JP4892158B2 - 金属の連続鋳造におけるローラの損傷および/または位置合わせ不良の検出 - Google Patents
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Description
本発明は、金属の連続鋳造およびオンラインでのローラの動作不良または損傷の検出に関する。
【0002】
連続鋳造のプロセスは金属処理業界では周知である。基本的には、このプロセスは、溶融金属を受け取るための、高い位置に設けられた鋳型を使用することを含み、鋳型の低い方の端部には鋳造ストランドが排出される出口が設けられており、鋳造ストランドは垂直位置から水平位置へとローラコンベヤによって搬送される。しかしながら、機械によっては全体が垂直なものもある。ローラコンベヤでは、金属ストランドの冷却に水噴霧が使用されることがある。ローラコンベヤは、鋳造ストランドの厚さおよび/または深さを画定する設定距離を離して、複数対をなして配置された複数のローラを含む。プロセスは、大量の鋳造金属がコンベヤを流れる状態で、一回に何週間もの間連続して高温下で操業される場合があるため、始動時の状態からのかなりの範囲でのローラの損傷、磨耗、移動がある。
【0003】
直径、真円度、直線性、偏心、ローラの位置合わせに何らかの変化が生じ、または支持軸受が故障した場合には、ローラペア間の設定距離が変動し、その結果、部分的に溶融した鋳造ストランドの厚さの変動につながる虞がある。こうしたローラペア間の距離の変化により、鋳造ストランドが圧搾または伸長され、凝固の初期時点で形成される最終製品の表面欠陥につながる、モールド湯面レベルでのゆがみを発生させる虞がある。鋳造ストランドにおける液体金属への断続的な圧搾および伸長のポンピングの影響が、ストランド中央部の偏析、内部割れ、および気孔率の問題につながる虞もある。
【0004】
したがって、ローラの状態を監視し、可能であれば、鋳造中および各鋳造ステップ間の何れにおいても、ローラの平面形状および位置合わせの連続性を維持することが望ましい。連続鋳造機のローラで不規則性を検出するための既存の方法は、オフライン時または鋳造開始時に、ダミーバーに取り付けられて機械に送り込まれるセンサヘッドを使用することに基づくものである。これらのセンサは、ローラの平面形状および/または位置合わせに関する情報を提供するために、ローラの表面との接触を利用している。こうした方法およびこれらの方法を実行するための装置の例は、以前に公開された特許および出願、GB 2 097125 A、US 4 344232、US 4 361962、US 3 983631、およびUS 3,962,794から公知である。
【0005】
以前に公開された方法および装置の欠点は、鋳造機をオフラインで、冷えた状態でこの方法を実施する必要があることである。そのため、鋳造プロセスにかなりの稼動休止時間が発生する可能性があり、間接経費が増加する。さらにローラの問題は、高温時のローラへの微粒子の付着または高温時のゆがみなどの影響によるものであり、オフラインでは検出できない場合が多い。連続期間が何週間にも及ぶ場合、連続期間中の情報の必要性がさらに重要となる。
【0006】
本発明は、これらの問題の軽減を追求するものである。本発明によれば、金属のオンライン連続鋳造中にローラの不規則性を検出するための方法が提供され、この方法は、
i)モールド湯面レベルの経時変化を連続して監視するステップと、
ii)時間関数に対するモールド湯面レベルに影響を及ぼす大きな周期的影響と、その周期的影響の発生頻度とを識別するステップと、
iii)ステップii)の周期的影響の周波数を、鋳造プロセスの通常運転に基づく予測調波周波数と比較し、そして、ステップii)の周期的影響の前記周波数と前記予測調波周波数との比較に基づいて、ローラの挙動における不規則性を示す特性を強調するステップとを含む。
【0007】
ステップii)で大きな周期的影響を識別するための好ましい手段は、数学的変換、好ましくはフーリエ変換、最も好ましくは高速フーリエ変換を適用することによる。この変換は、複雑な鋳型信号を分離し、背景雑音を分離することで信号内の周期的影響の強調を可能にするものであるため、損傷を受けたかまたは位置合わせ不良のローラの非対称動作による、周期的および予測できない影響の識別をより容易にすることができる。
【0008】
本発明者等は、時間に対するモールド湯面レベルのグラフによって生成された関数を数学的に分析することにより、ローラの作用と相関させることのできる周波数での周期的な影響が明らかになることを知見した。特定周波数で変換された信号の振幅が大幅に増加すると、鋳造機の損傷、位置合わせ不良、または同様の問題に起因する虞のある不規則性がローラの挙動に現れる場合がある。たとえば、回転の対称性に影響を及ぼすような持続的な損傷が周縁上のある地点に存在するローラは、ローラとそのペアとの間を通過するストランド幅に周期的な変動をもたらす。この周期的な影響は、方法のステップii)で生成される変換で強調されることになる。
【0009】
サンプリング期間に亘る特定の鋳造速度での特定のローラに対する予測調波周波数は、単純な式から算出することができる。調波周波数での変換信号の振幅が大幅に増加すると、ローラがその調波を生成した状態で、ある種の損傷や他の問題をもたらす。
【0010】
典型的な場合、金属が冷却されるに従って、その特性が変化することを考慮して、鋳造機のローラの直径およびローラのピッチは、機械の長さ方向に沿った異なる地点において異なるように設計される。ローラは、鋳造機の特定部分に亘って複数のサイズおよびピッチのグループに実質的に分けられる。したがってこの方法は、ローラの問題の発生を識別することに加えて、サイズおよびピッチが知られているローラの識別可能なグループの中で、問題のローラの位置を突き止めることができる。
【0011】
特定の直径のローラに関連付けられた予測調波周波数は、次の単純な式から算出することが可能であり、
【数3】
式において、fdはHz単位の調波の周波数、vcはメートル/秒単位の鋳造速度、dはメートル単位のローラ直径である。
【0012】
特定のローラ直径に関連付けられた調波周波数は、上式から決定された基本周波数の倍数として現れることが認められている。たとえば、ローラが大幅にゆがめられた場合、周波数は予測の2倍または4倍になる可能性がある。
【0013】
同様に、ローラの中心間の特定のピッチに関連付けられた調波周波数は、次の単純な式から算出することが可能であり、
【数4】
式において、fpはHz単位の調波の周波数、vcはメートル/秒単位の鋳造速度、pはメートル単位のローラピッチである。
【0014】
上記の基準となる式はそれぞれ、正確な連続鋳造速度を利用するものであるため、鋳造速度の監視が望ましいことを理解されよう。この方法を実施するために使用される装置は、鋳造速度の変化をシステムユーザに警告するための警報を組み込むことができるので便利である。この装置は、任意選択で、一定速度の期間からの補間を行って、ローラ特性の推定値を提供することが可能である。
【0015】
この方法は、モールド湯面レベルセンサからの入力としてモールド湯面レベルデータを受け取るコンピュータプログラムによって適切に実施される。任意の好適な形式で、記録された信号がコンピュータ読取り可能形式に変換可能な場所に、センサを設けてもよい。既存の技術には、電磁センサ、放射性センサ、および光センサが含まれる。コンピュータプログラムは、鋳造速度に関する入力も受け取ることができる。安定した鋳造速度状態が認識された場合、プログラムは、ローラの挙動に関する基礎となる周期的影響を識別するために、時間関数に対するモールド湯面レベルに適切な数学的変換を適用する。いったん周期的影響が識別されると、プログラムは記録済みのデータと予測調波とを比較して、問題の部分を突き止めることができる。
【0016】
本発明の方法は、より直径の小さなローラおよびより高速の鋳造速度が使用される、ストランドが薄いかまたは狭い鋳造に特に好適である。フーリエ変換は2進数を使用し、測定される期間は秒の2進数からなるものとする。典型的には、512秒間の連続速度鋳造に渡って取得されるモールド湯面レベルデータは、これらの適用分野で機械状態を正確に分析するための方法にとって十分である。
【0017】
次に、明確にするために、本発明について図を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0018】
図1は、512秒間に渡って記録されたモールド湯面レベルのサンプルを示す図である。図示されたグラフの縦軸は測定されたモールド湯面レベルを示し、横軸は監視期間に渡って経過した時間を示す。図から理解されるように、信号には周期的な成分がある。高速フーリエ変換は、時間関数に対するモールド湯面レベルに適用され、より複雑なオリジナルの波形を得るために合計可能な単純な周期波形を算出する。図2に示される高速フーリエ変換周波数分布では、ローラの損傷または位置合わせ不良によって引き起こされる虞があるモールド湯面レベル信号に関する大きな周期的影響が、大きなピークとして強調される。図から理解されるように、大きなピークは0.1Hz付近で発生しており、これはローラに関する不規則性を示すものである。
【0019】
図3の高速フーリエ変換においても、0.095Hz付近の周波数で大きなピークを示している。予測周波数をこの変換に重ね合わせることにより、ローラに関する問題を示すピークの振幅とピークが発生する周波数との間に関連付けがなされ、問題の位置が突き止められる。図から理解されるように、0.095Hz付近でのピークは、セグメント1でローラ直径140mmに関して算出された調波周波数と同時に発生する。したがって、問題はその1つまたは複数のセグメント内のローラに付随するものであると推定される。
【0020】
さらにこの方法は、最終凝固点を決定するためにストランドをモデリングすることによって機能強化することもできる。当業者であれば、最終凝固点を通過した機械内の任意のセグメントはモールド湯面レベル信号に影響を及ぼすことはできないため、いずれの分析でも無視できることを理解するであろう。
【0021】
これまでに説明した、この方法を実施するために好ましい技術は単に例示的なものであって、当業者であれば、連続鋳造中のローラの不規則性の、モールド湯面レベル信号の分析を介したオンライン検出および位置特定を対象とする、本発明の真の範囲を逸脱することなく他の好ましい技術を想起するであろうことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 時間関数に対するモールド湯面レベルを示す、モールド湯面レベルセンサからの典型的な信号を示す図である。
【図2】 本発明の方法のステップii)で決定される、図1の関数の高速フーリエ変換を示す図である。
【図3】 本発明の方法のステップiii)で説明したように、比較のために直径および/またはピッチが知られたローラの予測調波周波数が重ね合わされた、異なる時間関数に対するモールド湯面レベルに関する高速フーリエ変換を示す図である。
【図4】 方法を実行する際に使用するためのアルゴリズムに関する流れ図を示す図である。
Claims (8)
- 金属のオンライン連続鋳造中にローラの不規則性を検出するための方法であって、
i)モールド湯面レベルの経時変化を連続して監視するステップと、
ii)時間関数に対するモールド湯面レベルに影響を及ぼす周期的影響と、その周期的影響の発生頻度とを識別するステップと、
iii)ステップii)の周期的影響の周波数を、鋳造プロセスの通常運転に基づく予測調波周波数と比較し、そして、ステップii)の周期的影響の前記周波数と前記予測調波周波数との比較に基づいて、ローラの挙動における不規則性を示す、振幅および周波数特性を強調するステップと
を含む方法。 - ステップii)が、ステップi)の時間関数に対するモールド湯面レベルに高速フーリエ変換を適用することを含む、請求項1に記載の方法。
- 鋳造速度を監視するステップ、及び、鋳造速度の変化をシステムユーザに警告するステップをさらに含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
- 鋳造金属ストランドをモデリングして、最終凝固点を決定するステップ、及び、最終凝固点を超える、鋳造機のセグメントに起因する周期的影響を無視するステップをさらに含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
- 請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法を実行するようにコンピュータに命令するためのコンピュータプログラム。
- モールド湯面レベルセンサおよびコンピュータを含み、前記コンピュータが、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法を実行するための操作命令を与えるコンピュータプログラムを備えた、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法を実行するための装置。
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