JP4886948B2 - ビフェニルエチルアミン誘導体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、活性化血液凝固第X因子阻害剤として有用な式(VIII)
【化10】
で表される5−アミジノ−2−ヒドロキシベンゼンスルホンアミド誘導体またはその薬理学的に許容される塩を製造するための新規な中間体およびそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
前記式(VIII)で表される5−アミジノ−2−ヒドロキシベンゼンスルホンアミド誘導体は、当該出願人により見出された文献未記載の新規な化合物である。該ベンゼンスルホンアミド誘導体(VIII)の製造方法として、特願2000−305569に下記のスキームに示すように、式(IX)で表される化合物を出発原料として式(XII)で表されるスルホンアミド誘導体へと変換し、該スルホンアミド誘導体(XII)から式(XIII)で表される化合物を経由し、活性化血液凝固第X因子阻害剤(VIII)へと誘導する方法が開示されている。しかしながら本発明の化合物を経由する合成法については何ら記載されていない。
【化11】
(式中、R1、R2、R3は上記定義の通りであり、R5は水素または低級アルキルであり、Zは水素またはヒドロキシである)
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、活性化血液凝固第X因子阻害剤として有用な前記式(VIII)で表される5−アミジノ−2−ヒドロキシベンゼンスルホンアミド誘導体またはその薬理学的に許容される塩を簡便かつ高収率で製造できる新規な中間体およびそれらの製造方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、前記式(VI)で表される3−フェニル−2−シクロヘキセノンを出発原料として簡便かつ高収率で前記式(I)で表されるビフェニルエチルアミン誘導体を合成できることを見出した。さらに該ビフェニルエチルアミン誘導体(I)を経由することにより、出発原料より極めて短い工程数で、しかも収率よく前記式(VIII)で表される5−アミジノ−2−ヒドロキシベンゼンスルホンアミド誘導体またはその薬理学的に許容される塩を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、式(I)
【化12】
(式中、R1およびR2は、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル、低級アルキルチオおよび低級アルキルスルホニルからなる群から独立して選択される基であり、R3は、ハロゲン原子、低級アルキル、低級アルキルチオまたは低級アルキルスルホニル基である)で表される化合物に関する。
【0006】
別の局面において、本発明は、式(II)
【化13】
(式中、R1およびR2は、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル、低級アルキルチオおよび低級アルキルスルホニルからなる群から独立して選択される基であり、R3は、ハロゲン原子、低級アルキル、低級アルキルチオまたは低級アルキルスルホニル基である)で表される化合物と縮合剤とを反応させることにより、式(III)
【化14】
(式中、R1、R2およびR3は、上記定義の通りである)で表される化合物を製し、該式(III)で表される化合物とアンモニアとを反応させることにより、式(IV)
【化15】
(式中、R1、R2およびR3は上記定義の通りである)で表される化合物を製し、続いて該式(IV)で表される化合物を還元することを特徴とする、式(I)
【化16】
(式中、R1、R2およびR3は上記定義の通りである)で表される化合物の製造方法に関する。
【0007】
さらに別の局面において、本発明は、式(V)
【化17】
(式中、R1およびR2は、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル、低級アルキルチオおよび低級アルキルスルホニルからなる群から独立して選択される基であり、R3は、ハロゲン原子、低級アルキル、低級アルキルチオまたは低級アルキルスルホニル基であり、R4は、カルボキシル基またはカルバモイル基である)で表される化合物に関する。
【0008】
なおさらに別の局面において、本発明は、式(VI)
【化18】
(式中、R1およびR2は、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル、低級アルキルチオおよび低級アルキルスルホニルからなる群から独立して選択される基であり、R3は、ハロゲン原子、低級アルキル、低級アルキルチオまたは低級アルキルスルホニル基である)で表される化合物と、式(VII)
【化19】
で表される化合物とを反応させることを特徴とする、式(V)
【化20】
(式中、R1、R2およびR3は、上記定義の通りであり、R4は、カルボキシル基である)で表される化合物の製造方法に関する。
【0009】
本発明において、ハロゲン原子とは、フッ素原子または塩素原子を意味し、好ましくはフッ素原子である。低級アルキルとは炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert−ブチルなどが挙げられる。低級アルキルチオとは、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖状のアルキルチオ基を意味し、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオなどが挙げられる。低級アルキルスルホニルとは、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖状のアルキルスルホニル基を意味し、例えば、メタンスルホニル、エタンスルホニル、プロパンスルホニル、イソプロパンスルホニルなどが挙げられる。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の化合物は、以下のスキーム1に従って製造することができる。
【化21】
(式中、R1、R2およびR3は、上記定義の通りである。)
【0011】
(工程a)
前記式(VI)で表される3−フェニル−2−シクロヘキセノン誘導体とグリオキシル酸(VII)とを溶媒中、酸の存在下または非存在下で反応させることにより、本発明の前記式(II)で表されるビフェニル酢酸誘導体を製造することができる。
【0012】
本反応に使用できる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサンなどのエーテル類、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミドなどを挙げることができ、これらの不活性溶媒を単独でまたは2種以上混合し、必要に応じて水を添加して使用することができる。酸としては、濃硫酸、濃塩酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、酢酸などが使用される。本反応は、通常、0℃〜使用される溶媒の還流温度で1〜24時間行われ、反応終了後、常法により抽出、濃縮することにより目的とする前記式(II)で表されるビフェニル酢酸誘導体を得ることができる。
【0013】
(工程b)
次にビフェニル酢酸誘導体(II)を不活性溶媒中または無溶媒で、縮合剤の存在下で反応させることにより、前記式(III)で表されるラクトン誘導体に変換し、続いて該ラクトン誘導体(III)とアンモニア水とを反応させることにより、本発明の前記式(IV)で表されるビフェニル酢酸アミド誘導体を製造することができる。
【0014】
本反応に使用できる不活性溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサンなどのエーテル類、アセトニトリルなどを挙げることができ、これらの不活性溶媒を単独でまたは2種以上混合して使用することができる。縮合剤としては、例えば、無水酢酸などを使用することができ、通常、ビフェニル酢酸誘導体(II)に対して1〜6当量の範囲から適宜選択して使用される。ビフェニル酢酸誘導体(II)からラクトン誘導体(III)への変換は、通常、0〜60℃の温度で1〜6時間行われる。反応終了後、ラクトン誘導体(III)は単離してもしなくてもよく、好ましくはラクトン誘導体(III)の生成を確認後、単離することなくアンモニア水と反応させることによりビフェニル酢酸アミド誘導体(IV)への変換が行われる。ラクトン誘導体(III)からビフェニル酢酸アミド誘導体(IV)への変換は、通常、0〜50℃の温度で1〜6時間行われ、反応終了後、常法により抽出、濃縮することにより目的とする前記式(IV)で表されるビフェニル酢酸アミド誘導体を得ることができる。
【0015】
(工程c)
続いてビフェニル酢酸アミド誘導体(IV)を不活性溶媒中、還元剤を用いて還元することにより、本発明の前記式(I)で表されるビフェニルエチルアミン誘導体を製造することができる。
【0016】
本反応に使用できる不活性溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンなどが挙げられ、これらの不活性溶媒を単独でまたは2種以上混合して使用することができる。還元剤としては、例えば、ジボラン、ボラン・テトラヒドロフラン錯体、ボラン・ジメチルスルフィド錯体、ボラン・ピリジン錯体、ボラン・N,N−ジエチルアニリン錯体、水素化ホウ素ナトリウム/トリフルオロ酢酸、水素化ホウ素ナトリウム/酢酸などを使用することができ、通常、ビフェニル酢酸アミド誘導体(IV)に対してホウ素換算で1〜5当量の範囲から適宜選択して使用される。本反応は、通常、0℃〜使用される溶媒の還流温度で1〜12時間行われ、反応終了後、必要に応じて過剰の還元剤を処理した後、常法により抽出、濃縮することにより目的とする前記式(I)で表されるビフェニルエチルアミン誘導体を得ることができる。
【0017】
このようにして得られた前記式(I)で表される化合物は、例えば、以下のスキーム2に示す工程d〜gの反応を行うことにより、活性化血液凝固第X因子阻害剤として有用な前記式(VIII)で表される5−アミジノ−2−ヒドロキシベンゼンスルホンアミド誘導体へと導くことができる。
【0018】
【化22】
(式中、R1、R2およびR3は上記定義の通りであり、R6は低級アルキルであり、R5は水素または低級アルキルであり、Xはクロロまたはブロモであり、Zは水素またはヒドロキシである)
【0019】
(工程d)
前記式(I)で表されるビフェニルエチルアミン誘導体と前記式(XI)で表されるベンゼンスルホニルクロリドとを、不活性溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミドなど)中、塩基(例えば、トリエチルアミン、炭酸カリウムなど)の存在下で、通常、−40〜50℃の温度で縮合させることにより、前記式(XIII)で表されるスルホンアミド誘導体を得ることができる。
【0020】
(工程e)
次にスルホンアミド(XIII)とハロ酢酸エステル(XIV)とを、不活性溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミドなど)中、塩基(例えば、炭酸カリウム、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなど)の存在下で、通常、0℃〜使用される溶媒の還流温度で反応させることにより、前記式(XV)で表される化合物へ誘導することができる。
【0021】
(工程f)
次に化合物(XV)と塩化リチウムとを不活性溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなど)中、通常、100℃〜使用される溶媒の還流温度で反応させることにより、前記式(XVI)で表されるフェノール誘導体へ誘導することができる。
【0022】
(工程g)
続いてフェノール誘導体(XVI)を、ハロゲン化水素の存在下、低級アルコール(例えば、エタノールなど)と反応させた後、アンモニアまたはその塩あるいはヒドロキシルアミンまたはその塩と反応させ、必要に応じて、常法に従い、エステル基を加水分解するかまたはR5OHで表されるアルコールを用いてエステル交換を行うことにより、医薬品として有用な前記式(VIII)で表される化合物を製造することができる。該化合物(VIII)は所望により、常法に従い、その薬理学的に許容される塩にすることができる。
【0023】
上記のスキーム1に示す出発原料である前記式(VI)で表される化合物は、例えば、以下に示すようにして製造することができる。
【化23】
(式中、R7は低級アルキルであり、R11、R12、R13は独立して水素、ハロゲン、低級アルキルまたは低級アルキルチオであり、MはリチウムまたはMgBrであり、R1、R2およびR3は上記定義の通りである)
【0024】
前記式(XVII)で表される化合物と前記式(XVIII)で表される化合物とを不活性溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)中、20℃〜使用される溶媒の還流温度で反応させ、必要に応じて、常法に従い、酸化反応を行うことにより、前記式(VI)で表される化合物を得ることができる。
【0025】
本発明の化合物およびその製造中間体、ならびに本発明の化合物を使用して製造される前記式(XIII)、(XV)、(XVI)および(VIII)等の化合物は、必要に応じて慣用の単離・精製手段である溶媒抽出、再結晶、クロマトグラフィー、固層抽出などの操作を行うことにより、単離・精製することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の内容を実施例、参考例および試験例でさらに詳細に説明するが、これらは本発明を例示することを意図したものであり、発明の範囲を限定するものではない。
【0027】
【実施例】
(参考例1)
3−(2−メチルチオフェニル)−2−シクロヘキセン−1−オン
マグネシウム(12.9g)およびテトラヒドロフラン(210mL)の混合物に、室温にてヨウ素(400mg)および2−ブロモチオアニソール(7.6g)を一度に加え、外温50℃で撹拌した。反応開始後、さらに2−ブロモチオアニソール(92.4g)のテトラヒドロフラン(210mL)溶液を30分間かけて滴下し、反応混合物を加熱還流下、1時間20分撹拌した。同条件下、3−エトキシ−2−シクロヘキセン−1−オン(53.1g)のテトラヒドロフラン(105mL)溶液を滴下し、さらに加熱還流下、2時間撹拌した。反応混合物に氷冷下、2mol/L塩酸(310mL)を滴下した。同条件下で15分撹拌後、反応混合物を酢酸エチル(800mL)で2回抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水(150mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、不溶物をろ去し、減圧下溶媒留去し、3−(2−メチルチオフェニル)−2−シクロヘキセン−1−オン(100g)を赤褐色の油状物として得た。
【0028】
1H−NMR(CDCl3)δ ppm:2.14−2.21(2H,m),2.45(3H,s),2.50(2H,t,J=7.3Hz),2.67(2H,td,J=6.0,1.6Hz),6.04(1H,t,J=1.6Hz),7.08(1H,dd,J=7.6,1.3Hz),7.18(1H,td,J=7.3,1.6Hz),7.27−7.35(2H,m)
【0029】
(参考例2)
3−(2−メタンスルホニルフェニル)−2−シクロヘキセン−1−オン
3−(2−メチルチオフェニル)−2−シクロヘキセン−1−オン(59.0g)、アセトン(500mL)および水(100mL)の混合物に、氷冷撹拌下、炭酸水素ナトリウム(195g)を加えた。続いてオキソン(登録商標)(446g)を25分間かけて添加し、室温下で3時間撹拌した。反応混合物に氷冷撹拌下、亜硫酸ナトリウム(26.5g)の水(170mL)溶液を添加し、25分間撹拌した。不溶物をセライトろ過し、セライトを酢酸エチルで洗浄した。ろ液を減圧下濃縮した。残留物に水(500mL)を加え、酢酸エチル(600mL)で2回抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水(200mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。不溶物をろ去後、減圧下溶媒留去し、3−(2−メタンスルホニルフェニル)−2−シクロヘキセン−1−オン(56.0g)を橙褐色の油状物として得た。
【0030】
1H−NMR(CDCl3)δ ppm:2.15−2.30(2H,m),2.54(2H,t,J=6.8Hz),2.65−2.75(2H,m),3.04(3H,s),5.94(1H,t,J=1.6Hz),7.24(1H,dd,J=7.6,1.1Hz),7.50−7.60(1H,m),7.60−7.70(1H,m),8.09(1H,dd,J=7.8,1.0Hz)
【0031】
(参考例3)
5−カルバモイル−2−メトキシベンゼンスルホニルクロリド
クロロスルホン酸(1733g)に氷冷撹拌下、4−メトキシベンズアミド(150g)を15分間かけて少しずつ加えた。その混合物を室温で14時間撹拌後、50℃でさらに1.5時間撹拌した。反応混合物を氷(7kg)に滴下し、析出物をろ取後、水、ヘキサンで洗浄して5−カルバモイル−2−メトキシベンゼンスルホニルクロリド(230g)を得た。
【0032】
1H−NMR(DMSO−d6)δ ppm: 3.81(3H,s),7.00(1H,d,J=8.5Hz),7.10(1H,brs),7.84(1H,dd,J=8.5,2.5Hz),7.87(1H,brs),8.23(1H,d,J=2.5Hz)
【0033】
(参考例4)
5−シアノ−2−メトキシベンゼンスルホニルクロリド
5−カルバモイル−2−メトキシベンゼンスルホニルクロリド(150g)の酢酸エチル(1.80L)懸濁液に、氷冷撹拌下、塩化チオニル(219mL)を滴下し、N,N−ジメチルホルムアミド(2.30mL)を加え、55℃にて3時間撹拌した。反応混合物を減圧下に濃縮後、残渣に酢酸エチルと水を加えた。分離した有機層を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に溶媒を留去した。得られた残渣を酢酸エチル−ヘキサンから再結晶し、5−シアノ−2−メトキシベンゼンスルホニルクロリド(86.8g)を得た。
【0034】
1H−NMR(CDCl3)δ ppm:4.16(3H,s),7.24(1H,d,J=8.8Hz),7.96(1H,dd,J=8.8,2.2Hz),8.28(1H,d,J=2.2Hz)
【0035】
(実施例1)
(3−ヒドロキシ−2’−メタンスルホニルビフェニル−4−イル)酢酸
97%硫酸(25.3mL)、水(50.7mL)および1,2−ジメトキシエタン(600mL)の混合物に、氷冷撹拌下、3−(2−メタンスルホニルフェニル)−2−シクロヘキセン−1−オン(118.9g)の1,2−ジメトキシエタン(360mL)溶液、グリオキシル酸・一水和物(131.2g)を順次加えた。反応混合物を加熱還流下、18時間撹拌した。室温まで放冷後、反応混合物に水(360mL)を加え、トルエン(300mL)で抽出した。水層をテトラヒドロフラン(360mL)およびトルエン(120mL)の混合溶媒でさらに3回抽出した。有機層を合わせ、2mol/L水酸化ナトリウム水溶液で2回抽出した。得られた水層に氷冷下、濃塩酸を加えてpH1に調節し、酢酸エチルで2回抽出した。合わせ有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。不溶物をろ去後、減圧下で溶媒留去し、黄褐色固体の(3−ヒドロキシ−2’−メタンスルホニルビフェニル−4−イル)酢酸(97.5g)を得た。
【0036】
1H−NMR(DMSO−d6)δ ppm:2.82(3H,s),3.53(2H,s),6.78(1H,dd,J=7.8,1.4Hz),6.85(1H,d,J=1.4Hz),7.18(1H,d,J=7.8Hz),7.39(1H,dd,J=7.5,1.0Hz),7.60−7.70(1H,m),7.70−7.80(1H,m),8.08(1H,dd,J=7.7,1.3Hz),9.70(1H,brs),12.17(1H,brs)
【0037】
(実施例2)
(3−ヒドロキシ−2’−メタンスルホニルビフェニル−4−イル)アセトアミド
(3−ヒドロキシ−2’−メタンスルホニルビフェニル−4−イル)酢酸(47.02g)のテトラヒドロフラン(380mL)溶液に、室温にて撹拌下、無水酢酸(72.4mL)を加え、50℃で2時間撹拌した。反応混合物に氷冷撹拌下、28%アンモニア水(187mL)を20分間かけて滴下し、滴下終了後、室温でさらに1時間撹拌した。有機層を分離後、水層を酢酸エチル(250mL)で3回抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水150mLで洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。不溶物をろ去後、ろ液を減圧下溶媒留去し、残留物に水(250mL)を加え、室温にて1時間撹拌した。得られた結晶を集め、水(100mL)で洗浄し、(3−ヒドロキシ−2’−メタンスルホニルビフェニル−4−イル)アセトアミド(30.4g)を淡褐色固体として得た。
【0038】
1H−NMR(DMSO−d6)δ ppm:2.83(3H,s),3.44(2H,s),6.79(1H,dd,J=7.8,1.5Hz),6.80−6.90(1H,m),7.03(1H,brs),7.15(1H,d,J=7.8Hz),7.38(1H,dd,J=7.5,1.0Hz),7.46(1H,brs),7.60−7.70(1H,m),7.70−7.80(1H,m),8.08(1H,dd,J=7.5,1.3Hz),9.96(1H,s)
【0039】
(実施例3)
2−(3−ヒドロキシ−2’−メタンスルホニルビフェニル−4−イル)エチルアミン
(3−ヒドロキシ−2’−メタンスルホニルビフェニル−4−イル)アセトアミド(3.78g)のテトラヒドロフラン(17ml)懸濁液に、氷冷撹拌下、0.93Mボラン・テトラヒドロフラン錯体のテトラヒドロフラン溶液(40.0mL)を10分間かけて滴下した。この反応混合物を室温で30分、続いて加熱還流下、3時間撹拌した。反応混合物に、氷冷撹拌下、2mol/L塩酸(25.0mL)を発泡に注意しながら滴下し、室温下30分、続いて50℃で30分撹拌した。反応混合物に、氷冷撹拌下、2mol/L水酸化ナトリウム水溶液(30.0mL)を加えてpH10に調節し、酢酸エチル(60mL)で3回抽出した。合わせた有機層を水(100mL)および飽和食塩水(100mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。不溶物をろ去後、減圧下溶媒留去し、粗生成物(2.98g)を得た。この粗生成物をトルエン−イソプロパノール(9:1;30.0mL)で洗浄し、2−(3−ヒドロキシ−2’−メタンスルホニルビフェニル−4−イル)エチルアミン(2.62g)を得た。
【0040】
1H−NMR(DMSO−d6)δ ppm:2.70(2H,t,J=5.7Hz),2.80(3H,s),2.80−2.90(2H,m),6.00−6.50(2H,brs),6.69(1H,dd,J=7.6,2.1Hz),6.73(1H,d,J=2.1Hz),7.05(1H,d,J=7.6Hz),7.37(1H,dd,J=7.6,1.2Hz),7.60−7.65(1H,m),7.65−7.75(1H,m),8.07(1H,dd,J=8.0,1.3Hz)
【0041】
(参考例5)
5−シアノ−N−[2−(3−ヒドロキシ−2’− メタンスルホニルビフェニル−4−イル)エチル]−2−メトキシベンゼンスルホンアミド
2−(3−ヒドロキシ−2’−メタンスルホニルビフェニル−4−イル)エチルアミン(120g)、テトラヒドロフラン(1.56L)、トリエチルアミン(287mL)およびメタノール(504mL)の混合物に、−15℃で撹拌下、5−シアノ−2−メトキシベンゼンスルホニルクロリド(95.41g)を7分間かけて添加し、反応混合物を同条件下で1.5時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮後、残渣にテトラヒドロフラン(960mL)を加えて溶解し、氷冷撹拌下、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液(1.25L)を滴下した。この混合物をトルエン(480mL)、続いてトルエン−テトラヒドロフラン(600mL)で2回洗浄した。水層に、氷冷撹拌下、2mol/L塩酸(660mL)を加えて酸性とし、酢酸エチル(570mL)で2回抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水(240mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。不溶物を濾過後、減圧下溶媒留去し、5−シアノ−N−[2−(3−ヒドロキシ−2’− メタンスルホニルビフェニル−4−イル)エチル]−2−メトキシベンゼンスルホンアミド(158.96g)を白色固体として得た。
【0042】
1H−NMR(CDCl3)δ ppm:2.69(3H,s),2.87(2H,t,J=6.9Hz),3.20−3.30(2H,m),3.98(3H,s),5.34(1H,t,J=5.7Hz),5.93(1H,s),6.88(1H,dd,J=7.6,1.6Hz),6.97(1H,d,1.6Hz),7.05−7.15(2H,m),7.33(1H,dd,J=7.6,1.3Hz),7.56(1H,td,J=7.6,1.3Hz),7.65(1H,td,J=7.6,1.3Hz),7.82(1H,dd,J=8.5,2.2Hz),8.15−8.25(2H,m)
【0043】
(参考例6)
[4−[2−(5−シアノ−2−メトキシベンゼンスルホニルアミノ)エチル]−2’−メタンスルホニルビフェニル−3−イルオキシ]酢酸エチル
5−シアノ−N−[2−(3−ヒドロキシ−2’−メタンスルホニルビフェニル−4−イル)エチル]−2−メトキシベンゼンスルホンアミド(5.72g)のN,N−ジメチルホルムアミド(57mL)溶液にN,N−ジイソプロピルエチルアミン(2.46mL)およびブロモ酢酸エチル(1.37mL)を加え、50℃で15時間撹拌した。反応混合物を水(100mL)に注ぎ、酢酸エチル(150mL)−トルエン(20mL)で抽出した。有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過した。ろ液を減圧下に濃縮し、残渣をアミノプロピル化シリカゲルクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)で精製し、アモルファスの[4−[2−(5−シアノ−2−メトキシベンゼンスルホニルアミノ)エチル]−2’−メタンスルホニルビフェニル−3−イルオキシ]酢酸エチル(2.96g)を得た。
【0044】
1H−NMR(CDCl3)δ ppm:1.28(3H,t,J=6.9Hz),2.59(3H,s),2.95(2H,t,J=6.6Hz),3.30−3.60(2H,m),3.99(3H,s),4.23(2H,q,J=6.9Hz),4.68(2H,s),5.43(1H,t,J=6.3Hz),6.95(1H,dd,J=7.6,1.6Hz),7.04(1H,d,J=1.6Hz),7.09(1H,d,J=8.5Hz),7.20(1H,d,J=7.6Hz),7.36(1H,dd,J=7.6,1.3Hz),7.57(1H,td,J=7.6,1.3Hz),7.65(1H,td,J=7.6,1.3Hz),7.80(1H,dd,J=8.5,2.2Hz),8.20−8.25(2H,m)
【0045】
(参考例7)
[4−[2−(5−シアノ−2−ヒドロキシベンゼンスルホニルアミノ)エチル]−2’−メタンスルホニルビフェニル−3−イルオキシ]酢酸エチル
[4−[2−(5−シアノ−2−メトキシベンゼンスルホニルアミノ)エチル]−2’−メタンスルホニルビフェニル−3−イルオキシ]酢酸エチル(4.62g)のN,N−ジメチルホルムアミド(40mL)溶液に塩化リチウム(1.03g)を加え、140℃で2時間撹拌した。反応混合物を室温に戻した後、酢酸エチル(60mL)−トルエン(6mL)−1mol/L塩酸(32mL)混合物に注いだ。有機層を分離し、有機層を1mol/L塩酸および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過した。ろ液を減圧下に濃縮し、残留物をアミノプロピル化シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸−酢酸エチル)で精製し、無色アモルファスの[4−[2−(5−シアノ−2−ヒドロキシベンゼンスルホニルアミノ)エチル]−2’−メタンスルホニルビフェニル−3−イルオキシ]酢酸エチル(3.67g)を得た。
【0046】
1H−NMR(DMSO−d6)δ ppm:1.14(3H,t,J=7.3Hz),2.71(3H,s),2.75−2.82(2H,m),3.07−3.16(2H,m),4.10(2H,q,J=7.3Hz),4.75(2H,s),6.90−6.95(2H,m),7.12(1H,d,J=8.5Hz),7.20−7.30(1H,m),7.38(1H,dd,J=7.6,1.3Hz),7.45−7.60(1H,brs),7.65(1H,td,J=7.6,1.3Hz),7.75(1H,td,J=7.6,1.3Hz),7.87(1H,dd,J=8.5,2.2Hz),8.01(1H,d,J=2.2Hz),8.07(1H,dd,J=7.6,1.3Hz),11.80−12.30(1H,br)
【0047】
(参考例8)
[4−[2−(5−カルバミミドイル−2−ヒドロキシベンゼンスルホニルアミノ)エチル]−2’−メタンスルホニルビフェニル−3−イルオキシ]酢酸エチル
[4−[2−(5−シアノ−2−ヒドロキシベンゼンスルホニルアミノ)エチル]−2’−メタンスルホニルビフェニル−3−イルオキシ]酢酸エチル(149mg)の飽和塩化水素−エタノール(1.0mL)懸濁液を室温下に3時間撹拌した。反応混合物を減圧下に濃縮した。残渣のエタノール(1.0mL)溶液に酢酸アンモニウム(206mg)を加え、室温下に13時間撹拌した。反応混合物を減圧下に濃縮して得た白色固体を水、酢酸エチル−エタノールで順次擦りつぶし、白色粉末の[4−[2−(5−カルバミミドイル−2−ヒドロキシベンゼンスルホニルアミノ)エチル]−2’−メタンスルホニルビフェニル−3−イルオキシ]酢酸エチル(141mg)を得た。
【0048】
1H−NMR(DMSO−d6)δ ppm:1.13(3H,t,J=7.3Hz),2.72(3H,s),2.75−2.85(2H,m),2.90−3.00(2H,m),4.09(2H,q,J=7.3Hz),4.76(2H,s),6.43(1H,d,J=8.9Hz),6.90−6.95(2H,m),7.20(1H,d,J=7.9Hz),7.39(1H,dd,J=7.6,1.3Hz),7.57(1H,dd,J=8.9,2.3Hz),7.65(1H,td,J=7.6,1.3Hz),7.74(1H,td,J=7.6,1.3Hz),7.85−8.15(4H,m),8.45−8.80(2H,br)
【0049】
(参考例9)
[4−[2−(5−カルバミミドイル−2−ヒドロキシベンゼンスルホニルアミノ)エチル]−2’−メタンスルホニルビフェニル−3−イルオキシ]酢酸・塩酸塩(化合物1)
[4−[2−(5−カルバミミドイル−2−ヒドロキシベンゼンスルホニルアミノ)エチル]−2’−メタンスルホニルビフェニル−3−イルオキシ]酢酸エチル(290mg)のアセトニトリル(1.0mL)溶液に2mol/L水酸化ナトリウム水溶液(0.756mL)を加え、室温下に30分間撹拌した。反応混合物に2mol/L塩酸(1.26mL)を加え、減圧下に濃縮した。残渣に水を加え、SAXに付し、水で洗浄し、10%1mol/L塩酸−アセトニトリルで溶出した。溶出液を減圧下に濃縮し、白色固体の[4−[2−(5−カルバミミドイル−2−ヒドロキシベンゼンスルホニルアミノ)エチル]−2’−メタンスルホニルビフェニル−3−イルオキシ]酢酸・塩酸塩(260mg)を得た。
【0050】
1H−NMR(DMSO−d6)δ ppm:2.73(3H,s),2.80(2H,t,J=7.3Hz),3.10(2H,t,J=7.3Hz),4.65(2H,s),6.85−6.95(2H,m),7.16(1H,d,J=7.6Hz),7.23(1H,d,J=8.3Hz),7.37(1H,dd,J=7.3,1.3Hz),7.66(1H,td,J=7.6,1.3Hz),7.75(1H,td,J=7.6,1.3Hz),7.89(1H,dd,J=8.3,2.1Hz)8.08(1H,dd,J=7.9,1.3Hz),8.17(1H,d,J=2.1Hz),8.91(2H,brs),9.28(2H,brs)
【0051】
(試験例1)
活性化血液凝固第X因子の阻害活性の測定
被験化合物として[4−[2−(5−カルバミミドイル−2−ヒドロキシベンゼンスルホニルアミノ)エチル]−2’−メタンスルホニルビフェニル−3−イルオキシ]酢酸・塩酸塩のジメチルスルホキシド溶液2.5μL、pH8.4の100mMトリス・200mM塩化ナトリウム緩衝液187.5μLおよび1mM S−2222(第一化学薬品株式会社製)水溶液50μLを分注し、ヒト活性化血液凝固第X因子(カルバイオケミ社製)をゼラチン−グリシン緩衝溶液で0.6U/mLに調製した溶液10μLを加えて、37℃で10分間インキュベートした。60%酢酸水溶液50μLを加えて反応を停止し、吸光度(405nm)をマイクロプレートリーダー(スペクトラマックス250,モレキュラーデバイス社製)を用いて測定した。
【0052】
被験化合物溶液の代わりにジメチルスルホキシド2.5μLを加えたものをコントロールとし、ヒト活性化血液凝固第X因子溶液の代わりにゼラチン−グリシン緩衝溶液10μLを加えたものをブランクとした。コントロールの吸光度を50%阻害するときの被験化合物の濃度(IC50)を求め、活性化血液凝固第X因子阻害活性の指標とした。その結果は表1に示した通りである。
【0053】
【表1】
【0054】
【発明の効果】
本発明の製造方法により、前記式(VI)で表される3−フェニル−2−シクロヘキセノン誘導体を出発原料として前記式(I)で表されるビフェニルエチルアミン誘導体を簡便かつ高収率で製造することができる。さらに該ビフェニルエチルアミン誘導体(I)を用いることにより、出発原料より極めて短い工程数で、しかも収率よく前記式(VIII)で表される5−アミジノ−2−ヒドロキシベンゼンスルホンアミド誘導体を製造することができ、該ビフェニルエチルアミン誘導体は活性化血液凝固第X因子阻害剤の製造中間体として極めて有用である。
Claims (6)
- 2−(3−ヒドロキシ−2’−メタンスルホニルビフェニル−4−イル)エチルアミンである、請求項1記載の化合物。
- (3−ヒドロキシ−2’−メタンスルホニルビフェニル−4−イル)酢酸、または(3−ヒドロキシ−2’−メタンスルホニルビフェニル−4−イル)アセトアミドである、請求項4記載の化合物。
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