U字セグメント順次接合ステータコイルが、たとえば車両用交流発電機などのステータコイルとして提案され、実用化されている。下記の特許文献1〜21は、本出願人により出願されたU字セグメント順次接合ステータコイルの一部である。このU字セグメント順次接合ステータコイルは、U字導体の一対の脚部をステータコアの一端面側からステータコアの略1磁極ピッチ離れたスロットに個別に挿通し、ステータコアの他端面側にて相ごとに直列接続して構成される。
U字導体は、U字状の頭部先端部と、この頭部先端部の両端から個別に延在する一対の頭部斜行部と、これら一対の頭部斜行部から延在してスロットに個別に収容される一対のスロット導体部と、これら一対のスロット導体部から個別に延在する一対の端部斜行部と、端部斜行部の先端部により構成されて他のU字導体の端部斜行部の先端部に接合される端部先端部(接合部)とからなる。
頭部先端部及び頭部斜行部は頭部側コイルエンドを構成し、頭部斜行部及び端部先端部は端部側コイルエンドを構成する。スロット導体部と頭部斜行部と端部先端部とは脚部を構成している。各スロットは径方向において偶数個の導体収容位置をそれぞれ有している。各U字導体の一対のスロット導体部は、互いに異なる導体収容位置に収容されている。端部先端部が互いに接合される一対のU字導体のスロット導体部は、互いに異なる収容位置に収容されている。一本のU字導体の一対のスロット導体部を略1磁極ピッチ離隔するために、このU字導体の頭部斜行部及び頭部斜行部は周方向へ曲げられている。典型的な製造方法では、各頭部斜行部及び頭部斜行部はほぼ半磁極ピッチだけ周方向へ斜行している。
U字導体の頭部斜行部を周方向へ展開するために、松葉状に形成された未展開のU字導体の上記頭部斜行部予定部分は相対的に1磁極ピッチ捻られる。U字導体の一対の頭部斜行部予定部分の周方向への捻り(展開)は、U字導体のスロット導体部予定部分を一対のリング(回動リング又は捻りリングとも呼ぶ)で保持しつつ、この一対のリングを1磁極ピッチ相対回動させることにより実現される。更に説明すると、松葉状の未展開U字導体のスロット導体部予定部分を保持しつつ相対回動することによりU字導体の一対の頭部斜行部予定部分を周方向へ展開させて頭部斜行部となす頭部展開工程が実行される。
同様に、U字導体の端部斜行部を周方向へ展開するために、頭部斜行部が展開されたU字導体のスロット導体部をステータコアのスロットに挿入した後、端部斜行部予定部分をステータコアのスロットに挿通した後、端部先端部予定部分を一対のリングで保持しつつこの一対のリングを1磁極ピッチ相対回動させることにより、一対の端部斜行部予定部分を周方向へ捻って(展開して)端部斜行部となす端部展開工程が実行される。典型的なコイル捻り装置とその動作についてはたとえば下記の特許文献2、特許文献20及び特許文献21に開示されている。
一つのU字導体の一対のスロット導体部は互いに異なる2つの導体収容位置に個別に収容される。2つのU字導体の直列接続は、一方のU字導体の端部先端部と、この端部先端部に径方向に隣接する他方のU字導体の端部先端部とを接合することにより行われる。一例において、各スロットの周方向に隣接する2つの導体収容位置を用いて一つのU字セグメント順次接合ステータコイルを構成することができる。これを2位置型U字セグメント順次接合ステータコイルと称する。他例において、各スロットの周方向に隣接する4つの導体収容位置を用いて一つのU字セグメント順次接合ステータコイルを構成することができる。これを4位置型U字セグメント順次接合ステータコイルと称する。4位置型U字セグメント順次接合ステータコイルは、径方向最内側の導体収容位置と径方向最外側の導体収容位置とに一対の脚部が個別に収容される大セグメントと、径方向二番目の導体収容位置と径方向三番目の導体収容位置とに一対の脚部が個別に収容される小セグメントとが用いられる。頭部側コイルエンドにおいて、大セグメントの頭部先端部は小セグメントの頭部先端部を包むように配置される。このようにして構成された各相コイルをたとえば星形接続してU字セグメント順次接合ステータコイルが完成される。
スロットの導体収容位置を増加することにより、スロットの2つの導体収容位置を占有する2位置型U字セグメント順次接合ステータコイル、もしくは、スロットの4つの導体収容位置を占有する4位置型U字セグメント順次接合ステータコイルを径方向へ複数配置できることは明白である。更に詳しく説明すると、2位置型U字セグメント順次接合ステータコイルではスロットの互いに隣接する2つの導体収容位置がU字導体のスロット導体部により占有され、4位置型U字セグメント順次接合ステータコイルではスロットの互いに隣接する2つの導体収容位置がU字導体のスロット導体部により占有される。上記2位置型U字セグメント順次接合ステータコイルや4位置型U字セグメント順次接合ステータコイルを径方向に重ねて配置すれば、モータ出力を向上することができる。
以下、この方式を複数コイル径方向重ね構造と称し、これら複数のコイルのうち、径方向内側のコイル(すなわち内側のU字セグメント順次接合ステータコイル)を内側コイルと称し、径方向外側のコイル(すなわち外側のU字セグメント順次接合ステータコイル)を外側コイルと略称する。また、内側コイルと外側コイルとの間に更にコイルを配置する場合、このコイルを中間コイルと略称する。
上記した複数コイル径方向重ね構造における頭部斜行部の形成のために、内側コイル用U字導体と外側コイル用U字導体とを、多重回動リングを用いて一斉同時に捻る方法が提案されている。以下、この方式を一斉捻り方式又は一斉回動方式と呼ぶ。このような一斉捻り方式については、特許文献1、22などに詳述されており、広く知られている。
上記した内側コイル及び外側コイルからなる複数コイル径方向重ね配置方式では、同相の内側コイルと外側コイルとを直列接続するために、外側コイルの最終(最初でもよい)のスロット導体部と、内側コイルの最初(最終でもよい)のスロット導体部と、これら2つのスロット導体部を連ねる特別形状の頭部とをもつコイル間渡り線を用いて、内側コイルと外側コイルとを直列接続することが好適である。
上記説明したU字セグメント順次接合ステータコイル及びその製造方法は、既述した下記の特許文献などによりもはや周知技術のレベルに達しているため、これ以上の従来技術説明は省略する。このU字セグメント順次接合ステータコイルは、明らかに古来の巻回式のステータコイルに比べて巻き線構造が簡単となる結果、スロット占積率向上やコイルエンドのコンパクト化を実現することができるうえ、巻き線工程も簡素化することができる。
各相コイル(一相のU字セグメント順次接合ステータコイル)の中性点用又は相端子への引き出し線は、適切な部位でU字状セグメントのU字状の頭部を分割することにより、あるいは、長い2つのI字導体を最終のスロット及び最初のスロットに挿通して構成することが、上記特許文献により知られている。
引き出し線は最終的にモータハウジングのターミナル(相端子)や中性点に達する必要があり、このためには引き出し線をコイルエンドが存在する領域からたとえばコイルエンドの径方向外側領域へ引き出す必要がある。最初又は最後のスロットから出た引き出し線をコイルエンド上方(軸方向を上下方向とする)を這わせてたとえば放射状に配置することはモータハウジングの軸方向長を縮小できるため好適であり、たとえば特許文献23〜25などに記載されている。
特許第3118837号公報
特許第3178468号公報
特許第3199068号公報
特開2000−139049号公報
特開2000−350423号公報
特開2001−045721号公報
特開2001−069731号公報
特開2001−245447号公報
特開2002−218689号公報
特開2003−189520号公報
特開2004−032882号公報
特開2004−032884号公報
特開2004−032890号公報
特開2004−032897号公報
特開2004−048939号公報
特開2004−048941号公報
特開2004−048967号公報
特開2004−064914号公報
特開2004−166316号公報
特開2005−6364号公報
特開2005−211951号公報
特許第3178463号公報
特開2002−204549号公報
特開2004−064914号公報
特開2004−32882号公報
上記した特許文献23〜25に記載されているような引き出し線配置構造では、引き出し線がコイルエンドの上方に延設されるため、必要なモータハウジングの軸方向長が増大してしまうという問題が生じる。また、この問題は複数の引き出し線などの交差が必要な場合に更に顕著となる。また、たとえば上記したセグメント導体(単にセグメントとも呼ぶ)を用いるステータコイル(セグメント順次接合ステータコイル)あるいは矩形断面形状をもつ導体を用いるステータコイルなどでは、導体断面積が大きいため、その成形加工が難しく手間が掛かるという問題もある。
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、加工工程が簡素、容易であり、しかもモータハウジングの軸方向長増大を抑止可能なステータコイル特に好適にはセグメント順次接合ステータコイルの引き出し線構造及びその製造方法を提供することをその目的としている。
上記課題を解決する本発明のステータコイルは、ステータコアに巻装されるコイル導体により構成され、前記コイル導体は、ステータコアの端面から突出してコイルエンドをなすコイルエンド導体部を多数有するコイルと、各相の前記コイルの前記コイルエンド側から各相の相端子又は中性点に達する複数の引き出し線とを備え、前記コイルエンド導体部は、前記ステータコアの軸方向一方側に突出するとともに略径方向に放射状に延在する略U字状のコイル端部と、前記コイル端部の両端から周方向及び軸方向に対して斜設されて前記ステータコアのスロットに達する一対のコイル斜行部とを有し、前記各コイルエンド導体部の前記コイル端部は、周方向所定ピッチにて互いに略平行に配設され、前記各コイルエンド導体部の前記コイル斜行部は、周方向所定ピッチにて互いに略平行に配設されているステータコイルに、その引き出し線配置形態にその特徴がある。この種のステータコイル構造はたとえば平角線を用いたセグメント順次接合ステータコイルとしてもはや周知となっている。
本発明では、前記引き出し線が、互いに周方向に隣接する一対の前記コイル端部の間の隙間(以下、コイル端部間溝とも呼ぶ)に放射状に延設されて径方向内側から径方向外側に引き出される埋設型引き出し線を含むことを特徴としている。したがって、このコイル端部間溝は、少なくとも径方向に延在している。すなわち、本発明は、ステータコイルの引き出し線構造にその特徴がある。
コイルエンドを構成する多数のコイルエンド導体部のコイル端部が、たとえば略放射状に整然と配列されるステータコイル(たとえばセグメント順次接合ステータコイル)では、互いに周方向に隣接するコイル端部の間にたとえば略放射状にコイル端部間溝が形成されることになる。そこで、この発明では、引き出し線をこのコイル端部間溝を利用して径方向外側に引き出すこと。引き出し線はコイル端部間溝に全面的に埋設されてもよく、その軸方向寸法の一部だけ埋設されて残る一部がコイル端部よりも軸方向外側に突出していても良い。また、コイル端部間溝の深さに余裕があれば複数の引き出し線を底に順番に埋め込んでも良い。
このようにすれば、従来に比べて引き出し線がコイル端部間溝に埋め込まれた分だけ、モータハウジングの軸方向長を縮小でき、モータの小型軽量化を実現することができる。更に、埋設型引き出し線は、コイル端部と樹脂などにより容易に一体支持、電気絶縁することができる。
好適な態様において、前記引き出し線は、前記コイルエンド導体部の前記コイル端部に対して軸方向に隣接配置されて前記コイル端部の軸方向外側を径方向内側から径方向外側に引き出される隣接型引き出し線を含む。すなわち、この態様では、多数の引き出し線の一部は、隣接型引き出し線としてコイル端部に軸方向に隣接して径方向外側へ延設される。このようにすれば、コイルエンドとこの隣接型引き出し線との間のギャップを最小としつつ引き出し線をコイルエンドの軸方向外側に配置できるため、モータハウジングの軸方向長を縮小することができるとともに、引き出し線の配置自由度を大幅に増大することができる。更に、埋設型引き出し線は、コイル端部と樹脂などにより容易に一体支持、電気絶縁することができる。
好適な態様において、周方向へ複数配列された引き出し線は、軸方向から見た場合に互いに平行する部分を少なくともコイル端部に隣接する位置にてもつ。これによりコイル端部の軸方向外側を通過する引き出し線が互いに近接していたとしても互いに干渉しにくくなるので、上記干渉回避のためにコイルエンドの軸方向突出長が増大を防止することができる。好適な態様において、引き出し線は、隣接するコイル端部の軸直角方向へ延在する部分に沿って延在する部分を有する。ただし、引き出し線は、隣接するコイル端部の周方向位置と同位置に重ねて配設してもよい。
好適な態様において、前記埋設型引き出し線と前記隣接型引き出し線とは、軸方向にみて交差して延設されている。このようにすれば、多数の引き出し線の配設自由度を更に増大することができる。
本発明のステータコイルは、ステータコアに巻装されるコイル導体により構成され、前記コイル導体は、ステータコアの端面から突出してコイルエンドをなすコイルエンド導体部を多数有するコイルと、各相の前記コイルの前記コイルエンド側から各相の相端子又は中性点に達する複数の引き出し線とを備え、前記コイルエンド導体部は、前記ステータコアの軸方向一方側に突出するとともに略径方向に延在する略U字状のコイル端部と、前記コイル端部の両端から周方向及び軸方向に対して斜設されて前記ステータコアのスロットに達する一対のコイル斜行部とを有し、前記各コイルエンド導体部の前記コイル端部は、周方向所定ピッチにて互いに略平行に配設され、前記各コイルエンド導体部の前記コイル斜行部は、周方向所定ピッチにて互いに略平行に配設されているステータコイルにおいて、前記引き出し線は、互いに周方向に隣接する一対の前記コイル端部の間の隙間に延設されて径方向内側から径方向外側に引き出される埋設型引き出し線を含むものであって、前記埋設型引き出し線は、前記コイルエンド導体部のコイル斜行部に周方向に隣接する引き出し線斜行部と、前記引き出し線斜行部から略径方向外側に延在して前記コイルエンドの径方向外側に達する引き出し線端部とを有し、前記引き出し線端部は、前記引き出し線斜行部の先端から軸方向外側へ向けて曲げられている立ち上がり部と、前記立ち上がり部の先端から所定曲率にて湾曲しつつ径方向外側へ向けて曲がっている曲がり部と、前記曲がり部の先端から径方向外側へ向けて略直線状に延在して前記コイルエンドの径方向外端に等しい径方向位置に達する放射状延在部と、を有する。更に好適には、前記放射状延在部から前記コイルエンドよりも径方向外側に延設されて前記相端子又は中性点に達する径方向外側延在部もを有する。
すなわち、この態様では、引き出し線の引き出し線端部は、引き出し線斜行部から立ち上がり部にて曲がって軸方向外側に立ち上がり、次に曲がり部にて径方向外側へ向けて湾曲して引き出し線の向きを変え、その後、放射状延在部として埋設型引き出し線又は隣接型引き出し線としてコイル端部の間のコイル端部間溝又はコイル端部の軸方向外側の表面に隣接しつつ略径方向外側へ延在してコイルエンドの径方向外端に達し、その後、径方向外側延在部としてコイルエンドよりも径方向外側を相端子又は中性点にまで達する。この引き出し線端部は、立ち上がり部と放射状延在部との間にコイル端部を迂回する湾曲部分すなわち曲がり部をもつため、かつ、引き出し線表面の絶縁皮膜の損傷を防止しつつ、最小距離にて略放射方向(略径方向外側)へ延在することができる。
本発明のステータコイルは、ステータコアに巻装されるコイル導体により構成され、前記コイル導体は、ステータコアの端面から突出してコイルエンドをなすコイルエンド導体部を多数有するコイルと、各相の前記コイルの前記コイルエンド側から各相の相端子又は中性点に達する複数の引き出し線とを備え、前記コイルエンド導体部は、前記ステータコアの軸方向一方側に突出するとともに略径方向に延在する略U字状のコイル端部と、前記コイル端部の両端から周方向及び軸方向に対して斜設されて前記ステータコアのスロットに達する一対のコイル斜行部とを有し、前記各コイルエンド導体部の前記コイル端部は、周方向所定ピッチにて互いに略平行に配設され、前記各コイルエンド導体部の前記コイル斜行部は、周方向所定ピッチにて互いに略平行に配設されているステータコイルにおいて、前記引き出し線は、互いに周方向に隣接する一対の前記コイル端部の間の隙間に延設されて径方向内側から径方向外側に引き出される埋設型引き出し線と前記コイルエンド導体部の前記コイル端部に対して軸方向に隣接配置されて前記コイル端部の軸方向外側を径方向内側から径方向外側に引き出される隣接型引き出し線を含むものであって、前記隣接型引き出し線は、前記コイルエンド導体部のコイル斜行部に周方向に隣接する引き出し線斜行部と、前記引き出し線斜行部から略径方向外側に延在して前記コイルエンドの径方向外側に達する引き出し線端部とを有し、前記引き出し線端部は、前記引き出し線斜行部の先端から軸方向外側へ向けて曲げられている立ち上がり部と、前記立ち上がり部の先端から所定曲率にて湾曲しつつ径方向外側へ向けて曲がっている曲がり部と、前記曲がり部の先端から径方向外側へ向けて略直線状に延在して前記コイルエンドの径方向外端に等しい径方向位置に達する放射状延在部と、を有する。
これにより、従来に比べて引き出し線がコイル端部間溝に埋め込まれた分だけ、モータハウジングの軸方向長を縮小でき、モータの小型軽量化を実現することができる。また、モータハウジングの軸方向長を縮小することができるとともに、引き出し線の配置自由度を大幅に増大することができる。更に、この引き出し線端部は、立ち上がり部と放射状延在部との間にコイル端部を迂回する湾曲部分すなわち曲がり部をもつため、かつ、引き出し線表面の絶縁皮膜の損傷を防止しつつ、最小距離にて略放射方向(略径方向外側)へ延在することができる。
好適な態様において、前記曲がり部は、軸方向にみて周方向一方側に倒れている。このようにすると、曲がり部の曲率半径を縮小することなく、倒れた分だけ引き出し線の軸方向突出長を短縮することができる。
好適な態様において、複数の前記引き出し線の前記放射状延在部は、互いに周方向異なる位置に配置される。これにより、多数の引き出し線が周方向同位置にて軸方向に重ねる必要を減らすことができるので、引き出し線の軸方向突出長を抑止することができる。
好適な態様において、前記放射状延在部は、前記コイルエンド導体部の前記コイル端部の軸方向外側に位置して軸方向外側へ向けて突出しつつ曲げられることにより前記コイル端部を迂回している。これにより、放射状延在部は、コイル端部の径方向外端の表面部に沿いつつ延在することができるため、コイル端部と樹脂等で容易に一体支持できるとともに、引き出し線の軸方向突出長を押さえることができる。
好適な態様において、前記引き出し線の前記径方向外側延在部は、周方向へ曲げられている。このようにすれば、ステータコイルが互いに径方向に順番に配置される複数の部分コイルにより構成される場合でも、各部分コイルのコイルエンドの軸方向外側に隣接しつつ、あるいはコイル端部間溝に埋設されつつ、周方向所定位置に配置された相端子や中性点に向けて好適な経路にて延在することができ、また、複数の径方向外側延在部を束ねることも容易となる。なお、上記周方向へ曲げられた径方向外側延在部は、複数設けてもよいことはもちろんである。
ステータコイルの製造方法は、ステータコアに巻装されるコイル導体により構成され、前記コイル導体は、ステータコアの端面から突出してコイルエンドをなすコイルエンド導体部を多数有するコイルと、各相の前記コイルの前記コイルエンド側から各相の相端子又は中性点に達する複数の引き出し線とを備え、前記コイルエンド導体部は、前記ステータコアの軸方向一方側に突出するとともに略径方向に延在する略U字状のコイル端部と、前記コイル端部の両端から周方向及び軸方向に対して斜設されて前記ステータコアのスロットに達する一対のコイル斜行部とを有し、前記各コイルエンド導体部の前記コイル端部は、周方向所定ピッチにて互いに略平行に配設され、前記各コイルエンド導体部の前記コイル斜行部は、周方向所定ピッチにて互いに略平行に配設されているステータコイルにおいて、前記引き出し線は、互いに周方向に隣接する一対の前記コイル端部の間の隙間に延設されて径方向内側から径方向外側に引き出される埋設型引き出し線を含むステータコイルの製造方法において、略U字状に形成されて前記ステータコアの軸方向一方側に突出しても略径方向に延在するU字状のコイル端部と、前記コイル端部の両端から互いに平行かつ直線状に伸びる一対の未展開直線部とをそれぞれもつ多数の未展開U字セグメント導体を、前記未展開直線部が軸方向に延在し、前記コイル端部が略径方向へ延在する姿勢にて放射状に配置する配置工程と、その後、前記一対の未展開直線部のうち前記コイル斜行部となる予定部分を除く部分を互いに逆方向に回動させて前記コイル斜行部となす展開工程と、を有し、前記配置工程にて、前記引き出し線の前記引き出し線端部の径方向内端から前記引き出し線斜行部となる予定の一本の未展開直線部を、この未展開直線部が軸方向に延在する姿勢にて前記未展開U字セグメント導体に対して所定位置に配置し、前記展開工程にて、未展開U字セグメント導体の前記未展開直線部のうち前記コイル斜行部となる予定部分を除く部分を回動させて前記コイル斜行部となし、かつ、前記未展開引き出し線の前記未展開直線部のうち前記引き出し線斜行部となる予定部分を除く部分を回動させて前記引き出し線斜行部となし、前記展開工程にて、前記未展開U字セグメント導体のコイル端部、及び、前記未展開引き出し線の引き出し線端部の回動及び軸方向飛び出しを規制する。
すなわち、この態様における引き出し線の製造方法は、コイルを構成するコイルエンド導体部を公知の未展開U字セグメント導体の一括展開(一括捻り)による作成する際に、あらかじめ未展開引き出し線も同時に展開(捻って)その引き出し線斜行部を形成する。このようにすれば、引き出し線をなすセグメント導体の加工や組み付けが容易となる。なお、引き出し線の引き出し線端部の形状加工は、未展開の引き出し線斜行部の一括捻りの前又は後に行うことが好適である。
好適な態様において、前記回動規制のための爪を有して径方向に延在して前記軸方向飛び出しを規制する天板を前記コイル端部及び前記引き出し線端部に押しつけることにより、前記回動規制並びに前記軸方向飛び出し防止を行う。すなわち、この態様では、従来公知の未展開U字セグメント導体のコイル端部の一括捻り時の回動及び軸方向飛び出しを規制する爪付き天板により、引き出し線の引き出し線端部の回動も規制するため、この一括捻りにより未展開引き出し線の引き出し線斜行部を良好に形成する(捻る)ことができる。
好適な態様において、前記天板は、前記コイル端部及び引き出し線端部の形状に沿って凹設されて、コイル端部及び引き出し線端部の回動を規制する溝部をもつ。このようにすれば、たとえば予め所定形状に形成された引き出し線端部が上記一括捻りにより変形することを良好に抑止することができる。
好適な態様において、予め成形された前記未展開引き出し線の前記引き出し線端部を前記未展開U字セグメント導体の前記コイル端部の間に配置した後で、前記展開工程を実施する。これにより、展開後に引き出し線端部の形状をコイルエンド近傍にて加工する面倒が無く、引き出し線の製造とそのコイルエンドへの組み付けを容易とすることができる。もちろん、この方法以外に下記のごとく種々の変形方法も採用することができる。
好適な態様において、前記未展開U字セグメント導体、前記未展開引出し線を配列させ、所定の異なる半径位置の前記一対の未展開直線部を周方向に回動させ各半径位置における前記一対の未展開直線部同士の周方向位相を変化させることも、前記展開工程同様可能である。引出し線の放射状直線部の少なくとも一部を回動しない様に位置固定する事で、前記位相変化に伴い前記放射状直線部が曲げられ、前記放射状直線部とこれに延接続される前記曲がり部位置との前記周方向位相変化に応じた周方向位相が形成されることができる。引出し線の端部を外部接続部の位置に応じて、曲げることによって位置決めしたい場合、複数の前記位相形成部を容易に前記曲げ加工を行う事ができる。
好適な態様において、複数の各一対の前記未展開直線部が所定半径位置にあり周方向に配列されている未展開部分コイルの内、一部の前記未展開U字セグメント導体、前記未展開引出し線を所定位置に配列させ、任意の前記周方向位相を所定量(A)変化させ、更に前記未展開U字セグメント導体、前記未展開引出し線の残部を配列させた後、前記残部における任意の位相所定量(B)回動させたとき、位相変化Aにより前記曲げ加工された各未展開引出し線はA+B量だけ回動されたことになり、A+B量回動された曲げ部をもつ前記位相形成部、B量だけ回動された曲げ部をもつ前記位相形成部をそなえた複数の引出し線端部を簡単な方法で容易に製造できる。もちろん配列工程と前記周方向位相変化を回数、量において任意に行うこともできる。
好適な態様において、前記コイルは、多数の前記U字セグメント導体を順次接合してそれぞれ構成された部分コイルを径方向へ複数配置してなり、前記未展開引き出し線の引き出し線端部を、前記複数の部分コイルの少なくとも一つと径方向同位置にて周方向へ変位させる。このようにすれば、引き出し線の径方向外側延在部での周方向引き回し量を減らすことができ、かつ、径方向に異なる位置に配置された各部分コイルごとに最適な引き出し線を設定することができる。
好適な態様において、未展開引き出し線の前記コイル端部を埋設以前に径方向に対して周方向へ所定角度傾倒させる。このようにすれば、上記コイル端部の傾倒により埋設型引き出し線を埋設すべきコイル端部間溝を拡大することができるため、埋設型引き出し線の埋設が容易となる。
好適な態様において、前記コイル端部の傾倒は、前記展開工程とは別に行われる。これにより、加工工程を簡単化することができる。
好適な態様において、前記展開工程にて、引き出し線保持部材により前記引き出し線端部の径方向外側延在部の周方向変位を規制することにより、前記展開工程における前記引き出し線端部の径方向外側延在部の連れ回りを防止する。これにより、展開工程により引き出し線の径方向外側延在部の望ましくない変形、変位を抑止することができる。
好適な態様において、前記引き出し線保持部材を周方向へ所定変位させる。これにより、引き出し線端部の径方向外側延在部の位置調整を容易とすることができる。
好適な態様において、前記引き出し線保持部材は、前記引き出し線端部の径方向外側延在部が収容される溝部を有する。これにより、引き出し線の径方向外側延在部の保持を容易に行うことができる。
好適な態様において、前記引き出し線端部の周方向への変位を前記展開工程の実施中に行う。これにより、作業時間を短縮することができる。
その他の特徴点について以下に説明する。本発明の引き出し線及びその製造方法は、セグメント順次接合ステータコイルの製造において特に好適である。一本のコイルエンド導体部の一対のコイル斜行部は、周方向同一向きに斜行してもよく、周方向逆向きに斜行してもよい。
本発明のステータコイル及びその製造方法の好適な実施態様を、車両用交流発電機のU字セグメント順次接合ステータコイルを例として図面を用いて説明する。ただし、本発明は下記の実施形態に限定解釈されるべきではなく、本発明の技術思想を他の公知技術等を用いて実施しても良いことは当然である。
(実施形態1)
(全体構造の説明)
この車両用交流発電機の軸方向断面図を図1に示す。ただし、図1においてステータコイル12は模式的に図示されている。交流発電機は電機子として働く固定子10と、界磁子として働く回転子50と、フロントハウジング61及びリアハウジング62と、交流電力を直流電力に変換する整流器65とを備えている。回転子50はシャフト51と一体に回転するもので、ランデル型ポールコア52、界磁コイル53、スリップリング54、斜流ファン56及び遠心ファン57を備えている。ランデル型ポールコア52は一組のポールコア52a及び52bを組合わせて構成されている。シャフト51はプーリ58を通じて車両エンジンにより回転駆動される。フロントハウジング61及びリアハウジング62は回転子50を支持するとともに固定子10を挟持している。
固定子10は、ステータコア11と、ステータコア11に巻装されたステータコイル12とからなる。ステータコイル12は、多数のU字導体を順次接続して構成された公知のU字セグメント順次接合ステータコイルである。13はステータコイル12のうちステータコア11からリヤ側に突出する頭部側コイルエンド、14はステータコイル12のうちステータコア11からフロント側に突出する端部側コイルエンドである。したがって、U字セグメント順次接合ステータコイルを構成する各U字導体は、ステータコア11の各スロットにリヤ側からフロント側へ貫挿されている。各U字導体の先端部は相ごとに順次接続されて3つの相コイルが形成され、各相コイルが三相星形巻線されてステータコイル12を構成している。
図1に示す実施例では、各U字導体の一対の脚部は1磁極ピッチ離れた一対のスロットに個別に収容されている。図1において、スロットは、径方向に8つの導体収容位置をもち、径方向内側から1〜4番目の導体収容位置に内側コイル用U字導体が挿通され、径方向内側から5〜8番目の導体収容位置に外側コイル用U字導体が挿通されている。各内側コイル用U字導体は端部側にて順次接続されて内側コイルを構成し、各外側コイル用U字導体は端部側にて順次接続されて外側コイルを構成している。内側コイル及び外側コイルはそれぞれ3相の相コイルにより構成され、内側コイル及び外側コイルの同相の相コイルは後述するコイル間渡り線により直接接続されている。この実施例では、内側コイルの各相コイルの残る端部は相互に接続されて中性点を構成し、外側コイルの各相コイルの残る端部はそれぞれの相の外部引き出し線を構成している。
(頭部側コイルエンドの説明)
頭部側コイルエンド13は、各U字導体のU字状頭部により構成されている。このU字状頭部は、U字状の頭部先端部とこの頭部先端部の両端から軸方向スロットへ向けて近づきつつ周方向へ略半磁極ピッチ延在する(斜行する)一対の頭部斜行部とからなる。同じU字状頭部の一方の頭部斜行部と他方の頭部斜行部とは径方向に1導体収容位置ピッチだけずらして配置され、U字状の頭部先端部は略径方向に延在してこれら一対の頭部先端部を連ねている。
なお、端部側コイルエンド14は、各U字導体の飛び出し端部からなる。この飛び出し端部は、スロットから出た後、軸方向スロットから離れる向きへ延在しつつ周方向へ略半磁極ピッチだけ延在する(斜行する)一対の端部斜行部と、端部斜行部の先端から軸方向に突出する端部先端部とからなる。内側コイル用U字導体の互いに径方向に隣接する一対の端部先端部は溶接され、外側コイル用U字導体の互いに径方向に隣接する一対の端部先端部は溶接されている。
この実施例では、内側コイル及び外側コイルは、既述した互いに径方向に隣接する4つの導体収容位置を占めるU字導体により構成される4位置型U字セグメント順次接合ステータコイルからなり、形状及び構造は本質的に同じである。内側コイルに用いる内側コイル用U字導体を図2を参照して説明する。外側コイルに用いる外側コイル用U字導体の形状及び構造も図2に示すものと同じである。
図2において、各スロットの径方向に連続する4つの導体収容位置のうち1、4番目の導体収容位置に頭部曲率半径が大きいU字導体である大セグメント17が挿通され、2、3番目の導体収容位置に頭部曲率半径が小さいU字導体である小セグメント27が挿通されている。大セグメント17のうち一対のスロット挿入部分をスロット導体部18a、18bと称する。小セグメント27のうち一対のスロット挿入部分をスロット導体部28a、28bと称する。19は大セグメント17のU字状頭部、29は小セグメント27のU字状頭部である。大セグメント17は、一対の飛び出し端部21a及び21bをもち、飛び出し端部21a及び21bは端部斜行部22a及び22bと、端部先端部23a及び23bとをもつ。同様に、小セグメント27は、一対の飛び出し端部31a及び31bをもち、飛び出し端部31a及び31bは端部斜行部32a及び32bと、端部先端部33a及び33bとをもつ。端部先端部23bと33bは溶接されて溶接部41aとなり、端部先端部23a、33aは溶接されて溶接部41bとなる。結局、4位置型U字セグメント順次接合ステータコイルでは、小セグメント27とこれを囲む大セグメント17とにより構成されることがわかる。
この大セグメント17と小セグメント27とのペアをそれぞれ用いたステータコイル12の頭部側コイルエンド13の形状を図3に示す。100は内側コイル、200は外側コイルである。図3において、17aは、大きなU字導体である大セグメント17の頭部先端部、27aは、小さいU字導体である小セグメント27の頭部先端部、17bは大セグメント17の径方向内側の頭部斜行部、17cは大セグメント17の径方向外側の頭部斜行部、27bは小セグメント27の径方向内側の頭部斜行部、27cは小セグメント27の径方向外側の頭部斜行部、17dは大セグメント17の内側のスロット導体部、17eは大セグメント17の外側のスロット導体部、27dは小セグメント27の内側のスロット導体部、27eは小セグメント27の外側のスロット導体部である。
ステータコア11のスロットは、径方向に8つの導体収容位置C1〜C8を有している。導体収容位置C1〜C4には内側コイル100を構成する大セグメント17及び小セグメント27のスロット導体部17d、27d、27e、17eが収容されている。導体収容位置C5〜C8には外側コイル200を構成する大セグメント17及び小セグメント27のスロット導体部17d、27d、27e、17eが収容されている。
上記した4位置型U字セグメント順次接合ステータコイルの標準の構造及び製造方法については、先に記載した各特許文献たとえば特許文献20等に詳述されてもはや周知となっているため、これ以上の説明を省略する。ただし、本発明は、上記した4位置型U字セグメント順次接合ステータコイル以外にたとえば2位置型U字セグメント順次接合ステータコイルなどにも採用できることはもちろんである。
(コイル間渡り線の説明)
次に、頭部側コイルエンドにおいて、引き出し線の引き出し線端部と空間的に干渉し易いコイル間渡り線の形状及び配置について以下に説明する。
(コイル間渡り線配置例1)
コイル間渡り線の配置例1について図3〜図5を参照して更に詳しく説明する。図3は頭部側コイルエンド13近傍の側面図であり、図4は頭部側コイルエンド13のコイル間渡り線300近傍を周方向に展開した状態を示す周方向部分展開図である。
図3において、300は、内側コイル100と外側コイル200とを相ごとに直列接続するためのコイル間渡り線である。コイル間渡り線300は、内側コイルの一端と外側コイル200の一端とを接続するコイル間渡り線である。コイル間渡り線300は、所定のスロットの導体収容位置C1に収容される内側のスロット導体部301と、所定のスロットの導体収容位置C8に収容される外側のスロット導体部302と、スロット導体部301から延設されて内側コイル100の頭部斜行部17bと周方向同じ向きに斜設される内側の斜行渡り部303と、スロット導体部302から延設されて外側コイル200の頭部斜行部17cと周方向同じ向きに斜設される外側の斜行渡り部304と、2つの斜行渡り部303、304を連ねる頭部渡り部305とからなる。スロット導体部301は、内側コイル100の最初(または最終)のスロット導体部を構成しており、スロット導体部302は、外側コイル200の最終(又は最初)のスロット導体部を構成している。
頭部側コイルエンド13のコイル間渡り線300近傍を軸方向後方から見た状態を図5に示す。頭部渡り部(頭部先端部)305は、後述する周方向渡り部3051と、内側の径方向渡り部3052と、外側の径方向渡り部(本発明で言う径方向延在部)3053とからなる。周方向渡り部3051は、内側コイル100の頭部先端部17aと外側コイル200の頭部先端部17aとの間に位置して周方向へ延在するコイル間窪み部xに収容されて周方向へ延在する。
内側の径方向渡り部3052は、周方向渡り部3051の一端から内側コイル100の大セグメント17の頭部先端部17aの間のセグメント間隙間yに収容されて略径内方向へ延在している。すなわち、内側の径方向渡り部3052は、内側コイル100の各大セグメント17の頭部先端部17aの一つが占めるべき位置にて他の頭部先端部17aと同様に略径方向に延在している。外側の径方向渡り部3053は、周方向渡り部3051の他端から外側コイル200の大セグメント17の頭部先端部17aの間のセグメント間隙間zに収容されて略径外方向へ延在している。すなわち、外側の径方向渡り部3053は、外側コイル200の各大セグメント17の頭部先端部17aの一つが占めるべき位置にて他の頭部先端部17aと同様に略径方向に延在している。
コイル間渡り線300の頭部渡り部305を図5に示すように略クランク形状に形成することにより、コイル間渡り線300の頭部渡り部305をコンパクトに配置できるとともに、頭部側コイルエンド13の軸方向突出長を縮小することができる。また、頭部渡り部305の周方向渡り部3051の長さ及び位置を調節することにより、外側コイル200と相ごとに接続すべき内側コイル100の相ごとの開始(又は終了)位置を適切に選択することができる。同じく、内側コイル100と相ごとに接続すべき外側コイル200の相ごとの終了(又は開始)位置を適切に選択することができる。
(コイル間渡り線配置例2)
コイル間渡り線300の他の配置例を図6〜図8を参照して以下に詳しく説明する。コイル間渡り線300は導体収容位置C2、C7間に配置されている。図6は頭部側コイルエンド13近傍の側面図であり、図7は頭部側コイルエンド13のコイル間渡り線300近傍を周方向に展開した状態を示す周方向部分展開図である。
図6において、コイル間渡り線300は、導体収容位置C2に収容される内側のスロット導体部301と、導体収容位置C7に収容される外側のスロット導体部302と、スロット導体部301から延設されて内側コイル100の頭部斜行部27bと周方向同じ向きに斜設される内側の斜行渡り部303と、スロット導体部302から延設されて外側コイル200の頭部斜行部27cと周方向同じ向きに斜設される外側の斜行渡り部304と、2つの斜行渡り部303、304を連ねる頭部渡り部305とからなる。スロット導体部301は、内側コイル100の最初(または最終)のスロット導体部を構成しており、スロット導体部302は、外側コイル200の最終(又は最初)のスロット導体部を構成している。
この実施形態では、図6、図7に示すように、頭部渡り部305が内側コイル100及び外側コイル200の大セグメント17の頭部先端部17aよりも軸方向外側へ突出しない位置に配設されている。このため、頭部側コイルエンド13の軸方向長を短縮することができる。この実施形態では更に、コイル間渡り線300の内側の斜行渡り部303が、内側コイル100の頭部斜行部27bと径方向等位置にてそれと同一方向に斜設され、更に、コイル間渡り線300の外側の斜行渡り部304が、外側コイル200の頭部斜行部27cと径方向等位置にてそれと同一方向に斜設されている。すなわち、コイル間渡り線300の頭部渡り部305の径方向内端に連なって周方向かつ軸方向へ斜行する内側の斜行渡り部303は、各小セグメント27の内側の頭部斜行部27bの一つが占有するべき位置に空間配置されているため、この内側の斜行渡り部303から頭部渡り部305への連続と方向変換とが、他の小セグメント27の各部に邪魔されることが無い。同様に、コイル間渡り線300の頭部渡り部305の径方向外端に連なって周方向かつ軸方向へ斜行する外側の斜行渡り部304も、各小セグメント27の外側の頭部斜行部27cが占有すべき位置にて空間配置されるため、この外側の斜行渡り部304から頭部渡り部305への連続と方向変換とが、他の小セグメント27の各部に邪魔されることが無い。
頭部側コイルエンド13のコイル間渡り線300近傍を軸方向後方から見た状態を図8に示す。頭部渡り部305は、後述する周方向渡り部3051と、内側の径方向渡り部3052と、外側の径方向渡り部3053とからなる。周方向渡り部3051は、内側コイル100の頭部先端部17aと外側コイル200の頭部先端部17aとの間に位置して周方向へ延在するコイル間窪み部xに収容されて周方向へ延在する。内側の径方向渡り部3052は、周方向渡り部3051の一端から内側コイル100の大セグメント17の頭部先端部17aの間のセグメント間隙間yに収容されて略径内方向へ延在している。ただし、この実施形態2では、実施形態1とは異なり、内側の径方向渡り部3052は、内側コイル100の各大セグメント17の頭部先端部17aの一つが占めるべき位置にて他の頭部先端部17aと同様に略径方向に延在していない。その代わりに、この実施形態2では、内側の径方向渡り部3052は、内側コイル100の各小セグメント27の頭部先端部27aの一つが占めるべき位置にて他の頭部先端部27aと同様に略径方向に延在している。
外側の径方向渡り部3053は、周方向渡り部3051の他端から外側コイル200の大セグメント17の頭部先端部17aの間のセグメント間隙間zに収容されて略径外方向へ延在している。ただし、この実施形態2では、実施形態1とは異なり、外側の径方向渡り部3053は、外側コイル200の各大セグメント17の頭部先端部17aの一つが占めるべき位置にて他の頭部先端部17aと同様に略径方向に延在していない。その代わりに、この実施形態2では、外側の径方向渡り部3053は、外側コイル200の各小セグメント27の頭部先端部27aの一つが占めるべき位置にて他の頭部先端部27aと同様に略径方向に延在している。
(コイル間渡り線配置例3)
コイル間渡り線300の他の配置例を図9〜図11に示す。ただし、図11の導体収容位置配置順序は図3、図6と反対となっていることに留意されたい。コイル間渡り線300のスロット導体部は導体収容位置C2、C6間に配置されている。図9は頭部側コイルエンド13近傍の側面図であり、図10は頭部側コイルエンド13のコイル間渡り線300近傍を周方向に展開した状態を示す周方向部分展開図であり、図11は頭部側コイルエンド13を軸方向リヤ側からみた正面図である。
図9において、コイル間渡り線300は、導体収容位置C2に収容される内側のスロット導体部301と、導体収容位置C6に収容される外側のスロット導体部302と、スロット導体部301から延設されて内側コイル100の小セグメント27の頭部斜行部27bと周方向同じ向きに斜設される内側の斜行渡り部303と、スロット導体部302から延設されて外側コイル200の小セグメント27の頭部斜行部27bと周方向同じ向きに斜設される外側の斜行渡り部304と、2つの斜行渡り部303、304を連ねる頭部渡り部305とからなる。スロット導体部301は、内側コイル100の最初(または最終)のスロット導体部を構成しており、スロット導体部302は、外側コイル200の最終(又は最初)のスロット導体部を構成している。
この配置例では、図9、図10に示すように、頭部渡り部305が内側コイル100及び外側コイル200の大セグメント17の頭部先端部17aよりも軸方向外側へ突出してしまう。したがって、頭部側コイルエンド13の軸方向長短縮の点で不利となる。ただし、コイル間渡り線300の内側の斜行渡り部303が、内側コイル100の小セグメント27の頭部斜行部27bと径方向等位置にてそれと同一方向に斜設され、更に、コイル間渡り線300の外側の斜行渡り部304が、外側コイル200の小セグメント27の頭部斜行部27bと径方向等位置にてそれと同一方向に斜設されている。すなわち、コイル間渡り線300の頭部渡り部305の径方向内端に連なって周方向かつ軸方向へ斜行する内側の斜行渡り部303は、各小セグメント27の頭部斜行部27bの一つが占有するべき位置に空間配置されているため、この内側の斜行渡り部303から頭部渡り部305への連続と方向変換とが、他の小セグメント27の各部に邪魔されることは無い。同様に、コイル間渡り線300の頭部渡り部305の径方向外端に連なって周方向かつ軸方向へ斜行する外側の斜行渡り部304も、各小セグメント27の頭部斜行部27bが占有すべき位置にて空間配置されるため、この外側の斜行渡り部304から頭部渡り部305への連続と方向変換とが、他の小セグメント27の各部に邪魔されることは無い。
頭部側コイルエンド13のコイル間渡り線300近傍を軸方向後方から見た状態を図11に示す。頭部渡り部305は、後述する周方向渡り部3051と、内側の径方向渡り部3052と、外側の径方向渡り部3053とからなる。周方向渡り部3051は、内側コイル100の頭部先端部17aと外側コイル200の頭部先端部17aとの間に位置して周方向へ延在するコイル間窪み部xに収容されて周方向へ延在する。内側の径方向渡り部3052は、周方向渡り部3051の一端から内側コイル100の大セグメント17の頭部先端部17aの間のセグメント間隙間yに収容されて略径内方向へ延在している。ただし、この実施形態では、実施形態1とは異なり、内側の径方向渡り部3052は、内側コイル100の各大セグメント17の頭部先端部17aの一つが占めるべき位置にて他の頭部先端部17aと同様に略径方向に延在していない。その代わりに、この実施形態では、内側の径方向渡り部3052は、内側コイル100の各小セグメント27の頭部先端部27aの一つが占めるべき位置にて他の頭部先端部27aと同様に略径方向に延在している。
外側の径方向渡り部3053は、周方向渡り部3051の他端から外側コイル200の大セグメント17の頭部先端部17aの間のセグメント間隙間zに収容される前に、図11に示すように大セグメント17の頭部先端部17aの軸方向外側に覆い被さるように屈曲した後、このセグメント間隙間z内に曲げられる。このため、既述した頭部側コイルエンド13の軸方向長が増大する。なお、図5、図8、図11において、黒く着色した領域はコイル間渡り線300の頭部渡り部305の後端面をなす平坦側面である。
(引き出し線の説明)
次に、この実施形態の特徴をなす引き出し線の配置を図12(a)〜図12(c)を参照して以下に説明する。図12(a)は、三相星形接続されたステータコイルの頭部側コイルエンド13の一部を軸方向リヤ側からみた正面図、図12(b)はそのA−A線矢視した模式図、図12(c)は図12(a)に示す部分を軸心から遠心方向にみた軸方向側面図である。
この実施例の頭部側コイルエンド13は、図3〜図11に示す内側コイル100、外側コイル200に加えて更に最外側コイル500を有している。この最外側コイル500も、4位置型U字セグメント順次接合ステータコイルからなり、形状及び構造は本質的に内側コイル100及び外側コイル200と同じである。なお、最外側コイル500の更に径方向外側に更に部分コイルとしての4位置型U字導体順次接続式コイルを必要数だけ、径方向に重ねることができることは当然であり、4位置型U字導体順次接続式コイルの代わりに2位置型U字導体順次接続式コイルやその他の形式のセグメント順次接合ステータコイルを部分コイルとして径方向に重ねてもよいことも当然である。
したがって、最外側コイル500は、内側コイル100、外側コイル200及び最外側コイル500は、それぞれ大セグメント17と小セグメント27とにより構成されるので、ステータコアの各スロットは、導体収容位置C1〜C12をもつ。C1〜C4は内側コイル100用の導体収容位置、C5〜C8は外側コイル200用の導体収容位置、C9〜C12は最外側コイル500用の導体収容位置である。最外側コイル500の大セグメント17は導体収容位置C9、C12に収容され、最外側コイル500の小セグメント27は導体収容位置C10、C11に収容される。図12(a)には、内側コイル100、外側コイル200及び最外側コイル500を相ごとに直列接続するためのコイル間渡り線が複数配置されているが、コイル間渡り線については既述したので説明を省略する。
図12(a)において、611〜616は引き出し線である。この実施例では、引き出し線611はU相端子に接続され、引き出し線612はV相端子に接続され、引き出し線613はW相端子に接続され、引き出し線614〜616は中性点に接続されている。もちろん、このような接続形態は一例に過ぎない。引き出し線611〜613の略放射状に延在する部分は、軸方向に重ねられて配置されている。
各引き出し線611〜616は、既述の内側コイル100又は外側コイル200又は最外側コイル500の大セグメント17又は小セグメント27の頭部斜行部(コイル斜行部とも呼ぶ)の間に位置してこれら頭部斜行部と平行に斜設された引き出し線斜行部と、この引き出し線斜行部から軸方向外側に曲げられ、径方向外側に曲げられ、径方向外側に延設されて頭部側コイルエンド13の径方向外側に達し、頭部側コイルエンド13の径方向外側を周方向へ所定距離だけ延設されている引き出し線端部とを有している。
したがって、引き出し線611〜616の各引き出し線端部は、引き出し線斜行部の先端から軸方向外側へ向けて曲げられている立ち上がり部と、この立ち上がり部の先端から所定曲率にて湾曲しつつ径方向外側へ向けて曲がっている曲がり部と、曲がり部の先端から径方向外側へ向けて略直線状に延在してコイルエンドの径方向外端に等しい径方向位置に達する放射状延在部と、この放射状延在部から頭部側コイルエンド13の最外側コイル500よりも径方向外側に延設されて相端子又は中性点に達する径方向外側延在部とからなる。
(引き出し線611)
引き出し線611について図13を参照して詳しく説明する。引き出し線611は、軸方向に重設された引き出し線611〜613の内、最も内側の引き出し線であり、わかりやすいように黒く塗りつぶされている。引き出し線611は、最外側コイル500の導体収容位置C10から引き出されている。
引き出し線611は、導体収容位置C10と等径位置の小セグメント27の既述の頭部斜行部(コイル斜行部とも呼ぶ)の間に位置してこれら頭部斜行部と平行に斜設された引き出し線斜行部X1と、引き出し線斜行部X1から軸方向外側に曲げられた立ち上がり部X2と、立ち上がり部X2から径方向外側に曲げられた曲がり部X3と、曲がり部X3から略径方向外側に延設された放射状延在部X4と、放射状延在部X4から最外側コイル500の径方向外側に延在する径方向外側延在部X5とからなる。なお、引き出し線611では、立ち上がり部X2と曲がり部X3とはほぼ同じ位置に形成されている。
引き出し線611の放射状延在部X4は、最外側コイル500の周方向両側の2つの大セグメント17、17の間、かつ、小セグメント27、27のコイル端部間溝Yに収容されている。このため、引き出し線611の放射状延在部X4は、図13(b)に示すように、最外側コイル500の小セグメント27と等しい径方向突出高さを有している。
(引き出し線612)
引き出し線612について図14を参照して詳しく説明する。引き出し線612は、軸方向に重設された引き出し線611〜613の内、中間の引き出し線であり、わかりやすいように黒く塗りつぶされている。引き出し線612は、図14では外側コイル200の導体収容位置C5から引き出されている。
引き出し線612は、導体収容位置C5と等径位置の大セグメント17の既述の頭部斜行部(コイル斜行部とも呼ぶ)の間に位置してこれら頭部斜行部と平行に斜設された引き出し線斜行部X1と、引き出し線斜行部X1から軸方向外側に曲げられた立ち上がり部X2と、立ち上がり部X2から径方向外側に曲げられた曲がり部X3と、曲がり部X3から略径方向外側に延設された放射状延在部X4と、放射状延在部X4から最外側コイル500の径方向外側に延在する径方向外側延在部X5とからなる。なお、引き出し線612では、立ち上がり部X2と曲がり部X3とは一連の曲がりを形成している。
引き出し線612の放射状延在部X4は、外側コイル200の軸方向外側の領域では、外側コイル200及び最外側コイル500の周方向両側の2つの大セグメント17、17の間のコイル端部間溝Zに収容されている。このため、引き出し線612の放射状延在部X4は、図14(b)に示すように、外側コイル200及び最外側コイル500の大セグメント17と等しい径方向突出高さを有している。
(引き出し線613)
引き出し線613について図15を参照して詳しく説明する。引き出し線613は、軸方向に重設された引き出し線611〜613の内、軸方向外側の引き出し線であり、わかりやすいように黒く塗りつぶされている。引き出し線612は、図14では内側コイル100の導体収容位置C1から引き出されている。
引き出し線613は、導体収容位置C1と等径位置の大セグメント17の既述の頭部斜行部(コイル斜行部とも呼ぶ)の間に位置してこれら頭部斜行部と平行に斜設された引き出し線斜行部X1と、引き出し線斜行部X1から軸方向外側に曲げられた立ち上がり部X2と、立ち上がり部X2から径方向外側に曲げられた曲がり部X3と、曲がり部X3から略径方向外側に延設された放射状延在部X4と、放射状延在部X4から最外側コイル500の径方向外側に延在する径方向外側延在部X5とからなる。なお、引き出し線612では、立ち上がり部X2と曲がり部X3とは一連の曲がりを形成している。
引き出し線613の放射状延在部X4は、内側コイル100、外側コイル200及び最外側コイル500の大セグメント17の軸方向外端に隣接する軸方向位置に延設されるため、本質的にその配置はこれら大セグメント17や小セグメント27の位置に異存しない。この実施例では、引き出し線613は、周方向において内側コイル100の大セグメント17が配置される位置に配置されている。引き出し線613の放射状延在部X4は、内側コイル100と外側コイル200との間のコイル間渡り線X7(図15(a)にて斜線を付す)が大セグメント17の軸方向外端に接する軸方向位置に配置されて周方向に延設されるため、このコイル間渡り線X7と交差する部位にて軸方向に曲がって突出している。また、放射状延在部X4はこの位置にて図15(a)に示すように周方向に曲がっている。これはこの部位における放射状延在部X4の延長距離を増大することにより湾曲加工を容易とするため、かつ、他の引き出し線611、612と周方向に位置合わせするためである。
(引き出し線614)
引き出し線614について図16を参照して詳しく説明する。引き出し線614は、引き出し線613と同じく内側コイル100の導体収容位置C1から引き出されている引き出し線であり、引き出し線613と同じく内側コイル100、外側コイル200及び最外側コイル500の大セグメント17の軸方向外端に隣接しつつ大セグメント17の軸方向外側を延設されている。
(引き出し線615)
引き出し線615について図17を参照して詳しく説明する。引き出し線615は、引き出し線612と同じく外側コイル200の導体収容位置C5から引き出されている引き出し線である。引き出し線612の放射状延在部X4は、外側コイル200の軸方向外側の領域では、外側コイル200及び最外側コイル500の周方向両側の2つの大セグメント17、17の間のコイル端部間溝に収容されている。このため、引き出し線612の放射状延在部X4は、図17(b)に示すように、外側コイル200及び最外側コイル500の大セグメント17と等しい径方向突出高さを有している。
(引き出し線616)
引き出し線616について図18を参照して詳しく説明する。引き出し線616は、引き出し線616は、内側コイル100の導体収容位置C3から引き出されている引き出し線であり、引き出し線613、614と同じく内側コイル100、外側コイル200及び最外側コイル500の大セグメント17の軸方向外端に隣接して延設されている。引き出し線616の曲がり部X3は、図19に黒く塗りつぶして示すコイル間渡り線X7を軸方向外側に迂回するために軸方向外側へ所定曲率にて湾曲している。これにより、引き出し線616はコイル間渡り線の迂回が可能となっている。
上記したこの実施形態の引き出し線611〜616は、次の特徴を有している。すなわち、引き出し線611、612、615は本発明で言う埋設型引き出し線であって、ステータコイルの軸方向高さを増大させることがない。これは、頭部側コイルエンド13を構成する大セグメント17や小セグメント27更には各コイル間渡り線が規則的に配置されており、それらの間に埋設型引き出し線が径方向外側に延設可能なコイル端部間溝をもつことができるためである。
また、引き出し線613、614、616は本発明で言う隣接型引き出し線であって、頭部側コイルエンド13の軸方向外端やコイル間渡り線の軸方向外端に隣接しつつ、頭部側コイルエンド13の軸方向外端面の凹凸にならって全体として径方向外側に延在している。このように引き出し線613、614、616を頭部側コイルエンド13の軸方向外端面や軸方向内側の引き出し線に密接させているため、引き出し線613、614、616を頭部側コイルエンド13と一体支持するのが容易となり、かつ、ステータコイルの軸方向突出長を短縮することができる。
また、図18に示すように、引き出し線616の曲がり部X3は、周方向左側に倒れているため、曲がり部X3の曲がりを容易とすることができるとともに、倒れた分だけ引き出し線の軸方向突出長を短縮することができる。
(引き出し線611〜616の製造方法)
次に、図12〜図19に示した径方向に3つの部分コイルすなわち内側コイル100、外側コイル200及び最外側コイル500に引き出し線611〜616を形成する方法を図21〜図27を参照して説明する。
図21は、頭部側コイルエンド13及びそれに接続されるコイル間渡り線や引き出し線611〜616を一括捻りすなわち周方向へ一斉に展開させるための部材の配置関係を示すリヤ側からみた正面図、図22はそのA−A線矢視した模式図、図23は図21に示す部分を軸心から遠心方向にみた軸方向側面図である。
図21〜図23において、405、406は、多重回動リング400のリング401〜404の更に外側に配置されたリングであり、リング401〜404と同じく最外側コイル500の大セグメント17や小セグメント27やコイル間渡り線に斜行部を形成するための一斉捻りを行うために追設されている。なお、コイル間渡り線の斜行部すなわち周方向へ斜行する部分が斜行渡り部とも呼称され、内側コイル100、外側コイル200及び最外側コイル500の斜行部は、頭部斜行部又はコイル斜行部とも呼称される。
図21において、破線でしめされる部分は天板700である。天板700は、未展開の大セグメント17、小セグメント27、コイル間渡り線などの頭部や引き出し線611〜616の特に放射状延在部X4を一斉捻り時に押さえるための部材であり、天板700はこれら部材の軸方向外端を係止している。お、実際には天板700は、輪板状に形成されている。この種の天板が未展開の大セグメント17、小セグメント27、コイル間渡り線などの頭部や引き出し線611〜616の特に放射状延在部X4を一斉捻り時に押さえることは既述した特許文献に記載されるように公知となっている。その他、天板700は、大セグメント17や小セグメント27がその一斉捻り時(展開時)軸方向へ沈み込むため、軸方向に移動可能となっていることは公知事項である。天板700がこれら大セグメント17や小セグメント27やコイル間渡り線の軸方向先端部分の周方向への移動を禁止するための規制機構としてたとえば爪701などを、これら大セグメント17や小セグメント27やコイル間渡り線の軸方向先端部分の周方向両側にもつことも公知事項である。
この実施例は、内側コイル100、外側コイル200及び最外側コイル500やコイル間渡り線に斜行部を形成するための天板700及び多重回動リング400を用いて引き出し線611〜616の斜行部すなわち引き出し線斜行部X1も斜行させる点に特徴がある。これにより、引き出し線611〜616の製造、組み付け作業を簡素化することができる。
引き出し線611〜616の放射状延在部X4も多重回動リング400の各リングの回動時に周方向へ変位するのを抑止するため、更にその軸方向沈み込み量を均一とするため天板700により軸方向に押さえられ、かつ、回動を規制される必要がある。このため、図21では、引き出し線611〜616の放射状延在部X4の周方向移動を規制するために略放射方向に凹設された長溝702が、天板700のコイルエンド側の端面に形成されている。この長溝702は、展開前に予め形成された引き出し線611〜616の引き出し線端部の放射状延在部X4の形状に合わせて放射状延在部X4が遊嵌される形状となっている。これにより、引き出し線611〜616を大セグメント17、小セグメント27及びコイル間渡り線と一緒に一斉捻りすることができるとともに、その時の引き出し線611〜616の放射状延在部X4の周方向変位や望ましくない変形を防止することができる。
この実施形態では、引き出し線611〜616の径方向外側延在部X5を保持する引き出し線保持部材801〜804が配置されている。引き出し線保持部材801は引き出し線611〜613の径方向外側延在部X5を保持する溝をもち、引き出し線保持部材802は引き出し線614の径方向外側延在部X5を保持する溝をもち、引き出し線保持部材803は引き出し線615の径方向外側延在部X5を保持する溝をもち、引き出し線保持部材804は引き出し線616の径方向外側延在部X5を保持する溝をもつ。言うまでもなく、これらの溝は、長溝702とともに軸方向コイルエンド側へ向けて開口している。
各引き出し線保持部材801〜804は互いに一体化されてもよく、あるいは別体とされてもよく、あるいは天板700と一体化されてもよい。この実施形態では、各引き出し線保持部材801〜804は、主として周方向変位可能となっており、この引き出し線保持部材801〜804に回動乃至移動により引き出し線611〜616の径方向外側延在部X5に所定の曲げ形状を与えることができる。
既述した製造装置を用いた引き出し線611〜616の一括捻り工程を以下に説明する。
まず、引き出し線611〜616の引き出し線端部(すなわち引き出し線斜行部X1よりも軸方向外側の部分)を予めほぼ最終形状に形成し、引き出し線斜行部X1がまだ捻られていない未展開引き出し線を準備する。
次に、予め大セグメント17、小セグメント27、コイル間渡り線がセットされた多重回動リング400の各リング401〜406の各溝のうち所定位置の溝に未展開引き出し線6110〜6160を挿入する(図24)。挿入順序については常識事項であり、説明を省略する。
次に、天板700を軸方向前方側へ降下させ(図25)、長溝702に引き出し線611〜616をはめ込み、引き出し線保持部材801〜804に未展開引き出し線6110〜6160の径方向外側延在部X5の先端部をはめ込む(図26)。
次に、リング401、403、405を時計方向へ、リング402、404、406を反時計方向へ所定角度だけ回動させる。これにより、大セグメント17、小セグメント27、コイル間渡り線、引き出し線611〜616に斜行部が一挙に形成される(図27)。
なお、この実施例では、引き出し線保持部材801〜804を、上記一斉捻り時に同時に周方向へそれぞれ最適な角度だけ回動させている。同時に実施することにより、引き出し線保持部材801〜804を回動する機構及びそのためのトルク発生機構を簡素化することができ、作業時間も短縮することができる。
なお、この実施例では、未展開の大セグメント17や小セグメント27の頭部先端部を予め周方向へ傾倒してから未展開の引き出し線6110〜6160をコイル端部間溝に埋設している。この傾倒によりコイル端部間溝の周方向幅を拡大できるため、未展開の引き出し線6110〜6160の放射状延在部X4などをこのコイル端部間溝へ挿入するのが容易となる。