JP2009214150A - 連続鋳造鋳片の表面欠陥判定方法及び製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 鋳型内の溶鋼を移動磁場によって水平方向に旋回させながら鋳造する連続鋳造工程において、鋳型銅板温度の測定値に基づいてオンラインで鋳片表面の欠陥の発生を判定することのできる表面欠陥判定方法を提供する。
【解決手段】 上記課題を解決するための表面欠陥判定方法は、鋳型内溶鋼を水平方向に旋回させるように移動磁場を印加しながらスラブ鋳片を連続鋳造するに際し、相対する鋳型長辺銅板4L,4Uのそれぞれの背面に測温素子20を埋設して、該測温素子にてそれぞれの鋳型長辺銅板温度を測定し、鋳型空間の軸心線Pを対称軸として対称の位置に配置された、それぞれの鋳型長辺銅板の測温素子同士(TLiとTUi)による温度測定結果を比較し、両者のうちの高い方の測定温度に対する低い方の測定温度の比が0.85よりも小さくなった場合に、鋳片表面に欠陥が発生したと判定する。
【選択図】 図1
【解決手段】 上記課題を解決するための表面欠陥判定方法は、鋳型内溶鋼を水平方向に旋回させるように移動磁場を印加しながらスラブ鋳片を連続鋳造するに際し、相対する鋳型長辺銅板4L,4Uのそれぞれの背面に測温素子20を埋設して、該測温素子にてそれぞれの鋳型長辺銅板温度を測定し、鋳型空間の軸心線Pを対称軸として対称の位置に配置された、それぞれの鋳型長辺銅板の測温素子同士(TLiとTUi)による温度測定結果を比較し、両者のうちの高い方の測定温度に対する低い方の測定温度の比が0.85よりも小さくなった場合に、鋳片表面に欠陥が発生したと判定する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、移動磁場の印加によって鋳型内の溶鋼が水平方向に旋回されながら鋳造される連続鋳造鋳片の表面欠陥の発生を、鋳型銅板温度の測定値に基づいてオンラインで判定する表面欠陥判定方法に関し、並びに、この表面欠陥判定方法を利用した連続鋳造鋳片の製造方法に関するものである。
鋼の連続鋳造では、浸漬ノズルを介して溶鋼を鋳型内に高速度で吐出させており、この吐出流に起因して鋳型内で溶鋼流動が発生する。そして、この鋳型内の溶鋼流動は、鋳片の表面性状に大きな影響を及ぼすことが知られている。例えば、鋳型内溶鋼湯面(以下、「メニスカス」と記す)の表面流速が速すぎる場合や、異なる方向の溶鋼流が衝突するなどしてメニスカスに縦渦が発生する場合には、メニスカス上に添加したモールドパウダーが溶鋼中に巻き込まれ、凝固シェルに捕捉される。逆に、メニスカスの表面流速が遅すぎる場合には、溶鋼中に存在するアルミナ(Al2O3)などの脱酸生成物及びArガス気泡の凝固シェル界面での洗浄効果が低下し、アルミナなどの脱酸生成物及びArガス気泡が凝固シェルに補足される。鋳型内において、鋳片の凝固シェルつまり鋳片表層部に捕捉されたモールドパウダー、脱酸生成物及びArガス気泡は、これらを除去せずに圧延した場合には、圧延後の薄鋼板製品において、ヘゲ、スリバーなどと呼ばれる表面疵欠陥となり、薄鋼板製品の歩留りを低下させる。
そこで、連続鋳造工程では、これら鋳片表層部における欠陥の発生を防止するために、鋳型内の溶鋼に移動磁場や静磁場を印加して鋳型内溶鋼流動を制御し、モールドパウダー、脱酸生成物及びArガス気泡の凝固シェルへの捕捉及び鋳型下方への侵入を防止する技術が一般的に行われている(例えば、特許文献1を参照)。
しかしながら、磁場を印加しても、操業変動などに起因して上記鋳片表面欠陥を完全に抑制することは困難であるので、連続鋳造時、鋳型銅板に埋め込まれた熱電対による測温結果に基づいて鋳片表面の欠陥発生をオンラインで判定する技術が提案されている。
例えば、特許文献2には、連続鋳造用鋳型の鋳型長辺銅板背面の幅方向に複数の測温素子を配置して鋳型長辺銅板幅方向の温度分布を測定し、測定された温度分布の最大値と最小値との差が12℃以下となるように、鋳型に取り付けた磁場発生装置の磁場強度、鋳造速度、浸漬ノズルの浸漬深さ、浸漬ノズル内へのAr吹き込み量のうちの何れか1つまたは2つ以上を調整することが提案されている。また、特許文献3には、連続鋳造用鋳型の幅方向各点における鋳型銅板温度または熱流速を測定するとともに鋳型幅方向のこれらの分布を監視し、これらの鋳型幅方向の分布状態が時間的に大きく変化した場合に、鋳片表面に縦割れが発生したと判定する表面欠陥検出方法が提案されている。
特開平10−305353号公報
国際公開第2000/51763号
特開平2−151356号公報
ところで、近年、スラブ鋳片の連続鋳造工程においては、前記表面欠陥を防止するために、鋳型内の溶鋼を水平方向に旋回させるような移動磁場を印加した連続鋳造方法が、一般的に行われるようになっている。このような鋳型内の溶鋼を水平方向に旋回させた連続鋳造工程では、特許文献2及び特許文献3に提案される判定方法では、鋳片表面の欠陥を適確に判定することができない。
即ち、特許文献2及び特許文献3では、鋳型の幅方向の温度分布に基づいて表面欠陥の発生を判定しているが、移動磁場を用いて鋳型内の溶鋼を水平方向に旋回させた場合には、鋳型銅板温度の分布は鋳型の幅中心に対して基本的に幅方向左右で非対称となり、しかも、鋳造速度、鋳片幅、磁場強度などに応じて幅方向の銅板温度分布パターンが変化するので、単純な銅板温度の高低や最大値と最小値との差などからは、鋳片表面の欠陥発生を判定できない。これは、特許文献2及び特許文献3は、鋳型幅方向の温度分布がほぼ均一な鋳造条件を前提としているからである。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、鋳型内の溶鋼を移動磁場によって水平方向に旋回させながら鋳造する連続鋳造工程であっても、鋳型銅板温度の測定値に基づいてオンラインで鋳片表面の欠陥の発生を判定することのできる表面欠陥判定方法を提供すると同時に、この表面欠陥判定方法を利用した連続鋳造鋳片の製造方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明に係る連続鋳造鋳片の表面欠陥判定方法は、鋳型内溶鋼を水平方向に旋回させるように移動磁場を印加しながらスラブ鋳片を連続鋳造するに際し、相対する鋳型長辺銅板のそれぞれの背面に測温素子を埋設して、該測温素子にてそれぞれの鋳型長辺銅板温度を測定し、鋳型空間の軸心線を対称軸として対称の位置に配置された、それぞれの鋳型長辺銅板の測温素子同士による温度測定結果を比較し、両者のうちの高い方の測定温度に対する低い方の測定温度の比が0.85よりも小さくなった場合に、鋳片表面に欠陥が発生したと判定することを特徴とするものである。
また、本発明に係る連続鋳造鋳片の製造方法は、鋳型内溶鋼を水平方向に旋回させるように移動磁場を印加しながらスラブ鋳片を連続鋳造するに際し、相対する鋳型長辺銅板のそれぞれの背面に測温素子を埋設して、該測温素子にてそれぞれの鋳型長辺銅板温度を測定し、鋳型空間の軸心線を対称軸として対称の位置に配置された、それぞれの鋳型長辺銅板の測温素子同士による温度測定結果を比較し、両者のうちの高い方の測定温度に対する低い方の測定温度の比が0.85よりも小さくなった場合には、当該部位に該当する鋳片の表面を溶削または研削し、鋳片表面の欠陥を除去することを特徴とするものである。
薄鋼板製品においてヘゲ、スリバーなどと呼ばれる表面疵欠陥となる脱酸生成物やArガス気泡は、凝固シェル界面での溶鋼流速が低下した場合に凝固シェルに捕捉される。この凝固シェル界面での溶鋼流速の低下は、鋳型長辺銅板温度の低下として測定される。一方、鋳型内の溶鋼を旋回させるように移動磁場を印加した場合には、鋳型長辺銅板温度は、旋回流の上流側が高く、下流側が低くなる。従って、相対する鋳型長辺銅板においては、鋳型長辺銅板温度の分布は鋳型空間の軸心線に対して対称の関係になる。
本発明によれば、鋳型内の溶鋼を旋回させるように移動磁場を印加した連続鋳造工程において、前記対称の位置のそれぞれの鋳型長辺銅板温度を比較し、通常は同等レベルであるべき両者の温度に、両者の温度の比が0.85未満になるほどに差が生じたときを、表面欠陥が発生したと判定しており、このようにして判定することで、鋳型長辺銅板温度に幅方向の温度差があっても、脱酸生成物やArガス気泡による表面欠陥を適確に判定することができ、その結果、表面疵欠陥の少ない薄鋼板の製造に貢献する。
以下、本発明を具体的に説明する。先ず、本発明に至った経緯について説明する。
本発明者等は、鋳型内の溶鋼を旋回させるように移動磁場を印加した、スラブ連続鋳造機での種々の鋳造条件下において、鋳型内幅方向の鋳型長辺銅板温度のプロファイルを調査した。その場合に、相対する鋳型長辺銅板には、向かい合ったほぼ同一の箇所に、熱電対を測温素子として埋め込み、それぞれの鋳型長辺銅板の温度を測定した。図1に、相対する鋳型長辺銅板と測温素子の設置位置との関係を示す。また、図1には、鋳型内溶鋼の旋回流の方向及び浸漬ノズルの設置位置も併せて示している。尚、図1は、本発明を適用したスラブ連続鋳造機の鋳型の平面概略図である。
図1において、相対する鋳型長辺銅板4のうちで、一方の鋳型長辺銅板を4L、他方の鋳型長辺銅板を4Uとして表示しており、鋳型長辺銅板4Lには、TL1〜TL12の合計12個の測温素子20が埋設され、また、鋳型長辺銅板4Uには、TU1〜TU12の合計12個の測温素子20が埋設されている。尚、測温素子20の1から12の付番順は、旋回流の上流側から下流側に向かっており、鋳型長辺銅板4Lと鋳型長辺銅板4Uとでは逆方向になっている。この場合、それぞれの鋳型長辺銅板4L,4Uに設置された測温素子20は、鋳型空間の厚み方向中央面に対して対称の位置であり、且つ、鋳型空間の軸心線Pを対称軸として対称の位置に設置されている。つまり、相対するTLiとTU13-iとが、鋳型空間の厚み方向中央面に対して対称の位置に設置され、且つ、TLiとTUiとが、鋳型空間の軸心線Pを対称軸として対称の位置に設置されている。図1において符号5は、鋳型短辺銅板、符号12は浸漬ノズルであり、浸漬ノズル12は、その中心が軸心線Pと一致するように配置されている。本発明において、鋳型空間とは、相対する鋳型長辺銅板4と相対する鋳型短辺銅板5とで囲まれた直方体状の空間であり、軸心線とは、この直方体状空間の鋳造方向に向いた中心線である。
移動磁場により、図1に示す旋回流方向で鋳型内の溶鋼を攪拌したときの、鋳型長辺銅板4L及び鋳型長辺銅板4Uの銅板温度測定結果を図2に示す。図2(A)が、鋳型長辺銅板4Lの測温データ、図2(B)が、鋳型長辺銅板4Uの測温データである。
図2に示すように、鋳型長辺銅板4L及び鋳型長辺銅板4Uの温度分布は、旋回流の上流側が下流側に対して高くなることが確認できた。また、鋳型長辺銅板4Lの温度分布と鋳型長辺銅板4Uの温度分布とを比較すると、鋳型長辺銅板4LのTLiと、鋳型長辺銅板4UのTUiとが同等の温度水準であることが分った。つまり、鋳型長辺銅板4Lの温度分布と鋳型長辺銅板4Uの温度分布は、鋳型空間の軸心線Pを対称軸としてほぼ対称であることが分った。
従って、定常状態において、鋳型長辺銅板4LのTLiの温度と、鋳型長辺銅板4UのTUiの温度とを比較し、両者に差が生じれば、温度低下した側の凝固シェル界面における溶鋼流速が低下したことを知ることができる。薄鋼板製品においてヘゲ、スリバーなどと呼ばれる表面疵欠陥となる脱酸生成物やArガス気泡は、凝固シェル界面での溶鋼流速が低下した場合に凝固シェルに捕捉される。
この知見に基づき、図1と同様の構成の鋳型を用いて鋳型長辺銅板温度を測定しつつ、移動磁場を印加して鋳型内の溶鋼を旋回させながら、種々の鋳造条件でスラブ鋳片を製造した。この鋳片を熱間圧延及び冷間圧延して薄鋼板とし、薄鋼板における表面欠陥を検査し、この表面欠陥の発生と、TLi及びTUiの温度差との関係を調査した。図3に調査結果を示す。図3では、TLi及びTUiの温度差を表示する手法として、TUi/TLiで表示している。図3に示すように、温度比TUi/TLiが0.85よりも小さい範囲、並びに、温度比TUi/TLiが1.18を超える範囲では、薄鋼板の表面欠陥発生率が高くなることが分った。ここで、温度比TUi/TLiが1.18を超える範囲は、温度比TLi/TUiが0.85よりも小さい範囲と同じ意味である。
即ち、鋳型内溶鋼を水平方向に旋回させるように移動磁場を印加しながらスラブ鋳片を連続鋳造する場合には、鋳型長辺銅板4L及び鋳型長辺銅板4Uの銅板温度測定値のなかで、鋳型空間の軸心線Pを対称軸として対称の位置に配置された測温素子による温度測定値、具体的にはTLiとTUiとを比較し、両者のうちの高い方の測定温度に対する低い方の測定温度の比が0.85よりも小さくなった場合には、当該部位の鋳片表面に欠陥が発生したと判定可能であるとの知見が得られた。本発明は、これらの知見に基づきなされたものである。
このようにして鋳型長辺銅板温度の幅方向分布を解析することで、脱酸生成物及びArガス気泡のみならず、モールドパウダーの巻込みなどによる鋳片表面欠陥の発生をオンラインで即座に判定することができるとともに、その結果を、鋳造された鋳片の手入れ方法に適用することで、表面欠陥の少ない薄鋼板を製造することが可能となる。
次に、本発明の具体的な実施方法を図面に基づき説明する。図4は、本発明を適用したスラブ連続鋳造機の鋳型部の断面概略図である。
図4において、相対する一対の鋳型長辺銅板4と、この鋳型長辺銅板4に内装された、相対する一対の鋳型短辺銅板5と、から構成される鋳型3の上方所定位置に、タンディッシュ6がタンディッシュカー(図示せず)に積載されて配置されている。タンディッシュ6は、タンディッシュカーに設置された昇降装置(図示せず)により上下移動されて、所定位置で保持されるようになっている。タンディッシュ6の底部には上ノズル7が設けられ、この上ノズル7に接続して、固定板9、摺動板10及び整流ノズル11からなるスライディングノズル8が配置され、更に、スライディングノズル8の下面側には、下部に吐出孔13を有する浸漬ノズル12が配置されて、タンディッシュ6から鋳型3への溶鋼流出孔14が形成される。
鋳型長辺銅板4のそれぞれの背面には、磁場発生装置18が設置されている。磁場発生装置18の発生する磁場は移動磁場であり、鋳型内の溶鋼1が、メニスカス16で旋回するように磁場の移動方向が設定されている。つまり、鋳型3を挟んで相対する磁場発生装置18から印加される磁場の移動方向が逆方向に設定されている。
また、それぞれの鋳型長辺銅板4の背面には、鋳型長辺銅板4の幅方向に沿って複数の孔が設けられ、鋳型長辺銅板4の銅板温度を測定する測定点19となっている。各測定点19には測温素子20が、その先端を鋳型長辺銅板4に接して配置されている。この場合に、本発明を実施する上で、対向する鋳型長辺銅板4の各測定点19は、図1に示す鋳型空間の軸心線Pを対称軸として対称な位置に設置することが好ましく、少なくとも1点以上は対称な位置に設置する必要がある。但し、幾何学的に対称な位置は、幾何学では基本的に一点のみ定まるが、本発明においてはそれほどの厳密性は必要とせず、また、使用開始前には幾何学的に対称な位置であったとしても、溶鋼からの熱を受けて鋳型自体が変形することもあり、従って、本発明における鋳型空間の軸心線Pを対称軸として対称な位置とは、幾何学的に対称な位置を中心として、鋳造方向に±15mm程度、鋳型幅方向に±20mm程度のずれがあっても、この範囲内であれば、対称な位置であると定義する。鋳型長辺銅板温度の分布上からも、この範囲内であれば銅板温度に大差はない。
また、表面欠陥の検知精度を高めるために、隣り合う測定点19の間隔を200mm以下とすることが好ましい。また、メニスカス16から測定点19までの距離は、鋳造中のメニスカス16の上下動による温度変動の影響を受けないようにするために10mm以上とすることが好ましく、且つ、溶鋼流動の変化による鋳型長辺銅板温度の変化量を正確に把握するために135mm以下にすることが好ましい。測温素子20は、熱電対や抵抗測温体などのうち±1℃以上の精度で測温できるものであれば種類を問わない。
このような構成のスラブ連続鋳造機において、以下のようにして本発明を実施する。
図示せぬ取鍋からタンディッシュ6に溶鋼1を注入してタンディッシュ6に所定量の溶鋼1を滞留させ、次いで、タンディッシュ6に滞留した溶鋼1を、溶鋼流出孔14を経由して、浸漬ノズル12の下部に設けられ且つ鋳型内の溶鋼1に浸漬された吐出孔13から、鋳型短辺銅板5に向けて、鋳型長辺銅板4及び鋳型短辺銅板5とで囲まれた鋳型空間の内部に、吐出流15として注入する。鋳型空間に注入された溶鋼1は、鋳型3により冷却されて凝固シェル2を形成する。そして、凝固シェル2を外殻とし、内部を未凝固の溶鋼1とする鋳片を、鋳型3の下方に連続的に引抜き、溶鋼1の連続鋳造を実施する。その際、鋳型3のメニスカス16の上には、凝固シェル2と鋳型3との潤滑剤、溶鋼1の保温剤、溶鋼1の酸化防止剤などとして機能するモールドパウダー17を添加する。
また、上ノズル7をポーラス煉瓦で構成し、溶鋼流出孔14の壁面へのアルミナ付着を防止するために、上ノズル7と連結されたAr導入管(図示せず)とAr導入管に設置されたAr流量調整弁(図示せず)とからなるAr供給装置を介して、上ノズル7から溶鋼流出孔14の内部に所定量のArを吹き込む。吹き込まれたArは、溶鋼1とともに浸漬ノズル12を通り、吐出孔13を介して鋳型3に流入し、鋳型3の溶鋼1を通ってメニスカス16に浮上し、メニスカス16の上のモールドパウダー17を貫通して大気に至る。
また更に、磁場発生装置18から、相対する鋳型長辺銅板4に沿ってそれぞれ相反する向きの移動磁場を印加し、鋳型内の溶鋼1に、凝固シェル界面に沿って水平方向に回転する溶鋼流動を誘起させる。
この鋳造中に、測温素子20にて鋳型長辺銅板温度を測定する。そして、測定データのうちで、鋳型空間の軸心線Pを対称軸として対称な位置の測温素子同士の測定値を、所定の間隔、例えば数秒間ないし数分間の間隔で対比する。この対称な位置の測温素子同士のうちの高い方の測定温度に対する低い方の測定温度の比が0.85よりも小さくなった場合に、アルミナなどの脱酸生成物、Arガス気泡、及びモールドパウダー17のうちの何れかに起因する表面欠陥が鋳片表面に発生したと判定する。ここで、Arガス気泡に起因する表面欠陥とは、Arガス自体は不活性であるが、Arガス気泡が凝固シェル2に捕捉されると、溶鋼中に懸濁したアルミナが、捕捉されたArガス気泡に取り込まれやすくなり、結果としてアルミナによる表面欠陥となるからである。尚、このような温度差が生じる原因は、アルミナによる浸漬ノズル12の閉塞によって発生する片流れや、スライディングノズル8の開度に起因して吐出流15の対称性が崩れることなどによる。当然ながら、磁場発生装置18の局所的な設備故障などによっても発生する。
鋳片表面に欠陥が発生したと判定された鋳片は、次工程への搬送を一旦中断し、ホットスカーファーまたはコールドスカーファーを用いて溶削するか、或いは、グラインダーやシェーパーなどによって研削し、鋳片から表面欠陥を除去する。この場合、鋳片の全面を手入れしてもよく、また欠陥の発生部位のみを手入れしてもよく、どちらでも構わない。表面欠陥が検知されない鋳片は、無手入れの状態で次工程に搬送する。
このように、本発明によれば、鋳型内の溶鋼1を旋回させるように移動磁場を印加した連続鋳造工程において、鋳型長辺銅板温度の測定結果から、鋳片の表面欠陥の発生を正確に判定することが可能となり、歩留り向上、納期短縮、省資源などの工業上有益な効果がもたらされる。
鋳片の厚みが250mm、鋳片幅が1000〜2000mmのスラブ鋳片を鋳造する際に、鋳型長辺銅板温度を測定するとともに、鋳造後の鋳片を圧延した薄鋼板における表面欠陥を調査した。鋳造対象の溶鋼は極低炭素鋼であり、2孔で吐出角度が下向き25〜45度の浸漬ノズルを使用し、浸漬ノズルの浸漬深さを250mm、定常鋳造時の鋳造速度を1.2〜2.0m/分で鋳造した。また、磁場発生装置から移動磁場を印加し、鋳型内のメニスカスで水平方向に旋回流が形成されるように、溶鋼を攪拌した。
鋳型長辺銅板には、メニスカスから50mm下方の位置に、鋳型幅中央を起点としてその左右に70mm間隔で熱電対を配置した。熱電対の設置位置は、相対する鋳型長辺銅板で見れば、鋳型空間の軸心線に対称であると同時に、鋳型空間の厚み方向中央面に対しても対称である。鋳型長辺銅板温度の測定値は、スラブ鋳片の各部位に対応させて、計算機に記憶させた。
鋳造したスラブ鋳片を無手入れのままで熱間圧延し、更に、熱間圧延後に冷間圧延して薄鋼板(冷延鋼板)とし、この薄鋼板におけるアルミナ及びモールドパウダーに起因する表面欠陥を調査した。ここで、アルミナ及びモールドパウダーに起因する表面欠陥とは、欠陥部の走査電顕による定性分析で、欠陥部からアルミナまたはモールドパウダー成分が検出された表面欠陥である。
この表面欠陥の発生率指数と、鋳型空間の軸心線に対して対称な位置の熱電対により測定された鋳型長辺銅板温度TUi/TLiとの関係を、前述した図3に示す。図3に示すように、鋳型長辺銅板温度TUi/TLiが0.85よりも小さい範囲、並びに、該温度比TUi/TLiが1.18を超える範囲では、薄鋼板の表面欠陥発生率が高くなることが分った。
1 溶鋼
2 凝固シェル
3 鋳型
4 鋳型長辺銅板
5 鋳型短辺銅板
6 タンディッシュ
7 上ノズル
8 スライディングノズル
9 固定板
10 摺動板
11 整流ノズル
12 浸漬ノズル
13 吐出孔
14 溶鋼流出孔
15 吐出流
16 メニスカス
17 モールドパウダー
18 磁場発生装置
19 測定点
20 測温素子
P 鋳型空間の軸心線
2 凝固シェル
3 鋳型
4 鋳型長辺銅板
5 鋳型短辺銅板
6 タンディッシュ
7 上ノズル
8 スライディングノズル
9 固定板
10 摺動板
11 整流ノズル
12 浸漬ノズル
13 吐出孔
14 溶鋼流出孔
15 吐出流
16 メニスカス
17 モールドパウダー
18 磁場発生装置
19 測定点
20 測温素子
P 鋳型空間の軸心線
Claims (2)
- 鋳型内溶鋼を水平方向に旋回させるように移動磁場を印加しながらスラブ鋳片を連続鋳造するに際し、相対する鋳型長辺銅板のそれぞれの背面に測温素子を埋設して、該測温素子にてそれぞれの鋳型長辺銅板温度を測定し、鋳型空間の軸心線を対称軸として対称の位置に配置された、それぞれの鋳型長辺銅板の測温素子同士による温度測定結果を比較し、両者のうちの高い方の測定温度に対する低い方の測定温度の比が0.85よりも小さくなった場合に、鋳片表面に欠陥が発生したと判定することを特徴とする、連続鋳造鋳片の表面欠陥判定方法。
- 鋳型内溶鋼を水平方向に旋回させるように移動磁場を印加しながらスラブ鋳片を連続鋳造するに際し、相対する鋳型長辺銅板のそれぞれの背面に測温素子を埋設して、該測温素子にてそれぞれの鋳型長辺銅板温度を測定し、鋳型空間の軸心線を対称軸として対称の位置に配置された、それぞれの鋳型長辺銅板の測温素子同士による温度測定結果を比較し、両者のうちの高い方の測定温度に対する低い方の測定温度の比が0.85よりも小さくなった場合には、当該部位に該当する鋳片の表面を溶削または研削し、鋳片表面の欠陥を除去することを特徴とする、連続鋳造鋳片の製造方法。
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