(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図面に従って説明する。
図1は、本実施形態のモータ11を示す。このモータ11は、図2に示すように、自動車に搭載されるスライドドア開閉装置1の駆動源として用いられるものである。スライドドア開閉装置1は、車両ボディ2の側面に沿ってスライド開閉可能に配設されたスライドドア3内に配設されている。スライドドア3は、車両ボディ2に設けられたガイドレール4に連結された連結具5にて支持されている。連結具5は、モータ11の駆動によるワイヤケーブル6の巻き取り及び送り出しが行われることによりガイドレール4に沿って移動する。そして、この連結具5の移動によりスライドドア3が車両ボディ2に形成された乗降口2aを開閉するようになっている。
図1に示すように、モータ11は、モータ本体12と減速部13とからなる所謂ギヤードモータである。モータ本体12は、ヨークハウジング14、一対のマグネット15、電機子16、ブラシホルダ17及び一対のブラシ18を備えている。
ヨークハウジング14は、有底筒状をなすとともに、その内周面には一対のマグネット15が固着されている。そして、ヨークハウジング14の底部中央には軸受19が設けられるとともに、該軸受19は、ヨークハウジング14の内部に配置された電機子16の回転軸20(駆動軸)の基端部を回転可能に支持する。
ヨークハウジング14の開口部14aには、径方向外側に向かって延設されたフランジ部14bが形成されるとともに、該フランジ部14bは、後述する減速部13のギヤハウジング31に連結固定されている。尚、この固定の際には、フランジ部14bは、ギヤハウジング31の開口部31aとの間にブラシホルダ17が介在された状態で同ギヤハウジング31に螺子21にて固定される。
ブラシホルダ17は、ヨークハウジング14内において、前記回転軸20の先端側の部位を軸支する軸受22と、同回転軸20に固着された整流子23に摺接する一対のブラシ18とを保持している。また、ブラシホルダ17において、ヨークハウジング14及びギヤハウジング31の外部に突出する部位は、車体側から延びる車体側コネクタ(図示略)が接続されるコネクタ部17aであるとともに、該コネクタ部17aの接続凹部17b内には複数本のターミナル24が露出している。これらターミナル24は、ブラシホルダ17にインサートされるとともに、モータ11内に備えられる回転センサ(後述のホール素子42)及び前記ブラシ18等と電気的に接続されている。そして、コネクタ部17aに車体側コネクタが接続されると、車体側に備えられるコントローラ25とモータ11とが電気的に接続される。これにより、モータ11とコントローラ25との間で、電源供給やセンサ信号等の出力が可能となる。
前記減速部13は、ギヤハウジング31と、ウォーム軸32(従動軸)及びウォームホイール33から構成される減速機構34と、出力軸35と、クラッチ50とを有する。
樹脂製のギヤハウジング31は、前記ヨークハウジング14の開口部14aと対向する開口部31aを備え、両開口部14a,31a間に前記ブラシホルダ17が介装されている。また、ギヤハウジング31には、該ギヤハウジング31の開口部31aから軸方向に凹設されたクラッチ収容部31bが形成されている。更に、同ギヤハウジング31には、クラッチ収容部31bの底部から軸方向に延びウォーム軸32を収容する略円筒状の軸収容筒部31cと、軸収容筒部31cと繋がりウォームホイール33を収容する略円形状のホイール収容部31dとが形成されている。
軸収容筒部31cの軸方向の両端部には、軸受36,37がそれぞれ配置されている。そして、前記ウォーム軸32は、その先端部が軸受37にて軸支された状態で、前記回転軸20と同軸上となるように(即ち回転軸20とウォーム軸32との中心軸線が一致する)軸収容筒部31c内に配置されている。このウォーム軸32の軸方向の略中央部には、螺子の歯形状をなすウォーム部32aが形成されている。また、軸収容筒部31cにおけるウォーム軸32の先端側の端部には、該ウォーム軸32のスラスト荷重を受けるためのスラスト受けボール38及びスラスト受けプレート39が配置されている。
ウォーム軸32においてウォーム部32aと軸受37にて軸支される部位との間には、周方向に多極着磁されたリング状のセンサマグネット41が同ウォーム軸32と一体回転するように装着されている。そして、軸収容筒部31cにおいてセンサマグネット41の外周面と対向する部位には、該センサマグネット41の回転に伴う磁界の変化を検出するホール素子42が配設されている。ホール素子42は、ウォーム軸32の回転数や回転速度等の回転情報を検出するための信号であって、センサマグネット41の回転に伴う磁界の変化に応じた信号である回転検出信号を出力する。そして、コントローラ25では、この回転検出信号に基づいてスライドドア3の開閉位置や開閉速度が検出される。
前記ホイール収容部31dには、ウォーム軸32のウォーム部32aと噛合する円板状のウォームホイール33が回転可能に収容されている。このウォームホイール33の径方向の中央部には、該ウォームホイール33と一体回転するように出力軸35が固定されている。出力軸35には、スライドドア3を開閉作動させるための前記ワイヤケーブル6(図2参照)が掛装される駆動プーリ(図示略)が一体回転するように連結されている。
前記クラッチ収容部31bには、ウォーム軸32と回転軸20との間に配置されてウォーム軸32と回転軸20との連結・断絶を行う機械式のクラッチ50が収容されている。図4(a)に示すように、クラッチ50は、駆動側回転体51、2つのケース保持スプリング52、3つのコロ部材53、保持ケース54、3つの案内部材55、3つの保持スプリング56、カバー57及び従動側回転体58を備えている。
駆動側回転体51は、円板状をなすとともに、その外径は前記クラッチ収容部31b(図1参照)の内径よりも小さく形成されている。この駆動側回転体51の径方向の中央部には、軸連結凹部51aが形成されている。軸連結凹部51aは、駆動側回転体51における保持ケース54側の軸方向の端面から従動側回転体58側の軸方向の端面に向かって軸方向に沿って凹設されるとともに、軸方向から見た形状が二面幅形状をなしている。そして、図3に示すように、回転軸20の先端部が当該軸連結凹部51aに対応した二面幅形状をなしており、回転軸20の先端部が軸連結凹部51aに挿入されると、駆動側回転体51は回転軸20の先端部に回転方向に係合され、該回転軸20と一体回転可能となる。尚、連結された回転軸20及び駆動側回転体51は同軸上となる(互いの中心軸線が一致する)。また、軸連結凹部51aの底部にはボール収容孔51bが形成されている。このボール収容孔51bには、回転軸20と従動側回転体58とのスラスト荷重を受ける球体状のスラスト受けボール61が収容されている。
図4(a)に示すように、駆動側回転体51における軸連結凹部51aの外周側には、一対のばね収容部51cが形成されている。2つのばね収容部51cは、駆動側回転体51における保持ケース54側の軸方向の端面から該駆動側回転体51を軸方向に凹設して形成されている。また、2つのばね収容部51cは、軸連結凹部51aを囲繞するような円弧状の溝状をなすとともに、軸連結凹部51aの幅方向の両側で対称な形状をなしている。これらばね収容部51cには、圧縮コイルばねよりなるケース保持スプリング52がそれぞれ収容されている。
駆動側回転体51において、隣り合う2つのばね収容部51cの周方向の端部間、即ち周方向に180°間隔となる2箇所には、係合凹部51dがそれぞれ形成されている。各係合凹部51dは、駆動側回転体51における保持ケース54側の軸方向の端面から該駆動側回転体51を軸方向に凹設して形成されるとともに、駆動側回転体51の径方向の中央を曲率中心とする円弧状をなしている。更に、各係合凹部51dは、前記ばね収容部51cと同心状に形成されるとともに、各係合凹部51dの径方向の幅は、ばね収容部51cの径方向の幅よりも狭く形成されている。また、各係合凹部51dは、周方向に隣り合う2つのばね収容部51c同士を連通している。
駆動側回転体51の外周縁部には、3つの制御溝51eが形成されている。3つの制御溝51eは、駆動側回転体51において、周方向に等角度間隔(本実施形態では120°間隔)となる3箇所に形成されている。各制御溝51eは、駆動側回転体51の外周縁から径方向内側に向かって凹設されることにより、径方向外側に開口している。また、各制御溝51eは、軸方向には保持ケース54側にのみ開口するとともに、軸方向から見た形状が径方向外側に開口するU字状をなしている。
各前記コロ部材53は、動力伝達部53aと、該動力伝達部53aと一体に形成されたカム係合部53bとから構成されている。動力伝達部53aは柱状をなすとともに、同動力伝達部53aの軸方向と直交する断面形状は長手方向を有する形状をなしている。また、動力伝達部53aの外形は、軸方向から見ると、長手方向の一端側の端部(クラッチ50において径方向内側となる端部)がU字状をなすとともに、長手方向の他端側の端部(クラッチ50において径方向外側となる端部)が長手方向の他端に向かうに連れて幅が狭くなる台形状をなしている。そして、動力伝達部53aの短手方向(クラッチ50において周方向に略同じ)の両側面には、互いに平行をなす一対の案内面53cが形成されている。各案内面53cは、軸方向と平行な平面状をなしている。また、動力伝達部53aの短手方向の両側面には、案内面53cよりも径方向外側(クラッチ50の径方向において外側)となる部位に一対の当接面53dが形成されている。動力伝達部53aを軸方向から見ると、一対の当接面53dは、動力伝達部53aの長手方向の他端に向かうに連れて互いに近づくように同動力伝達部53aの長手方向に対して傾斜している。そして、各当接面53dは、軸方向と平行な平面状をなしている。また、図3に示すように、この動力伝達部53aの軸方向の長さは、駆動側回転体51に形成された前記制御溝51eの軸方向の幅と略等しく形成されている。更に、図4(a)に示すように、動力伝達部53aを軸方向から見た場合、同動力伝達部53aの長手方向の長さは、制御溝51eの径方向の長さと略等しく形成されるとともに、同動力伝達部53aの短手方向の長さ(即ち案内面53c間の長さ)は、制御溝51eの周方向の幅と略等しく形成されている。
前記カム係合部53bは、動力伝達部53aの軸方向の一端面から軸方向に沿って延びるとともに、円柱状をなしている。また、カム係合部53bは、コロ部材53を軸方向から見た場合に、動力伝達部53aの長手方向の一端部(クラッチ50において径方向内側となる端部)から突出している。更に、カム係合部53bの外径は、動力伝達部53aの短手方向の長さ(即ち当接面53d間の長さ)と等しく形成されている。
図3に示すように、3つのコロ部材53は(図3では3つのコロ部材53のうち1つのみ図示している)、その動力伝達部53aが駆動側回転体51の3つの制御溝51e内にそれぞれ収容される一方、カム係合部53bが駆動側回転体51よりも保持ケース54側に突出するように配置されている。図5及び図6に示すように、動力伝達部53aは、軸方向から見ると、該動力伝達部53aの長手方向が駆動側回転体51の径方向に一致するとともに、該動力伝達部53aの短手方向が駆動側回転体51の周方向に一致するように制御溝51eに挿入されている。そして、コロ部材53は、案内面53cを制御溝51eの内周面に摺接させながら駆動側回転体51に対して径方向に移動可能である。そのため、コロ部材53は、制御溝51eによって径方向の移動が案内される一方、同制御溝51eによって駆動側回転体51に対する周方向の移動が規制される。
図3及び図4(a)に示すように、保持ケース54は、駆動側回転体51よりも大きい外径を有する略円板状をなしている。保持ケース54の径方向の中央部には、軸方向に貫通した挿通孔54aが形成されている。挿通孔54aは、軸方向から見た形状が円形状をなすとともに、その内径は、回転軸20の外径よりも若干大きい値とされている。そして、保持ケース54は、この挿通孔54aに回転軸20が挿通された状態で、駆動側回転体51と軸方向に重ねて配置されている。また、保持ケース54と駆動側回転体51とは同軸上に(互いの中心軸線が一致するように)配置されている(図3中、一点鎖線参照)。
保持ケース54における駆動側回転体51と対向する側の軸方向の端面には、挿通孔54aの外周であって180°間隔となる2箇所に、軸方向に突出した一対の係合凸部54bが形成されている。各係合凸部54bは、駆動側回転体51に形成された一対の係合凹部51dに対応して形成されている。即ち、各係合凸部54bは、軸方向から見た形状が円弧状をなすとともに、その径方向の幅が係合凹部51dの径方向の幅と等しく、且つその周方向の幅が係合凹部51dの周方向の幅と等しく形成されている。そして、一対の係合凸部54bは、駆動側回転体51の一対の係合凹部51d内に挿入されている。図5に示すように、係合凹部51d内に挿入された係合凸部54bは、それぞれ2つのケース保持スプリング52の端部間に配置される。これらのケース保持スプリング52を介して保持ケース54と駆動側回転体51とが回転方向に連結されるとともに、ケース保持スプリング52が係合凸部54bを付勢することにより、保持ケース54は、駆動側回転体51に対してケース保持スプリング52を介して所定の相対回転位置に保持される。
また、図4(a)に示すように、保持ケース54には、周方向に等角度間隔(本実施形態では120°間隔)となる3箇所に保持凹部54cが形成されている。各保持凹部54cは、保持ケース54の外周縁から径方向内側に向かって凹設されている。そして、各保持凹部54cは、保持ケース54を軸方向に貫通するとともに、径方向外側に開口している。また、各保持凹部54cの内周面には、規制凹部54dが凹設されている。規制凹部54dは、保持凹部54cの周縁部を駆動側回転体51と反対側から(即ちカバー57側から)保持ケース54の軸方向の略中央部まで軸方向に凹設して形成されている。規制凹部54dは、保持凹部54cの内周面において該保持凹部54cの径方向外側の開口部までは形成されていないため、保持凹部54cの径方向外側の開口部には、径方向内側を向く径方向規制面54eを備えた一対の規制凸部54fが形成されている。また、規制凹部54dが形成されたことにより、保持凹部54cの内部には、駆動側回転体51と反対側を向くとともに軸方向と直交する軸方向規制面54gが形成されている。
更に、保持ケース54には、周方向に隣り合う保持凹部54c間であって周方向に等角度間隔(120°間隔)となる3箇所に組付穴54hが形成されている。各組付穴54hは、保持ケース54における駆動側回転体51と反対側の軸方向の端面に開口部を有するとともに、軸方向に沿って凹設されている。また、各組付穴54hの内周面は円筒状をなしている。
保持ケース54に形成された3つの前記保持凹部54c内には、それぞれ案内部材55が配置されている。本実施形態の案内部材55は、保持ケース54に慣性力を作用させるための重量を有するウェイトである。案内部材55の軸方向の厚さは、保持ケース54の軸方向の厚さと略等しく形成されている。案内部材55は、略直方体状をなす本体部55aと、該本体部55aから突出形成された突出部55bとから構成されている。
突出部55bは、本体部55aから周方向の両側及び径方向内側に突出している。突出部55bにおける軸方向の幅(保持ケース54の軸方向に沿った方向の幅)は、前記規制凹部54dの軸方向の幅と等しく形成されている。また、突出部55bにおけるカバー57側の軸方向の端面は、本体部55aにおけるカバー57側の軸方向の端面と同一平面内に位置する。更に、突出部55bにおける本体部55aの周方向の両側に形成された部位は、規制凹部54dよりも径方向に短く形成されている。そのため、突出部55bが規制凹部54d内に配置されるように案内部材55が保持凹部54c内に配置された状態では、突出部55bと規制凹部54dとの径方向の長さの差分だけ、案内部材55は保持凹部54c内で該保持凹部54cの内周面に案内されながら径方向に移動可能である。そして、径方向外側に移動した案内部材55は、突出部55bが規制凸部54fの径方向規制面54eに当接することにより、該径方向規制面54eによってそれ以上の径方向外側への移動が規制される。尚、本体部55aの径方向外側の側面は、案内部材55がその移動範囲内で最も径方向外側に位置するとき(即ち突出部55bが径方向規制面54eに当接するとき)に、クラッチ50の径方向の中央を曲率中心とする円弧状をなすような円弧面とされている。また、案内部材55は、突出部55bが軸方向から前記軸方向規制面54gに当接することにより、保持ケース54に対する軸方向の位置決めがなされる。
また、各案内部材55の本体部55aには、駆動側回転体51側に開口するカム溝55cが形成されている。図3に示すように、カム溝55cは、本体部55aにおける駆動側回転体51側の軸方向の端面から同本体部55aを軸方向に凹設して形成されている。図4(b)及び図5に示すように、カム溝55cは、保持ケース54の周方向に略沿うように延びる溝状をなしている。更に、カム溝55cは、周方向(カム溝55cの長手方向に略同じ)の中央部から周方向の両端部に向かうに連れて径方向外側に向かうように延びている。また、カム溝55cの幅(短手方向の幅)は、前記コロ部材53のカム係合部53bの直径と略等しく形成されている。そして、各案内部材55のカム溝55cにおいて、周方向(長手方向)の中央が第1案内部P1とされるとともに、周方向(長手方向)の両端部が第2案内部P2とされている。各案内部材55が保持ケース54に保持された状態では、第1案内部P1はカム溝55cにおいて最も径方向内側に位置する一方、第2案内部P2はカム溝55cにおいて最も径方向外側に位置する。
図4(b)に示すように、本実施形態のカム溝55cは、周方向の中央の第1案内部P1から、周方向の両端部の第2案内部P2まで直線的に延びているため、軸方向から見た形状が径方向外側に開口するV字状をなしている。そして、カム溝55cの中心線Lは、軸方向から見た形状が径方向外側に開口するV字状をなしている。
図3に示すように、保持ケース54の保持凹部54c内にそれぞれ配置された3つの案内部材55のカム溝55cには、駆動側回転体51の制御溝51e内に挿入された3つのコロ部材53のカム係合部53bがそれぞれ挿入されている。カム係合部53bがカム溝55c内に挿入されることにより、コロ部材53は、カム溝55cに係合され、案内部材55に対するカム溝55cの長手方向に沿った移動が案内される一方、カム溝55cの幅方向の移動が規制される。
そして、図5及び図6に示すように、案内部材55を保持した保持ケース54と駆動側回転体51とが互いの中心軸線を回転中心として相対回転されると、コロ部材53と案内部材55(カム溝55c)とが相対回転される。すると、カム溝55cとカム係合部53bとからなるカム機構によって、コロ部材53は、案内部材55の径方向位置に応じて制御溝51eに案内されながら駆動側回転体51の径方向に沿って移動される。
図5に示すように、駆動側回転体51と保持ケース54との相対回転によってカム係合部53bがカム溝55cの第1案内部P1に配置され、且つ、案内部材55が保持凹部54c内で最も径方向内側に位置する場合には、動力伝達部53aは、その径方向の移動範囲内で最も径方向内側に配置される。この時のコロ部材53の配置位置は、駆動側回転体51と後述の従動側回転体58とを回転方向に係合しない非係合位置に該当する。尚、カム係合部53bをカム溝55cの第1案内部P1に配置(即ちコロ部材53を非係合位置に配置)するときの駆動側回転体51と保持ケース54との相対回転位置を中立位置とする。前記ケース保持スプリング52は、駆動側回転体51と保持ケース54とを中立位置に保持すべく、保持ケース54(係合凸部54b)を付勢している。
一方、図6に示すように、駆動側回転体51と保持ケース54との相対回転によってカム係合部53bがカム溝55cの第2案内部P2に配置されると、動力伝達部53aは、その径方向の移動範囲内で最も径方向外側に配置される。この時、動力伝達部53aは、その一部が駆動側回転体51の外周縁よりも径方向外側に突出するとともに、この時のコロ部材53の配置位置は、駆動側回転体51と後述の従動側回転体58とを回転方向に係合する係合位置に該当する。また、図7に示すように、コロ部材53が係合位置に配置された後に、案内部材55が遠心力によって径方向外側に移動されつつ駆動側回転体51と保持ケース54とが相対回転されると、コロ部材53に対して案内部材55が保持ケース54の周方向に回転される。この時、カム係合部53bが第2案内部P2から第1案内部P1へ移動するものの、案内部材55の径方向外側への移動に伴ってカム溝55cが径方向外側へ移動されるため、コロ部材53は、係合位置に配置された状態に維持される。
図4(a)に示すように、各案内部材55におけるカバー57側の軸方向の端部には、軸方向の一方側(カバー57側)及び径方向外側に開口するばね収容凹部55dが凹設されている。ばね収容凹部55dは、各案内部材55において、周方向の中央部に形成されている。また、ばね収容凹部55dの径方向内側の端部には、径方向と直交する平面状をなし径方向外側を向く押圧面55eが形成されている。そして、各案内部材55のばね収容凹部55dには、圧縮コイルばねよりなる保持スプリング56が収容されるとともに、該保持スプリング56の一端(径方向内側となる一端)は押圧面55eに当接している。
前記カバー57は円板状をなすとともに、該カバー57の外径は保持ケース54の外径と等しく形成されている。カバー57の径方向の中央部には、回転軸20が挿通される挿通孔57aが形成されている。また、カバー57における保持ケース54側の軸方向の端面には、周方向に等角度間隔(本実施形態では120°間隔)となる3箇所に軸方向に突出した円柱状の組付凸部57bが形成されている。3つの組付凸部57bは、前記保持ケース54に形成された3つの組付穴54hに対応するように、その直径が組付穴54hの内径と略等しく形成されている。そして、図3に示すように、カバー57は、3つの組付凸部57bが3つの組付穴54h内に挿入されるように保持ケース54に対して重ね合わせて組み付けられている。尚、図3では、組付穴54h及び組付凸部57bはそれぞれ1つのみ図示している。保持ケース54に組付けられたカバー57は、保持ケース54と同軸上に(即ち中心軸線が一致するように)配置されている(図3中、一点鎖線参照)。そして、組付凸部57bが組付穴54hに挿入されることにより、カバー57は、保持ケース54と一体回転可能となる。
また、図4(a)に示すように、カバー57における保持ケース54側の軸方向の端面には、3つの押圧部57cが形成されている。3つの押圧部57cは、カバー57の外周縁部において周方向に等角度間隔(120°間隔)となる3箇所から軸方向に沿って保持ケース54側に突出するとともに、略直方体状をなしている。また、押圧部57cは、カバー57において隣り合う組付凸部57b間の中央部にそれぞれ形成されているため、組付凸部57bと周方向に交互となっている。そして、カバー57が保持ケース54に組付けられた状態においては、各押圧部57cは、保持ケース54に保持された案内部材55のばね収容凹部55dの径方向外側にそれぞれ配置される。ばね収容凹部55d内に配置された前記保持スプリング56は、この押圧部57cとばね収容凹部55dの押圧面55eとの間に配置されて押圧面55eを径方向内側に付勢する。従って、案内部材55は、保持スプリング56によって径方向内側に付勢されて保持ケース54に対して押し付けられている。
また、カバー57には、各押圧部57cの径方向内側となる位置に、同カバー57を軸方向に貫通する貫通孔57dがそれぞれ形成されている。各貫通孔57dは、案内部材55のばね収容凹部55dと軸方向に対向する位置に形成されている。そのため、ばね収容凹部55d内に収容された保持スプリング56は、この貫通孔57dからクラッチ50の外部に露出する。
前記従動側回転体58は、有底円筒状の従動円筒部58aと、該従動円筒部58aと一体に形成された従動側軸連結部58bとから構成されている。図1に示すように、従動側回転体58は、従動円筒部58aの開口部がモータ本体12側を向くようにクラッチ収容部31b内に収容されている。
図3に示すように、従動円筒部58aの外径は、前記保持ケース54及び前記カバー57の外径と等しい。また、従動側回転体58の内側の深さは、駆動側回転体51の軸方向の長さと略等しい。図4(b)に示すように、従動円筒部58aの円筒状の側壁部58cの内周面には、周方向に等角度間隔(本実施形態では120°間隔)となる3箇所に、径方向内側に突出した制御凸部58dが形成されている。従動側回転体58において、制御凸部58dが形成された部位の内径は駆動側回転体51の外径よりも若干大きい。そして、図3に示すように、従動円筒部58aの内部に収容された駆動側回転体51は、その外周縁が制御凸部58dと径方向に対向する。更に、コロ部材53の動力伝達部53aは、径方向に対向する駆動側回転体51と従動側回転体58の側壁部58cとの間に配置されている。そして、駆動側回転体51、保持ケース54、カバー57及び従動側回転体58は、同軸上に(中心軸線が一致するように)配置されている(図3中、一点鎖線参照)。また、側壁部58cにおける従動円筒部58aの開口部側の端部が、保持ケース54の外周縁部と軸方向に対向する。
図4(a)に示すように、側壁部58cの内周面に制御凸部58dが形成されることにより、従動側回転体58の内部には周方向に隣り合う制御凸部58d間に制御凹部58eが形成されている。3つの制御凹部58eは、周方向に等角度間隔(本実施形態では120°間隔)に形成されている。また、制御凹部58eの周方向の幅は、駆動側回転体51に形成された制御溝51eの周方向の幅よりも広く形成されている。そして、制御凹部58eの周方向の両側の内側面(制御凸部58dの周方向の端面)は、径方向内側に向かうに連れて周方向の間隔が広くなる一対の伝達面58fを形成している。各伝達面58fは、軸方向と平行をなす平面状をなすとともに、各伝達面58fの径方向に対する傾斜の度合いは、前記動力伝達部53aに形成された当接面53dの径方向に対する傾斜の度合いと等しくなっている。
また、図3に示すように、従動円筒部58aの底部中央には、該従動円筒部58aの内側に開口するプレート凹部58gが凹設されるとともに、該プレート凹部58gには、円板状のスラスト受けプレート62が収容されている。このスラスト受けプレート62には、前記駆動側回転体51のボール収容孔51b内に配置された前記スラスト受けボール61が当接している。そして、スラスト受けプレート62は、スラスト受けボール61と共に回転軸20のスラスト荷重を受ける。
前記従動側軸連結部58bは、従動円筒部58aの底部中央から軸方向に沿って延びるとともに、従動円筒部58aの外側に突出している。また、図1に示すように、従動側軸連結部58bは、円柱状をなすとともに、その外径は、ウォーム軸32の基端部に設けられたウォーム側軸連結部32bの外径と等しい大きさとされている。尚、ウォーム側軸連結部32bの基端面(図1において上側の端面)には、周方向に等角度間隔(120°間隔)となる3箇所に軸連結凹部32cが形成されている。図1には、3つの軸連結凹部32cのうち1つのみを図示している。各軸連結凹部32cは、ウォーム側軸連結部32bの基端面からウォーム軸32の軸方向に沿って凹設されるとともに、ウォーム軸32の基端側(図1において上側)及び径方向外側に開口している。
そして、図3に示すように、従動側軸連結部58bの先端には、前記軸連結凹部32c(図1参照)に対応した軸連結凸部58hが突出形成されている。軸連結凸部58hは、従動側軸連結部58bの先端の外周縁であって、周方向に等角度間隔となる3箇所から軸方向に突出している。また、各軸連結凸部58hは、周方向の幅、径方向の幅及び軸方向の長さが、前記軸連結凹部32c(図1参照)の周方向の幅、径方向の幅及び軸方向の深さとそれぞれ等しく形成されている。そして、図1及び図3に示すように、ウォーム軸32の3つの軸連結凹部32c内に3つの軸連結凸部58hがそれぞれ挿入されることにより、従動側回転体58とウォーム軸32とが回転方向に係合されて一体回転可能となる。尚、従動側軸連結部58bは、クラッチ収容部31bの底部から軸収容筒部31c内に突出するとともに、軸収容筒部31cの一端側に配置された前記軸受36によって軸支されている。
また、従動側軸連結部58bの先端面の中央部には、スラスト凹部58kが凹設されている。スラスト凹部58kは、同スラスト凹部58kの底部中央から軸方向に延びる連結孔58mによって前記プレート凹部58gと連通されている。そして、スラスト凹部58kには、円板状のスラスト受けプレート63及び球体状のスラスト受けボール64が収容されている。これらのスラスト受けプレート63及びスラスト受けボール64は、ウォーム軸32のスラスト荷重を受ける。
次に、上記したモータ11の動作を、クラッチ50の動作を中心に説明する。
モータ本体12の停止時のように回転軸20が回転駆動されていない場合、図5に示すように、各案内部材55は、遠心力が作用していないため、保持スプリング56の付勢力によって該案内部材55の移動範囲内で最も径方向内側に配置されている。更に、駆動側回転体51と保持ケース54との相対回転位置は、係合凸部54bを付勢するケース保持スプリング52の付勢力によって、カム係合部53bをカム溝55cの第1案内部P1に配置する位置(中立位置)に維持されている。即ち、駆動側回転体51と保持ケース54とは中立位置に保持されている。従って、コロ部材53は、その径方向の移動範囲において最も径方向内側となる位置であって、従動側回転体58と回転方向に係合しない非係合位置に配置されている。そのため、クラッチ50はオフされている(回転軸20と従動軸32とを断絶している)。
この状態から、図1及び図2に示すように、手動によりスライドドア3を開作動又は閉作動させるべく、スライドドア3側から出力軸35が回転されると、該出力軸35の回転に伴ってウォーム軸32が回転される。そして、回転軸20が回転駆動されない場合は、図5に示すように、コロ部材53は非係合位置に配置されているため、従動側回転体58は、コロ部材53と回転方向に係合せず、回転軸20とウォーム軸32とは断絶状態にある。従って、従動側回転体58は、ウォーム軸32の回転に伴って、駆動側回転体51及び保持ケース54に対して空転する。よって、出力軸35側からの回転負荷になる回転軸20がウォーム軸32から切り離されるため、該出力軸35側からの回転が容易となる。従って、大きな操作力を必要としない容易なスライドドア3の手動による開閉作動が可能となっている。
図1及び図2に示すように、スライドドア3を自動で開作動又は閉作動させる旨の指令が生じると、コントローラ25によってモータ本体12が駆動されて回転軸20が回転駆動される。そして、回転軸20の回転駆動に伴って駆動側回転体51の回転駆動が開始されると、図6に示すように、駆動側回転体51の制御溝51eにて動力伝達部53aが保持されたコロ部材53も駆動側回転体51と共に同駆動側回転体51の中心軸線を中心として回転される。一方、保持ケース54は、ウェイトの役割を果たす案内部材55を保持しているため、駆動側回転体51の回転駆動の開始時には、慣性力によって保持ケース54の回転位置が維持される。そして、ケース保持スプリング52を介して駆動側回転体51と連結された保持ケース54は、駆動側回転体51よりも遅れて回転することになる。その結果、駆動側回転体51は、その回転駆動の開始時には、ケース保持スプリング52の付勢力に抗して係合凸部54bとの間で同ケース保持スプリング52を縮めながら保持ケース54に対して相対回転する。そして、駆動側回転体51と保持ケース54との間に回転角度の差が生じる。すると、カム溝55cに対してカム係合部53bが保持ケース54の周方向に回転されるため、カム係合部53bは、カム溝55cに案内されながら第1案内部P1から駆動側回転体51の回転方向の前方側の第2案内部P2に向かって移動される。そして、カム溝55cの作用により、コロ部材53は、径方向外側の係合位置に移動される。尚、駆動側回転体51の回転駆動の開始時には、保持ケース54は慣性力によってその回転位置が維持されているため、保持ケース54にて保持された案内部材55には遠心力が作用していない。従って、駆動側回転体51の回転駆動の開始時にカム係合部53bが第1案内部P1から第2案内部P2に相対的に移動する際には、案内部材55は、その径方向の移動範囲内で最も径方向内側に配置されている。
更に、駆動側回転体51の回転に伴って、係合位置に配置されたコロ部材53の動力伝達部53aの径方向外側の端部が制御凹部58e内で駆動側回転体51の回転方向の前方側の伝達面58fに当接する。この時、動力伝達部53aの一対の当接面53dのうち、駆動側回転体51の回転方向の前方側の当接面53dが、駆動側回転体51の回転方向の前方側の伝達面58fに面接触する。こうして、クラッチ50がオンされて回転軸20とウォーム軸32とが連結される。クラッチ50がオンされると、回転軸20の回転駆動力は、駆動側回転体51からコロ部材53の動力伝達部53aを介して従動側回転体58に伝達可能となる。
そして、駆動側回転体51の回転数の上昇に伴って、案内部材55を保持した保持ケース54に作用する慣性力は小さくなる。更に、駆動側回転体51の回転数が一定になると、案内部材55を保持した保持ケース54に作用する慣性力は無くなる。保持ケース54は、該保持ケース54に作用する慣性力が小さくなるに連れて、ケース保持スプリング52の付勢力によって、駆動側回転体51に対して同駆動側回転体51と同方向に回転していく。この駆動側回転体51に対する保持ケース54の回転に伴って、保持ケース54にて保持された案内部材55のカム溝55cが、カム係合部53bに対して保持ケース54の周方向に回転されるため、カム係合部53bは、第2案内部P2から第1案内部P1へ相対的に移動される。しかし、保持ケース54の回転数の上昇に伴って、案内部材55に作用する遠心力が徐々に大きくなるため、案内部材55は、保持スプリング56の付勢力に抗して保持凹部54cに案内されながら径方向外側に移動される。そのため、カム係合部53bの径方向位置は径方向内側に変化することなく維持される。即ち、コロ部材53は、案内部材55によって係合位置に保持される。尚、図9に示すように、駆動側回転体51の回転数の上昇に伴って、該駆動側回転体51と一体回転するコロ部材53に作用する遠心力も増大する。そのため、コロ部材53は、該コロ部材53に作用する遠心力によっても、係合位置から径方向内側に移動することが抑制されている。
図7に示すように、駆動側回転体51の回転数が一定になり保持ケース54に作用する慣性力が無くなると、ケース保持スプリング52の付勢力によって、駆動側回転体51と保持ケース54とは中立位置に保持される。更に、駆動側回転体51の回転数が一定になると、案内部材55は、遠心力によって同案内部材55の移動範囲内で最も径方向外側に配置されるとともに、係合位置に配置されたコロ部材53のカム係合部53bは、カム溝55cの第1案内部P1に位置する。また、遠心力が作用した案内部材55は、コロ部材53が係合位置から径方向内側の非係合位置に移動することを抑制する。そして、回転軸20の回転駆動力は、駆動側回転体51からコロ部材53の動力伝達部53aを介して従動側回転体58に伝達される。従って、図1及び図2に示すように、従動側回転体58とウォーム軸32とが一体回転されるため、ウォーム部32aとウォームホイール33とによって減速された回転力が出力軸35から出力され、その結果、スライドドア3が自動で開作動又は閉作動される。
そして、自動でのスライドドア3の開作動又は閉作動が終了すると、モータ本体12が停止される。モータ本体12が停止されると、図8に示すように、回転軸20の回転数が低下するため、駆動側回転体51の回転数が低下する。それに伴って、駆動側回転体51から回転駆動力が伝達されて回転していた保持ケース54及び従動側回転体58の回転数も低下する。すると、案内部材55に作用する遠心力が小さくなるため、保持スプリング56の付勢力によって、案内部材55は径方向内側に移動される。また、モータ本体12の停止が急である場合、駆動側回転体51はすぐに回転速度が低下するが、保持ケース54は慣性力によって回転速度の低下が遅れる。その場合には、駆動側回転体51に対して保持ケース54が相対回転するため、駆動側回転体51と保持ケース54との間に回転角度の差が生じる。その結果、カム係合部53bに対してカム溝55cが保持ケース54の周方向に回転するため、図9においてモータ本体12停止後のコロ部材53の径方向移動量に示すように、カム溝55cの作用によりコロ部材53は係合位置に配置された状態のままとなる。しかし、保持ケース54は、ケース保持スプリング52の付勢力により最終的には中立位置に配置されるため、コロ部材53はカム溝55cの作用により非係合位置に配置される。その結果、駆動側回転体51と従動側回転体58との回転方向の係合が解除されて、回転軸20とウォーム軸32とが断絶された状態となる。因みに、図9において、モータ本体12の停止後に、カム溝55cによって係合位置から非係合位置へ移動するコロ部材53の移動量を示す一点鎖線(図9に示す一点鎖線において最も右側で係合位置から非係合位置へ向かう部分)は、実際には、総合的なコロ部材53の移動量を示す実線と重なるものであるが、コロ部材53の動きを分かりやすくするために若干ずらして図示している。
また、モータ本体12が停止されたときに、駆動側回転体51に対して保持ケース54が相対回転しない場合には、案内部材55のカム溝55cにカム係合部53bが挿入されたコロ部材53は、案内部材55に作用する遠心力の低下に伴って案内部材55と共に径方向内側に移動される。この時、カム係合部53bは、カム溝55cにおいて第1案内部P1に位置している。従って、コロ部材53は、係合位置から非係合位置に移動される。その結果、駆動側回転体51と従動側回転体58との回転方向の係合が解除されて、回転軸20とウォーム軸32とが断絶された状態となる。因みに、この場合には、コロ部材53は、カム溝55c内を移動することにより径方向内側に移動するのではなく、遠心力の低下によって径方向内側に移動する。
尚、図6及び図7では、駆動側回転体51(回転軸20)が図6及び図7において時計方向に回転された場合のクラッチ50を図示している。しかし、クラッチ50は、回転軸20が図6及び図7において反時計方向に回転された場合も同様に回転軸20とウォーム軸32とを連結するものである。
上記したように、本第1実施形態によれば、以下の作用効果を有する。
(1)駆動側回転体51の回転駆動の開始時には、駆動側回転体51及び保持ケース54の相対回転に伴って、駆動側回転体51にて保持されたコロ部材53と、保持ケース54にて保持された案内部材55のカム溝55cとが相対回転される。そして、駆動側回転体51と保持ケース54とが相対回転すると、コロ部材53は、カム溝55cに案内されて非係合位置から係合位置へ移動する。このように、コロ部材53の移動は、カム溝55cによって移動方向が規制された状態で行われるため、コロ部材53は、カム溝55cに案内されながら非係合位置から係合位置へ安定して移動される。従って、クラッチ50においては、オンする動作(即ち駆動側回転体51と従動側回転体58とを連結する動作)の確実性を向上させることができる。
(2)駆動側回転体51の回転駆動時には、コロ部材53は、遠心力により径方向外側に移動した案内部材55によって係合位置に保持される。従って、クラッチ50がオンされた状態が安定して維持されるため、コロ部材53を介して駆動側回転体51から従動側回転体58へ安定して回転駆動力を伝達することができる。また、案内部材55によってコロ部材53を係合位置に保持するため、駆動側回転体51の回転駆動時に駆動側回転体51と従動側回転体58とを連結した状態を維持するために摩擦力等を発生させる手段を別途備えなくてもよい。よって、クラッチ50の構成や動作が複雑化されることが抑制される。
(3)案内部材55は、保持スプリング56によって径方向内側に付勢されている。駆動側回転体51が停止されたときに、コロ部材53は、案内部材55を径方向内側に付勢する保持スプリング56の付勢力によって、係合位置よりも径方向内側の非係合位置の方へ移動しやすくなる。従って、クラッチ50をオフする動作(即ち駆動側回転体51と従動側回転体58とを断絶する動作)の確実性を向上させることができる。また、駆動側回転体51の停止時(即ちクラッチ50のオフ時)に、コロ部材53が非係合位置から係合位置の方へ不意に移動することが抑制される。更に、案内部材55が保持スプリング56によって径方向内側に付勢されているため、自動車の走行時等の振動によって、案内部材55及びコロ部材53ががたつくことが抑制される。従って、案内部材55及びコロ部材53のがたつきによる騒音の発生を抑制することができる。
(4)駆動側回転体51と保持ケース54との間には、駆動側回転体51と保持ケース54とをコロ部材53を非係合位置に配置する相対回転位置に保持するように保持ケース54を付勢するケース保持スプリング52が介在されている。そのため、駆動側回転体51の停止時(即ちクラッチ50のオフ時)に、コロ部材53を非係合位置に配置された状態に維持しやすくなる。また、駆動側回転体51の停止時に、駆動側回転体51と保持ケース54とが相対回転することがケース保持スプリング52の付勢力によって抑制されるため、コロ部材53が不意に係合位置に移動することが抑制される。
(5)非係合位置と係合位置との間のコロ部材53の移動は、溝状のカム溝55cによって案内される。このように、コロ部材53の移動を案内するべく案内部材55に形成された部位(カム部)が溝状のカム溝55cであることにより、案内部材55の大型化が抑制されるとともに、案内部材55の小型化が可能となる。従って、クラッチ50の小型化に寄与することができる。
(6)駆動側回転体51の回転駆動の開始時には、保持ケース54に作用する慣性力を利用して駆動側回転体51と保持ケース54とを相体回転させる。そのため、コロ部材53を非係合位置から係合位置へ移動させるために駆動側回転体51と保持ケース54とを相体回転させるための手段を別途備えなくてもよい。
(7)オンする動作及びオフする動作の確実性が向上されたクラッチ50をモータ11に備えている。従って、このモータ11においては、モータ本体12の駆動開始時には、回転軸20からウォーム軸32へ速やかに回転駆動力が伝達される一方、モータ本体12の停止時には、回転軸20とウォーム軸32との断絶によって従動側からの回転が容易となる。また、クラッチ50は、モータ本体12の回転軸20と、減速機構34を構成するウォーム軸32との間に設けられているため、モータ11において回転軸20の回転駆動力が減速される前のところに設けられている。従って、クラッチ50を構成する各部品に加わる荷重を小さく抑えられることから、クラッチ50を小型化することが可能となる。よって、このクラッチ50を備えたモータ11の小型化が可能となる。そして、小型化されたモータ11は、スライドドア3の内部等、配置スペースの小さいところへ容易に設置することができる。また、モータ11において減速される前のところにクラッチ50を設けることで、案内部材55に作用する遠心力が発生しやすくなる。従って、案内部材55を遠心力によって径方向外側に移動させる構成のクラッチ50に有利である。
(8)駆動源として用いられるモータ11には、オンする動作及びオフする動作の確実性が向上されたクラッチ50が備えられている。一般的に、スライドドア3をモータ11の駆動力にて自動開閉するスライドドア開閉装置1においては、該スライドドア3の手動による開閉もできるように構成する要求がある。そのため、このようなモータ11を駆動源として用いることにより、手動でのスライドドア3の開閉を容易に行える構成とすることができる。また、スライドドア3を自動開閉させる旨の指令に基づいてモータ本体12が駆動されると、クラッチ50によって回転軸20とウォーム軸32とが速やかに連結されるため、スライドドア3の開閉作動の開始が円滑になる。
(9)カム溝55cを有する案内部材55によって、駆動側回転体51の回転駆動の開始時に保持ケース54に作用する慣性力を発生させるため、簡単な構成で保持ケース54に慣性力を発生させることができる。また、保持ケース54に作用する慣性力を発生させるために保持ケース54自体の重量を増大する場合に比べて、クラッチ50の軽量化を図ることができる。
(10)駆動側回転体51の回転駆動時においてコロ部材53が従動側回転体58と回転方向に係合する際、コロ部材53は従動側回転体58に面接触する。そのため、コロ部材53から従動側回転体58に回転駆動力を伝達する際にコロ部材53及び従動側回転体58に作用する圧力を小さく抑えることができる。
(11)保持スプリング56は、案内部材55を径方向内側に付勢するものである。従って、カム係合部53bのカム溝55c内の移動を妨げる力が該カム係合部53bに作用しにくい。従って、カム係合部53bはカム溝55c内を円滑に移動することができる。
(第2実施形態)
以下、本発明を具体化した第2実施形態を図面に従って説明する。尚、上記第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
図10に示す本第2実施形態のクラッチ70は、上記第1実施形態のクラッチ50に代えてモータ11に備えられるものである(図1参照)。クラッチ70は、駆動側回転体71、2つのケース保持スプリング52、3つのコロ部材53、保持ケース54、3つの案内部材55、3つの保持スプリング56、カバー57及び従動側回転体58を備えている。
駆動側回転体71は、第1駆動プレート81と、該第1駆動プレート81に重ねて配置される第2駆動プレート82と、3つの復帰スプリング83とから構成されている。
第1駆動プレート81は、略円板状をなすとともに、同第1駆動プレート81の外径は、従動側回転体58における制御凸部58dが形成された部位の内径よりも若干小さく形成されている。そして、第1駆動プレート81は、その径方向の中央部に軸方向に突出した円柱状の駆動側軸連結部81aを有する。駆動側軸連結部81aの径方向の中央部(即ち第1駆動プレート81の径方向の中央部)には、軸連結凹部51aが形成されている。また、第1駆動プレート81には、軸連結凹部51aの底部から軸方向に沿って貫通形成されたボール収容孔51bが形成されるとともに、このボール収容孔51bにはスラスト受けボール61が収容されている。
図11に示すように、第1駆動プレート81の外周縁部には、3つの補助溝81bが形成されている。3つの補助溝81bは、第1駆動プレート81において、周方向に等角度間隔(本実施形態では120°間隔)となる3箇所に形成されている。各補助溝81bは、第1駆動プレート81の外周縁から径方向内側に向かって凹設されることにより、径方向外側に開口している。また、各補助溝81bは、軸方向には従動側回転体58の底部と反対側(即ち第2駆動プレート82側)にのみ開口している。
各補助溝81bの内周面には、一対の楔面81cが形成されている。一対の楔面81cは、それぞれ軸方向と平行な平面状をなすとともに、径方向内側から径方向外側に向かうに連れて互いの間隔が広くなるように第1駆動プレート81の径方向に対して傾斜している。更に、各楔面81cは、従動側回転体58の伝達面58fよりも径方向に対して大きく傾斜している。また、各補助溝81bの内周面には、一対の楔面81cよりも径方向外側となる部位に一対の規制面81dが形成されている。各補助溝81bにおいて、対をなす規制面81dは、補助溝81bの径方向外側の開口部と一対の楔面81cとの間に形成されるとともに、周方向に互いに対向している。そして、各規制面81dは、軸方向と平行な平面状をなすとともに、楔面81cよりも径方向に対する傾斜の度合いが小さい。本実施形態では、規制面81dは、径方向に略沿うように形成されている。
また、第1駆動プレート81における第2駆動プレート82側の軸方向の端面には、3対の復帰凸部81eが突出形成されている。対をなす復帰凸部81eは、第1駆動プレート81において、周方向に等角度間隔(本実施形態では120°間隔)となる3箇所であって、周方向に隣り合う補助溝81b間となる位置にそれぞれ形成されている。対をなす復帰凸部81eは、第1駆動プレート81の周方向に間隔を空けて形成されるとともに、軸方向に突出する略直方体状をなしている。
前記第2駆動プレート82は、第1駆動プレート81と直径の等しい円板状をなしている。第2駆動プレート82の径方向の中央部には、軸方向に貫通した挿通孔82aが形成されている。挿通孔82aは、軸方向から見た形状が円形状をなすとともに、その内径は、駆動側軸連結部81aの外径よりも若干大きい値とされている。
また、第2駆動プレート82における挿通孔82aの外周側には、一対のばね収容部82bが形成されている。2つのばね収容部82bは、第2駆動プレート82における第1駆動プレート81と反対側(即ち保持ケース54側)の軸方向の端面から該第2駆動プレート82を軸方向に凹設して形成されている。そして、2つのばね収容部82bは、挿通孔82aを囲繞するような円弧状をなすとともに、挿通孔82aを挟んで対称な形状をなしている。これらばね収容部82bには、ケース保持スプリング52がそれぞれ収容されている。
また、第2駆動プレート82において、周方向に隣り合う2つのばね収容部82bの周方向の端部間、即ち周方向に180°間隔となる2箇所には、係合凹部82cがそれぞれ形成されている。各係合凹部82cは、第2駆動プレート82における第1駆動プレート81と反対側(即ち保持ケース54側)の軸方向の端面から該第2駆動プレート82を軸方向に凹設して形成されるとともに、第2駆動プレート82の径方向の中央を曲率中心とする円弧状をなしている。また、各係合凹部82cは、前記ばね収容部82bと同心状に形成されるとともに、各係合凹部82cの径方向の幅は、ばね収容部82bの径方向の幅よりも狭く且つ係合凸部54bの径方向の幅と等しく形成されている。更に、各係合凹部82cは、周方向に隣り合う2つのばね収容部82b同士を連通している。
また、第2駆動プレート82の外周縁部には、3つの制御溝82dが形成されている。3つの制御溝82dは、第2駆動プレート82において、周方向に等角度間隔(本実施形態では120°間隔)となる3箇所に形成されている。各制御溝82dは、第2駆動プレート82の外周縁から径方向内側に向かって凹設されることにより、径方向外側に開口している。また、各制御溝82dは、第2駆動プレート82を軸方向に貫通するとともに、軸方向から見た形状が径方向外側に開口するU字状をなしている。更に、各制御溝82dの周方向の幅は、動力伝達部53aの短手方向の幅(即ち2つの案内面53c間の幅)と略等しく形成されている。
また、第2駆動プレート82において周方向に隣り合う制御溝82d間には、ばね収容孔82eがそれぞれ形成されている。3つのばね収容孔82eは、周方向に等角度間隔(本実施形態では120°間隔)に形成されている。各ばね収容孔82eは、第2駆動プレート82を軸方向に貫通するとともに、同第2駆動プレート82の周方向に沿って延びる円弧状の溝状をなしている。更に、各ばね収容孔82eの周方向の長さは、前記第1駆動プレート81の対をなす復帰凸部81e間の間隔(周方向の間隔)と等しく形成されている。そして、各ばね収容孔82eには、圧縮コイルばねよりなる復帰スプリング83がそれぞれ収容されている。
更に、各ばね収容孔82eの周方向の両側には、対をなす復帰孔82fがそれぞれ形成されている。即ち、第2駆動プレート82には、3対の復帰孔82fが形成されている。各ばね収容孔82eの周方向の両側で対をなす復帰孔82fは、第2駆動プレート82を軸方向に貫通している。そして、各復帰孔82fの径方向の幅は、ばね収容孔82eの径方向の幅よりも狭く、且つ、前記復帰凸部81eの径方向の幅と略等しく形成されている。また、各復帰孔82fの周方向の幅は、前記復帰凸部81eの周方向の幅よりも長く形成されている。更に、ばね収容孔82eの内部空間とその周方向の両側の復帰孔82fの内部空間とは繋がっている。
図10及び図11に示すように、第2駆動プレート82は、ばね収容部82bが開口していない側の軸方向の端面が、第1駆動プレート81における復帰凸部81eが突出した側の軸方向の端面と対向するように、同第1駆動プレート81に軸方向に重ね合わされている。そして、第1駆動プレート81の駆動側軸連結部81aが第2駆動プレート82の挿通孔82aに挿通されている。更に、対をなす復帰孔82fに対をなす復帰凸部81eがそれぞれ軸方向から挿入されるとともに、対をなす復帰凸部81e間(即ちばね収容孔82e内)に復帰スプリング83がそれぞれ配置されている。また、駆動側回転体71の軸方向の幅は、従動側回転体58の側壁部58cの軸方向の幅と略等しい。
そして、駆動側回転体71においては、第1駆動プレート81と第2駆動プレート82とは同軸上に(互いの中心軸線が一致するように)配置されるとともに、第1駆動プレート81と第2駆動プレート82とは、復帰スプリング83を介して回転方向に連結されている。また、第1駆動プレート81と第2駆動プレート82とは、復帰スプリング83を介して所定の相対回転位置に保持されている。本実施形態では、復帰スプリング83は、第1駆動プレート81と第2駆動プレート82との相対回転位置を、補助溝81bの周方向位置と制御溝82dの周方向位置とが一致する回転位置に保持するように、第1駆動プレート81(復帰凸部81e)を付勢している。従って、図13に示すように、回転軸20の非駆動時には、駆動側回転体71を軸方向から見ると、3つの補助溝81bの周方向の中央と3つの制御溝82dの周方向の中央とが一致している。尚、図13乃至図16に示すクラッチ70の断面図は、図10におけるC−C断面図であるが、図面が煩雑となることを避けるために、ハッチングを省略して図示している。
図11に示すように、このような駆動側回転体71は、第1駆動プレート81が従動側回転体58の底部側、第2駆動プレート82が従動側回転体58の開口部側となるように、従動側回転体58の内部に配置されている。そして、3つのコロ部材53は、動力伝達部53aが駆動側回転体71の補助溝81b及び制御溝82d内に収容される一方、カム係合部53bが駆動側回転体71よりも保持ケース54側に突出するように配置されている。尚、各コロ部材53の動力伝達部53aは、その軸方向の一端部(カム係合部53bと反対側の軸方向の端部)が補助溝81b内に収容される一方、該補助溝81bと軸方向に並ぶ制御溝82dの内部に、その軸方向の他端部(カム係合部53b側の軸方向の端部)が収容されている。尚、各コロ部材53のカム係合部53bは、案内部材55に形成された後述のカム溝91に挿入されている。そして、各コロ部材53は、制御溝82dの内周面によって、駆動側回転体71に対する径方向の移動が案内される一方、駆動側回転体71に対する周方向の移動が規制される。また、図16に示すように、第1駆動プレート81と第2駆動プレート82とが相対回転した場合には、動力伝達部53aの径方向内側の端部に楔面81cが当接可能である。更に、動力伝達部53aの径方向内側の端部に楔面81cが当接した場合には、該楔面81cと隣り合う規制面81dが回転方向から同動力伝達部53aの案内面53cに面接触する。
そして、図10に示すように、カバー57の挿通孔57a及び保持ケース54の挿通孔54aを通った回転軸20の先端部が軸連結凹部51aに挿入されると、第1駆動プレート81は回転軸20の先端部に回転方向に係合され、該回転軸20と一体回転可能となる。尚、回転軸20、カバー57、保持ケース54、第2駆動プレート82、第1駆動プレート81及び従動側回転体58は同軸上に配置されている(図10中、一点鎖線参照)。
図12に示すように、本実施形態の案内部材55に形成されたカム溝91は、上記第1実施形態のカム溝55cと異なる形状をなしている。図10に示すように、カム溝91は、上記第1実施形態のカム溝55cと同様に、本体部55aにおける駆動側回転体71側の軸方向の端面から同本体部55aを軸方向に凹設して形成されている。また、図12に示すように、カム溝91は、保持ケース54の周方向に略沿うように延びる溝状をなしている。そして、カム溝91の周方向の中央部は、軸方向(保持ケース54の軸方向)から見た形状が径方向内側に突き出る円弧状をなす第1円弧部91aとなっている。即ち、第1円弧部91aの第1中心線L1は、軸方向から見た形状が径方向内側に突き出る円弧状をなしている。この第1円弧部91aの周方向の中央が第1案内部P1となる。更に、カム溝91において第1円弧部91aの周方向の両側の部位は、該第1円弧部91aと滑らかに繋がり略径方向外側に突き出る円弧状をなす第2円弧部91bとなっている。第2円弧部91bの第2中心線L2は、第1中心線L1と滑らかに繋がり略径方向外側に突き出る円弧状をなしている。この第2円弧部91bは、カム溝91の長手方向の中央(第1案内部P1)から遠ざかるに連れて径方向外側に向かうように形成されている。また更に、カム溝91において第2円弧部91bの両側の部位(即ちカム溝91の周方向の両端部)は、保持ケース54の周方向に沿って延びる円弧状をなす第3円弧部91cとなっている。第3円弧部91cの第3中心線L3は、クラッチ70の中心O(径方向の中央)を曲率中心とする(即ち駆動側回転体71の中心軸線上の点を曲率中心とする)円弧状をなしている。この第3円弧部91cは第2案内部P2に該当する。尚、カム溝91の幅(短手方向の幅)は、コロ部材53のカム係合部53bの直径と略等しい値に設定されている。
このようなカム溝91においては、案内部材55が保持ケース54に保持された状態において、周方向の中央(即ち第1案内部P1)が最も径方向内側に位置するとともに、周方向の中央から周方向の両側に向かうに連れて径方向外側に向かっていく。更に、カム溝91においては、周方向の両側の第3円弧部91cが最も径方向外側に位置する。そして、カム係合部53bの径方向の中心が第3中心線L3上に位置するとき、動力伝達部53aは、駆動側回転体71と従動側回転体58とを回転方向に係合可能な第2案内部P2に位置する。
次に、本実施形態のクラッチ70を備えたモータ11の動作を、クラッチ70の動作を中心に説明する。
モータ本体12の停止時のように回転軸20が回転駆動されていない場合、図13に示すように、各案内部材55は、遠心力が作用していないため、保持スプリング56の付勢力によって該案内部材55の径方向の移動範囲内で最も径方向内側に配置されている。更に、駆動側回転体71と保持ケース54との相対回転位置は、係合凸部54bを付勢するケース保持スプリング52の付勢力によって、カム係合部53bをカム溝91の第1案内部P1に配置する位置(中立位置)に維持されている。また、第1駆動プレート81と第2駆動プレート82との相対回転位置は、復帰凸部81eを付勢する復帰スプリング83の付勢力によって、3つの補助溝81bの周方向位置と3つの制御溝82dの周方向位置とが一致する位置に維持されている。従って、コロ部材53は、その径方向の移動範囲において最も径方向内側となる位置であって、従動側回転体58と回転方向に係合しない非係合位置に配置されている。そのため、クラッチ70はオフされている(回転軸20と従動軸32とを断絶している)。
この状態から、手動によりスライドドア3を開作動又は閉作動させるべく、スライドドア3側から出力軸35が回転されると、該出力軸35の回転に伴ってウォーム軸32が回転される(図1及び図2参照)。そして、回転軸20が回転駆動されない場合は、コロ部材53は非係合位置に配置されているため、従動側回転体58は、コロ部材53と回転方向に係合せず、回転軸20とウォーム軸32とは断絶状態にある。従って、従動側回転体58は、ウォーム軸32の回転に伴って、駆動側回転体71及び保持ケース54に対して空転する。よって、出力軸35側からの回転負荷になる回転軸20がウォーム軸32から切り離されるため、該出力軸35側からの回転が容易となる。従って、大きな操作力を必要としない容易なスライドドア3の手動による開閉作動が可能となっている。
そして、スライドドア3を自動で開作動又は閉作動させる旨の指令が生じると、コントローラ25によってモータ本体12が駆動されて回転軸20が回転駆動されて該回転軸20に連結された駆動側回転体71の回転駆動が開始される(図1参照)。駆動側回転体71の回転駆動の開始時には、第1駆動プレート81と第2駆動プレート82とはほぼ一体的に(殆ど相対回転をすることなく)回転する。そして、駆動側回転体71の制御溝82dにて動力伝達部53aが保持されたコロ部材53も駆動側回転体71と共に同駆動側回転体71の中心軸線を中心として回転される。一方、保持ケース54は、ウェイトの役割を果たす案内部材55を保持しているため、駆動側回転体71の回転駆動の開始時には、慣性力によって保持ケース54の回転位置が維持される。そして、ケース保持スプリング52を介して駆動側回転体71と連結された保持ケース54は、駆動側回転体71よりも遅れて回転することになる。その結果、図14に示すように、駆動側回転体71は、その回転駆動の開始時には、ケース保持スプリング52の付勢力に抗して係合凸部54bとの間で同ケース保持スプリング52を縮めながら保持ケース54に対して相対回転する。そして、駆動側回転体71と保持ケース54との間に回転角度の差が生じる。すると、カム溝91に対してカム係合部53bが保持ケース54の周方向に回転されるため、カム係合部53bは、カム溝91に案内されながら第1案内部P1から駆動側回転体71の回転方向の前方側の第2案内部P2に向かって移動される。本実施形態では、駆動側回転体71と保持ケース54との相対回転により、カム係合部53bは、カム溝91における駆動側回転体71の回転方向の前方側の端まで相対的に移動される。そして、カム溝91の作用により、コロ部材53は、径方向外側の係合位置に移動される。尚、駆動側回転体71の回転駆動の開始時には、保持ケース54は慣性力によってその回転位置が維持されているため、保持ケース54にて保持された案内部材55には遠心力が作用していない。従って、駆動側回転体71の回転駆動の開始時にカム係合部53bが第1案内部P1から第2案内部P2に相対的に移動する際には、案内部材55は、その径方向の移動範囲内で最も径方向内側に配置されている。
更に、駆動側回転体71の回転に伴って、係合位置に配置されたコロ部材53の動力伝達部53aの径方向外側の端部が制御凹部58e内で駆動側回転体71の回転方向の前方側の伝達面58fに当接する。この時、動力伝達部53aの一対の当接面53dのうち、駆動側回転体71の回転方向の前方側の当接面53dが、駆動側回転体71の回転方向の前方側の伝達面58fに面接触する。こうして、クラッチ70がオンされる。クラッチ70がオンされると、回転軸20の回転駆動力は、第1駆動プレート81、復帰スプリング83、第2駆動プレート82、コロ部材53の順に伝達され、更に、コロ部材53の動力伝達部53aから従動側回転体58に伝達可能となる。
そして、駆動側回転体71の回転数の上昇に伴って、案内部材55を保持した保持ケース54に作用する慣性力は小さくなる。保持ケース54は、該保持ケース54に作用する慣性力が小さくなるに連れて、ケース保持スプリング52の付勢力によって、駆動側回転体71に対して同駆動側回転体71と同方向に回転していく。図15に示すように、この駆動側回転体71に対する保持ケース54の回転に伴って、保持ケース54にて保持された案内部材55のカム溝91が、カム係合部53bに対して保持ケース54の周方向に回転されるため、カム係合部53bは、第2案内部P2から第1案内部P1へ相対的に移動される。しかし、保持ケース54の回転数の上昇に伴って、案内部材55に作用する遠心力が徐々に大きくなるため、案内部材55は、保持スプリング56(図11参照)の付勢力に抗して保持凹部54cに案内されながら径方向外側に移動される。従って、カム係合部53bの径方向位置は径方向内側に変化することなく維持されるため、コロ部材53は案内部材55によって係合位置に保持される。
尚、カム溝91の第3円弧部91c(第2案内部P2)は、クラッチ70の中心Oを曲率中心とする円弧状をなしている。そのため、案内部材55が遠心力により径方向外側に移動されつつコロ部材53に対して相対回転し始めるときに、案内部材55からカム係合部53bに対して、径方向内側向きの成分を有する力が作用しにくくなっている。よって、コロ部材53が非係合位置に配置された状態が維持されやすくなっている。
駆動側回転体71の回転数が一定になり保持ケース54に作用する慣性力が無くなると、ケース保持スプリング52の付勢力によって、駆動側回転体71と保持ケース54とは中立位置に保持される。更に、駆動側回転体71の回転数が一定になると、案内部材55は、遠心力によって同案内部材55の移動範囲内で最も径方向外側に配置されるとともに、係合位置に配置されたコロ部材53のカム係合部53bは、カム溝91の第1案内部P1に位置する。また、遠心力が作用した案内部材55は、コロ部材53が係合位置から径方向内側の非係合位置に移動することを抑制する。そして、回転軸20の回転駆動力は、駆動側回転体71からコロ部材53の動力伝達部53aを介して従動側回転体58に伝達される。従って、従動側回転体58とウォーム軸32とが一体回転され、ウォーム部32aとウォームホイール33とによって減速された回転力が出力軸35から出力される。
図15に示すように、従動側回転体58に作用する負荷が復帰スプリング83の付勢力以下である場合には、第1駆動プレート81と第2駆動プレート82とは、第1駆動プレート81と第2駆動プレート82との相対回転位置が3つの補助溝81bの周方向位置と3つの制御溝82dの周方向位置とが一致する位置に維持されたまま一体的に回転する。従って、回転軸20の回転駆動力は、第1駆動プレート81、復帰スプリング83、第2駆動プレート82、コロ部材53、従動側回転体58の順に伝達される。その結果、従動側回転体58が回転されるため、該従動側回転体58に連結されたウォーム軸32が回転される。そして、ウォーム部32aとウォームホイール33とによって減速された回転力が出力軸35から出力され、スライドドア3が自動で開作動又は閉作動される。
また、図16に示すように、従動側回転体58に作用する負荷が復帰スプリング83の付勢力より大きくなると、第1駆動プレート81が、復帰スプリング83の付勢力に抗して該復帰スプリング83を縮めながら第2駆動プレート82に対して該第2駆動プレート82と同方向に回転される。そして、各補助溝81bの一対の楔面81cのうち第1駆動プレート81の回転方向の後方側の楔面81cが、動力伝達部53aの径方向内側の端部に回転方向から当接する。ここで、動力伝達部53aに当接した伝達面58fと、同動力伝達部53aに当接した楔面81cとの間の間隔は、径方向外側に向かうに連れて広くなるように形成されている。即ち、動力伝達部53aを挟持した伝達面58fと楔面81cとは、クラッチ70の径方向外側の係合位置側に向けて拡開している。そのため、伝達面58fと楔面81cとによって挟持された動力伝達部53aは、径方向内側への移動が抑制されて安定して係合位置に配置される。尚、この時、各補助溝81bの一対の規制面81dのうち第1駆動プレート81の回転方向の後方側の規制面81dが、動力伝達部53aの案内面53cに回転方向から当接している。楔面81cと伝達面58fとに挟持された動力伝達部53aには、楔面81cに沿って該動力伝達部53aを径方向外側に向けて押し出すような力が作用する。そこで、動力伝達部53aに当接した楔面81cと隣り合う規制面81dが、同動力伝達部53aに対して第1駆動プレート81の回転方向の後方側から当接することにより、該規制面81dによって動力伝達部53aが遠心力等により径方向外側へ出過ぎることが抑制されている。そして、動力伝達部53aが伝達面58fと楔面81cとによって挟持された状態では、回転軸20の回転駆動力は、第1駆動プレート81からコロ部材53を介して従動側回転体58に伝達される。
モータ本体12が停止されると、回転軸20の回転数が低下する。そして、モータ本体12が停止された時の状態が、従動側回転体58に作用する負荷が復帰スプリング83の付勢力より大きい状態であった場合には、復帰凸部81eを付勢する復帰スプリング83が、第1駆動プレート81を直前の回転方向と反対方向に回転させる。これにより、第1駆動プレート81が第2駆動プレート82に対して相対回転されるため、第1駆動プレート81と第2駆動プレート82との相対回転位置が、3つの補助溝81bの周方向位置と3つの制御溝82dの周方向位置とが一致する位置に復帰される。同時に、伝達面58f及び楔面81cによる動力伝達部53aの挟持が解除される。
また、駆動側回転体71の回転数が低下すると、駆動側回転体71から回転駆動力が伝達されて回転していた保持ケース54及び従動側回転体58の回転数も低下する。すると、案内部材55に作用する遠心力が小さくなるため、保持スプリング56(図11参照)の付勢力によって、案内部材55は径方向内側に移動される。そして、案内部材55のカム溝91にカム係合部53bが挿入されたコロ部材は、案内部材55と共に径方向内側に移動される。この時、カム係合部53bは、カム溝91において第1案内部P1に位置している。従って、コロ部材53は、係合位置から非係合位置に移動される。その結果、駆動側回転体71と従動側回転体58との回転方向の係合が解除されて、回転軸20とウォーム軸32とが断絶された状態となる。
尚、図14乃至図16では、駆動側回転体71(回転軸20)が図14乃至図16において時計方向に回転された場合のクラッチ70を図示している。しかし、クラッチ70は、回転軸20が図14乃至図16において反時計方向に回転された場合も同様に回転軸20とウォーム軸32とを連結するものである。
上記したように、本第2実施形態によれば、上記第1実施形態の(1)〜(11)と同様の作用効果に加えて、以下の作用効果を有する。
(12)第1駆動プレート81の回転駆動時には、係合位置に配置されたコロ部材53は、第1駆動プレート81の楔面81cと従動側回転体58の伝達面58fとに挟持されると、楔面81cと伝達面58fとによって径方向外側の係合位置側に向けて押し出されることになる。従って、駆動側回転体71と従動側回転体58とが回転方向に係合する状態がより安定して維持されることから、回転軸20の回転時に、クラッチ70がオンされた状態が安定して維持される。
(13)規制面81dによってコロ部材53が径方向外側へ移動し過ぎることが抑制される。そのため、コロ部材53が従動側回転体58の側壁部58cを径方向外側に押圧することを抑制することができる。従って、従動側回転体58の側壁部58cの径方向の厚さを薄くすることが可能となるため、クラッチ70の径方向の小型化が可能となる。
(14)回転軸20の回転駆動の停止に伴ってクラッチ70をオフする際に、第2駆動プレート82に対して第1駆動プレート81を回転させる、即ち回転軸20を回転させるためにトルクが必要となったとしても、復帰スプリング83の付勢力によって第1駆動プレート81を回転させることができる。従って、楔面81cと伝達面58fとによるコロ部材53(動力伝達部53a)の挟持の解除の確実性が向上するため、コロ部材53の係合位置から非係合位置への移動が楔面81cによって妨げられることが抑制される。よって、クラッチ70をオフする動作の確実性がより向上する。
(15)駆動側回転体71の回転駆動の開始時にコロ部材53を係合位置に配置する第3円弧部91cは、クラッチ70の中心Oを曲率中心とする(即ち駆動側回転体71の中心軸線上に曲率中心を有する)円弧状をなしている。そのため、カム溝91においてコロ部材53を係合位置に配置する部位が長くなる。従って、駆動側回転体71の回転駆動の開始時にコロ部材53がカム溝91に案内されて係合位置に配置された後に、コロ部材53がカム溝91を伝って非係合位置の方へ移動されることが抑制される。
尚、本発明の各実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、車両ボディ2の側部に設けられた乗降口2aを開閉するスライドドア3を自動で開閉作動させるためのスライドドア開閉装置1を例に本発明を説明した。しかしながら、モータ11を駆動源として用いてドアを自動で開閉作動させるドア開閉装置であれば、スライドドア3以外のドアを開閉作動させるものに本発明を適用してもよい。例えば、車両後部に設けられた開口を開閉するバックドアをモータ11の駆動力により自動で開閉作動させるバックドア開閉装置に本発明を適用してもよい。また、上記各実施形態のモータ11は、ドア開閉装置に限らず、出力軸35に連結された負荷に回転軸20の回転駆動力を伝達する一方、負荷側からの出力軸35の回転を許容する装置に使用されてもよい。
・上記各実施形態では、クラッチ50,70は、モータ11に備えられている。しかしながら、クラッチ50,70は、モータ11以外に、同軸上に配置された駆動軸と従動軸とを連結・断絶するように作動するものに使用されてもよい。
・上記各実施形態では、駆動側回転体51,71の回転駆動の開始時には、保持ケース54に作用する慣性力によって同保持ケース54が駆動側回転体51,71よりも遅れて回転することにより、駆動側回転体51,71と保持ケース54とが相対回転される。しかしながら、保持ケース54に作用する慣性力を利用する以外に、駆動側回転体51,71の回転駆動の開始時に駆動側回転体51,71と保持ケース54とを相対回転させるための手段をクラッチ50,70に備えてもよい。例えば、駆動側回転体51,71の回転駆動の開始時に保持ケース54と回転軸20との間に摩擦力を発生させる手段をクラッチ50,70に設け、当該摩擦力の作用によって保持ケース54が駆動側回転体51,71よりも遅れて回転するようにしてもよい。
・上記各実施形態では、非係合位置と係合位置との間のコロ部材53の移動は、溝状のカム溝55cによって案内される。しかしながら、案内部材55において非係合位置と係合位置との間のコロ部材53の移動を案内する部位(カム部)は、溝状のカム溝55cに限らない。例えば、案内部材55の本体部55aから軸方向に突出するように形成されコロ部材53のカム係合部53bが係合されるカム突出部によって、非係合位置と係合位置との間のコロ部材53の移動を案内するようにしてもよい。このようにしても、上記第1実施形態の(1)と同様の作用効果を得ることができる。
・上記各実施形態では、案内部材55は、駆動側回転体51,71の回転駆動の開始時に保持ケース54に作用する慣性力を発生させるための重量を有するウェイトである。しかしながら、案内部材55は、保持ケース54に作用する慣性力を発生させるための重量を必ずしも備えなくてもよい。この場合には、例えば、保持ケース54自体に重量を持たせたり、案内部材55とは別に保持ケース54に錘を固定したりすることにより、駆動側回転体51,71の回転駆動の開始時に保持ケース54に慣性力が作用するようにする。
・カム溝55c,91の形状は上記各実施形態の形状に限らない。カム溝は、駆動側回転体51,71と保持ケース54との相対回転に伴って、コロ部材53を非係合位置から係合位置へ、又、係合位置から非係合位置へ案内可能な形状であればよい。例えば、カム溝は、軸方向から見た形状が径方向内側に突き出た円弧状となるように形成されてもよい。また例えば、カム溝は、第2実施形態のカム溝91から第3円弧部91cを省略した形状であってもよい。また例えば、カム溝は、第1実施形態のカム溝55cの周方向の両側に第3円弧部91cを設けた形状であってもよい。
・上記第2実施形態の復帰スプリング83は、回転軸20の停止時に、復帰凸部81eを付勢して第2駆動プレート82に対して第1駆動プレート81を回転させるものであれば、圧縮コイルばね以外のばねであってもよい。
・上記第2実施形態のクラッチ70は、規制面81dを必ずしも備えなくてもよい。
・上記各実施形態のクラッチ50,70において、ケース保持スプリング52は、駆動側回転体51,71と保持ケース54とを所定の相対回転位置(中立位置)に保持するように係合凸部54bを付勢するのであれば、圧縮コイルばね以外のばねであってもよい。
・上記各実施形態では、保持スプリング56には圧縮コイルばねが用いられている。しかしながら、保持スプリング56に引っ張りコイルばねを用いて、この保持スプリング56によって案内部材55を径方向内側に付勢するようにしてもよい。保持スプリング56に引っ張りコイルばねを用いた場合には、カバー57を省略することが可能となる。また、コイルばね以外のばねよりなる保持スプリング56によって案内部材55を径方向内側に付勢してもよい。また、案内部材55を付勢する保持スプリング56を省略する一方で、コロ部材53を径方向内側に付勢するばね等の部材(保持付勢部材)をクラッチ50,70に備えてもよい。また、案内部材55及びコロ部材53の両方を、ばね等の部材(保持付勢部材)によって径方向内側に付勢してもよい。このようにしても、上記第1実施形態の(3)と同様の作用効果を得ることができる。
・上記各実施形態では、駆動側回転体51,71の回転駆動時には、コロ部材53と従動側回転体58とは面接触して回転方向に係合される。しかしながら、コロ部材53と従動側回転体58とは、線接触若しくは点接触して回転方向に係合されてもよい。
・上記第1実施形態では、駆動側回転体51にてコロ部材53が該駆動側回転体51と一体回転可能に保持される一方、保持ケース54にてカム溝55cを有する案内部材55が該保持ケース54と一体回転可能に保持されている。しかしながら、駆動側回転体51にてカム溝55cを有する案内部材55を該駆動側回転体51と一体回転可能に保持する一方、保持ケース54にてコロ部材53を該保持ケース54と一体回転可能に保持するようにクラッチ50を構成してもよい。この場合、駆動側回転体51の回転駆動の開始時に、保持ケース54に慣性力が作用するように、例えば、同保持ケース54に重量を持たせたり、同保持ケース54に錘を固定したりする。また、駆動側回転体51は、該駆動側回転体に対する案内部材55の径方向の移動を許容するとともに、保持ケース54は、該保持ケース54に対するコロ部材53の径方向の移動を許容する。このようにしても、上記第1実施形態の(1)と同様の作用効果を得ることができる。
・上記第1実施形態のクラッチ50において、コロ部材53、制御溝51e、制御凹部58e、ケース保持スプリング52、カム溝55cを有する案内部材55及び保持スプリング56の数は適宜変更してもよい。これらの部品は、クラッチ50に少なくとも1つ備えられていればよい。また、上記第2実施形態のクラッチ70においても、補助溝81b、制御溝82d、制御凹部58e、ケース保持スプリング52、カム溝91を有する案内部材55及び保持スプリング56の数は適宜変更してもよい。これらの部品は、クラッチ70に少なくとも1つ備えられていればよい。
・上記第1実施形態では、駆動側回転体51は、回転軸20と別体に形成されているが、一体に形成されてもよい。同様に、上記第2実施形態において、第1駆動プレート81は、回転軸20と一体に形成されてもよい。更に、上記各実施形態において、従動側回転体58は、ウォーム軸32と一体に形成されてもよい。
上記実施形態及び上記各変更例から把握できる技術的思想を以下に記載する。
(イ)前記案内部材は、前記駆動側回転体の回転駆動の開始時に前記保持ケースに作用する前記慣性力を発生させるための重量を有するウェイトであることを特徴とする。同構成によれば、カム溝を有する案内部材によって、駆動側回転体の回転駆動の開始時に保持ケースに作用する慣性力を発生させるため、簡単な構成で保持ケースに慣性力を発生させることができる。