JP4896635B2 - クラッチ、モータ及び車両用ドア開閉装置 - Google Patents

クラッチ、モータ及び車両用ドア開閉装置 Download PDF

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Description

本発明は、車両用スライドドア開閉装置や車両用バックドア開閉装置等の車両用ドア開閉装置の駆動源として用いられるクラッチ付きのモータ及びその車両用ドア開閉装置に関するものである。
近年、車両ボディ側部に設けられる乗降口を開閉するスライドドアを備えた自動車において、そのスライドドアをモータ駆動で自動開閉するスライドドア開閉装置が搭載されているものがある。スライドドア開閉装置の駆動源として用いられるモータは、回転駆動するモータ本体と、該モータ本体で生じる回転を減速して出力する減速部とが一体に組み付けられて構成され、減速部からの出力によりスライドドアが開閉作動される。
このようなスライドドア開閉装置においては、スライドドアを手動で開閉可能とすることも要求されている。そのため、特許文献1にて示されるドア開閉装置のように、減速部の出力軸に電磁クラッチを装備したものが提案されている。
スライドドアをモータ駆動により開閉作動させる場合には、電磁クラッチがオンされて出力ギヤであるウォームホイールと出力軸である回転シャフトとが接続(連結)され、モータ本体の回転駆動により回転するウォームホイールの回転が回転シャフトに伝達される。回転シャフトの回転は該シャフトに固定される出力ドラムを回転させ、これによりスライドドアを開閉作動させるべくその出力ドラムに掛装されたワイヤケーブルの巻き取り及び送り出しが行われる。
一方、スライドドアを手動により開閉作動させる場合には、電磁クラッチがオフされてウォームホイールと回転シャフトとが断絶(非連結)され、該シャフト及び出力ドラムがフリーとなる。つまり、負荷側からの出力ドラム及び回転シャフトの回転負荷が軽減される。これにより、スライドドアは取り分け大きな操作力を必要としないで容易に手動開閉がなされるようになっている。
特開2002−327576号公報
ところで、特許文献1のモータでは、その減速部内においてクラッチへの電気配線が必要で、減速部内にその配線スペースを確保する必要があるため、このことにより減速部、即ちモータを大型化させてしまう。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、駆動軸側からの駆動時にはその駆動力を従動軸側に伝達する一方、駆動軸の非駆動時には従動軸側からの作動負荷を軽減する状態に切り替えるクラッチであって、該クラッチを用いる装置の小型化に貢献することができるクラッチ、そのクラッチを用いたモータ及びそのモータを駆動源として用いる車両用ドア開閉装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、駆動軸と該駆動軸と同軸上に配置される従動軸との間に設けられ、前記駆動軸側からの駆動時には前記駆動軸と前記従動軸とを連結して前記駆動軸からの回転力を前記従動軸側に伝達する一方、前記駆動軸の非駆動時には前記従動軸と前記駆動軸とを断絶するように作動するクラッチであって、前記駆動軸と一体回転可能に同軸上に設けられる第1回転体と、前記従動軸と一体回転可能に同軸上に設けられる第2回転体と、前記第1回転体と回転方向に係止可能な状態を維持しつつ前記第2回転体と回転方向に係止可能な位置と係止不能な位置とのいずれかに配置されるべく径方向に沿って移動可能に設けられ、前記第1回転体の回転に伴って該回転体から回転力を受けて前記第2回転体と回転方向に係止可能となる位置側に移動される連結部材と、前記第2回転体と回転方向に係止不能となる位置側に前記連結部材を付勢する付勢部材とを備え、前記駆動軸の非駆動時には前記従動軸と前記駆動軸とを断絶し、前記従動軸の両回転方向の回転を許容するように作動することをその要旨とする。
同構成によれば、クラッチは、駆動軸側からの駆動による該駆動軸の回転に伴って第1回転体が回転し、次いで連結部材が第1回転体の回転力を受けて付勢部材の付勢力に抗して第2回転体と回転方向に係止可能となる位置に向かって径方向に移動し、この移動された連結部材を通じて第1,第2回転体が駆動連結(回転方向に係止)するように作動する。つまり、クラッチは、駆動軸側からの駆動により該駆動軸と従動軸とを一体回転するように連結するため、駆動軸側からの駆動にて従動軸側の装置を作動させることを可能とする。一方、駆動軸の非駆動時において、クラッチは、付勢部材の付勢力により連結部材が第2回転体と回転方向に係止不能となる位置に配置されるため、第2回転体が第1回転体と断絶された状態となっている。つまり、クラッチは、駆動軸の非駆動時においては、駆動軸と従動軸とを断絶しているため、従動側の装置を例えば手動により作動させる場合等、その作動負荷の一つである駆動軸(駆動軸を含む駆動軸側の装置)を従動軸側から回転させなくて済み、従動軸側からの作動負荷を軽減できる。このように作動する機械式のクラッチとしたことで、該クラッチへの電気配線が必要なく、このクラッチを用いる装置において、その配線スペースを省略でき、小型化が可能である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のクラッチにおいて、移動不能な被取付体に対して設けられるものであり、前記連結部材と係止して該連結部材を前記第2回転体と回転方向に係止可能となる位置側に案内する案内部を有する規制案内部材を設けたことをその要旨とする。
同構成によれば、連結部材が第1回転体の回転力を受けて第2回転体と回転方向に係止可能となる位置に向かって径方向に移動する際に、該連結部材が規制案内部材に設けた案内部に係止して同方向への該連結部材の移動が案内される。そのため、連結部材の径方向の移動がスムーズとなるため、クラッチの作動がより安定となる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のクラッチにおいて、前記連結部材及び前記付勢部材を保持する保持部材を設けたことをその要旨とする。
同構成によれば、保持部材にて連結部材及び付勢部材が保持されるため、これらがアッセンブリ化され、クラッチの組み立てが容易となる。また、連結部材及び付勢部材が他部材に影響を与えたり、また他部材から連結部材及び付勢部材に影響が与えられるといったことが低減されるため、クラッチの作動がより安定となる。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のクラッチにおいて、前記連結部材は、前記第1回転体に連結されるとともに、前記第1回転体との連結部を支点として、前記連結部材の軸方向の両端部が径方向に沿って移動するように傾動可能に設けられ、前記駆動軸の回転時には、前記駆動軸の回転に伴って作用する遠心力によって前記連結部を支点として傾動することにより、前記第2回転体と回転方向に係止可能な位置に配置されることをその要旨とする。
同構成によれば、第1回転体に連結された連結部材は、駆動軸の回転時には、駆動軸の回転に伴って作用する遠心力によって該連結部材と第1回転体との連結部を支点として傾動することにより、第2回転体と回転方向に係止可能な位置に配置される。このように、連結部材は、第1回転体との連結部を支点として傾動するだけの簡単な動作で第2回転体と回転方向に係止可能な位置に配置される。従って、当該クラッチの構成を簡易なものとすることが可能となる。
請求項5に記載の発明は、モータ本体と減速機構とを備えてなるモータにおいて、前記モータ本体の駆動により回転される回転軸と、該回転軸と同軸上に配置される前記減速機構の入力軸との間に設けられ、前記モータ本体の駆動時には前記回転軸と前記減速機構の入力軸とを連結して前記回転軸からの回転力を前記減速機構側に伝達する一方、前記モータ本体の非駆動時には前記減速機構の入力軸と前記回転軸とを断絶するように作動するクラッチを備えてなるものであって、前記クラッチは、前記回転軸と一体回転可能に同軸上に設けられる第1回転体と、前記減速機構の入力軸と一体回転可能に同軸上に設けられる第2回転体と、前記第1回転体と回転方向に係止可能な状態を維持しつつ前記第2回転体と回転方向に係止可能な位置と係止不能な位置とのいずれかに配置されるべく径方向に沿って移動可能に設けられ、前記第1回転体の回転に伴って該回転体から回転力を受けて前記第2回転体と回転方向に係止可能となる位置側に移動される連結部材と、前記第2回転体と回転方向に係止不能となる位置側に前記連結部材を付勢する付勢部材とを備え、前記クラッチは、前記モータ本体の非駆動時には前記減速機構の入力軸と前記回転軸とを断絶し、前記減速機構の入力軸の両回転方向の回転を許容するように作動することをその要旨とする。
同構成によれば、クラッチは、モータ本体の駆動による回転軸の回転に伴って第1回転体が回転し、次いで連結部材が第1回転体の回転力を受けて付勢部材の付勢力に抗して第2回転体と回転方向に係止可能となる位置に向かって径方向に移動し、この移動された連結部材を通じて第1,第2回転体が駆動連結(回転方向に係止)するように作動する。つまり、クラッチは、モータ本体の駆動によりモータ本体の回転軸と減速機構の入力軸とを一体回転するように連結するため、モータ本体の駆動にて負荷側の装置を作動させることを可能とする。一方、モータ本体の非駆動時において、クラッチは、付勢部材の付勢力により連結部材が第2回転体と回転方向に係止不能となる位置に配置されるため、第2回転体が第1回転体と断絶された状態となっている。つまり、クラッチは、モータ本体の非駆動時においては、回転軸と減速機構の入力軸とを断絶しているため、負荷側の装置を例えば手動により作動させる場合等、その作動負荷の一つであるモータ本体の回転軸を負荷側から回転させなくて済み、負荷側からの作動負荷を軽減できる。このように作動するクラッチはモータ本体の回転軸と減速機構の入力軸との間のトルクの小さい箇所に設けられるため、クラッチ構成部品の剛性を比較的低くして小型に構成することができる。つまり、個々のクラッチ構成部品を小さく構成でき、クラッチを小型化できる。しかも、このクラッチは機械式であるため、該クラッチへの電気配線が必要なく、その配線スペースを省略できる。これにより、クラッチ自身を小型でき、しかもクラッチを用いるモータの小型化を図ることができるため、モータを小体格で構成できる。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のモータにおいて、前記クラッチには、移動不能な被取付体に対して設けられ、前記連結部材と係止して該連結部材を前記第2回転体と回転方向に係止可能となる位置側に案内する案内部を有する規制案内部材が設けられていることをその要旨とする。
同構成によれば、クラッチにおいて、連結部材が第1回転体の回転力を受けて第2回転体と回転方向に係止可能となる位置に向かって径方向に移動する際に、該連結部材が規制案内部材に設けた案内部に係止して同方向への該連結部材の移動が案内される。そのため、連結部材の径方向の移動がスムーズとなるため、クラッチの作動がより安定となる。
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載のモータにおいて、前記クラッチには、前記連結部材及び前記付勢部材を保持する保持部材が設けられていることをその要旨とする。
同構成によれば、クラッチにおいて、保持部材にて連結部材及び付勢部材が保持されるため、これらがアッセンブリ化され、その組み立てが容易となる。また、連結部材及び付勢部材が他部材に影響を与えたり、また他部材から連結部材及び付勢部材に影響が与えられるといったことが低減されるため、クラッチの作動がより安定となる。
請求項8に記載の発明は、請求項5〜7のいずれか1項に記載のモータにおいて、前記クラッチの前記連結部材と係止して該連結部材を前記第2回転体と回転方向に係止可能となる位置側に案内する案内部を有する規制案内部材を、前記モータ本体に備えられる給電用のブラシを保持するためのブラシホルダに固定又は一体形成される、若しくは前記減速機構を収容するためのギヤハウジングに固定又は一体形成されることをその要旨とする。
同構成によれば、クラッチの連結部材の案内を行う規制案内部材を、既設のモータ構成部品であるブラシホルダやギヤハウジングに対して固定又は一体形成するため、規制案内部材を移動不能とするための部材を別途必要とせず、モータの部品数を少なくできる。
請求項9に記載の発明は、請求項5に記載のモータにおいて、前記連結部材は、前記第1回転体に連結されるとともに、前記第1回転体との連結部を支点として、前記連結部材の軸方向の両端部が径方向に沿って移動するように傾動可能に設けられ、前記回転軸の回転時には、前記回転軸の回転に伴って作用する遠心力によって前記連結部を支点として傾動することにより、前記第2回転体と回転方向に係止可能な位置に配置されることをその要旨とする。
同構成によれば、第1回転体に連結された連結部材は、回転軸の回転時には、回転軸の回転に伴って作用する遠心力によって該連結部材と第1回転体との連結部を支点として傾動することにより、第2回転体と回転方向に係止可能な位置に配置される。このように、連結部材は、第1回転体との連結部を支点として傾動するだけの簡単な動作で第2回転体と回転方向に係止可能な位置に配置される。従って、本構成におけるクラッチの構成を簡易なものとすることが可能となり、ひいては、当該クラッチを備えたモータの製造を容易とすることが可能となる。
請求項10に記載の発明は、請求項5〜9のいずれか1項に記載のクラッチ付きのモータをその駆動源として用い、車両に設けられる開口を開閉するドアを前記モータの駆動によって開閉作動させるように構成される車両用ドア開閉装置であって、前記ドアを自動開閉させる旨の指令が生じると、前記モータ本体の駆動とともに前記クラッチにより前記モータ本体の回転軸と前記減速機構の入力軸とを連結して前記回転軸からの回転力を前記減速機構を介して出力し前記ドアを自動開閉させる一方、前記モータ本体の非駆動時には、前記クラッチにより前記減速機構の入力軸と前記回転軸とを断絶して前記ドアの手動開閉時の作動負荷を軽減させた状態とすることをその要旨とする。
同構成によれば、車両のドアをモータの駆動にて自動開閉する装置においては、該ドアを手動による開閉ができるようにも構成する要求があるため、上記のようなクラッチを用いたモータがその駆動源として好適である。しかも、車両に搭載する装置では搭載スペースを小さくすることが常に要求されるため、クラッチの小型化、モータが小体格となる意義は大きい。
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の車両用ドア開閉装置において、車両側部の開口を開閉するスライドドアを開閉作動させるための車両用スライドドア開閉装置、又は、車両後部の開口を開閉するバックドアを開閉作動させるための車両用バックドア開閉装置であることをその要旨とする。
同構成によれば、車両のドアでもスライドドアやバックドアを対象としている。即ち、スライドドアやバックドア、特にバックドアでも上下方向に開閉させるドアにおいては、そのドアの手動開閉に比較的大きな操作力が必要である。そのため、上記のようなクラッチにて負荷側からの作動負荷が軽減される意義は大きく、ドアの手動開閉が容易である。
このように本発明によれば、装置の小型化に貢献することができるクラッチ、そのクラッチを用いたモータ及びそのモータを駆動源として用いる車両用ドア開閉装置を提供することができる。
(第1の実施の形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図面に従って説明する。
図1は、本実施の形態のモータ1を示す。本実施の形態のモータ1は、図21に示すように、自動車に搭載されるスライドドア開閉装置50の駆動源として用いられるものである。スライドドア開閉装置50は、本実施の形態では、車両ボディ51の側面に沿ってスライド開閉可能に配設されたスライドドア52内に配設されている。スライドドア52は、車両ボディ51に形成された乗降口51aを開閉するものであり、車両ボディ51に設けられるガイドレール53に沿って移動可能に連結される連結具54にて支持されている。連結具54はモータ1の駆動によるワイヤケーブル55の巻き取り及び送り出しが行われることによりガイドレール53に沿って移動し、該連結具54の移動によりスライドドア52が乗降口51aを開閉するようになっている。
このようなスライドドア開閉装置50の駆動源である本実施の形態のモータ1は、モータ本体2と減速部3とからなる所謂ギヤードモータにて構成されている。モータ本体2は、ヨークハウジング4、一対のマグネット5、電機子6、ブラシホルダ7及び一対のブラシ8を備えている。
ヨークハウジング4は略有底扁平円筒状に形成され、その内側面にマグネット5が固着されている。ヨークハウジング4の底部中央には軸受9が設けられ、該軸受9は電機子6の回転軸10の基端を回転可能に支持する。
ヨークハウジング4の開口部4aはフランジ状に形成され、後述するギヤハウジング21の開口部21aにネジ11にて固定される。尚、この固定の際に、ヨークハウジング4の開口部4aとギヤハウジング21の開口部21aとでブラシホルダ7が挟持されて固定される。
ブラシホルダ7は、ヨークハウジング4内において、電機子6の回転軸10の先端を回転可能に支持する軸受12及び回転軸10に固着された整流子13に摺接するブラシ8を保持している。また、ブラシホルダ7の両ハウジング4,21から突出する部分は車体側から延びる車体側コネクタ(図示略)と連結するためコネクタ部7aであって、該コネクタ部7aの凹部7b内には複数本のターミナル14が露出している。これらターミナル14はブラシホルダ7にインサートされており、前記ブラシ8及びモータ1内に備えられる回転センサ等の各種センサ(図示略)と電気的に接続されている。そして、コネクタ部7aが車体側コネクタと連結されることで、モータ1と車体側に備えられるコントローラ(図示略)とが電気的に接続され、電源供給やセンサ信号等の出力が行われる。
このようなモータ本体2に対し、減速部3は、ギヤハウジング21、ウォーム軸22、ウォームホイール23及びクラッチ24を備えている。
ギヤハウジング21は樹脂製であって、内部にはウォーム軸22、ウォームホイール23及びクラッチ24を収容している。ギヤハウジング21は、前記ヨークハウジング4の開口部4aと対向する開口部21aを備え、両開口部4a,21a間に前記ブラシホルダ7が介装される。
ギヤハウジング21は、ウォーム軸22を収容するために開口部21aから軸方向に延びる略円筒状の軸収容筒部21bと、該軸収容筒部21bと連通しウォームホイール23を収容するためのホイール収容凹部21cと、軸収容筒部21bの基端(モータ本体2側)に設けられクラッチ24を収容するためのクラッチ収容凹部21dとを備えている。
軸収容筒部21bには、一対の軸受25,26が所定間隔を有して装着されている。ウォーム軸22は、軸収容筒部21bの開口側から挿入され、ウォーム部22aを挟んだ両端がそれぞれ軸受25,26にて回転可能に支持されて、前記回転軸10と同軸上に配置される。また、ウォーム軸22の先端には、該ウォーム軸22のスラスト荷重を受けるためのスラスト受けボール27及びプレート28が備えられている。
また、ウォーム軸22においてウォーム部22aと軸受26にて支持される部位との間には、周方向に多極着磁されるリング状のセンサマグネット29が一体回転するように装着されている。これに対し、軸収容筒部21bにおいてセンサマグネット29の外周面に対向する部位には、該センサマグネット29の回転に伴う磁界変化を検知するホール素子30が配設されている。ホール素子30は、センサマグネット29の回転に伴う磁界変化を検知し、センサマグネット29、即ちウォーム軸22の回転数や回転速度等の回転情報を検出する。
ホイール収容凹部21cには、前記ウォーム軸22のウォーム部22aと噛合されるウォームホイール23が回転可能に収容されている。このウォームホイール23には、出力軸23aが一体回転するように連結されている。出力軸23aには、スライドドア52を開閉作動させるための前記ワイヤケーブル55が掛装される駆動プーリ(図示略)が一体回転するように連結されている。
クラッチ収容凹部21dには、ウォーム軸22と前記回転軸10との断続を行う機械式のクラッチ24が収容されている。クラッチ24は、図2及び図3に示すように、回転軸10側に設けられる入力側回転体31と、ウォーム軸22側に設けられる出力側回転体32と、両回転体31,32間に設けられるコンタクト部材33とを備えている。
入力側回転体31は、例えば樹脂にて形成され、略円柱状の軸部31aと、該軸部31aの基端部に設けられ前記回転軸10と同軸に連結するための連結孔31bと、その軸部31aの先端部に径方向に板状をなす駆動円板部31cとを有している。軸部31aの連結孔31bは、モータ本体2から延びる回転軸10の先端部、例えば図示しないが断面D字状又は二面幅形状に形成した場合その先端部と同じ孔形状にて形成される。つまり、この連結孔31bに回転軸10の先端部が嵌挿されることで、入力側回転体31は回転軸10と一体回転可能に連結される。
前記軸部31aの先端部には、該軸部31aと同軸をなす駆動円板部31cが設けられている。駆動円板部31cは、全体に略三角形状をなし、更に個々に略三角形状をなす同形状の3個の係合部31dが周方向に等間隔(120°間隔)に設けられてなる。各係合部31dは、各側辺がそれぞれ外側に若干膨らむ湾曲状をなしている。これに対し、各係合部31d間には、径方向内側に向けて凹む凹設部31eが形成される。因みに、各凹設部31eは、同様に、周方向に等間隔(120°間隔)に設けられる。
出力側回転体32は、前記ウォーム軸22と同軸となるように該軸22の基端部に一体に形成され(ウォーム軸22と別部材で互いに連結する構成でも可)、該ウォーム軸22とともに例えば金属にて形成されている。出力側回転体32には、前記入力側回転体31側が凹設され該入力側回転体31の駆動円板部31cを収容する収容凹部32aが形成され、該収容凹部32aの周囲にはウォーム軸22と同軸、即ち入力側回転体31の駆動円板部31cと同軸をなす外輪部32bが形成されている。外輪部32bの内周側には、径方向内側及び入力側回転体31側に開口する同形状の12個の連結凹部32cが等間隔に形成されている。各連結凹部32cは、径方向内側ほど拡開した台形状をなしている。そして、収容凹部32a内に入力側回転体31の駆動円板部31cが配置されると、連結凹部32cを有する外輪部32bと駆動円板部31cとが同一平面上に配置される。
コンタクト部材33は、例えば樹脂にて形成され、クラッチ24に3個用いられる。コンタクト部材33は、略直方体形状をなす本体部33aと、該本体部33aの一側面から円柱状に立設する連結凸部33bと、その本体部33aにおける連結凸部33bとは反対側の面から略五角柱形状に立設する係止凸部33cとを有してなる。各コンタクト部材33は、出力側回転体32及び入力側回転体31の駆動円板部31cを覆うように配置されるプレートサポート34に対して周方向に等間隔(120°間隔)に配置され、それぞれ径方向に移動可能に取着される。
因みに、プレートサポート34は、例えば樹脂にて形成され、回転軸10側が大径、ウォーム軸22側が小径の円周面を有する形状をなしており、前記ギヤハウジング21に軸受38(図1参照)を介して回転可能に支持される。プレートサポート34には、回転軸側端面の中央部に入力側回転体31の軸部31aが挿通される断面円形状の挿通孔34aが形成され、該挿通孔34aからウォーム軸側端面まで貫通する断面円形状の収容孔34bが形成されている。この収容孔34bには、ウォーム軸22の出力側回転体32が収容される(図4(a)参照)。
プレートサポート34の回転軸側端面には、挿通孔34aの周囲に等間隔(120°間隔)に3つの収容溝34cがその挿通孔34aから径方向に延びるように形成されている。各収容溝34cは、前記コンタクト部材33の本体部33aと対応した断面四角形状をなしており、径方向外側縁部が閉塞されている。各収容溝34cには、軸方向からコンタクト部材33の本体部33aが収容可能であり、該本体部33aがその収容溝34cに沿って径方向に移動可能となっている(周方向には移動不能)。この場合、各コンタクト部材33の連結凸部33bは、プレートサポート34の収容孔34b内に収容される出力側回転体32の収容凹部32a(外輪部32b)内に配置され、外輪部32bと入力側回転体31の駆動円板部31cとの隙間に配置される。
また、プレートサポート34の各収容溝34cには、コンタクト部材33の本体部33aの径方向外側にコイルスプリング35がそれぞれ収容される。各コイルスプリング35は、各コンタクト部材33の本体部33aを径方向内側に付勢するものである。そして、各収容溝34cにこれらコンタクト部材33とコイルスプリング35が収容された後、プレートサポート34には円板状の蓋体36が固定され該蓋体36にて収容溝34cが閉塞される。尚、この蓋体36には、中央部に前記プレートサポート34の挿通孔34aに対応する円形状の挿通孔36aが形成されるとともに、各コンタクト部材33の係止凸部33cを該蓋体36から突出させる切欠溝36bが中央部の挿通孔36aから径方向外側に延びるように形成されている。各切欠溝36bは、各コンタクト部材33の本体部33aの収容溝34cに沿った径方向への移動時に、回転軸10側に突出する各係止凸部33cの移動を妨げないようにプレートサポート34の各収容溝34cに対応させて形成されている。
蓋体36から突出する各係止凸部33cの先端部は、その蓋体36と対向配置される略六角形板状のプレート部材37の外周面と係止可能となっている。各係止凸部33cは五角柱形状をなしており、その径方向内側の角部にてプレート部材37の外周面と係止する。プレート部材37は、例えば樹脂にて形成され、前記ブラシホルダ7にネジ等にて固定されて移動不能とされている(図1参照)。尚、このプレート部材37を前記ブラシホルダ7に一体形成することもできる。プレート部材37の中央部には前記プレートサポート34の挿通孔34aに対応する円形状の挿通孔37aが形成されるとともに、外周縁には6個の辺に相当する各部分の中間部において径方向内側に向けて若干V字状に凹む凹状部37bがそれぞれ設けられている。つまり、プレート部材37の外縁部の各角部37cは径方向外側に若干突出することとなる。
そして、各コンタクト部材33の連結凸部33bが駆動円板部31cの各凹設部31eの最内部又はその近傍に配置されて径方向内側に配置されると(図4参照)、各連結凸部33bが出力側回転体32の外輪部32bと係止不能な位置に配置されるようになっている。この場合、出力側回転体32と入力側回転体31とが断絶される。またこのとき、各コンタクト部材33の係止凸部33cはコイルスプリング35の付勢力を受けてプレート部材37の各凹状部37b内に当接して周方向に係止した状態となり、各コンタクト部材33が取着されるプレートサポート34の回転が抑制された状態(係止状態)となる。
これに対し、入力側回転体31の回転により各コンタクト部材33の連結凸部33bが駆動円板部31cの各係合部31dの側面に沿って径方向外側に移動され出力側回転体32の外輪部32bの連結凹部32c内に配置されると、各連結凸部33bがコイルスプリング35の付勢力に抗してその外輪部32bと回転方向に係止するようになっている(図9等参照)。この場合、出力側回転体32と入力側回転体31とが各コンタクト部材33(連結凸部33b)を介して駆動連結される。またこのとき、各コンタクト部材33の径方向外側への移動により、各コンタクト部材33の係止凸部33cがプレート部材37の各角部37cよりも外側に移動し離間することで、該係止凸部33cがプレート部材37に係止不能な状態となる。これにより、プレートサポート34の回転抑制状態が解消され、入力側回転体31の回転に基づいて各コンタクト部材33が取着されるプレートサポート34が連れ回りし、各コンタクト部材33の連結凸部33bと周方向に係止する出力側回転体32が回転するようになっている。
そして、このような動作が円滑に行われるように、上記した各コンタクト部材33や出力側回転体32の外輪部32b、入力側回転体31の駆動円板部31c等の各寸法が設定されている。
このように構成されるクラッチ24では、モータ本体2の非駆動時のように回転軸10に回転駆動力が生じていない場合、コイルスプリング35によるコンタクト部材33の径方向内側への付勢により、図4に示すように、各コンタクト部材33の連結凸部33bが入力側回転体31における駆動円板部31cの各凹設部31eの最内部側に案内されるとともに、各コンタクト部材33の係止凸部33cがプレート部材37の各凹状部37bの最内部側に案内される。
尚、コイルスプリング35の付勢力のみで各コンタクト部材33の連結凸部33bが駆動円板部31cの各凹設部31eの最内部に、その係止凸部33cがプレート部材37の各凹状部37bの最内部にそれぞれ案内されない場合、負荷側からウォーム軸22が回転され出力側回転体32の外輪部32bが回転すると、該外輪部32bに各連結凸部33bが衝突することで位置修正され、駆動円板部31cの各凹設部31eのより最内部側に案内される。また、この各連結凸部33bへ外輪部32bの衝撃により、各係止凸部33cがプレート部材37の各凹状部37bのより最内部側に案内される。
そして、各コンタクト部材33の連結凸部33bが駆動円板部31cの各凹設部31eの最内部又はその近傍に配置されると、各連結凸部33bが出力側回転体32の外輪部32bと係止不能な位置に配置される。そのため、ウォーム軸22と回転軸10とが断絶され、負荷側からの出力軸23aの回転負荷になる回転軸10がウォーム軸22から切り離される。これにより、負荷側からの出力軸23aの回転負荷が軽減されるため、負荷側からの出力軸23aの回転が容易となり、手動によるスライドドア52の容易な開閉作動が可能となっている。
また、各コンタクト部材33の係止凸部33cがプレート部材37の各凹状部37b内に配置されることで、各コンタクト部材33が該プレート部材37に対して周方向に係止する。プレート部材37は移動不能とされていることから、各コンタクト部材33が取着されるプレートサポート34の回転が抑制され、手動によるスライドドア52開閉時に回転する出力側回転体32(外輪部32b)との連れ回りが防止される。
これに対し、スライドドア52を自動開閉すべくモータ本体2が駆動されて回転軸10が回転すると、該回転軸10とともに入力側回転体31が回転する。すると、図5に示すように、駆動円板部31cの回転により各コンタクト部材33の連結凸部33bが駆動円板部31cの各係合部31dの側面にて案内されて径方向外側に押し出され、各コンタクト部材33がコイルスプリング35の付勢力に抗して径方向外側に移動する。
またこのとき、各コンタクト部材33の連結凸部33bが駆動円板部31cから回転力を受けることで、プレートサポート34も同方向に回転する。すると、各コンタクト部材33の係止凸部33cがプレート部材37の凹状部37bの斜面に案内されて各コンタクト部材33の径方向外側への移動が補助され、各コンタクト部材33の径方向外側への移動が円滑とされている。そして、径方向に移動したコンタクト部材33の連結凸部33bは、出力側回転体32の外輪部32bに設けた連結凹部32c内へと向かう。
入力側回転体31の駆動円板部31cが更に回転すると、図6に示すように、各コンタクト部材33の連結凸部33bが出力側回転体32の外輪部32bの連結凹部32c側面と回転方向に係合する。そして、図7に示すように、入力側回転体31の更なる回転により、各コンタクト部材33の連結凸部33bが駆動円板部31cの各係合部31dの側面に案内されるとともに、係止凸部33cがプレート部材37の凹状部37bの斜面に案内されることで、図8に示すように、各コンタクト部材33が更に径方向に移動し、各連結凸部33bが外輪部32bの連結凹部32c内に深く嵌り込む。
そして、図9に示すように、各コンタクト部材33の連結凸部33bが外輪部32bに回転方向に係合状態で最外部に配置されることで、外輪部32bに入力側回転体31からの回転力が伝達されつつも、各コンタクト部材33の係止凸部33cがプレート部材37の外周面と非係合となってプレートサポート34の回転もスムーズとなる。因みに、図5〜図9の動作はいずれの回転方向でも同様となる。
こうして、モータ本体2の駆動による回転軸10の回転力が入力側回転体31から各コンタクト部材33の連結凸部33bを介して出力側回転体32の外輪部32bに伝達されてウォーム軸22及び出力軸23aが回転し、スライドドア52がモータ1の駆動により自動で開閉作動するようになっている。
このような構成のモータ1を駆動源としたスライドドア開閉装置50において、スライドドア52を自動開閉させる旨の指令が生じると、モータ本体2が回転駆動される。すると、モータ本体2の回転軸10の回転に伴い、クラッチ24では入力側回転体31が回転し、次いで各コンタクト部材33がコイルスプリング35の付勢力に抗して径方向外側に移動し、この移動された各コンタクト部材33を通じて入力側回転体31と出力側回転体32とが駆動連結(回転方向に係止)される。つまり、クラッチ24によりモータ本体2の回転軸10とウォーム軸22とが一体回転するように連結されるため、モータ本体2の回転駆動による回転軸10の回転がクラッチ24を介してウォーム軸22に伝達され、該ウォーム軸22は回転する。ウォーム軸22の回転は、ウォームホイール23を介して出力軸23aに連結された駆動プーリを回転させ、図1に示すワイヤケーブル55を作動させる。これにより、モータ1の駆動によるスライドドア52の自動開閉作動が行われる。
一方、スライドドア52を手動で開閉作動させる場合、手動によるスライドドア52の開閉操作力によりワイヤケーブル55及び駆動プーリを介して出力軸23aに回転力が作用する。このとき、クラッチ24では、コイルスプリング35の付勢力により各コンタクト部材33が出力側回転体32と係止不能な径方向内側位置に配置されるため、回転軸10とウォーム軸22とが断絶された状態となっている。つまり、その手動操作時に大きな負荷となるモータ本体2の回転軸10が切り離されているため、負荷側からの出力軸23aの回転力がウォームホイール23及びウォーム軸22に伝達されるが、回転軸10には伝達されず、負荷側からの出力軸23aの回転負荷が軽減される。これにより、手動操作によりスライドドア52を介して出力軸23aに回転力が作用すると、回転負荷が軽減された出力軸23aは容易に回転し、スライドドア52は取り分け大きな操作力を必要としないで容易に手動開閉がなされる。
尚、本実施の形態では、ウォーム軸22とウォームホイール23との間において、スライドドア52の自動開閉時におけるモータ本体2側からの駆動力の伝達と、手動開閉時における出力軸23a側からの駆動力の伝達とが両者で最適となるように、そのウォーム軸22におけるウォーム部22aのリード(1回転させた時に進む距離)が予め実験やシミュレーション等により設定されている。これにより、本実施の形態では、スライドドア52の自動開閉及び手動開閉の両者において更なるスムーズな開閉が実現されている。
次に、本実施の形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)本実施の形態のクラッチ24は、モータ本体2の駆動による回転軸10の回転に伴って入力側回転体31が回転し、次いで各コンタクト部材33が入力側回転体31の回転力を受けてコイルスプリング35の付勢力に抗して出力側回転体32と回転方向に係止可能となる位置に向かって径方向に移動し、この移動された各コンタクト部材33を通じて入力側回転体31と出力側回転体32とが駆動連結(回転方向に係止)するように作動する。つまり、クラッチ24は、モータ本体2の駆動によりモータ本体2の回転軸10と減速部3のウォーム軸22とを一体回転するように連結するため、モータ本体2の駆動にてスライドドア52を作動させることを可能とする。一方、モータ本体2の非駆動時において、クラッチ24は、コイルスプリング35の付勢力により各コンタクト部材33が出力側回転体32と回転方向に係止不能となる位置に配置されるため、出力側回転体32が入力側回転体31と断絶された状態となっている。つまり、クラッチ24は、モータ本体2の非駆動時においては、回転軸10とウォーム軸22とを断絶しているため、スライドドア52を手動により作動させる場合等、その作動負荷の一つであるモータ本体2の回転軸10を負荷側から回転させなくて済み、手動による作動負荷を軽減できる。
このように作動するクラッチ24はモータ本体2の回転軸10と減速機構の入力軸であるウォーム軸22との間のトルクの小さい箇所に設けられるため、クラッチ構成部品の剛性を比較的低くして小型に構成することができる。つまり、個々のクラッチ構成部品を小さく構成でき、クラッチ24を小型化することができる。しかも、このクラッチ24は機械式であるため、該クラッチ24への電気配線が必要ない。そのため、クラッチ24を用いるモータ1では、その配線スペースを省略でき、小型化することができる。また、本実施の形態のように、搭載スペースを小さくすることが常に要求される車両搭載装置であるスライドドア開閉装置50に用いるため、クラッチ24の小型化、モータ1の小体格となる意義は大きい。また、クラッチ24での電力消費がないため、モータ1を低消費電力とすることができる。
(2)本実施の形態のクラッチ24では、各コンタクト部材33と係止して該コンタクト部材33を出力側回転体32と回転方向に係止可能となる位置側に案内する凹状部37bを有するプレート部材37がブラシホルダ7に固定されている。つまり、このプレート部材37にて各コンタクト部材33が入力側回転体31の回転力を受けて出力側回転体32と回転方向に係止可能となる位置に向かって径方向に移動する際に、該コンタクト部材33がプレート部材37に設けた凹状部37bに係止して同方向への該コンタクト部材33の移動が案内される。そのため、各コンタクト部材33の径方向の移動がスムーズとなるため、クラッチ24の作動をより安定化させることができる。また、プレート部材37は既設のモータ構成部品であるブラシホルダ7に固定されるため、プレート部材37を固定するための部材を別途必要とせず、モータ1の部品数を少なくすることができる。
(3)本実施の形態のクラッチ24では、プレートサポート34にて各コンタクト部材33とコイルスプリング35とが保持されている。そのため、これらがアッセンブリ化され、クラッチ24の組み立てが容易である。また、各コンタクト部材33とコイルスプリング35とが他部材に影響を与えたり、また他部材からこれらの部材に影響が与えられるといったことが低減されるため、クラッチ24の作動をより安定化させることができる。
(4)本実施の形態のクラッチ24では、回転軸10及びウォーム軸22の両軸の作動についてそれぞれいずれの回転方向においても作動するように構成されていることから、このように両回転駆動するモータ1等への適応性は高い。
(5)本実施の形態では、ウォーム軸22のスラスト荷重をスラスト受けボール27にて受ける構造としているため、ウォーム軸22の回転負荷が小さくなり、負荷側からの出力軸23aの回転負荷軽減に貢献することができる。
(第2の実施の形態)
図10及び図11に示す第2の実施の形態のクラッチ24aは、上記第1の実施の形態のクラッチ24に対して出力側回転体41の一部の形状及びプレート部材42の一部の形状が変更されており、その他の構成部材については同様の形状のものとなっている。尚、上記第1の実施の形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
出力側回転体41は、上記第1の実施の形態と同様の収容凹部41a及び外輪部41bを有し、その外輪部41bに設けられる連結凹部41cが6個で構成されている。つまり、上記第1の実施の形態での出力側回転体32の連結凹部32cの数(12個)に対して、本実施の形態での連結凹部41cの数は半分とされている。各連結凹部41cは、同様に径方向内側ほど拡開した台形状をなしている。
また、プレート部材42は、上記と同様の挿通孔42aが中央部に設けられるとともに、外周面が波状、即ち18個の凹状部42b及び凸状部42cが交互に設けられてなる。つまり、上記第1の実施の形態でのプレート部材37の凹状部37b及び角部37cの数(6個)に対して、本実施の形態での凹状部42b及び凸状部42cの数は3倍とされている。プレート部材42は、ブラシホルダ7に固定若しくは一体に形成される。
このように構成されるクラッチ24aにおいても、上記したクラッチ24とほぼ同様に動作する。即ち、モータ本体2の非駆動時のように回転軸10に回転駆動力が生じていない場合、コイルスプリング35によるコンタクト部材33の径方向内側への付勢により、図12に示すように、各コンタクト部材33の連結凸部33bが出力側回転体41の外輪部41bと係止不能な位置に配置される。これにより、ウォーム軸22と回転軸10とが断絶され、手動によるスライドドア52の容易な開閉作動が可能となっている。
また、各コンタクト部材33の係止凸部33cがプレート部材42の各凹状部42b内に配置されることで、プレートサポート34の回転が抑制され、手動によるスライドドア52開閉時に回転する出力側回転体41(外輪部41b)との連れ回りが防止される。尚、このプレート部材42の各凹状部42bは周方向に多数設けられるため、各コンタクト部材33の係止凸部33cが嵌り易く、回転方向への係合力が大きい仕様となっている。
これに対し、スライドドア52を自動開閉すべくモータ本体2が駆動され回転軸10とともに入力側回転体31が回転すると、図13に示すように、駆動円板部31c(各係合部31d)の回転により各コンタクト部材33の連結凸部33bがコイルスプリング35の付勢力に抗して径方向外側に押し出される。
またこのとき、各コンタクト部材33の連結凸部33bが駆動円板部31cから回転力を受けることでプレートサポート34も同方向に回転し、各コンタクト部材33の係止凸部33cがプレート部材42の凹状部42bの斜面に案内されて各コンタクト部材33の径方向外側への移動が補助される。そして、径方向に移動したコンタクト部材33の連結凸部33bは、出力側回転体41の外輪部41bに設けた連結凹部41c内へと向かう。
入力側回転体31の駆動円板部31cが更に回転すると、図14〜図16に示すように、出力側回転体41の外輪部41bの連結凹部41cよりプレート部材42の凹状部42bが周方向に細かく設定されていることから、各コンタクト部材33の係止凸部33cが、回転方向に並ぶ凹状部42bに入り込んだり凸状部42cを乗り越えたりと数回繰り返し、やがて図17に示すように、各コンタクト部材33の連結凸部33bが外輪部41bの連結凹部41c側面と回転方向に係合する。
そして、入力側回転体31の更なる回転により、各コンタクト部材33の連結凸部33bが駆動円板部31cの各係合部31dの側面に案内されて外輪部41bの連結凹部41c内に深く嵌り込み、各コンタクト部材33の係止凸部33cがプレート部材42の外周面と非係合となって、外輪部41bに入力側回転体31からの回転力が伝達される。こうして本実施の形態においても、モータ本体2の駆動による回転軸10の回転力がウォーム軸22及び出力軸23a側に伝達され、スライドドア52がモータ1の駆動により自動で開閉作動するようになっている。
このように構成された本実施の形態のクラッチ24aを用いても、上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
(第3の実施の形態)
図18に示す第3の実施形態のクラッチ61は、上記第1の実施形態のクラッチ24に替えてモータ1に備えられるものである。尚、上記第1の実施の形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
図18に示すように、クラッチ61は、回転軸10の先端部(ウォーム軸22側の端部)に固定される支持回転体62と、回転軸10の側方に配置される一対の傾動部材63,64と、回転軸10と傾動部材63,64との間に配置される一対の錘体65,66と、ウォーム軸22の基端部(回転軸10側の端部)に設けられる被係止部67と、傾動部材63,64の外周に配置されるスプリング68とを備えている。
円柱状の前記被係止部67は、前記ウォーム軸22と同軸となるように該ウォーム軸22の基端部に一体に設けられ、その外周面にローレット加工が施されている。本実施の形態ではウォーム軸22の外径と被係止部67の外径とは略等しく形成されている。
前記支持回転体62は、回転軸10の先端部に圧入される円環状の固定部62aと、該固定部62aから径方向に沿って外側に突出した一対の支持部62b,62cとから構成されている。固定部62aは、回転軸10に圧入されることにより回転軸10と一体回転可能であるとともに、固定部62aと回転軸10とは同軸となっている。そして、支持部62b,62cは、周方向に等角度間隔(本実施の形態では180°間隔)となる位置に設けられるとともに、略四角形の板状をなしている。また、各支持部62b,62cの中央部には、厚さ方向(回転軸10の軸方向と直交する方向に同じ)に貫通する支持孔62d,62eがそれぞれ形成されている。
前記傾動部材63,64は、互いに等しい形状をなすとともに、回転軸10を挟んで互いに対称状に配置されている。各傾動部材63,64は、回転軸10と平行に延びる傾動本体部63a,64aと、各傾動本体部63a,64aにおけるウォーム軸22側の端部に一体に設けられた挟持部63b,64bとから構成されている。各傾動本体部63a,64aは、回転軸10の外周面よりも曲率が小さい湾曲形状をなしている。また、前記挟持部63b,64bは、傾動本体部63a,64aに対して斜状に形成されることにより、その先端が該傾動本体部63a,64aよりも径方向内側に配置されている。そして、各挟持部63b,64bの先端は、前記被係止部67の外径と等しい曲率の湾曲形状をなす接触部63c,64cとなっている。各接触部63c,64cは、周方向に並ぶ複数の歯部63d,64dを有するとともに、これら歯部63d,64dの断面形状(軸方向と直交する方向の断面形状)は、例えば三角形状をなしている。
また、各傾動本体部63a,64aにおける挟持部63b,64bと逆側の端部には、周方向に延びるとともに外周側に開口する保持溝63e,64eがそれぞれ形成されている。更に、各傾動本体部63a,64aにおいて、その軸方向の中央部よりも前記挟持部63b,64b寄りの部位には、その周方向の中央となる位置に、径方向に沿って貫通した連結孔63f,64fがそれぞれ形成されている。これら連結孔63f,64fは、径方向から見ると、周方向の幅が前記支持部62b,62cの周方向の幅と等しいか若干広く、且つ軸方向の幅が前記支持部62b,62cの軸方向の長さよりも広い四角形状をなしている。また更に、各連結孔63f,64fの周方向の両側には、回転軸10の軸方向と直交する方向に沿って傾動本体部63a,64aをそれぞれ貫通するピン挿入孔63g,64gが形成されている。そして、一対の傾動部材63,64のうち一方の傾動部材63は、連結孔63fに前記支持部62bを挿入し、円柱状の支持ピン71をピン挿入孔63g及び支持孔62dに挿入することにより、支持回転体62に対して傾動可能に連結されている。同様に、他方の傾動部材64は、連結孔64fに前記支持部62cを挿入し、円柱状の支持ピン72をピン挿入孔64g及び支持孔62eに挿入することにより、支持回転体62に対して傾動可能に連結されている。
このように支持回転体62に対して支持ピン71,72を介して連結された各傾動部材63,64は、支持ピン71,72を支点として傾動すると、その軸方向の両端部が径方向に沿って移動する。また、各傾動部材63,64が支持回転体62に連結された状態では、前記接触部63c,64cが前記被係止部67と径方向に対向するとともに、挟持部63b,64bによって径方向の両側から被係止部67を挟持することが可能である。更に、同状態において傾動本体部63a,64aが回転軸10に対して平行である場合には、傾動部材63,64は、軸方向から見た形状が、回転軸10の軸線を中心とした同心形状となっている。
前記回転軸10には、各傾動本体部63a,64aにおける挟持部63b,64bと逆側の端部と径方向に対向する部位に、前記一対の錘体65,66を保持する保持体81が回転軸10と一体回転可能に固定されている。図19に示すように、保持体81は、円筒状をなすとともに、その厚さが、回転軸10に対して平行に配置された傾動本体部63a,64aの内周面と回転軸10の外周面との間の距離と等しく形成されている。
保持体81には、回転軸10の軸線を挟んで互いに対称形状をなし外周側に開口する一対の保持凹部81a,81bが設けられている。これら2つの保持凹部81a,81bのうち一方の保持凹部81aの開口部は傾動本体部63aに対向し、他方の保持凹部81bの開口部は傾動本体部64aに対向している。また、図18に示すように、各保持凹部81a,81bは、径方向から見た形状が四角形状をなしており、各保持凹部81a,81bにおいて、軸方向に対向する一対の内側面が互いに平行をなすとともに、周方向に対向する一対の内側面が互いに平行をなしている。
一対の保持凹部81a,81b内に収容される前記一対の錘体65,66は、保持凹部81a,81bに対応した円弧状をなすとともに、その外周面が、前記保持体81の外周面と面一となっている。また、各錘体65,66は、その軸方向の両端面が互いに平行をなすとともに、その周方向の両端面が互いに平行をなすように形成されている。そして、各錘体65,66は、対応する保持凹部81a,81bに収容された状態では、その軸方向の両端面及び周方向の両端面が保持凹部81a,81bの内側面にそれぞれ当接しており、保持凹部81a,81bの内側面に案内されながら径方向に沿って外周側に移動可能となっている。
また、図19に示すように、前記傾動本体部63a,64aに設けられた保持溝63e,64eを通るように、前記スプリング68が傾動部材63,64に対して嵌められている。スプリング68は、針金をC字状に成形してなるものであり(図18参照)、傾動部材63,64における連結孔63f,64fよりも回転軸10の基端側となる部位、より詳しくは傾動部材63,64における挟持部63b,64bと逆側の端部を径方向内側に向かって付勢する。
尚、本実の形態では、錘体65,66の質量は、モータ本体2の駆動時に回転軸10とともに回転する錘体65,66に作用する遠心力が、スプリング68の付勢力よりも大きくなるように設定されている。また、傾動部材63,64の傾動時の支点(即ち支持ピン71,72)を「F」とし、傾動部材63,64において錘体65,66から径方向外側に向かう力を受ける力点を「S」とし、更に、接触部63c,64cにおいて被係止部67に対して該被係止部67の径方向の中心に向かう力を加える作用点を「A」とすると、傾動部材63,64は、支点Fから力点Sまでの距離L1が、支点Fから作用点Aまでの距離L2よりも長くなるように設定されている。更に、錘体65,66の質量及び距離L1,L2は、回転軸10の回転に伴って作用する遠心力により錘体65,66が外周側に移動して傾動部材63,64を傾動させた場合に、径方向に沿って内周側へ移動した挟持部63b,64bによる被係止部67の挟持によって、傾動部材63,64が被係止部67と回転方向に係止可能となるように設定されている。
このように構成されるクラッチ61では、モータ本体2の非駆動時のように回転軸10に回転駆動力が生じていない場合、傾動部材63,64の一端部(支持ピン71,72を挟んで挟持部63b,64bと逆側の端部)をスプリング68が径方向内側に向かって付勢することから、その付勢力によって、傾動部材63,64は、図19に示すように、傾動本体部63a,64aが保持体81の外周面に当接するとともに、挟持部63b,64bの接触部63c,64cが被係止部67と非接触となる状態に保たれている。即ち、傾動部材63,64は、被係止部67と回転方向に係止不能な位置に配置されている。これにより、ウォーム軸22と回転軸10とが断絶され、手動によるスライドドア52の容易な開閉作動が可能となっている(図21参照)。尚このとき、傾動本体部63a,64aは、回転軸10と平行をなしている。
これに対し、スライドドア52を自動開閉すべくモータ本体2が駆動されると、回転軸10の回転に伴って支持回転体62が回転し、傾動部材63,64が支持回転体62の回転力を受けて回転する。また、回転軸10の回転に伴って保持体81とともに錘体65,66が回転する。このとき、図20に示すように、回転軸10の回転に伴う遠心力の作用により、錘体65,66がスプリング68の付勢力に抗して外周側に移動し、傾動部材63,64の一端部(支持ピン71,72を挟んで挟持部63b,64bと逆側の端部)を径方向外側に押圧する。そして、錘体65,66からの押圧力により、傾動部材63,64が、支持ピン71,72を支点として傾動し、傾動部材63,64の他端部(挟持部63b,63c側の端部)が径方向に沿って内周側へ移動されて接触部63c,64cが被係止部67に当接する。即ち、傾動部材63,64は、被係止部67と回転方向に係止可能な位置に配置される。
このとき、傾動部材63,64の前記一端部に加えられた錘体65,66からの押圧力は、支持ピン71,72を支点として傾動可能な傾動部材63,64により、傾動部材63,64の前記他端部にて被係止部67を径方向内側に向かって押圧する押圧力に変換される。従って、傾動部材63,64の挟持部63b,64bによって被係止部67が挟持され、傾動部材63,64を通じて支持回転体62と被係止部67とが回転方向に係止される。尚、本実施の形態では、支点Fと力点Sとの間の距離L1よりも、支点Fと作用点Aとの間の距離L2の方が短く設定されているため(図19参照)、錘体65,66による傾動部材63,64への押圧力から、スプリング68による傾動部材63,64への付勢力を差し引いた力よりも大きな力が、挟持部63b,64bから被係止部67に対して加えられる。
このように、傾動部材63,64の挟持部63b,64bによって被係止部67が挟持されることにより、傾動部材63,64と被係止部67とが駆動連結(回転方向に係止)されて一体回転可能となる。こうして、本実施の形態においても、モータ本体2の駆動による回転軸10の回転力が、傾動部材63,64を介してウォーム軸22及び出力軸23a側に伝達され、スライドドア52がモータ1の駆動により自動で開閉作動するようになっている(図21参照)。
尚、モータ本体2の駆動が停止されると、回転軸10の回転に伴う遠心力が作用しなくなるため、図19に示すように、スプリング68による傾動部材63,64の前記一端部の径方向内側への付勢により、傾動部材63,64の前記一端部が径方向に沿って内周側に向かって移動される。従って、傾動部材63,64は、傾動本体部63a,64aが回転軸10に対して平行となる位置まで傾動され、接触部63c,64cと被係止部67とが非接触状態となる。即ち、傾動部材63,64は、被係止部67と回転方向に係止不能な位置に復帰する。同時に、傾動本体部63a,64aの前記一端部を介して、スプリング68の径方向内側への付勢力が錘体65,66に伝達され、錘体65,66は、保持凹部81a,81b内に収容される。
次に、本実施の形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)本実施の形態のクラッチ61では、モータ本体2の駆動による回転軸10の回転に伴って支持回転体62が回転すると、傾動部材63,64が支持回転体62の回転力を受けて回転する。また、回転軸10の回転に伴って該回転軸10を中心として錘体65,66が回転し、その回転に伴う遠心力の作用によって、当該錘体65,66は、スプリング68の付勢力に抗して外周側に移動し、傾動部材63,64の一端部(支持ピン71,72を挟んで挟持部63b,64bと逆側の端部)を径方向外側に押圧する。そして、クラッチ61は、錘体65,66からの押圧力により支持ピン71,72を支点として傾動された傾動部材63,64を通じて、支持回転体62と被係止部67とが駆動連結(回転方向に係止)するように作動する。つまり、クラッチ61は、モータ本体2の駆動によりモータ本体2の回転軸10と減速部3のウォーム軸22とを一体回転するように連結するため、モータ本体2の駆動にてスライドドア52を作動させることを可能とする。一方、モータ本体2の非駆動時において、クラッチ61は、スプリング68の付勢力により傾動部材63,64が被係止部67と回転方向に係止不能となる位置に配置されるため、被係止部67が支持回転体62と断絶された状態となっている。つまり、クラッチ61は、モータ本体2の非駆動時においては、回転軸10とウォーム軸22とを断絶しているため、スライドドア52を手動により作動させる場合等、その作動負荷の一つであるモータ本体2の回転軸10を負荷側から回転させなくて済み、手動による作動負荷を軽減できる。
このように作動するクラッチ61はモータ本体2の回転軸10と減速機構の入力軸であるウォーム軸22との間のトルクの小さい箇所に設けられるため、クラッチ構成部品の剛性を比較的低くして小型に構成することができる。つまり、個々のクラッチ構成部品を小さく構成でき、クラッチ61を小型化することができる。しかも、このクラッチ61は機械式であるため、該クラッチ61への電気配線が必要ない。そのため、クラッチ61を用いるモータ1では、その配線スペースを省略でき、小型化することができる。また、本実施の形態のように、搭載スペースを小さくすることが常に要求される車両搭載装置であるスライドドア開閉装置50に用いるため、当該クラッチ61の小型化、モータ1の小体格となる意義は大きい。また、クラッチ61での電力消費がないため、モータ1を低消費電力とすることができる。
(2)本実施の形態の傾動部材63,64では、支点Fと力点Sとの間の距離L1よりも、支点Fと作用点Aとの間の距離の方が短く設定されている。そのため、錘体65,66による傾動部材63,64への押圧力から、スプリング68による傾動部材63,64への付勢力を差し引いた力よりも大きな力が、挟持部63b,64bから被係止部67に対して加えられる。従って、傾動部材63,64による被係止部67の挟持力をより大きなものとすることができ、その結果、回転軸10の回転力を効率よくウォーム軸22に伝達することができる。
(3)被係止部67の外周面にローレット加工が施されるとともに、被係止部67に接触する接触部63c,64cは、周方向に並ぶ複数の歯部63d,64dをそれぞれ有している。従って、被係止部67と接触部63c,64cとの間の摩擦力をより大きくすることができ、回転軸10の回転力を、傾動部材63,64を介してより効率よくウォーム軸22に伝達することができる。
(4)モータ本体2の駆動時において、傾動部材63,64は、支持回転体62との連結部である支持ピン71,72を支点として傾動するだけの簡単な動作で被係止部67と回転方向に係止可能な位置に配置される。従って、本実施の形態のクラッチ61の構成を簡易なものとすることが可能となる。
尚、本発明の実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記第1及び第2の実施の形態では、入力側回転体31、出力側回転体32,41、コンタクト部材33、プレートサポート34、コイルスプリング35及びプレート部材37,42といったクラッチ24,24aの構成部材の形状を適宜変更してもよい。また、コンタクト部材33やコイルスプリング35等の数を変更してもよい。また、プレート部材37,42等、部材を省略してもよい。
また、入力側回転体31、コンタクト部材33、プレートサポート34及びプレート部材37,42は樹脂、出力側回転体32は金属にて形成したが、樹脂のものいずれかを金属にて形成してもよく、金属のものを樹脂にて形成してもよい。
・上記第1及び第2の実施の形態では、プレート部材37,42をブラシホルダ7に固定したが、プレート部材37,42をブラシホルダ7と同材料とすれば一体形成することもできる。また、プレート部材37,42をギヤハウジング21に固定してもよく、この場合もプレート部材37,42をギヤハウジング21と同材料とすれば一体形成することもできる。
・上記第3の実施の形態では、クラッチ61は、一対(即ち2つ)の傾動部材63,64を備えている。しかしながら、クラッチ61に備えられる傾動部材63,64の数は、3つ以上であってもよい。
・上記第3の実施の形態では、錘体65,66は、回転軸10に固定された保持体81によって径方向に移動可能に保持されている。しかしながら、錘体65,66は、径方向にそれぞれ対向する傾動部材63,64の挟持部63b,64bと逆側の端部に直接固定されてもよい。このようにすると、保持体81を省略可能となり、部品点数を減少させることができる。また、傾動部材63,64のみで、モータ本体2の駆動時に回転軸10の回転に伴う遠心力によってスプリング68の付勢力に抗して傾動可能であれば、錘体65,66を省略してもよい。このようにすると、更なる部品点数の減少を図ることができる。
・上記第3の実施の形態では、接触部63c,64cは、それぞれ周方向に並ぶ歯部63d,64dを備えている。しかしながら、歯部63d,64dの代わりに、接触部63c,64cにローレット加工を施してもよい。また、被係止部67の外周に、周方向に並ぶ複数の歯部を設けてもよい。
・上記第3の実施の形態では、傾動部材63,64における一端部(回転軸10の基端側の端部)に対向するように錘体65,66が配置されている。しかしながら、クラッチ61の構成は、これに限らない。例えば、回転軸10の側方に配置される一対の傾動部材のウォーム軸22側の端部の内周面に錘体をそれぞれ固定するとともに、これら傾動部材の軸方向の中央部よりも回転軸10の基端部寄りとなる位置が支点となるように、各傾動部材を、支持ピン71,72を介して支持回転体62に連結する。また、各傾動部材における一端部(錘体と逆側の端部)を外周側に向かって付勢するように、一対の傾動部材の内側にスプリングを配置する。そして、ウォーム軸22の回転軸10側の端部に、カップ状の被係止部を一体に設ける。尚、被係止部は、該被係止部の円筒状をなす側壁の内周面と、各傾動部材における他端部(錘体側の端部)とが径方向に対向する位置に配置される。このように構成されたクラッチでは、回転軸10の回転に伴う遠心力によってスプリングの付勢力に抗して錘体が外周側に移動すると、当該錘体の移動に伴って、支持ピン71,72を支点として傾動部材が傾動し、各傾動部材の前記他端部が径方向に沿って外周側に移動する。そして、各傾動部材の前記他端部が被係止部の側壁の内周面に当接し、当接した部位における摩擦力により、傾動部材と被係止部とが駆動連結(回転方向に係止)されて一体回転可能となる。このようにしても、上記第3の実施の形態の(4)と同様の作用効果を得ることができる。
・上記各実施の形態では、減速機構としてウォーム軸22及びウォームホイール23を用いて構成したが、減速機構の構成はこれに限定されるものではない。
・上記各実施の形態では、車両側部の開口を開閉するスライドドア52を開閉作動させるための車両用スライドドア開閉装置50のモータ1に適用したが、その他の装置のモータに適用してもよく、例えば車両後部の開口を開閉するバックドアを開閉作動させるための車両用バックドア開閉装置のモータに適用してもよい。特に、バックドアでも上下方向に開閉させるドアにおいては上記実施の形態のスライドドア52と同様に、そのドアの手動開閉に比較的大きな操作力が必要である。そのため、上記のようなクラッチ24,24aにて負荷側からの出力軸23aの回転負荷が軽減される意義は大きく、ドアの手動開閉が容易である。
次に、上記実施の形態及び別例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ) 記駆動軸側からの駆動時には前記駆動軸から前記従動軸に両回転方向の回転力を伝達する一方、前記駆動軸の非駆動時には前記従動軸と前記駆動軸とを断絶し、前記従動軸の両回転方向の回転を許容するように作動することを特徴とする。
(ロ) 記クラッチは、前記モータ本体の駆動時には前記回転軸から前記減速機構の入力軸に両回転方向の回転力を伝達する一方、前記モータ本体の非駆動時には前記減速機構の入力軸と前記回転軸とを断絶し、前記減速機構の入力軸の両回転方向の回転を許容するように作動することを特徴とする。
これらのクラッチによれば、駆動軸(回転軸)及び従動軸(減速機構の入力軸)の両軸の作動についてそれぞれいずれの回転方向においても作動することから、装置(モータ)への適応性は高い。
第1の実施の形態におけるモータの断面図である。 第1の実施の形態のクラッチを示す斜視図である。 第1の実施の形態のクラッチを示す分解斜視図である。 第1の実施の形態のクラッチの動作を説明するための図であり、(a)はクラッチの要部断面図、(b)は回転軸側から見たクラッチの平面図である。 第1の実施の形態のクラッチの動作を説明するための図であり、(a)はクラッチの要部断面図、(b)は回転軸側から見たクラッチの平面図である。 第1の実施の形態のクラッチの動作を説明するための図であり、(a)はクラッチの要部断面図、(b)は回転軸側から見たクラッチの平面図である。 第1の実施の形態のクラッチの動作を説明するための図であり、(a)はクラッチの要部断面図、(b)は回転軸側から見たクラッチの平面図である。 第1の実施の形態のクラッチの動作を説明するための図であり、(a)はクラッチの要部断面図、(b)は回転軸側から見たクラッチの平面図である。 第1の実施の形態のクラッチの動作を説明するための図であり、(a)はクラッチの要部断面図、(b)は回転軸側から見たクラッチの平面図である。 第2の実施の形態のクラッチを示す斜視図である。 第2の実施の形態のクラッチを示す分解斜視図である。 第2の実施の形態のクラッチの動作を説明するための図であり、(a)はクラッチの要部断面図、(b)は回転軸側から見たクラッチの平面図である。 第2の実施の形態のクラッチの動作を説明するための図であり、(a)はクラッチの要部断面図、(b)は回転軸側から見たクラッチの平面図である。 第2の実施の形態のクラッチの動作を説明するための図であり、(a)はクラッチの要部断面図、(b)は回転軸側から見たクラッチの平面図である。 第2の実施の形態のクラッチの動作を説明するための図であり、(a)はクラッチの要部断面図、(b)は回転軸側から見たクラッチの平面図である。 第2の実施の形態のクラッチの動作を説明するための図であり、(a)はクラッチの要部断面図、(b)は回転軸側から見たクラッチの平面図である。 第2の実施の形態のクラッチの動作を説明するための図であり、(a)はクラッチの要部断面図、(b)は回転軸側から見たクラッチの平面図である。 第3の実施の形態のクラッチを示す分解斜視図である。 第3の実施の形態のクラッチの断面図である。 第3の実施の形態のクラッチの断面図である。 車両用スライドドア開閉装置の概略構成図である。
符号の説明
1…モータ、2…モータ本体、7…被取付体としてのブラシホルダ、8…ブラシ、10…駆動軸としての回転軸、21…被取付体としてのギヤハウジング、22…従動軸及び減速機構を構成する該減速機構の入力軸としてのウォーム軸、23…減速機構を構成するウォームホイール、24,24a,61…クラッチ、31…第1回転体としての入力側回転体、32…第2回転体としての出力側回転体、33…連結部材としてのコンタクト部材、34…保持部材としてのプレートサポート、35…付勢部材としてのコイルスプリング、37…規制案内部材としてのプレート部材、37b…案内部としての凹状部、50…車両用ドア開閉装置としての車両用スライドドア開閉装置、51…開口としての乗降口、52…ドアとしてのスライドドア、62…第1回転体としての支持回転体、63,64…連結部材としての傾動部材、67…第2回転体としての被係止部、63…付勢部材としてのスプリング、71,72…連結部としての支持ピン71,72。

Claims (11)

  1. 駆動軸と該駆動軸と同軸上に配置される従動軸との間に設けられ、前記駆動軸側からの駆動時には前記駆動軸と前記従動軸とを連結して前記駆動軸からの回転力を前記従動軸側に伝達する一方、前記駆動軸の非駆動時には前記従動軸と前記駆動軸とを断絶するように作動するクラッチであって、
    前記駆動軸と一体回転可能に同軸上に設けられる第1回転体と、
    前記従動軸と一体回転可能に同軸上に設けられる第2回転体と、
    前記第1回転体と回転方向に係止可能な状態を維持しつつ前記第2回転体と回転方向に係止可能な位置と係止不能な位置とのいずれかに配置されるべく径方向に沿って移動可能に設けられ、前記第1回転体の回転に伴って該回転体から回転力を受けて前記第2回転体と回転方向に係止可能となる位置側に移動される連結部材と、
    前記第2回転体と回転方向に係止不能となる位置側に前記連結部材を付勢する付勢部材とを備え
    前記駆動軸の非駆動時には前記従動軸と前記駆動軸とを断絶し、前記従動軸の両回転方向の回転を許容するように作動することを特徴とするクラッチ。
  2. 請求項1に記載のクラッチにおいて、
    移動不能な被取付体に対して設けられるものであり、前記連結部材と係止して該連結部材を前記第2回転体と回転方向に係止可能となる位置側に案内する案内部を有する規制案内部材を設けたことを特徴とするクラッチ。
  3. 請求項1又は2に記載のクラッチにおいて、
    前記連結部材及び前記付勢部材を保持する保持部材を設けたことを特徴とするクラッチ。
  4. 請求項1に記載のクラッチにおいて、
    前記連結部材は、前記第1回転体に連結されるとともに、前記第1回転体との連結部を支点として、前記連結部材の軸方向の両端部が径方向に沿って移動するように傾動可能に設けられ、前記駆動軸の回転時には、前記駆動軸の回転に伴って作用する遠心力によって前記連結部を支点として傾動することにより、前記第2回転体と回転方向に係止可能な位置に配置されることを特徴とするクラッチ。
  5. モータ本体と減速機構とを備えてなるモータにおいて、前記モータ本体の駆動により回転される回転軸と、該回転軸と同軸上に配置される前記減速機構の入力軸との間に設けられ、前記モータ本体の駆動時には前記回転軸と前記減速機構の入力軸とを連結して前記回転軸からの回転力を前記減速機構側に伝達する一方、前記モータ本体の非駆動時には前記減速機構の入力軸と前記回転軸とを断絶するように作動するクラッチを備えてなるものであって、
    前記クラッチは、
    前記回転軸と一体回転可能に同軸上に設けられる第1回転体と、
    前記減速機構の入力軸と一体回転可能に同軸上に設けられる第2回転体と、
    前記第1回転体と回転方向に係止可能な状態を維持しつつ前記第2回転体と回転方向に係止可能な位置と係止不能な位置とのいずれかに配置されるべく径方向に沿って移動可能に設けられ、前記第1回転体の回転に伴って該回転体から回転力を受けて前記第2回転体と回転方向に係止可能となる位置側に移動される連結部材と、
    前記第2回転体と回転方向に係止不能となる位置側に前記連結部材を付勢する付勢部材とを備え
    前記クラッチは、前記モータ本体の非駆動時には前記減速機構の入力軸と前記回転軸とを断絶し、前記減速機構の入力軸の両回転方向の回転を許容するように作動することを特徴とするモータ。
  6. 請求項5に記載のモータにおいて、
    前記クラッチには、移動不能な被取付体に対して設けられ、前記連結部材と係止して該連結部材を前記第2回転体と回転方向に係止可能となる位置側に案内する案内部を有する規制案内部材が設けられていることを特徴とするモータ。
  7. 請求項5又は6に記載のモータにおいて、
    前記クラッチには、前記連結部材及び前記付勢部材を保持する保持部材が設けられていることを特徴とするモータ。
  8. 請求項5〜7のいずれか1項に記載のモータにおいて、
    前記クラッチの前記連結部材と係止して該連結部材を前記第2回転体と回転方向に係止可能となる位置側に案内する案内部を有する規制案内部材を、前記モータ本体に備えられる給電用のブラシを保持するためのブラシホルダに固定又は一体形成される、若しくは前記減速機構を収容するためのギヤハウジングに固定又は一体形成されることを特徴とするモータ。
  9. 請求項5に記載のモータにおいて、
    前記連結部材は、前記第1回転体に連結されるとともに、前記第1回転体との連結部を支点として、前記連結部材の軸方向の両端部が径方向に沿って移動するように傾動可能に設けられ、前記回転軸の回転時には、前記回転軸の回転に伴って作用する遠心力によって前記連結部を支点として傾動することにより、前記第2回転体と回転方向に係止可能な位置に配置されることを特徴とするモータ。
  10. 請求項5〜9のいずれか1項に記載のクラッチ付きのモータをその駆動源として用い、車両に設けられる開口を開閉するドアを前記モータの駆動によって開閉作動させるように構成される車両用ドア開閉装置であって、
    前記ドアを自動開閉させる旨の指令が生じると、前記モータ本体の駆動とともに前記クラッチにより前記モータ本体の回転軸と前記減速機構の入力軸とを連結して前記回転軸からの回転力を前記減速機構を介して出力し前記ドアを自動開閉させる一方、前記モータ本体の非駆動時には、前記クラッチにより前記減速機構の入力軸と前記回転軸とを断絶して前記ドアの手動開閉時の作動負荷を軽減させた状態とすることを特徴とする車両用ドア開閉装置。
  11. 請求項10に記載の車両用ドア開閉装置において、
    車両側部の開口を開閉するスライドドアを開閉作動させるための車両用スライドドア開閉装置、又は、車両後部の開口を開閉するバックドアを開閉作動させるための車両用バックドア開閉装置であることを特徴とする車両用ドア開閉装置。
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