以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔プリント配線板(電子回路基板)の製造方法〕
本発明が適用されるプリント配線板1の製造方法(配線パターン形成方法)の概要を説明する。なお、図1(a)〜(d)にはプリント配線板1の断面図を示す。
図1(a)に示すプリント配線板1は、絶縁性基材2の表裏両面に銅箔からなる導体層3が形成されるとともに、表裏両面の導体層3A,3Bを導通させるスルーホール4を有している。なお、図1(a)には、スルーホール4を1つだけ図示したが、一般に、電子回路が形成されたプリント配線板には異なる穴径を有する多数のスルーホールが形成されている。
スルーホール4は、絶縁性基材2に形成された貫通穴の内壁面に導体層が形成され、該導体層がプリント配線板1の表面の導体層3A及び裏面の導体層3Bのうち少なくとも何れか一方と導通する配線形態を意味している。また、スルーホール4内の導体層及び導体層3(3A及び3B)を覆うようにメッキ層7が形成されている。
本例に示すレジスト膜パターン形成方法では、インクジェット方式によりプリント配線板1のメッキ層7(導体層3上及びスルーホール4の内壁)にレジストインクを直接描画する方法が用いられる。即ち、図1(b)に示すように、導体層3の配線パターンとなる部分及びスルーホール4の内壁にレジスト層(レジスト膜)5が形成され(レジスト膜パターンのパターニング工程)、加熱等によって導体層3上及びスルーホール4の内壁面に着弾したレジストインクを定着させる(定着工程)。
次いで、図1(c)に示すように、エッチングによってレジスト層5によって被覆されていない露出したメッキ層7及び当該露出したメッキ層7の下の導体層3が除去される(エッチング工程)。更に、図1(d)に示すように、レジスト層5が除去されるとともに(レジスト層除去工程)、露出した配線パターンは絶縁材料によって被覆され(ソルダーレジスト形成工程、図示省略)、所定の配線パターンを有するプリント配線板1が完成する。
〔第1実施形態、装置の全体構成〕
図2には、上述したプリント配線板製造方法におけるレジスト層5のパターニングを行うレジスト膜形成装置10の全体構成の概略を示す斜視図である。
図2に示すレジスト膜形成装置10は、インクジェット方式を用いてレジストインクを液滴化してプリント配線板1の導体層3上及びスルーホール4内に吐出する吐出ヘッド12と、吐出ヘッド12を支持するY軸アーム14及びY軸アーム14の両端部を支持する2本のY軸ガイド16を有し、吐出ヘッド12を図2において矢印線Aで図示する移動方向(副走査方向)に移動(走査)させるY軸機構18と、プリント配線板1を上面(吐出ヘッド12からレジストインクの吐出を受ける面)側から保持する上固定テーブル20と、プリント配線板1の下面(吐出ヘッド12からレジストインクの吐出を受ける面と反対面)側からプリント配線板1を支持する下固定テーブル22と、プリント配線板1と下固定テーブル22との間にフィルム24を供給するフィルム供給部26と、を有して構成されている。
図2に示す吐出ヘッド12は、プリント配線板1の幅(図2に矢印線Aで図示する吐出ヘッド12の移動方向(副走査方向)と直交する主走査方向の長さ)に対応する長さにわたってレジストインクを吐出するノズル(図2中不図示、図19に符号451で図示)を並べたノズル列を有するライン型ヘッドであり、プリント配線板1に対して吐出ヘッドをY軸方向に1回走査させるだけで(即ち、1回の副走査で)、プリント配線板1の全域にレジスト膜パターンを形成することができる。
なお、図2に示すライン型の吐出ヘッド12は、プリント配線板1の幅よりも短い長さの吐出ヘッドをプリント配線板1の幅方向に複数並べて構成してもよい。また、図示は省略するが、レジスト膜形成装置10はプリント配線板1のレジストインクの着弾面と吐出ヘッド12のレジストインク吐出部との間の距離を可変させるZ軸機構を備え、吐出ヘッド12からプリント配線板1へレジストインクを吐出させる際には、該Z軸機構により吐出ヘッド12をZ軸方向に移動させて、吐出ヘッド12のレジストインク吐出部からプリント配線板1のレジストインク着弾面までの距離Zが所定値(例えば、1mm〜数mm)に調整される。
また、図示は省略するが、上固定テーブル20には、プリント配線板1を保持する保持機構が備えられており、更に、プリント配線板1を保持した状態で上固定テーブル20を上下方向(Z軸方向)及び前後左右方向に移動させる上固定テーブル移動機構が備えられている。更に、プリント配線板1単体でプリント配線板1の表面と裏面を反転させる基板反転機構が備えられている。
図3には、図2に示すライン型の吐出ヘッドに代わり、プリント配線板1の幅よりも短い長さのノズル列を有するシリアル型(シャトル型)の吐出ヘッド12’を備えたレジスト膜形成装置10’を示す。
図3に示すレジスト膜形成装置10’は、吐出ヘッド12’をプリント配線板1の幅方向(図3の矢印線Bで示すX軸方向(主走査方向))に走査させてプリント配線板1の幅方向にレジスト膜を形成し、プリント配線板1の幅方向への1回の主走査が終わるとY軸アームをプリント配線板1の幅方向と直交するY軸方向に所定量だけ移動させて(副走査方向への走査を行い)、再びプリント配線板1の幅方向にレジスト膜を形成し、この動作を繰り返してプリント配線板1の全面にわたって所定のパターンを有するレジスト膜を形成するシャトル方式が適用される。
〔レジスト膜形成方法の詳細説明〕
次に、図4(a)〜図9を用いて、本発明の実施形態に係るレジスト膜形成方法(上述したレジスト膜形成装置10を用いたレジスト膜形成方法)を詳細に説明する。
図4(a)は、本例に示すレジスト膜形成方法の概念を示すプリント配線板1の断面図である。図4(a)には、プリント配線板1の第1の面1Aに吐出されたレジストインクによって所定パターンを有するレジスト層5(レジスト膜)が形成されるとともに、スルーホール4の内壁近傍に吐出されたレジストインクによってスルーホール4の内壁にレジスト層5が形成された状態(図2に示すプリント配線板1の一部を拡大したIV−IV線に沿う断面図)を示す。なお、本実施形態では説明の便宜上、プリント配線板1において先にレジスト層5が形成される面を第1の面、第1の面1Aと反対側面であり、後にレジスト層5が形成される面を第2の面1Bとするが、レジスト層5の形成はプリント配線板1の表面及び裏面の何れの面から行ってもよい。
図4(a)に示すように、スルーホール4を有するプリント配線板1は先にレジスト層5が形成される第1の面1Aの反対側の第2の面(図2に示す吐出ヘッド12と対向する面と反対側面)1Bと下固定テーブル22との間にフィルム24が挿入され、該第2の面1Bの配線パターンを形成しない外周部は下固定テーブル22で固定する。また、第1の面1Aの配線パターンを形成しない外周部は上固定テーブル20で支持する。
下固定テーブル22には、プリント配線板1の第2の面1Bの配線パターン及びスルーホール4を形成する領域に対応して空気圧流路22Aが設けられ、プリント配線板1の第2の面1Bと下固定テーブル22との間にフィルム24をはさみ込んだ状態で、矢印線Cで示す方向に空気圧流路22Aからフィルム24を空気加圧すると、フィルム24はプリント配線板1の第2の面1Bに密着し、更に、プリント配線板1の第2の面1Bに設けられるスルーホール4の第2の開口4Bの角エッジ部30(スルーホール4と基板1の第2の面1Bとの境界部)に倣い、フィルム24が変形して、スルーホール4の内部に僅かに入り込み、スルーホール4の第2の開口4Bを完全に閉塞する。
なお、フィルム24がスルーホール4の内部に僅かに入り込む状態には、例えば、レジストインクの液滴径と同程度に入り込む状態や、フィルム24の厚みtと同じ程度に入り込む状態(図4(b)参照)、スルーホール4の内壁面とフィルム24の角エッジ部30における接線とのなす角αが、80°≦α<90°を満たす状態(図4(c)参照)などが挙げられる。なお、図4(d)に図示するように、角エッジ部30にダレが発生することを考慮すると、スルーホール4の内壁面とフィルム24の角エッジ部30における接線とのなす角αは45°≦α<90°を満たす態様が好ましく、更に好ましくは、80°≦α<90°を満たす態様である。
図4(a)に図示するフィルム24によってスルーホール4の第2の開口4Bを完全に閉塞した状態で、プリント配線板1の第1の面1Aに設けられるスルーホール4の第1の開口4A側からレジストインクが吐出されると、第1の開口4Aからスルーホール4内に入ったレジストインクはスルーホール4の内壁に付着するとともに、スルーホール4の内壁に沿って重力等で沿って滴り落ちるが、スルーホール4の第2の開口4Bを完全に閉塞したフィルム24によって、プリント配線板1の第2の面1Bとフィルム24との界面に浸入することが阻止される。
言い換えると、スルーホール4の内壁に付着したレジストインクは、スルーホール4の内壁に沿って滴り落ち、フィルム24の上に溜まっていくが、プリント配線板1の第2の面1Bとフィルム24との界面において図4(a)の矢印線Dで示す方向に移動することが無い。
この状態でレジストインクを加熱して定着させると、スルーホール4内にレジスト層5が形成される。
このときのレジストインクの打滴位置は、スルーホール4の第1の開口部4Aの角エッジ部32(スルーホール4とプリント配線板1の第1の面1Aとの境界部)近傍であることが好ましい。
より好ましくは、レジストインクの液滴の外周面とスルーホール4の内壁とが接触する位置が最適である。
フィルム24は、使用されるレジストインクに対する撥液性及びレジストインクに対する耐性を有し、プリント配線板1の第2の面1Bに密着するとともにスルーホール4の第2の開口4Bの角エッジ部30に倣い、フィルム24が変形して、スルーホール4の内部に僅かに入り込み、スルーホール4の第2の開口4Bを完全に閉塞する柔軟性を有する撥液可撓性フィルムが用いられる。フィルム24の一例を挙げると、厚さが50μm以下のフッ素系樹脂フィルム、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルムなどが好適に用いられる。
また、上述したフィルム24に代わり弾性ゴムを用いる態様も可能であるが、スルーホール4の内部に入り込みやすい点や、ならしやすくプリント配線板1の第2の面1Bとの密着性を高めることができる点においてはフィルムを用いる態様が有利であるといえる。
図4(a)には、ロールトゥロールによるフィルム24の装てん方式を図示したが、フィルム24の装てん方法はロールトゥロール方式に限定されず、シート状のフィルムを装てんする方式やプリント配線板1の先にレジスト層5が形成される上面と反対側の下面となる面(図4(a)では第2の面1B)に予めラミネーションする方式などを適用することができる。
次に、図5〜図9を用いて、本発明の実施形態に係るレジスト膜形成方法を、工程を追って順に説明する。
図5には、プリント配線板1の第1の面1Aが上固定テーブル20に固定されるとともに、下固定テーブル22の上面にフィルム24が装てんされた状態を示す。
プリント配線板1の第1の面1Aを上固定テーブル20に固定する第1の基板固定工程では、プリント配線板1(スルーホール4の形成済み銅張積層板)が上固定テーブル20に位置決めされて固定される。上固定テーブル20にプリント配線板1が固定されると、プリント配線板1は上固定テーブル20に固定された状態で下降し(図5には、プリント配線板1の移動方向を矢印線Eで図示)、フィルム24を介して下固定テーブル22に密着させる第2の基板固定工程が行われる。
プリント配線板1と上固定テーブル20との位置決めは、固定されたプリント配線板1に対して上固定テーブル20を移動させてもよいし、固定された上固定テーブル20に対してプリント配線板1を移動させてもよい。また、プリント配線板1を上固定テーブル20に固定する方法には、エア吸着、静電吸着、機械的結合などの一般的な方法を適用することができ、上固定テーブル20と下固定テーブル22との位置合わせ機構は、一般的な産業用製造機器に用いられる構成を適用することができる。
図6には、プリント配線板1とフィルム24とを密着させるとともに、プリント配線板1の第2の面1Bを下固定テーブル22に固定した状態で空気圧流路22Aからフィルム24を空気加圧する加圧工程を示す。
図6に示すように、フィルム24が下固定テーブル22側から空気加圧されると、フィルム24はスルーホール4の第2の開口4Bの角エッジ部30に倣い、フィルム24が変形して、スルーホール4の内部に僅かに入り込み、スルーホール4の第2の開口4Bはフィルム24によって完全に閉塞される。
図7は、プリント配線板1の第1の面1Aにパターニングされたレジストインクが付着するとともに、スルーホール4の内壁にレジストインクが付着し、これらのレジストインクによってプリント配線板1の第1の面1A及びスルーホール4の内壁にレジスト層5が形成された状態を示す。
即ち、プリント配線板1の第2の面1B側にフィルム24を密着させてスルーホール4の第2の開口4Bをフィルム24で完全に閉塞した状態で吐出ヘッド12(図2参照)からレジストインクを吐出し、プリント配線板1の第1の面1Aに所定パターンを有するレジスト層5が形成されるとともに、スルーホール4の内壁にもレジスト層5が形成される(第1のレジスト層形成工程)。
プリント配線板1の第1の面1Aへのレジストインクの吐出では、プリント配線板1の厚み方向の打滴位置に応じて吐出ヘッド12を上下方向(プリント配線板1の厚み方向、Z軸方向)移動させながらレジストインクの吐出が行われる。
即ち、様々な厚みを持つプリント配線板1に対応しては、その厚みによってレジストインクの飛翔距離(即ち、吐出ヘッド12とプリント配線板1とのクリアランス)が変動してしまうと、吐出特性(レジストインクの着弾位置)に影響を与えてしまうので、レジストインクの飛翔距離を一定に保つようにプリント配線板1の厚みに応じて吐出ヘッド12をZ軸方向に移動させる。
スルーホール4の内部近傍へのレジストインクの吐出では、レジストインクの液滴の外周面とスルーホール4の内壁とが接触する位置、即ち、スルーホール4の第1の開口4Aの角エッジ部32に接触する位置(図7のレジストインク液滴5Aの位置)となるようにプリント配線板1上の打滴位置が設定される。即ち、プリント配線板1の第1の面1Aとスルーホール4の第1の面に設けられる第1の開口4Aと境界である角エッジ部32に接触してレジストインク液滴5Aがプリント配線板1に着弾すると、レジストインク液滴5Aは確実にスルーホール4の内壁に接触するので、レジストインクをスルーホール4の内壁に接触させながら、該レジストインクをスルーホール4の内壁に沿ってスルーホール4の内部へ移動させることができる。
なお、プリント配線板1上の「打滴位置」とは、プリント配線板1に設定された理論上、レジストインクが打滴され得る位置を意味している。この打滴位置は、吐出ヘッドの吐出分解能(吐出ヘッドのノズル密度)とプリント配線板1と吐出ヘッドとの相対走査における分解能によって決められる。
スルーホール4の内壁を滑り落ちたレジストインクは、プリント配線板1の第2の面1Bに浸入することなくスルーホール4内で合一し、スルーホール4の内壁がレジストインクで覆われる。図7における右側のスルーホール4’には、合一して一体化したレジストインクによって形成されたレジスト層5’を模式的に図示する。
図7に示す合一したレジストインクによって形成されたレジスト層5’はスルーホール4の内壁を覆うだけでなくフィルム24の上にも溜まり、結果としてスルーホール4の第2の開口4B近傍はレジスト層5’により閉塞される。
なお、スルーホール4内へのレジストインクの付着が完了してから、プリント配線板1の第1の面1Aにレジスト層5をパターニングしてもよいが、生産性向上の観点からスルーホール4の内壁へのレジストインクの付着と、プリント配線板1の第1の面1Aへのレジストインクの吐出と、を同一工程で行うことが好ましい。
このようにしてプリント配線板1の第1の面1A及びスルーホール4の内壁へのレジスト層5の形成が終わると、不図示の加熱手段を用いた加熱工程によって当該レジスト層5を定着(硬化)させる(第1の定着(硬化)工程)。また、プリント配線板1の第1の面1Aに形成されたレジスト層5に対しては、当該レジスト層5の表面を平滑化するために弾性ローラーなどの押圧部材を用いてレジスト層5を加圧することが好ましい。例えば、内部にヒータを備えた弾性ローラーでプリント配線板1を加熱及び加圧を同時に行う態様も好ましい。
また、プリント配線板1と上固定テーブル20及び下固定テーブル22、フィルム24と一体でプリント配線板1の加熱を行うことが好ましい。
例えば、図2に示す吐出ヘッド12がプリント配線板1の直上から一旦退避して、吐出ヘッド12に代わり加熱ユニットが移動してきてプリント配線板1の直上に配置され、プリント配線板1を加熱するように構成する態様が考えられる。
プリント配線板1の第1の面1A及びスルーホール4内にレジスト層5が形成され、該レジスト層5が定着すると、プリント配線板1は上固定テーブル20とともに上昇してフィルム24はプリント配線板1の第2の面1Bから剥離されるとともに下固定テーブル22はプリント配線板1と分離される。
上述したロールトゥロール方式では、フィルム24の使用済み部分が巻き取り側のロールに巻き取られ、引き出し側のロールから新たな未使用フィルムが引き出される。なお、使用済みフィルムを裁断して廃棄するように構成してもよい。
次に、プリント配線板1は上固定テーブル20から一旦開放され、不図示の基板反転機構によって表面と裏面を反転させる基板反転工程の後に、上固定テーブル20に位置決めされて固定される。更に、上固定テーブル20にプリント配線板1が保持された状態で下降させて、プリント配線板1と下固定テーブル22との間にフィルム24を介在させないで、プリント配線板1を下固定テーブル22に密着させる。図8には、既にレジスト層5が形成されたプリント配線板1の第1の面1Aを下固定テーブル22に密着させた状態を示す。
先に説明した第1のレジスト層形成工程において、スルーホール4内にレジスト層5が形成され、スルーホール4は第2の開口4B側がレジスト層5によって閉塞されているので、図8に示す第2のレジスト層形成工程では、スルーホール4の第1の開口4Aをフィルム24により閉塞する工程を省略することができる。
即ち、プリント配線板1の第2の面1Bが吐出ヘッド12と対向するようにプリント配線板1の第2の面1Bが上固定テーブル20によって固定されるとともに、プリント配線板1の第1の面1Aが下固定テーブル22によって支持され、吐出ヘッド12からプリント配線板1の第2の面1Bにレジストインクを吐出させて、第2の面1Bにパターニングされたレジスト層5が形成される。
また、スルーホール4の第2の開口4Bの近傍、特に、スルーホール4の第2の開口4Bの角エッジ部30は、フィルム24が密着していた部分の導体層3が露出する場合があるので、この部分にもレジスト層5が形成されるようにレジストインクが吐出される(第2のレジスト層形成工程)。
第2のレジスト層形成工程によってプリント配線板1の第2の面1Bに所定のパターンを有するレジスト層5が形成されると、第2の面のレジスト層5を加熱して定着させる第2の定着工程が実行される。第2の定着工程には第1の定着工程と同一方法を適用することができる。例えば、プリント配線板1を上固定テーブル20及び下固定テーブル22と一体で加熱処理を施すように構成してもよいし、吐出ヘッド12を退避させて加熱ユニットをプリント配線板1の直上に移動させてプリント配線板1を加熱するように構成してもよい。
第2の定着工程が終了し、プリント配線板1の第1の面1A及び第2の面1Bにパターニングされたレジスト層5が形成されるとともに、スルーホール4の内壁にレジスト層5が形成されると、プリント配線板1は上固定テーブル20とともに移動して下固定テーブル22から開放され、更に、プリント配線板1が上固定テーブル20から開放される。
図9には、上固定テーブル20及び下固定テーブル22から開放された状態のプリント配線板1を図示する。図9に示すように、プリント配線板1の両面及びスルーホール4に所定のパターンを有するレジスト層5が形成されると、レジスト層5によって被覆されていない導体層3をエッチングにより除去するエッチング工程に進む。
なお、本例では、両面プリント配線板の例を示したが、本発明は片面プリント配線板や多層プリント配線板にも適用することが可能である。即ち、片面プリント配線板の場合には、第1の定着工程が終了した後にエッチング工程を行うように構成して、プリント配線板反転工程以降の工程を省略してもよいし、第2のレジスト層形成工程においてプリント配線板1の第2の面1Bの全面にレジストインクを付着させるように(即ち、プリント配線板1の第2の面1Bの全面にレジストインクを用いたマスキング処理を施すように)レジストインクの吐出を制御してもよい。
また、多層プリント配線板の場合には、エッチング工程が終了したのちに片面或いは両面に絶縁層が形成され、同様の工程によって作製されたプリント配線板を積層すればよい。
上記の如く構成されたレジスト膜形成装置及びレジスト膜形成方法によれば、プリント配線板1の第2の面1Bと下固定テーブル22との間にフィルム24を装てんし、プリント配線板1の第2の面1Bにフィルム24密着させるとともに、フィルム24を下固定テーブル22側から加圧して、スルーホール4の第2の開口4Bの角エッジ部30に倣い、フィルム24を変形させてスルーホール4の内部に僅かに入り込ませ、スルーホール4のプリント配線板1の第2の面1B側を完全に閉塞した状態で、プリント配線板1の第1の面1A側からレジストインクを吐出させるので、プリント配線板1の第2の面1Bとフィルム24との界面からプリント配線板1の第2の面にレジストインクが浸入せず、プリント配線板1と下固定テーブル22がレジストインクによって接合されることを防止できる。
スルーホール4の閉塞部材(フィルム24)としてフッ素系樹脂フィルム等の撥液性及び可撓性を有するフィルムが適用されるので、撥液性能によってプリント配線板1の第2の面1Bへのレジストインクの浸入を防ぐ働きが増長されるとともに、可撓性能によってプリント配線板1の第2の面1Bへの密着性(気密性)が高く、基板の第2の面1Bの形状及びスルーホール4の形状への追従性が高くなる。例えば、スルーホール4の角エッジ部(図7の符号30、32)にダレが発生していても、フィルム24はスルーホール4の形状に追従する。
更に、フィルム24を下固定テーブル22側から加圧するように構成されるので、フィルム24のプリント配線板1の第2の面1Bへの密着性を高めることができる。また、フィルム24にフッ素樹脂フィルムを適用すると、フッ素系樹脂フィルムの持つ耐液性能によってフィルム24がレジストインクに浸食されない。
レジスト層5の材料にはレジストインクが用いられるので、常温では固体状のソリッドタイプのレジスト材料を融解させて吐出させる場合のように、レジストインクが基板に付着すると瞬時に定着することがなく、スルーホールに対してレジストインクを垂直に吐出させることができ(上述した特許文献1のように吐出方向を斜めにする必要がなく)、吐出ヘッドの構成が複雑にならない。
また、ソリッドタイプのレジスト材料を用いる態様のように、レジストインクの吐出中にレジストインクがスルーホール4の内壁面に付着した直後に硬化することがないので、単にスルーホール4内にレジストインクを吐出するだけでもスルーホール4の内部全体にわたってレジスト層5が形成される。
上述した特許文献2のように、スルーホール4の開口部を塞ぐためにレジストインクの吐出量を可変(多量化)することなくスルーホール4を塞ぐことができるので、多量のレジストインクによりスルーホール4を塞いだ結果、スルーホール4の開口からレジスト層5が突出することを防止でき、レジスト層5の厚みに影響を与えることがない。更に、突出したレジスト層5を研磨等により除去する後工程が不要である。
また、本例では、インクジェット方式によってレジストインクをプリント配線板1に付着させるので、レジストインクの吐出量の制御が容易であるとともに、レジスト層5の複雑なパターニングにも対応することができる。即ち、千差万別の穴径を有するスルーホールに対して吐出データの変更のみで対応することができ、上述した特許文献2に記載されたインジェクターを用いる方法に比べて生産効率が高いといえる。
本例では、レジストインクの打滴位置をスルーホール4の内壁近傍とし、更に、スルーホール4の角エッジ部32(図7参照)とレジストインクの液滴の外周面が接触するようにレジストインクが吐出されるので、先行技術文献2に記載されたインジェクターによる注入のようにスルーホール4内をすべてレジストインクで埋める必要がなく、レジスト材料の低減化に寄与する。
レジスト層5を定着させる定着手段としてレジスト層5を加熱する加熱ユニット(加熱手段)を用いると、レジストインクに感光性材料を含有する必要がなく、レジストインクの選択範囲が広くなる。
〔第2実施形態〕
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。図10は、第2実施形態に係るレジスト膜形成装置100の全体構成を示す概略図である。なお、図10中、図2と同一または類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図10に示すレジスト膜形成装置100は、吐出ヘッド12から吐出されるレジストインクに紫外線硬化型液状レジストが適用され、プリント配線板1上に紫外線硬化型レジストインクによって形成されたレジスト層に紫外線光源102から紫外線を照射して該レジスト層を硬化させる。
また、レジスト膜形成装置100は、吐出ヘッド12の後段に、プリント配線板1の幅(主走査方向の長さ)に対応する長さを有し、Y軸ガイドに沿ってプリント配線板1の幅方向と直交する副走査方向に移動可能に構成された紫外線光源102を備え、吐出ヘッド12からプリント配線板1上に吐出されたレジストインクによって形成されたレジスト層に吐出ヘッド12に後続して走査する紫外線光源102から紫外線が照射されるように構成されている。
なお、紫外線光源102はプリント配線板1の幅に対応する長さを有するライン型に限定されず、図11に示すように、プリント配線板1の幅方向に走査可能に構成されたシリアル型の紫外線光源102’を適用してもよい。図11に示すレジスト膜形成装置100’は、プリント配線板1の幅方向(図11に矢印線Bで示すX軸方向)に走査しながら該X軸方向にレジスト層を形成するシリアル型の吐出ヘッド12’を備え、吐出ヘッド12’が搭載されたキャリッジ(不図示)に吐出ヘッド12’と一緒にプリント配線板1の幅よりも短い長さの紫外線光源102’が搭載されている。
図11に示す態様では、紫外線光源102’は吐出ヘッド12’に後続してプリント配線板1の幅方向たるX軸方向に走査可能に構成され、吐出ヘッド12’からプリント配線板1に吐出されたレジストインクに対して紫外線を照射して、プリント配線板1上のレジストインクを直ちに硬化させる。もちろん、図10に示すライン型吐出ヘッド12と、図11に示すX軸方向に走査可能なシリアル型紫外線光源12’と、を組み合わせてもよい。
図11に示す態様では、先にスルーホール4の内壁近傍にレジストインクを吐出するとともに、スルーホール4の内壁に付着した直後のレジストインクに紫外線を照射してスルーホール4内のレジスト層5を完全硬化させ、スルーホール4内がレジスト層5で被覆されたか否かを検査した後にプリント配線板1の第1の面1Aにレジスト層5を形成するように、レジストインクの吐出及び紫外線の照射を制御してもよい。
即ち、レジスト層5の特定の領域に対して選択的に紫外線を照射するように紫外線光源を制御する紫外線照射制御手段を備え、先に吐出されたスルーホール4の内壁のレジストインクに紫外線を照射して該レジストインクを硬化させた後に、プリント配線板1の第1の面1Aにレジストインクを吐出し、プリント配線板1の第1の面1A上のレジストインクに紫外線を照射して該レジストインクを硬化させてレジスト層5を形成する態様を適用してもよい。
また、フィルム24に透明の材料を適用するとともに、下固定テーブル22の上面(プリント配線板1に対向する面)を鏡面とする態様も好ましい。図12には、下固定テーブル22の空気圧流路22A(図12に太線で図示する領域)を鏡面とする態様を示す。即ち、スルーホール4の第1の開口4Aから入射した紫外線と、該鏡面により反射してスルーホール4の第2の開口4Bから入射する紫外線と、を利用することで、スルーホール4の第1の開口4Aから入射した紫外線のみを利用する場合に比べて、スルーホール4の内壁に付着したレジストインク(レジスト層)50に効率よく紫外線を照射することができる。
本発明の第2実施形態によれば、紫外線硬化型液状レジストを用いてレジスト層5を形成するとともに、レジスト層5の硬化手段として紫外線光源を備えることで、プリント配線板1に形成されたレジスト層5を効率よく硬化させることができ、レジストインクの吐出(打滴)、定着(硬化)に時間差がなく、生産効率の向上が見込まれる。また、プリント配線板1の第2の面1Bに密着させるフィルム24に透明フィルム(紫外線透過効率の高いフィルム)を用い、下固定テーブル22のプリント配線板1側の面を鏡面とすることで、スルーホール4の第1の開口4Aから入射して、下固定テーブル22の鏡面で反射されてスルーホール4の第2の開口4Bから入射した紫外線を利用することができ、スルーホール4の内部のレジスト層50の硬化が促進され、スルーホール4の内壁のレジスト層5を確実に硬化させることができる。
なお、本例では、被紫外線硬化機能を有する紫外線硬化型のレジストインクを例示したが、電子線など紫外線以外の輻射線を照射することにより硬化する輻射線硬化型レジストインクを用いることも可能である。
〔第3実施形態〕
次に、本発明に係る第3実施形態について説明する。図13は、本発明の第3実施形態に係るレジスト膜形成装置200の全体構成を示す概略図である。なお、図13中、図2及び図10と同一または類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図13に示すレジスト膜形成装置200は、図2及び図10に示すフィルム24に代わり、スルーホールを閉塞する閉塞手段として弾性ローラー202を備えている。図13に示す弾性ローラー202は、その表面が所定の弾性を有する材料で構成されるとともに、撥液性及びレジストインクに対する耐性を有している。また、弾性ローラー202はその長手方向がライン型吐出ヘッド12の長手方向と略平行に配置されるとともに、その長手方向の長さは吐出ヘッド12の長手方向に長さに対応しており、更に、プリント配線板1の吐出ヘッド12と対向する面と反対側の面と接触しながら(支持しながら)吐出ヘッド12の走査方向(図13に矢印線Aで示す方向)と平行方向(図13に矢印線Fで示す方向)に往復移動可能に構成されている。
即ち、弾性ローラー202は、プリント配線板1の吐出ヘッド12と対向する面と反対側の面に密着しながら吐出ヘッド12と同期して吐出ヘッド12の走査方向と平行方向に走査し、吐出ヘッド12からレジストインクが吐出される領域に対して、スルーホールのレジストインクが吐出される側の開口と反対側の開口を閉塞する閉塞手段として機能する。
弾性ローラー202の表面がプリント配線板1と接触すると、弾性ローラー202の表面部分がスルーホール4の第2の開口4Bの角エッジ部30に倣い、弾性ローラー202が変形して、スルーホール4の内部に入り込むことで、上記第1及び第2実施形態に例示したフィルム24と同様にスルーホールのレジストインクが打滴される側の開口と反対側の開口を完全に塞ぎ、プリント配線板1と弾性ローラー202との界面からレジストインクが浸入することを防止できる。
なお、図13にはライン型の吐出ヘッドを例示したが、吐出ヘッドの構造はライン型に限定されず、図3に示すシリアル型の吐出ヘッドを適用してもよい。
また、弾性ローラー202をプリント配線板1に押圧する加圧力を可変する加圧力可変機構を備え、プリント配線板1(プリント配線板1の弾性ローラー202と接触する領域)のスルーホールのサイズ(スルーホール4の開口部の直径)やスルーホールの数に応じて加圧力を可変させるように構成する態様が好ましい。
図14には、スルーホール4のサイズに応じて弾性ローラー202の加圧力を可変制御する態様を模式的に図示する。図14に示すように、図14における左側の開口部の直径が大きいスルーホール204Aを閉塞する場合(実線で図示)には、図14における右側の開口部の直径が小さいスルーホール204Bを閉塞する場合(破線で図示)に比べて、弾性ローラー202のプリント配線板1に対する加圧力を大きくするように加圧力可変機構が制御される。
このようにして、スルーホールのサイズに応じて弾性ローラー202の加圧力を可変させることで、スルーホールのレジストインクが打滴される側の開口と反対側の開口を確実に閉塞することができ、弾性ローラー202とプリント配線板1との界面からレジストインクが浸入することを防止できる。なお、弾性ローラー202によって異なるサイズのスルーホールが同時に閉塞される場合には、最大サイズのスルーホールに合わせて加圧力を設定するとよい。
また、弾性ローラー202と加熱部材とを兼用する態様も好ましい。即ち、弾性ローラー202の内部にヒータを備える態様によれば、スルーホール4の内壁に形成されたレジスト層5を素早く定着させることができ、レジストインクのスルーホール4の内壁への付着と定着に時間差がなく、生産効率の向上が見込まれる。
スルーホール4の内壁の導体層に付着したレジストインクのみを加熱するので、スルーホール4の内部の何れにレジストインクを打滴しても、レジストインク液滴がスルーホール4の内部で何れ合一することになる。
図15には、図13及び図14に示す弾性ローラー202に代わりヒートブロック222を備える態様を示す。
図15に示すヒートブロック222は、図13及び図14に示す弾性ローラー202と同等の機能を有し、プリント配線板1のレジストインクが打滴される側と反対側の開口を確実に閉塞する閉塞手段として機能するとともに、スルーホール4の内壁に付着したレジストインクを定着させる定着手段として機能する。
また、ヒートブロック222をY軸方向に走査させる走査機構の構成は、弾性ローラー202と同等であり、Y軸方向分解能ごとにZ軸方向に移動する(プリント配線板1に対して加圧する)ことができるZ軸移動機構を備えている。
ヒートブロック222を備える態様によれば、スルーホールのレジストインクが吐出される側の開口と反対側の開口を好適に閉塞し得る。また、ヒートブロック222の内部にヒータを備える態様も好ましい。
〔第4実施形態〕
次に、本発明に係る第4実施形態について説明する。本発明の第4実施形態では、レジストインクの吐出方法として静電吐出型インクジェット法を適用し、液状レジストの濃縮供給によりスルーホール内壁にレジストインクの固形分のみを付着させてスルーホールの内壁にレジスト層を形成する。
なお、以下に説明する第4実施形態は、レジストインクを吐出する構成を除いた構成は上述した第1実施形態と同一であり、第4実施形態において第1実施形態と同一の部分については説明を省略する。
図16には、本発明の第4実施形態に係るレジスト膜形成装置及びレジスト膜形成方法によって、スルーホール4の内壁及び第1の面1Aにレジスト層5が形成されたプリント配線板1を示す。図16に示す態様では、絶縁性溶媒に帯電したレジスト荷電粒子が分散しているレジストインクを静電吐出型吐出ヘッド(図16中不図示、図17に符号300で図示)へ供給し、静電吐出型吐出ヘッドとプリント配線板1との間に発生させた電界をレジストインクに分散している帯電したレジスト荷電粒子に作用させて、吐出ヘッドからレジストインク内の帯電したレジスト荷電粒子を吐出させ、プリント配線板1の第1面1A、第2の面1B及びスルーホール4の内壁に帯電したレジスト荷電粒子を付着させて、所望のレジスト層5が形成される。
ここでいう「レジスト荷電粒子」とは、レジスト樹脂材料を粒子化して、当該粒子を帯電させた粒子をいう。換言すれば、耐エッチング液性を有する樹脂材料を粒子化するとともに、絶縁性溶媒内で帯電させた粒子をいう。
また、本発明の第4実施形態に適用される静電吐出型インクジェット法では、プリント配線板1の導体層3が対向電極として用いられる。なお、導電性材料を用いた導電フィルムをフィルム24に適用して、フィルム24を対向電極として用いることも可能である。
次に、図17(a),(b)を用いて静電吐出型インクジェット法に適用される吐出ヘッドの構成及びレジストインクの吐出方式について説明する。
図17(a)には、静電吐出型インクジェット法に適用される吐出ヘッド300の概略構成の断面を模式的に示し、図17(b)には、図17(a)のXVIIb−XVIIb線に沿う断面図を示す。図17(a)に示すように、吐出ヘッド300は、ヘッド基板302と、吐出ガイド304と、吐出口306が形成された吐出口基板308とを有する。吐出口基板308には、吐出口306を囲むように吐出電極320が配置されている。吐出ヘッド300の吐出側の面(図中、上面)に対面する位置に、プリント配線板1を支持する支持部材((図1下固定テーブル)22と、プリント配線板1の帯電ユニット312が配置される。
また、ヘッド基板302と吐出口基板308は、互いに対面した状態で所定間隔離間して配置される。ヘッド基板302と吐出口基板308の間に形成される空間によって各吐出口306にインクを供給するレジストインク流路314が形成される。
吐出ヘッド300は、より高密度な画像記録を高速に行うために、複数の吐出口306が2次元的に配列されたマルチチャンネル構造を有する。吐出ヘッド300の吐出口基板308に複数の吐出口306は2次元的に配列されているが、図17(a)及び図17(b)においては、吐出ヘッド300を分かりやすく示すために、複数の吐出口の内、1つの吐出口だけを示している。
吐出ヘッド300においては、電荷を有するレジスト荷電粒子を絶縁性の液体(キャリア液)に分散してなるレジストインク316を用いる。そして、吐出口基板308に設けられた吐出電極320に駆動電圧を印加して吐出口306に電界を発生させ、吐出口306のレジストインクを静電力により吐出させる。また、吐出電極320に印加する駆動電圧を、レジスト膜パターンデータに応じてon/off(吐出on/off)することにより、レジスト膜パターンデータに応じて吐出口306からレジストインクを吐出して、プリント配線板1上にレジスト膜パターンを形成する。
以下、図17(a)及び図17(b)に示した本発明の吐出ヘッド300の構造についてより詳細に説明する。
図17(a)に示すように、吐出ヘッド300の吐出口基板308は、絶縁基板322と、吐出電極320と、を有し、絶縁基板322の図中下側の面(ヘッド基板302に対面する側の面)には、レジストインクを吐出するための駆動電圧が印加される吐出電極320が形成されている。
また、吐出口基板308には、レジストインク滴328を吐出するための吐出口306が絶縁基板322を貫通して形成されている。吐出口306は、図17(b)に示すように、長方形の両方の短辺側を半円形にした、レジストインクの流れ方向に細長い繭形の開口(スリット)であり、レジストインクの流れ方向の長さLとレジストインクの流れに直交する方向の長さDとのアスペクト比(L/D)が1以上となる形状を有する。
本発明では、このように、吐出口306をレジストインクの流れ方向の長さLとレジストインクの流れに直交する方向の長さDとのアスペクト比(L/D)が1以上の開口とすることで、吐出口306にレジストインクが流れやすくなる。つまり吐出口306へのレジストインクの粒子供給性を高めることができ、周波数応答性を向上させ、更に目詰まりも防止することができる。この点については、レジストインク滴の吐出の作用とともに、後ほど詳細に説明する。
また、本実施の形態では、吐出口306を繭形の開口として形成したが、これに限らず、吐出口306からレジストインクを吐出することができるのであれば、円形や略円形、楕円形、矩形、正方形、ひし形、平行四辺形など任意の形状で吐出口306を形成することができる。
吐出口306の形状としてはレジストインクの流れ方向の長さとレジストインクの流れに垂直な方向の長さとのアスペクト比が1以上となるようなレジストインクの流れ方向に細長い形状であることが好ましい。これにより、吐出口へのレジストインクの供給性が高められ、目詰まりを防止することができ、連続した大ドットを安定してプリント配線板1に形成することができ、より高い周波数の描画周波数で高画質のレジスト膜パターンを描画することができる。例えば、レジストインクの流れ方向を長辺とする矩形状、又は、レジストインクの流れ方向を長軸とする楕円形若しくはひし形で吐出口を形成することができる。また、レジストインクの流れの上流側を上底、下流側を下底とし、レジストインクの流れ方向の高さが下底よりも長い台形状で吐出口を形成してもよい。この場合、上流側の辺を長くしても下流側の辺を長くしてもよい。また、レジストインクの流れ方向を長辺とする長方形の両方の短辺側に、直径がその長方形の短辺よりも大きな円が接続されたような形状にしてもよい。このように吐出口306をレジストインクの流れ方向に細長い形状とすることにより、この吐出口306へのレジストインクの供給性を高めることができるとともに目詰まりも防止することができる。また、吐出口306は、その中心に対して、上流側と下流側で対称な形状であっても非対称な形状であっても良い。
次に、図17(a)に示した吐出ヘッド300の吐出口基板308に形成されている吐出電極320について説明する。絶縁基板322の下面(ヘッド基板302と対向する面)には、図17(b)に示すような吐出電極320が形成されている。吐出電極320は、吐出口306の周囲を囲むように吐出口306の周縁に沿って配置されている。図17(b)においては、吐出電極320は吐出口306と相似形の形状で形成されているが、これに限定されず、吐出口306の周囲を囲む形状であれば種々の形状に変更することができる。例えば、円形、略円形、楕円形、略楕円形などの形状で吐出電極を形成することができる。また、吐出口306の形状に応じて種々の形状に変更することができ。吐出口306の周囲を完全に取り囲んでいなくてもよく、例えば、レジストインクの流れ方向の上流側又は下流側の吐出電極の一部が切りかかれたようなC字型、コ字型などの形状であってもよい。また、レジストインクの流れ方向に平行で吐出口を挟むように配置された平行電極や略平行電極としてもよい。
前述のように、吐出ヘッド300は、吐出口306が2次元的に配列されたマルチチャンネル構造を有するので、吐出電極320もまた各吐出口306に対応して2次元的に配置されている。
また、吐出電極320は、レジストインク流路314に露出し、レジストインク流路314を流れるレジストインク316と接触している。図17(a)に示す吐出ヘッド300は、このような構造としたことにより、レジストインクの吐出性を大幅に向上させることができる。この点については、後に、吐出の作用と共に詳述する。しかしながら、吐出電極320は、必ずしもレジストインク流路314に露出してレジストインクと接触している必要はなく、吐出電極320は吐出口基板308の内部に形成されていてもよいし、図17(a)に示した吐出電極320のレジストインク流路314に露出している面を絶縁層で被覆してもよい。
また、吐出電極320は、図17(a)に示すように、駆動電圧制御部330に接続されている。駆動電圧制御部330は、レジストインク吐出時及び非吐出時に吐出電極に印加する駆動電圧を、描画信号(レジスト膜パターンデータ)に応じて制御することができる。
次に、図17(a)に示した吐出ヘッド300の吐出ガイド304について説明する。吐出ガイド304は、所定の厚みを有するセラミック製平板からなり、各吐出口306(吐出部)に対応してヘッド基板302の上に配置されている。吐出ガイド304は、吐出口306の長辺方向の長さに応じてわずかに幅広に形成されている。上述したように、吐出ガイド304は、吐出口306を通過し、その先端部分304Aが吐出口基板308のプリント配線板1側の表面(絶縁基板322の表面)よりも上方に突出している。
吐出ガイド304の先端部分304Aは、レジストインクの流れ方向に平行な断面形状が、プリント配線板1へ向かうに従って次第に細くなる略三角形(ないしは台形)になるように成形されている。吐出ガイド304は、先端部分304Aの傾斜面がレジストインクの流れ方向と交差するように配置される。これにより、吐出口306に流入するレジストインクが吐出ガイド304の先端部分304Aの傾斜面に沿って先端部分304Aの頂点に到達するので、吐出口306にレジストインクのメニスカスが安定して形成される。
また、吐出ガイド304を吐出口306の長辺方向に幅広に形成することで、レジストインクの流れに直交する方向の幅を短くすることができ、レジストインクの流れに及ぼす影響を少なくすることができ、かつ後述するメニスカスを安定して形成させることができる。
なお、吐出ガイド304の形状は、レジストインク316内のレジスト荷電粒子を吐出口基板308の吐出口306を通って先端部分304Aに濃縮させることができれば、特に、制限的ではなく、例えば、先端部分304Aがプリント配線板1側に向かうに従って細くなるような形状でなくても良く、適宜変更することができる。例えば、吐出ガイド304の中央部分に、図中上下方向に毛細管現象によってレジストインク316を先端部分304Aに集める案内溝となる切り欠きが形成されていても良い。また、図17(b)では、吐出口の形状に応じて、レジストインク流方向に長い板状の形状としたが、これに限定されず、角柱にしてもよい。
また、吐出ガイド304は、その最先端部に、金属が蒸着されていることが好ましく、吐出ガイド304の最先端部に金属を蒸着させることにより、吐出ガイド304の先端部分304Aの誘電率が実質的に大きくなる。これにより、吐出電極に駆動電圧が印加されたときに、吐出ガイド304に強電界を生じさせやすくなり、レジストインクの吐出性を向上することができる。
本実施形態の吐出ヘッド300は、図17(a)に示すように、好ましい形態として、ヘッド基板302に吐出口306にレジストインクを誘導する誘導堰340が設けられている。誘導堰340は、ヘッド基板302のレジストインク流路314側の面、即ちレジストインク流路314の底面で、吐出ガイド304のレジストインクの流れ方向の上流側および下流側に設けられている。誘導堰340は、レジストインクの流れ方向に対して、吐出口306に対応する位置の近傍から吐出口306の中心に対応する位置に向かって、吐出口基板308に漸次近接するように傾斜した面を有している。即ち、誘導堰340は、レジストインクの流れ方向に沿って、吐出口306に向かって傾斜する形状を有している。
また、誘導堰340は、レジストインクの流れに直交する方向には、吐出口306と略同一の幅を有し、底面から垂設する壁面を有する形状とされている。また、誘導堰340は、吐出口306を塞ぐことなく、レジストインク316の流路を確保するように、吐出口基板308のレジストインク流路314側の面、即ちレジストインク流路314の上面から所定の間隔を置いて設けられている。このような誘導堰340は、各々の吐出部にそれぞれ設けられている。
このように、レジストインク流路314の底面に、レジストインクの流れ方向に沿って、吐出口306に向かって傾斜する誘導堰340を設けることによって、吐出口306へ向かうレジストインクの流れが形成され、レジストインク316が吐出口306のレジストインク流路314側の開口部に誘導される。そのため、レジストインク316を吐出口306内部へ好適に流入させることができ、レジストインクのレジスト荷電粒子供給性をより向上させることができる。更に吐出口の目詰まりも、より確実に防止することができる。
誘導堰340のインク流方向の長さlは、隣接する吐出口と干渉しない範囲で、レジストインク316を吐出口306へ好適に誘導できるように適宜設定されればよいが、誘導堰340の最高部の高さhに対し、3倍以上(l/h≧3)とするのが好ましく、8倍以上(l/h≧8)とするのがより好ましい。
誘導堰340のレジストインクの流れと直交する方向の幅は、吐出口306と同等か、若干広いのが好ましい。また、誘導堰340の幅は、図示例のように均一なものには限定されず、幅が漸減するものや漸増するもの等であってもよい。また、その壁面も、垂直面には限定されず、傾斜面等であってもよい。
誘導堰340の傾斜面(レジストインクの誘導面)は、レジストインク316を吐出口306に誘導するのに好適な形状とすればよく、一定の傾斜角を有する斜面であってもよいし、傾斜角が変化する面や、湾曲面であってもよい。また、その表面は、平滑面には限定されず、インク流方向に、或いは吐出口306の中心部に向かって放射状に、1条以上の畝や溝等が形成されていてもよい。
また、誘導堰340の上部の吐出ガイド304との接部近傍は、図示例のように段差を有することなく、滑らかにつながる形状としてもよい。
図17に図示する例では、誘導堰340が吐出ガイド304の上流側および下流側に配置された形態としているが、吐出口306の上流側および下流側に斜面を有する台形状の誘導堰340を設け、その上部に吐出ガイド304を立設する形態としてもよいし、吐出ガイド304および誘導堰340を一体的に形成してもよい。このように、誘導堰340は、吐出ガイド304と別々に、または、一体的に形成されて、ヘッド基板302に取り付けられてもよいし、あるいは、従来公知の切削手段によりヘッド基板302を削り出して形成されてもよい。
なお、誘導堰340は、吐出口306の上流側に設けられていれば良いが、図示例のように、吐出口306の下流側にも、レジストインク滴328の吐出方向の高さが吐出口306から遠ざかるにつれて低くなるように設けられているのが好ましい。これにより、上流側の誘導堰340によって吐出口306に向かって誘導されたレジストインク316が滑らかに下流側へ流れるので、レジストインク316が乱流になることなく、レジストインクの流れの安定を保つことができ、吐出安定性を保つことができる。
次に、吐出ヘッド300のレジストインク滴328の吐出面と対面して配置される対向電極について説明する。本例では、プリント配線板1の導体層3(図16参照)が対向電極として使用され、少なくとも記録時には、帯電ユニット312によって、吐出電極320に印加される駆動電圧と逆極性の所定の負の高電圧に帯電される。
帯電ユニット312は、プリント配線板1の導体層3を負の高電圧に帯電させるためのスコロトロン帯電器354と、スコロトロン帯電器354に負の高電圧を供給するバイアス電圧源356とを有している。なお、本発明に用いられる帯電ユニット312の帯電手段としては、スコロトロン帯電器354に限定されず、コロトロン帯電器、固体チャージャ、放電針などの種々の放電手段を用いることができる。
以上、静電吐出型の吐出ヘッド300の構造について詳細に説明した。次に、このような構造を有する吐出ヘッドのレジストインクの吐出の動作について説明する。
吐出ヘッド300の記録動作時には、吐出電極320には、駆動電圧が印加される。即ち、描画信号(レジスト膜パターンデータ)に同期して、レジストインクを吐出するための駆動電圧が印加される。レジストインクの吐出を指示する描画信号が吐出電極320に接続された駆動電圧制御部330に供給されると、その描画信号と同じタイミングで吐出電極320に駆動電圧が印加される。これにより、吐出電極320からインクの吐出に作用する電界が発生し、吐出口306からインクが吐出される。
一方、レジストインクの非吐出を指示する描画信号が駆動電圧制御部に供給された場合には、吐出電極320には駆動電圧は印加されずに0[V]とされる。このため、吐出電極320からは吐出のための電界は発生しないので、吐出口306からインクは吐出されない。なお、描画信号の1周期がプリント配線板1に1ドットを形成するのに要する時間に相当する。また、吐出電極320に印加される駆動電圧は、例えば、600[V]に設定される。吐出電極320に駆動電圧を印加しない場合は、吐出電極320は、例えば、0[V]に設定される。駆動電圧の電圧値は、上記値に限定されず、吐出電極320に駆動電圧を印加したときに確実にインクを吐出させることができれば、任意の電圧値に設定することができる。
次に、本発明の第4実施形態の吐出ヘッド300に用いられるレジストインク316について説明する。
レジストインク316は、レジスト荷電粒子をキャリア液に分散することにより得られる。キャリア液は、高い電気抵抗率(109 Ω・cm以上、好ましくは1010Ω・cm以上)を有する誘電性の液体(非水溶媒)であるのが好ましい。キャリア液の電気抵抗が低いと、制御電極に印加される駆動電圧により、キャリア液自身が電荷注入を受けて帯電してしまい、レジスト荷電粒子の濃縮がおこらない。また、電気抵抗の低いキャリア液は、隣接する制御電極間での電気的導通を生じさせる懸念もあるため不向きである。
キャリア液として用いられる誘電性液体の比誘電率は、5以下が好ましく、より好ましくは4以下、更に好ましくは3.5以下である。このような比誘電率の範囲とすることによって、キャリア液中のレジスト荷電粒子に有効に電界が作用し、泳動が起こりやすくなる。
なお、このようなキャリア液の固有電気抵抗の上限値は1016Ω・cm程度であるのが望ましく、比誘電率の下限値は1.9程度であるのが望ましい。キャリア液の電気抵抗が上記範囲であるのが望ましい理由は、電気抵抗が低くなると、低電界下でのレジストインクの吐出が悪くなるからであり、比誘電率が上記範囲であるのが望ましい理由は、誘電率が高くなると溶媒の分極により電界が緩和され、これにより形成されたドットの滲みを生じたりするからである。
キャリア液として用いられる誘電性液体としては、好ましくは直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、または芳香族炭化水素、および、これらの炭化水素のハロゲン置換体がある。例えば、へキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、アイソパーC、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM(アイソパー:エクソン社の商品名)、シェルゾール70、シェルゾール71(シェルゾール:シェルオイル社の商品名)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(アムスコ:スピリッツ社の商品名)、シリコーンオイル(例えば、信越シリコーン社製KF−96L)等を単独あるいは混合して用いることができる。
このようなキャリア液に分散されるレジスト荷電粒子は、レジスト荷電粒子自身をレジスト荷電粒子としてキャリア液中に分散させてもよいが、好ましくは、定着性を向上させるための分散樹脂粒子を含有させる。
更に、分散樹脂粒子としては、例えば、ロジン類、ロジン変性フェノール樹脂、アルキッド樹脂、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニールアルコールのアセタール変性物、ポリカーボネート等を挙げられる。
これらのうち、粒子形成の容易さの観点から、重量平均分子量が2,000〜1000,000の範囲内であり、かつ多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、1.0〜5.0の範囲内であるポリマーが好ましい。更に、前記定着の容易さの観点から、軟化点、ガラス転移点または、融点のいずれか1つが40℃〜120℃の範囲内にあるポリマーが好ましい。
レジストインク316において、レジスト荷電粒子の含有量(レジスト荷電粒子あるいは更に分散樹脂粒子の合計含有量)は、レジストインク全体に対して0.5〜30重量%の範囲で含有されることが好ましく、より好ましくは1.5〜25重量%、更に好ましくは3〜20重量%の範囲で含有されることが望ましい。レジスト荷電粒子の含有量が少なくなると、レジスト膜パターンの膜厚が不足したり、レジストインク316とプリント配線板1表面との親和性が得られ難くなって強固なレジスト膜パターンが得られなくなったりするなどの問題が生じ易くなり、一方、含有量が多くなると均一な分散液が得られにくくなったり、ヘッド等でのレジストインク316の目詰まりが生じやすく、安定なインク吐出が得られにくいなどの問題が生じるからである。
また、キャリア液に分散されたレジスト荷電粒子の平均粒径は、0.1〜5μmが好ましく、より好ましくは0.2〜1.5μmであり、更に好ましくは0.4〜1.0μmである。この粒径はCAPA−500(堀場製作所(株)製商品名)により求めたものである。
樹脂粒子をキャリア液に分散させた後(必要に応じて、分散剤を使用しても可)、荷電制御剤をキャリア液に添加することにより樹脂粒子を荷電して、荷電したレジスト荷電粒子をキャリア液に分散してなるレジストインク316とする。なお、樹脂粒子の分散時には、必要に応じて、分散媒を添加してもよい。
荷電制御剤は、一例として、電子写真液体現像剤に用いられている各種のものが利用可能である。また、「最近の電子写真現像システムとトナー材料の開発・実用化」139〜148頁、電子写真学会編「電子写真技術の基礎と応用」497〜505頁(コロナ社、1988年刊)、原崎勇次「電子写真」16(No.2)、44頁(1977年)等に記載の各種の荷電制御剤も利用可能である。
なお、レジスト荷電粒子は、制御電極に印加される駆動電圧と同極性であれば、正電荷および負電荷のいずれに荷電したものであってもよい。
また、レジスト荷電粒子の荷電量は、好ましくは5〜200μC/g、より好ましくは10〜150μC/g、更に好ましくは15〜100μC/gの範囲である。
また、荷電制御剤の添加によって誘電性溶媒の電気抵抗が変化することもあるため、下記に定義する分配率Pを、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上とする。
P=100×(σ1−σ2)/σ1
ここで、σ1は、レジストインク316の電気伝導度、σ2は、レジストインク316を遠心分離器にかけた上澄みの電気伝導度である。電気伝導度は、LCRメーター(安藤電気(株)社製AG−4311)および液体用電極(川口電機製作所(株)社製LP−05型)を使用し、印加電圧5[V]、周波数1kHzの条件で測定を行った値である。また遠心分離は、小型高速冷却遠心機(トミー精工(株)社製SRX−201)を使用し、回転速度14500rpm、温度23℃の条件で30分間行った。
以上のようなレジストインク316を用いることによって、レジスト荷電粒子の泳動が起こりやすくなり、濃縮しやすくなる。
レジストインク316の電気伝導度は、100〜3000pS/cmが好ましく、より好ましくは150〜2500pS/cm、更に好ましくは200〜2000pS/cmである。以上のような電気伝導度の範囲とすることによって、制御電極に印加する電圧が極端に高くならず、隣接する記録電極間での電気的導通を生じさせる懸念もない。
また、レジストインク316の表面張力は、15〜50mN/mの範囲が好ましく、より好ましくは15.5〜45mN/m、更に好ましくは16〜40mN/mの範囲である。表面張力をこの範囲とすることによって、制御電極に印加する電圧が極端に高くならず、ヘッド周りにインクが漏れ広がり汚染することがない。
更に、レジストインク316の粘度は0.5〜5mPa・secが好ましく、より好ましくは0.6〜3.0mPa・sec、更に好ましくは0.7〜2.0mPa・secである。
このようなレジストインク316は、一例として、樹脂粒子をキャリア液に分散して粒子化し、かつ、荷電調整剤を分散媒に添加して、樹脂粒子に荷電を生じさせることで、調製できる。具体的な方法としては、以下の方法が例示される。
(1)樹脂粒子あるいは更に分散樹脂粒子をあらかじめ混合(混練)した後、必要に応じて分散剤を用いてキャリア液に分散し、荷電調整剤を加える方法。
(2)樹脂粒子、あるいは更に分散樹脂粒子および分散剤を、キャリア液に同時に添加して、分散し、荷電調整剤を加える方法。
(3)樹脂粒子および荷電調整剤、あるいは更に分散樹脂粒子および分散剤を、同時にキャリア液に添加して、分散する方法。
上述したように、静電吐出型の吐出ヘッド300では、プリント配線板1に着弾するレジストインクの高粘度化手段を別途具備することなく、吐出ヘッド内でレジストインクを濃縮して吐出することが可能であり、高精細且つ、高い打滴精度といった特徴を有しているので、レジスト膜パターンの形成には好適である。
上述した第4実施形態によれば、レジストインクを濃縮してプリント配線板1に吐出されるので、スルーホール4の内壁に付着したレジストインクの滴り落ちる量が低減されるとともに、静電付着も寄与するので、レジストインクのスルーホール4の内壁に対する密着力が高くなる。また、スルーホール4の内壁に積層付着させることも可能であることから、レジストインクが最小限で済むとともに、スルーホール4の内壁に形成されるレジスト層5のレジスト膜厚も均一化することができる。
〔吐出ヘッドの構造例〕
次に、本発明に係るレジスト膜形成装置に適用される吐出ヘッドの構造例として、図2に示すライン型吐出ヘッド12の構造について説明する。図18(a)は吐出ヘッド12の構造例を示す平面透視図であり、図18(b) はその一部の拡大図である。また、図18(c) は吐出ヘッド12の他の構造例を示す平面透視図、図19は1つの液滴吐出素子(1つのノズル451に対応したレジストインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図18(a) 中のXIX−XIX線に沿う断面図)である。
プリント配線板1上に形成されるレジスト層を構成するドットを高密度化するためには、吐出ヘッド12におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例の吐出ヘッド12は、図18(a),(b) に示したように、レジストインクの吐出口であるノズル451と、各ノズル451に対応する圧力室452等からなる液滴吐出素子453を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、吐出ヘッドの長手方向(図2に示す走査方向Aと直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
吐出ヘッド12の走査方向と略直交する方向にプリント配線板1の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図18(a) の構成に代えて、図18(c)に示すように、複数のノズル451が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール12”を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることでプリント配線板1の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル451に対応して設けられている圧力室452は、その平面形状が概略正方形となっており(図18(a),(b)参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル451への流出口が設けられ、他方に圧力室452への供給口454が設けられている。なお、圧力室452の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
図19に示すように、各圧力室452は供給口454を介して共通流路455と連通されている。共通流路455はレジストインクの供給源たるタンク(不図示)と連通しており、タンクから供給されるレジストインクは共通流路455を介して各圧力室452に分配供給される。
圧力室452の一部の面(図19において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)456には個別電極457を備えた圧電素子458が接合されている。個別電極457と共通電極間に駆動信号の振幅を印加することによって圧電素子458が変形して圧力室452の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル451からレジストインクが吐出される。なお、圧電素子458には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。レジストインクを吐出した後に圧電素子458の変位が元に戻る際に、共通流路455から供給口454を通って新しいレジストインクが圧力室452に再充填される。
上述した構造を有する液滴吐出素子453を図18(a),(b)に示す如く主走査方向(吐出ヘッド12の走査方向と直交する方向)に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿って液滴吐出素子453を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル451が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
本実施形態では、ピエゾ素子に代表される圧電素子458の変形によってレジストインクを加圧する方式が採用されている。本発明の実施に際して、圧電素子458にはピエゾ素子以外の他の方式のアクチュエータ(例えば、サーマル方式)を適用してもよい。
〔レジストインクの供給系の構成例〕
次に、図2に示すレジスト膜形成装置10のレジストインクの供給系の概略構成について説明する。図20はレジスト膜形成装置10におけるレジストインク供給系の構成を示した概要図である。
タンク460はレジストインクを供給するための基タンクである。タンク460の形態には、レジストインクの残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からレジストインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてレジストインクの種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、レジストインクの種類情報をバーコード等で識別して、レジストインクの種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。
図20に示すように、タンク460と吐出ヘッド12の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ462が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、吐出ヘッド12の近傍又は吐出ヘッド12と一体にサブタンク(不図示)を設ける構成も好ましい。サブタンクは、圧力室452や共通流路455の内圧変動を防止するダンパ効果及びリフィルを改善する機能を有する。
サブタンクにより共通流路455内圧を制御する態様には、大気開放されたサブタンクと吐出ヘッド12内の圧力室452とのレジストインクの水位の差により圧力室452内の内圧を制御する態様や、密閉されたサブタンクに接続されたポンプによりサブタンク及び圧力室452の内圧を制御する態様などがあり、何れの態様を適用してもよい。
〔ヘッドのメンテナンスの一例〕
図20に示すように、レジスト膜形成装置10にはノズル451の乾燥防止又はノズル451近傍のレジストインクの粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ464が設けられ、ノズル451が形成されるノズル形成面のクリーニング(ワイピング)を行うための手段としてブレード466が設けられている。
キャップ464やブレード466を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によって吐出ヘッド12に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から吐出ヘッド12下方の位置に移動される。
図20に示すキャップ464は、吐出ヘッド12のノズル形成面を全面にわたって覆うことができるサイズを有している。キャップ464は、図示せぬ昇降機構によって吐出ヘッド12に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や吐出待機時にキャップ464を所定の上昇位置まで上昇させ、吐出ヘッド12(吐出ヘッド12のノズル形成面)に密着させることにより、ノズル形成面をキャップ464で覆う。
吐出中又は待機中において、特定のノズル451の使用頻度が低くなり、ある時間以上、レジストインクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のレジストインクの溶媒が蒸発してレジストインクの粘度が高くなってしまう。このような状態になると、圧電素子458(図19参照)が動作してもノズル451からレジストインクを吐出できなくなってしまう。
このような状態になる前に(圧電素子458の動作により吐出が可能な粘度の範囲で)圧電素子458を動作させ、その劣化したレジストインク(粘度が上昇したノズル近傍のレジストインク)を排出すべく図20のキャップ464に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き)が行われる。
また、初期のレジストインクの吐出ヘッドへの充てん時、或いは長時間の停止後の使用開始時にレジストインクの粘度が上昇して固化(劣化)した場合は、吸い出し(吸引動作)が行われる。なお、吸引動作は圧力室452内のレジストインク全体に対して行われるので、レジストインクの消費量が大きくなる。したがって、レジストインクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。なお、圧力室452(図19参照)に気泡が存在すると、圧電素子458を動作させたときに圧力損失が発生するので、圧力室452内の気泡を排除する目的でノズル吸引が実行される。
図20のブレード466は、ノズル形成面に当接させながら移動してノズル形成面の汚れを除去する払拭手段として機能し、硬質ゴムなどの材料が好適に用いられる。即ち、ブレード466は所定の強度(剛性)及び所定の弾力性を有し、その表面はレジストインク液滴をはじく所定の撥水性能を有している。ブレード466はノズル形成面に付着したレジストインク(固まってノズル形成面に固着したレジストインク)など、その他の異物を払拭除去可能な部材で構成される。
また、図20には図示しないが、レジスト膜形成装置10のヘッドメンテナンス機構(ヘッドメンテナンス手段)には、該ブレード466を上下方向に移動させてノズル形成面に接触させる/接触させない(非接触)を切り換えるブレード上下機構(不図示)や、ブレード466に付着した異物を除去するクリーニング手段が備えられている。
〔制御系の構成例〕
次に、本例に示すレジスト膜形成装置10の制御系について説明する。図21はレジスト膜形成装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。レジスト膜形成装置10は、通信インターフェース470、システムコントローラー472、メモリ474、モータドライバ476、ポンプドライバ477、ヒータドライバ478、吐出制御部480、バッファメモリ482、吐出ヘッドドライバ484等を備えている。
通信インターフェース470は、ホストコンピュータ486から送られてくるレジスト膜パターンデータを受信するインターフェース部である。通信インターフェース470にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリを搭載してもよい。ホストコンピュータ486から送出されたレジスト膜パターンデータは通信インターフェース470を介してレジスト膜形成装置10に取り込まれ、一旦メモリ474に記憶される。メモリ474は、通信インターフェース470を介して入力されたレジスト膜パターンデータを一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラー472を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ474は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラー472は、通信インターフェース470、メモリ474、モータドライバ476、ヒータドライバ478等の各部を制御する制御部である。システムコントローラー472は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ486との間の通信制御、メモリ474の読み書き制御等を行うとともに、搬送駆動系のモータ488やフィルム24を加圧する加圧手段として機能するポンプ487、プリント配線板1に形成されたレジスト層を加熱する加熱手段としてのヒータ489を制御する制御信号を生成する。
モータドライバ476は、システムコントローラー472からの指示にしたがって搬送駆動系のモータ88を駆動するドライバー(駆動回路)である。搬送駆動系のモータ88とは、図2のY軸アーム14の駆動源となるモータや、図13に示す弾性ローラー202の走査機構の駆動源となるモータがある。
ヒータドライバ478は、システムコントローラー472からの指示にしたがってヒータ489を駆動するドライバーである。なお、図21に図示するヒータ489には、図4(a)等に図示したプリント配線板1上に形成されたレジスト層5を加熱するヒータ、図13に示す弾性ローラー202を加熱手段と兼用する際に弾性ローラー202に内蔵されるヒータ、各吐出ヘッド12の温度調節ヒータなどのヒータが含まれる。
吐出制御部480は、システムコントローラー472の制御に従い、メモリ474内のレジスト膜パターンデータから吐出制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した吐出制御信号(吐出データ)を吐出ヘッドドライバ484に供給する制御部である。吐出制御部480において所要の信号処理が施され、該レジスト膜ターンデータに基づいて吐出ヘッドドライバ484を介して吐出ヘッド12のレジストインクの吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のパターン幅やパターン形状を有するレジスト膜パターンが実現される。
吐出制御部480にはバッファメモリ482が備えられており、吐出制御部480におけるレジスト膜パターンデータ処理時にレジスト膜パターンデータやパラメータなどのデータがバッファメモリ482に一時的に格納される。なお、図21においてバッファメモリ482は吐出制御部480に付随する態様で示されているが、メモリ474と兼用することも可能である。また、吐出制御部480とシステムコントローラー472とを統合して一つのプロセッサで構成する態様も可能である。
吐出ヘッドドライバ484は、吐出制御部480から与えられる吐出データに基づいて吐出ヘッド12の圧電素子458(図19参照)を駆動する。吐出ヘッドドライバ484には吐出ヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
プログラム格納部490には、レジスト膜形成装置10の制御プログラムが格納され、システムコントローラー472はプログラム格納部490に格納されている種々の制御プログラムを適宜読み出し、制御プログラムを実行する。
なお、図10及び図11に図示する紫外線光源102(102’)を備える態様では、図21に示す制御系には、システムコントローラー472から送られる制御信号に基づいて紫外線光源102のオンオフ及び照射光量を制御する光源ドライバーが備えられる。
また、図17に示す静電吐出型の吐出ヘッド300を備える態様では、図21に示す制御系に吐出電極320と対向電極(プリント配線板1の導体層3)との間に電界を発生させる帯電ユニット312を制御する電界制御ブロックを備え、該電界制御ブロックは吐出制御部480から送られる制御信号に基づいて帯電ユニット312を制御する。
なお、上述した吐出ヘッドの構造例、供給系の構成例及び制御系の構成例はあくまでも一例であり、装置構成、基板の種類及びレジストインクの種類などの条件に応じて適宜変更することが可能である。
1…プリント配線板、3…導体層、4…スルーホール、5…レジスト層、10,10’100,100’,200…レジスト膜形成装置、12,12’,300…吐出ヘッド、20…上固定テーブル、22…下固定テーブル、24…フィルム、102,102’…紫外線光源、202…弾性ローラー、472…システムコントローラー、480…吐出制御部