の抗原結合配列)である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、受容者のCDR由来の残基が、所望の特異性、親和性および可能性を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(供与体抗体)のCDR由来の残基により置換されるヒト免疫グロブリン(受容体抗体)である。いくつかの例にて、ヒト免疫グロブリンのFv FR残基は、対応する非ヒト残基により置換される。さらに、ヒト化抗体は、受容体抗体にも、外来CDRまたはフレームワーク配列にも見られない残基を含み得る。これらの修飾体は、さらなる改良により作製され、抗体性能を最大化する。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み得、ここで非ヒト免疫グロブリンのそれに対応するCDR領域のすべてまたは実質的にすべておよびFR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列のそれである。前記ヒト化抗体はまた、最適には、少なくとも免疫グロブリン定常部位(Fe)の一部、一般的にはヒト免疫グロブリンのそれを含み得る。さらに詳細には、Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986); Reichmann et al., Nature, 332:323-329 [1988];および、Presta, Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596 (1992)を参照のこと。ヒト化抗体には、抗体の抗原結合領域がマカクザルを所望の抗原で免疫化することにより産される抗体から誘導される、PRIMATIZED.TM.抗体が含まれる。
“単鎖Fv”または“sFv”抗体断片は、抗体のVおよびVドメインを含み、ここでこれらのドメインは、一本のポリペプチド鎖に存在する。好ましくは、前記Fvポリペプチドはさらに、sFvが抗原結合のための所望の構造を形成するのを可能とするVおよびVドメイン間のポリペプチドリンカーを含む。sFvのレビューに関しては、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照のこと。
用語“二重特異性抗体”は、2個の抗原結合部位を有する小さな抗体断片を示し、その断片は、同じポリペプチド鎖中に軽鎖可変ドメイン(V)と連結した重鎖可変ドメイン(V)を含む(V−V)。同じ鎖上の2個のドメイン間の対形成を可能とするには短すぎるリンカーを用いることにより、そのドメインは別の鎖の相補的なドメインとの対形成を強いられ、2個の抗原結合部位が形成される。二重特異性抗体は、例えば、EP404,097;WO93/11161;およびHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)に、より十分に記載される。
“単離された”抗体は、その自然環境の成分から同定および分離および/または回収されたものである。その自然環境の混入成分は、抗体の診断または治療的使用を妨げ得る物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質が含まれ得る。好ましい態様にて、前記抗体を、(1)Lowry法により測定されるように、抗体の95重量%以上、最も好ましくは99重量%以上まで、(2)spinning cup配列決定装置の使用によりN末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、または(3)クマシーブルーもしくは好ましくは銀染色を用いて、還元または非還元条件下でのSDS−PAGEにより均質性となるまで精製することができる。抗体の自然環境の少なくとも1つの要素が存在しないため、単離された抗体は、組換え細胞内の原位置のものも含む。しかしながら、通常、単離された抗体は、少なくとも1回の精製工程により製造されるだろう。
発明の詳しい説明
以下に用いる学名および下記の細胞培養、分子遺伝学および核酸化学ならびにハイブリダイゼーションの実験法は、当技術分野で公知かつ通常用いられる方法を含み得る。標準技術を、組換え核酸法、ポリヌクレオチド合成法、ならびに微生物培養および形質転換法(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)に用いる。前記技術および方法を通常、当技術分野における常套法および本明細書の全体を通して供される様々な一般的参考文献(一般的には、Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed. (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.を参照のこと。それらは参照により本明細書に含まれる)に従い行う。
オリゴヌクレオチドを、製造業者により提供される説明書に従い、Applied Bio Systemsのオリゴヌクレオチド合成器で合成することができる。
PCR増幅のための方法は、当技術分野にて記載される(PCT Technology:Principles and Applications for DNA Amplification ed. HA Erlich, Freeman Press, New York, NY (1992); PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications, eds. Innis, Gelfland, Snisky, and White, Academic Press, San Diego, CA (1990);Mattila et al. (1991) Nucleic Acids Res. 19: 4967; Eckert, K.A. and Kunkel, T.A. (1991);PCR Methods and Applications 1: 17; PCR, eds. McPherson, Quirkes, and Taylor, IRL Press, Oxford;および、米国特許番号第4,683,202号。それらは参照により本明細書中に含まれる。)。
α−PECAM抗体の製造および利用
天然のヒトPECAM−1タンパク質、その断片、またはその類似体を、特定の抗体の製造を目的として動物を免疫するために用いることができる。これらの抗体には、ポリクローナル抗血清が含まれ得るか、またはハイブリドーマ細胞により製造されるモノクローナル抗体が含まれ得る。抗体を製造するための一般法については、Antibodies:A Laboratory Manual, (1988) E. Harlow and D. Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY(参照により本明細書に包含される)を参照のこと。
例えば、限定するものではないが、組換え的に作製されたPECAM−1断片を、免疫応答をもたらすための当業者に公知の免疫プロトコルに従い、アジュバントと共にマウスに注射することができる。典型的に、ポリペプチド長に依存して変化するが、少なくとも約1−50μgのPECAM−1断片または類似体を最初の免疫化に用いる。組換え的に製造されたPECAM−1ポリペプチドとは別にまたは併用して、PECAM−1配列を有する化学合成ペプチドを、本質的に図1(a)に示される配列を有する天然のPECAM−1ポリペプチド、天然のヒトPECAM−1ポリペプチド、PECAM−1エピトープを含むポリペプチド、またはPECAM−1融合タンパク質などのPECAM−1タンパク質と結合する抗体を作製するために抗原として用いることができる。少なくとも1×10−1の親和性で組換え断片と結合する免疫グロブリンを、抗血清として免疫された動物から採取することができ、免疫親和性クロマトグラフィーまたは他の手段によりさらに精製することができる。加えて、脾臓細胞を免疫された動物(典型的にはラットまたはマウス)から採取し、骨髄腫細胞と融合させ、ひとそろいの抗体分泌ハイブリドーマ細胞を作製する。前記ひとそろいのハイブリドーマを、少なくとも1×10−1の親和性で組換え的に製造されたPECAM−1ポリペプチド(または化学的に合成されたPECAM−1ポリペプチド)と結合する免疫グロブリンを分泌するクローンについてスクリーニングすることができる。マウスおよびラット以外の動物を、抗体を作製するために用いることができる;例えば、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、およびトリもまた、PECAM−1タンパク質と反応する抗体を作製するために用いることができる。実質的にヒト抗体を製造するための能力を有する形質転換マウスもまた、α−PECAM−1抗血清の供給源としておよび/またはモノクローナル分泌ハイブリドーマを作製するために免疫し使用することができる。
バクテリオファージ抗体提示ライブラリもまた、全長PECAM−1タンパク質、PECAM−1断片、またはPECAM−1エピトープ(一般的に、少なくとも3−5個の隣接アミノ酸)を含むPECAM−1ポリペプチド配列を含む融合タンパク質などのPECAM−1ポリペプチドと結合するためにスクリーニングすることができる。一般的に、かかるPECAM−1ペプチドおよび融合タンパク質部分は、PECAM−1の少なくとも約3から5個の隣接アミノ酸、しばしばPECAM−1の少なくとも7個の隣接アミノ酸、通常PECAM−1の少なくとも10個の隣接アミノ酸、そして最も通常には少なくとも14個の隣接アミノ酸のPECAM−1配列を含む抗体ライブラリをスクリーニングするためのPECAM−1配列からなる。
抗体の組合せライブラリは、バクテリオファージプラークとしてかまたは溶原性のコロニーとしてスクリーニングすることができるバクテリオファージλ発現系で作製されている(Huseら、(1989) Science 246: 1275; Caton and Koprowski (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 87: 6450; Mullinaxら、(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 87: 8095; Perssonら、(1991) Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 88: 2432)。バクテリオファージ抗体提示ライブラリおよびλファージ発現ライブラリの様々な態様が記載されている(Kangら、(1991) Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 88: 4363; Clacksonら、(1991) Nature 352: 624; McCaffertyら、(1990) Nature 348: 552; Burtonら、(1991) Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 88: 10134; Hoogenboomら、(1991) Nucleic Acids Res. 19: 4133; Changら、(1991) J. Immunol. 147: 3610; Breitlingら、(1991) Gene 104: 147; Marksら、(1991) J. Mol. Biol. 222: 581; Barbasら、(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 89: 4457; HawkinsおよびWinter (1992) J. Immunol. 22: 867; Marksら、(1992) Biotechnology 10: 779; Marksら、(1992) J. Biol. Chem. 267: 16007; Lowmanら、(1991) Biochemistry 30: 10832; Lernerら、(1992) Science 258: 1313, incorporated herein by reference)。典型的には、バクテリオファージ抗体提示ライブラリを、(例えば、親和性クロマトグラフィーにより反応性ファージを豊富にするためにクロマトグラフィー樹脂に共有結合することにより)固定化され、および/または(例えば、プラークまたはコロニーリフトをスクリーニングするために)標識されるPECAM−1ポリペプチドでスクリーニングする。
免疫原として有用なPECAM−1ポリペプチドは、試料中のα−PECAM−1抗体の診断的検出のため、(例えば、標準化競合ELISAによる)試料中のPECAM−1タンパク質の診断的検出および定量のため、またはバクテリオファージ抗体提示ライブラリのスクリーニングのために、実質的に純粋な形態、すなわち、典型的に約50パーセント(w/w)またはそれ以上の純度、実質的に妨害タンパク質および混入物質のない形態で適当に得られる。好ましくは、これらのポリペプチドは、少なくとも80%(w/w)の純度、より好ましくは少なくとも約95パーセント(w/w)の純度で、実質的にヒト、マウスの他のタンパク質、または他の混入物質がなく単離または合成される。
免疫交差反応性タンパク質の同定などのこれらの抗体のいくつかの適用に関しては、前記所望の抗血清またはモノクローナル抗体(複数可)は、単一特異性ではない。これらの例では、抗原としてPECAM−1の合成断片または組換え断片を使用することが、完全な天然タンパク質を用いるよりも好ましいかもしれない。かかる定義されたアミノ末端およびカルボキシ末端を有する組換えまたは合成断片の製造は、PECAM−1により供される。
抗血清がβ−ガラクトシダーゼまたはグルタチオンS−トランスフェラーゼと融合したPECAM−1免疫原性エピトープを含む融合タンパク質などのPECAM−1融合ポリペプチドをもたらす場合、前記抗血清は好ましくは、免疫原として働く融合タンパク質の非PECAM−1部分と反応する(すなわち、特異的に結合する)抗体の抗血清を枯渇させるために、非PECAM−1融合パートナー(例えば、β−ガラクトシダーゼまたはグルタチオンS−トランスフェラーゼ)と共に前吸着される。ヒトおよび/またはマウスのPECAM−1タンパク質と結合するモノクローナルまたはポリクローナル抗体を、患者のリンパ球試料から得られた変性タンパク質のウエスタンブロット(例えば、SDS−PAGEのニトロセルロースブロット)などの、試料中のヒトまたはマウスPECAM−1ポリペプチドの存在を検出するために用いることができる。好ましくは定量的検出を、濃度測定スキャン(denistometric scanning)およびウエスタンブロットのシグナル統合(signal integration)などにより行う。モノクローナルまたはポリクローナル抗体は、変性されたPECAM−1エピトープと結合し得、当技術分野で公知の方法により標識された第二の抗体または標識された黄色ブドウ球菌タンパク質Aを用いて視覚的に、または他の光学的方法により同定され得る。
かかる抗体の1つの使用は、新規のPECAM−1結合因子またはPECAM−1関連タンパク質の候補である、構造的に関連した免疫交差反応性タンパク質をコードするcDNA挿入を含むクローンの同定のために、好ましくは様々な組織からのヒトまたはマウスmRNAに由来するcDNAを含むcDNA発現ライブラリをスクリーニングすることである。cDNA発現ライブラリのかかるスクリーニングは、当技術分野で公知であり、さらにYoung et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80:1194-1198 (1983)(それは参照により本明細書中に含まれる)、ならびに他の刊行物に記載されている。かかる抗体の他の使用は、抗体を作製するために用いられる天然のPECAM−1タンパク質または対応するPECAM−1断片(例えば、機能ドメイン;PECAM−1相互作用タンパク質結合ドメイン)と構造的または進化的に関連する免疫交差反応性タンパク質を同定および/または精製することである。本発明の抗PECAM−1抗体を、細胞または細胞集団、例えば、患者から得られた細胞移植片(例えば、リンパ球試料)中のPECAM−1タンパク質のレベルを測定するために用いることができる。抗PECAM−1抗体は、限定する物ではないが、以下を含む様々な方法により対応するタンパク質レベルを測定するために用いられ得る:(1)細胞抽出物の標準化ELISA、(2)細胞抽出物の免疫沈降、次に、免疫沈降物のポリアクリルアミドゲル電気泳動、そしてPECAM−1に対応するバンド(複数)の定量、および(3)抗PECAM−1抗体での免疫組織化学的染色および標識された二次抗体での検出によるインサイチュウ検出。細胞または細胞集団におけるPECAM−1と対照ハウスキーピングタンパク質の比の測定は、細胞または細胞集団の侵襲および転移状態についての情報を与える。
本目的のために利用できる抗血清を、常套方法により得ることができる。1つの例示的方法は、ウサギなどの哺乳動物の免疫に関し、それはPECAM−1に対するポリクローナル抗体の形成を誘導する。モノクローナル抗体はまた、既に免疫されたハムスターからも精製される。この抗体を、PECAM−1タンパク質の存在およびレベルを検出するために用いることができる。
標準的分析ならびに放射免疫測定または酵素免疫測定であるマーカーを用いる分析と共に、PECAM−1およびその結合物の免疫学的検出のために前記タンパク質を用いることも可能である。
PECAM−1の検出および測定は、著しい診断的重要性を有する。例えば、侵襲および転移に好都合なPECAM−1の減少の検出は、癌治療および肥大の制御において有利であり得る。転移および侵襲に好都合なタンパク質の検出または測定は、癌、神経変性疾患、および虚血性細胞死の検出および診断に有益であり得る。よって、これらのタンパク質およびそれらの抗体を、疾患の経過の観察、検査または検出のためにマーカーとして用いることができる。
PECAM−1とPECAM−1−相互作用ポリペプチドの架橋複合体を免疫原として用いることができ、その結果物である抗血清を、残った抗血清が、複合体に存在するが単量体に存在しない立体構造エピトープ(例えば、複合体特異的エピトープ)と結合する抗体を含むように、PECAM−1およびPECAM−1−相互作用ポリペプチドで前もって吸着させる。複合体特異的ハイブリドーマおよびモノクローナル抗体を同じように作製することができる。かかる抗体を、特定の複合体の存在を診断的に検出および定量し、そしてこのデータを疾患または細胞型などと関連付けるために用いることができる。
ヒト化非ヒト抗体についての方法は、当技術分野にてよく知られている。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒトである起源からそれに導入される1個またはそれ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、“外来”残基と称され、それは典型的に、“外来”可変ドメインから選ばれる。ヒト化は、本質的に、Winterおよび共同研究者らの[Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature, 332:323-327 (1988); Verhoeyen et al. Science 239:1534-1536 (1988)]に記載の方法に従い、げっ歯類動物のCDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置換することにより行うことができる。従って、かかる“ヒト化”抗体は、キメラ抗体(米国特許番号第4,816,567号)であり、ここで実質的に無傷のヒト可変ドメイン以外は、非ヒト種に由来する対応する配列により置換されている。実際に、ヒト化抗体は典型的には、いくつかのCDR残基および可能性のあるいくつかのFR残基が、げっ歯類動物抗体の類似の部位に由来する残基により置換されるヒト抗体である。
ヒト抗体を、ファージ提示ライブラリを含む当技術分野で公知の様々な技術を用いて製造することもできる[Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol. 227:381 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol. 222:581 (1991)]。ColeらおよびBoernerらの技術もまた、ヒトモノクローナル抗体の製造に利用することができる(Cole et al., Monoclonal Antibodied and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p.77 (1985) and Boerner et al., J. Immunol., 147(1):86-95 (1991))。同様に、ヒト抗体を、内生の免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは完全に不活性化されている形質転換動物、例えば、マウスにヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することにより作製することができる。攻撃により、遺伝子再構成、会合、および抗体レパートリーを含むすべての点でヒトに見られるものと非常に似ているヒト抗体製造が観察される。本方法は、例えば、米国特許番号第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,661,016号、および以下の科学的文献: Marks et al., Bio/Technology, 10:779-783 (1992); Lonberg et al., Nature, 368:856-859 (1994); Morrison, Nature, 368:812-13 (1994); Fishwild et al., Nature Biotechnology, 14:845-51 (1996); Neuberger, Nature Biotechnology, 14:826 (1996); Lonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol., 13:65-93 (1995)に記載される。
抗体の治療用製剤を、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、所望の純度を有する抗体と所望により薬学的に許容される担体、賦形剤または安定化剤を混合することにより貯蔵用に製造する(Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A. ed. [1980])。許容される担体、賦形剤、または安定化剤は、用いる投与量および濃度で受容者に非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;および、m−クレゾールなど);低分子量(約10残基以下)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリシンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖;塩形成カウンターナトリウムなどのイオン;金属複合体(例えば、Znタンパク質複合体);および/またはTWEEN.TM.、PLURONICS.TM.またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。
本発明の抗PECAM結合種を、癌患者に対して、他の化学療法剤および放射線治療増感剤と併用投与することができる。
以下の実施例は、本発明を例示するものであるが、それに限定されるものではない。本明細書中に記載されるすべての%は、他に記載のない限り重量に基づく。すべてのタンパク質分子量は、他に記載のない限り、平均分子量に基づく。
本発明の上記の好ましい態様は、例示および説明を目的として存在している。それらは、包括的であることまたは記載された正確な形態に本発明を限定することを目的とせず、そして多くの改良および変形が上記の教示に照らして可能である。
当業者に明らかであり得るかかる改良および変形は、本発明の範囲内にあることが意図される。
実施例
材料および方法;
6−8週齢の雌マウスを、すべての研究に用いた。C57B1/6およびBalbCマウスをSimonson Labs(Gilroy, CA)から購入し、Nu/NuマウスをCharles Riverから購入した。腫瘍細胞を、尾静脈注射により接種した。B16−F10マウス黒色腫腫瘍およびルイス肺癌−高転移性(LLC−HM)肺癌モデルについて、各C57B1/6マウスに200μlの培養培地に懸濁した25,000の腫瘍細胞を投与した。4T1マウス乳癌モデルおよびCT26マウス結腸癌モデルについて、各Balb/Cマウスに200μ1の培養培地に懸濁した50,000の腫瘍細胞を投与した。Lox細胞ヒト黒色腫異種移植モデルについて、Nu/Nuマウスに、2回の尾静脈注射により培養培地中全量250万のLox細胞を投与した。初めの注射は朝に行い、次の注射は4時間後に行った。各注射には、300μlの培養培地中に125万の細胞が含まれる。
第一セットの実験に関して、8匹のマウスの群に、0日目に尾静脈注射により25,000のB16−F10腫瘍細胞を供し、その後以下のスケジュールで、ラット抗マウス抗PECAM−1(mAb390)(Dr. H. Delisser, University of Pennsylvaniaにより製造された)またはラットIgG2(a)イソ型対照抗体(Sigma)どちらかの200μgを、投与した。1つの群のマウスには、ラット抗マウス抗PECAM−1(mAb390)またはラットIgG2(a)イソ型対照抗体どちらかのそれぞれ200μgの5回の投与を0日目(腫瘍細胞注射直後)に投与し始め、その後1、3、6および8日目に投与した。さらに、1つの群のマウスには、ラット抗マウス抗PECAM−l(mAb390)またはラットIgG2(a)イソ型対照抗体どちらかの200μgの5回の投与まず腫瘍細胞注射後7日目に投与し、その後、8、10、13および15日目に投与した。CT26、4T1 B16およびLox細胞を担持するマウスを、腫瘍細胞注入の20、22、23および28日後にそれぞれ殺した。

それぞれの場合に、各群からのすべてのマウスを、指標動物が重症かまたは死亡したように見えたときに殺し、かなりの数の肺腫瘍が、殺して解剖された肺の分析により報告された。各マウスからの肺を解剖により取り出し、その後計量した。その後、その肺をB16−F10黒色腫を担持するマウスに5%緩衝化ホルマリンと一緒に気管内注入した。その後、すべての他の腫瘍担持マウス(4T1、CT26、LLC−HMおよびLox腫瘍モデル)について、その肺を墨汁を含む固定液と一緒に気管内注入した。その後、すべての肺試料を、5%緩衝化ホルマリン(50%の10%緩衝ホルマリン(Fisher)および50%PBS)中で固定した。肺腫瘍を、観察者にはそれらがどの群に由来するかを伏せて、解剖顕微鏡下で計数した。様々な群間の可能性のある有意な相違を、対応のない、両側スチューデントのt検定を用いて評価した。
その後、前記肺を以下の実験に付した。有糸分裂およびアポトーシス数を、慣用の光学顕微鏡を用いて4ミクロンのヘマトキシリンおよびエオシンで染色したスライドで計数した。有糸分裂およびアポトーシス数の実数は、10個の最も大きな小塊から得られた。アポトーシス体および有糸分裂数は、既述の形態的基準により計数した(1、2)。アポトーシス率および有糸分裂率を、腫瘍細胞性の程度に基づき計算し、そして1000個の細胞当たりのアポトーシスまたは有糸分裂数の数として現した。切断された、アポトーシスDNA断片(TUNEL)のインサイチュウ検出を、製造業者の説明書に従いTdT−FragEL検出キット(Oncogene Science社)を用いて行った。標識された細胞の頻度を、領域内の少なくとも1,000個の細胞を最大数のTdT標識された核を数えることにより計算した。マトリゲル分析およびボイデンテャンバー分析を、既報(3)のように行った。アポトーシス、有糸分裂、血管形成および病理組織のすべての分析は、評価される標本の識別を隠された研究員により行われた。評価された様々な腫瘍細胞系のPECAM−1の発現を、FACS分析により行った。
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抗転移性腫瘍研究の結果:
様々な腫瘍細胞系に対する抗PECAM−1抗体の結合を試験した。
マウスB16−F10黒色腫細胞、マウス4T1乳癌細胞およびマウスルイス肺癌種−高転移性(LLC−HM)細胞に対する抗PECAM−1抗体の結合を評価した。
PECAM−1発現はない(これらの細胞型のいずれかに対する抗PECAM−1抗体の特異的結合は、検出されなかった(データ不掲載))。マウスCT26結腸癌腫瘍細胞およびヒトLOX黒色腫細胞におけるPECAM−1発現の分析は、まだ結果が出ていない。
B16−F10黒色腫の転移性進行における抗PECAM−1の効果。発明者らはまず、5回の、抗PECAM−1またはIgGイソ型対照抗体のどちらかの200μgの静脈投与を、腫瘍注入の日(0日目)または腫瘍細胞注入後7日(7日目)のどちらかに処理を開始して、可能性のある抗腫瘍効果を比較した。0日目または7日目のどちらかに開始したIgGイソ型対照抗体の注射、ならびに0日目に開始した抗PECAM−1抗体の注射は、非処置の腫瘍担持対照マウスと比較したとき、全肺重量(全体の転移性負荷の指標)または転移性肺腫瘍の全数のどちらかに効果を有しなかった。0日目に開始された抗PECAM抗体治療によりもたらされた抗腫瘍効果がないことは、局所的に接種された皮下B16黒色腫腫瘍に対する抗PECAM抗体のこの投与量およびスケジュールを試験する先の研究結果と対照的である。この先の研究にて、B16黒色腫腫瘍の局所的皮下注射としての、5回の、同日(0日目)に開始した同じ抗PECAM−1抗体の200μgの腹腔内投与は、かなりの抗腫瘍活性をもたらし、局所的腫瘍増殖を著しく減少させ、ならびに腫瘍血管形成をかなり減少させた(Zhou et al. Angiogenesis 3: 181−188, 1999)。対照的に、発明者らの研究は、0日目に開始したこの同じ抗PECAM−l抗体の注射がB16黒色腫肺転移に対して抗腫瘍活性を示さないことを証明した。しかしながら、発明者らは対照マウスと比較したとき、腫瘍細胞注入後7日目に始めた抗PECAM−1抗体の静脈注射が、転移性B16黒色腫腫瘍に対して全肺重量(p<0.005)および転移性B16−F10黒色腫肺腫瘍の全体数(p<0.0001)の両方を有意に減少させるといった高い効果を示すことを発見した(図1Aおよび1B)。故に、局所腫瘍に対してIP投与された抗PECAM抗体を用いて得られた抗腫瘍結果は、転移性腫瘍に対して静脈注射された抗PECAM抗体を用いて得られた結果とは実質的に異なり得る。
次に、発明者らは、B16−F10細胞のIV注射後7日に開始された、抗PECAM−1抗体または前記イソ型対照のどちらかの効果を再び比較して、追跡実験でこれらの結果を繰り返すのを試みた。発明者らは、イソ型対照抗体の同じスケジュールおよび投与で処理したB16−F10担持マウスと比較したとき、全肺重量(p<0.05)および肺腫瘍の全体数(p<0.0001)の両方が有意に減少することを発見した(図2Aおよび2B)。(発明者らは、全肺重量および肺腫瘍の全体数がイソ型対照抗体で処理したマウスおよび非処理マウスで相違のないことを上記に示したため、すべての後の実験で対照としてイソ型対照抗体処理マウスを用いた(図1Aおよび1Bを参照のこと))。腫瘍細胞注入後7日目に開始した抗PECAM抗体治療は、再び、上記の実験1に見られるような、全体の腫瘍組織量および肺転移腫瘍の全体数を有意に減少させた。この同じ抗PECAM抗体の腹腔内投与は、皮下に接種したB16黒色腫腫瘍での腫瘍血管形成の有意な減少について既報されている。本発明者らは、抗PECAM−およびイソ型対照抗体注射群からのB16−F10肺腫瘍における腫瘍血管形成、ならびに腫瘍アポトーシス率および有糸分裂率を評価した。驚くことに、この相違は統計的な有意性はないが(p=0.12)、肺腫瘍の血管数が、イソ型対照処置群(8.79+2.9)よりも抗PECAM処置群(17.9+4.5腫瘍血管/HPF(平均+S.E.))で多いことが明らかとなった。抗PECAM−対−イソ型対照−処理マウス(9.7+0.8)での腫瘍アポトーシス(9.9+1.1)のレベルも同程度であった。しかしながら、腫瘍細胞での有糸分裂の割合は、抗PECAM処理マウス(2.9+0.7)に対してイソ型対照処理マウス(4.7+0.5)でかなり高かった(p<0.05)。病理組織学的には、腫瘍壊死、出血、肺うっ血および/または血管内閉塞が9匹のイソ型抗体処理マウスのうち7匹で見られ、一方これらの発見は、抗PECAM−1抗体処理マウスでは見られなかった(データ不掲載)。概して、抗PECAM抗体治療は、転移B16−F10腫瘍の全数および全体の腫瘍組織量を減少し、ならびに腫瘍細胞有糸分裂率および肺の病理組織学的変化を著しく減少した。抗PECAM−l抗体治療は、腫瘍血管形成または腫瘍アポトーシスのどちらも減少させなかった。
抗PECAM−1抗体の抗転移活性が、B16−F10黒色腫腫瘍に加えて広く多種多様な固形癌に特異的であることを証明するために、本発明者らは、マウスに注射した様々な他の腫瘍細胞系に対してその可能性のある抗転移作用を試験した。これらの系には、マウス4T1乳癌細胞、マウスCT26結腸癌腫瘍細胞、マウスルイス肺癌種−高転移性(LLC−HM)細胞およびヒトLOX黒色腫細胞が含まれる。本発明者らは、上記の材料および方法の部分に記載のように、これらの系のそれぞれの転移の作製のための確立されたプロトコルを用いた。発明者らは、7日目に開始した5回の、200μgのIV投与の抗PECAM抗体治療が、腫瘍担持マウスにおけるこれらの腫瘍系のそれぞれに対してかなりの抗転移作用をもたらすことを発見した。
具体的には、抗PECAM抗体は、イソ型対照抗体処理マウスと比較したとき、全体の腫瘍組織量(p<0.005)および全体の転移性肺腫瘍(p<0.0001)の有意な減少をもたらし、4T1乳癌腫瘍の転移に対して有効性が高い(図3Aおよび3Bを参照のこと)。再び他者らによる既報に反して、抗PECAM抗体治療は、4T1腫瘍の転移に対して高い有効性を示すが、それは抗PECAM処理マウスが27.8+2.5腫瘍血管/HPFを示し、一方、イソ型対照処理マウスが26.5+2.1腫瘍血管/HPFを示すことから、腫瘍血管増生に効果を有さない(データ不掲載)。故に、皮下腫瘍に対するこの同じ抗PECAM抗体の抗腫瘍効果とは異なり(Zhou et al., Angiogenesis 3: 181-188, 1999)、転移性腫瘍に対する抗PECAM抗体効果は、腫瘍血管形成への影響を介して仲介されないように思われる(4T1腫瘍についての腫瘍有糸分裂率およびアポトーシス率における抗PECAM抗体の効果の分析は進行中である)。
抗PECAM抗体は、イソ型対照抗体処理マウスと比較したとき、CT26結腸癌腫瘍の転移に対して活性をほとんど有さないが、転移性肺腫瘍の全数を有意に減少させる(p<0.05)(図4Aおよび4Bを参照のこと)。
抗PECAM抗体治療は、イソ型対照抗体処理マウス(0.94±0.1gm)と比較したとき、LLC−HM腫瘍を担持するマウスにおける肺重量(0.85±0.2gm)を有意に減少させない(p=0.74)。肺転移が主にこの実験における別々の腫瘍よりむしろ融合塊として増殖したため、正確にマウスにおける個々の肺腫瘍の数を数えるのは不可能であった。しかしながら、肺以外の肺転移の数は抗PECAM抗体処理マウスにて著しく減少するように見えた。具体的には、8匹すべてのイソ型対照処理マウスは、胸腔での別個の大きな肺以外の腫瘍を示し、一方、9匹の抗PECAM抗体処理マウスのうちたった3匹が肺以外の腫瘍を示した(9匹のイソ型対照抗体処理マウスのうち1匹が、すべての他のマウスが殺される4日前に広範囲の腫瘍組織量で死んだことを特記する)。このマウスは、転移LLC−HM腫瘍の最終的な分析に含まれない。さらに、8匹のイソ型対照処理マウスのうち3匹が肝臓転移を示し、一方、9匹の抗PECAM抗体処理マウスのうちたった1匹が肝臓腫瘍を示した。故に、肺転移LLC−HM腫瘍の数を明確に減少させないが、抗PECAM抗体治療は、LLC−HM腫瘍の肺以外の転移をかなり減少させるように見えた。
最後に、抗PECAM抗体治療が免疫応答性の同種のマウス株の4つの異なるマウス固形癌の転移拡大を減じるため、発明者らは、ヌードマウスのヒトLOX異種移植腫瘍の転移拡大が変化したか否かを評価した。マウス腫瘍モデルの場合のように、抗PECAM抗体治療は、イソ型対照抗体で処理したLOX担持マウスと比較したとき、肺重量(p<0.05)および肺腫瘍の全数(p<0.005)の両方により測定されるように、ヌードマウスでのLOX細胞の転移拡大を有意に減少させた(図5Aおよび5Bを参照のこと)。
まとめとして、これらのデータは、全身的な抗PECAM抗体治療が、マウス転移モデルにおける多種多様な通常致死的な固形癌(黒色腫、乳癌、結腸癌および肺癌)の転移拡大をかなり減少させ得ることを示す。重要なことには、試験した腫瘍細胞のいずれも検出可能なPECAM−1を発現せず、このことは抗PECAM抗体が腫瘍細胞自体との直接結合によりその抗転移性腫瘍効果をもたらさないことを示す。むしろ、抗PECAM抗体は、血管内皮細胞に発現するPECAM−lと結合することにより抗腫瘍薬として機能するように見える。しかしながら、抗PECAM抗体は、腫瘍血管形成の効果により抗転移作用を及ぼさないように見える。故に、現在ヒト癌の処置に用いられる抗腫瘍抗体とは異なり、抗PECAMは、顕著な抗転移効果を生じるために、腫瘍タイプ特性も腫瘍細胞上のその同種の受容体の発現も必要としない。
図1Aおよび1Bは、マウスにおける抗体処理の効果を示す。 図2Aおよび2Bは、抗体処理の効果を示す。 図3Aおよび3Bは、マウスにおける抗体処理の効果を示す。 図4Aおよび4Bは、マウスにおける抗体処理の効果を示す。 図5Aおよび5Bは、抗体処理の効果を示す。

Claims (20)

  1. 哺乳動物に対して全身投与により治療的有効量の医薬を投与することによって、該哺乳動物での転移性腫瘍の新生物細胞の転移または浸潤を抑制または防止するための該医薬の製造における抗PECAM抗体の使用。
  2. 前記抗PECAM抗体がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の使用。
  3. 前記新生物細胞が、黒色腫細胞、乳癌細胞、結腸癌細胞、または肺癌細胞である、請求項1に記載の使用。
  4. 前記新生物細胞が抗PECAM抗体への結合を欠き、PECAMが該新生物細胞上で検出不可能である、請求項2に記載の使用。
  5. 前記新生物細胞がヒト細胞である、請求項1に記載の使用。
  6. 前記モノクローナル抗体が、腹腔内投与により哺乳動物に投与される、請求項2に記載の使用。
  7. 前記モノクローナル抗体の投与を、腫瘍増殖が該哺乳動物に確立された後に開始する、請求項2に記載の使用。
  8. 前記モノクローナル抗体を、腫瘍細胞が該モノクローナル抗体の投与前に少なくとも7日間該哺乳動物の循環系に存在した後に投与する、請求項7に記載の使用。
  9. 前記腫瘍増殖が、新生物細胞の少なくとも1個の多細胞コロニーを含む、請求項7に記載の使用。
  10. 前記新生物細胞がヒト腫瘍細胞である、請求項9に記載の使用。
  11. 前記抗PECAM抗体を複数回の投与で前記哺乳動物に投与する請求項1に記載の使用であって、ここで各投与が少なくとも200マイクログラムの抗PECAM抗体を含み、かつ該複数回の投与が、各投与が少なくとも2日の間隔で少なくとも5回の投与を含む、使用。
  12. 前記モノクローナル抗体を、腫瘍細胞が該モノクローナル抗体の投与前に少なくとも7日間、該哺乳動物の循環系に存在した後に投与する、請求項11に記載の使用。
  13. 前記腫瘍細胞が、ヒト新生物細胞の少なくとも1個の多細胞コロニーを含む、請求項12に記載の使用。
  14. 哺乳動物において転移性腫瘍の新生物細胞の転移または浸潤を抑制または防止するためのキットであって、治療的有効量の抗PECAM抗体および該哺乳動物への該抗PECAM抗体の全身投与のための説明書を含むキット。
  15. 前記抗PECAM抗体がモノクローナル抗体である、請求項14に記載のキット。
  16. 前記説明書が、各投与が少なくとも200マイクログラムの該モノクローナル抗体を含む、複数回の投与の投与方法を明記するものである、請求項15に記載のキット。
  17. 前記説明書が、該モノクローナル抗体を、各投与を複数回の他の投与から少なくとも2日の間隔で少なくとも5回の投与で投与することを明記するものである、請求項16に記載のキット。
  18. 前記説明書が、上記モノクローナル抗体を他の抗新生物治療と組合せ得ることを明記するものである、請求項15に記載のキット。
  19. 前記他の抗新生物治療が、電離放射線、化学療法剤、熱剥離、PECAMと結合しない抗腫瘍モノクローナル抗体、放射性同位体種晶の注入、および外科手術からなる群から選択される、請求項18に記載のキット。
  20. 抗PECAMモノクローナル抗体が、該モノクローナル抗体の投与前に少なくとも7日間その体内に新生物細胞を有していた哺乳動物に投与される、請求項1に記載の使用。
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