以下、本発明に係る部品実装条件決定方法について、図面を参照しながら説明を行う。
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る部品実装条件決定方法を用いる部品実装装置100の外観図を示す。
部品実装装置100は、少なくとも、複数部品をフィーダ等の部品供給部から吸着するマルチノズル101aを備えたマルチノズルヘッド101と、部品供給部から供給された部品をマルチノズルヘッド101を用いて吸着した後に位置補正のための画像認識を行うラインカメラ102とを備えるものである。
図2は、部品実装装置100による部品実装について説明するための、部品実装装置100の内部構成を示す平面図である。
図2に示されるように、この部品実装装置100は、1つの基板20に対する部品実装を協調して行う2つの実装ロボットであるサブ設備110a及び120aを備える。サブ設備120aのマルチノズルヘッド101は、部品供給部115cからの部品の「吸着」、吸着した部品のラインカメラ102による「認識」及び認識された部品の基板20への「装着」という3つの一連の動作を繰り返すことにより、部品を基板20上に実装していく。
サブ設備110aのマルチノズルヘッド101も同様に、「吸着」、「認識」及び「装着」という3つの一連の動作を繰り返すことにより、部品を基板20上に実装していく。
ここで、2つのマルチノズルヘッド101が同時に部品の「装着」を行う際において、マルチノズルヘッド101同士の衝突を防ぐために、2つのマルチノズルヘッド101は、協調動作を行ないながら部品を基板20上に実装していく。具体的には、サブ設備120aのマルチノズルヘッド101が「装着」動作を行なっている際には、サブ設備110aのマルチノズルヘッド101は「吸着」動作及び「認識」動作を行なう。逆に、サブ設備120aのマルチノズルヘッド101が「吸着」動作及び「認識」動作を行なっている際には、サブ設備110aのマルチノズルヘッド101は「装着」動作を行なう。このように、「装着」動作を2つのマルチノズルヘッド101が交互に行なうことにより、マルチノズルヘッド101同士の衝突を防ぎつつ、短いタクトで部品実装を終えることができる。
図3は、マルチノズルヘッド101で吸着した部品について、同時に画像を取り込む部品又はノズルの集まりである「グループ」の概念を説明する参考図を示す。ここには、4つのグループA〜Dが示されている。
マルチノズルヘッド101においては、8つのノズルが4つずつ2列に配置されており、各ノズルを用いて電子部品の吸着処理を行う。なお、本実施の形態においては、各ノズルにノズル位置番号1から8を本図に示すように付与して説明を行う。また、本実施の形態では、許容される部品の認識方法は、その部品を吸着している吸着ノズルの種類に依存して決定される(許容される認識方法が制約される)ものとして、説明する。
本発明においては、部品認識回数を低減させるために、マルチノズルヘッド101でのノズルの配置をノズル1とノズル5、ノズル2とノズル6、ノズル3とノズル7、ノズル4とノズル8がそれぞれ同一の認識方法のノズル(つまり、同一グループのノズル)になるように配置し、ノズルの配置に対応させて部品供給部であるフィーダ(テーピング部品)を配置する。より詳しくは、図3において、マルチノズルヘッド101に吸着された最大8個の部品の画像認識を行うために、マルチノズルヘッド101がラインカメラ102上を(図3における右方向に)、スキャン(走査)する。この際、本発明に係る部品実装条件決定方法においては、図3に示すマルチノズルヘッド101における各グループA,B,C,Dに属するノズルが、それぞれ、ラインカメラ102によって同時に撮像できるノズルセットであるので、それら各グループに属するノズルが同一種類のノズルとなるように決定されている。
従って、画像認識を行うラインカメラにおいては、本図のAからDのグループに示すように、マルチノズルヘッドの移動経路の方向に垂直な方向である縦方向に並ぶ2つの部品に対して同じ認識方法で認識することができるので、2つの部品ごとに1回の画像認識で済む。その結果、マルチノズルヘッド101をラインカメラ102上に1回走査させるだけでマルチノズルヘッド101に吸着された全ての部品に対する認識処理を済ませることができ、認識タクトの低減を図ることが可能となる。
図4(a)は、本発明に係る部品実装条件決定方法を用いた画像認識方法の説明図である。本図に示すように、マルチノズルヘッド101のノズルの縦方向には同一の認識方法を用いるノズルが配置される。即ち、本図に示すように、縦方向で同一の認識方法となるように、例えば、図4(a)の実線丸印で示されるように、ノズル1及びノズル5(グループA)と、ノズル3及びノズル7(グループC)とは、認識方法が反射認識方法となるようにノズルの種類が決定されている。また、図4(a)の破線丸印で示されるように、ノズル2及びノズル6(グループB)と、ノズル4及びノズル8(グループD)とは、認識方法が透過認識方法となるようにノズルの種類が決定されている。このことにより、画像認識処理においては、各グループごとに1回の画像認識(撮像)で済むので、マルチノズルヘッド101がラインカメラ102上を1回だけ走査することで8個の全部品に対する画像認識処理を済ませることができる。
なお、図4(b)に示すように、マルチノズルヘッド101の同時に撮像できるグループ内に異なる認識方法を用いるノズルが配置されると、ラインカメラ102において各グループごとに一度に同時に画像を取り込むことができないために、図4(b)の矢印に示すように、例えば、行きの走査で反射認識方法の部品のみ認識し、戻りの走査で透過認識方法の部品のみを認識する必要がある。従って、図4(b)においては、マルチノズルヘッド101がラインカメラ102上を少なくとも2回走査する必要があり、認識タクトの短縮を図ることができない。本実施の形態では、図4(b)に示されるような非効率な認識処理が行われないように、各ノズルの配置が決定される。
図5は、部品実装装置の画像認識方法である反射認識方法及び透過認識方法を用いた場合に得られる認識画像の参考図である。
図5(a)は、透過認識方法により得られる画像501を示す。この透過認識方法においては、LED等から照射される照明光を電子部品の上方に位置する反射板に対して所定の照射角で入射して反射板によって反射された反射光が電子部品の背後から垂直方向にラインカメラに入射する。従って、認識される画像501は本図に示すように電子部品501aの像が影となる。画像認識処理においては、この画像から電子部品の外形を抽出し、電子部品の位置が検出される。また、この透過認識方法によって求められた位置認識結果に基づいて位置補正を行い基板上に電子部品が搭載される。
また、図5(b)は、反射認識方法により得られる画像502を示す。この反射認識方法においては、LED等から照射される照明光が電子部品の下面に所定の照射角で入射するように配置されており、電子部品によって反射された反射光は垂直方向にラインカメラに入射する。従って、認識される画像502は本図に示すように電子部品502aの像が明るく光るようになる。
なお、図5では、説明の便宜上、画像中に1個の部品だけが示されているが、本実施の形態では、画像認識によって得られる画像中には、少なくとも1つのグループに属する部品(少なくとも、マルチノズルヘッドの縦方向に並ぶ吸着ノズルによって吸着された2個の部品)が撮像される。つまり、画像認識においては、少なくとも1つのグループに属する部品が、透過認識方法又は反射認識方法によって同時に撮像される。
以上の説明のように、本発明に係る部品実装条件決定方法においては、マルチノズルヘッド101において、同時に撮像するグループである、縦方向に配置されるノズルの画像認識方法を同一とすることにより、画像認識装置上の走査を1回として、部品認識回数の低減及び部品の同時吸着率の向上を図り、認識タクトの短縮を図ることが可能となる。
(具体例)
以下、本発明に係る部品実装条件決定方法の動作手順を具体例と共にフローチャートを用いて説明する。
図6(a)は、本発明の部品実装条件決定方法の全体動作を説明するためのフローチャートである。ここでは、本実施の形態における部品実装装置100、あるいは、部品実装装置100と伝送路で接続されたコンピュータ等による部品実装条件の決定手順が示されている。
最初に、実装条件を決定する(S501)。本具体例における実装条件は、同一の撮像グループ(ノズルの配置の縦の並び)の部品が同一の認識方法になるような実装条件である。
次に、ステップS501において決定された実装条件を満足するように、マルチノズルヘッドにおける各ノズルの配列、そのノズル配列に対応した部品の配置を決定する(S502)。
図6(b)は、図6(a)におけるステップS502の詳細な手順、つまり、本発明に係る部品実装条件決定方法を用いて認識回数低減処理を図る場合の全体の動作手順を示すフローチャートである。なお、本図に示す各ステップの詳細は以下の図7から図13を用いて説明を行う。
最初に、マルチノズルヘッド101に並べる吸着ノズルの仮設定を行う処理である各部品の吸着ノズル仮設定を行う(S601)。次に、マルチノズルヘッド101に並べる吸着ノズルについて、各ノズルの種類毎のノズル本数を仮設定する処理であるノズル数仮設定を行う(S602)。また、目標となるターン数である目標ターン数を設定する(S603)。ここで、ターンとは、マルチノズルヘッドが部品供給部から部品を吸着し、ラインカメラ上を移動して基板上に部品を装着した後に、次に実装する部品を吸着するために部品供給部に戻るという一往復分の動作をいう。
次に、各ノズルの種類毎の数が偶数となるように、仮設定されたノズル数の補正を行い(S604)、その補正後に各部品の吸着ノズルを再設定し(S605)、マルチノズルヘッドにおける縦方向のノズルが同一認識方法のノズルとなるようにマルチノズルヘッドにおける部品実装時のノズル配置を決定し(S606)、決定したノズル配置に対応するように部品配置を決定する(S607)。
図7は、本発明に係る部品実装条件決定方法での各部品の吸着ノズル仮設定時の動作手順を示すフローチャートである。なお、本処理は図6(b)のステップS601の詳細な処理である。以下、本具体例では、図14に示すような部品を基板に実装するものとする。図14において、「NAME」は部品名(ここでは、PARTS1〜9)を示し、「実装数」は、その部品の個数を示し、「ノズル1」〜「ノズル3」は、その部品を吸着できるノズルの種類(ここでは、110ノズル、115ノズル、120ノズルの少なくとも1つ)を示し、「認識方法」は、その部品に対して適用可能な画像認識方法(ここでは、「反射」、「透過」)を示す。
最初に、単一ノズルのみ吸着可能な部品のノズルを設定する(S701)。すなわち、ステップS701においては、各部品を吸着するノズルの種類を設定するが、まず、その部品を吸着できるノズルが1種類しかない部品について、その部品を吸着するノズルとして、その唯一使用可能な吸着ノズルを設定する。具体的には、図15の「吸着ノズル」に示すように、その部品を吸着できるノズルが1種類しかない部品について、PARTS1に対しては110ノズル、PARTS7に対しては115ノズル、PARTS9に対しては120ノズルを設定する。
次に、吸着可能なノズルのうち、使用することが確定している最小サイズのノズルを設定する(S702)。具体的には、図16の「吸着ノズル」に示すように、残る部品(PARTS2〜6、PARTS8)、つまり、複数の種類のノズルで吸着することが可能な部品について、使用することが確定しているノズルである110ノズル、115ノズル、120ノズルのうちの最小サイズのノズルを設定する。なお、本具体例では、ノズルのサイズは、110ノズル、115ノズル、120ノズルの順に大きくなっていくものとする。
次に、吸着可能なノズルのうち、最小サイズのノズルを設定する(S703)。本具体例においては、上記ステップS702において、全ての部品に対して、使用することが確定しているノズルからの割り当てができたために、本ステップでの処理は不要となる。もし、上記ステップS702での処理対象となる部品において、使用することが確定しているノズルで吸着することができない部品が含まれる場合には、このステップS703において、「吸着ノズル」が1つ設定されることになる。
そして、ノズルiで吸着する部品総数(Pi)を設定(i=1〜K)する処理を行う(S704)。すなわち、部品総数の設定(算出)として、図16において示す「実装数」をノズルの種類毎に集計する処理を行う。なお、iは、ノズルの種類を識別する識別子であり、Kは、使用されるノズルの種類の総数、本具体例においては、K=3(110ノズル、115ノズル、120ノズルの3種類)である。また、各ノズルが吸着する部品の総数Piは、P1=44(110ノズル)、P2=12(115ノズル)、P3=8(120ノズル)となる。
図8は、本発明に係る部品実装条件決定方法でのノズル数仮設定時の動作手順を示すフローチャートである。なお、本図は図6(b)のノズル数仮設定(S602)の詳細な動作手順を示し、本具体例では、マルチノズルヘッドに搭載するノズル8本の種類の内訳を設定する処理手順を示す。
このノズル数仮設定においては、全部品を実装するのに必要なターン数が最小になるように、マルチノズルヘッドに搭載する各ノズルの種類ごとの数(内訳)を定める。つまり、マルチノズルヘッドに搭載されるノズルiの数をNoi、ノズル総数をN(本具体例では、8)とし、ΣNoi=NかつMAX(Pi/Noi)が最小となるNoiを以下の手順で求める。
まず、ノズル数初期化Noi=1(S801)を行う。具体的には、図17の第2列目に示すようにN01〜N03を1に設定する。なお、図17において、P1〜P3は、各ノズルの種類毎に吸着される部品総数を示し、N01〜N03は、マルチノズルヘッドに搭載される各ノズルの種類毎のノズル数(変数)を示し、ΣNiは、それら変数N01〜N03の合計数を示し、P1/N1、P2/N2、及びP3/N3は、各ノズルの種類毎の、吸着される総部品数とノズル数N0iとの比、つまり、そのノズルで対象部品の全てを実装し終えるのに必要なターン数を示している。
次に、Pi/Noi(つまり、ノズルiについて必要なターン数)が最大のiに対し(条件を満たすiが複数ある場合、Piが小さいものを優先、さらに複数ある場合はサイズの大きいノズルを優先)、Noi=Noi+1とする(S802)。具体的には、ノズル数仮設定時の計算結果である図17の第2列目に示すように、P1/N1が44で最大であり、このN1ノズルの数を1つ増やしてΣNoiおよびPi/Noiの再計算を行う。これは、全部品を実装するのに必要なターン数が、P1/N1、P2/N2、P3/N3のうちの最大値となることから、ターン数が最大のノズルの数を増加させることで、P1/N1、P2/N2、P3/N3を平準化させ、これにより、より少ないターン数で部品を実装できるノズル種類の内訳を決定するためである。
そして、ΣNoi=Nとなる場合まで処理を行う(S803)。具体的には、図17の第3列目〜第8列目に示すように、ノズルの数の合計ΣNoiが8となるまで処理を繰り返す。
このようにして、図17の第8列目に示すように、3種類のノズルの合計数ΣNoiが8となり、ターン数となるP/Nが最小となる各種類のノズルの数を決定する。決定されたノズル数の仮設定は、図17の第8列目に示すように110ノズルの数N01=5、115ノズルの数N02=2、120ノズルの数N03=1となる。
図9は、本発明に係る部品実装条件決定方法での目標ターン数設定時の動作手順を示すフローチャートである。なお、本図は図6(b)の目標ターン数設定(S603)の詳細な動作手順を示すものである。
最初に、目標ターン数=ΣPi/ΣNoiの切り上げ処理(S901)を行う。即ち、本ステップにおいては、総実装点数をマルチノズルヘッドに搭載する総ノズル数で除すること、つまり、マルチノズルヘッドで部品をフル搭載した場合に、最低何回のマルチノズルヘッドの往復(ターン数)で済むかを計算する処理を行う。具体的には、部品総数ΣPiである64をノズル総数ΣNoiである8で割り、64/8の切り上げである8を目標ターン数として設定する。この目標ターン数は、全てのターン(最後のターンを除く)においてマルチノズルヘッドに部品を満載(本具体例では、8個の部品を吸着)して実装した場合の理想的なターン数である。
図10は、本発明に係る部品実装条件決定方法でのノズル数補正時の動作手順を示すフローチャートである。なお、本図は図6(b)のノズル数補正(S604)の詳細な動作手順を示すものである。なお、本発明に係る部品実装条件決定方法おいては、同時に撮像するグループ(縦2個)のノズルの種類を同一にするために、各種類のノズル数を全て偶数に補正する処理を行う。
最初に、初期化Ni=Noi、i=1(ここで、iはノズルの種類を特定する変数、Noiは補正前のノズルiの数、Niは補正後のノズルiの数とする)を行う(S1001)。具体的には、ノズル数仮設定時に設定された110ノズルの数N01=5、115ノズルの数N02=2、120ノズルの数N03=1、であり、ここでは、i=1とし、つまり、110ノズルから処理を行う。
次に、Niは奇数か否か(S1002)、さらに、全ての種類のノズルの中で、ノズルiの数Niは最大か否か(S1003)を判断する。その結果、Niが奇数でない場合には(S1002でN)、そのノズルiに対する個数の補正処理(S1003〜S1005)をしないが、Niが奇数の場合には(S1002でY)、そのノズルiに対する個数の補正処理(S1003〜S1005)をする。つまり、Niが奇数で(S1002でY)、かつ、Niが最大の場合においては(S1003でY)、最大であるノズルiの数Ni=Ni−1とするとともに、他のノズルjを対象として、ノズルの数Njが奇数でPj/Njが最大のノズルjの数を1つ増やすために、Nj=Nj+1(S1004)の処理を行う。一方、Niが奇数で(S1002でY)、かつ、Niは最大でない場合においては(S1003でN)、最大でないノズルiの数Ni=Ni+1とするとともに、他のノズルjを対象として、ノズルの数Njが奇数でPj/(Nj−1)が最小のノズルjの数を1つ減らすために、Nj=Nj−1(S1005)の処理を行う。なお、本具体例では、ノズルの合計数が偶数(8)であることから、対象ノズルの個数Niが奇数である場合には、個数が奇数である他のノズルjが必ず存在するので、ステップS1004およびS1005の処理が可能となる。
続いて、次の種類のノズルに対するノズル数補正を行うために、i=i+1とし(S1006)、i>K(S1007でY)となるまで処理を繰り返して行う。
具体的には、ループ1回目では、N01が奇数か否かを確認し、本具体例では、N01=5(奇数)であるために(S1002でY)、続いて、Niは最大か否かを確認し、N01=5で最大であるために(S1003でY)、N01=N01−1=5−1=4、N03=N03+1=1+1=2(S1004)と補正される。また、S1007のループ2回目においては、S1006においてi=2とし、N2ノズルである115ノズルに関して同様のノズル数補正処理を行う。ここでは、115ノズルについては、ノズル数N02=2は偶数であるために、S1002でNとなる。さらに、S1007のループ3回目ではi=3となり、120ノズルの数N03=2で偶数となっているためにS1002でNとなる。その後、S1006においてi=4となり、S1007においてi(4)>K(3)となるためにループ処理が終了し、本図に示すノズル数補正処理の結果として、110ノズルの数N01=4、115ノズルの数N02=2、120ノズルの数N03=2と補正される。
このように、ノズル数の補正処理では、マルチノズルヘッドに搭載されるノズルの種類ごとの個数を偶数に補正するために、ノズルの合計数を維持したまま、奇数個のノズルの数を1だけ増加/減少させて、偶数個に変更している。つまり、対象となるノズルの個数を増加させ、かつ、他のノズルの個数を減少させるか、あるいは、その反対の処理(対象となるノズルの個数を減少させ、かつ、他のノズルの数を増加させる処理)をしている。その際に、ノズルの個数を減少させることがターン数を増加させることにつながることを考慮し、できるだけターン数が増加させないように、マルチノズルヘッドに搭載する個数が最大のノズル、および、ターン数が最小のノズルの個数を減少させている。
図11は、本発明に係る部品実装条件決定方法での各部品の吸着ノズル再設定時の動作手順を示すフローチャートである。なお、本図は図6(b)の吸着ノズル再設定時(S605)の詳細な動作手順を示すものである。
最初に、各ノズルの理想吸着部品数(Pdi)を設定する(S1101)。ここで、理想吸着部品数(Pdi)とは、そのノズルiが吸着すべき部品の数として理想的な値であり、全実装部品数をノズルの種類毎のノズル数で比例配分して得られる部品数、つまり、理想吸着部品数Pdi=ΣPi×Ni/ΣNiであり、本具体例では、110ノズルの理想吸着部品数Pd1=64×4/8=32、115ノズルの理想吸着部品数Pd2=64×2/8=16、120ノズルの理想吸着部品数Pd3=64×2/8=16が設定される。
次に、単一ノズルのみ吸着可能な部品のノズルを設定する(S1102)。具体的には、図18の「吸着ノズル」に示すように、PARTS1に対応する110ノズル、PARTS7に対応する115ノズル、PARTS9に対応する120ノズルが設定される。
また、吸着可能部品数が理想吸着部品数以下の部品のノズルを設定する(S1103)。本具体例では、110ノズルの吸着可能部品数=20+4+8+4+4+4=44、115ノズルの吸着可能部品数=4+8+4+4+4+8+4=36、120ノズルの吸着可能部品数=4+4+4+4+8=24であり、それぞれの理想吸着部品数は、上記ステップ1101で、Pd1=32、Pd2=16、Pd3=16と算出されているので、吸着可能部品数が理想吸着部品数以下のノズルが存在しないため、このステップS1103では何も処理されない。
そして、装着数P(図18等における「実装数」)が多い部品から順に(同一条件が複数ある場合は部品名称昇順)、Pdi≧Pi+Pを満たす最小サイズのノズルを設定する(S1104)。具体的には、ノズル毎の実装数Piに、(i)〜(vi)の順に部品ごとの実装数をPdiを超えるまで加算する処理を行い、各部品に対して設定される吸着ノズルの関係を示す図19の(i)〜(vi)の各番号に示すように、単一ノズルのみ吸着可能な部品以外を用いて、(i)PARTS3を110ノズルに設定することで、110ノズルの部品吸着数P1=20+8=28(ここで、「20」は、その部品の処理を行う前時点でのノズル毎の実装数であるPiの値であり、それに処理対象である「PARTS3」の実装数「8」を加算している)、115ノズルの部品吸着数P2=8、120ノズルの部品吸着数P3=8を設定する。なお、この算出結果ではP1は「28」であり、まだ理想吸着部品数Pd1「32」を超えていない。次に、(ii)PARTS2を110ノズルに設定、P1=28+4=32、P2=8、P3=8を算出し、この算出結果ではP1は「32」となり、理想吸着部品数Pd1「32」に達するためP1=32を決定し、以下同様に、(iii)PARTS4を115ノズルに設定、P1=32、P2=8+4=12、P3=8(iv)PARTS5を115ノズルに設定、P1=32、P2=12+4=16、P3=8を算出する。ここで、P2が「16」となり、理想吸着部品数Pd2「16」に達するためにP2=16を決定する。また、(v)PARTS6を120ノズルに設定、P1=32、P2=16、P3=8+4=12(vi)PARTS8はPdi≧Pi+Pを満たす最小サイズのノズルなし、P1=32、P2=16、P3=12として設定する。なお、この場合、PARTS8を吸着するノズルが決定されていない。
次に、上記ステップS1104でノズルが決定されなかった部品について、装着数Pが多い部品から順に、(Pi+P)/Niが最小のノズルを設定する(S1105)。具体的には、図20(a)に示すように、吸着するノズルが決定されていないPARTS8について吸着可能なノズルは110ノズルと115ノズルであり、(Pi+P)/Niが最小のノズルは図20(b)に示すように110ノズルとなるため、PARTS8には110ノズルを割り付け、P1=32+4=36、P2=16、P3=12が設定される。
そして、Pdi<Piかつ目標ターン数<Pi/Niを満たすノズルiのうち、ノズルiで吸着する予定の部品C(装着数:Pc)を他のノズルjで吸着させても(Pj+Pc)/Nj≦目標ターン数を満たすならば、部品Cの吸着ノズルをノズルiからノズルjに変更する(S1106)。具体的には、図21(a)に示すように、Pdi<Piかつ目標ターン数<Pi/Niを満たすノズルiは110ノズルであり、図21(b)に示すように、110ノズルで吸着する予定の部品はPARTS1,2,3,8の4部品であり、図21(c)に示すように、そのうち他のノズルでも吸着できる部品はPARTS2,3,8の3部品であることから、これらPARTS2,3,8の3部品について、ノズルの種類の変更が可能か否かを検討する。例えば、PARTS2(Pc=4)について、吸着ノズルを115ノズルに変更した場合、(Pj+Pc)/Nj=(16+4)/2=10>目標ターン数(8)となり、吸着ノズルを120ノズルに変更した場合、(Pj+Pc)/Nj=(12+4)/2=8≦目標ターン数(8)となる。従ってPARTS2を吸着するノズルを110ノズルから120ノズルに変更でき、その結果、P1=36−4=32、P2=16、P3=12+4=16となる。以下、同様にして、各部品の吸着ノズルの再設定の結果より、各部品の割付ノズルは図22(a)に示す通りとなる。
次に、補正後よりも補正前のほうがターン数が少ないか否かを確認する処理(S1107)を行う。具体的には、図22(b)に示すように、補正後の最大ターン数(Pi/Ni)は、「補正後ターン数(Pi/Ni)」の内から8、補正前の最大ターン数(Pi/Noi)は、「補正前ターン数(Pi/Noi)」の内から16となり、従って補正後のほうがターン数が少ない。よって、このケースでは、ノズル数を補正前のものに戻すことなく(ステップS1107でN)、補正後のノズル数(110ノズルの数N01=4、115ノズルの数N02=2、120ノズルの数N03=2)で処理を終了する。なお、補正前のほうがターン数が少ない場合には(S1107でY)、ノズル数を補正前に戻すNi=Noi(S1108)の処理を行う。
図12は、本発明に係る部品実装条件決定方法でのノズル配置時の動作手順を示すフローチャートである。なお、本図は図6(b)のノズル配置時(S606)の詳細な動作手順を示すものである。
最初に、全ての種類のノズルについて、ノズル数は全て偶数か否かを確認し(S1201)、偶数の場合には(S1201でY)、マルチノズルヘッドにおける2列のノズル配置が同じになる(縦方向に同一の種類のノズルが配置される)ようにノズル数の多いものから配置し(S1202)、一方、ノズル数の全てが偶数でない場合には(S1201でN)、ノズル数が偶数のノズルについてはノズル位置が同じに(縦方向に並ぶ)なるように配置し、ノズル数が奇数のノズルについては、ノズル位置番号順に配置する(S1203)。具体例においては、110ノズルの数N01=4、115ノズルの数N02=2、120ノズルの数N03=2と、本発明の部品実装条件決定方法により決定されたノズル数が全て偶数となっているために、図22(c)に示すように、図3に示すノズル配置番号に従って、ノズル1に110ノズル、ノズル2に110ノズル、ノズル3に115ノズル、ノズル4に120ノズル、ノズル5に110ノズル、ノズル6に110ノズル、ノズル7に115ノズル、ノズル8に120ノズルが配置される。
図13は、本発明に係る部品実装条件決定方法での部品配置決定時の動作手順を示すフローチャートである。なお、本図は図6(b)の部品配置決定(S607)の詳細な動作手順を示すものである。
最初に、縦方向の2列のノズル配置が同じかを確認する(S1301)。そして、2列のノズル配置が同じ場合には(S1301でY)、1列のそれぞれのノズルに目標ターン数×2の部品数を割り当てる(S1302)。本具体例では、ノズル位置番号1〜4のノズルに16(目標ターン数(8)×2)の部品数のノズルを割り当てる。一方、2列のノズル配置が同じでない場合には(S1301でN)、全てのノズルに目標ターン数の部品数を割り当てる(S1303)。
次に、部品を割り当てるノズル位置の初期化を行う(S1304)。そして、ノズル位置番号のノズルで吸着する部品で、ノズルへ未割り付けの部品のうち、装着数が最も多い部品C(装着数:P)(同一条件が複数ある場合には部品名称昇順)の選択を行い(S1305)、該当するノズル位置番号のノズルに割当残数があるかを確認し(S1306)、次に、装着数P≦割当残数かを確認し(S1307)、装着数P≦割当残数の場合には(S1307でY)、部品を全て割り当てる処理(S1308)を行い、装着数P≦割当残数でない場合には(S1307でN)、部品の割り当て残数分だけ割り当てる処理を行う(S1309)。
次に、全部品の割り当て完了かの確認処理を行い(S1310)、全部品の割り当てが完了していない場合には(S1310でN)、ノズル位置番号を更新したうえで(S1311)、ステップS1305以下の処理を繰り返す。
本具体例では、第1回目の部品割当処理を示す図23に示すように、ノズル位置の初期化によりノズル位置番号=1を設定し(S1304)、ノズル位置番号1の110ノズルで吸着する部品で、装着数が最も多いPARTS1(装着数:20)を選択し(S1305)、ノズル位置番号1のノズルには未だ何も部品が割り付けられていないため、ノズル位置番号1の割当残数が16となり(S1306でY)、装着数Pが割り当て残数以下かを確認すると(S1307)、装着数P(20)が割当残数(16)以上であるために(S1307でN)、装着数が最も多い部品C(ここでは、PARTS1)の割り当て残数分(ここでは、16)だけ割り当てる処理を行う(S1309)。つまり、ノズル位置番号1のノズルにPARTS1を16だけ割り当てる。なお、図23(a)は、部品割り当て前の各部品と実装数との関係(未割当部品の一覧)を示し、図23(b)は、ノズル位置番号1のノズルへの部品の割り当て結果を示す。
そして、全部品の割り当てを完了したか否かを確認し(S1310)、全部品の割り当てが完了していないために(S1310でN)、以下、図24から図34に示すように、ノズル位置番号を更新して(S1311)、ステップS1305以下の処理を繰り返して行うことにより部品配置の決定処理を行う。
つまり、図24(a)は、第1回目の部品割り当て(図23)後における未割当部品の一覧を示し、図24(b)は、第2回目の部品割り当て(ノズル位置番号2のノズルへの部品の割り当て)結果を示す。図25(a)は、第2回目の部品割り当て(図24)後における未割当部品の一覧を示し、図25(b)は、第3回目の部品割り当て(ノズル位置番号3のノズルへの部品の割り当て)結果を示す。図26(a)は、第3回目の部品割り当て(図25)後における未割当部品の一覧を示し、図26(b)は、第4回目の部品割り当て(ノズル位置番号4のノズルへの部品の割り当て)結果を示す。図27は、第4回目の部品割り当て(図26)後における未割当部品の一覧、つまり、第一巡目の部品割り当てを終えた直後における未割当部品の一覧を示す。
第二巡目に入り、第5回目の部品割り当てでは、ノズル位置番号1のノズルへの部品割り当て残数は0となっているために、割り当て処理は行われない。図28(a)は、第5回目の部品割り当て後、つまり、第4回目の部品割り当て(図26)後における未割当部品の一覧(図27と同一の図)を示し、図28(b)は、第6回目の部品割り当て(ノズル位置番号2のノズルへの部品の割り当て)結果を示す。図29(a)は、第6回目の部品割り当て(図28)後における未割当部品の一覧を示し、図29(b)は、第7回目の部品割り当て(ノズル位置番号3のノズルへの部品の割り当て)結果を示す。図30(a)は、第7回目の部品割り当て(図29)後における未割当部品の一覧を示し、図30(b)は、第8回目の部品割り当て(ノズル位置番号4のノズルへの部品の割り当て)結果を示す。図31は、第8回目の部品割り当て(図30)後における未割当部品の一覧、つまり、第二巡目の部品割り当てを終えた直後における未割当部品の一覧を示す。
第三巡目に入り、第9回目の部品割り当てでは、ノズル位置番号1のノズルへの部品割り当て残数は0となっているために、割り当て処理は行われない。図32(a)は、第9回目の部品割り当て後、つまり、第8回目の部品割り当て(図30)後における未割当部品の一覧(図31と同一の図)を示し、図32(b)は、第10回目の部品割り当て(ノズル位置番号2のノズルへの部品の割り当て)結果を示す。図33(a)は、第10回目の部品割り当て(図32)後における未割当部品の一覧を示し、図33(b)は、第11回目の部品割り当て(ノズル位置番号3のノズルへの部品の割り当て)結果を示す。図34(a)は、第11回目の部品割り当て(図33)後における未割当部品の一覧を示し、図34(b)は、第12回目の部品割り当て(ノズル位置番号4のノズルへの部品の割り当て)結果を示す。
図35は、本具体例の部品配置において決定された吸着シーケンスを示し、全8回のターンのうちの各ターンにおけるノズルの配置と、吸着される部品の関係が記述されている。ここで、図35の最左欄の数値「1」〜「8」は、ターン番号を示し、各ターン番号を含む行中に記述された数値「1」〜「8」は、そのターンにおけるマルチノズルヘッドのノズル位置番号を示すとともに、そのノズル位置番号に装着される吸着ノズルの種類(図35の第1行目)と部品の種類(図35の第2行目)が示されている。例えば、第1回目のターンでは、マルチノズルヘッドのノズル位置番号1および5には110ノズルが配置されてPARTS1が吸着され、ノズル位置番号2および6には110ノズルが配置されてPARTS3が吸着され、ノズル位置番号3および7には115ノズルが配置されてPARTS7が吸着され、ノズル位置番号4および8には120ノズルが配置されてPARTS9が吸着されることが示されている。このような吸着シーケンスに従ってマルチノズルを用いた部品供給部からの部品の吸着処理が行われる。
以上、本具体例に示すように、本発明に係る部品実装条件決定方法に基づきマルチノズルヘッドを用いて部品の吸着処理を行う際に、各ノズルの種類ごとの数を偶数に設定して、縦方向に同じ認識方法を用いるノズルを配置でき、画像認識処理における認識タスクを最小限に抑えて、より効率的に基板上への部品実装を実現できる。
なお、本具体例は各部品の実装点数が偶数で、同時に撮像するグループ内の部品を同一フィーダから供給される同じ部品としたが、少なくとも1つの実装点数が奇数の場合は、実装点数が2点以上の部品は残り実装点数が1点になるまで本具体例の通りに同時に撮像するグループ内の部品を同一フィーダから選択し、実装点数1点の部品を、前記実装点数が2点以上の残り部品の吸着ノズルおよび認識方式の配置と同じになるように配置すればよい。
また、本実施の形態では、マルチノズルヘッドの吸着ノズルは、4個/列×2列の吸着ノズルで構成されたが、本発明は、このような構成に限定されるものではない。例えば、4個/列×3列の吸着ノズルで構成される場合には、縦方向に並ぶ3個の吸着ノズル(あるいは、部品)について、同一の認識方法となるように、吸着ノズルの配置(あるいは、部品の配列)を決定すればよい。
また、本実施の形態では、縦方向の1列に並ぶ吸着ノズル(2個)について、同一の認識方法となるように実装条件が決定されたが、同一の認識方法に統一しておく対象(吸着ノズル)としては、1列に限られず、2列以上であってもよい。例えば、部品実装装置が備える画像認識装置の仕様として、マルチノズルヘッドに吸着された2行2列の部品に対して同一の認識方法(1回の撮像)による部品認識が可能であるならば、2行2列の単位で、同一の認識方法の部品が吸着されることとなるように、吸着ノズルや部品配置等の実装条件を決定してもよい。つまり、1回の部品認識で認識される対象となる部品(グループ)の単位で、部品の実装条件を決定してもよい。