JP4888521B2 - 水和物スラリの製造装置 - Google Patents

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Description

本発明は、固液相変化時の潜熱を用いた熱密度の高い液系包接水和物スラリ(以下、「水和物スラリ」と略記することがある。)の製造方法及びその製造装置に関する。
固液相変化時の潜熱を用いた冷熱媒体としては、例えば、氷水スラリが知られており、その製造方式として次のようなものが知られている。
(1)過冷却方式:水を熱交換器に通して、0℃以下の過冷却水を生成し、熱交換器外でその過冷却を解除して氷水スラリを生成する方式である。
(2)カキトリ方式:冷却面に氷を生成し、刃物のようなもので氷を削り取り氷水スラリを作る方式である。
一方、液系包接水和物スラリの一例として、水和剤に臭化テトラn−ブチルアンモニウム(TBAB)を用い、これを水に溶解したものがあり、この水和物スラリは水よりも高い熱密度を有するため、冷熱媒体の輸送動力を軽減することができ、大幅な省エネルギー効果が得られることが知られている。
しかしながら、従来の氷水スラリの製造方法である上記(1)の方法では、過冷却度を安定させることが困難であり、製造が不安定なものとなる。また、上記(2)の方法では、氷を削るための装置が複雑になり、そのための動力も必要となるうえに、完全に氷を削り取ることも難しい。
一方、上記液系包接水和物スラリの場合には、水和剤である臭化テトラn−ブチルアンモニウム(TBAB)を水に溶解した水溶液を熱交換器等で冷却すると、中間粒径が50〜100ミクロン程度の包接水和物の粒子が生成し、それが水溶液中に分散してスラリ状態となるが、その熱交換器の冷却面には、次第に水和物粒子が付着し、それが熱抵抗となって冷却性能を低下させたり、流路が狭くなり圧力損失を増大させる。
また、この水和物スラリを上記(1)、(2)の方法で生成するにしても、氷水スラリ製造の際と同様の問題が生ずることになる。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、水和物スラリを安定して製造するための製造装置を提供することを目的とする。
本発明に係る水和物スラリの製造装置は、
水和剤を水に溶解した水溶液もしくは水和物スラリを蓄える蓄熱槽と、冷却媒体を冷却する冷凍機と、蓄熱槽から流通される水溶液もしくは水和物スラリと冷却媒体との間で熱交換を行って水和物スラリを生成する複数並列に設けられている熱交換器と、蓄熱槽と熱交換器との間で水溶液もしくは水和物スラリを循環可能とする水溶液の熱交換回路とを備えた水和物スラリの製造装置において、
冷却媒体を熱交換器に供給する冷却媒体の熱交換回路に接続された加熱媒体の供給回路と、両回路の接続部に設けられ熱交換器に供給される媒体を冷却媒体と加熱媒体との間で切換える供給媒体の切換弁と、前記切替弁を制御する制御手段と、冷却媒体の熱交換回路の熱交換器出口温度を計測する温度計と、を備え、
前記制御手段は、一つの熱交換器の冷却面に水和物が付着したことを付着判定パラメータに基づき判定したとき、前記熱交換器に供給される媒体を冷却媒体から加熱媒体に切換えるように前記切換弁を制御し、付着した水和物を融解する融解運転を開始させ、融解運転開始から一定時間後又は温度計により計測した冷却媒体の熱交換回路の熱交換器出口温度が上昇に転じた時に、熱交換器に供給される媒体を加熱媒体から冷却媒体に切換えるように前記切換弁を制御し融解運転を終了させ、一つの熱交換器の融解運転を行う間にも他の熱交換器に冷却媒体を供給し水和物スラリの生成を継続するように切換弁を制御し、
付着判定パラメータは、熱交換器における冷却媒体の交換熱量、熱交換器における水溶液もしくは水和物スラリの交換熱量、水溶液もしくは水和物スラリの流量、水溶液もしくは水和物スラリの熱交換器出口温度、熱交換器出入口間における水溶液もしくは水和物スラリの差圧、水和物が第一水和物から第二水和物に変化する温度及び水溶液の濃度のうちいずれか一つであることを特徴とする。
ここで、本発明において、水和物すなわち包接水和物とは、特開平11−264681号公報に記載するように、水分子(ホスト分子)で構成された籠状の包接格子内に以下のようなゲスト分子が包み込まれて結晶化する化合物をいう。ゲスト分子として、テトラn−ブチルアンモニウム塩、テトラiso−アミルアンモニウム塩、テトラn−フォスフォニウム塩、トリiso−アミルサルフォニウム塩などであり、テトラn−ブチルアンモニウム塩の例として、フッ化テトラn−ブチルアンモニウム((n−C494NF)、塩化テトラn−ブチルアンモニウム((n−C494NCl)、臭化テトラn−ブチルアンモニウム((n−C494NBr)などがある。
また、これらF,Cl,Brの代わりに酢酸(CH3CO2)、クロム酸(CrO4)、タングステン酸(WO4)、シュウ酸(C24)、リン酸(HPO4)でもよい。その他の上記塩も同様である。
また、加熱媒体とは、冷却媒体よりも温度が高い媒体をいい、例えば、加熱された温水のほか、冷凍機のドレン水、冷却塔の冷却水、空調機の戻り水などでもよい。冷却媒体が気体の場合は、加熱媒体も気体となる。
このような加熱媒体を、水和物スラリの製造中において、熱交換器の冷却面に水和物が付着したときに冷却媒体の流路に供給することにより、付着した水和物を融解するものである。したがって、加熱媒体の供給回路を冷却媒体の熱交換回路に付加するだけでよいので、構成がきわめて簡単であり、しかも熱交換器の冷却性能を常に安定した状態に維持することが可能となる。よって、低コストで、安定した水和物スラリの製造が可能となる。
本発明において、加熱媒体の供給時期は、熱交換器の冷却面に水和物が付着して、熱抵抗となり熱交換効率が低下したり、流路の圧力損失が増大したことを検知するように次のように定めている。
(1)冷却媒体の交換熱量を求め、その求めた交換熱量に基づいて、加熱媒体の供給時期を定める。
(2)水溶液もしくは水和物スラリの交換熱量を求め、その求めた交換熱量に基づいて、加熱媒体の供給時期を定める。
(3)水溶液もしくは水和物スラリの流量に基づいて、加熱媒体の供給時期を定める。
(4)水溶液もしくは水和物スラリの熱交換器出口温度に基づいて、加熱媒体の供給時期を定める。
(5)熱交換器出入口間における水溶液もしくは水和物スラリの差圧に基づいて、加熱媒体の供給時期を定める。
(6)水和物が第一水和物から第二水和物に変化する温度に基づいて、加熱媒体の供給時期を定める。
(7)水溶液の濃度に基づいて、加熱媒体の供給時期を定める。
すなわち、水和物の付着判定パラメータとして、それぞれ冷却媒体の交換熱量、水溶液もしくは水和物スラリの交換熱量、水溶液もしくは水和物スラリの流量、水溶液もしくは水和物スラリの熱交換器出口温度、水溶液もしくは水和物スラリの差圧、水和物の転移温度、水溶液の濃度を採用したものである。
(1)の方法では、まず、冷却媒体の交換熱量を求める。交換熱量は、次式より算出することができる。
交換熱量=温度差×流量×比熱
温度差は冷却媒体の熱交換器入口温度と出口温度の差であり、流量は熱交換器を流れる冷却媒体の流量である。これらの値はそれぞれ温度計、流量計によって測定すればよく、一方冷却媒体の比熱は既知であるので、これらの測定値を用いて冷却媒体の交換熱量を求めることができる。そして、求めた交換熱量が予め設定した設定値以下となれば、水和物が付着していると判定して、加熱媒体の供給を開始する。
(2)の方法では、水溶液もしくは水和物スラリについて交換熱量を上記と同様に求めればよい。
(3)の方法では、水溶液もしくは水和物スラリの流量だけで加熱媒体の供給時期を判定する。水和物の付着により流路の圧力損失が増大し水溶液の流量が変化(減少)するからである。前記(1)、(2)の方法に比べてより簡便な方法である。
(4)の方法では、水溶液もしくは水和物スラリの熱交換器出口温度で加熱媒体の供給時期を判定する。水和物スラリの冷却が進むと水和物が付着しやすくなるからである。
(5)の方法では、水溶液もしくは水和物スラリの熱交換器出入口間の差圧で加熱媒体の供給時期を判定する。水和物が付着すると、流送抵抗が増大し圧損が生じるため、流量に対する水溶液もしくは水和物スラリの差圧が大きくなるからである。
(6)の方法では、水和物が第一水和物から第二水和物に相変化する温度(第二水和物転移温度)で加熱媒体の供給時期を判定する。
ここで、水溶液の濃度によって2種類の水和物が生成される場合において、第一水和物とは、水和数が小さく生成温度の低い水和物をいい、第二水和物とは、水和数が大きく生成温度が高い水和物をいう。
例えば、前記臭化テトラn−ブチルアンモニウムを水和剤とする水和物スラリの場合、大気圧下において冷却により水和物の結晶を生成する水溶液濃度と温度の関係は図3のようになっている。すなわち、第一水和物は、水溶液濃度がおよそ20wt%の場合約8.4℃で生成されるが、この温度から冷却が進むと、約8℃で第二水和物に変化する。このときの水溶液濃度は約15.4wt%になっている。第二水和物は第一水和物よりも安定しており、かつ、潜熱量が大きいので、第二水和物がより多く含まれるように水和物スラリを調整することが好ましい。そこで、前記第二水和物転移温度の8℃を監視し、第一水和物の過冷却を回避しつつ第二水和物へスムーズに変化させる。もし、この温度以下になったら加熱媒体を供給する。
また、第二水和物転移温度のときの水溶液濃度で加熱媒体の供給時期を判定するのが前記(7)の方法である。
このように、使用する水和物スラリの温度−濃度特性から、加熱媒体の供給時期を定めることができる。
本発明において、加熱媒体の供給停止すなわち、加熱媒体から冷却媒体に切り換える時期は、冷却媒体流路の熱交換器出口温度が上昇に転じた時とする。
加熱媒体の供給により、熱交換器の冷却面に付着した水和物がほとんど融解すると、冷却媒体の熱交換器出口温度が上昇に転ずるので、その後は加熱媒体の供給を停止し、冷却媒体に切り換えてこれを熱交換器に送る。
本発明においては、熱交換器にプレート式熱交換器を用いることが好ましい。プレート式熱交換器を用いる場合の利点は、容積当りの伝熱面積が大きく取れることと、狭いプレート間隙を対向流で熱交換できるため、コンパクトで高い伝熱性能が得られることである。
また、自動制御とするために、切換弁を制御する制御手段を設ける。切換弁を三方弁または四方弁とすることにより、回路構成が簡単になる。熱交換器を複数かつ並列に接続することにより、水和物スラリの製造能力及び安定性が向上する。また、熱交換器を複数かつ直列に接続することにより、各熱交換器の熱負荷を軽減でき、効率のよい水和物スラリの製造が可能となる。水溶液が流通する熱交換器の冷却面に、予め粒状物質を付着しておき、または、表面加工を施すことにより、水和物の過冷却を防ぐことができ、あるいは、水和物の付着を抑制することができる。粒状物質には例えば、カオリンがあり、表面加工としてはめっきや樹脂コーティングなどがある。
本発明の水和物スラリの製造装置に、前記製造装置で製造された水和物スラリを冷却媒体として空調機に供給する機構を具備することにより冷熱利用システムを構築できる。本発明の製造装置は、前述のように水和物スラリを効率よく安定的に製造できるので、その水和物スラリを冷却媒体として空調機に供給することにより、冷熱利用システムは安定した空調作用を保つことができる。
以上説明したように、本発明は、水和物スラリの製造中に水和物が熱交換器冷却面に付着したとき、加熱媒体を冷却媒体流路に供給することにより、付着した水和物を融解するものであるので、構成が簡単であり、低コストで、しかも安定した水和物スラリの製造が可能となる。
本発明の実施の形態を示す水和物スラリ製造装置の構成図である。 本発明の他の実施の形態を示す水和物スラリ製造装置の構成図である。 臭化テトラn−ブチルアンモニウムを水和剤とする水和物スラリにおける水和物を生成する水溶液濃度と温度との関係を示す図である。 熱交換器の水溶液流量に対する冷水遮断弁の動作のタイムチャートである。 本発明の水和物スラリ製造装置を用いる冷熱利用システムの構成図である。
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は本発明の水和物スラリ製造装置の一例を示す回路構成図である。図1において、1は水和剤(例えば、臭化テトラn−ブチルアンモニウム)を水に溶解した水溶液もしくは水和物スラリが蓄積される蓄熱槽、5は冷却媒体(例えば、冷水)を冷却するための冷凍機、HX1,HX2は水溶液もしくは水和物スラリと冷水との間で熱交換を行う熱交換器である。熱交換器はプレート式や多管式等の熱交換器である。
9は加熱媒体として、例えば、温水が入れられた温水タンクであり、ここではその内部に加熱装置が組み込まれているものとする。
蓄熱槽1の水溶液もしくは水和物スラリは、ポンプ4、流路2(往路)、熱交換器HX1,HX2、及び流路3(復路)の経路を循環可能に構成している。この経路を、水溶液の熱交換回路Aという。
水溶液を冷却するための冷水は、冷凍機5、ポンプ8、流路6(往路)、熱交換器HX1,HX2、及び流路7(復路)の経路を循環可能に構成している。この経路を、冷却媒体の熱交換回路Bという。
温水タンク9の温水は、ポンプ12、流路10(往路)、流路6、熱交換器HX1,HX2、流路7、及び流路11(復路)の経路を循環可能に構成している。この経路を、加熱媒体の供給回路Cという。
そして、加熱媒体の供給回路Cと冷却媒体の熱交換回路Bは、それぞれ遮断弁(切換弁)V1,V2,V3,V4を介して接続されている。
すなわち、熱交換器HX1,HX2の冷水流路の入出口に、その流路を遮断する遮断弁V5,V6,V7,V8を取り付け、さらにこれら各冷水遮断弁と熱交換器の間に分岐流路を設け、この分岐流路はその流路を遮断する温水遮断弁V1〜V4を介して、加熱用温水流路10,11と接続している。なお、これら冷水遮断弁V5〜V8及び温水遮断弁V1〜V4を三方弁もしくは四方弁でまとめることにより、加熱媒体の供給回路Cと冷却媒体の熱交換回路Bとの接続部を簡潔な回路構成とすることができる。すなわち、遮断弁V1とV5,V2とV6,V3とV7,V4とV8を、それぞれ例えば三方弁で構成することで回路構成が簡単になる。
熱交換器HX1,HX2の水溶液流路の入出口には、その流路を遮断する水溶液遮断弁V11,V12,V13,V14を取り付けている。熱交換器HX1,HX2は、ここでは水和物スラリの製造能力や安定性を向上するために複数並列に設けてあるが、これに限定されるものではなく、熱交換器は1台以上であればよい。
熱交換器HX1,HX2の冷水流路の出入口には冷水の温度を測定する温度計28,29,38,39を、そして、冷水流路の熱交換器入口には冷水の流量を測定する流量計27,37を取り付けている。また、熱交換器HX1,HX2の水溶液流路の入出口には、水溶液もしくは水和物スラリの温度を測定する温度計41,42,43,44を取り付けている。
また、熱交換器HX1,HX2の水溶液入口には水溶液の流量を測定する流量計51,52を、そして、水溶液出入口間にはその間の水溶液差圧を測定する差圧計53,54を、それぞれ取り付けている。
上記の温度計28,29,38,39、41,42,43,44、流量計27,37,51,52、及び差圧計53,54の各計測値は制御手段13に取り込まれるようにしている。そして、制御手段13において、交換熱量(=温度差×流量×比熱)を演算し、これらの温度、交換熱量、あるいは水溶液もしくは水和物スラリの流量と差圧に応じて、前記各遮断弁V1〜V8を制御するようになっている。すなわち、これらの付着判定パラメータに基づいて、温水の供給時期を定めている。
なお、上記は説明のため、冷水の温度計、冷水の流量計、水溶液もしくは水和物スラリの温度計、水溶液の流量計、水溶液の差圧計の全てを設けているが、これらの一部のみを設けてもよい。
次に、この製造装置により水和物スラリを製造する方法を説明する。
蓄熱槽1内の水溶液もしくは水和物スラリは、製造ポンプ4によって流路2から熱交換器HX1,HX2に流通され、その後、流路3から蓄熱槽1に戻る経路を循環する。一方、冷凍機5で冷却された冷水は、ポンプ8によって流路6から熱交換器HX1,HX2に流通され、その後、流路7から冷凍機5に戻る経路を循環する。この過程で、水溶液もしくは水和物スラリが、熱交換器HX1,HX2の冷却面を隔てて冷水により冷却されることにより、水和物スラリが生成される。
冷水は、2台の熱交換器HX1,HX2に等流量で流通されており、それらの熱交換器出入口の温度計28,29,38,39の温度と流量計27,37の冷水流量によって交換熱量(=温度差×流量×比熱)が制御手段13にて計算される。
一方、水溶液もしくは水和物スラリもこれらの熱交換器HX1,HX2に等流量で流通されているが、冷却が進む過程で、熱交換器内で水和物スラリが生成され始めると、その冷却面に水和物が付着し、それが熱抵抗となって交換熱量を低下させる。また、熱交換器冷却面に水和物が付着すると、それが流送抵抗となって流量の低下や熱交換器の水溶液出入口間の流量に対する水溶液差圧が上昇する。
そこで、例えば、熱交換器HX1の交換熱量が予め設定した所定の交換熱量以下となったら、あるいは、流量計51、差圧計53により計測された流量及び差圧が予め設定した流量に対する差圧以上となったら、水溶液遮断弁V11,V12を閉、冷水遮断弁V5,V6を閉とするとともに、温水遮断弁V1,V2を開とし、さらに温水ポンプ12を起動して、温水タンク9の温水を熱交換器HX1の冷水流路6に供給し、熱交換器冷却面に付着した水和物を融解させる、水和物融解運転を行う。なお、温水の温度は冷水温度より高ければよいものであり、前記TBABの場合12℃以上であればよい。吸収式冷凍機からの出口温水やドレン水、冷却塔の冷却水、空調機負荷からの戻り水等を加熱媒体として使用することもできる。
水和物融解運転の一定時間後、あるいは、熱交換器HX1の冷水流路側出口温度の計測値がある温度以上の上昇に転じた後には、再度、前記遮断弁の開閉を切り換えて温水と冷水を切り換え、再び水溶液の冷却運転を行って、水和物スラリを生成する。
なお、もう一方の熱交換器HX2についても、水和物の付着が生じた場合、熱交換器HX1と同様に水和物融解運転を行う。
そして、このような融解運転を逐次行うことで、水溶液流路の閉塞等を生ずることなく水和物スラリを安定して製造することが可能となる。
また、水溶液の熱交換器HX1,HX2出口での温度が、水和物の凝固点以下(水溶液の過冷却状態)となったとき、または、第二水和物転移温度以下(第一水和物が第二水和物に変化していく約8℃以下)となったとき等に、上記の水和物融解運転を行うようにすれば、過冷却解除後も水和物スラリを安定して製造することが可能となる。
なお、熱交換器冷却面の水溶液側表面に微細な粒子を付着しておくと、過冷却を解除する効果があり、水和物の凝固点以下となる過冷却状態をできるだけ小さくすることができ、従って、水和物スラリの安定製造につながる。微細な粒子としては粒径が300μm以下のものが好ましく、水砕スラグ粒子やカオリンなどを用いてよい。微細粒子を付着させる方法は冷却面表面に、微細粒子を混和したバインダを塗布してもよい。
ところで、例えば、プレート式熱交換器のプレートには、ステンレス鋼、銅、チタン等が用いられているが、従来は素材をプレートに加工したままで表面加工を施していないため、生成された水和物スラリがプレート表面に付着し容易に剥離しないという問題があった。そこで、次に、プレート式熱交換器のプレート表面に水和物スラリが付着するのを防ぐ有効な手段を説明する。
その第1は、プレート冷却面の水溶液側表面に、摩擦係数が小さくなるよう、硬質クロムめっき、ニッケルめっき、鉄めっき、合金めっき等の電気めっき、リンやホウ素等を用いた無電解ニッケルめっき、電析皮膜、無電解ニッケル等の分散めっき、潤滑性合金めっき等のめっきを施すものである。
その第2は、水和物スラリが流通する側のプレート表面の摩擦係数や表面粗さが小さくなるよう、フッ素系樹脂、シリコン樹脂、無機系樹脂等のコーティングや塗装等の皮膜を施したり、研磨等の加工を施すものである。
上記第1または第2のように、水和物スラリが流通する側のプレート表面を加工することで、水和物スラリがプレート面に付着しにくくなり、水和物スラリの安定製造が可能となる。
また、水和物スラリの製造においては、水溶液の冷却が進む過程で熱交換器の冷却面から水和物が生成されるが、さらに冷却が進むと、水和物スラリ中の水和物の割合が高くなり水溶液の粘度が増して、熱交換器内での水溶液の流れの乱れが抑制され、水和物が冷却面から剥離されにくくなる。
これに対しては、例えば一定時間間隔で水溶液循環用ポンプ4の出力を増大させて、熱交換器HX1,HX2の水溶液流路の水和物スラリ流速を大きくすると、その動圧力によって、冷却面に付着した水和物の剥離を促進させることができ、水和物スラリを安定製造することが可能になる。なお、この一定時間間隔は適宜定めてよい。
また、水溶液循環ポンプをインバータ等により一定流量制御した場合にも、熱交換器HX1,HX2の冷却面に水和物が付着すると圧損が増すため、ポンプの回転数が増加し、ポンプの出力または吐出圧が自動的に増大されて、冷却面に付着した水和物の剥離を促進させることができ、水和物スラリを安定製造することが可能になる。
図2は、本発明の他の実施形態を示す回路構成図である。この例では、4台の熱交換器HX1〜HX4がそれぞれ水溶液の熱交換回路Aと冷却媒体の熱交換回路Bに並列に接続されている。そして、加熱媒体の供給回路Cと冷却媒体の熱交換回路Bはそれぞれ三方弁からなる遮断弁V21〜V28を介して接続されている。また、水溶液の流量計51,52,53,54のみが示してあるが、図1のように冷却媒体の流量計、温度計、水溶液の温度計、差圧計を設けることもできる。
この実施形態では、前記付着判定パラメータとして、水溶液の流量のみで加熱媒体の供給時期を定めている。前述のごとく、水和物スラリの製造中に熱交換器冷却面に水和物が付着すると、水溶液流路が狭くなり、流量が減少するので、設定値以下の流量になったとき、当該三方弁の遮断弁を切り換えて加熱媒体を冷却媒体流路に供給するものである。
例えば、熱交換器HX1において水和物の付着が生じた場合について述べると、そのときの水溶液の流量は流量計51によって計測され、その計測値は表示部(または図1の制御手段の表示部)13aに表示される。水溶液の流量が設定値以下となったときには、遮断弁V21を切り換え、ポートaを閉じ、ポートbとポートcを連通状態にする。同様に、遮断弁V22のポートdを閉じ、ポートeとポートfを連通状態に切り換える。これら遮断弁V21とV22の動作タイミングは同期して行う。これによって、冷却媒体(冷水)流路6,7は閉じられ、加熱媒体(温水)流路10,11が開状態となる。従って、加熱媒体の温水をタンク9から供給することにより熱交換器HX1の冷却面に付着した水和物を融解することができる。
この水和物融解運転が終了したときには、遮断弁V21のポートcを閉じ、ポートaとポートbを連通状態に切り換え、同時に、遮断弁V22のポートfを閉じ、ポートdとポートeを連通状態に切り換えて、再び元通り水溶液の冷却運転を行い、水和物スラリを生成する。なお、ほかの熱交換器HX2〜HX4についても上記と同様の操作を行う。
この回路構成によれば、水溶液の流量のみで加熱媒体の供給時期を判定するので、きわめて簡便な手段となる。また、遮断弁V21〜V28に三方弁を用いることにより、回路構成がより簡潔なものとなる。なお、三方弁に代え四方弁であっても同様である。この場合、一つのポートはドレン孔として利用される。
図2の回路構成においても、図1と同様、自動制御系に構成できることはいうまでもない。
図5は本発明の水和物スラリ製造装置を用いる冷熱利用システムの構成を示すブロック図である。図5において、HXは水和物スラリを製造するための製造熱交換器であり、前記の蓄熱槽1、冷凍機5、及び温水タンク9を備えており、この構成により前述のように、水和物スラリを安定して製造することができる。従って、このように製造された水和物スラリをポンプPにより空調機100に供給することで、安定した空調作用を保持することができる。
A 水溶液の熱交換回路
B 冷却媒体の熱交換回路
C 加熱媒体の供給回路
HX1〜HX4 熱交換器
V11〜V14 水溶液遮断弁
V5〜V8 冷水遮断弁
V1〜V4 温水遮断弁
V21〜V28 遮断弁(三方弁)
1 蓄熱槽
4 ポンプ
5 冷凍機
8 ポンプ
9 温水タンク
12 ポンプ
13 制御手段
27,37,51,52 流量計
28,29,38,39 温度計
41,42,43,44 温度計
53,54 差圧計

Claims (2)

  1. 水和剤を水に溶解した水溶液もしくは水和物スラリを蓄える蓄熱槽と、冷却媒体を冷却する冷凍機と、蓄熱槽から流通される水溶液もしくは水和物スラリと冷却媒体との間で熱交換を行って水和物スラリを生成する複数並列に設けられている熱交換器と、蓄熱槽と熱交換器との間で水溶液もしくは水和物スラリを循環可能とする水溶液の熱交換回路とを備えた水和物スラリの製造装置において、
    冷却媒体を熱交換器に供給する冷却媒体の熱交換回路に接続された加熱媒体の供給回路と、両回路の接続部に設けられ熱交換器に供給される媒体を冷却媒体と加熱媒体との間で切換える供給媒体の切換弁と、前記切替弁を制御する制御手段と、冷却媒体の熱交換回路の熱交換器出口温度を計測する温度計と、を備え、
    前記制御手段は、一つの熱交換器の冷却面に水和物が付着したことを付着判定パラメータに基づき判定したとき、前記熱交換器に供給される媒体を冷却媒体から加熱媒体に切換えるように前記切換弁を制御し、付着した水和物を融解する融解運転を開始させ、融解運転開始から一定時間後又は温度計により計測した冷却媒体の熱交換回路の熱交換器出口温度が上昇に転じた時に、熱交換器に供給される媒体を加熱媒体から冷却媒体に切換えるように前記切換弁を制御し融解運転を終了させ、一つの熱交換器の融解運転を行う間にも他の熱交換器に冷却媒体を供給し水和物スラリの生成を継続するように切換弁を制御し、
    付着判定パラメータは、熱交換器における冷却媒体の交換熱量、熱交換器における水溶液もしくは水和物スラリの交換熱量、水溶液もしくは水和物スラリの流量、水溶液もしくは水和物スラリの熱交換器出口温度、熱交換器出入口間における水溶液もしくは水和物スラリの差圧、水和物が第一水和物から第二水和物に変化する温度及び水溶液の濃度のうちいずれか一つであることを特徴とする水和物スラリの製造装置。
  2. 加熱媒体は、冷却媒体より温度が高い媒体であって、冷却媒体を供給する冷凍機からの出口温水、該冷凍機からのドレン水、冷却塔の冷却水、製造された水和物スラリを利用する冷熱利用システムにおける空調負荷からの戻り水溶液のうちいずれか一つを供給することを特徴とする請求項1に記載の水和物スラリの製造装置。
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