この特許出願は、米国仮特許出願通番第60/556,464号、2004年3月25日出願、米国仮特許出願通番第60/552,959号、2004年3月12日出願および米国仮特許出願通番第60/469,555号、2003年5月9日出願からの優先権の利益を請求し、この各々を、この全体において、参照により本明細書中に導入する。
発明の分野
本発明は、抗Ovr110抗体組成物およびOvr110を発現する卵巣癌細胞、膵臓癌細胞、肺癌細胞または乳癌細胞を死滅させる方法に関する。
発明の背景
卵巣の癌は、米国における女性における癌死亡の4番目に一般的な原因であり、23,000を超える新たな症例および約14,000人の死亡が、2001年について予測される。Shridhar, V. et al., Cancer Res. 61(15): 5895-904 (2001); Memarzadeh, S. & Berek, J. S., J. Reprod. Med. 46(7): 621-29 (2001)。卵巣癌の発生率は、世界的に重大な懸念であり、191,000と概算される新たな症例が、毎年予測される。Runnebaum, I. B. & Stickeler, E., J. Cancer Res. Clin. Oncol. 127(2): 73-79 (2001)。不都合なことに、卵巣癌を有する女性は、典型的に、疾患が転移するまで無症候性である。卵巣癌についての有効なスクリーニングが、入手可能ではないため、診断された女性の約70%が、癌の進行した段階を有し、5年生存率は〜25〜30%である。Memarzadeh, S. & Berek, J. S., 上記;Nunns, D. et al., Obstet. Gynecol. Surv. 55(12): 746-51。逆に、初期の段階の卵巣癌を有すると診断された女性は、顕著に一層高い生存率を享受している。Werness, B. A. & Eltabbakh, G. H., Int'l. J. Gynecol. Pathol. 20(1): 48-63 (2001)。
卵巣癌の病因論の本発明者らの理解は、不完全であるが、この領域における大規模な研究の結果は、年齢、遺伝的特徴、生殖的および食事性/環境的要因の組み合わせを指摘している。年齢は、卵巣癌の発生における重要な危険因子である:30歳前の卵巣癌の発生についての危険は低い一方、卵巣癌の発生率は、30〜50歳の間に直線状に上昇し、その後一層遅い速度で上昇し、最高の発生率は、70歳代の女性である。Jeanne M. Schilder et al., Heriditary Ovarian Cancer: Clinical Syndromes and Management, Ovarian Cancer 182 (Stephen C. Rubin & Gregory P. Sutton編、第2版、2001)中。
遺伝的要因に関して、卵巣癌の家族履歴は、当該疾患の発生における最も顕著な危険因子であり、当該危険は、罹患した家族の数、該家族の該女性に対する関係の程度に依存し、特に第1の程度の関係は、当該疾患により影響される。同上。いくつかの遺伝子における突然変異は、卵巣癌に関連しており、これには、両方が乳癌の発生において重要な作用を奏しているBRCA1およびBRCA2、並びに両方が遺伝性非ポリープ症結腸癌と関連しているhMSH2およびhMLH1が含まれる。Katherine Y. Look, Epidemiology, Etiology, and Screening of Ovarian Cancer, Ovarian Cancer 169, 171-73 (Stephen C. Rubin & Gregory P. Sutton編、第2版、2001)中。染色体17上に位置するBRCA1および染色体13上に位置するBRCA2は、DNA修復に関係する腫瘍抑制遺伝子であり;これらの遺伝子における突然変異は、卵巣癌の約10%と関連する。同上の171〜72;Schilder et al., 上記の185〜86。hMSH2およびhMLH1は、DNAミスマッチ修復に関連し、それぞれ染色体2および3上に位置する;遺伝性卵巣癌腫の約3%は、これらの遺伝子における突然変異のためであると報告されている。Look,上記の 173;Schilder et al.,上記の184、188〜89。
生殖的要因はまた、卵巣癌の増大したか、または低下した危険と関連している。遅い閉経、未産婦および初経における早期の年齢は、すべて、卵巣癌の上昇した危険と関連している。Schilder et al., 上記の182。1つの理論は、これらの因子により、女性の生命の経過にわたり、排卵サイクルの数が増大し、「絶え間のない排卵」がもたらされると仮定し、これは、卵巣上皮に対する突然変異の主要な原因であると考えられている。同上;Laura J. Havrilesky & Andrew Berchuck, Molecular Alterations in Sporadic Ovarian Cancer, Ovarian Cancer 25 (Stephen C. Rubin & Gregory P. Sutton編、第2版、2001)中。突然変異は、排卵の結果、当該上皮の破壊および修復が生じ、増大した細胞分裂が必要であり、これにより、検出されない突然変異が生じる可能性が増大するという事実により説明され得る。同上。この理論についての支持は、すべてが排卵を抑制する妊娠、授乳および経口避妊薬の使用により、卵巣癌を発生することに関する保護効果が付与されるという事実において、見出され得る。同上。
食事性/環境的要因の中で、動物性脂肪または赤肉の多量の摂取と卵巣癌との間に、関連があると見られる一方、遊離基形成を防止し、また正常な細胞分化を維持するのを補助する酸化防止剤のビタミンAは、保護効果を提供し得る。Look, 上記の169。報告はまた、アスベストおよび含水三ケイ酸マグネシウム(タルク)に関連しており、この後者は、隔壁および生理用ナプキン中に存在し得る。同上の169〜70。
卵巣癌についての現在のスクリーニング手順は、ある有用性がある一方、これらの診断的能力において極めて限定されており、疾患が典型的に尚無症候性である際に、癌進行の初期段階において特に緊急である問題が、最も容易に対処される。Walter J. Burdette, Cancer: Etiology, Diagnosis, and Treatment 166 (1998); Memarzadeh & Berek, 上記;Runnebaum & Stickeler, 上記;Werness & Eltabbakh, 上記。一般的に用いられているスクリーニング試験には、年2回の直腸膣骨盤試験、CA−125血清腫瘍マーカーを検出するためのラジオイムノアッセイおよび経膣的超音波検査が含まれる。Burdette, 上記の166。
骨盤試験によっては、初期の診断の適切な数が得られておらず、他方の方法は、十分正確ではない。同上。1つの研究により、卵巣癌を罹患している患者のわずか15%が、当該患者の骨盤試験の時点において疾患を有すると診断されたことが報告された。Look, 上記の174。さらに、CA−125試験は、閉経前の女性において誤った陽性を示す傾向があり、閉経後の女性において予測的価値が低いことが報告された。同上の174〜75。経膣的超音波検査は、現在では、卵巣癌をスクリーニングするための好ましい手順であるが、良性の、および悪性の腫瘍を確実に区別することはできず、また卵巣の大きさが正常である場合には、主な腹膜の悪性度または卵巣癌を位置させることができない。Schilder et al., 上記の194〜95。BRCA1、BRCA2、hMSH2およびhMLH1遺伝子の突然変異についての遺伝子的試験は、現在入手可能であるが、これらの試験は、数人の患者については費用がかかりすぎることがあり、また誤った陰性の、または不確定な結果を生じ得る。Schilder et al., 上記の191〜94。
上昇された血清CA125レベルは、見込みのあるコホート研究において、卵巣癌の増大した発生率と関連していた。Jacobs, I.J., et al., Risk of diagnosis of ovarian cancer after raised serum CA 125 concentration: a prospective cohort study. Bmj, 1996. 313(7069): p. 1355-8。CA125は、上皮性卵巣癌腫を有する患者をモニタリングするために臨床的に用いられている、腫瘍関連抗原である。約9,320人の閉経後の女性が、CA125アッセイについて初期のスクリーニングおよび平均で2.8回の年1回ののスクリーニングを受けており、平均で6.8年追跡された。49種の癌が同定された。少なくとも30U/mLの血清CA125濃度は、スクリーニング後の最初の年の間に、35.9(95%信頼区間(CI)18.3〜70.4)の相対的危険およびスクリーニング後の5年の間に、14.3(95%CI 8.5〜24.4)の相対的危険と関連していた。100U/mLのCA125濃度において、相対的危険は、それぞれ204.8および74.5であった。30U/mLより低いCA125レベルを有する女性は、それぞれ0.13および0.54の危険を有していた。
他の関連するマーカーは、HE4およびメソセリン(mesothelin)である。Urban et al. Ovarian cancer screening Hematol Oncol Clin North Am. 2003 Aug;17(4):989-1005; Hellstrom et al.、HE4(WFDC2)タンパク質は卵巣癌についての生物マーカーである、Cancer Res. 2003 Jul 1;63(13):3695-700; Ordonez, 腫瘍診断におけるメソセリン免疫染色の適用、Am J Surg Pathol. 2003 Nov;27(11):1418-28を参照。
手術的探索により達成された卵巣癌の段階分類は、当該疾患の処置および管理の経過を決定するにあたり、臨界的に重要である。AJCC Cancer Staging Handbook 187 (Irvin D. Fleming et al.編、第5版、1998); Burdette, 上記の170;Memarzadeh & Berek, 上記;Shridhar et al., 上記。段階分類は、International Federation of Gynecology and Obstetricsにより開発された分類システムを参照して行われる。David H. Moore, Primary Surgical Management of Early Epithelial Ovarian Carcinoma, Ovarian Cancer 203 (Stephen C. Rubin & Gregory P. Sutton編、第2版、2001)中;Fleming et al.編、上記の188。段階Iの卵巣癌は、卵巣に限定され、3つの従属段階からなる腫瘍増殖により特徴づけられる。同上。従属段階IAにおいて、腫瘍増殖は、1つの卵巣に限定され、卵巣の外部表面上には、腫瘍はなく、卵巣カプセルは、無傷であり、悪性細胞は、腹水または腹膜洗浄液中に存在しない。同上。従属段階IBは、腫瘍増殖が両方の卵巣に限定される以外は、IAと同一である。同上。従属段階ICは、一方または両方の卵巣に限定される腫瘍増殖の存在を示し、また以下の特徴の1つまたは2つ以上を含む:カプセル破裂、一方または両方の卵巣の表面上での腫瘍増殖、および腹水または腹膜洗浄液中に存在する悪性細胞。同上。
段階IIの卵巣癌は、一方または両方の卵巣を含む腫瘍増殖および骨盤拡張を意味する。同上。従属段階IIAは、子宮および/またはファロピウス管における拡張および/または移植を含み、腹水または腹膜洗浄液中に悪性細胞を含まず、一方段階IIBは、他の骨盤器官および組織中への拡張を含み、再び、腹水または腹膜洗浄液中に悪性細胞を含まない。同上。段階IICは、IIAまたはIIBのような骨盤拡張を含むが、腹水または腹膜洗浄液中に悪性細胞を含む。同上。
段階IIIの卵巣癌は、一方または両方の卵巣中に腫瘍増殖を含み、骨盤を越えての腹膜転移および/または領域性リンパ節における転移が、顕微鏡により確認される。同上。従属段階IIIAは、骨盤の外側の微細な腹膜転移により特徴づけられ、従属段階IIIBは、最大の寸法で2cmまたはこれ以下の、骨盤の外側の肉眼で見える腹膜転移を含む。同上。従属段階IIICは、転移が、最大の寸法において2cmより大きく、領域性リンパ節転移を含み得る以外は、IIIBと同一である。同上。最後に、段階IVは、腹膜転移を除く遠隔転移の存在を示す。同上。
手術的段階分類が、現在卵巣癌の管理および処置を評価するための基準である一方、これには顕著な欠点があり、これには、手順の侵入性、複雑さについての可能性および不正確さについての可能性が含まれる。Moore, 上記の206〜208、213。これらの制限の観点において、卵巣癌の種々の段階における異なる遺伝子発現を理解することにより、および当該疾患の進行を一層良好に評価するのを補助する種々の生物マーカーを得ることにより、代替の段階分類方法を開発することに、注意が向けられた。Vartiainen, J. et al., Int'l J. Cancer, 95(5): 313-16 (2001); Shridhar et al. 上記;Baekelandt, M. et al., J. Clin. Oncol. 18(22): 3775-81。
卵巣癌の処置は、典型的には、多面的な攻撃を含み、外科的介入は、処置の基礎として作用する。Dennis S. Chi & William J. Hoskins, Primary Surgical Management of Advanced Epithelial Ovarian Cancer, Ovarian Cancer 241 (Stephen C. Rubin & Gregory P. Sutton編、第2版、2001)中。例えば、卵巣癌の〜90%の症例にのぼる上皮性卵巣癌の場合において、処置は、典型的には、以下のものからなる:(1)総合的な腹部子宮摘出、両側性卵管卵巣摘出術、オメンテクトミー(omentectomy)およびリンパ節切除を含む、細胞減少性手術、続いて(2)パクリタキセル(paclitaxel)およびシスプラチン(cisplatin)またはカルボプラチン(carboplatin)のいずれかでのアジュバント化学療法。Eltabbakh, G.H. & Awtrey, C.S., Expert Op. Pharmacother. 2(10): 109-24。アジュバント療法の80%の臨床的応答率にもかかわらず、ほとんどの患者は、処置の3年以内に腫瘍の再発を経験している。同上。ある患者は、第2の細胞減少性手術および/または第二次化学療法を受け得る。Memarzadeh & Berek、上記。
上記のことから、卵巣癌の再発を検出、診断、モニタリング、段階分類、予見および防止するために用いられる手順は、患者の結果に臨界的に重要であることが明らかである。さらに、現在の手順は、これらの分析の各々において有用である一方、これらの特異性、感受性、侵襲性および/またはこれらの費用により制限される。このように、最小の侵襲性を伴って、および合理的な費用において、細胞、組織または体液中の新たなマーカーを検出することにより作用する、高度に特異的な、および感受性の手順は、高度に望ましい。
また乳腺腫瘍癌とも呼ぶ乳癌は、女性の間で2番目に一般的な癌であり、米国において診断された癌の3分の1を占める。9人に1人の女性は、当該女性の生涯において乳癌を発生し、乳癌の約192,000の新たな症例が、毎年診断され、死者は、約42,000人である。Bevers, Primary Prevention of Breast Cancer, Breast Cancer, 20-54 (Kelly K Hunt et al.編、2001)中;Kochanek et al., 49 Nat'l.Vital Statistics Reports 1, 14 (2001)。乳癌は、20歳より若い女性においては極度にまれであり、30歳未満の女性においては極めてまれである。乳癌の発生率は、年齢に伴って上昇し、50歳の年齢までに顕著となる。白色のラテンアメリカ系ではない女性は、乳癌についての最も高い発生率を有し、韓国の女性は、最も低い発生率を有する。乳癌および他の癌を促進する遺伝子的突然変異BRCA1およびBRCA2の増大した有病率は、アッシュケナジジュー(Ashkenazi Jews))において見出される。アフリカアメリカの女性は、これらの同一の群の中で、乳癌についての最も高い死亡率を有し(100,000人あたり31人)、一方中国の女性は、100,000人あたり11人の最も低い死亡率を有する。男性は、乳癌を罹患し得るが、これらは、極度にまれである。(アメリカ癌協会ウェブサイト:cancer with the extension .org of the world wide web)。関連する遺伝子的要因を伴うこれらの症例の例外について、乳癌の正確な原因は、知られていない。
乳癌の処置において、乳癌の早期の、および正確な段階分類が、生存に対して顕著な影響を有するため、検出および危険の評価に対して顕著な強調がある。例えば、初期の段階(段階T0、以下に記載する)において検出された乳癌は、92%の5年間の生存率を有する。逆に、癌が、後期の段階(即ち段階T4(IV))まで検出されない場合には、5年間の生存率は、13%まで低下する。AJCC Cancer Staging Handbook pp. 164-65 (Irvin D. Fleming et al.編、第5版、1998)。いくつかの検出手法、例えばマンモグラフィーおよび生検は、増大した不快、費用および/または放射線を伴い、乳癌の増大した危険を有する患者のみに処方されるに過ぎない。
乳癌の危険を予測するかまたは検出するための現在の方法は、最適ではない。乳癌の相対的な危険を予測するための1つの方法は、患者の危険因子を試験し、高い危険の患者についての攻撃的診断および処置計画を探求することによる。乳癌の患者の危険は、年齢の上昇、未産婦、乳癌の家族履歴、乳癌の個人的履歴、早い初経、遅い閉経、最初の満期妊娠の遅い年齢、前の増殖性乳房疾患、早い年齢での乳房の照射および悪性の個人的履歴に正に関連している。ライフスタイル要因、例えば脂肪消費、アルコール消費、教育および社会経済的地位もまた、乳癌の増大した発生率に関連しているが、直接的な因果関係は、確立されていない。これらの危険因子は、統計的に有意である一方、乳癌とのこれらの弱い関連により、これらの有用性が制限された。乳癌を発生するほとんどの女性は、加齢に伴って到来する危険以外に、上記した危険因子のいずれも有していない。NIH Publication No. 00-1556 (2000)。
癌を検出するための現在のスクリーニング方法、例えば乳房の自己試験、超音波およびマンモグラフィーは、これらの有効性を低下するかまたはこれらの広範囲な選択を妨げるという欠点を有する。乳房自己試験は、有用である一方、腫瘍が小さく、触診により検出することが困難である初期の段階においては、乳癌の検出について信頼できない。超音波測定には、増大した費用において技術のある操作者が必要である。マンモグラフィーは、感受性である一方、問題のある悪性の可能性を有する病変の検出において、過剰な診断となりやすい。また、前の胸の照射が、乳癌の増大した発生率に関連する要因であるため、マンモグラフィーにおいて用いられる照射の恐れがある。
この時点において、乳癌防止の適切な方法はない。乳癌防止の現在の方法は、予防的な乳房切除術(癌診断の前に行う乳房切除術)および化学的防止(癌診断の前の化学療法)を含み、これは、乳癌の増大した危険を有する女性の間でさえもこれらの選択を制限する徹底的な手段である。Bevers、上記。
多くの遺伝子的マーカーが、乳癌と関連していた。これらのマーカーの例には、癌胎児性抗原(CEA)(Mughal et al., JAMA 249:1881 (1983))、MUC−1(Frische and Liu, J. Clin. Ligand 22:320 (2000))、HER−2/neu(Haris et al., Proc.Am.Soc.Clin.Oncology 15:A96 (1996))、uPA、PAI−1、LPA、LPC、RAKおよびBRCA(Esteva and Fritsche, Serum and Tissue Markers for Breast Cancer, Breast Cancer, 286-308 (2001)中)が含まれる。これらのマーカーは、制限された感受性、低い相関関係および誤った陰性についての問題を有し、これにより初期の診断のためのこれらの使用が制限される。例えば、BRCA1遺伝子突然変異が、乳癌についての増大した危険の指標として有用である一方、これは、乳癌のわずか6.2%が、BRCA1陽性であるため、癌診断において制限された使用を有する。Malone et al., JAMA 279:922 (1998)。またMewman et al., JAMA 279:915 (1998)をも参照(わずか3.3%の相関関係)。
起源の部位および疾患発生の程度により変化する乳癌の4つの主な分類がある。
I.インサイチュでの乳管癌腫(DCIS):これらの正常な位置において残留する乳管上皮細胞の悪性の変換。DCISは、純粋に局所的な疾患であり、転移することはできない。
II.侵襲性乳管癌腫(IDC):基底膜を突破しての、および乳房の支持組織中への乳管上皮細胞の悪性。IDCは、最終的には、体中の至る箇所に拡大し得る。
III.インサイチュでの小葉癌腫(LCIS):小葉壁を通して拡張しない乳房の単一の小葉において生じる悪性、これは、一般的に、局所的なままである。
IV.浸潤性小葉癌腫(ILC):乳房の単一の小葉において発生し、小葉壁を貫通して隣接する組織中に直接侵襲する悪性。小葉壁を越えてのこの侵襲性により、ILCは、リンパ管および血管に浸透し、遠位の部位に拡大し得る。
予見および処置を決定する目的のために、これらの4種の乳癌のタイプを、主な腫瘍の大きさ(T)、リンパ節の関与(N)および転移の存在(M)により段階分類した。定義によるDCISが、局所的な段階Iの疾患を表すが、乳癌の他の形態は、段階IIから段階IVまでにわたり得る。さらに手術的および医学的介入を案内する作用を奏する、追加的な予見的要因がある。最も一般的なものは、関与するリンパ節の合計の数、ER(エストロゲンレセプター)状態、Her2/neuレセプター状態および組織学的階級である。
乳癌は、種々の処置が癌の種々の段階について一層有効であることを認識する適切な段階カテゴリーに診断される。段階TXは、主な腫瘍が評価され得ない(即ち腫瘍が除去されたかまたは乳房組織が除去された)ことを示す。段階T0は、過形成などの異常により特徴づけられるが、主な腫瘍の証拠を伴わない。段階Tisは、インサイチュでの腫瘍、管内癌腫、インサイチュでの小葉癌腫または腫瘍を伴わない乳頭のパジェット病により特徴づけられる。段階T1(I)は、最大の寸法で2cmまたはこれ以下の腫瘍を有するものとして特徴づけられる。段階T1内で、Tmicは、0.1cmまたはこれ以下の微小侵襲を示し、T1aは、0.1〜0.5cmの腫瘍を示し、T1bは、0.5〜1cmの腫瘍を示し、T1cは、1cm〜2cmの腫瘍を示す。
段階T2(II)は、最大の寸法で2cm〜5cmの腫瘍により特徴づけられる。大きさが5cmより大きい腫瘍は、段階T3(III)として分類される。段階T4(IV)は、胸壁または皮膚への拡張を伴う、すべての大きさの腫瘍を示す。段階T4内で、T4aは、胸壁への腫瘍の拡張を示し、T4bは、乳房の皮膚または同一の乳房に限定された衛星皮膚小結節の浮腫または潰瘍形成を示し、T4cは、T4aとT4bとの組み合わせを示し、T4dは、炎症性癌腫を示す。AJCC Cancer Staging Handbook pp. 159-70 (Irvin D. Fleming et al.編、第5版、1998)。標準的な段階分類に加えて、乳房腫瘍を、これらのエストロゲンレセプターおよびプロゲステロンレセプタータンパク質状態により分類することができる。Fisher et al., Breast Cancer Research and Treatment 7:147 (1986)。追加の病理学的状態、例えばHER2/neu状態もまた、有用であり得る。Thor et al., J. Nat'l.Cancer Inst. 90:1346 (1998); Paik et al., J.Nat'l.Cancer Inst. 90:1361 (1998); Hutchins et al., Proc.Am.Soc.Clin.Oncology 17:A2 (1998).;およびSimpson et al., J.Clin.Oncology 18:2059 (2000)。
主な腫瘍の段階分類に加えて、領域性リンパ節への乳癌転移を、段階分類することができる。段階NXは、リンパ節を評価することができない(即ち、予め除去した)ことを示す。段階N0は、領域性リンパ節転移がないことを示す。段階N1は、移動可能な同側性腋窩リンパ節への転移を示す。段階N2は、互いに、または他の構造に固定された同側性腋窩リンパ節への転移を示す。段階N3は、同側性内部乳腺リンパ節への転移を示す。同上。
段階決定は、有効な予見的価値を有し、最適な療法を設計するための基準を提供する。Simpson et al., J. Clin. Oncology 18:2059 (2000)。一般的に、乳癌の病理学的段階分類は、前者が一層正確な予見を提供するため、臨床的段階分類に好ましい。しかし、臨床的段階分類は、これが病理学的段階分類と同等に正確であるとしたら好ましい。その理由は、これが、病理学的評価のための組織を得る侵襲性手順に依存しないからである。乳癌の段階分類は、侵襲の種々の段階の間で区別され得る細胞、組織または体液中の新たなマーカーを検出することにより改善される。この分野における進歩により、乳癌患者を処置するための一層迅速であり、信頼性のある方法が可能になる。
乳癌の処置は、一般的に、主な腫瘍の正確な段階分類の後に決定される。主な処置の選択肢には、乳房保存療法(乳腺腫瘍摘出術、乳房照射および腋窩の外科的段階分類)並びに改善された根治的な乳房切除術が含まれる。追加の処置には、化学療法、領域性照射および極端な場合においては、卵巣切除によるエストロゲン産生の終了が含まれる。
最近まで、すべての乳癌のための一般的な処置は、乳房切除術であった。Fonseca et al., Annals of Internal Medicine 127:1013 (1997)。しかし、最近のデータは、比較的根治的でない手順が、初期の段階の乳癌について、生存の点において同等に有効であり得ることを示す。Fisher et al., J. of Clinical Oncology 16:441 (1998)。初期の段階の乳癌(即ち段階Tis)を有する患者についての処置の選択肢は、乳房を残す手術、続いて乳房における局所的な放射線療法であり得る。あるいはまた、随意に放射線または乳房再構成と組み合わされた乳房切除術を、用いることができる。これらの処置方法は、乳癌の初期段階において同等に有効である。
段階Iおよび段階IIの乳癌を有する患者には、化学療法および/またはホルモン療法を伴う手術が必要である。手術は、段階IIIおよび段階IVの患者においては、有用性が限定されている。従って、これらの患者は、初期段階分類またはその後の再段階分類を可能にするための生検に限定された手術を伴う化学療法および放射線療法についての一層良好な候補である。その理由は、癌が、疾患のこの段階において、ほとんど治癒的ではないためである。AJCC Cancer Staging Handbook 84, ¶. 164-65 (Irvin D. Fleming et al.編、第5版、1998)。
患者に一層多い処置の選択肢を提供する努力において、術後の放射線処置を伴わない乳腺腫瘍摘出術で処置することができる、低い再発を有する初期段階の乳癌を決定する努力が、進行中である。多くの試行が、初期段階の乳癌を分類するためになされている一方、術後の放射線処置に対する意見の一致の推薦は、これらの研究からは得られていない。Page et al., Cancer 75:1219 (1995); Fisher et al., Cancer 75:1223 (1995); Silverstein et al., Cancer 77:2267 (1996)。
上記したように、卵巣癌、膵臓癌、肺癌または乳癌を診断および段階分類するための各々の方法は、用いられる手法により制限される。従って、卵巣癌、膵臓癌、肺癌または乳癌の検出のための感受性のある分子および細胞マーカーについての必要性がある。卵巣癌、膵臓癌、肺癌または乳癌を臨床的に、および病理学的に段階分類して、処置方法を最適にすることを含む、正確な段階分類のための分子マーカーについての必要性がある。最後に、鎮静に続いて、卵巣癌、膵臓癌、肺癌または乳癌の再発を検出することができるマーカーを含む、癌処置の進行をモニタリングするための、感受性のある分子および細胞マーカーについての必要性がある。
本発明は、慣用の治療方法の制限を克服し、以下の詳細な記載から明らかである追加の利点を提供する、卵巣癌、膵臓癌、肺癌または乳癌を処置する代替の方法を提供する。
発明の概要
本発明は、インビボで哺乳動物細胞上のOvr110に結合する、単離されたOvr110抗体に関する。本発明はさらに、インビボで哺乳動物細胞上のOvr110に結合すると内部移行する、単離されたOvr110抗体に関する。当該抗体は、モノクローナル抗体であってもよい。あるいはまた、抗体は、抗体断片またはキメラもしくはヒト化抗体である。モノクローナル抗体は、アメリカンタイプカルチャーコレクション受託番号PTA-5180、PTA-5855、PTA-5856およびPTA-5884の下で寄託されたハイブリドーマの群から選択されたハイブリドーマにより産生され得る。
抗体は、アメリカンタイプカルチャーコレクション受託番号PTA-5180、PTA-5855、PTA-5856およびPTA-5884の下で寄託されたハイブリドーマの群から選択されたハイブリドーマにより産生されたモノクローナル抗体により結合されたエピトープと同一のエピトープに結合することについて競合することができる。
本発明はまた、結合した抗体に関する。これらは、増殖阻害剤または細胞毒性剤に結合することができる。細胞毒性剤は、毒素、抗生物質、放射性同位体および核酸分解酵素および毒素からなる群から選択され得る。毒素の例には、メイタンシン(maytansin)、メイタンシノイド類(maytansinoids)、サポリン(saporin)、ゲロニン(gelonin)、リシンまたはカリケアマイシン(calicheamicin)が含まれるが、これらには限定されない。
哺乳動物細胞は、癌細胞であってもよい。好ましくは、抗Ovr110モノクローナル抗体は、インビボでのOvr110発現癌細胞の増殖を阻害する。
抗体は、細菌中で産生され得る。あるいはまた、抗体は、ATCC受託番号PTA-5180、PTA-5855、PTA-5856およびPTA-5884を有するハイブリドーマの群から選択されたハイブリドーマにより産生された抗Ovr110抗体のヒト化された形態であってもよい。
好ましくは、癌は、卵巣癌、膵臓癌、肺癌および乳癌からなる群から選択されている。本発明はまた、抗体を産生する方法であって、適切な細胞を培養することおよび該抗体を該細胞培養物から回収することを含む、前記方法に関する。
本発明はまた、抗体および担体を含む組成物に関する。抗体は、細胞毒性剤に結合することができる。細胞毒性剤は、放射性同位体または他の化学療法剤であってもよい。
本発明はまた、Ovr110発現癌細胞を死滅させる方法であって、該癌細胞を、本発明の抗体と接触させ、これにより該癌細胞を死滅させることを含む、前記方法に関する。癌細胞を、卵巣癌細胞、膵臓癌細胞、肺癌細胞および乳癌細胞からなる群から選択することができる。
卵巣癌または乳癌は、卵巣漿液腺癌または乳房浸潤乳管癌または転移性癌であってもよい。乳癌は、HER−2陰性乳癌であってもよい。本発明はまた、哺乳動物におけるOvr110発現癌を寛解する方法であって、抗体の治療的に有効な量を、該哺乳動物に投与することを含む、前記方法に関する。
さらに、本発明は、容器およびこの中に含まれた組成物を含む製造品であって、該組成物が、本明細書中に記載した抗体を含む、前記製造品に関する。この製造品はまた、追加の成分、例えば組成物を用いて、卵巣癌、膵臓癌、肺癌または乳癌を処置することができることを示す添付文書を含むことができる。
発明の詳説
定義および一般的手法
本明細書中で用いるヒト「Ovr110」は、細胞表面上に糖タンパク質として発現され、このヌクレオチドおよびアミノ酸配列が、例えば開示を本明細書中に明確に参照により導入する、WO 00/12758、癌特異的遺伝子(CSG)Ovr110;WO 99/63088、膜結合タンパク質PRO1291;WO00/36107、ヒト卵巣癌腫抗原;WO 02/02624-A2ヒトB7様タンパク質(B7−L)中に開示されている、282個のアミノ酸のタンパク質を意味する。アミノ酸30〜282は、おそらく細胞表面上にある。本明細書中で用いるOvr110は、タンパク質の対立形質の変種および保存的置換突然変異体を含み、これは、Ovr110生物学的活性を有する。
最近、一連の3つの独立した刊行物により、マウスおよびヒトにおけるOvr110が、同時刺激分子、即ちT細胞機能の活性化/阻害を極めて厳密に調節する重要な群の分子のT細胞B7族の新たな要素として同定された。Prasad et al.、B7S1、T細胞活性化を負に調節する新規なB7族要素、Immunity 18:863-73 (2003); Sica et al.、B7−H4、B7族の分子は、T細胞免疫性を負に調節する、Immunity 18:849-61 (2003);およびZang et al.、B7x:T細胞活性化を阻害する広範囲に発現されたB7族要素、Proc. Natl Acad. Sci USA 100:10388-92 (2003)。B7S1(Prasad 2003)についてのマウス遺伝子の予測されたアミノ酸配列は、本発明者らの前に同定されたOvr110分子と高度に相同的であり、ヒトB7−H4/B7x(Sica 2003; Zang 2003)分子の予測された配列は、Ovr110と同一であった。フローサイトメトリーによる間接的な免疫蛍光分析により、さらに、これらの著者により記載されているように、本発明者らのOvr110モノクローナル抗体の、活性化されたTリンパ球集団への結合が確認された。
Ovr110が、明らかに、一層攻撃的な卵巣癌および乳癌に限定されるという、本発明者らの発見により、この細胞表面抗原が、これらのおよびおそらく他の腫瘍タイプの免疫療法についての魅力的な標的となる。
本明細書中で用いる用語「抗体」(Ab)は、これらが所望の生物学的活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多選択性抗体(例えば二重選択性抗体)および抗体断片を含む。用語「免疫グロブリン」(Ig)は、本明細書中では、「抗体」と同義的に用いる。
「単離された抗体」は、この天然の環境の成分から同定され、分離され、および/または回収されたものである。この天然の環境の汚染された成分は、抗体の診断的または治療的使用を妨げる物質であり、酵素、ホルモンおよび他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を含むことができる。好ましくは、抗体を、(1)ローリー法により決定して、95重量%より高い、および最も好ましくは99重量%より高い抗体に、(2)回転カップ配列決定装置を用いることにより、N末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度に、または(3)SDS−PAGEにより、クマジーブルーもしくは好ましくは銀染色を用いて、還元もしくは非還元条件の下で、均一に精製する。単離された抗体は、抗体の天然の環境の少なくとも1種の成分が存在しないため、組換え細胞内にインサイチュの抗体を含む。しかし、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製段階により調製される。
塩基性4鎖抗体単位は、2種の同一な軽(L)鎖および2つの同一な重(H)鎖から構成されている、ヘテロ四量体糖タンパク質である(IgM抗体は、J鎖と呼ばれる追加のポリペプチドと共に5つの塩基性ヘテロ四量体単位からなり、従って、10個の抗原結合部位を含み、一方分泌されたIgA抗体は、重合して、J鎖と共に2〜5個の塩基性の4鎖単位を含む多価の集合を形成することができる)。IgGの場合において、4鎖単位は、一般的に、約150,000ダルトンである。各々のL鎖は、H鎖に、1つの共有ジスルフィド結合により結合しており、一方2つのH鎖は、互いに、H鎖アイソタイプに依存して、1つまたは2つ以上のジスルフィド結合により互いに結合している。各々のHおよびL鎖はまた、規則的に離間した鎖内ジスルフィド架橋を有する。各々のH鎖は、N末端において、可変ドメイン(VH)、続いて、αおよびγ鎖の各々について3つの定常ドメイン(CH)並びにラムダおよびカッパアイソタイプについて4つのCHドメインを有する。各々の6つのL鎖は、N末端において可変ドメイン(VL)、続いてこの他方の末端において定常ドメイン(CL)を有する。
VLは、VHと共に整列し、CLは、重鎖の第1の定常ドメイン(CHI)と共に整列する。
特定のアミノ酸残基は、軽鎖および重鎖可変ドメインの間で界面を形成すると考えられる。VHおよびVLの一緒の対形成により、単一の抗原結合部位が形成する。種々の群の抗体の構造および特性について、例えば、Basic and Clinical Immunology, 第8版、Daniel P. Stites, Abba I. Teff and Tristram G. Parslow(編)、Appleton & Lange, Norwalk, CT, 1994, 71頁および6章を参照。
すべての脊椎動物種からのL鎖を、これらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパおよびラムダと呼ばれる2つの明確に別個のタイプの1つに割り当てることができる。これらの重鎖(CH)の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンを、種々の群またはアイソタイプに割り当てることができる。免疫グロブリンの5つの群があり:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM、それぞれα、δ、ε、γおよびμと示される重鎖を有する。γおよびα群は、さらに、CH配列および機能における比較的主要でない差異に基づいて、従属群に分けられ、例えばヒトは、以下の従属群を表す:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2。
用語「可変」は、可変ドメインのあるセグメントが、抗体間の配列において、大きく異なるという事実を意味する。Vドメインは、抗原結合を媒介し、この特定の抗原への特定の抗体の特異性を定める。しかし、可変性は、可変ドメインの1〜10のアミノ酸範囲にわたり均一に分布していない。代わりに、V領域は、各々9〜12個のアミノ酸の長さの、「高頻度可変領域」と呼ばれる極度の可変性の比較的短い領域により分離された、15〜30個のアミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる、比較的不変の伸長からなる。自然の重および軽鎖の可変ドメインは、各々、大きくPシート形状を採り、3つの高頻度可変領域により結合した4つのFRを含み、これは、Pシート構造に結合し、ある場合においてこの一部を形成するループを形成する。各々の鎖における高頻度可変領域は、FRにより密接に一緒に保持され、他方の鎖からの高頻度可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版、Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)を参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与せず、種々のエフェクター機能、例えば抗体の抗体依存性細胞傷害(ADCC)への関与を示す。
用語「高頻度可変領域」は、本明細書中で用いる際には、抗原結合の原因である抗体のアミノ酸残基を意味する。高頻度可変領域は、一般的に、「相補的決定領域」または「CDR」(例えば、VL中の約残基24〜34(L1)、50〜56(L2)および89〜97(L3)の周囲、並びにVH中の約1〜35(H1)、50〜65(H2)および95〜102(H3)の周囲;Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版、Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))からのアミノ酸残基および/または「高頻度可変ループ」(例えば、VL中の残基26〜32(L1)、50〜52(L2)および91〜96(U)、並びにVH中の26〜32(H1)、53〜55(H2)および96〜101(H3);Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))からの当該残基を含む。
本明細書中で用いる用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体を表し、即ち、集団を含む個々の抗体は、少量で存在し得る可能な天然に存在する突然変異体を除いて、同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異性であり、単一の抗原性部位に対して向けられる。さらに、種々の決定因子(エピトープ)に対して向けられる種々の抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各々のモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定因子に対して向けられる。これらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、これらが、他の抗体により汚染されずに合成され得るという点で、有利である。改変体「モノクローナル」は、いかなる特定の方法によっても抗体の産生を必要とするものと解釈するべきではない。例えば、本発明において有用なモノクローナル抗体を、Kohler et al., Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ方法により調製することができるか、または細菌性、真核生物動物もしくは植物細胞における組換えDNA方法を用いて作成することができる(例えば米国特許第4,816,567号を参照)。「モノクローナル抗体」はまた、ファージ抗体ライブラリーから、例えばClackson et al., Nature, 352:624-628 (1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)中に記載されている手法を用いて単離することができる。
本明細書中のモノクローナル抗体は、これらが、所望の生物学的活性を示す限りは、重および/または軽鎖の一部が、特定の種から由来するか、または特定の抗体群もしくは従属群に属する抗体中の対応する配列と同一であるか、またはこれと相同的であり、一方1または2以上の鎖の残りが、他の種から由来するか、または他の抗体群もしくは従属群に属する抗体、並びにこのような抗体の断片中の対応する配列と同一であるか、またはこれと相同的である、「キメラ」抗体を含む(米国特許第4,186,567号;およびMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984)を参照)。関連するキメラ抗体は、本明細書中では、非ヒト霊長類(例えば旧世界ザル、類人猿など)から由来する可変ドメイン抗原結合配列およびヒト定常領域配列を含む、「霊長類化された(primatized)」抗体を含む。
「無傷の」抗体は、抗原結合部位およびCL並びに少なくとも重鎖定常ドメイン、CHI、CH2およびCH3を含むものである。定常ドメインは、自然配列定常ドメイン(例えばヒト自然配列定常ドメイン)またはこのアミノ酸配列変異体であってもよい。好ましくは、無傷の抗体は、1つまたは2つ以上のエフェクター機能を有する。
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部、好ましくは無傷の抗体の抗原結合または可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFv断片;ダイアボディー(diabody);直線状抗体(米国特許第5,641,870号、例2;Zapata et al., Protein Eng. 8(10): 1057-1062 [1995]を参照);単一鎖抗体分子;並びに抗体断片から形成する多選択性抗体が含まれる。抗体のパパイン消化により、「Fab」断片および残りの「Fc」断片と呼ばれる2種の同一な抗原結合断片が生じ、表示は、容易に結晶する能力を反映している。Fab断片は、H鎖の可変領域ドメイン(VH)および1つの重鎖の第1の定常ドメイン(CHI)と共に完全なL鎖からなる。各々のFab断片は、抗原結合に関して1価であり、即ち、これは、単一の抗原結合部位を有する。
抗体のペプシン処理により、2価の抗原結合活性を有するFab断片に結合した2つのジスルフィドにほぼ相当し、尚抗原を架橋することができる、単一の大きいF(ab’)2断片が得られる。Fab’断片は、Fab断片と、抗体ヒンジ領域からの1つまたは2つ以上のシステインを含むCHIドメインのカルボキシ末端において、追加のいくつかの残基を有することにより異なる。Fab’−SHは、Fab’についての本明細書中での表示であり、ここで、定常ドメインの1または2以上のシステイン残基は、遊離のチオール基を有する。F(ab’)2抗体断片は、最初には、これらの間にヒンジシステインを有する8つのFab’断片の対として産生された。抗体断片の他の化学的結合はまた、知られている。
Fc断片は、両方のH鎖がジスルフィドにより一緒に保持されたカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域における配列により決定され、この領域はまた、あるタイプの細胞上に見出されたFcレセプター(FcR)により認識される部分である。
「Fv」は、完全な抗原認識および結合部位を含む最小の抗体断片である。この断片は、厳密な、非共有的な会合における、1つの重鎖および1つの軽鎖の可変領域ドメインの二量体からなる。これらの2つのドメインの折り畳みから、6つの高頻度可変ループ(各々HおよびL鎖からの3つのループ)が放射し、これは、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのみのCDRを含むFvの半分)さえも、抗原を認識し、これを結合する能力を有するが、完全な結合部位よりも低い親和性においてである。
また「sFv」または「scFv」と略される「単鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖中に結合するVHおよびVL抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドはさらに、VHおよびVLドメインの間に、sFvが抗原結合に望ましい構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーを含む。sFvの概説のために、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, 第113巻、Rosenburg and Moore編、Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994); Borrebaeck 1995, 下記を参照。
用語「ダイアボディー」は、VHおよびVLドメインの間に短いリンカー(約5〜10個の残基)を有するsFv断片(前の段落を参照)を、Vドメインの鎖間、しかし鎖内ではない対形成が達成され、2価の断片、即ち2つの抗原結合部位を有する断片が得られるように構成することにより調製された、小さい抗体断片を意味する。二重選択性ダイアボディーは、2つの「クロスオーバー」sFv断片のヘテロ二量体であり、ここで、2つの抗体のVHおよびVLドメインは、異なるポリペプチド鎖上に存在する。ダイアボディーは、例えばEP 404,097; WO 93/11161;およびHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)中に一層完全に記載されている。
「自然の配列」のポリペプチドは、自然のものから由来するポリペプチド(例えば抗体)と同一のアミノ酸配列を有するものである。このような自然の配列のポリペプチドを、自然のものから単離することができるか、または組換えもしくは合成手段により産生することができる。従って、自然の配列のポリペプチドは、天然に存在するヒトポリペプチド、マウスポリペプチドまたはすべての他の哺乳動物種からのポリペプチドのアミノ酸配列を有することができる。
用語「アミノ酸配列変異体」は、ある程度に自然の配列のポリペプチドと異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味する。通常、Ovr110のアミノ酸配列変異体は、自然の配列のOvr110と少なくとも約70%の相同性、好ましくは少なくとも約80%、一層好ましくは少なくとも約85%、さらに一層好ましくは少なくとも約90%の相同性、および最も好ましくは少なくとも約95%の相同性を有する。アミノ酸配列変異体は、自然のアミノ酸配列のアミノ酸配列内のある位置において、置換、欠失および/または挿入を有し得る。
抗体の語句「機能的断片または類似体」は、全長抗体と共通する定性的生物学的活性を有する化合物である。例えば、抗IgE抗体の機能的断片または類似体は、IgE免疫グロブリンに、このような分子の能力が高度に親和性のレセプターであるFcεRIに結合する能力を有することを防止するかまたは実質的に低減する方法で、結合することができるものである。
「相同性」は、配列を整列させ、間隙を導入して、所要に応じて最大の百分率の相同性を達成した後に同一であるアミノ酸配列変異体中の残基の百分率として、定義される。整列のための方法およびコンピュータープログラムは、当該分野において十分知られている。配列の類似性を、すべての一般的な配列分析アルゴリズム、例えばGAPまたはBESTFITまたは他の変法のSmith-Waterman整列により測定することができる。T. F. Smith and M. S. Waterman, J. Mol. Biol. 147:195-197 (1981)およびW.R. Pearson, Genomics 11:635-650 (1991)を参照。
非ヒト(例えば、げっ歯動物)抗体の「ヒト化された」形態は、非ヒト抗体から由来する最小の配列を含むキメラ抗体である。ほとんどの部分について、ヒト化された抗体は、受容者の高頻度可変領域からの残基が、非ヒト種(供与者抗体)、例えば所望の抗体特異性、親和性および能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類の高頻度可変領域からの残基により置換されている、ヒト免疫グロブリン(受容者抗体)である。いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)は、対応する非ヒト残基により置換されている。
さらに、ヒト化された抗体は、受容者抗体中または供与者抗体中に見出されない残基を含み得る。これらの変更は、抗体性能をさらに精巧にするためになされる。一般的に、ヒト化された抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、ここで、高頻度可変ループのすべてまたは実質的にすべては、非ヒト免疫グロブリンのものに相当し、FRのすべてまたは実質的にすべては、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化された抗体は、随意にまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部を含む。さらなる詳細については、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照。
本明細書中で用いる、「内部移行する」抗Ovr110抗体は、哺乳動物細胞上でOvr110に結合することにより(即ち細胞表面Ovr110)細胞により吸収される(即ち進入する)ものである。内部移行する抗体は、当然、抗体断片、ヒトまたはヒト化された抗体および抗体結合体を含む。治療的用途のために、インビボでの内部移行が意図される。内部移行した抗体分子の数は、Ovr110発現細胞、特にOvr110発現癌細胞を死滅させるのに十分または適切な数である。抗体または抗体結合体の効能に依存して、いくつかの例において、単一の抗体分子の細胞中への取り込みは、抗体が結合する標的細胞を死滅させるのに十分である。例えば、ある毒素は、抗体に結合した毒素の1つの分子の内部移行が、腫瘍細胞を死滅させるのに十分であるように死滅させるにあたり、高度に有効である。
抗Ovr110抗体が、哺乳動物細胞上のOvr110に結合すると内部移行するか否かは、以下の実験例において記載するものを含む、種々のアッセイにより決定することができる。例えば、インビボでの内部移行を試験するために、試験抗体を標識し、ある細胞の表面上で発現したOvr110を有することが知られている動物中に導入する。この抗体を、例えば蛍光または金粒子で放射性標識するかまたは標識することができる。このアッセイに適する動物には、哺乳動物、例えばヒトOvr110発現腫瘍移植または異種移植を含むNCRヌードマウス、またはヒトOvr110で形質移入された細胞が導入されたマウス、またはヒトOvr110導入遺伝子を発現する遺伝子組換えマウスが含まれる。適切な対照には、試験抗体が施与されていないかまたは関連しない抗体が施与された動物、および関連する細胞上の他の抗原に対する抗体が施与され、この抗体が、抗原に結合すると内部移行することが知られている動物が含まれる。
抗体を、動物に、例えば静脈内注射により投与することができる。好適な時間間隔において、この動物の組織切片を、既知の方法を用いて、または以下の実験例中に記載したように調製し、光学顕微鏡または電子顕微鏡により、内部移行および細胞中の内部移行した抗体の位置について分析することができる。インビトロでの内部移行について、細胞を、組織培養皿中で、培養培地に加えられた関連する抗体の存在または不存在においてインキュベートし、所望の時点において顕微鏡分析のために加工することができる。細胞中の内部移行した、標識した抗体の存在を、顕微鏡により、または放射性標識した抗体を用いる場合にはオートラジオグラフィーにより直接視覚化することができる。あるいはまた、定量的な生化学的アッセイにおいて、Ovr110発現細胞を含む細胞の集団を、インビトロまたはインビボで、放射性標識した試験抗体と接触させ、細胞(インビボで接触させた場合には、細胞を、次に、好適な量の時間の後に単離する)を、プロテアーゼで処理するか、またはこれに酸洗浄を施して、細胞表面上の内部移行していない抗体を除去する。
細胞を粉砕し、細胞の各々のバッチと関連する分あたりのプロテアーゼ耐性の、放射性量(カウント毎分(cpm))を、ホモジネートをシンチレーションカウンターを通過させることにより測定する。放射性標識した抗体の既知の特異的な活性に基づいて、細胞あたり内部移行した抗体分子の数を、粉砕した細胞のシンチレーションカウントから推定することができる。細胞を、インビトロで、好ましくは溶液形態で、例えば細胞を培養皿またはフラスコ中の細胞培養培地に加え、抗体を、培地と十分に混合して、抗体に対する細胞の均一な曝露を確実にすることにより抗体と「接触」させる。培養培地を加える代わりに、細胞を、試験抗体と、試験管中の等張性溶液、例えばPBS中で、所望の時間にわたり接触させることができる。インビボで、患者に投与された際には、細胞を抗体と、試験抗体を投与するすべての好適な方法、例えば以下に記載する投与方法により接触させる。
インビボでのOvr110発現細胞を結合する際の抗体の内部移行の速度が速くなるに従って、標的Ovr110発現細胞に対する所望の死滅または増殖阻害効果を、例えば細胞毒性免疫結合体により一層迅速に達成することができる。好ましくは、抗Ovr110抗体の内部移行の動力学は、これらが、Ovr110発現標的細胞の迅速な死滅を好む程度である。従って、抗Ovr110抗体は、好ましくはインビボで抗体を投与してから24時間以内に、一層好ましくは約12時間以内に、さらに一層好ましくは約30分〜1時間以内に、最も好ましくは約30分以内に、内部移行の迅速な速度を示すのが望ましい。本発明は、インビボで抗Ovr110抗体を導入する時間から約15分程度に迅速に内部移行する抗体を提供する。抗体は、好ましくは、細胞表面上のOvr110に結合した際に、数時間以内に、好ましくは1時間以内に、さらに一層好ましくは15〜30分以内に、細胞中に内部移行する。
試験抗体が、ATCCに寄託されたハイブリドーマにより産生された抗体を含む、本発明の抗Ovr110抗体により結合されたエピトープと同一のエピトープに結合することについて競合することができるか否かを試験するために、クロスブロッキング(cross-blocking)アッセイ、例えば競合的ELISAアッセイを、行うことができる。例示的な競合的ELISAアッセイにおいて、マイクロタイタープレートのOvr110で被覆したウェルまたはOvr110で被覆したセファロースビーズを、候補の競合的抗体と共に、またはこれを伴わずにプレインキュベートし、次に本発明のビオチン標識した抗Ovr110抗体を加える。ウェル中で、またはビーズ上でOvr110抗原に結合した、標識した抗Ovr110抗体の量を、アビジン−ペルオキシダーゼ結合体および適切な基質を用いて測定する。
あるいはまた、抗Ovr110抗体を、例えば放射性もしくは蛍光標識またはある他の検出可能な、および測定可能な標識で標識することができる。抗原に結合する標識した抗Ovr110抗体の量は、候補の競合的抗体(試験抗体)が、抗原上の同一のエピトープに結合することについて競合する能力に対して、逆相関を有する。即ち、同一のエピトープへの試験抗体の親和性が大きくなるに従って、一層少量の標識した抗Ovr110抗体が、抗原で被覆したウェルに結合する。候補の競合的な抗体は、候補の競合的抗体が、抗Ovr110抗体の結合を、候補の競合的抗体の不存在において(しかし、既知の非競合的抗体の存在下であってもよい)平行して行う対照と比較して、少なくとも20%、好ましくは少なくとも20〜50%、さらに一層好ましくは少なくとも50%により遮断することができる場合には、本発明の抗Ovr110抗体と同一のエピトープに実質的に結合するかまたは、これと同一のエピトープに結合することについて競合する抗体であると考えられる。このアッセイの変更を行って、同一の定量的数値データに到達することができることが、理解される。
表示した抗体の「生物学的特性」を有する抗体、例えばモノクローナル抗体Ovr110.A7.1、Ovr110.A10.1、Ovr110.A13.1、Ovr110.A31.1、Ovr110.A57.1、Ovr110.A72.1(前にOvr110 A22.1として同定した)、Ovr110.A77.1、Ovr110.A87.1、Ovr110.A89、Ovr110.A 99.1、Ovr110.A102.1、Ovr110.A107、Ovr110.C1、Ovr110.C2、Ovr110.C3.2、Ovr110.C4、Ovr110.C5.1.、Ovr110.C5.3、Ovr110.C6.3、Ovr110.C7.1、Ovr110.C8、Ovr110.C9.1、Ovr110.C10.1、Ovr110.C11.1、Ovr110.C12.1、Ovr110.C13、Ovr110.C14、Ovr110.C15、Ovr110.C16.1およびOvr110.C17.1のすべては、同一の抗原に結合する他の抗体と区別する当該抗体の生物学的特徴の1つまたは2つ以上を有するものであり、Ovr110.A7.1、Ovr110.A10.1、Ovr110.A13.1、Ovr110.A31.1、Ovr110.A57.1、Ovr110.A72.1(前にOvr110 A22.1として同定した)、Ovr110.A77.1、Ovr110.A87.1、Ovr110.A89、Ovr110.A 99.1、Ovr110.A102.1、Ovr110.A107、Ovr110.C1、Ovr110.C2、Ovr110.C3.2、Ovr110.C4、Ovr110.C5.1.、Ovr110.C5.3、Ovr110.C6.3、Ovr110.C7.1、Ovr110.C8、Ovr110.C9.1、Ovr110.C10.1、Ovr110.C11.1、Ovr110.C12.1、Ovr110.C13、Ovr110.C14、Ovr110.C15、Ovr110.C16.1およびOvr110.C17.1は、Ovr110.A7.1、Ovr110.A10.1、Ovr110.A13.1、Ovr110.A31.1、Ovr110.A57.1、Ovr110.A72.1 (前にOvr110 A22.1として同定した)、Ovr110.A77.1、Ovr110.A87.1、Ovr110.A89、Ovr110.A 99.1、Ovr110.A102.1、Ovr110.A107、Ovr110.C1、Ovr110.C2、Ovr110.C3.2、Ovr110.C4、Ovr110.C5.1.、Ovr110.C5.3、Ovr110.C6.3、Ovr110.C7.1、Ovr110.C8、Ovr110.C9.1、Ovr110.C10.1、Ovr110.C11.1、Ovr110.C12.1、Ovr110.C13、Ovr110.C14、Ovr110.C15、Ovr110.C16.1およびOvr110.C17.1(例えば、モノクローナル抗体Ovr110.A7.1、Ovr110.A10.1、Ovr110.A13.1、Ovr110.A31.1、Ovr110.A57.1、Ovr110.A72.1(前にOvr110 A22.1として同定した)、Ovr110.A77.1、Ovr110.A87.1、Ovr110.A89、Ovr110.A 99.1、Ovr110.A102.1、Ovr110.A107、Ovr110.C1、Ovr110.C2、Ovr110.C3.2、Ovr110.C4、Ovr110.C5.1.、Ovr110.C5.3、Ovr110.C6.3、Ovr110.C7.1、Ovr110.C8、Ovr110.C9.1、Ovr110.C10.1、Ovr110.C11.1、Ovr110.C12.1、Ovr110.C13、Ovr110.C14、Ovr110.C15、Ovr110.C16.1およびOvr110.C17.1のOvr110への結合と競合するかまたはこの結合を遮断する)により結合されたものと同一のエピトープに結合し、インビボでOvr110発現腫瘍細胞を標的することができ、インビボで哺乳動物細胞上でOvr110に結合した際に、内部移行する。
同様に、Ovr110.A7.1、Ovr110.A10.1、Ovr110.A13.1、Ovr110.A31.1、Ovr110.A57.1、Ovr110.A72.1(前にOvr110 A22.1として同定した)、Ovr110.A77.1、Ovr110.A87.1、Ovr110.A89、Ovr110.A 99.1、Ovr110.A102.1、Ovr110.A107、Ovr110.C1、Ovr110.C2、Ovr110.C3.2、Ovr110.C4、Ovr110.C5.1.、Ovr110.C5.3、Ovr110.C6.3、Ovr110.C7.1、Ovr110.C8、Ovr110.C9.1、Ovr110.C10.1、Ovr110.C11.1、Ovr110.C12.1、Ovr110.C13、Ovr110.C14、Ovr110.C15、Ovr110.C16.1およびOvr110.C17.1抗体の生物学的特徴を有する抗体は、抗体の同一のエピトープ結合、標的、内部移行、腫瘍増殖阻害および細胞毒性特性を有する。
用語「アンタゴニスト」抗体は、最も広い意味で用いられ、本明細書中に開示した自然のOvr110タンパク質の生物学的活性を部分的に、または完全に遮断、阻害または中和する抗体を含む。Ovr110ポリペプチドのアンタゴニストを同定するための方法は、Ovr110ポリペプチドまたはOvr110を細胞表面上で発現する細胞を、候補のアンタゴニスト抗体と接触させることおよび、通常Ovr110ポリペプチドと関連する1または2以上の生物学的活性における検出可能な変化を測定することを含むことができる。
「Ovr110を発現する腫瘍細胞の増殖を阻害する抗体」または「増殖阻害」抗体は、Ovr110を発現するかまたは過剰発現する癌細胞に結合するか、またはこの測定可能な増殖阻害をもたらすものである。好ましい増殖阻害抗Ovr110抗体は、Ovr110発現腫瘍細胞(例えば卵巣癌細胞、膵臓癌細胞、肺癌細胞または乳癌細胞)の増殖を、適切な対照と比較して20%より大きく、好ましくは約20%〜約50%、およびさらに一層好ましくは50%より大きく(例えば約50%〜約100%)阻害し、対照は、典型的には、試験されている抗体で処置していない腫瘍細胞である。増殖阻害を、細胞培養物中の約0.1〜30pg/mlまたは約0.5nM〜200nMの抗体濃度で測定することができ、ここで、増殖阻害は、腫瘍細胞を抗体に曝露した1〜10日後に決定される。インビボでの腫瘍細胞の増殖阻害を、以下の実験例の章において記載するように、種々の方法で決定することができる。抗体は、抗Ovr110抗体の、約1pg/体重1kg〜約100mg/体重1kgでの投与により、腫瘍の大きさまたは腫瘍細胞増殖の減少が、抗体の最初の投与から約5日〜3ヶ月以内、好ましくは約5〜30日以内にもたらされる場合に、インビボで増殖阻害的である。
「アポトーシスを誘発する」抗体は、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡大、細胞断片化および/または膜小胞(アポトーシス体と呼ばれる)の形成により決定される、計画された細胞死を誘発するものである。細胞は、通常、Ovr110を過剰発現するものである。好ましくは、細胞は、腫瘍細胞、例えば卵巣細胞、膵臓細胞、肺細胞または乳房細胞である。種々の方法は、アポトーシスに関連する細胞の事象を評価するのに有用である。例えば、ホスファチジルセリン(PS)転座を、アネキシン結合により測定することができ;DNA断片化を、DNAラダリング(laddering)により評価することができ;およびDNA断片化に伴う核/クロマチン縮合を、低二倍体細胞のすべての増大により評価することができる。好ましくは、アポトーシスを誘発する抗体は、アネキシン結合アッセイにおいて、未処理細胞に対して約2〜50倍、好ましくは約5〜50倍、最も好ましくは約10〜50倍のアネキシン結合の誘発をもたらすものである。
抗体「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(自然の配列のFc領域またはアミノ酸配列変異体Fc領域)に寄与する生物学的活性を意味し、抗体アイソタイプに伴って変化する。抗体エフェクター機能の例には、以下のものが含まれる:C1q結合および補体依存性細胞毒性;Fcレセプター結合;抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面レセプター(例えばB細胞レセプター)の下方調節;およびB細胞活性化。
「抗体依存性細胞媒介細胞傷害」または「ADCC」は、ある細胞毒性細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球およびマクロファージ)上に存在するFcレセプター(FcR)上に結合した、分泌されたIgが、これらの細胞毒性エフェクター細胞が、抗原を有する標的細胞に特異的に結合し、その後標的細胞を細胞毒で死滅させることを可能にする、細胞毒性の形態を意味する。抗体は、細胞毒性細胞を「武装し(arm)」、このような死滅に絶対に必要である。ADCCを媒介するための主な細胞である、NK細胞は、FcγRIIIのみを発現し、一方単球は、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcR発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991)の464頁の表3に要約されている。関連する分子のADCC活性を評価するために、インビトロADCCアッセイ、例えば米国特許第5,500,362号または5,821,337号に記載されているものを、行うことができる。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血液単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいはまた、またはさらに、関連する分子のADCC活性を、インビボで、例えばClynes et al. PNAS (USA) 95:652-656 (1998)に開示されているような動物モデルにおいて、評価することができる。
「Fcレセプター」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合するレセプターを記載する。好ましいFcRは、自然の配列のヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマレセプター)に結合するものであり、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIII従属群のレセプターを含み、対立形質の変異体およびあるいはまたこれらのレセプターのスプライシングされた形態を含む。FcγRIIレセプターには、FcγRIIA(「活性化レセプター」)およびFcγRIIB(「阻害レセプター」)が含まれ、これは、主にこの細胞質ドメインにおいて異なる、同様のアミノ酸配列を有する。活性化レセプターFcγRIIAは、免疫レセプターチロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を、この細胞質ドメイン中に含む。阻害レセプターFcγRIIBは、免疫レセプターチロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)を、この細胞質ドメイン中に含む。(Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15:203-234 (1997)中の概説M.を参照)。FcRは、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991); Capel et al., Immunomethods 4:25-34 (1994);およびde Haas et al., J. Lab. Clin. Med. 126.330-41 (1995)中に概説されている。将来同定されるべきものを含む、他のFcRは、本明細書中の用語「FcR」により包含される。この用語はまた、母系性のIgGの胎児への輸送の原因である新生児レセプター、FcRnを含む(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976)およびKim et al., J. Immunol. 24:249 (1994))。
「ヒトエフェクター細胞」は、1つまたは2つ以上のFcRを発現し、エフェクター機能を発揮する白血球である。好ましくは、この細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を発揮する。ADCCを媒介するヒト白血球の例には、末梢血液単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞毒性T細胞および好中球が含まれ;PBMCおよびNK細胞が好ましい。エフェクター細胞を、自然の供給源、例えば血液から単離することができる。
「補体依存性細胞毒性」または「CDC」は、補体の存在下での標的細胞の溶解を意味する。古典的な補体経路の活性化は、補体系(C1q)の第1の成分の、これらの同族の抗原に結合する抗体(適切な従属群の)への結合により開始される。補体活性化を評価するために、例えばGazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されているCDCアッセイを、行うことができる。
用語「癌」および「癌性」は、典型的に調節されていない細胞増殖により特徴づけられる哺乳動物の生理学的状態を意味するかまたは記載する。癌の例には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫および白血病またはリンパ様悪性が含まれるが、これらには限定されない。このような癌の一層特定的な例には、扁平細胞癌(例えば上皮性扁平細胞癌)、小細胞肺癌、非小細胞肺癌が含まれる肺癌、肺の腺癌および肺の扁平癌腫、腹膜の癌、肝細胞性癌、胃腸癌が含まれる胃(gastric or stomach)癌、膵臓癌、グリア芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路の癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、直腸癌、直腸結腸癌、子宮内膜または子宮の癌腫、唾液腺癌腫、腎臓+(kidney or renal)癌、前立腺癌、産卵口癌、甲状腺癌、肝臓癌腫、肛門癌腫、陰茎癌腫、黒色腫、多発性骨髄腫およびB細胞リンパ腫、脳および頭および首の癌、並びに関連する転移が含まれる。
「Ovr110発現細胞」は、細胞表面上で内因性または形質移入したOvr110を発現する細胞である。「Ovr110発現癌」は、細胞表面上に存在するOvr110タンパク質を有する細胞を含む癌である。「Ovr110発現癌」は、この細胞の表面上で、抗Ovr110抗体が、これに結合することができ、癌に関して治療的効果を有するのに十分なレベルのOvr110を産生する。Ovr110を「過剰発現する」癌は、同一の組織のタイプの非癌性細胞と比較して、顕著に高いレベルのOvr110をこの細胞表面において有するものである。このような過剰発現は、遺伝子増幅により、または増大した転写もしくは翻訳により生じ得る。Ovr110過剰発現は、診断または予見アッセイにおいて、細胞の表面上に存在するOvr110タンパク質の増大したレベルを評価することにより(例えば免疫組織化学的アッセイ;FACS分析により)、決定され得る。
あるいはまた、またはさらに、細胞中のOvr110をコードする核酸またはmRNAのレベルを、例えば蛍光のインサイチュハイブリダイゼーション;(FISH;1998年10月に刊行されたWO98/45479を参照)、サザンブロッティング、ノーザンブロッティングまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)手法、例えばリアルタイム定量的PCR(RT−PCR)により測定することができる。また、Ovr110過剰発現を、生物学的液体、例えば血清中の発した(shed)抗原を、例えば抗体に基づくアッセイを用いて測定することにより研究することができる(また、例えば米国特許第4,933,294号、1990年6月12日刊行;WO91/05264、1991年4月18日刊行;米国特許第5,401,638号、1995年3月28日刊行;およびSias et al. J. Immunol. Methods 132: 73-80 (1990)を参照)。上記のアッセイとは別に、種々のインビボアッセイが、技術のある実行者に有用である。例えば、細胞を、患者の体内で、随意に検出可能な標識、例えば放射性同位体で標識した抗体に曝露することができ、この抗体の患者中の細胞への結合を、例えば放射性について外部走査することにより、または前に抗体に曝露した患者から採取した生検を分析することにより評価することができる。Ovr110発現癌は、卵巣癌、膵臓癌、肺癌または乳癌を含む。
癌を処置するかまたは癌の症状を寛解する目的のための「哺乳動物」は、ヒト、家畜および養殖の動物、並びに動物園、娯楽用、またはペット動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなどを含む、すべての哺乳動物を意味する。好ましくは、哺乳動物は、ヒトである。
「処置する」または「処置」または「寛解」は、治療的処置および予防的または防止的手段の両方を意味し、ここで、目的は、標的となる病理学的状態または障害を防止するかまたは遅延させる(低下させる)ことである。処置を必要としているものには、すでに障害を有しているもの、および障害を有する傾向があるもの、または障害が防止されるべきであるものが含まれる。被検者または哺乳動物は、本発明の方法により抗Ovr110抗体の治療的な量が施与された後に、患者が、以下の1つまたは2つの観察可能な、および/または測定可能な低減またはこの欠如を示す場合に、Ovr110発現癌について成功に「処置される」:癌細胞の数の減少または癌細胞の欠如;腫瘍の大きさの減少;癌の柔軟な組織および骨中への拡大を含む、末梢器官中への癌細胞の浸潤の阻害(即ち、ある程度までの遅延および好ましくは停止);腫瘍転移の阻害(即ち、ある程度までの遅延および好ましくは停止);腫瘍増殖のある程度までの阻害;および/または特定の癌に関連する症状の1つまたは2つ以上の、ある程度までの寛解;減少された罹患率および死亡率、並びに生活の質の問題における改善。抗Ovr110抗体が、存在する癌細胞の増殖を防止し、かつ/またはこれを死滅させることができる程度に、これは、細胞分裂停止性および/または細胞毒性であり得る。これらの徴候または症状の低減はまた、患者により感じられ得る。
疾患における成功した処置および改善を評価するための上記のパラメーターは、医師に十分知られている常習的な手順により容易に測定可能である。癌療法のために、効能を、例えば、疾患進行のための時間(TTP)を評価し、かつ/または応答率(RR)を決定することにより測定することができる。
用語「治療的に有効な量」は、被検者または哺乳動物における疾患または障害を「処置」するのに有効な抗体または薬剤の量を意味する。癌の場合において、薬剤の治療的に有効な量により癌細胞の数が減少し;腫瘍の大きさが減少し;末梢器官中への癌細胞の浸潤が阻害され(即ち、ある程度まで遅延および好ましくは停止し);腫瘍転移が阻害され(即ち、ある程度まで遅延および好ましくは停止し);腫瘍増殖がある程度まで阻害され;かつ/または癌に関連する症状の1つまたは2つ以上が、ある程度まで寛解され得る。「処置する」の前の定義を参照。薬剤が、存在する癌細胞の増殖を防止し、かつ/またはこれを死滅させることができる程度に、これは、細胞分裂停止性および/または細胞毒性であり得る。
「慢性の」投与は、1種または2種以上の剤を、急性の方式に対して連続的な方式で投与して、長期間にわたり最初の治療的効果(活性)が維持されるようにすることを意味する。
「間欠性」投与は、間隔を伴わずに連続的になされず、むしろ自然的に周期的である処置である。
1種または2種以上他の治療剤「と組み合わせて」の投与は、すべての順序での、同時の(併用)および連続的な投与を含む。
本明細書中で用いる「担体」には、用いられる投与量および濃度において曝露された細胞または哺乳動物に無毒である、薬学的に許容し得る担体、添加剤または安定剤が含まれる。
しばしば、生理学的に許容し得る担体は、水性のpH緩衝された溶液である。生理学的に許容し得る担体の例には、緩衝液、例えばリン酸、クエン酸および他の有機酸;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10個の残基よりも少ない)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンもしくはリシン;グルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む単糖類、二糖類および他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール類、例えばマンニトールもしくはソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;および/または非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)およびPLURONICS(登録商標)が含まれる。
本明細書中で用いる用語「細胞毒性剤」は、細胞の機能を阻害もしくは防止し、かつ/または細胞の破壊を生じる物質を意味する。この用語は、放射性同位体(例えばAt211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32およびLuの放射性同位体)、化学療法剤、例えばメトトレキセート(methotrexate)、アドリアマイシン(adriamicin)、ビンカアルカロイド類(vinca alkaloids)(ビンクリスチン(vincristine)、ビンブラスチン(vinblastine)、エトポシド(etoposide))、ドキソルビシン(doxorubicin)、メルファラン(melphalan)、マイトマイシン(mitomycin)C、クロラムブシル(chlorambucil)、ダウノルビシン(daunorubicin)または他の挿入剤、酵素およびこの断片、例えば核酸分解酵素、抗生物質、並びに毒素、例えば断片および/またはこの変種を含む、小分子毒素または細菌、真菌、植物もしくは動物起源の酵素的に活性な毒素、例えばゲロニン(gelonin)、リシン、サポリン並びに以下に開示する種々の抗腫瘍もしくは抗癌剤を含むことを意図する。他の細胞毒性剤を、以下に記載する。殺腫瘍剤は、腫瘍細胞の破壊を生じる。
本明細書中で用いる際には、「増殖阻害剤」は、細胞、特にOvr110発現癌細胞の増殖を、インビトロまたはインビボのいずれかで阻害する化合物または組成物を意味する。従って、増殖阻害剤は、S期においてOvr110発現細胞の百分率を顕著に減少させるものであってもよい。増殖阻害剤の例には、細胞サイクル進行を遮断する(S期以外の位置において)剤、例えばGI停止およびM期停止を誘発する剤が含まれる。古典的なM期ブロッカーには、ビンカ類(ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、タキサン(taxane)類およびトポイソメラーゼII阻害剤、例えばドキソルビシン、エピルビシン(epirubicin)、ダウロルビシン、エトポシドおよびブレオマイシン(bleomycin)が含まれる。GIを停止する剤、例えばDNAアルキル化剤、例えばタモキシフェン(tamoxifen)、プレドニソン(prednisone)、デカルバジン(dacarbazine)、メクロレタミン(mechlorethamine)、シスプラチン、メトトレキセート、5−フルオロウラシルおよびアラ(ara)−Cはまた、S期停止に波及する。
他の情報は、Murakami et al.によるThe Molecular Basis of Cancer, Mendelsohn and Israel編、第1章、題名「細胞サイクル調節、発癌遺伝子および抗悪性腫瘍薬」(WB Saunders: Philadelphia, 1995)、特に13頁中に見出すことができる。タキサン類(パクリタキセルおよびドセタキセル)は、共にイチイから由来する抗癌薬である。ヨーロッパイチイから由来するドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)の半合成類似体である。パクリタキセルおよびドセタキセルは、チューブリン二量体からの微小管の組み立てを促進し、微小管を、脱重合を防止することにより安定化し、これにより細胞中での有糸分裂の阻害をもたらす。
本明細書中で用いる「標識」は、抗体に直接的に、または間接的に結合して、「標識した」抗体を生じる、検出可能な化合物または組成物を意味する。標識は、単独で検出可能であり得る(例えば放射性同位体標識もしくは蛍光標識)か、または、酵素的標識の場合においては、検出可能な基質化合物もしくは組成物の化学的変化を触媒し得る。
本明細書中で用いる用語「エピトープタグ化」は、「タグポリペプチド」に融合した抗Ovr110抗体ポリペプチドを含む、キメラポリペプチドを意味する。タグポリペプチドは、抗体を作成することができるエピトープを提供するのに十分であるが、これが、これが融合するIgポリペプチドの活性に干渉しない程度に十分短い残基を有する。タグポリペプチドはまた、好ましくは、極めて独特であり、従って抗体は、他のエピトープと実質的に交差反応しない。好適なタグポリペプチドは、一般的に、少なくとも6個のアミノ酸残基および通常8〜50個のアミノ酸残基(好ましくは約10〜20個のアミノ酸残基)を有する。
「小さい分子」は、本明細書中では、約500ダルトンより小さい分子量を有すると定義される。
用語「添付文書」は、慣例的に治療製品の市販の包装中に含まれ、適応、使用、投与量、投与、禁忌および/またはこのような治療製品の使用に関する注意についての情報を含む指示を意味するために用いる。
「単離された核酸分子」は、実質的に他のゲノムDNA配列およびタンパク質または複合体、例えばリボゾームおよびポリメラーゼから分離され、天然に自然の配列を伴う、核酸分子、例えばRNA、DNA、または混合ポリマーである。この用語は、この天然に存在する環境から除去された核酸分子を包含し、組換えまたはクローン化DNA単離物および化学的に合成された類似体または異種性の系により生物学的に合成された類似体を含む。実質的に純粋な核酸分子は、核酸分子の単離された形態を含む。
「ベクター」は、シャトルおよび発現ベクターを含み、例えばプラスミド、コスミドまたはファージミドを含む。典型的に、プラスミド構造物はまた、それぞれ細菌におけるプラスミドの複製および選択のための、複製の起源(例えば複製のColEl起源)および選択可能なマーカー(例えばアンピシリンまたはテトラサイクリン耐性)を含む。「発現ベクター」は、抗体の発現に必要な対照配列または調節要素を含むベクターを意味し、原核生物、例えば細菌または真核生物細胞における本発明の抗体断片を含む。好適なベクターを、以下に開示する。
本発明の抗Ovr110抗体を産生する細胞には、親ハイブリドーマ細胞、例えばATCCに寄託されたハイブリドーマ、並びに抗体をコードする核酸が導入された、細菌および真核生物ホスト細胞が含まれる。
RNA干渉は、短い干渉RNA(siRNA)により媒介された動物における配列特異性転写後遺伝子サイレンシングのプロセスを意味する(Fire et al., 1998, Nature, 391, 806)。植物における対応するプロセスは、一般的に、転写後遺伝子サイレンシングまたはRNAサイレンシングと呼ばれ、また真菌における停止を意味する。転写後遺伝子サイレンシングのプロセスは、種々の植物相および門により一般的に共有された外来の遺伝子の発現を防止するために用いられる、進化的に保存された細胞防御機構であると考えられる(Fire et al., 1999, Trends Genet., 15, 358)。外来の遺伝子発現からのこのような保護は、相同的な単鎖RNAまたはウイルスゲノムRNAを特異的に破壊する細胞応答による、ウイルス感染またはホストゲノム中へのトランスポゾン要素の無秩序な一体化から由来する、二重らせんRNA(dsRNA)の産生に応答して進化した場合がある。細胞中のdsRNAの存在によりRNAi応答が誘発されるが、機構は未だ完全には特徴づけられていない。この機構は、プロテインキナーゼPKPおよび2’,5’−オリゴアデニレートシンセターゼのdsRNA媒介活性化からもたらされ、リボヌクレアーゼLによるmRNAの非特異的切断をもたらすインターフェロン応答とは、異なると考えられる。
細胞中に長いdsRNAが存在すると、ダイサーと呼ばれるリボヌクレアーゼIII酵素の活性が刺激される。ダイサーは、短い干渉RNA(siRNA)として知られている、dsRNAの短い片中へのdsRNAの加工に関与する(Berstein et al., 2001, Nature, 409, 363)。ダイサー活性から由来する短い干渉RNAは、典型的には、長さが約21〜23ヌクレオチドであり、約19個の塩基対二本鎖を含む。ダイサーはまた、翻訳制御に関係する、保存された構造の前駆体RNAからの21および22ヌクレオチドの小さい一時的なRNA(stRNA)の切除に関係していた(Hutvagner et al., 2001, Science, 293, 834)。RNAi応答はまた、一般的にRNA誘発サイレンシング複合体(RISC)と呼ばれ、siRNA二本鎖のアンチセンスらせんに相補的な配列を有する一本鎖RNAの切断を媒介するsiRNAを含むエンドヌクレアーゼ複合体を特徴づける。標的のRNAの切断は、siRNA二本鎖のアンチセンスらせんに相補的な領域の中央において起こる(Elbashir et al., 2001, Genes Dev., 15, 188)。
短い干渉RNAにより媒介されたRNAiは、種々の系において研究された。Fire et al., 1998, Nature, 391, 806は、C. Elegans中のRNAiを最初に観察した。Wianny and Goetz, 1999, Nature Cell Biol., 2, 70には、マウス胚におけるdsRNAにより媒介されたRNAiが記載されている。Hammond et al., 2000, Nature, 404, 293には、dsRNAで形質移入したショウジョウバエ細胞中のRNAiが記載されている。Elbashir et al., 2001, Nature, 411, 494には、ヒト胚腎臓およびHeLa細胞を含む、培養した哺乳動物細胞中の合成21ヌクレオチドRNAの二本鎖の導入により誘発されたRNAiが記載されている。ショウジョウバエ胚可溶化液における最近の作業(Elbashir et al., 2001, EMBO J., 20, 6877)により、効率的なRNAi活性を媒介するのに必須のsiRNA長さ、構造、化学的組成および配列についてのある要求が明らかになった。
これらの研究により、21ヌクレオチドのsiRNA二本鎖が、2つのヌクレオチド3’−オーバーハングを含む際に、最も活性であることが示された。さらに、2’−デオキシ(2’−H)または2’−O−メチルヌクレオチドを有する一方または両方のsiRNAらせんの完全な置換により、RNAi活性が消失し、一方3’末端siRNAオーバーハングヌクレオチドのデオキシヌクレオチド(2’−H)での置換は、許容されると示された。siRNA二本鎖の中心での単一のミスマッチ配列はまた、RNAi活性を消失すると示された。さらに、これらの研究により、また、標的のRNA中の切断部位の位置が、siRNA案内配列の3’末端ではなく、5’末端により定められることが示される(Elbashir et al., 2001, EMBO J., 20, 6877)。他の研究により、siRNA二本鎖の標的相補的らせん上の5’リン酸塩が、siRNA活性のために必要であること、およびATPを用いて、siRNA上の5’リン酸塩部分が維持されることが、示された(Nykanen et al., 2001, Cell, 107, 309)。
研究により、2個のヌクレオチド3’オーバーハングを有する21量体のsiRNA二本鎖の3’オーバーハングセグメントをデオキシリボヌクレオチドで置換することは、RNAi活性に対して悪影響を有しないことが、示された。siRNAの各々の末端上での4個までのヌクレオチドの、デオキシリボヌクレオチドでの置換は、良好に耐容される一方、デオキシリボヌクレオチドでの完全な置換の結果、RNAi活性はもたらされないことが、報告された(Elbashir et al., 2001, EMBO J., 20, 6877)。さらに、Elbashir et al.、上記はまた、siRNAの2’−O−メチルヌクレオチドでの置換により、RNAi活性が完全に消失されることを報告している。
Li et al., 国際PCT公開WO 00/44914およびBeach et al., 国際PCT公開WO 01/68836は、共に、siRNAが、「リン酸塩−糖主鎖またはヌクレオシドのいずれかに対する変更を含んで、少なくとも1個の窒素または硫黄ヘテロ原子を含むことができる」ことを示唆しているが、いずれの出願にも、いずれの程度まで、これらの変更が、siRNA分子において耐容されるかが教示されておらず、このような変更されたsiRNAのいかなる例も提供されていない。Kreutzer and Limmer、カナダ国特許出願第2,359,180号にはまた、dsRNA構造物において用いて、二重らせんRNA依存性プロテインキナーゼPKR、特に2’−アミノまたは2’−O−メチルヌクレオチド、および2’−Oまたは4’−Cメチレン架橋を含むヌクレオチドの活性化を妨げるための、ある化学的変更が記載されている。しかし、KreutzerおよびLimmerは、同様に、いずれの程度まで、これらの変更が、siRNA分子において耐容されるかを示しておらず、このような変更されたsiRNAのいかなる例も提供していない。
Parrish et al., 2000, Molecular Cell, 6, 1977-1087は、C. elegansにおけるunc−22遺伝子を標的する、ある化学的変更を、長い(>25nt)siRNA転写物を用いて試験した。この著者は、チオリン酸塩残基のこれらのsiRNA転写物中への、T7およびT3RNAポリメラーゼを有するチオリン酸塩ヌクレオチド類似体を包含させることによる導入を記載し、「2つの(ホスホロチオエート)変更塩基を有するRNAがまた、RNAiトリガーとしての有効性の顕著な低下を有し(データは示していない);2つよりも多い残基の(ホスホロチオエート)変更により、インビトロでRNAが大きく不安定になり、我々は、干渉活性をアッセイすることができなかった」ことを観察した。1081において同上。
この著者はまた、長いsiRNA転写物中のヌクレオチド糖の2’位置において、ある変更を試験し、デオキシリボヌクレオチドのリボヌクレオチドでの置換が、特にウリジンのチミジンへの、および/またはシチジンのデオキシシチジンへの置換の場合において、「干渉活性の顕著な低下を生じる」ことを観察した。同上。さらに、この著者は、siRNAのセンスおよびアンチセンスらせんにおける4−チオウラシル、5−ブロモウラシル、5−ヨードウラシル、3−(アミノアリル)ウラシルの、ウラシルでの置換、およびイノシンのグアノシンでの置換を含む、ある塩基変更を試験し、いずれのらせん中に含まれる際にも、4−チオウラシルおよび5−ブロモウラシルが、すべて良好に耐容される一方、イノシンが、「干渉活性において顕著な低下を生じた」ことを見出した。5−ヨードウラシルおよび3−(アミノアリル)ウラシルの、アンチセンスらせんにおける導入の結果、RNAi活性の顕著な低下が同様にもたらされた。
Beach et al., 国際PCT公開WO 01/68836には、内因的に誘導されたdsRNAを用いた、遺伝子発現を減衰する特定の方法が記載されている。Tuschl et al., 国際PCT公開WO 01/75164には、ショウジョウバエインビトロRNAi系並びに、特定のsiRNA分子の、ある機能的ゲノムおよびある治療的適用のための使用が記載されている;しかし、Tuschl, 2001, Chem. Biochem., 2, 239-245では、「インターフェロン応答を活性化する危険」のために、RNAiを用いて、遺伝子的疾患またはウイルス感染を治療することができないのではないかと疑われている。Li et al., 国際PCT公開WO 00/44914には、ある標的遺伝子の発現の減衰において用いるための、特定のdsRNAの使用が記載されている。Zernicka-Goetz et al., 国際PCT公開WO 01/36646には、哺乳動物細胞における特定の遺伝子の発現を、あるdsRNA分子を用いて阻害するための、ある方法が記載されている。Fire et al., 国際PCT公開WO 99/32619には、遺伝子発現の阻害において用いるための、あるdsRNA分子を細胞中に導入する特定の方法が記載されている。
Plaetinck et al., 国際PCT公開WO 00/01846には、細胞中の特定の表現型を付与する原因となる特定の遺伝子を、特定のdsRNA分子を用いて同定するためのある方法が記載されている。Mello et al., 国際PCT公開WO 01/29058には、dsRNA媒介RNAiに関与する特定の遺伝子の同定が記載されている。Deschamps Depaillette et al., 国際PCT公開WO 99/07409には、ある抗ウイルス剤と組み合わされた、特定のdsRNA分子からなる特定の組成物が記載されている。Driscoll et al., 国際PCT公開WO 01/49844には、標的の生物における遺伝子サイレンシングの促進において用いるための、特定のDNA構造物が記載されている。Parrish et al., 2000, Molecular Cell, 6, 1977-1087には、C. elegansのunc−22遺伝子を標的する、特定の化学的に改変されたsiRNA構造物が記載されている。Tuschl et al., 国際PCT公開WO 02/44321には、ある合成siRNA構造物が記載されている。
本発明の組成物および方法
本発明は、抗Ovr110抗体を提供する。好ましくは、抗Ovr110抗体は、哺乳動物細胞上の細胞表面Ovr110に結合すると内部移行する。抗Ovr110抗体はまた、Ovr110を有する腫瘍細胞を破壊するか、またはこの破壊をもたらすことができる。
Ovr110は、内部移行競合的であることは、明らかではなかった。さらに、抗体が内部移行する能力は、親和性、結合活性、および抗体のアイソタイプ、およびこれが結合するエピトープを含むいくつかの要因に依存する。本発明者らは、本明細書中で、細胞表面Ovr110が、本発明の抗Ovr110抗体により結合すると内部移行競合的であることを例証した。さらに、本発明の抗Ovr110抗体が、インビボでOvr110発現腫瘍細胞を特定的に標的し、これらの細胞を阻害するかまたは死滅させることができることが、例証された。抗Ovr110抗体のこれらのインビボでの腫瘍標的、内部移行および増殖阻害特性により、これらの抗体が、例えば卵巣癌、膵臓癌、肺癌または乳癌を含む、種々の癌の処置における治療的使用に極めて好適となる。抗Ovr110抗体の内部移行は、例えば、抗体または抗体結合体が作用の細胞内部位を有する場合、およびこの抗体と結合した細胞毒性剤(例えば毒素カリケアマイシン)が血漿膜を容易に横断しない場合に、好ましい。内部移行は、抗体または抗体と結合した剤が作用の細胞内部位を有しない場合、例えば抗体が腫瘍細胞をADCCまたはある他の機構により死滅させることができる場合には、必要ではない。
本発明の抗Ovr110抗体はまた、種々の非治療的用途を有する。本発明の抗Ovr110抗体は、Ovr110発現癌の診断および段階分類のために有用であり得る(例えば放射性イメージングにおいて)。これらを、単独で、またはCA125、HE4およびメソセリンが含まれるが、これらには限定されない他の卵巣癌マーカーと組み合わせて、用いることができる。この抗体はまた、Ovr110を細胞から精製または免疫沈殿するのに、例えばELISAまたはウエスタンブロットにおいてインビトロでOvr110を検出および定量して、Ovr110発現細胞を他の細胞の精製における段階として混合された細胞の集団から死滅させ、排除するのに有用である。本発明の内部移行する抗Ovr110抗体は、本明細書中で「抗体」の定義により包含される種々の形態であってもよい。
従って、抗体は、全長の、または無傷な抗体、抗体断片、自然の配列の抗体またはアミノ酸変異体、ヒト化、キメラまたは融合抗体、免疫結合体およびこの機能的断片を含む。融合抗体において、抗体配列を、異種性のポリペプチド配列に融合させる。抗体を、Fc領域において変更して、所望のエフェクター機能を提供することができる。適切なFc領域について以下の章において一層詳細に記載するように、細胞表面上に結合した裸の抗体は、細胞毒性を、例えば抗体依存性細胞傷害(ADCC)により、または補体依存性細胞傷害において補体を獲得することにより、またはある他の機構により誘発することができる。あるいはまた、副作用または治療的複雑を最小にするために、エフェクター機能を消失させるかまたは低減させるのが望ましい場合において、ある他のFc領域を、用いることができる。
抗体は、本発明の抗体により結合された同一のエピトープに結合することについて競合し、または実質的にこれに結合することができる。本発明のこの抗Ovr110抗体の生物学的特徴を有する抗体、例えば、特にインビボでの腫瘍標的、内部移行およびすべての細胞増殖阻害または細胞毒性特徴を含む、ATCC受託番号PTA-5180、PTA-5855、PTA-5856およびPTA-5884に一致するハイブリドーマにより産生されたモノクローナル抗体の生物学的特徴を有する抗Ovr110抗体もまた、意図される。特定的に提供されるのは、ヒトOvr110のアミノ酸30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、90〜100、100〜110、110〜120、120〜130、130〜140、140〜150、150〜160、160〜170、170〜180、180〜190、190〜200、200〜210、210〜220、220〜230、230〜240、240〜250、250〜260、260〜270、270〜282において存在するエピトープに結合する、抗Ovr110抗体である。
上記の抗体を産生するための方法を、以下に詳細に記載する。
本発明の抗Ovr110抗体は、哺乳動物におけるOvr110発現癌を処置するかまたは癌の1つもしくは2つ以上の症状を寛解するのに、有用である。このような癌には、卵巣癌、膵臓癌、肺癌または乳癌、尿路の癌、肺癌、乳癌、結腸癌、膵臓癌および卵巣癌、さらに特に前立腺腺癌、腎臓細胞癌腫、直腸結腸腺癌、肺腺癌、肺扁平細胞癌腫および胸膜中皮腫が含まれる。この癌は、上記のいずれかの転移性癌、例えば卵巣癌、膵臓癌、肺癌または乳癌転移を包含する。この抗体は、哺乳動物においてOvr110を発現する癌細胞の少なくとも一部に結合することができ、好ましくはHAMA応答を誘発しないかまたはこれを最小化するものである。
好ましくは、抗体は、インビトロまたはインビボで、細胞上のOvr110に結合することにより、Ovr110発現腫瘍細胞を破壊するかもしくは死滅させるか、またはこのような腫瘍細胞の増殖を阻害するのに有効である。このような抗体は、裸の抗Ovr110抗体(いずれの剤にも結合していない)を含む。インビボでの腫瘍増殖阻害特性を有する裸のOvr110抗体には、以下の実験例に記載する抗体が含まれる。細胞毒性または細胞増殖阻害特性を有する裸の抗体を、さらに、細胞毒性剤と結合させて、これらを、腫瘍細胞破壊において尚一層有効にすることができる。細胞毒性特性を、抗Ovr110抗体に、例えばこの抗体を細胞毒性剤と結合させて、以下に記載するように免疫結合体を形成することにより付与することができる。細胞毒性剤または増殖阻害剤は、好ましくは、小さい分子である。毒素、例えばメイタンシン(maytansin)、メイタンシノイド(maytansinoid)、サポリン、ゲロニン、リシンまたはカリケアマイシンおよびこれらの類似体または誘導体が、好ましい。
本発明は、本発明の抗Ovr110抗体および担体を含む組成物を提供する。癌を処置する目的のために、組成物を、このような処置を必要としている患者に投与することができ、ここで、この組成物は、免疫結合体として、または裸の抗体として存在する1種または2種以上の抗Ovr110抗体を含むことができる。さらに、この組成物は、これらの抗体を、他の治療剤、例えば化学療法剤を含む細胞毒性または増殖阻害剤と組み合わせて含むことができる。本発明はまた、本発明の抗Ovr110抗体および担体を含む処方物を提供する。この処方物は、薬学的に許容し得る担体を含む治療的処方物であってもよい。
本発明の他の観点は、内部移行する抗Ovr110抗体をコードする、単離された核酸である。HおよびL鎖の両方並びに特に高頻度可変領域残基をコードする核酸、自然の配列の抗体および変異体をコードする鎖、抗体の変更された、およびヒト化された様式が、包含される。
本発明はまた、哺乳動物におけるOvr110発現癌を処置するかまたはこの癌の1つもしくは2つ以上の症状を寛解するのに有用な方法であって、内部移行する抗Ovr110抗体の治療的に有効な量を、該哺乳動物に投与することを含む、前記方法を提供する。この抗体治療組成物を、医師により指示されたように、短期間(急性)もしくは慢性的に、または間欠的に投与することができる。また提供されるのは、Ovr110発現細胞の増殖を阻害し、これを死滅させる方法である。最後に、本発明はまた、本発明の少なくとも1種の抗体、好ましくは本発明の少なくとも1種の内部移行する抗Ovr110抗体を含むキットおよび製造品を提供する。
抗Ovr110抗体を含むキットは、Ovr110発現の検出において、または治療的もしくは診断的アッセイにおいて、例えばOvr110細胞死滅アッセイのために、またはOvr110の細胞からの精製および/または免疫沈殿のために、用途が見出される。例えば、Ovr110の単離および精製のために、キットは、固体支持体、例えば組織培養プレートまたはビーズ(例えばセファロースビーズ)に結合した抗Ovr110抗体を含むことができる。インビトロでの、例えばELISAまたはウエスタンブロットにおけるOvr110の検出および定量のための抗体を含むキットを、提供することができる。検出に有用なこのような抗体に、標識、例えば蛍光または放射性標識を提供することができる。
抗Ovr110抗体の産生
以下に、本発明において有用な抗体の産生のための例示的な手法を記載する。これらの手法のいくつかを、さらに例1に記載する。抗体の産生のために用いるべきOvr110抗原は、例えば、膜貫通配列を欠いているOvr110の溶解性形態またはタンパク質の選択された部分に対する合成ペプチドを含む、全長ポリペプチドまたはこの一部であってもよい。
あるいはまた、細胞表面においてOvr110を発現する細胞(例えばOvr110を過剰発現するように形質転換されたCHOまたはNIH−3T3細胞;卵巣、膵臓、肺、乳房もしくは他のOvr110発現腫瘍細胞系)、またはこのような細胞から調製される膜を用いて、抗体を発生することができる。ヒトおよびマウスOvr110のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、前に示したように入手可能である。Ovr110は、標準的な組換えDNA方法を用いて、原核細胞、例えば細菌細胞、または真核細胞において組換え的に産生し、これから単離することができる。Ovr110を、タグ化(例えばエピトープタグ)として、または他の融合タンパク質として発現させて、種々のアッセイにおけるこの単離およびこの同定を容易にすることができる。
種々のタグおよび融合配列に結合する抗体または結合タンパク質は、以下に詳しく述べるように入手できる。抗体を発生するのに有用な他の形態のOvr110は、当業者に明らかである。
タグ
種々のタグポリペプチドおよびこれらのそれぞれの抗体が、当該分野において十分知られている。例には、ポリヒスチジン(ポリ−his)またはポリヒスチジングリシン(ポリ−his−gly)タグ;インフルエンザHAタグポリペプチドおよびこの抗体12CA5(Field et al., Mol. Cell. Biol., 8:2159-2165 (1988));c−mycタグ並びにこれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7および9E10抗体(Evan et al., Molecular and Cellular Biology, 5:3610-3616 (1985));並びに単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグおよびこの抗体(Paborsky et al., Protein Engineering, 3(6):547-553 (1990))が含まれる。FLAGペプチド(Hopp et al., BioTechnology, 6:1204-1210 (1988))は、抗FLAG M2モノクローナル抗体により認識される(Eastman Kodak Co., New Haven, CT)。FLAGペプチドを含むタンパク質の精製を、免疫親和性クロマトグラフィーにより、アガロースに共有結合した抗FLAG M2モノクローナル抗体を含むアフィニティーマトリックスを用いて行うことができる(Eastman Kodak Co., New Haven, CT)。他のタグポリペプチドには、KT3エピトープペプチド[Martin et al., Science, 255:192-194 (1992)];α−チューブリンエピトープペプチド(Skinner et al., J. Biol. Chenz., 266:15163-15166 (1991));およびT7遺伝子タンパク質ペプチドタグ(Lutz-Freyermuth et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6393-6397 (1990))が含まれる。
ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、好ましくは、動物、好ましくは非ヒト動物において、関連する抗原およびアジュバントの複数の皮下(sc)または腹腔内(ip)注射により生じる。関連する抗原(特に合成ペプチドを用いる際)を、免疫するべき種において免疫原性であるタンパク質に結合させることが、有用であり得る。例えば、抗原を、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、血清、ウシチログロブリン、または大豆トリプシン阻害剤に、二官能化または誘導化剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基による結合)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2またはRおよびR1が異なるアルキル基であるR1N=C=NRを用いて結合させることができる。結合体はまた、タンパク質融合として組換え細胞培養物中に作成することができる。
動物を、抗原、免疫原性結合体または誘導体に対して、例えば5〜100pgのタンパク質または結合体(それぞれウサギまたはマウスについて)を、3容量の完全フロイントアジュバントと混ぜ合わせ、溶液を皮内に、複数の部位において注射することにより免疫することができる。1ヶ月後、動物を、完全フロイントアジュバント中のペプチドまたは結合体の最初の量の1/5〜1/10で、複数の部位における皮下注射により追加免疫する。7〜14日後、動物を放血させ、血清を、抗体力価についてアッセイする。動物を、力価が水平状態になるまで追加免疫する。また、凝集剤、例えばミョウバンを、好適に用いて、免疫応答を増強する。
モノクローナル抗体
モノクローナル抗体を、最初にKohler et al., Nature, 256:495 (1975)により記載されたハイブリドーマ方法を用いて作成するか、または組換えDNA方法(米国特許第4,816,567号)により作成することができる。ハイブリドーマ方法において、マウスまたは他の適切なホスト動物、例えばハムスターを、上記したように免疫して、免疫のために用いられるタンパク質に特異的に結合する抗体を産生するかまたは産生することができるリンパ球を顕在化させる。あるいはまた、リンパ球を、インビトロで免疫することができる。免疫後、リンパ球を単離し、次に「融合パートナー」、例えば骨髄腫細胞系と、好適な融合剤、例えばポリエチレングリコールを用いて融合させて、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies. Principles and Practice, pp 103 (Academic Press, 1986))。
このように調製したハイブリドーマ細胞を、好適な培養培地中に播種し、この中で増殖させ、この培地は、好ましくは、融合していない融合パートナー、例えば親骨髄腫細胞の増殖または生存を阻害する1種または2種以上の物質を含む。例えば、親骨髄腫細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠いている場合には、ハイブリドーマのための選択的な培養培地は、典型的に、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含み(HAT培地)、この物質が、HGPRT欠乏細胞の増殖を防止する。
好ましい融合パートナー骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞により抗体の安定な高レベル産生を支持し、融合していない親細胞に対して選択する選択的培地に感受性であるものである。好ましい骨髄腫細胞系は、マウス骨髄腫系、例えばSalk Institute Cell Distribution Center, San Diego, California USAから入手できるMOPC−21およびMPC−IIマウス腫瘍から由来するもの並びにSP−2および誘導体、例えばアメリカンタイプカルチャーコレクション、Rockville, Maryland USAから入手できるX63−Ag8−653細胞である。ヒト骨髄腫細胞およびマウス−ヒトヘテロ骨髄腫(heteromyeloma)細胞系はまた、ヒトモノクローナル抗体の産生について記載されている(Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984);およびBrodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
ハイブリドーマ細胞が増殖する培養培地を、抗原に対して向けられたモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されたモノクローナル抗体の結合特異性を、免疫沈殿により、またはインビトロ結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により決定する。
モノクローナル抗体の結合親和性を、例えば、Munson et al., Anal. Biochem., 107:220 (1980)に記載されているScatchard分析により決定することができる。所望の特異性、親和性および/または活性を有する抗体を産生するハイブリドーマ細胞を同定した後に、クローンを、制限希釈手順によりサブクローニングし、標準的な方法により増殖させることができる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp 103 (Academic Press, 1986))。この目的に適する培養培地には、例えば、D−MEMまたはRPMI−1640培地が含まれる。さらに、ハイブリドーマ細胞を、インビボで、腹水腫瘍として、動物において、例えば細胞のマウス中へのi.p.注射により増殖させることができる。
サブクローンにより選択されたモノクローナル抗体を、培養培地、腹水流体または血清から、慣用の抗体精製手順、例えばアフィニティークロマトグラフィー(例えばプロテインAまたはプロテインG−セファロースを用いて)またはイオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析などにより好適に分離する。
モノクローナル抗体をコードするDNAを、慣用の手順を用いて(例えばマウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)、容易に単離し、配列決定する。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源として作用する。単離した後に、DNAを、発現ベクター中に配置し、次にこれを、他の方法では抗体タンパク質を産生しない、原核または真核ホスト細胞、例えば大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または骨髄腫細胞に形質転換または形質移入して、組換えホスト細胞中にモノクローナル抗体の合成を得ることができる。抗体をコードするDNAの細菌における組換え発現についての概説記事は、Skerra et al., Curr. Opinion in Immunol., 5:256-262 (1993)およびPhickthun, Immunol. Revs., 130:151-188 (1992)を含む。
さらに、モノクローナル抗体または抗体断片を、McCafferty et al., Nature, 348:552-554 (1990)中に記載された手法を用いて発生した抗体ファージライブラリーから単離することができる。Clackson et al., Nature, 352:624-628 (1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)には、ファージライブラリーを用いた、それぞれマウスおよびヒト抗体の単離が記載されている。その後の刊行物には、抗親和性(nM範囲)ヒト抗体の、連鎖混合による産生(Marks et al., Bio/Technology, 10:779-783 (1992))、並びに極めて大きいファージライブラリーを構成するための方法としての、組み合わせ感染およびインビボ組換え(Waterhouse et al., Nuc. Acids. Res., 21:2265-2266 (1993))が記載されている。従って、これらの手法は、モノクローナル抗体を単離するための伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ手法に代わる実行可能な代替法である。
抗体をコードするDNAを、例えばヒト重鎖および軽鎖定常ドメイン(CHおよびCL)配列を、相同的なマウス配列で置換することにより(米国特許第4,816,567号;およびMorrison, et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA, 81:6851 (1984))、または免疫グロブリンコード配列を、非免疫グロブリンポリペプチド(異種性ポリペプチド)についてのコード配列の全部または一部と融合することにより、キメラまたは融合抗体ポリペプチドを産生するように改変することができる。非免疫グロブリンポリペプチド配列を、抗体の定常ドメインで置換することができるか、またはこれらを、抗体の1つの抗原組み合わせ部位の可変ドメインで置換して、1つの抗原への特異性を有する1つの抗原組み合わせ部位および異なる抗原への特異性を有する他の抗原組み合わせ部位を含むキメラの2価の抗体を作成する。
ヒト化抗体
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当該分野において記載されている。好ましくは、ヒト化された抗体は、この中に非ヒトである供給源から導入された1つまたは2つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「移入」残基と呼ばれ、これは、典型的には、「移入」可変ドメインから採取される。ヒト化は、本質的に、Winterおよび共同研究者の方法に従って(Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986); Reichmann et al., Nature, 332:323-327 (1988); Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536 (1988))、高頻度可変領域配列をヒト抗体の対応する配列で置換することにより行うことができる。従って、このような「ヒト化された」抗体は、キメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号)、ここで、無傷のヒト可変ドメインより顕著に小さいものが、非ヒト種からの対応する配列により置換されている。実際に、ヒト化された抗体は、典型的には、いくつかの高頻度可変領域残基および場合によってはいくつかのFR残基が、げっ歯動物抗体における同様の部位からの残基により置換されている、ヒト抗体である。
ヒト化された抗体の作成において用いるべき、軽および重の両方のヒト可変ドメインの選択は、抗体がヒトの治療的使用を意図する際には、抗原性およびHAMA応答(ヒト抗マウス抗体)を低減するのに極めて重要である。いわゆる「ベストフィット」方法において、げっ歯動物抗体の可変ドメインの配列を、既知のヒト可変ドメイン配列の全体のライブラリーに対してスクリーニングする。げっ歯動物のものに最も近いヒトVドメイン配列を同定し、この中のヒトフレームワーク領域(FR)が、ヒト化抗体のために受容される(Sims et al., J. Immunol., 151:2296 (1993); Chothia et al., J. Mol. Biol., 196:901 (1987))。他の方法は、軽鎖または重鎖の特定の従属群のすべてのヒト抗体のコンセンサス配列から由来する、特定のフレームワーク領域を用いる。同一のフレームワークを、いくつかの異なるヒト化された抗体のために用いることができる(Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992); Presta et al., J. Immunol., 151:2623 (1993))。
抗体が、抗原に対する高い結合親和性および他の好ましい生物学的特性を維持してヒト化されるのが、さらに重要である。この目的を達成するために、好ましい方法において、ヒト化された抗体を、親およびヒト化された配列の三次元モデルを用いて、親配列の分析のプロセスおよび種々の概念的なヒト化生成物により調製する。三次元免疫グロブリンモデルは、一般的に入手可能であり、当業者に精通されている。
選択された候補の免疫グロブリン配列の可能な三次元高次構造を例示し、表示するコンピュータープログラムは、入手可能である。これらの表示の検査により、候補の免疫グロブリン配列の機能における残基の可能性のある作用の分析、即ちこの抗原に結合する候補の免疫グロブリンの能力に影響する残基の分析が、可能になる。このようにして、FR残基を、受容者から選択し、組み合わせ、配列を移入して、所望の抗体特性、例えば1または2以上の標的抗原への増大した親和性を、達成することができる。一般的に、高頻度可変領域残基は、抗原結合への影響において直接的に、および最も実質的に関与する。
ヒト化された抗Ovr110抗体の種々の形態が、意図される。例えば、ヒト化された抗体は、随意に1種または2種以上の細胞毒性剤と結合して、免疫結合体を生じる抗体断片、例えばFabであってもよい。あるいはまた、ヒト化された抗体は、無傷の抗体、例えば無傷のIgG1抗体であってもよい。
ヒト抗体
ヒト化の代替として、ヒト抗体を発生することができる。例えば、現在では、免疫により、内因性免疫グロブリン産生の不存在下でヒト抗体の完全なレパートリーを生じることができる遺伝子組換え動物(例えばマウス)を生じることが可能である。例えば、キメラおよび生殖系列突然変異マウスにおける抗体重鎖接合領域(JH)遺伝子のホモ接合性欠失の結果、内因性抗体産生の完全な阻害がもたらされることが、記載された。ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの、このような生殖系列突然変異マウス中への移動の結果、抗原チャレンジによりヒト抗体の産生がもたらされる。例えば、Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551 (1993); Jakobovits et al., Nature, 362:255-258 (1993); Bruggemann et al., Year in Immuno., 7:33 (1993);米国特許第5,545,806号、5,569,825号、5,591,669号(すべてGenPharm);5,545,807号を参照;および、あるいはまた、ファージ提示法手法(McCafferty et al., Nature 348:552-553 (1990))を用いて、ヒト抗体および抗体断片を、インビトロで、免疫していない供与者からの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから産生することができる。この手法において、抗体Vドメイン遺伝子を、インフレームで、糸状バクテリオファージ、例えばMl3またはfdの主要な、または主要でない被覆タンパク質遺伝子のいずれか中にクローニングし、ファージ粒子の表面上の機能的抗体断片として表示する。
糸状粒子が、ファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含むため、抗体の機能的な特性に基づく選択の結果、また、これらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択がもたらされる。従って、このファージは、B細胞の特性のいくつかを模倣する。ファージ提示法を、種々の様式で行うことができ、これは、例えば、Johnson, Kevin S. and Chiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology 3:564-571 (1993)中に概説されている。V遺伝子セグメントのいくつかの供給源を、ファージ提示法のために用いることができる。Clackson et al., Nature, 352:624-628 (1991)は、抗オキサゾロン抗体の種々のアレイを、免疫したマウスの脾臓から由来するV遺伝子の小さい無秩序な組み合わせライブラリーから単離した。免疫していないヒト供与者からのV遺伝子のレパートリーを構成することができ、抗原(自己抗原を含む)の種々のアレイに対する抗体を、本質的にMarks et al., J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991)またはGriffith et al., EMBO J. 12:725-734 (1993)により記載された手法に従って単離することができる。また米国特許第5,565,332号および5,573,905号を参照。上記したように、ヒト抗体を、また、インビトロ活性化B細胞により発生することができる(米国特許第5,567,610号および5,229,275号を参照)。
抗体断片
ある状況において、全体の抗体よりむしろ抗体断片を用いる利点がある。断片の一層小さい大きさにより、迅速なクリアランスが可能になり、固体腫瘍に対して改善された接近がもたらされ得る。種々の手法が、抗体断片の産生のために開発された。伝統的に、これらの断片は、無傷の抗体のタンパク質分解消化により由来した(例えば、Morimoto et al., Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992);およびBrennan et al., Science, 229:81 (1985)を参照)。しかし、これらの断片は、現在では、組換えホスト細胞により直接産生することができる。Fab、FvおよびScFv抗体断片は、すべて、大腸菌において発現され、これから分泌され得、従って大量のこれらの断片の容易な産生が可能になる。抗体断片を、上記した抗体ファージライブラリーから単離することができる。
あるいはまた、Fab’−SH断片を、大腸菌から直接回収し、化学的に結合させて、F(ab)2断片を形成することができる(Carter et al., Bio/Technology 10: 163-167 (1992))。他の方法において、F(ab)2断片を、組換えホスト細胞培養物から直接単離することができる。サルベージレセプター結合エピトープ残基を含む、増大したインビボでの半減期を有するFabおよびF(ab)2断片は、米国特許第5,869,046号に記載されている。抗体断片の産生のための他の手法は、技術のある実行者に明らかである。選択された抗体はまた、一本鎖Fv断片(scFv)であってもよい。WO 93/16185;米国特許第5,571,894号および米国特許第5,587,458号を参照。FvおよびsFvは、定常領域を欠いている無傷の組み合わせ部位を有する唯一の種である;従って、これらは、インビボで用いる間に低下した非特異的結合に適する。sFv融合タンパク質を構成して、sFvのアミノまたはカルボキシ末端のいずれかにおいてエフェクタータンパク質の融合を得ることができる。Antibody Engineering, Borrebaeck編、上記を参照。抗体断片はまた、例えば米国特許第5,641,870号に記載されているように、「直線状抗体」であってもよい。このような直線状抗体断片は、単一選択性または二重選択性であってもよい。
二重選択性抗体
二重選択性抗体は、少なくとも2種の異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体である。例示的な二重選択性抗体は、Ovr110タンパク質の2種の異なるエピトープに結合することができる。他のこのような抗体は、Ovr110結合部位を、他のタンパク質についての結合部位と組み合わせることができる。あるいはまた、抗Ovr110アームを、白血球、例えばT細胞レセプター分子(例えばC133)またはIgGについてのFcレセプター(FcγR)、例えばFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)およびFcγRIII(CD16)上のトリガー分子に結合するアームと組み合わせて、細胞防御機構をOvr110発現細胞に集中させ、局在化させることができる。二重選択性抗体を、また、細胞毒性剤をOvr110を発現する細胞に局在化させるために用いることができる。これらの抗体は、Ovr110結合アームおよび細胞毒性剤(例えばサポリン、抗インターフェロンα、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキセートまたは放射性同位体ハプテン)に結合するアームを有する。二重選択性抗体を、全長抗体または抗体断片(例えばF(ab)2二重選択性抗体)として調製することができる。WO 96/16673には、二重選択性抗ErbB2/抗FcγRIII抗体が記載されており、米国特許第5,837,234号には、二重選択性抗ErbB2/抗FcγRI抗体が開示されている。二重選択性抗ErbB2/Fcα抗体は、WO98/02463中に示されている。米国特許第5,821,337号には、二重選択性抗ErbB2/抗CD3抗体が教示されている。
二重選択性抗体を作成する方法は、当該分野において知られている。全長二重選択性抗体の伝統的な産生は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の同時発現に基づいており、ここで、2つの鎖は、異なる特異性を有する(Millstein et al., Nature, 305:537-539 (1983))。免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の無秩序な分類のために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子の可能な混合物を産生し、この中で、1個のみが、正確な二重選択性構造を有する。通常アフィニティークロマトグラフィー段階により行われる、正確な分子の精製は、いくらか面倒であり、生成物の収量は、低い。同様の手順は、WO 93/08829中に、およびTraunecker et al., EMBO J., 10:3655-3659 (1991)中に開示されている。
種々の方法により、所望の結合特異性(抗体−抗原組み合わせ部位)を有する抗体可変ドメインが、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。好ましくは、この融合は、少なくともヒンジ、CH2およびCH3領域の一部を含むIg重鎖定常ドメインとである。軽鎖結合に必要な部位を含み、融合の少なくとも1つに存在する、第1の重鎖定常領域(CHI)を有するのが、好ましい。免疫グロブリン重鎖融合および所望により免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを、別個の発現ベクター中に挿入し、好適なホスト細胞中に同時形質移入する。これにより、構造において用いられる3つのポリペプチド鎖の等しくない比率により、所望の二重選択性抗体の最適な収量が得られる際の態様において、3つのポリペプチド断片の相互の比率を調整する際の一層大きい柔軟性が得られる。しかし、等しい比率での少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現の結果、高い収量が得られる際、または比率が、所望の鎖の組み合わせの収量に対して顕著な影響を及ぼさない際には、2つまたはすべての3つのポリペプチド鎖についてのコード配列を、単一の発現ベクター中に挿入することが、可能である。
好ましくは、この方法における二重選択性抗体は、一方のアーム中に第1の結合特異性を有するハイブリッドの免疫グロブリン重鎖および他方のアーム中のハイブリッドの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性を提供する)から構成されている。この非対称構造により、所望の二重選択性化合物を、所望でない免疫グロブリン鎖組み合わせから分離するのが容易になり、これは、二重選択性分子の1つのみの半分の部分中の免疫グロブリン軽鎖の存在により、分離の容易な方法が提供されるからであることが、見出された。この方法は、WO 94/04690中に開示されている。二重選択性抗体を生じるさらなる詳細について、例えば、Suresh et al., Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照。
米国特許第5,731,168号に記載されている他の方法において、一対の抗体分子の間の界面を設計して、組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体の百分率を最大にすることができる。好ましい界面は、CH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法において、第1の抗体分子の界面からの1つまたは2つ以上の小さいアミノ酸側鎖が、一層大きい側鎖(例えばチロシンまたはトリプトファン)で置換される。1つまたは2つ以上の大きい側鎖と同一であるか、またはこれと類似した大きさの、補償的な「空洞」が、第2の抗体分子の界面上に、大きいアミノ酸側鎖を一層小さいもの(例えばアラニンまたはスレオニン)で置換することにより作成される。これにより、ヘテロ二量体の収量を、他の所望でない最終生成物、例えばホモ二量体に対して増大するための機構が提供される。
二重選択性抗体には、架橋した、または「ヘテロ結合した(heteroconjugate)」抗体が含まれる。例えば、ヘテロ結合体中の抗体の一方を、アビジンに結合させ、他方をビオチンに結合させることができる。このような抗体は、例えば、所望でない細胞に対する(米国特許第4,676,980号)、およびHIV感染の処置のための(WO 91/00360、WO 92/200373およびEP 03089)免疫系細胞を標的することが提案されている。ヘテロ結合抗体を、すべての慣用の架橋方法を用いて作成することができる。好適な架橋剤は、当該分野において十分知られており、米国特許第4,676,980号に、多くの架橋手法と共に開示されている。
二重選択性抗体を抗体断片から生じるための手法はまた、文献に記載されている。例えば、二重選択性抗体を、化学的結合を用いて調製することができる。Brennan et al., Science, 229: 81 (1985)には、無傷の抗体を、タンパク質分解的に切断して、F(ab’)2断片を発生させる手順が記載されている。これらの断片は、ジチオール錯化剤、ヒ酸ナトリウムの存在下で還元されて、近隣のジチオールを安定化し、分子間ジスルフィド形成を防止する。次に、生じたFab’断片を、チオニトロ安息香酸塩(TNB)誘導体に変換する。次に、Fab’−TNB誘導体の1つを、Fab’−チオールに、メルカプトエチルアミンで還元することにより再び変換し、等モル量の他のFab’−TNB誘導体と混合して、二重選択性抗体を形成する。生成した二重選択性抗体を、酵素の選択的固定化のための剤として用いることができる。
最近の進行により、大腸菌からのFab’−SH断片の直接的な回収が容易になり、これを、化学的に結合して、二重選択性抗体を形成することができる。Shalaby et al., J. Exp. Med., 175: 217-225 (1992)には、完全にヒト化された二重選択性抗体F(ab’)2分子の産生が記載されている。各々のFab’断片は、大腸菌から別個に分泌されており、これに、インビトロでの定方向化学的カップリングを施して、二重選択性抗体を形成した。このようにして形成した二重選択性抗体は、ErbB2レセプターを過剰発現する細胞および正常なヒトT細胞に結合し、ヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞毒性リンパ球の溶解活性を誘発することができた。
二重選択性抗体断片を、組換え細胞培養物から直接作成し、単離するための種々の手法がまた、記載されている。例えば、二重選択性抗体は、ロイシンジッパーを用いて産生された。Kostelny et al., J. Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)。FosおよびJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドが、2種の異なる抗体のFab’部分に、遺伝子融合により結合された。抗体ホモ二量体を、ヒンジ領域において還元して、モノマーを形成し、次に再び酸化して、抗体ヘテロ二量体を形成する。また、この方法を、抗体ホモ二量体の産生のために用いることができる。
Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記載された「ダイアボディー」手法により、二重選択性抗体断片を作成するための代替の機構が提供された。この断片は、同一の鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーによりVLに結合するVHを含む。従って、1つの断片のVHおよびVLドメインを、他の断片の相補的なVLおよびVHドメインと対形成し、これにより2つの抗原結合部位を形成するように強制する。一本鎖Fv(sFv)二量体を用いることにより二重選択性抗体断片を作成するための他の方法がまた、報告されている。Gruber et al., J. Immunol., 152:5368 (1994)を参照。
2よりも大きい価数を有する抗体が、意図される。例えば、三重選択性抗体を、調製することができる。Tutt et al. J. Immunol. 147: 60 (1991)。
多価抗体
多価抗体は、抗体が結合する抗原を発現する細胞により、2価の抗体よりも迅速に内部移行する(および/または異化する)ことができる。本発明の抗体は、3つまたは4つ以上の抗原結合部位を有する(IgM群以外である)多価の抗体(例えば4価の抗体)であってもよく、これは、抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組換え発現により、容易に産生され得る。多価の抗体は、二量体化ドメインおよび3つまたは4つ以上の抗原結合部位を含むことができる。好ましい二量体化ドメインは、Fc領域またはヒンジ領域を含む(またはこれからなる)。この筋書きにおいて、抗体は、Fc領域および、Fc領域に対する3つまたは4つ以上の抗原結合部位アミノ末端を含む。
本明細書中で好ましい多価抗体は、3個〜約8個、しかし好ましくは4個の、抗原結合部位を含む(またはこれからなる)。多価抗体は、少なくとも1つのポリペプチド鎖(および好ましくは2つのポリペプチド鎖)を含み、ここで、1つまたは2つ以上のポリペプチド鎖は、2つまたは3つ以上の可変ドメインを含む。例えば、1つまたは2つ以上のポリペプチド鎖は、VDl(X1n−VD2−(X2)n−Fcを含むことができ、ここで、VD1は、最初の可変ドメインであり、VD2は、2番目の可変ドメインであり、Fcは、Fc領域の1つのポリペプチド鎖であり、X1およびX2は、アミノ酸またはポリペプチドを表し、nは、0または1である。例えば、1つまたは2つ以上のポリペプチド鎖は、以下のものを含むことができる:VH−CHI−柔軟リンカー−VH−CHI−Fc領域鎖;またはVH−CHI−VH−CHI−Fc領域鎖。本明細書中の多価抗体は、好ましくは、さらに、少なくとも2つ(および好ましくは4つ)の軽鎖可変ドメインポリペプチドを含む。本明細書中の多価抗体は、例えば、約2個〜約8個の軽鎖可変ドメインポリペプチドを含むことができる。本明細書中で意図する軽鎖可変ドメインポリペプチドは、軽鎖可変ドメインを含み、随意にさらにCLドメインを含む。
他のアミノ酸配列改変
本明細書中に記載した抗Ovr110抗体の1または2以上のアミノ酸配列改変が、意図される。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を改善するのが望ましい場合がある。抗Ovr110抗体のアミノ酸配列変異体を、適切なヌクレオチド変化を抗Ovr110抗体核酸中に導入することにより、またはペプチド合成により調製する。
このような改変には、例えば、抗Ovr110抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失および/またはこの中への挿入および/またはこの置換が含まれる。最終的な構造物が、所望の特徴を有する場合には、欠失、挿入および置換のすべての組み合わせを行って、最終的な構造物に到達する。アミノ酸変化はまた、抗Ovr110抗体の翻訳後プロセス、例えばグリコシル化部位の数または位置の変化を変化させ得る。
変異原性のための好ましい位置である抗Ovr110抗体のある残基または領域の同定に有用な方法は、Cunningham and Wellsにより、Science, 244:1081-1085 (1989)中に記載されているように、「アラニン走査変異原性」と呼ばれる。ここで、抗Ovr110抗体内の残基または標的の残基の群(例えば、帯電した残基、例えばarg、asp、his、lysおよびglu)を同定し、中性の、または負に帯電したアミノ酸(最も好ましくはアラニンまたはポリアラニン)により置換して、アミノ酸のOvr110抗原との相互作用に影響する。
次に、置換に対する機能的な感受性を例証するアミノ酸の位置を、置換の部位において、またはこの部位についてさらなる、または他の変種を導入することにより精巧にする。従って、アミノ酸配列の変更を導入するための部位が、予め決定されている一方、これ自体の突然変異の性質を、予め決定する必要はない。例えば、所定の部位における突然変異の性能を分析するために、ala走査または無秩序な変異原性を、標的コドンまたは領域において行い、発現された抗Ovr110抗体変異体を、所望の活性についてスクリーニングする。
アミノ酸配列挿入には、1個の残基から、100個またはこれ以上の残基を含むポリペプチドまでの長さの範囲内のアミノおよび/またはカルボキシル末端融合、並びに単一の、または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗Ovr110抗体、または細胞毒性ポリペプチドに融合した抗体が含まれる。抗Ovr110抗体分子の他の挿入変更には、酵素に対する(例えばADEPTについての)抗Ovr110抗体のNもしくはC末端への融合または抗体の血清半減期を増大させるポリペプチドへの融合が含まれる。
変異体の他のタイプは、アミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、少なくとも1個のアミノ酸残基を、異なる残基により置換された抗Ovr110抗体分子中に有する。置換変異原性に最も大きく関連する部位には、高頻度可変領域が含まれるが、FR変化がまた、意図される。保存的置換を、「好ましい置換」の見出しの下に、表Iに示す。このような置換により、生物学的活性の変化がもたらされる場合には、表1において「例示的な置換」と命名されているか、またはアミノ酸群に関して以下にさらに記載されている、一層実質的な変化を、導入し、生成物を、所望の特性についてスクリーニングすることができる。
抗体の生物学的特性における実質的な改変が、(a)例えばシートもしくはらせん高次構造としての、置換の領域におけるポリペプチド主鎖の構造、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の嵩を維持することに対するこれらの効果において顕著に異なる置換を選択することにより達成される。天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいて群に分けられる:
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、lie;(2)中性の親水性:cys、ser、thr;(3)酸性:asp、glu;(4)塩基性:asn、gin、his、lys、arg;(5)鎖配向に影響する残基:gly、pro;および(6)芳香族:trp、tyr、phe。
非保存性置換は、これらの群の1つの要素の他の群のものでの交換を伴う。抗Ovr110抗体の適切な高次構造を維持する際に伴われないすべてのシステイン残基はまた、一般的にセリンで置換されて、分子の酸化的安定性が改善され、異常な架橋が防止され得る。逆に、1または2以上のシステイン結合を、抗体に加えて、この安定性を改善することができる(特に、抗体が、抗体断片、例えばFv断片である際)。
置換変異の特に好ましいタイプは、親抗体(例えばヒト化またはヒト抗体)の1つまたは2つ以上の高頻度可変領域残基の置換を伴う。一般的に、さらなる発生について選択された、得られた1種または2種以上の変異体は、これらが発生する親抗体に対して改善された生物学的特性を有する。このような置換変異体を生じるための好都合な方法は、ファージ提示法を用いた親和性成熟を伴う。要するに、いくつかの高頻度可変領域部位(例えば6〜7部位)を変異させて、各々の部位において可能なアミノ酸置換のすべてを生じる。このようにして生じた抗体変種を、糸状ファージ粒子から、各々の粒子内に包装されたMl3の遺伝子III生成物への融合として、1価の様式で提示する。次に、ファージ提示された変種を、本明細書中に開示したように、これらの生物学的活性(例えば結合親和性)についてスクリーニングする。改変のための候補の高頻度可変領域部位を同定するために、アラニン走査変異原性を行って、抗原結合に顕著に寄与する高頻度可変領域残基を同定することができる。あるいはまた、またはさらに、抗原−抗体複合対の結晶構造を分析して、抗体とヒトOvr110との間の接触点を同定するのが、有益であり得る。このような接触残基および隣接する残基は、本明細書中で詳しく述べる手法による置換のための候補である。このような変異体が生じた後に、変異体のパネルに、本明細書中に記載したようにスクリーニングを施し、1つまたは2つ以上の関連するアッセイにおける優れた特性を有する抗体を、さらなる発生について選択することができる。
抗体の他のタイプのアミノ酸変異体は、抗体の最初のグリコシル化パターンを変化させる。変化させるにより、抗体中に見出される1つもしくは2つ以上の炭水化物部分の欠失、および/または抗体中に存在しない1つもしくは2つ以上のグリコシル化部位の添加を意味する。抗体のグリコシル化は、典型的には、Nに結合しているか、またはOに結合している。Nに結合しているは、炭水化物部分が、アスパラギン残基の側鎖に結合していることを意味する。Xがプロリン以外のすべてのアミノ酸である、トリペプチド配列アスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−スレオニンは、炭水化物部分のアスパラギン側鎖への酵素的結合のための認識配列である。従って、これらのトリペプチド配列のいずれかが、ポリペプチド中に存在することにより、有効なグリコシル化部位が作成される。
Oに結合したグリコシル化は、糖N−アセチルガラクトサミン、ガラクトースまたはキシロースの1つの、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンへの結合を意味するが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリシンもまた、用いることができる。クリコシル化部位の抗体への添加が、アミノ酸配列を変化させて、これが、上記したトリペプチド配列の1つまたは2つ以上を含むようにする(Nに結合したグリコシル化部位について)ことにより好都合に達成される。変化はまた、1つまたは2つ以上のセリンまたはスレオニン残基の、最初の抗体の配列への添加、またはこれによる置換によりなされ得る(Oに結合したグリコシル化部位について)。
抗Ovr110抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子を、当該分野において知られている種々の方法により調製する。これらの方法には、自然の供給源からの単離(天然に存在するアミノ酸配列変異体の場合において)またはオリゴヌクレオチド媒介(もしくは部位特異的な)変異原性、PCR変異原性および抗Ovr110抗体の変異体もしくは非変異体方式をコードする、比較的早期に調製された核酸分子のカセット変異原性による調製が含まれるが、これらには限定されない。
本発明の抗体を、エフェクター機能に関して改変して、例えば抗体の抗原依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害(CDC)を増強するのが、望ましい場合がある。これを、抗体のFc領域における1つまたは2つ以上のアミノ酸置換を導入することにより達成することができる。あるいはまた、またはさらに、1個または2個以上のシステイン残基を、Fc領域中に導入して、これによりこの領域における鎖間ジスルフィド結合形成を可能にすることができる。このようにして生じたホモ二量体抗体は、改善された内部移行能力および/または増大した補体媒介細胞死滅および抗体依存性細胞傷害(ADCC)を有することができる。Caron et al., J. Exp Med. 176:1191-1195 (1992)およびShopes, B. J. Immunol. 148:2918-2922 (1992)を参照。増強した抗腫瘍活性を有するホモ二量体抗体をまた、Wolff et al. Cancer Research 53:2560-2565 (1993)中に記載されたように、ヘテロ二官能性架橋を用いて調製することができる。あるいはまた、二重のFc領域を有し、これにより増大した補体溶解およびADCC能力を有することができる抗体を設計することができる。Stevenson et al. Anti-Cancer Drug Design 3:219-230 (1989)を参照。
抗体の血清半減期を増大するために、例えば米国特許第5,739,277号に記載されているように、サルベージレセプター結合エピトープを抗体(特に抗体断片)中に導入することができる。本明細書中で用いる用語「サルベージレセプター結合エピトープ」は、抗体のFc領域のエピトープを意味する。
所望の特性を有する抗体についてのスクリーニング
抗体を発生させるための手法は、上記で記載した。さらに、所望により、ある生物学的特性を有する抗体を選択することができる。
本発明の抗Ovr110抗体の増殖阻害効果を、当該分野において知られている方法により、例えば内因的に、またはOvr110遺伝子での形質移入に続いてOvr110を発現する細胞を用いて評価することができる。例えば、以下の例1に提供する腫瘍細胞系およびOvr110形質移入細胞を、本発明の抗Ovr110モノクローナル抗体で、種々の濃度において、数日(例えば2〜7日)にわたり処理し、クリスタルバイオレットもしくはMTTで染色し、またはある他の比色アッセイにより分析することができる。増殖を測定する他の方法は、本発明の抗Ovr110抗体の存在下で、または不存在下で処理した細胞による3H−チミジン取り込みを比較することによる。抗体処理の後、細胞を収穫し、DNA中に導入された放射性の量を、シンチレーションカウンターにおいて定量する。適切な正の対照には、選択された細胞系の、当該細胞系の増殖を阻害することが知られている増殖阻害抗体での処理が含まれる。インビボでの腫瘍細胞の増殖阻害を、以下の実験例の章において記載したように、種々の方法において決定することができる。好ましくは、腫瘍細胞は、Ovr110を過剰発現するものである。
好ましくは、抗Ovr110抗体は、インビトロまたはインビボでOvr110発現腫瘍細胞の細胞増殖を、約0.5〜30μg/mlの抗体濃度において、未処理の腫瘍細胞と比較して、約25〜100%、一層好ましくは約30〜100%、およびさらに一層好ましくは約50〜100%または70〜100%阻害する。増殖阻害を、細胞培養物中で、約0.5〜30μg/mlまたは約0.5nM〜200nMの抗体濃度において測定することができ、ここで、増殖阻害を、腫瘍細胞を抗体に曝露してから1〜10日後に決定する。抗体は、約1μg/体重1kg〜約100mg/体重1kgにおける抗Ovr110抗体の投与により、抗体の最初の投与から約5日〜3ヶ月以内、好ましくは約5〜30日以内に腫瘍の大きさまたは腫瘍細胞増殖の減少がもたらされた場合に、インビボで増殖阻害的である。
細胞死を誘発する抗体を選択するために、例えばプロピジウムヨージド(PI)、トリパンブルーまたは7AAD取り込みにより示される膜完全性の損失を、対照に対して評価することができる。PI取り込みアッセイを、補体および免疫エフェクター細胞の不存在において行うことができる。Ovr110発現腫瘍細胞を、培地のみ、または例えば約10μg/mlにおいて適切なモノクローナル抗体を含む培地と共にインキュベートする。細胞を、3日の期間にわたりインキュベートする。各々の処理に続いて、細胞を、35mmの濾過器でキャップした12×75の管(管あたり1ml、処理群あたり3つの管)中に、細胞凝集塊の除去のために洗浄し、等分する。次に、管に、PI(10μg/ml)を施与する。試料を、FACSCAN(登録商標)フローサイトメーターおよびFACSCONVERT(登録商標)CellQuestソフトウエア(Becton Dickinson)を用いて分析することができる。PI取り込みにより決定されたように、統計的に有意なレベルの細胞死を誘発する抗体を、細胞死誘発抗体として選択することができる。
関連する抗体により結合されたOvr110上のエピトープに結合する抗体、例えば本発明のOvr110抗体についてスクリーニングするために、Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Harlow and David Lane編(1988)中に記載されているような、常習的なクロスブロッキングアッセイを、行うことができる。このアッセイを用いて、試験抗体が、本発明の抗Ovr110抗体と同一の部位またはエピトープに結合するか否かを決定することができる。あるいはまた、またはさらに、エピトープマッピングを、当該分野において知られている方法により行うことができる。例えば、抗体配列を、例えばアラニン走査により変異誘発して、接触残基を同定することができる。変異体抗体を、最初にポリクローナル抗体との結合について試験して、適切な折り畳みを裏付ける。異なる方法において、Ovr110の種々の領域に対応するペプチドを、試験抗体または試験抗体および特徴づけられた、もしくは既知のエピトープを有する抗体を用いた競合アッセイにおいて用いることができる。
例えば、本発明の抗体により結合されたエピトープに結合する抗体についてスクリーニングするための方法は、Ovr110含有試料を試験抗体および本発明の抗体と混ぜ合わせて、混合物を形成することを含むことができ、次に混合物中のOvr110に結合したOvr110抗体のレベルを決定し、混合物中で結合したOvr110抗体のレベルに対して、対照混合物に対して比較し、ここで、対照と比較しての混合物中のOvr110に結合したOvr110抗体のレベルは、本発明の抗Ovr110抗体により結合されたエピトープへの試験抗体の結合の指標である。Ovr110に結合したOvr110抗体のレベルを、ELISAにより決定する。対照は、正の対照または負の対照または両方であってもよい。例えば、対照は、Ovr110、本発明のOvr110抗体および本発明のOvr110抗体により結合されるエピトープに結合することが知られている抗体の混合物であってもよい。抗Ovr110抗体は、本明細書中に開示されているもののような標識で標識されている。Ovr110は、固体支持体、例えば組織培養プレートまたはビーズ、例えばセファロースビーズに結合していてもよい。
免疫結合体
本発明はまた、抗癌剤、例えば細胞毒性剤または増殖阻害剤に結合した抗体を含む免疫結合体での療法に関する。
このような免疫結合体の発生において有用な化学療法剤は、前に記載した。抗体および1種または2種以上の小さい分子の毒素、例えばカリケアマイシン、メイタンシノイド類、トリコテンおよびCC1065の結合体並びに毒素活性を有するこれらの毒素の誘導体はまた、本明細書において意図される。
メイタンシンおよびメイタンシノイド類
好ましくは、本発明の抗Ovr110抗体(全長または断片)を、1または2以上のメイタンシノイド分子に結合させる。
メイタンシノイド類は、チューブリン重合を阻害することにより作用する、有糸分裂阻害剤である。メイタンシンは、キャストアフリカ低木Maytenus serrataから最初に単離された(米国特許第3,896,111号)。その後、ある微生物がまた、メイタンシノイド類、例えばメイタンシノールおよびC−3メイタンシノールエステルを産生することが、見出された(米国特許第4,151,042号)。合成メイタンシノール並びにこの誘導体および類似体は、例えば、米国特許第4,137,230号;4,248,870号;4,256,746号;4,260,608号;4,265,814号;4,294,757号;4,307,016号;4,308,268号;4,308,269号;4,309,428号;4,313,946号;4,315,929号;4,317,821号;4,322,348号;4,331,598号;4,361,650号;4,364,866号;4,424,219号;4,450,254号;4,362,663号;および4,371,533号に開示されており、この開示を、本明細書中に、参照により明確に導入する。
メイタンシノイド−抗体結合体
これらの治療指数を改善する試行において、メイタンシンおよびメイタンシノイドを、腫瘍細胞抗原に特異的に結合する抗体に結合させた。メイタンシノイドを含む免疫結合体およびこれらの治療的使用は、例えば、米国特許第5,208,020号、5,416,064号および欧州特許EP 0 425 235 B1に開示されており、この開示を、本明細書中に、参照により明確に導入する。Liu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623 (1996)には、ヒト直腸結腸癌に対して向けられたモノクローナル抗体C242に結合したDMIと表示されたメイタンシノイドを含む免疫結合体が記載されている。この結合体は、培養した結腸癌細胞に対して高度に細胞毒性であると見出され、インビボでの腫瘍増殖アッセイにおいて抗腫瘍活性を示した。
Chari et al. Cancer Research 52:127-131 (1992)には、メイタンシノイドがジスルフィドリンカーを介して、ヒト結腸癌細胞系における抗原に結合するマウス抗体A7、またはHER−2/neu発癌遺伝子に結合する他のマウスモノクローナル抗体TA.1に結合している免疫結合体が記載されている。TA.1−メイタンシノイド結合体の細胞毒性が、細胞あたり3×105のHER−2表面抗原を発現するヒト乳癌細胞系SK−BR−3に対してインビトロで試験された。薬剤結合体は、遊離のメイタンシノイド薬剤と同様の程度の細胞毒性を達成し、これは、抗体分子あたりのメイタンシノイド分子の数を増大させることにより増大し得る。A7−メイタンシノイド結合体は、マウスにおいて低い全身的細胞毒性を示した。
抗Ovr110抗体−メイタンシノイド結合体(免疫結合体)
抗Ovr110抗体−メイタンシノイド結合体を、抗Ovr110抗体をメイタンシノイド分子に、抗体またはメイタンシノイド分子のいずれかの生物学的活性を顕著に低下させずに化学的に結合させることにより調製する。抗体分子あたり結合した平均で3〜4個のメイタンシノイド分子が、抗体の機能または溶解性に悪影響を与えずに標的細胞の細胞毒性を増強させることにおいて効能を示したが、毒素/抗体の1個の分子さえも、裸の抗体の使用にまさって細胞毒性を増強すると予測される。メイタンシノイド類は、当該分野において十分知られており、既知の手法により合成するかまたは自然の供給源から単離され得る。好適なメイタンシノイド類は、例えば、米国特許第5,208,020号並びに上記で言及した他の特許および非特許刊行物中に開示されている。好ましいメイタンシノイド類は、メイタンシノールおよび芳香環またはメイタンシノール分子の他の位置において改変されているメイタンシノール類似体、例えば種々のメイタンシノールエステルである。
例えば米国特許第5,208,020号またはEP特許0 425 235 B1およびChari et al. Cancer Research 52: 127-131 (1992)中に開示されているものを含む、抗体−メイタンシノイド結合体を作成するための、当該分野において知られている多くの結合基がある。この結合基には、上記で識別した特許中に開示されているジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定基、光不安定基、ペプチダーゼ不安定基またはエステラーゼ不安定基が含まれ、チオエーテル基が好ましい。抗体およびメイタンシノイドの結合体を、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN−スクシンイミジル(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミデートHCL)、活性エステル類(例えばスベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えばグルタルアルデヒド)、ビス−アジド化合物(例えばビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えばビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート類(例えばトルエン2,6ジイソシアネート)およびビス活性フッ素化合物(例えば1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を用いて作成することができる。特に好ましいカップリング剤には、ジスルフィド結合を提供するための、N−スクシンイミジル(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)(Carlsson et al., Biochem. J. 173:723-737 [1978])およびN−スクシンイミジル(2−ピリジルチオ)ペンタノエート(SPP)が含まれる。
リンカーは、結合のタイプに依存して、メイタンシノイド分子に、種々の位置において結合していてもよい。例えば、エステル結合は、慣用のカップリング手法を用いた水酸基との反応により形成し得る。反応は、水酸基を有するC−3位置、ヒドロキシメチルで改変されたC−14位置、水酸基で改変されたC−15位置および水酸基を有するC−20位置において起こり得る。好ましくは、結合は、メイタンシノールまたはメイタンシノール類似体のC−3位置において形成する。
カリケアマイシン
関連する他の免疫結合体は、1または2以上のカリケアマイシン分子に結合した抗Ovr110抗体を含む。カリケアマイシン族の抗生物質は、ピコモル以下の濃度において二重らせんDNA破壊を発生させることができる。カリケアマイシン族の結合体の調製について、米国特許第5,712,374号、5,714,586号、5,739,116号、5,767,285号、5,770,701号、5,770,710号、5,773,001号、5,877,296号(すべてAmerican Cyanamid Company)を参照、用いることができるカリケアマイシンの構造的類似体には、γ1 I、α2 I、α3 I、N−アセチル−γ1 I、PSAGおよびθ1 I(Hinman et al. Cancer Research 53: 3336 (1993), Lode et al. Cancer Research 5 8: 2925-2928 (1998)およびAmerican Cyanamidの前述の米国特許明細書)が含まれるが、これらには限定されない。抗体を結合させることができる他の抗腫瘍薬剤は、葉酸代謝拮抗薬であるQFAである。カリケアマイシンおよびQFAは共に、作用の細胞内部位を有し、原形質膜を容易に横断しない。従って、これらの剤の抗体媒介内部移行による細胞取り込みにより、これらの細胞毒性効果が大幅に増大する。
他の細胞毒性剤
本発明の抗Ovr110抗体に結合することができる他の抗腫瘍剤には、BCNU、ストレプトゾイシン(streptozoicin)、ビンクリスチンおよび5−フルオロウラシル、米国特許第5,053,394号および5,770,710号に記載されている、集合的にLL−E33288複合体と知られている剤の族並びにエスペラマイシン(esperamicin)類(米国特許第5,877,296号)が含まれる。用いることができる酵素的に活性な毒素およびこの断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の1 5 非結合活性断片、エクソトキシンA鎖(Pseudomonas aeruginosaから)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデッシンA鎖、アルファ−サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP−S)、momordica charantia阻害剤、カルシン(curcin)、クロチン(crotin)、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン(gelonin)、マイトジェリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)およびトリコテセン(tricothecene)類が含まれる。例えば1993年10月28日に刊行されたWO 93/21232を参照。本発明は、さらに、抗体と核酸分解活性を有する化合物(例えばリボヌクレアーゼまたはDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNA分解酵素)との間に形成した免疫結合体を意図する。
腫瘍の選択的な破壊のために、抗体は、高度に放射性原子を含むことができる。種々の放射性同位体は、放射結合した抗Ovr110抗体の産生のために有用である。例には、At211、I131、I125、In111、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32およびLuの放射性同位体が含まれる。結合体が、診断のために用いられる際には、これは、シンチグラフィー研究のための放射性原子、例えばTc99MもしくはI123、または核磁気共鳴(NMR)画像法(また磁気共鳴画像法、mriとして知られている)のためのスピン標識、例えばヨウ素−123、ヨウ素−131、インジウム−111、フッ素−19、炭素−13、窒素−15、酸素−17、ガドリニウム、マンガンもしくは鉄を含むことができる。
放射または他の標識を、結合体中に、既知の方法において導入することができる。例えば、ペプチドを、生合成することができるか、または例えば水素の代わりにフッ素−19を含む、好適なアミノ酸前駆体を用いて、化学的アミノ酸合成により合成することができる。標識、例えばTc99M、I123、In111、Re186、Re188を、ペプチド中のシステイン残基を介して結合することができる。イットリウム−90を、リシン残基を介して結合することができる。IODOGEN法(Fraker et al (1978) Biochem. Biophys. Res. Commun. 80: 49-57)を用いて、ヨウ素を導入することができる。"Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy" (Chatal, CRC Press 1989)には、他の方法が詳細に記載されている。
抗体および細胞毒性剤の結合体を、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN−スクシンイミジル(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミデートHCL)、活性エステル類(例えばスベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えばグルタルアルデヒド)、ビス−アジド化合物(例えばビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えばビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート類(例えばトルエン2,6ジイソシアネート)およびビス活性フッ素化合物(例えば1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を用いて作成することができる。
例えば、リシン免疫毒素を、Vitetta et al. Science 238: 1098 (1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素標識1−イソチオシアナトベンジルメチルジエチレントリアミン五酢酸(MX−DTPA)は、ラジオヌクレオチド(radionucleotide)の抗体への結合のための例示的なキレート剤である。WO 94/11026を参照。リンカーは、細胞中での細胞毒性薬剤の放出を容易にする「切断可能なリンカー」であってもよい。例えば、酸不安定リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光不安定リンカー、ジメチルリンカーまたはジスルフィド含有リンカー(Chari et al. Cancer Research 52: 127-131 (1992);米国特許第5,208,020号)を、用いることができる。
あるいはまた、抗Ovr110抗体および細胞毒性剤を含む融合タンパク質を、例えば、組換え手法またはペプチド合成により作成することができる。DNAの長さは、互いに隣接しているか、または結合体の所望の特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域により分離されている、結合体の2つの部分をコードする、それぞれの領域を含むことができる。
さらに、抗体を、腫瘍前標的において用いるために、「レセプター」(例えばストレプトアビジン)に結合させることができ、ここで、抗体−レセプター結合体を、患者に投与し、続いて結合していない結合体を、循環から、クリアリング剤を用いて除去し、次に、細胞毒性剤(例えばラジオヌクレオチド)に結合する「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
抗体依存性酵素媒介プロドラッグ療法(ADEPT)
本発明の抗体を、また、抗体を、プロドラッグ(例えばペプチジル化学療法剤、WO81/01145を参照)を活性抗癌薬剤に変換するプロドラッグ活性化酵素に結合させることにより、ADEPTにおいて用いることができる。例えば、WO 88/07378および米国特許第4,975,278号を参照。
ADEPTに有用な免疫結合体の酵素成分には、これをこの一層活性な、細胞毒性の形態に変換するようにして、プロドラッグに対して作用することができるすべての酵素が含まれる。本発明の方法において有用な酵素には、リン酸塩含有プロドラッグを遊離の薬剤に変換するのに有用なアルカリホスファターゼ;硫酸塩含有プロドラッグを遊離の薬剤に変換するのに有用なアリールスルファターゼ;無毒生フルオロシトシンを抗癌薬剤である5−フルオロウラシルに変換するのに有用なシトシンデアミナーゼ;ペプチド含有プロドラッグを遊離の薬剤に変換するのに有用なプロテアーゼ、例えばセラチア(serratia)プロテアーゼ、テルモリシン(thermolysin)、サブチリシン(subtilisin)、カルボキシペプチダーゼ類およびカテプシン類(例えばカテプシンBおよびL);Dアミノ酸置換基を含むプロドラッグを変換するのに有用なD−アラニルカルボキシペプチダーゼ;グリコシル化プロドラッグを遊離の薬剤に変換するのに有用な炭水化物切断酵素、例えばO−ガラクトシダーゼおよびノイラミニダーゼ;P−ラクタム類で誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に変換するのに有用なP−ラクタマーゼ;並びにこれらのアミン窒素においてそれぞれフェノキシアセチルまたはフェニルアセチル基で誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に変換するのに有用なペニシリンアミダーゼ類、例えばペニシリンVアミダーゼまたはペニシリンGアミダーゼが含まれるが、これらには限定されない。
あるいはまた、また当該分野において「アブザイム(abzymes)」として知られている、酵素活性を有する抗体を用いて、本発明のプロドラッグを遊離の活性な薬剤に変換することができる(例えば、Massey, Nature 328: 457-458 (1987)を参照)。アブザイムを腫瘍細胞集団に送達するための酵素−アブザイム結合体を、本明細書中に記載したようにして調製することができる。本発明の酵素を、当該分野において十分知られている手法、例えば上記したヘテロ二官能性架橋試薬を用いることにより、抗Ovr110抗体に共有結合させることができる。
あるいはまた、本発明の酵素の少なくとも機能的に活性な部分に結合した本発明の抗体の少なくとも抗原結合領域を含む融合タンパク質を、当該分野において十分知られている組換えDNA手法を用いて構成することができる(例えばNeuberger et al., Nature, 312: 604-608 (1984)を参照)。
他の抗体改変
抗体の他の改変が、ここで意図される。例えば、抗体を、種々の非タンパク質ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン類またはポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマーの1種に結合させることができる。抗体はまた、例えばコアセルベーション手法により、または界面重合により(例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ(メチルメタシレート)マイクロカプセル)調製したマイクロカプセル中に、コロイド状薬剤送達系(例えばリポソーム、アルブミン微粒子、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)において、またはマクロエマルジョンにおいて捕獲することができる。このような手法は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第16版、Oslo, A.,編(1980)中に開示されている。
本明細書中に開示した抗Ovr110抗体はまた、免疫リポソームとして処方することができる。「リポソーム」は、薬剤を哺乳動物に送達するのに有用な種々のタイプの脂質、リン脂質および/または界面活性剤で構成されている小さい小胞である。リポソームの成分は、一般的に、生体膜の脂質配置と同様に、二層形態において配置されている。抗体を含むリポソームは、当該分野において知られている方法により、例えばEpstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:3688 (1985); Hwang et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA, 77:4030 (1980);米国特許第4,485,045および4,544,545号;並びにW097/38731、1997年10月23日刊行に記載されているように、調製される。増大した循環時間を有するリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。
特に有用なリポソームを、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む液体組成物を用いた逆相蒸発方法により発生させることができる。リポソームを、所定の孔の大きさを有するフィルターを通して押し出して、所望の直径を有するリポソームを得る。本発明の抗体のFab’断片を、リポソームに、Martin et al. J. Biol. Chem. 257: 286-288 (1982)に記載されているようにして、ジスルフィド交換反応により結合させることができる。化学療法剤は、随意に、リポソーム内に包含される。Gabizon et al. J. National Cancer Inst.81(19)1484 (1989)を参照。
ベクター、ホスト細胞および組換え方法
本発明はまた、ヒト化された抗Ovr110抗体、ベクターおよび核酸を含むホスト細胞をコードする、単離された核酸分子、並びに抗体を産生するための組換え手法を提供する。抗体、これをコードする核酸分子の組換え産生のために、これを単離し、さらなるクローニング(DNAの増幅)のために、複製可能なベクター中に挿入するか、または発現のためのプロモーターを有する作動可能な(operable)結合においてベクター中に挿入する。モノクローナル抗体をコードするDNAは、慣用の手順を用いて(例えば抗体の重鎖および軽鎖をコードする核酸分子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)容易に単離され、配列決定される。多くのベクターが、入手可能である。ベクター成分には、一般的に、以下の1種または2種以上が含まれるが、これらには限定されない:シグナル配列、複製の起源、1種または2種以上のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーター、および転写終了配列。
シグナル配列成分
本発明の抗Ovr110抗体を、直接的のみならず、好ましくは成熟タンパク質またはポリペプチドのN末端において特定の切断部位を有するシグナル配列または他のポリペプチドである、異種性ポリペプチドとの融合ポリペプチドとして、組換え的に産生することができる。選択された異種性シグナル配列は、好ましくは、ホスト細胞により認識され、加工される(即ちシグナルペプチダーゼにより切断される)ものである。自然の抗Ovr110抗体シグナル配列を認識および加工しない原核ホスト細胞について、シグナル配列を、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppまたは熱安定性エンテロトキシンIIリーダーの群から選択された原核シグナル配列により置換する。酵母分泌のために、自然のシグナル配列を、例えば、酵母インベルターゼリーダー、oc因子リーダー(SaccharomycesおよびKluyveromycescc因子リーダーを含む)または酸ホスファターゼリーダー、C albicansグルコアミラーゼリーダー、またはWO 90/13646に記載されているシグナルにより置換することができる。哺乳動物細胞発現において、哺乳動物シグナル配列およびウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルが、入手可能である。このような前駆体領域についてのDNAを、抗Ovr110抗体をコードするDNAに、読み枠において連結する。
複製の起源
発現およびクローニングベクターは、共に、ベクターが、1または2以上の選択されたホスト細胞中で複製されるのを可能にする核酸配列を含む。一般的に、クローニングベクターにおいて、この配列は、ベクターが、ホスト染色体DNAとは独立して複製されるのを可能にするものであり、複製の起源または自己複製配列を含む。このような配列は、種々の細菌、酵母およびウイルスについて十分知られている。プラスミドpBR322からの複製の起源は、ほとんどのグラム陰性細菌に適し、2μプラスミド起源は、酵母に適し、種々のウイルス起源(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSVまたはBPV)は、哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般的に、複製成分の起源は、哺乳動物発現ベクターについては必要ではない(SV40起源は、典型的には、これが早期のプロモーターを含むためのみで用いることができる)。
選択遺伝子成分
発現およびクローニングベクターは、また選択可能なマーカーと呼ばれる選択遺伝子を含むことができる。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素、例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートもしくはテトラサイクリンに対する耐性を付与し、(b)栄養要求性欠乏を補完し、または(c)複雑な培地から入手可能ではない臨界的に重要な栄養素を供給するタンパク質をコードし、例えば、これは、桿菌についてのD−アラニンラセマーゼをコードする遺伝子である。選択スキームの1つの例は、ホスト細胞の増殖を停止する薬剤を用いる。異種性遺伝子で成功に形質転換されたこれらの細胞は、薬剤耐性を付与するタンパク質を産生し、従って選択計画より長く生存する。このような優性の選択の例は、薬剤ネオマイシン、マイコフェノール酸およびヒグロマイシンを用いる。
哺乳動物細胞に適する選択可能なマーカーの他の例は、抗Ovr110抗体核酸、例えばDHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン−Iおよび−11、好ましくは霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼなどを吸収することについて競合性の細胞を同定することを可能にするものである。例えば、DHFR選択遺伝子で形質転換される細胞を、先ず、メトトレキセート(Mtx)、即ちDHFRの競合的アンタゴニストを含む培養培地中ですべての形質転換体を培養することにより同定する。野生型のDHFRを用いる際の適切なホスト細胞は、DHFR活性が欠乏しているチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系(例えばATCC CRL−9096)である。
あるいはまた、抗Ovr110抗体、野生型DHFRタンパク質および他の選択可能なマーカー、例えばアミノグリコシド3’−ホスホトランスフェラーゼ(APH)をコードするDNA配列で形質転換または同時形質転換されたホスト細胞(特に内因性DHFRを含む野生型ホスト)を、選択可能なマーカー、例えばアミノグリコシド、抗生物質、例えばカナマイシン、ネオマイシンまたはG418のための選択剤を含む培地中での細胞増殖により選択することができる。米国特許第4,965,199号を参照。
酵母において用いるのに適する選択遺伝子は、酵母プラスミドYRp7中に存在するtrpl遺伝子である(Stinchcomb et al., Nature, 282:39 (1979))。trp1遺伝子は、トリプトファン中で増殖する能力を欠いている酵母の突然変異菌株、例えばATCC No. 44076またはPEP4 Jones, Genetics, 85:12 (1977)のための選択マーカーを提供する。次に、酵母ホスト細胞ゲノム中のtrp1病変の存在により、トリプトファンの不存在下での増殖により形質転換を検出するための有効な環境が得られる。同様に、Leu2欠乏酵母菌株(ATCC 20,622または38,626)は、Leu2遺伝子を有する既知のプラスミドにより補完される。
さらに、1.6pm環状プラスミドpKDIから由来するベクターを、Kluyveromyces酵母の形質転換のために用いることができる。あるいはまた、組換え子ウシキモシンの大規模な産生のための発現系は、K. lactisについて報告された。Van den Berg, Bio/Technology, 8:135 (1990)。Kluyveromycesの工業的な菌株による成熟組換えヒト血清アルブミンの分泌のための安定な多コピー発現ベクターはまた、開示されている。Fleer et al., Bio/Technology, 9:968-975 (1991)。
プロモーター成分
発現およびクローニングベクターは、通常、ホスト生物により認識されるプロモーターを含み、抗Ovr110抗体核酸に作動的に結合している。原核ホストと共に用いるのに適するプロモーターには、phoAプロモーター、P−ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼプロモーター、トリプトファン(trp)プロモーター系およびハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーターが含まれる。しかし、他の既知の細菌性プロモーターが、好適である。細菌系において用いるためのプロモーターはまた、抗Ovr110抗体をコードするDNAに作動的に結合したShine-Dalgarno(S.D.)配列を含む。
プロモーター配列は、真核生物について知られている。事実上すべての真核遺伝子は、転写が開始される部位から約25〜30塩基上流に位置する、ATが豊富な領域を有する。多くの遺伝子の転写の開始から70〜80塩基上流に見出される他の配列は、CNCAAT領域であり、ここでNは、すべてのヌクレオチドであってもよい。ほとんどの真核遺伝子の3’末端において、ポリA尾のコード配列の3’末端への添加のためのシグナルであってもよいAATAAA配列がある。これらの配列のすべてを、真核発現ベクター中に好適に挿入する。酵母ホストと共に用いるのに適するプロモーター配列の例には、3−ホスホグリセレートキナーゼまたは他の解糖酵素、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒドホスフェートデヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコースホスフェートイソメラーゼ、3−ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼおよびグルコキナーゼについてのプロモーターが含まれる。
増殖条件により制御された転写の追加の利点を有する誘導性プロモーターである、他の酵母プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2,イソチトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝に関連する分解酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒドホスフェートデヒドロゲナーゼ、並びにマルトースおよびガラクトース利用の原因となる酵素についてのプロモーター領域である。酵母発現において用いるのに適するベクターおよびプロモーターは、さらに、EP 73,657に記載されている。酵母エンハンサーはまた、酵母プロモーターと共に有利に用いられる。
哺乳動物ホスト細胞中のベクターからの抗Ovr110抗体転写は、このようなプロモーターが、ホスト細胞系と適合性である場合には、例えば、異種性哺乳動物プロモーター、例えばアクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーターからの、熱ショックプロモーターからの、ウイルス、例えばポリオーマウイルス、伝染性上皮腫ウイルス、アデノウイルス(例えばアデノウイルス2)、ウシパピローマウイルス、鳥類肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルスおよび最も好ましくはサルウイルス40(SV40)のゲノムから得られたプロモーターにより制御される。
SV40ウイルスの初期の、および後期のプロモーターは、また複製のSV40ウイルス起源を含むSV40制限断片として好都合に得られる。ヒトサイトメガロウイルスの即座の早期のプロモーターは、HindIll E制限断片として好都合に得られる。ベクターとしてウシパピローマウイルスを用いる哺乳動物ホストにおいてDNAを発現するための系は、米国特許第4,419,446号に開示されている。この系の変更は、米国特許第4,601,978号に記載されている。また単純ヘルペスウイルスからのチミジンキナーゼプロモーターの制御の下でのマウス細胞におけるヒトP−インターフェロンcDNAの発現について、Reyes et al., Nature 297:598-601 (1982)を参照。あるいはまた、Rous Sarcoma Virusの長い末端繰り返しを、プロモーターとして用いることができる。
エンハンサー要素成分
高等真核生物による本発明の抗Ovr110抗体をコードするDNAの転写は、しばしば、エンハンサー配列をベクター中に挿入することにより増強される。多くのエンハンサー配列が、現在哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテインおよびインシュリン)から知られている。しかし、典型的には、真核細胞ウイルスからのエンハンサーを用いる。例には、複製起源の後期の側上のSV40エンハンサー(bp100〜270)、サイトメガロウイルス早期プロモーターエンハンサー、複製起源の後期の側上のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが含まれる。また真核プロモーターの活性化のためのエンハンシング要素について、Yaniv, Nature 297:17-18 (1982)を参照。エンハンサーを、ベクター中に、抗Ovr110抗体コード配列に5’または3’の位置においてスプライシングすることができるが、好ましくは、プロモーターから5’部位に位置する。
転写終了成分
真核ホスト細胞(酵母、真菌類、昆虫、植物、動物、ヒトまたは他の多細胞生物からの有核の細胞)において用いられる発現ベクターはまた、転写を終了させるのに、およびmRNAを安定化させるのに必要な配列を含む。このような配列は、真核またはウイルスDNAまたはcDNAの5’、および場合によっては3’未翻訳領域から一般的に入手できる。これらの領域は、抗Ovr110抗体をコードするmRNAの未翻訳部分中のポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。1つの有用な転写終了成分は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。WO 94/11026およびこの中に開示されている発現ベクターを参照。
ホスト細胞の選択および形質転換
ここでのベクター中でDNAをクローニングするかまたは発現するのに適するホスト細胞は、原核、酵母または上記した高等真核細胞である。この目的に適する原核生物には、真性細菌、例えばグラム陰性またはグラム陽性生物、例えば腸内細菌科、例えばEscherichia、例えば大腸菌、エンテロバクター、Erwinia、クレブシエラ属、プロテウス属、サルモネラ属、例えばSalmonella typhimurium、セラチア属、例えばSerratia marcescans、および赤痢菌属、並びに桿菌、例えばB. subtilisおよびB. licheniformis(例えばDD 266,710、1989年4月12日刊行中に開示されているB. licheniformis 41P)、シュードモナス属、例えばP. aeruginosa、並びにストレプトマイセス属が含まれる。1つの好ましい大腸菌クローニングホストは、大腸菌294(ATCC 31,446)であるが、他の菌株、例えば大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC 31,537)および大腸菌W31 10(ATCC 27,325)が好適である。これらの例は、限定的であるよりむしろ例示的である。
特にグリコシル化およびFcエフェクター機能が必要ではない際に、例えば治療的抗体が、細胞毒性剤(例えば毒素)に結合しており、免疫結合体が、単独で、腫瘍細胞破壊における有効性を示す際に、全長抗体、抗体断片および抗体融合タンパク質を、細菌中に産生することができる。全長抗体は、循環において一層長い半減期を有する。大腸菌の産生は、比較的迅速であり、比較的費用効率的である。細菌における抗体断片およびポリペプチドの発現について、翻訳開始領域(TIR)並びに発現および分泌を最適化するためのシグナル配列を記載している、例えば米国特許第5,648,237号(Carter et. al.)、米国特許第5,789,199号(Joly et al.)および米国特許第5,840,523号(Simmons et al.)を参照。これらの特許を、参照により本明細書中に導入する。発現の後に、抗体を、大腸菌細胞ペーストから可溶性画分中に単離し、アイソタイプに依存して、例えばプロテインAまたはGカラムにより精製することができる。最終的な精製を、例えばCHO細胞中で発現された抗体を精製するための方法と同様にして、行うことができる。
原核生物に加えて、真核微生物、例えば糸状真菌類または酵母が、抗Ovr110抗体コードベクターに適するクローニングまたは発現ホストである。Saccharomyces cerevisiaeまたは一般的なパン酵母は、初等の真核ホスト微生物の中で最も一般的に用いられている。しかし、多くの他の属、種および菌株、例えばSchizosaccharomyces pombe;Kluyveromycesホスト、例えばK. lactis、K. fragilis (ATCC 12,424)、K. bulgaricus (ATCC 16,045)、K. wickeramii (ATCC 24,178)、K. waltii (ATCC 56,500)、K. drosophilarum (ATCC 36,906)、K . thermotoleransおよびK. marxianus; yarrowia (EP 402,226);Pichia pastoris (EP 183,070);カンジダ;Trichoderma reesia (EP 244,234);Neurospora crassa;Schwanniomyces、例えばSchwanniomyces occidentalis;並びに糸状真菌類、例えばパンカビ属、アオカビ属、Tolypocladiumおよびコウジカビ属ホスト、例えばA. nidulansおよびA. nigerが、ここで一般的に入手可能であり、有用である。
グリコシル化された抗Ovr110抗体の発現に適するホスト細胞は、多細胞生物から由来する。無脊椎動物細胞の例には、植物および昆虫細胞が含まれる。多くのバキュロウイルス菌株および変異体並びにホスト、例えばSpodopterafrugiperda(イモムシ)、Aedes aegypti(カ)、Aedes albopictus(カ)、Drosophila melanogaster(ショウジョウバエ)およびBombyx moriからの対応する許容的な昆虫ホスト細胞が、同定されている。形質移入のための種々のウイルス菌株、例えばAutographa californica NPVのL−1変種およびBombyx mori NPVのBm−5菌株が、公的に入手可能であり、このようなウイルスを、ここで、特にSpodoptera frugiperda細胞の形質移入のための本発明のウイルスとして用いることができる。
綿、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト、シロイヌナズナおよびタバコの植物細胞培養物もまた、ホストとして用いることができる。植物細胞培養物におけるタンパク質の産生において有用なクローニングおよび発現ベクターは、当業者に知られている。例えばHiatt et al., Nature (1989) 342: 76-78、Owen et al. (1992) Bio/Technology 10: 790-794、Artsaenko et al. (1995) The Plant J 8: 745-750およびFecker et al. (1996) Plant Mol Biol 32: 979-986を参照。
しかし、脊椎動物細胞において興味が最も大きく、培養物(組織培養物)中の脊椎動物細胞の増殖が、常習的な手順となった。有用な哺乳動物ホスト細胞系の例は、SV40により形質転換したサル腎臓CV1系列(COS−7、ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓系列(293または懸濁液培養物中で増殖するためにサブクローニングした293細胞、Graham et al., J. Gen Virol. 36:59 (1977);仔ハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO、Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980));サル腎臓細胞(CVI ATCC CCL 70);アフリカグリーンサル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL 1587);ヒト子宮頸癌腫細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、1413 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL5 1);TRI細胞(Mather et al., Annals N. Y Acad. Sci. 383:44-68 (1982));MRC 5細胞;FS4細胞;およびヒト肝細胞腫系列(Hep G2)である。
ホスト細胞を、上記した発現またはクローニングベクターで、抗Ovr110抗体産生のために形質転換し、プロモーターを誘発するか、形質転換体を選択するか、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するのに適するように改変した、慣用の栄養素培地中で培養する。
ホスト細胞の培養
本発明の抗Ovr110抗体を産生するために用いられるホスト細胞を、種々の培地中で培養することができる。商業的に入手できる培地、例えばハムのFIO(Sigma)、基礎培地(MEM)(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)およびダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(Sigma)は、ホスト細胞を培養するのに適する。さらに、Ham et al., Meth. Enz. 58:44 (1979)、Barnes et al., Anal. Biochem.102:255 (1980)、米国特許第4,767,704号;4,657,866号;4,927,762号;4,560,655号;もしくは5,122,469号;WO 90/03430;WO 87/00195;または米国特許Re. 30,985号に記載されている培地のいずれかを、ホスト細胞のための培養培地として用いることができる。これらの培地のすべてに、所要に応じて、ホルモンおよび/または他の成長因子(例えばインシュリン、トランスフェリンもしくは上皮細胞成長因子)、塩(例えば塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸塩)、緩衝液(例えばHEPES)、ヌクレオチド類(例えばアデノシンおよびチミジン)、抗生物質(例えばGENTAMYCIN(登録商標)薬剤)、微量元素(通常マイクロモル範囲の最終濃度で存在する無機化合物として定義される)、およびグルコースまたは同等のエネルギー源を補足することができる。すべての他の必要な補足物を、また、当業者に知られている適切な濃度で含有させることができる。培養条件、例えば温度、pHなどは、発現のために選択されたホスト細胞について前に用いられているものであり、通常の当業者には明らかである。
抗Ovr110抗体の精製
組換え手法を用いた際に、抗体を、細胞内で、細胞膜周辺腔中で産生するか、または培地中に直接分泌することができる。抗体が、第1の段階として、細胞内で産生された場合には、粒子状残骸、ホスト細胞または溶解した断片のいずれかを、例えば遠心分離または限外濾過により除去する。Carter et al., Bio/Technology 10: 163-167 (1992)には、大腸菌の細胞膜周辺腔に分泌される抗体を単離するための手順が記載されている。要するに、細胞ペーストを、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTAおよびフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で、約30分にわたり融解させる。細胞残骸を、遠心分離により除去することができる。抗体が、培地中に分泌される際には、このような発現系からの上清を、一般的に、先ず商業的に入手できるタンパク質濃縮フィルター、例えばAmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを用いて濃縮する。プロテアーゼ阻害剤、例えばPMSFを、前述の段階のいずれかにおいて導入して、タンパク質分解を阻害することができ、抗生物質を導入して、外来性の汚染物の増殖を防止することができる。
細胞から調製された抗体組成物を、例えばヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析およびアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製することができ、アフィニティークロマトグラフィーが、好ましい精製手法である。アフィニティーリガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体中に存在するすべての免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに依存する。プロテインAを用いて、ヒトγ1、γ2またはγ4重鎖に基づく抗体を精製することができる(Lindmark et al., J. Immunol. Meth. 62:1-13 (1983))。プロテインGが、すべてのマウスアイソタイプおよびヒトγ3のために推薦される(Guss et al., EMBO J. 5:15671575 (1986))。アフィニティーリガンドが付着したマトリックスは、最も頻繁にはアガロースであるが、他のマトリックスが、入手できる。機械的に安定なマトリックス、例えば制御された孔のガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンにより、アガロースを用いて達成することができるよりも迅速な流速および短い加工時間が可能になる。抗体が、CH3ドメインを含む場合において、Bakerbond ABX(登録商標)樹脂(J. T. Baker, Phillipsburg, NJ)が、精製のために有用である。タンパク質精製のための他の手法、例えばイオン交換カラム上での分別、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上でのクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSE(登録商標)上でのクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(例えばポリアスパラギン酸カラム)上でのクロマトグラフィー、等電点電気泳動、SIDS−PAGEおよび硫酸アンモニウム沈殿がまた、回収されるべき抗体に依存して入手可能である。
1または2以上のすべての予備の精製段階に続いて、関連する抗体および汚染物を含む混合物に、約2.5〜4.5のpHにおいて溶離緩衝液を用いて、好ましくは低い塩濃度(例えば約0〜0.25Mの塩)において行われる低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーを施すことができる。
医薬処方物
本発明において用いる抗体の医薬処方物を、貯蔵のために、所望の程度の純度を有する抗体を随意の薬学的に許容し得る担体、添加剤または安定剤(Remington's Pharmaceutical Sciences、第16版、Osol, A.編(1980))と、凍結乾燥した処方物または水性溶液の形態で混合することにより調製する。許容し得る担体、添加剤または安定剤は、用いられる用量および濃度において、受容者に対して無毒性であり、緩衝液、例えば酢酸、トリス、リン酸、クエン酸および他の有機酸類;アスコルビン酸およびメチオニンを含む酸化防止剤;保存剤(例えば塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン類、例えばメチルもしくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノールおよびm−クレゾール);低分子量(約10個の残基よりも小さい)ポリペプチド類;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリン類;親水性ポリマー類、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸類、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリシン;グルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む単糖類、二糖類および他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;トニシファイヤー(tonicifier)、例えばトレハロースおよび塩化ナトリウム;糖類、例えばスクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトール;界面活性剤、例えばポリソルベート;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属複合体類(例えばZn−タンパク質複合体類);および/または非イオン系界面活性剤、例えばTWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。抗体は、好ましくは、5〜200mg/ml、好ましくは10〜100mg/mlの濃度での抗体を含む。
ここでの処方物はまた、所要に応じて、処置される特定の適応のための1種より多い活性化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を有するものを含むことができる。例えば、内部移行する抗Ovr110抗体に加えて、1種の処方物において、Ovr110上の異なるエピトープに結合する追加の抗体、例えば第2の抗Ovr110抗体、またはある他の標的、例えば特定の癌の増殖に影響する成長因子に対する抗体を含むのが、望ましい場合がある。あるいはまた、またはさらに、この組成物は、さらに、化学療法剤、細胞毒性剤、サイトカイン、増殖阻害剤、抗ホルモン剤および/または心臓保護剤(cardioprotectant)を含むことができる。このような分子は、好適に、意図される目的のために有効な量で、組み合わせて存在する。
活性成分をまた、例えばコアセルベーション手法により、または界面重合により、調製したマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に、コロイド状薬剤送達系(例えばリポソーム、アルブミン微粒子、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)において、またはマクロエマルジョンにおいて捕獲することができる。このような手法は、Remington's Pharmaceutical Sciences、第16版、Osol, A.編(1980)中に開示されている。
持続放出製剤を、調製することができる。持続放出製剤の好適な例には、抗体を含む固体疎水性ポリマー類の半透過性マトリックスが含まれ、このマトリックスは、成形した物品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルの形態である。持続放出マトリックスの例には、ポリエステル類、ヒドロゲル類(例えばポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド類(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸およびγエチル−L−グルタミン酸のコポリマー類、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー類、例えばLUPRON DEPOT(登録商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドから構成された注射可能な微粒子)並びにポリ−D−(−)ヒドロキシ酪酸が含まれる。
インビボでの投与のために用いるべき処方物は、無菌でなければならない。これは、無菌濾過膜を通しての濾過により容易に達成される。
抗Ovr110抗体を用いた方法および処置
本発明において、細胞表面上のOvr110に結合すると内部移行する抗Ovr110抗体を用いて、Ovr110発現癌細胞、特に卵巣癌、膵臓癌、肺癌または乳癌により特徴づけられる癌、例えば卵巣漿液腺癌または乳房浸潤乳管癌および関連する転移を有する、これを必要としている被検者を処置する。
癌は、一般的に、Ovr110発現細胞を含み、従って抗Ovr110抗体は、これに結合することができる。癌が、Ovr110分子の過剰発現により特徴づけられ得る一方、本出願は、さらに、Ovr110過剰発現癌であるとは考慮されない癌を処置するための方法を提供する。
本発明はまた、Ovr110を過剰発現する細胞を検出するための方法および、Ovr110を発現する細胞を検出するにあたり、または患者からの血清中のOvr110を検出するにあたり有用な診断キットに関する。この方法は、細胞含有試験試料を本発明の抗体と混ぜ合わせること、試験試料を、試験試料中の細胞に結合する抗体についてアッセイすることおよび試験試料において結合する抗体のレベルを、細胞の対照試料において結合する抗体のレベルに対して比較することを含むことができる。好適な対照は、例えば、試験試料と同一のタイプの正常な細胞の試料またはOvr110過剰発現細胞を含まないことが知られている細胞試料である。このような対照試料より高いOvr110結合のレベルは、Ovr110を過剰発現する細胞を含む試験試料の指標である。あるいはまた、対照は、Ovr110を過剰発現する細胞を含むことが知られている細胞の試料であり得る。このような場合において、対照試料に類似した、またはこれを超える試験試料におけるOvr110抗体結合のレベルは、Ovr110を過剰発現する細胞を含む試験試料の指標である。
Ovr110過剰発現を、種々の診断アッセイで検出することができる。例えば、Ovr110の過剰発現を、免疫組織化学(IHC)によりアッセイすることができる。腫瘍生検からのパラフィン包埋組織切片に、IHCアッセイを施し、以下のようにしてOvr110タンパク質染色強度基準と一致させることができる。
スコア0 染色は観察されないか、または腫瘍細胞の10%未満において膜染色が観察される。
スコア1+ わずかな/辛うじて知覚可能な膜染色が、腫瘍細胞の10%を超える比率において検出される。細胞は、これらの膜の一部において染色されるに過ぎない。
スコア2+ 弱い、ないし中程度の完全な膜染色が、腫瘍細胞の10%を超える比率において観察される。
スコア3+ 中程度ないし強い完全な膜染色が、腫瘍細胞の10%を超える比率において観察される。
Ovr110発現についての0または1+のスコアを有する腫瘍を、Ovr110を過剰発現しないとして特徴づけることができ、一方2+または3+のスコアを有する腫瘍を、Ovr110を過剰発現するとして特徴づけることができる。
あるいはまた、またはさらに、FISHアッセイ、例えばINFORM(登録商標)(Ventana, Arizonaにより販売されている)またはPATHVISION(登録商標)(VySiS, Illinois)を、ホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍組織において行って、腫瘍におけるOvr110過剰発現の程度(存在する場合には)を決定することができる。Ovr110過剰発現または増幅を、インビボ診断アッセイを用いて、例えばOvr110に結合し、検出可能な標識(例えば放射性同位体または蛍光標識)で標識した分子(例えば本発明の抗体)を投与し、患者を標識の局在について外部から走査することにより評価することができる。
Ovr110を発現するかまたは過剰発現する細胞を含むことが疑われる試料を、本発明の抗体と、抗体のOvr110への特異的な結合に適する条件の下で、混ぜ合わせる。本発明のOvr110抗体への結合および/または内部移行は、Ovr110を発現する細胞の指標である。結合のレベルを決定し、好適な対照と比較することができ、ここで、対照と比較して上昇したレベルの結合したOvr110は、Ovr110過剰発現の指標である。Ovr110を過剰発現する細胞を含むことが疑われる試料は、癌細胞試料、特に卵巣癌、例えば卵巣漿液腺癌または乳癌、例えば乳房浸潤乳管癌の試料であってもよい。被検者からの血清試料を、また、被検者からの血清試料を本発明のOvr110抗体と混ぜ合わせ、抗体に結合したOvr110のレベルを決定し、このレベルを対照と比較することにより、Ovr110のレベルについてアッセイすることができ、ここで、対照と比較して上昇したレベルの患者の血清中のOvr110は、患者中の細胞によるOvr110の過剰発現の指標である。被検者は、癌、例えば卵巣癌、例えば卵巣漿液腺癌または乳癌、例えば乳房浸潤乳管癌を有し得る。
現在、癌の段階に依存して、卵巣癌、膵臓癌、肺癌または乳癌の処置は、以下の療法の1種または組み合わせを含む:癌組織を除去するための手術、放射線療法、アンドロゲン剥脱(例えばホルモン療法)、および化学療法。抗Ovr110抗体療法は、毒性および化学療法の副作用を十分に耐容しない年長の患者において、放射線療法が限定された有用性を有する転移性疾患において、およびアンドロゲン剥脱処置に耐性である前立腺癌腫の管理のために、特に望ましい場合がある。本発明の腫瘍標的および内部移行抗Ovr110抗体は、Ovr110発現癌、例えば卵巣癌、膵臓癌、肺癌または乳癌を、疾患の最初の診断の際に、または再発の間に寛解するのに有用である。治療的用途のために、抗Ovr110抗体を、特に卵巣癌、膵臓癌、肺癌または乳癌のために、また特に発した細胞が到達し得ない場合において、単独で、あるいは例えばホルモン、抗血管新生剤もしくは放射標識した化合物との、または手術、寒冷療法および/または放射線療法との組み合わせ療法において、用いることができる。抗Ovr110抗体処置を、他の形態の慣用の療法と組み合わせて、化学療法薬剤、例えばタキソテア(Taxotere)(登録商標)(ドセタキセル)、タキソール(Taxol)(登録商標)(パクリタキセル)、エストラムスチンおよびマイトキサントロンと連続して、前または後慣用療法で投与し、特に良好な危険の患者において、転移性およびホルモン抵抗性卵巣癌、膵臓癌、肺癌または乳癌の処置において用いることができる。
癌、特に、アンドロゲン独立および/または転移性卵巣癌、膵臓癌、肺癌もしくは乳癌を処置するかまたは寛解するための、本発明のこの方法において、癌患者に、抗Ovr110抗体を、1種または2種以上の前の化学療法剤での処置と組み合わせて、投与することができる。特に、パクリタキセルおよび改変した誘導体(例えばEP0600517を参照)との組み合わせ療法が、意図される。抗Ovr110抗体を、治療的に有効な用量の化学療法剤と共に投与する。抗Ovr110抗体をまた、化学療法剤と組み合わせて投与して、化学療法剤、例えばパクリタキセルの活性および効能を増強することができる。米医薬品便覧(PDR)には、種々の癌の処置において用いられている当該剤の投与量が開示されている。治療的に有効なこれらの前述の化学療法薬剤の投薬計画および投与量は、処置される特定の癌、疾患の程度および当該分野における技術のある医師に精通されている他の要因に依存し、医師により決定することができる。
特に、細胞毒性剤と結合した抗Ovr110抗体を含む免疫結合体を、患者に投与することができる。好ましくは、Ovr110タンパク質に結合した免疫結合体は、細胞により内部移行し、これが結合する癌細胞の死滅における免疫結合体の増大した治療効果がもたらされる。好ましくは、細胞毒性剤は、癌細胞における核酸を標的するかまたはこれに干渉する。このような細胞毒性剤の例は、上記した通りであり、メイタンシン、メイタンシノイド類、サポリン、ゲロニン、リシン、カリケアマイシン、リボヌクレアーゼおよびDNAエンドヌクレアーゼが含まれる。
抗Ovr110抗体または免疫結合体を、ヒト患者に、既知の方法、例えば静脈内投与により、例えば大量瞬時投与として、またはある期間にわたる連続的な注入により、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内(intracerobrospinal)、皮下、関節内、滑膜内(intrasynovial)、くも膜下腔内、経口、局所的または吸入経路により投与する。抗体または免疫結合体を、腫瘍本体中に直接注射することができる。抗体の静脈内または皮下投与が、好ましい。他の治療計画を、抗Ovr110抗体の投与と組み合わせることができる。
組み合わされた投与には、個別の処方物または単一の医薬処方物を用いた同時投与、およびいずれかの順序での連続的投与が含まれ、ここで好ましくは、両方(またはすべて)の活性剤が、これらの生物学的活性を同時に奏する期間がある。好ましくは、このような組み合わされた療法の結果、相乗的な治療効果がもたらされる。
また、1または2以上の抗Ovr110抗体の投与を、特定の癌に関連する他の腫瘍抗原に対して向けられた抗体の投与と組み合わせるのが、望ましい場合がある。このようにして、本発明はまた、本発明の1種または2種以上の抗体およびOvr110発現腫瘍細胞と関連する他の腫瘍抗原に結合する少なくとも1種の他の抗体を含む抗体「混合物」に関する。混合物はまた、Ovr110の他のエピトープに向けられた抗体を含むことができる。好ましくは、他の抗体は、本発明の抗体の結合およびまたは内部移行に干渉しない。
本発明の抗体治療処置方法は、種々の化学療法剤の混合物の同時投与を含む、抗Ovr110抗体(または2種以上の抗体)および1種または2種以上の化学療法剤または増殖阻害剤の組み合わされた投与を含むことができる。化学療法剤には、例えば、リン酸エストラムスチン、プレドニムスチン、シスプラチン、5−フルオロウラシル、メルファラン、シクロホスファミド、ヒドロキシ尿素およびヒドロキシ尿素タキサン類(例えばパクリタキセルおよびドキセタキセル)および/またはアントラサイクリン抗生物質が含まれる。このような化学療法剤のための調製および投与計画を、製造者の指示に従って、または技術のある開業医により実験的に決定されたように、用いることができる。このような化学療法のための調製および投与計画はまた、Chemotherapy Service、M.C. Perry編、Williams & Wilkins, Baltimore, MD (1992)中に記載されている。
抗体を、抗ホルモン化合物;例えば抗エストロゲン化合物、例えばタモキシフェン;抗プロゲステロン化合物、例えばオナプリストン(EP 616 812を参照);または抗アンドロゲン化合物、例えばフルタミドと、このような分子について知られている投与量で混ぜ合わせることができる。処置されるべき癌が、アンドロゲン独立癌である場合には、患者は、予め抗アンドロゲン療法を受けていてもよく、癌がアンドロゲン独立となった後に、抗Ovr110抗体(および随意に本明細書中に記載した他の剤)を、患者に投与することができる。
時々、また心臓保護剤(療法に関連する心筋機能障害を防止するかまたは減少させるために)または1種もしくは2種以上のサイトカインを患者に同時投与するのが、有益であり得る。前述の療法計画に加えて、患者に、癌細胞の手術的除去および/または放射線療法を、抗体療法の前、これと同時に、またはこの後に施すことができる。前述の同時投与された剤のすべてに適する投与量は、ここで用いられたものであり、剤および抗Ovr110抗体の組み合わされた作用(相乗作用)のために低下され得る。
疾患の防止または処置のために、投与量および投与の方式を、既知の基準により医師により選択する。抗体の適切な投与量は、前に定義したように、処置されるべき疾患のタイプ、疾患の重篤度および経過、抗体が予防的目的で投与されるか治療的目的で投与されるか、前の療法、患者の臨床的な履歴および抗体への応答並びに付随する医師の裁量に依存する。抗体を、患者に、1回でまたは一連の処置にわたり好適に投与する。好ましくは、抗体を,静脈内注入により、または皮下注射により投与する。
疾患のタイプおよび重篤度に依存して、約1pg/体重1kg〜約50mg/体重1kg(例えば約0.1〜15mg/kg/用量)の抗体を、例えば、1種もしくは2種以上の別個の投与による、または連続的な注入による、患者への投与のための最初の候補の投与量とすることができる。投与計画は、約4mg/kgの最初の負荷用量を投与し,続いて約2mg/kgの抗Ovr110抗体の用量を毎週維持することを含むことができる。しかし、他の投与計画が、有用であり得る。典型的な毎日の投与量は、前述の要因に依存して、約1pg/kg〜100mg/kgまたはこれ以上の範囲内であり得る。状態に依存する、数日またはこれより長い期間にわたる繰り返された投与のために、処置を、疾患症状の所望の抑制が発生するまで持続させる。この療法の進行を、慣用の方法およびアッセイにより、および医師または他の当業者に知られている基準に基づいて、容易にモニタリングすることができる。
抗体タンパク質の患者への投与に加えて、本出願は、遺伝子療法による抗体の投与を意図する。抗体をコードする核酸分子のこのような投与は、表現「抗体の治療的に有効な量を投与する」により包含される。例えば、遺伝子療法を用いて細胞内抗体を発生させることに関する、1996年3月14日刊行のWO 96/07321を参照。
核酸分子(随意にベクター中に包含される)を患者の細胞中に導入するための2つの主な方法がある;インビボおよびエクスビボ。インビボ送達について、核酸分子を、患者中に、通常抗体が必要である部位において、直接注射する。エクスビボ処置について、患者の細胞を除去し、核酸分子を、これらの単離した細胞中に導入し、改変した細胞を、患者に、直接、または例えば多孔質膜内にカプセル封入し、これを患者中に移植して、投与する(例えば米国特許第4,892,538号および5,283,187号を参照)。核酸分子を生存可能な細胞中に導入するのに有用な種々の手法がある。この手法は、核酸が,培養した細胞中にインビトロで移送されるか、意図されたホストの細胞中にインビボで移送されるかに依存して、変化する。核酸を哺乳動物細胞中にインビトロで移送するのに適する手法には、リポソーム、電気穿孔法、マイクロ注射、細胞融合、DEAE−デキストラン、リン酸カルシウム沈殿方法などの使用が含まれる。遺伝子のエクスビボ送達のために共通して用いられるベクターは、レトロウイルスベクターである。
現在好ましいインビボの核酸分子移送手法には、ウイルスベクター(例えばアデノウイルス、単純ヘルペスIウイルスまたはアデノ関連ウイルス)および脂質に基づく系(遺伝子の脂質媒介移送に有用な脂質は、例えばDOTMA、DOPEおよびDC−Cholである)での形質移入が含まれる。現在知られている遺伝子マーキングおよび遺伝子療法プロトコルの概説について、Anderson et at., Science 256:808-813 (1992)を参照。またWO 93/25673およびこの中に引用されている参考文献を参照。
製造品およびキット
本発明はまた、Ovr110過剰発現細胞の検出および/またはOvr110発現癌、特に卵巣癌、膵臓癌、肺癌または乳癌の処置に有用な物質を含む、製造品に関する。製造品は、容器および、本発明の抗体を含む、この中に含まれた組成物を含む。組成物はさらに、担体を含むことができる。製造品はまた、容器上またはこれに関連するラベルまたは添付文書を含むことができる。好適な容器には、例えば、ビン、バイアル、シリンジなどが含まれる。容器を、種々の材料、例えばガラスまたはプラスチックから形成することができる。容器は、Ovr110発現細胞を検出し、および/または癌状態を処置するのに有効な組成物を保持し、無菌のアクセス口を有することができる(例えば、この容器は、静脈内溶液袋または皮下組織注射針により貫通可能な栓を有するバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1種の活性な剤は、本発明の抗Ovr110抗体である。
ラベルまたは添付文書は、組成物が、Ovr110発現細胞を検出し、および/または卵巣癌、膵臓癌、肺癌もしくは乳癌、またはさらに特に卵巣漿液腺癌もしくは乳房浸潤乳管癌を、これを必要としている患者において処置するのに用いられることを示す。ラベルまたは添付文書は、さらに、抗体組成物を癌患者に投与するための指示を含むことができる。さらに、製造品は、さらに、本発明の抗体を検出する物質、例えば本発明の抗体に結合する第2の抗体を含む第2の容器を含むことができる。この物質を、検出可能なラベル、例えば本明細書中に開示したもので標識することができる。第2の容器は、例えば、薬学的に許容し得る緩衝液、例えば注射用の静菌性水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液およびデキストロース溶液を含むことができる。製造品は、さらに、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針およびシリンジを含む、商業的な、および使用者の観点から望ましい他の材料を含むことができる。
また、種々の目的のために、例えばOvr110細胞死滅アッセイのために、Ovr110を細胞から精製もしくは免疫沈澱するために、またはOvr110の存在を血清試料中で検出するかもしくは細胞試料中のOvr110発現細胞の存在を検出するために有用なキットを提供する。Ovr110の単離および精製のために、キットは、固体支持体、例えば組織培養プレートまたはビーズ(例えばセファロースビーズ)に結合した抗Ovr110抗体を含むことができる。Ovr110をインビトロで、例えばELISAまたはウエスタンブロットにおいて検出し、定量するための抗体を含むキットを、提供することができる。製造品について、キットは、容器および本発明の抗体を含むこの中に含まれた組成物を含む。キットはさらに、容器上の、またはこれに関連するラベルまたは添付文書を含むことができる。キットは、他の成分、例えば希釈剤および緩衝液、本発明の抗体に結合する物質、例えば標識、例えば本明細書中に開示したもの、例えば放射性標識、蛍光標識を含むことができる第2の抗体もしくは酵素を含むことができるか、またはキットはまた、対照の抗体を含むことができる。追加の成分は、キット内の別個の容器内にあってもよい。ラベルまたは添付文書は、組成物の記載および意図されたインビトロまたは診断的使用のための指示を提供することができる。
例
例1:モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの産生および単離
本発明の以下のMAb/ハイブリドーマを、以下に記載する:Ovr110.A7.1、Ovr110.A10.1、Ovr110.A13.1、Ovr110.A31.1、Ovr110.A57.1、Ovr110.A72.1(前にOvr110 A22.1として同定された)、Ovr110.A77.1、Ovr110.A87.1、Ovr110.A89、Ovr110.A 99.1、Ovr110.A102.1、Ovr110.A107、Ovr110.C1、Ovr110.C2、Ovr110.C3.2、Ovr110.C4、Ovr110.C5.1.、Ovr110.C5.3、Ovr110.C6.3、Ovr110.C7.1、Ovr110.C8、Ovr110.C9.1、Ovr110.C10.1、Ovr110.C11.1、Ovr110.C12.1、Ovr110.C13、Ovr110.C14、Ovr110.C15、Ovr110.C16.1およびOvr110.C17.1。MAbがクローニングされている場合には、これは、「X.1」の命名を得る。例えば、A7の最初のクローンを、A7.1と呼び、A7の第2のクローンを、A7.2と呼ぶなど。本発明の目的のために、A7への言及は、すべてのクローン、例えばA7.1、A7.2などを含む。
免疫原および抗原(組換えタンパク質、HAおよびHisタグおよび形質移入した細胞)
Ovr110A配列およびタンパク質産生
Met1〜Lys282の全体の未成熟Ovr110タンパク質配列(配列番号:1)をコードする全長DNAを、ヒトスタニオカルシン(stanniocalcin)(STC)からの17個のアミノ酸分泌シグナル配列をコードするヌクレオチド配列および6個のHisタグをコードする配列を含む、改変されたベクター中に挿入して、Ovr110タンパク質のN末端に融合した分泌シグナルおよびC末端に融合した6個のHisタグを有する、組換えOvr110融合タンパク質をコードするベクターを発生させた。得られたベクターを用いて、標準的な方法を用いて組換えタンパク質を産生した。要するに、得られたベクターで形質転換した細胞を、組換えOvr110タンパク質の産生に適する条件の下で、培養した。形質転換した細胞を、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)で洗浄し、0.8Mの塩化ナトリウム、0.3%の両性洗浄剤3−14および0.1%のオクチルホスホグルコシドを含む5容量(5ml/細胞1g)の50mMのリン酸ナトリウム、pH8.0中で、超音波処理により溶解した。
不溶性材料を、沈殿として単離し、抽出を、2回繰り返した。単離した沈殿物を、6Mのグアニジン塩酸塩(3ml/細胞1g)を含む50mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.8に溶解し、Akta−100系(Amersham Biosciences, Piscataway, NJ)上の同一の緩衝液で平衡にした10−ml−Ni−NTA(Qiagen, Alameda, CA)カラムを通して、約40カラム容(CV)について、5ml/分の流速において循環させた。次に、カラムを、2CVの同一のリン酸−グアニジン緩衝液、2CVの20mMのイミダゾール、2CVの50mMのイミダゾールおよび前述のリン酸−グアニジン緩衝液中の4CVの100mMのイミダゾールで、洗浄した。
Ovr110Aを、リン酸−グアニジン緩衝液中の4CVの500mMイミダゾールで溶離させ、カラムを、さらに1Mのイミダゾールおよび6Mのグアニジン塩酸塩を含む、4CVの50mMリン酸ナトリウム、pH7.6で洗浄した。採集した画分からの試料に、SDS−PAGEおよびウエスタンブロット分析を施して、Ovr110Aの純度を評価した。精製した画分を、プールし、PBSに対して透析した。沈殿物を採集し、短時間の超音波処理により、小さい容積のPBS中に再懸濁した。
Ovr110B配列およびタンパク質産生
マウスの免疫のために、Ovr110の組換えタンパク質断片を生じさせ、これは、分子の予測された細胞外部分のみを構成して、外部細胞表面に結合するモノクローナル抗体(MAb)を選択した。シグナルペプチドを含む、未成熟タンパク質のGly30(以下の配列において下線を付した)からLys282まで(および開始コドン位置におけるMet)のOvr110配列をコードするDNA断片を、ヒトスタニオカルシン(STC)からの17個のアミノ酸分泌シグナル配列をコードするヌクレオチド配列および6個のHisタグをコードするヌクレオチド配列を含む、改変されたベクター中に挿入して、ベクターが、ヒトスタニオカルシン(STC)からの17個のアミノ酸分泌シグナル配列がOvr110タンパク質(Ovr110B)のN末端に融合し、6個のHisタグがC末端に融合した、組換えOvr110融合タンパク質をコードするようにした。得られたベクターを用いて、DH10Bac細菌を形質転換して、感染ベクターを遺伝子転位により発生させた。次に、組換えバキュロウイルスを、Sf9細胞を遺伝子転位したベクターで形質移入することにより発生させた。組換えOvr110Bを、Hi5細胞系の増幅した、および収穫したウイルス粒子での感染により発現させた。
組換えHi5細胞からの培養培地を、感染後48時間において収穫した。この培地を、10倍に濃縮し、30容のPBS、pH7.9でダイアフィルトレートした(diafiltrate)。次に、ダイアフィルトレートした材料を、10mlのNi−NTA迅速流れゲル(Qiagen)と共に、一晩4℃で、プロテアーゼ−阻害剤−混合物の存在下でインキュベートした。ゲルを、SKカラム中に注入し、0.5Mの塩化ナトリウムを含む2CVの50mMリン酸ナトリウム、pH7.8で洗浄した。Ovr110Bを、同一のリン酸−塩化ナトリウム緩衝液中の段階的に増大するイミダゾール(20mMの4CV、50mMの4CV、100mMの4CV、500mMの4CVおよび1000mMの2CV)により溶離させた。採集した画分からの試料に、SDS−PAGEおよびウエスタンブロット分析を施して、Ovr110Bの純度を評価した。精製した画分を、プールし、濃縮した。最終的な生成物を、PBS中で透析した。
Ovr110を発現した哺乳動物細胞についての配列およびタンパク質産生:
Gly30からLys282までのOvr110をコードする核酸分子を、全長Ovr110 cDNA(pDONR201_Ovr110)を含むシャトルベクターから、以下のオリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCR断片を産生することにより発生させた:
ATN496: 5’−CCA ATG CAT GGT ATT TCA GGG AGA CAC TCC(配列番号:3)
ATN552: 5’−CG GCT AGC TTT TAG CAT CAG GTA AGG GCT G(配列番号:4)
PCR断片を、NsiIおよびNheIで消化し、ヒトスタニオカルシン1(STC−1)分泌シグナルをコードするヌクレオチド配列およびtenヒスチジンタグをコードするヌクレオチド配列を含む、改変した哺乳動物発現pCMV5His2ベクター中に、インフレームでクローニングして、それぞれヒトスタニオカルシン1(STC−1)分泌シグナルがNH2末端に融合しており、tenヒスチジンタグがCOOH末端に融合している組換えOvr110タンパク質をコードする、組換えプラスミドpCMV5jos2_Ovr110を産生した。DNA配列分析を、PE Applied Biosystems (Foster City, CA)からのABI Prism Big Dyeターミネーターサイクル配列決定即時反応キットを用いて行った。
組換えプラスミドpCMV5His2_Ovr110を用いて、293T細胞を懸濁培養液(1リットルの血清非含有培地)において、スピナーフラスコ中で形質移入した。
培養培地を、形質移入後48時間において収穫した。培地を、10倍に濃縮し、100mMのリン酸ナトリウム、400mMのNaCl、10%のグリセロール、pH8.0でダイアフィルターした(diafilter)。Ovr110を含む濃縮した培地を、100mMのリン酸ナトリウム、400mMのNaCl、10%のグリセロール、pH8.0で予め平衡にした5mLニッケル金属キレートカラム(Ni−NTA迅速流れ、Qiagen Inc.)を通過させた。次に、カラムを、6カラム容(CV)の100mMのリン酸ナトリウム、400mMのNaCl、2mMのイミダゾール、10%のグリセロール、pH8.0で洗浄した。Ovr110を、カラムから、それぞれ5mMのイミダゾールおよび500mMのイミダゾールを含む、22CVの100mMのリン酸ナトリウム、400mMのNaCl、10%のグリセロール、pH8.0を用いて溶離した。Ovr110を含む画分を、プールし、100mMのリン酸ナトリウム、400mMのNaCl、5%のグリセロール、pH7.5中で透析した。
BTLA配列およびタンパク質産生:
全長ヒトBTLA(hBTLA)をコードする核酸分子、Met1〜Ser289を、脳下垂体およびリンパ節cDNAライブラリーからのPCRにより、以下のオリゴヌクレオチドプライマーを用いてクローニングした:
ATN551: 5’−CTT TGT TTA AAC ATG AAG ACA TTG CCT GCC ATG(配列番号:6)および
ATN552: 5’−CG GCT AGC ACT CCT CAC ACA TAT GGA TGC(配列番号:7)。
表面免疫グロブリン(Ig)ドメインを包囲する、Met1〜Pro152をコードする切断したhBTLA遺伝子を、バーキット(Burkitt)のリンパ腫cDNAライブラリーからのPCRにより、以下のオリゴヌクレオチドプライマーを用いてクローニングした:
ATN551:(前述の配列を参照)配列番号:6および
ATN554: 5’−CG GCT AGC GGG TCT GCT TGC CAC TTC GTC(配列番号:8)
Met1〜Ser241のhBTLAの膜貫通ドメインを欠いている、全長分泌形態をコードする核酸分子を、リンパ節cDNAライブラリーからのPCRにより、オリゴヌクレオチドプライマーATN551およびATN552を用いてクローニングした。PCR断片を、PmeIおよびNheIで消化し、pCMV5HIS2またはpCMV5Fc1のいずれか中に連結し、これを、同一の酵素で切断して、それぞれC末端拡張AS−HHHHHHHHHHまたはAS−マウスFcドメイン(mFc)を有するタンパク質構造を発生させた。DNA配列分析を、PE Applied Biosystems (Foster City, CA)からのABI Prism BigDyeターミネーターサイクル配列決定即時反応キットを用いて行った。
mFc(BTLA5NT_mFc)に融合したhBTLAの表面Igドメインのみをコードする組換えプラスミドpCMV5Fc1_BTLA5NTを用いて、293T細胞を懸濁培養液(1リットルの血清非含有培地)において、スピナーフラスコ中で形質移入した。培養培地を、形質移入後48時間において収穫した。塩化ナトリウムを、収穫した培地に最終的に3Mに加え、培地を、pH8.0に調整した。次に、BTLA含有培地を、予め10カラム容(CV)の50mMホウ酸塩、4MのNaCl、pH8.0で平衡にした、5mL組換えプロテインAカラム上を通過させた。次に、プロテインAカラムを、30CVの50mMホウ酸塩、4MのNaCl、pH8.0で洗浄した。BTLA5NT_mFcを、プロテインAカラムから、10CVの100mMクエン酸塩、pH3.0を用いて溶離させた。BTLA5NT_mFcを含む画分を、1Mのトリス−HCl、pH9.0で中和し、3LのPBS、pH7.5中で透析した。
Ovr107配列およびタンパク質産生
組換えOvr107タンパク質を用いて、多反応性(poly reactive)ハイブリドーマクローンをスクリーニングした。Ovr107を、多発性癌中で広範囲に上方調節し、ここで用いる組換えOvr107は、有効に交差反応性であるヘキサヒスチジンタグを含む。従って、組換えOvr107は、多反応性抗体を同定するのに有用である。
Met1からIle596までのOvr107配列をコードする全長cDNA(WO 01/37864、ヒトOvr107卵巣癌マーカー)を、PCRによりクローニングし、ベクター中に挿入した。次に、Ovr107コード領域を、6個のHisタグをコードするヌクレオチド配列を含むベクター中への組換えにより移送して、このC末端に融合した6個のHisタグを有するOvr107融合タンパク質が発生するようにした。得られたベクターを用いて、DH10Bac細菌を形質転換して、感染ベクターを遺伝子転位により発生させた。次に、組換えバキュロウイルスを、Sf9細胞の遺伝子転位したベクターでの形質移入により発生させた。組換えOvr107を、Sf9またはHi5細胞系の増幅し、収穫した組換えバキュロウイルス粒子での感染により発現させた。
組換えバキュロウイルスで感染したHi5細胞を、感染後48時間において収穫した。細胞を、DPBSで洗浄し、(5ml/細胞1g)0.4Mの塩化ナトリウム、10%のグリセロール、1%のトライトンX−100および10mMのイミダゾールを含む100mMのリン酸ナトリウム、pH8.0中で、超音波処理により溶解させた。抽出物を、10mgのDNA分解酵素と共に、室温で30分間インキュベートし、次にSS−34ローター中で、17,000rpmで30分間遠心分離した。上清を、さらに、45nmのフィルターを通して濾過し、0.4Mの塩化ナトリウムおよび10%のグリセロールを含む0.1Mのリン酸ナトリウム、pH8.1で平衡にした、5−ml−Ni−NTAカラム(Qiagen)上に、3ml/分の流速で負荷させた。カラムを、15カラム容(CV)の同一の平衡緩衝液で洗浄し、Ovr107を、リン酸−塩化ナトリウム緩衝液中の段階的に増大するイミダゾール(20mMの10CV、50mMの10CV、100mMの10CV、500mMの5CVおよび1000mMの5CV)により溶離させた。画分を、5ml/管で採集し、採集した画分からの試料に、SDS−PAGEおよびウエスタン分析を施して、Ovr107の純度を評価した。精製した画分を、プールし、濃縮した。最終的な生成物を、PBS中で透析した。
安定なLMTKマウス細胞系の発生
HAタグOvr110をコードする哺乳動物ベクターを、マウスLMTK細胞中に形質移入した。安定な形質移入体を、ブラストシジンを10μg/mLで含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)/10%FBS中で、7〜10日間選択し、続いて蛍光に基づいて、1個の細胞/ウェルにおいて、96ウェルプレート中で、単一細胞分類(Coulter Elite, Beckmann Coulter, Sunnyvale, CA)を行った。形質移入したLMTK細胞は、96ウェルプレート(VWR, Brisbane, CA)中での増殖した細胞であり、24ウェルプレート中に、その後6ウェルプレート中に拡張した。培養における1週間後、個別のクローンを、Ovr110の発現について、抗HA抗体(Covance, Richmond, CA)を用いたウエスタンブロットによりアッセイした。最高のレベルのOvr110−HAを発現する2つのLMTK細胞クローンを、75cm2フラスコ(VWR)中に拡張して、ハイブリドーマをスクリーニングし、10%DMSOを有する胎児ウシ血清(FBS)中で凍結保存し、−196℃で液体窒素中に貯蔵して、生存可能なクローン培養物の維持を確実にした。
トランジェントな293F形質移入細胞の発生
HAタグを有しない、Ovr110をコードする核酸分子(配列番号:13)を、哺乳動物発現ベクター、PCDNA3.1中にクローニングし、組換えベクターを用いて、ヒト293F細胞(Invitrogen)を形質移入した。フリースタイル培地(GIBCO)中で106細胞/mlで培養した、50mlの293F細胞を、293フェクチン形質移入試薬(Invitrogen)を用いて、製造者のガイドラインに従って形質移入した。DNA、細胞および293フェクチンを、OPTI−MEM培地(GIBCO)中で混合した。細胞を、形質移入の48時間後に、分析のために用いた。
免疫
AシリーズMAb融合のために、マウスを、自然のタンパク質の細胞外ドメインに相当する、可溶性Ovr110B組換えタンパク質で免疫して、インビボ治療および診断有用性を共に有するMAbを発生させた。CシリーズMAb融合のために、マウスを、哺乳動物発現細胞外ドメインで免疫した。8匹のBALB/cマウスの群を、両方の後ろの足蹠中に、皮内で免疫した。すべての注射は、足あたり25μLであった。マウスあたり10μgの抗原の最初の注射(1日目)は、等しい容積対容積比でTitermax gold アジュバント(Sigma, Saint Louis, MS)と混合されたダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)においてであった。マウスあたり10μgの抗原のその後の注射は、5、9、12、16、19、23、26、29、30日目に行い、マウスあたり20μLのDPBSおよび5μLのAdju-phosアジュバント(Accurate Chemical & Scientific Corp., Westbury, NY)中の抗原からなっていた。33日目の最後の追加免疫注射は、DPBSのみで希釈した抗原からなっていた。融合は、37日目に生じた。
ハイブリドーマ融合
マウスを、免疫プロトコルの完了時に絶命させ、排出するリンパ節(膝窩)組織を、無菌の解剖により採集した。リンパ節細胞を、無菌のふるいを通してDMEM中に押圧し、T細胞を抗CD90(Thy1.2)で被覆した磁性ビーズ(Miltenyl Biotech, Baraisch-Gladbach, Germany)により除去することにより分散させた。
次に、これらの主なB細胞が豊富なリンパ節細胞を、連続的な骨髄腫細胞系P3x63Ag8.653(Kearney, J.F. et al., J. Immunology 123: 1548-1550, 1979)との電子−細胞融合(BTX, San Diego, CA)により不死化した。成功に融合した細胞を、標準的なヒポキサンチン、アザセリン(HA)(Sigma)含有選択培地(DMEM/10%FBS)中で培養することにより選択した。これらの融合培養物を、直ちにプレートあたり10,000,000個の細胞で、96ウェル培養プレートのウェル中に分布させた。培養物を96ウェル培養プレート中に分布させ、直ちに続いて融合させることにより、一層広範囲の種類の単一の特異的な抗体を産生するハイブリドーマクローンの選択が容易になった。ウェルからの上清液を、ELISAにより、Ovr110B、Ovr110Aに対する反応性についてスクリーニングし、関連しないタンパク質(Ovr107)での交差反応性はなかった。
単一の細胞からの遺伝子的に均一な子孫からなるモノクローナル培養物を、上記したスクリーニング手順の後に、単一の生存可能な細胞を2つの96ウェルプレートのウェル中に、フローサイトメトリー(Coulter Elite)を用いて分類することにより確立した。得られたマウスB細胞ハイブリドーマ培養物を、標準的な組織培養手法を用いて拡張させた。選択されたハイブリドーマを、10%DMSOを有する胎児ウシ血清(FBS)中で凍結保存し、−196℃で液体窒素中に貯蔵して、生存可能なクローン培養物の維持を確実にした。
抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングおよび選択
ハイブリドーマ細胞系を、Ovr110特異性抗体の産生のために、酵素結合固相イムノアッセイ(ELISA)により選択した。Ovr110BまたはOvr107タンパク質を、96ウェルポリスチレンEIAプレート(VWR)のウェルに非特異的に吸着させた。(DPBS)中で0.91mg/mLにおいて、50μLのOvr110Bタンパク質またはペプチド−BSA結合体を、96ウェルポリスチレンEIAプレートのウェル中で、一晩4?でインキュベートした。プレートを、0.05%のTween 20、pH7.4を有するトリス緩衝生理食塩水(TBST)で2回洗浄した。次に、プレートウェルを排出し、非特異的結合能力を、ウェルをTBST/0.5%ウシ血清アルブミン(TBST/BSA)で完全に満たし、室温(RT)で30分間インキュベートすることにより遮断した。次に、プレートウェルを排出し、50μLのハイブリドーマ培養培地試料を、ウェルに加え、1時間RTでインキュベートした。
次に、ウェルを、(TBST)で3回洗浄した。次に、TBST/BSAで1:5000に希釈した100μLのアルカリホスファターゼ結合ヤギ抗マウスIgG(Fc)(Pierce Chemical Co., Rockford, IL)を、各々のウェルに加え、1時間RTでインキュベートした。次に、ウェルを、TBSTで3回洗浄した。次に、1mg/mLでの1Mのジエタノールアミン緩衝液、pH8.9(Sigma)中の100μLのアルカリホスファターゼ基質パラニトロフェニルホスフェート(pNPP)(Sigma)を、各々のウェルに加え、20分間RTでインキュベートした。結合したアルカリホスファターゼ活性を、視覚可能な黄色の発色により示した。酵素反応を、溶液の吸光度を405nmの波長において測定することにより定量した。最高の吸光度の値を生じる培養物を、拡張およびさらなる評価のために選択する。
Ovr110MAbのELISAスクリーニング
2週間の培養の後に、Ovr110Bについて1.0より大きい、およびOvr107について0.2より小さいELISA吸光度値を生じる上清を有するハイブリドーマを、25個の96ウェル培養プレートから、新たな96ウェル培養プレート中に再配列させ、さらに1週間培養した。
さらに1週間の培養の後に、Ovr110B(表1Aおよび1B)について1.0より大きい、およびOvr107について0.2より小さいELISA吸光度値を生じる上清を有する、Aシリーズからの12のハイブリドーマおよびCシリーズからの15のハイブリドーマを、96ウェル培養プレート中への細胞分類(Coulter Elite)による単一の細胞クローニングのために選択した。
クローニングしたOvr110MAbのELISAスクリーニングからの結果
2週間の培養の後に、各々の親ハイブリドーマからの2つのハイブリドーマクローンからの上清を、Ovr110B(表1AおよびB)またはOvr110ペプチドについて1.5より大きい、およびOvr107について0.2より小さいELISA吸光度値の発生について、試験した。クローンOvr110.A7.1、Ovr110.A10.1、Ovr110.A13.1、Ovr110.A31.1、Ovr110.A57.1、Ovr110.A72.1、Ovr110.A77.1、Ovr110.A87.1、Ovr110.A89.1、Ovr110.A 99.1、Ovr110.A102.1、Ovr110.A107.1、Ovr110.C1、Ovr110.C2、Ovr110.C3.2、Ovr110.C4、Ovr110.C5.3、Ovr110.C6.3、Ovr110.C7.1、Ovr110.C8、Ovr110.C9.1、Ovr110.C10.1、Ovr110.C11.1、Ovr110.C12.1、Ovr110.C13、Ovr110.C14、Ovr110.C15、Ovr110.C16.1およびOvr110.C17.1を、すべて免疫組織化学的、免疫蛍光および機能的試験についての大規模化のために、選択した。
Ovr110MAbの細胞表面結合についてのFACSスクリーニング
LMTK−Ovr110−HA安定形質移入体並びにOvr110mRNA陽性(SKBR3)およびmRNA陰性(HT29)腫瘍細胞系を、DMEM/10%FBS+P/S中で増殖させた。染色の1日前に、LMTK−Ovr110−HA安定形質移入細胞を、酪酸ナトリウムを5mMの最終濃度に加えることにより刺激した。FACS分析のために、LMTK−Ovr110−HA細胞または腫瘍細胞系を、10mlのCa+2/Mg+2非含有DPBSで1回洗浄し、次に7mlの温かい(37℃)Cellstripper(Mediatech, Herndon, VA)を、150cm2のフラスコあたり加えた。次に、細胞を、5分間37℃で、フラスコを軽くたたいて厳密に付着した細胞を除去しながらインキュベートした。細胞を除去し、数回ピペットで採取して、凝集体を破壊し、次に直ちにDMEM/10%FBS/5mM酪酸ナトリウム中に配置した。次に、細胞を、5分間1300rpmで遠心分離して沈降させ、DMEM/10%FBS/5mM酪酸ナトリウム中に再懸濁させた。細胞を、37℃で30分の回収時間にわたりインキュベートした。染色の前に、細胞の生存可能性を、Guava Viacount (Guava Cytometers, City, CA)を用いて測定し、>90%生存可能である場合には、これらを、96ウェルv底プレート(VWR)中に分布させて、MAbで染色した。
細胞を、96ウェルv底プレート中に、0.5〜1.0×106個の細胞/ウェルにおいて等分し、2分間1500rpmにおいて遠心分離した。上清を吸引し、プレートを、ボルテックスミキサー上で短時間振盪して細胞を再懸濁させ、次に200μlのDPBS/3%FBS/0.01%アジ化Na(FACS緩衝液)を、各々のウェルに加えた。遠心分離および吸引を繰り返し、次に25μLのハイブリドーマ上清の連続的希釈または精製したMAbを、細胞に加えた。プレートを、氷上で15分間貯蔵し、次に前述のように、200μLのFACS緩衝液中で洗浄し、遠心分離した。この洗浄手順を、2回繰り返し、次に25μLのフィコエリスリン(PE)結合ロバ抗マウスIgG Fc抗体(Jackson Immunoresearch Laboratories Inc., West Grove, PA)を、細胞に加えた。氷上で15分後、細胞を、前述のように2回洗浄し、次に250μLのFACS緩衝液中に再懸濁させて、細胞選別機またはフローサイトメーター上で分析した。ある場合において、分析前に4℃で一晩貯蔵するために、133μlのFACS緩衝液および67μLの1%パラホルムアルデヒド/DPBSを、固定のために各々のウェルに加え、次に、容積を、DPBSで250μLに増大させた。染色した細胞を、Elite蛍光活性化細胞選別機(FACS)(Beckman-Coulter, Miami, FL)上で分析した。
FACS分析により細胞表面発現を例証する代表的な実験の結果を、図1に示す。Ovr110 MAb A7.1の結合、続いてロバ抗マウスIg−PE結合体(DAMPE)の結合の結果、49%のOvr110形質移入マウスLMTK細胞が陽性であり、DAMPE単独で染色した細胞よりも7.5倍高い蛍光強度(平均蛍光強度、MFI)がもたらされた。ヒト腫瘍細胞系を用いた他のFACS分析データを、以下の表2に示す。結果から明らかであるように、Ovr110.C3.2、Ovr110.C5.3およびOvr110.C6.3は、各々、80%を超える新鮮なOvr110 mRNA陽性SKBR3細胞に結合し、一方対照の陰性のMAb Pro104.D9.1は、2%より低いこれらの同一の乳癌由来細胞に結合した。Ovr110.C3.2、Ovr110.C5.3およびOvr110.C6.3は、同様に、2%より低い結腸癌細胞系HT29のOvr110 mRNA陰性細胞に結合した。
Ovr110 MAbアイソタイプ
MAbのアイソタイプを、商業的に入手できるマウスモノクローナル抗体アイソタイプ化イムノアッセイ試験キット(IsoStrip, Roche Diagnostic Corp., Indianapolis, IN)を用いて決定した。アイソタイプ化の結果を、表3に列挙する。すべてのMAbは、IgG2b/κアイソタイプのものであったOvr110 MAb A10.1を除いて、IgG1/κアイソタイプのものであった。
Ovr110 MAb親和性分析
結合動力学および親和性定数を、表面プラスモン共鳴測定から、BIACORE 3000機器(Biacore, Piscataway, NJ)を用いて計算した。実験を設計して、オンレート、オフレートおよびOvr110 MAbについての親和性値を同時に発生させた。
ウサギ抗マウスIgG Fc抗体(Biacore)を、CM5センサーチップ(Biacore)の流動細胞2、3および4上で、標準的なアミンカップリング(Biacore)により固定化した。流動細胞1を、基準の減算のためのブランク表面として用い、これを活性化し、次にエタノールアミンで不活性化させた。Ovr110 MAbを、ウサギ抗マウスIgG Fcで被覆したチップ上に捕集し、続いて抗原を結合させた。従って、これらの測定は、真性の1:1の親和性を表し、IgG抗体の2価の性質のために直接的な抗原固定化について観察される結合活性効果であってはならない。MAbを、HBS EP緩衝液(Biacore)で、15μg/mLに希釈し、複数の管に分けて、サイクルの間の蒸発を最小にした。
MAbを、流動細胞を通して、2分間20μL/分において通過させた。MAb捕集レベルは、流動細胞あたり200〜300応答単位(RU)の範囲内であった。MAb捕集に続いて、表面を3分間放置して安定化した。次に、Ovr110B(1.56mg/mL)抗原を、捕集したMAb上を20μL/分において、流動細胞において、およびブランク流動細胞を通して、4分間、144、72、36、18、9、4.5μg/mLの連続的濃度において流した。Ovr110B分子量が、35kDであるため、これらの抗原濃度は、4.11、2.06、1.03、0.514、0.257、0.129μMに相当する。2つの複製サイクルを、各々の抗原濃度または緩衝液について行った。420秒の解離時間が、サイクル間で可能であり、チップ表面の抗マウスIgG Fc抗体またはブランク表面への再生を、100mMのグリシン、pH1.75を流動細胞を通して30秒間100μL/分において流すことにより行った。
得られたデータを、BiaEvaluationソフトウエア(Biacore)により、グローバルフィット同時ka/kd推測ラングミュア結合を用いて分析した。ソフトウエアのRmaxパラメーターを、局所に設定して、抗マウスIgG Fc捕集段階における主要でない変化を補償することを可能にした。10−9〜10−13Mの範囲内である、表4に示す計算された親和性は、10mg/kgより低い、またはこれに等しいインビボでの治療用量を達成するのに十分高い。
ウエスタンブロット
ウエスタンブロット分析のためのタンパク質抽出物を、細胞溶解緩衝液(1%NP−40、10mMのリン酸ナトリウム、pH7.2、150mMの塩化ナトリウム)中に、Ovr110−293T形質移入体および哺乳動物腺癌細胞系から調製した。タンパク質を、NuPAGE4〜12%ビス−トリスゲル(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)上での電気泳動により、変性条件下で、Novex-XCell II Minicellゲル装置(Invitrogen, Life Tech)において分離し、その後PVDF膜に、XCell II Blot Module (Invitrogen Life Technologies)を用いて移送した。タンパク質の移送に続いて、膜を、1%遮断試薬(Roche Diagnostic Corp., Indianapolis, IN)中で遮断し、精製した一次抗体(Ovr110モノクローナル抗体:A10.2、A13.1、A31.1、A57.1、A72.1、A77.1、A89、A107、C3.2、C5.1、C5.3、C6.3、C7.1、C9.1、C11.1、C12.1またはC17.1)と共に、次にセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスIgG二次抗体(Jackson Immunoresearch Laboratories, Inc.)と共に4℃で一晩インキュベートし、最後にECLアドバンスウエスタンブロッティング検出キット(Amersham Biosiences, Piscataway, NJ)を用いて、化学発光により視覚化した。
脱グリコシル化実験を、Ovr110−293T形質移入体、Ovr110 mRNA陽性(QPCR+)およびOvr110 mRNA陰性(QPCR−)哺乳動物腺癌細胞系および卵巣腫瘍からのタンパク質抽出物に対して、ペプチドN−グリコシダーゼF(New England Biolabs, Inc., Beverly, MA)を用いて、製造者により提供された指示により行った。次に、脱グリコシル化された試料を、前述のようにウエスタンブロットにより分析した。要するに、100μgのタンパク質抽出物を、糖タンパク質変性緩衝液(0.5%SDSおよび還元剤)中で、100℃で10分間変性させた。これに続いて、キット反応緩衝液を、1%のNP−40および50mMのリン酸ナトリウムの最終濃度で加え、その後100単位のPNGアーゼFを加え、37℃で4時間インキュベートした。
ウエスタンブロット実験の結果を、表5Aおよび5Bにまとめる。観察することができるように、Ovr110 MAbA10.1、A13.1、A31.1、A57.1、A72.1、A77.1、A89、A107、C3.2、C5.1、C5.3、C6.3、C7.1、C9.1、C11.1、C12.1およびC17.1は、グリコシル化されていないOvr110タンパク質(30kDa)について予測された大きさの同定された主要でないバンドおよび49〜60kDaにおける主要なバンドを、Ovr110形質移入ヒト293T細胞の可溶化液中で同定した。大きい方のバンドは、Ovr110タンパク質上のいくつかのグリコシル化部位の存在と一致した。50〜60kDaの主要なバンドがまた、同一のOvr110 MAbにより、QPCR+ヒト乳癌細胞系SKBR3およびMCF7(ATCC、Manassas, VA)からの可溶化液中で検出されたが、QPCR−細胞系CaOV3およびHT29(ATCC)からの可溶化液中では検出されなかった。PNGアーゼでの脱グリコシル化により、Ovr110形質移入ヒト293T細胞からの可溶化液において、並びにSKBR3およびMCF7(ATCC)乳癌細胞系からの可溶化液において、Ovr110 MAb A57.1により〜60kDa(グリコシル化された)から〜30kDa(グリコシル化されていない大きさであると予測される)まで検出されたバンドの大きさが低下した。3つの卵巣腫瘍試料からの可溶化液のPNGアーゼFでの脱グリコシル化により、また、Ovr110 MAb A57.1により〜60kDa(グリコシル化された)から〜30kDaまで検出されたバンドの大きさが低下した。
例2:免疫蛍光により例証された、生きている細胞におけるOvr110 MAbの細胞表面結合
以下の癌細胞系を、本研究において用いた:卵巣癌OvCar−3、卵巣癌CaOV−3および乳癌SKBr−3。OvCAR−3およびSKBR−3細胞は、Ovr110を発現するが、対照のCaOV−3細胞は発現しない。
細胞を、18mmガラス製カバーガラス上に播種し、37℃で、10%胎児ウシ血清およびペニシリンおよびストレプトマイシンを含むDMEM中で、48時間培養し、その後抗Ovr110 MAbで処理した。
11種のOvr110 MAb(Ovr110.A7.1、Ovr110.A13.1、Ovr110.A72.1、Ovr110.A31.1、Ovr110.A57.1、Ovr110.A77.1、Ovr110.A87.1、Ovr110.A89.1、Ovr110.A99.1、Ovr110.A102.1およびOvr110.A107.1)を、試験して、いずれの抗体が、Ovr110発現癌細胞の細胞表面に結合するかを決定した。一次MAbを、培地に、10μg/mlの最終濃度で加え、37℃で1時間インキュベートした。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の3%ホルムアルデヒドで固定した後に、細胞を、二次Cy3標識したロバ抗マウス(Jackson Immunoresearch Laboratories, West Grove, PA)と共に、10μg/mlの濃度で30分間インキュベートした。洗浄に続いて、細胞を、DAPIを含む培地(Vectastain,Vector, Burlingame, CA)中に載置して、細胞核を視覚化し、対比染色を提供し、適切な蛍光フィルターを備えたZeiss蛍光顕微鏡Axiophotにおいて観察した。顕微鏡写真を、CCDカメラで得た。
結果
試験した11種のMAb(Ovr110.A7.1、Ovr110.A13.1、Ovr110.A72.1、Ovr110.A31.1、Ovr110.A57.1、Ovr110.A77.1、Ovr110.A87.1、Ovr110.A89.1、Ovr110.A99.1、Ovr110.A102.1およびOvr110.A107.1)のうち、10種の抗体は、Ovr110発現細胞の少なくとも一部に結合することができた。図2は、Ovr110.A57.1の、OvCAR−3卵巣癌細胞(A中の矢印)およびSKBR−3乳癌細胞(B中の矢印)の細胞膜へのOvr110.A57.1の結合を示す。CaOV−3細胞、即ちOvr110を発現しない対照の細胞系の細胞膜は、細胞を、同一の抗体と共にインキュベートした際には、標識されなかった(図2C)。
生きている癌細胞における結合および内部移行
本研究を、蛍光抗体を用いて行った。抗体を、蛍光色素Cy3で標識することにより、抗体結合および内部移行を、蛍光顕微鏡観察により視覚化することができる。この手法は、十分に確立されている。Ovr110を発現しないOvCAR−3細胞を、負の対照として用いた。
Cy3結合
Ovr110.A7.1、Ovr110.A13.1、Ovr110.A72.1、Ovr110.A57.1およびOvr110.A87.1を、Cy−3で標識した。Cy3結合を、標準的な手順および製造者のガイドラインに従って行った。要するに、1mgの抗体を、0.1M重炭酸塩緩衝液(pH9.3)に対して60分間透析し、Cy3染料と混合し、RTで2時間インキュベートし、次にPierce Slide-A Lyzer透析カセット中に移送して、2リットルのPBS中で6時間、4℃において透析した。この操作を、6回繰り返した。Cy3結合抗体を回収し、濃度を、分光計において、280nmで測定した。
次に、Ovr110.A7.1、Ovr110.A13.1、Ovr110.A72.1、Ovr110.A57.1およびOvr110.A87.1MAbを、10μg/mlの濃度で、細胞と共に37℃で、水チャンバー中で60分間インキュベートし、PBS中で洗浄し、PBS中の3%ホルムアルデヒドで10分間固定した。固定に続いて、細胞を有するカバーガラスを、DAPIを含む培地(Vectastain)中に載置して、細胞核を視覚化し、適切な蛍光フィルターを備えたZeiss蛍光顕微鏡Axiophotにおいて観察した。顕微鏡写真を、カラーCCDカメラで得た。
結果
Cy3-Ovr110.A7.1、Ovr110.A13.1、Ovr110.A72.1、Ovr110.A57.1およびOvr110.A87.1で処理した癌細胞の免疫蛍光顕微鏡観察により、Ovr110を発現する癌細胞が、種々の程度で蛍光抗体に結合し、これを内部移行することが示された。図3A(矢印)は、結合に続いて、Cy3-Ovr110.A57.1が、SKOV−3細胞により、およびSKBr−3細胞により比較的低い程度に内部移行することを示している(図3B)。Cy3-Ovr110.A57.1の結合は、CaOV−3対照細胞において観察されなかったか、または低い程度の結合が観察された(図3C)。SKOV−3細胞における内部移行パターン染色は、Golgi装置に近接して位置するエンドソームに対応する傾向がある核周囲小胞の存在により特徴づけられる(図3AおよびB)。
結論
Ovr110 MAbは、Ovr110発現癌細胞の細胞表面上のOvr110に結合することにより、インビトロで内部移行する。
免疫組織化学により評価された腫瘍および正常組織におけるOvr110分布
組織
乳癌、卵巣癌および正常な隣接する組織のホルマリン固定パラフィン包埋ブロックを、National Disease Research Interchange (Philadelphia, PA)から得た。正常な器官のOCT包埋ブロックを、Zoion (Hawthorne, NY)から得た。
ホルマリン固定パラフィン包埋切片についての免疫組織化学的染色
ホルマリン固定パラフィン包埋ブロックから切断した厚さ6μmの切片を、45℃で焼成し、Histoclear中で脱パラフィンし、PBSまで一連のエタノールにより再水和した。抗原検索を、切片スライドを10mMのクエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)中で120℃、15〜17PSIで、デクローキング(decloaking)チャンバー(Biocare, Walnut Creek, CA)中で10分間沸騰することにより行った。内因性ペルオキシダーゼ活性を、3%過酸化水素溶液で15分間処理することにより停止した。スライドを、1%BSAと共にインキュベートして、非特異性抗体結合を遮断し、次に、1μg/mlの濃度で1時間、室温でDAKOオートステイナー(autostainer)(Dako Co., Carpinteria, CA)中で用いた、6種の異なる一次Ovr110 MAbと反応させた。0.5%のTween-20を有するトリス緩衝生理食塩水(TBS)中で洗浄した後に、スライドを、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合した二次抗体としての抗マウスIgGと共にインキュベートした。0.5%のTween-20を有するTBS中で洗浄した後に、切片を、3,3’−ジアミノベンジジン色素原により、2〜5分間視覚化し(Immunovision Technologies,Co. Daly City, CA)、ヘマトキシリンで対比染色し、その後脱水後にPermount培地中に載置した。一次抗体と同一の濃度の正常なマウスIgGを、負の対照とした。
OCT包埋凍結未固定切片についての免疫組織化学的染色
スライドを、クリオチャンバー(cryochamber)中で、5〜8μmに、適切な温度において切断し、少なくとも1/2時間室温で風乾した。IHCを、Immunovision Powervision Kit (Immunovision Technologies Co. Daly City, CA)を用いて行った。要するに、スライドを、TBS中で洗浄して、OCTを除去し、一次抗体Ovr110.A13.1およびOvr110.A57.1と共に室温で1時間インキュベートした。次に、これらを、4%パラホルムアルデヒド固定液中で、10分間後固定し、上記したようにして処理した。
結果
Ovr110.A7.1、Ovr110.A10.1、Ovr110.A13.1、Ovr110.A57.1およびOvr110.A87.1を用いて、卵巣漿液腺癌の臨床的試料の切片を免疫標識した。図4は、Ovr110.A57.1を用いてIHCにより評価された卵巣腫瘍におけるOvr110の分布を示す。
15個の臨床的試料の中の13個(87%)が、Ovr110.A57.1を用いて陽性の免疫標識を示した一方、15個のうち14個(93%)が、Ovr110.A13.1を用いて陽性であった(表6A)。特異的な免疫染色は、腫瘍中の上皮細胞に限定され、陽性の細胞の数は、50%からほとんどすべての腫瘍細胞まで変化した。図4Aおよび図4Bは、腫瘍の上皮細胞が、比較的低い強度の細胞質染色を伴って、間質の背景染色を伴わずに、強力な膜性染色(矢印)を示したことを示す。図4Cは、一次抗体をマウスIgG画分で交換した対照実験における、特異的な標識の欠如を示す。
10個の乳癌臨床的試料の8個(80%)が、Ovr110.A57.1を用いた際に陽性であった一方、10個のうち5個(50%)が、Ovr110.A13.1を用いて陽性であった(表6A)。図5は、乳房浸潤乳管癌の臨床的試料における発現のパターンを示す。標識は、腫瘍の上皮細胞の細胞表面に限定される(図5AおよびB、矢印)。図5Cは、一次抗体をマウスIgG画分で交換した対照実験における、特異的な標識の欠如を示す。免疫標識の強度により判定したように、新生物卵巣および乳房組織におけるOvr110についての発現のレベルは、高かった。限定された数の膵臓癌試料を、Ovr110発現のために検査した。4個の臨床的試料のうち2個(50%)は、Ovr110.A57.1でのOvr110の発現を示し、5個のうち3個は、Ovr110.A13.1でのOvr110の発現を示した(表6A)。図6AおよびBは、膵臓腺癌の臨床的試料においてOvr110.A57.1を用いて得られた免疫標識パターンを示す。標識は、上皮細胞の細胞表面に限定される(矢印)。正常なマウスIgGを、Ovr110.A57.1の代わりに用いた際には、特異的な標識は観察されなかった。肺癌組織はまた、A7.1、A13.1およびA31.1での免疫標識について、陽性であることが見出された(それぞれ2/2、2/3および1/2の症例)。
Ovr110発現をまた、正常は組織において分析し、一般的に、以下の器官において陰性であることが見出された:肝臓、胃、膀胱、精巣、結腸、卵巣、前立腺および肺(A13.1を用いて1/7が陽性であるに過ぎない)。正常な心臓の細胞は、中程度の細胞質染色を示したが、細胞表面染色は示さなかった。腎臓は、いくつかの遠位曲尿細管および上行性ループの中程度の膜性染色を示した。正常な乳房および膵臓管の頂端膜もまた、標識された。
Ovr110のげっ歯動物相同体への結合により、抗Ovr110 MAbの結合についての前臨床安全性試験が容易になるため、いくつかの抗Ovr110 Mabを、正常なヒト組織と同一の方法で調製し、切断し、染色した正常なマウス乳腺組織において試験した。この試験の結果を、表6Bに示す。Ovr110.A57.1、Ovr110.C3.2、Ovr110.C6.3およびOvr110.C12.1はすべて、マウス乳腺において、正常なヒト乳腺組織と同様のパターンで、管上皮細胞と反応した。
要約
結果は、Ovr110がまた、いくつかの膵臓および肺癌において発現され、いくつかの抗Ovr110 MAbが、明らかに、マウス乳腺組織における関連する分子と反応した場合であっても、Ovr110発現を、卵巣および乳房浸潤腺管癌の漿液癌腫についての高度に感受性であり、特異的な指標として用いることができることを例証する。細胞膜染色パターンは、Ovr110が、理想的な治療標的であるべきであることを示す。
例3:MAbおよび抗マウスMAbサポリン結合体とのインキュベーションによるOvr110形質移入CHO細胞の死滅
実験を、Ovr110形質移入CHO細胞(Ovr110−CHO)をMab−zapヤギ抗マウスIgサポリン結合体(Advanced Targeting Systems, San Diego, CA)と予め混合したOvr110 Mabと共にインキュベートし、細胞生存率を72および96時間において測定することにより行って、これらのOvr110発現細胞に対する有効な死滅効果を検出した。1日目において、Ovr110−CHO細胞を、96ウェルの平坦底の、無菌の細胞培養プレート(Corning)中に、3つ1組のウェルで、2000個の細胞/75μL/ウェルで、10%FBS、P/Sを有するF12培地中に配置した。プレートを、37℃で5%CO2中で一晩インキュベートした。2つ1組のプレートを、設置して、72時間および96時間における読み取りを可能にした。2日目において(0時間)、25μLの4×最終的なMAb濃度のみ、または25μLの4×Mab Zapと予め混合した25μLの4×MAb、または25μLの4×Mab Zapのみ、または25μLの培地のみを、96ウェルプレートのウェルに3つ1組で、100μLの最終容積に加えた。最終的なMAb濃度は、2μg/mL、0.4μg/mL、0.08μg/mLおよび0μg/mLであり、Mab Zapの最終的な濃度は、1μg/mLであった。
培地のみ、MAbのみ(2μg/mLのみ)およびMAb Zapのみの3つ1組のウェルを、負の対照として用いた。抗トランスフェリンレセプターMAb 5E9(ATCC, Manassus, VA)を、死滅のための正の対照のMAbとして用いた。プレートを、5分間穏和に振盪して、試薬を混合し、次に37℃で5%CO2中でインキュベートした。5日目に(72時間)、10μLのAlamar Blue貯蔵溶液(Biosource International, Camarillo, CA)を、最初の群のプレートのウェルに加え、これらを、37℃で5%CO2中で2〜7時間インキュベートした。次に、プレートを、SpectraMAX GeminiEM分光光度計(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)(発光=590nm、励起=560nmおよびオートカットオフ(Autocutoff)=570nm)上で分析し、生存率を、培地のみを有する対照のウェルの百分率として表現した。
Ovr110.A10.1、Ovr110.A31.1、Ovr110.A57.1、Ovr110.A87.1、Ovr110.C3.2、Ovr110.C5.1、Ovr110.C5.3、Ovr110.C6.3、Ovr110.C9.1、Ovr110.C11.1およびOvr110.C12.1を試験した結果を、表8に示す。明らかなように、MAb Zapのみの結果、高い背景がもたらされ、Ovr110−CHO細胞の0〜41.4%の増殖が阻害された。これは、0〜10%の増殖阻害をもたらしたPro104−CHO細胞およびMAb Zapのみを用いた負の対照のウェルについての場合ではなかった(データは示していない)。しかし、Ovr110 MAbのみはいずれも、Ovr110−CHO細胞の3.8%を超える増殖阻害をもたらさなかった。他方、MAb Zapサポリン結合体と共に加えた際には、試験したOvr110 MAbのすべては、MAb Zapのみよりも10%よりも大きく高い増殖阻害を生じた。
特に、MAb Zapと一緒の、0.08、0.4および2.0μg/mLの濃度におけるOvr110.A57.1は、MAb Zapのみと比較して、15.4〜21.1%高いOvr110−CHO細胞増殖阻害および培地のみを有するウェルと比較して、57.7〜63.4%の増殖阻害をもたらした。結論として、Ovr110発現CHO細胞の増殖阻害は、治療的目的のために、インビボで容易に達成可能なMAbの濃度において得られた。これらのインビトロのデータは、前述のOvr110 MAbは、薬剤または同位体の腫瘍細胞へのインビボでの標的に適することを示唆する。
例4:Ovr110 MAbおよび可溶性BTLA−Fcの活性化されたT細胞および腫瘍細胞への結合
抗ヒトB7x/B7H4および抗マウスB7S1 MAbは、前に活性化されたT細胞に結合することが示された(Prasad et al., Immunity 18:863-73 (2003); Sica et al., Immunity 18:849-61 (2003); Zang et al., Proc. Nat.l Acad. Sc.i U S A. 100:10388-92 (2003))。本発明のOvr110 MAbの活性化された細胞への結合を立証するために、新鮮なヒトT細胞を、以下に記載するように、精製し、種々の化合物で刺激した。Ovr110 MAbの、CD25(IL−2R)およびCD71(TFR)を発現する活性化されたCD3陽性T細胞への結合を、FACSにより分析した。BTLAが、Ovr110(B7x/B7H4)についての推定のレセプターとして同定されているため(Watanabe et al., Nat Immunol. 2003 4:670-9; Carreno & Collins Trends Immunol. 2003 24:524-7)、本発明者らはまた、本明細書中に開示したヒトBTLA−マウスIgG2a Fc融合体の、これらの活性化されたT細胞および腫瘍細胞への結合を試験した。
ヒト末梢血液白血球(PBL)の調製
正常な男性のドナーからのヒト末梢血液を、Stanford Blood Center (Palo Alto, CA)における志願者ドナーから得た。単核細胞を、標準的なFicoll/Hypaque単一段階密度勾配遠心分離(1.077g/mL)法を用いて単離した。
T細胞の活性化
106/mLの最終濃度での単核細胞を、3日間、37℃で、10%FCS(Hyclone, Utah)を補足したRPMI−1640(CellGro)中で、10μg/mLでの植物性血球凝集素(PHA−M)(Sigma, St. Louis, MO)、または10μg/mLでのリポ多糖類(LPS)(Sigma)、または10ng/mLでのフォルボールミリスチン酸酢酸(PMA)(Sigma)と1μMでのイオノマイシン(Sigma)との組み合わせと共に、標準的な25cm2組織培養フラスコ中で、10%CO2中で培養した。
免疫蛍光およびフローサイトメトリー
細胞を、PHA刺激の3日後に採集し、十分に洗浄した。単核細胞を、96ウェルV底プレート中に分布させ、自己血清中でインキュベートして、Fcレセプターを遮断した。抗CD3 FITC抗体(Serotec, Raleigh, NC)を、各々のウェルに加え、CD80PE、CD86PE、CD25PEまたはビオチニル化抗CD71(Serotec)、Ovr110.A57.1またはOvr110.C3.2のいずれかを、第2のMAbとして、20μg/mLで、二色性分析のために加えた。細胞を、2回洗浄し、フィコエリスリン−ストレプトアビジン(PESA)を、ビオチニル化MAbと共にプレインキュベートしたウェルに加えた。細胞を、2回洗浄し、FACS緩衝液中に再懸濁した。細胞を、自己血清中でプレインキュベートし、Ovr110−IgまたはBTLA−Ig融合タンパク質で、20μg/mLで染色した。細胞を、2回洗浄し、ロバ抗マウスPE(1μg/mL)を、試料に加え、次に細胞を、2回洗浄し、マウス血清中でインキュベートして、ロバ抗マウス抗体上の遊離の結合部位を遮断した。次に、抗CD3 FITC抗体を、最後の段階として加えて、T細胞を同定した。2回洗浄した後に、細胞を、FACS緩衝液中に再懸濁し、フローサイトメトリーにより分析した。ヒト腫瘍細胞系SKBR3を、前に記載したように、MAbまたはBTLA−Fcと共にインキュベートした。
すべての試料を、EPICS Eliteフローサイトメーター上で分析した。すべてのヒストグラムを、Winmdiプログラムを用いて発生させた。CD3陽性T細胞を、ゲートとして用いて、B7族並びに活性化マーカー(CD71およびCD25)の発現を分析した。
満たされた曲線がMAbの刺激されていないT細胞への結合を表す図7並びに表8A、8Bおよび8Cにおいて観察することができるように、刺激されていないT細胞と比較しての、CD25およびCD71の発現の増大(即ちPE平均蛍光の増大)が、PHA活性化T細胞(CD3上にゲートをかけた)において達成された。CD71の発現の増大(即ち陽性の細胞または蛍光強度の増大)が、活性化された樹状細胞(CD1c上にゲートをかけた)および活性化された単球において達成された。これらのデータは、T細胞、樹状細胞および単球の陽性の活性化を例証する。図7並びに表8A、8Bおよび8Cにおける蛍光プロフィルにより、CD86(B7.2)およびOvr110(MAb A57.1)の発現が、活性化されたT細胞および活性化された樹状細胞において増大し、Ovr110が、活性化された単球においていくらか増大したことが例証される。
BTLAがOvr110についてのリガンドであることのさらなる証明として、本発明者らは、BTLA−Fc(マウスIgG2a)融合タンパク質のOvr110で形質移入した293F細胞(Ovr110−293F)への結合を試験した。図7G、7Hおよび7Iから、BTLA−Fc融合タンパク質が、Ovr110−293F細胞に有意に結合した(17%の細胞が陽性、MFI 24.57)が、対照の293F細胞には結合しなかった(2%の細胞が陽性、MFI 3.44)ことを観察することができる。さらに、マウスIgG2aのOvr110−293F細胞への、Fc断片を介しての認識可能な結合は、観察されなかった(3%の細胞が陽性、MFI 4.32)。BTLA−FcおよびOvr110−Fcの活性化された細胞への結合である、表8Bに示したデータ、並びにBTLA−FcのOvr110−293F細胞への結合である、図7G、7Hおよび7Iに示したデータから、これらの2種の組換えタンパク質は、腫瘍機能を遮断することにより、診断または治療剤として有用であり得ることが、明らかである。さらに、BTLA−Fcの改変した様式および例えば細胞毒性もしくは細胞分裂停止性成分または他の官能性に結合したOvr110−Fcをまた、治療剤として用いることができる。
表8Aおよび8Bに示したデータにより、MAb A57.1が、明らかに、活性化されたT細胞に優先的に結合し、MAb C3.2が、腫瘍細胞系SKBR3に優先的に結合することが例証される。これらのデータは、これらの2種のMAbが結合するエピトープ間の差異を示唆し、これは、腫瘍発現または発したOvr110の免疫抑制効果を低減するにあたり重要であり得るが、またこれは、治療的抗腫瘍抗体としてのMab C3.2の使用のためにすべての免疫抑制効果を最小にするにあたり重要であり得る。
例5:Ovr110の機能的確証
材料および方法
細胞および細胞培養物
RK3E、293T、IEC-18、SKOV3、HeLa、CaOV3、HT29、MCF7およびSKBR3細胞系を、アメリカンタイプカルチャーコレクション(Manassas, VA)から購入した。細胞を、L−グルタミンおよび4.5g/Lのグルコースを有し、10%FBSおよび100U/mLのペニシリン/ストレプトマイシン(Cellgro)を補足したDMEM(Invitrogen)中で増殖させた。すべての細胞を、加湿した37℃インキュベーター中で、5%CO2と共に保持した。
siRNAオリゴヌクレオチド設計および調製
siRNA分子を設計するために、配列を、前に記載された方法(Elbashir et al., 2001)に基づいて、Ovr110 mRNAのオープンリーディングフレームから選択した。いかなる既知の細胞mRNAのノックダウンをも生じない、無秩序な「スクランブルした」siRNA配列を、負の対照として用いた。追加の負の対照として、siRNA標的Emerinを用いて、非必須mRNAのノックダウンが、Ovr110レベルにも、研究したいずれの生物学的終点にも影響しない(データは示していない)ことを例証した。アポトーシス誘発をもたらすmRNAのノックダウンについての正の対照として、siRNA標的DAXXを、刊行されたデータ(Michaelson et al., J Cell Sci. 2003 Jan 15;116(Pt 2):345-52)に基づいて用いた。ヒトゲノムに対するBLAST探索を、各々の選択されたsiRNA配列について行って、siRNAが、標的に特異的であり、他の配列をノックダウンする機能を有しないことを確実にした。すべてのsiRNA分子(HPP精製階級)を、Xeragon Inc. (Germantown, MD)により化学的に合成した。siRNAを、無菌の緩衝液に溶解し、90℃で1分間加熱し、次に用いる前に37℃で1時間インキュベートした。配列の3’末端における2つのチミジン残基(dTdT)を有するsiRNAオリゴヌクレオチドは、以下の特異的なRNA配列からなっていた:
siRNAオリゴヌクレオチドでの形質移入
6×104個のSKBR3細胞を、12ウェルプレート中に、形質移入前に18〜24時間にわたり播種した。トランジェントな形質移入を、Oligofectamine試薬(Invitrogen)を用いて、製造者のプロトコルに従って行った。100nMのsiRNA(200nMであったDAXX siRNAを除く)の最終濃度および1.5μlのOligofectamineを、細胞のウェルあたり用いた。siRNAを、すべての実験について3つ1組で形質移入した。細胞の平行するウェルを、形質移入の72時間後に、mRNAレベルの変化について定量的なリアルタイムRT−PCR(QPCR)により、タンパク質レベルの変化についてウエスタンイムノブロットにより、およびアポトーシスの変化について2つの異なるアッセイシステム(以下を参照)により評価した。Ovr110タンパク質の下方調節を例証する結果を、図11に示す。Ovr110に対するsiRNA#37をまた、Ovr110を発現しない細胞と共に試験し、アポトーシスに対する影響はなかった(データは示していない)。すべての発見は、少なくとも2つの追加の実験で確認された。
定量的リアルタイムRT−PCR(QPCR)
Qiagen Inc.からのQuantiTech SYBR Green RT-PCRキットを、QPCR評価のために用いた。20〜40ngの鋳型RNAを、反応あたり用いた。QPCRを、Taqman 7700配列検出システム(Applied Biosystem Inc)を用いて行った。
アポトーシスアッセイ
2つの異なるアッセイキットを用いて、siRNAのアポトーシスに対する影響を評価した。「Apo-ONE Homogeneous Caspase-3/7 Assay」キット(Promega Inc.)を用いて、試験細胞を、培養プレートにおいて直接可溶化し、蛍光読み取りとして反映されるカスパーゼ活性を、供給者の指示に従って測定した。第2のキットである、「Guava Nexin V-PE Kit」(Guava Technologies Inc.)を用いて、処理した細胞を、トリプシン処理および洗浄により収穫し、約105個の細胞を、40μlの提供された緩衝液中に再懸濁させ、各々5μlのアネキシンV(+)および7−AAD(−)を加えた。氷上での20分間のインキュベーションに続いて、細胞を、製造者の指示に従ってGuava PCAフローサイトメーターを用いて分析した。Ovr110ノックダウンがアポトーシスを誘発することを例証する結果を、図12および図13に示す。
アノイキスアッセイについて、示した遺伝子を発現するIEC−18およびRK3E細胞を、トリプシン処理し、FBS非含有培地中に、それぞれ150,000および200,000個の細胞/mlの密度で再懸濁した。混合物の1mlのアリコートを、12ウェルプレートの各々のウェル中に播種し、試料を、37℃で24時間インキュベートした。次に、細胞を採集し、前述のようにGuave-Nexin V-PEキットを用いて評価した。有効な発癌遺伝子であるRasを、アノイキスアッセイのための正の対照とし、APを、負の対照とした。結果を、図15に示す。
SDS−PAGEおよびウエスタンイムノブロット分析
siRNAでの形質移入の72時間後に、細胞抽出物を、氷上で、可溶化緩衝液(1% NP40、10mM Na2PO4、0.15M NaCl)とプロテアーゼ阻害剤との混合物(Roche Inc.)を用いて調製した。ウイルス感染または未形質移入細胞を用いた他の実験のための抽出物を、同様の方式で調製した。収穫した腫瘍からのタンパク質抽出物を、スナップ凍結(snap-frozen)の、細分化した腫瘍組織の抽出緩衝液(50mM トリス−HCl、pH=7.2、150mM NaCl、5mM EDTA、0.5% IG−Palおよびプロテアーゼ阻害剤)中での均一化、続いて超音波処理および次に微量遠心管中での遠心分離により調製して、抽出物を浄化した。20〜50μgのタンパク質抽出物を、各々のゲルレーンについて用い;タンパク質の等しい濃度を、同一のゲルについてのタンパク質レベル比較のために評価した。浄化した抽出物を、等しい容積の2×濃縮Laemmli試料緩衝液(Invitrogen)と混合し、70℃に10分間加熱し、次に、プレキャスト(pre-cast)4〜12%SDS−ポリアクリルアミドミニゲル(Nupage, Invitrogen)をMES実行緩衝液(Nupage; Invitrogen)と共に用いて分析した。
ゲルを、Immobilon-P PVDF膜(0.45μmの孔の大きさ、Invitrogen)に、1×Nupage移送緩衝液および10%メタノールを用いて移送した。膜を洗浄し、1時間室温でPBS中の5%脱脂乾燥乳を0.05%のTween-20と共に用いて遮断した。膜を、一次抗体と共に一晩、0.05%のTween-20を含むPBS中の5%脱脂乾燥乳中でインキュベートした。Ovr110に対して向けられたマウスモノクローナル抗体を、組換えOvr110タンパク質を用いて産生した。Ovr110に対するモノクローナル抗体を、1μg/mlの最終濃度で用い、GAPDH(Chemicon Inc.)に対するマウスモノクローナル抗体を、2μg/mlの最終濃度で用いた。一次抗体インキュベーションに続いて、膜を、室温で10分間4回、各々0.05%のTween-20を含む1×PBS中で洗浄した。セイヨウワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウス免疫グロブリン(Jackson Lab Inc.)を、PBS中の5%脱脂乾燥乳および0.05%のTween-20中で、1時間室温で用いて(1:10,000希釈)、一次モノクローナル抗体を検出した。膜を、最後に、4回10分間1×PBSおよび0.05%のTween-20中で洗浄し、続いて製造者の指示(Amersham)に従って、増強した化学発光(ECL)試薬を用いて検出した。
発現ベクター構成
Ovr110タンパク質の哺乳動物細胞中での発現のために、Ovr110 cDNAを、pLXSNベクター(BD Bioscience/Clontech)中にサブクローニングし、配列を立証した。pLXSNレトロウイルスベクターは、MLV LTRを用いて、複数のクローニング部位中にクローニングされたcDNAの発現およびG418耐性をコードするNeo遺伝子のSV40プロモーター駆動発現を駆動させる。pLAPSN、即ちアルカリホスファターゼ(AP)をコードするレトロウイルス発現ベクターを、BD Bioscience/Clontech (pLXSN-AP)から購入した。
ウイルス産生
狭宿主性ウイルスを用いて、RK3EおよびIEC−18細胞を感染し、広宿主性ウイルスを用いて、SKOV3細胞を感染した。狭宿主性ウイルスパッケージングのために、形質移入の1日前に、293T細胞を、6ウェル皿のウェルあたり8×105個の細胞の密度で、Biocoatコラーゲン被覆プレート(BD)上に播種した。細胞を、精製したプラスミドDNAで、PLUS試薬(Invitrogen)を加えたリポフェクタミンを用いて形質移入した。細胞のウェルあたり0.8μgのウイルスプラスミドDNA:pLXSN−Ovr110、pLXSN−Ovr110HAまたはpLXSN−APと、0.8μgのpVpack−ECOおよび0.8μgのpVpackGP(Stratagene)を、血清を含まない125μLのDMEMおよび10μLのPLUS試薬の貯蔵に加え、続いて15分間室温でインキュベートした。
その後、125μLのDMEM培地中に希釈した8μLのリポフェクタミンを、DNA/PLUS試薬混合物に加え、15分間室温でインキュベートした。1mlのDMEMを、最終的なリポフェクタミン/DNA混合物に加え、すでに血清を含まない1mlのDMEMを含む細胞単層に適用し、続いて37℃で3時間インキュベートした。形質移入混合物を、20%のFBSを含むDMEMで交換し、細胞を一晩増殖させた。最後に、培地を、10%のFBSと100U/mLのPen/Strepとを補足したDMEMと交換して、ウイルスを採集した。ウイルス含有培地を、24時間後に収穫し、0.45μmのポリスルホンフィルターを通して濾過した。広宿主性ウイルスパッケージングのために、pVpack Amphoプラスミド(Stratagene)をpVpack Ecoプラスミドの代わりに用いた以外は、同一の手順を繰り返した。
ウイルス感染および選択
ポリブレン(Hexadimethrine Bromide; Sigma)を、新鮮なウイルス含有培地に、4μg/mlの最終濃度で加えた。前日に100mm2の皿あたり3×105個の細胞の密度で播種した、RK3E、IEC−18またはSKOV3細胞を、Ca2+およびMg2+を含むリン酸緩衝生理食塩水(cellgro)で1回洗浄した。ウイルス溶液(100mm2の皿あたり6ml)を、細胞に直接適用し、次に3時間、加湿した37℃インキュベーター中で、5%CO2と共に、時々回旋しながらインキュベートした。ウイルス含有培地を、新鮮な増殖培地で交換し、細胞を、37℃で60〜72時間インキュベートし、この時点で、350μg/mLの最終濃度のG418硫酸塩(Cellgro)を、増殖培地中に含有させて、ウイルスに感染した細胞を選択した。細胞を、70〜80%の集密に維持し、G418含有培地を、2日おきに交換した。
G418選択に続いて、細胞のプールを、ウエスタンイムノブロット分析によるOvr110タンパク質発現の立証を含むその後の実験のために用い、ここで、細胞を、上記したように抽出し、分析した。感染した細胞単層によるAPの発現を、染色によりモニタリングし、これにより、細胞の単層を、10分間室温で0.5%グルタルアルデヒドの溶液で固定し、PBSで洗浄し、65℃に30分間加熱し、APを、BCIP/NBT液体基質(Sigma)と共に2〜3時間インキュベートすることにより視覚化した。
腫瘍異種移植実験
APまたはOvr110のいずれかを発現するSKOV3細胞のレトロウイルスに感染したG418選択プールを、皮下的にヌードマウス中に注射した。親SKOV3細胞をまた、比較のために用いた。107の各々の細胞のタイプを、マトリゲルで、6匹のマウス各々中に移植した。腫瘍細胞を注射したマウスの100%は、腫瘍を生じ、腫瘍形成を、可能な際には、本研究の継続期間にわたり4日おきに触診およびノギス測定によりモニタリングした。結果を、図14に示す。データを、時間経過に伴う平均の群の腫瘍容積として表す。
例6:Ovr110のモノクローナルサンドイッチELISA検出
高結合ポリスチレンプレート(Corning Life Sciences (MA))を、0.8μg/ウェルの抗Ovr110 MAbで4℃で一晩被覆した。被覆溶液を、吸引して除去し、遊離の結合部位を、300μl/ウェルのSuperblock-TBS (Pierce Biotechnology, Illinois)および100%子ウシ血清で、1時間室温(RT)で遮断した。TBS+0.1%のTween20で4×洗浄した後に、50μlのアッセイ緩衝液(TBS、1%のBSA、1%のマウス血清、1%の子ウシ血清、0.1%のTween20)を、各々のウェルに加え、次に50μlの抗原を、90分のインキュベーションのために加えた。チェッカー盤実験のために、各々の対を、50ng/mlおよび0ng/mlの組換え哺乳動物Ovr110(細胞外部分)について試験した。
各々のサンドイッチELISAについて、10、2.5、0.5、0.25、0.1および0ng/mlのOvr110の基準を、試験試料と平行して行った。基準および試験試料を、アッセイ緩衝液で希釈した。検出のために、100μlのビオチニル化されたMAb(1μg/ml)を、各々のウェルに加え、振盪しながら、1時間室温でインキュベートした。洗浄後、1:20,000の希釈での100μlのセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジン(1mg/ml、Jackson ImmunoResearch Laboratories, PA)を、各々のウェルに加え、振盪しながら30分間RTでインキュベートした。洗浄後、次にプレートを、DAKO TMB Plus基質(DAKO, Denmark)を用いて、30分間RTで発生させた。反応を、100μl/ウェルの1NのHCLを用いて停止し、プレートを、450nmで、Spectramax 190プレートリーダー(Molecular Devices, CA)を用いて読み取った。
チェッカー盤ELISAについて、抗体のすべての可能な組み合わせを、試薬を被覆するかまたは検出する効能について試験した。対A72.1/A7.1、A77.1/A57.1、A57.1/ A7.1およびA57.1/ C3.2は、最良のシグナル/ノイズ比を示し、これらをさらに、サンドイッチELISAアッセイにおいて評価して、癌細胞系からの可溶化液および体液中での内因性Ovr110の検出の効能を分析した。対A72.1/ A7.1を用いて、以下に列挙する2700個の血清試料を試験した。
結果
Aシリーズの10MAbについての、およびCシリーズの8MAbについてのチェッカー盤ELISAの結果を、表9Aおよび9Bに示す。各々の抗体を、すべての可能な組み合わせにおいて、被覆抗体と検出抗体との両方として試験した。すべての対を、緩衝液中の100ngの組換えOvr110Bタンパク質について、ブランクとして緩衝液のみについて、2つ1組で試験した。結果を、特異的なシグナル/ノイズ比として示す。MAbは、これらの対形成データに基づいて、2つの別個のエピトープを検出する。Ovr110 A7、A77、A87およびA10 MAbは、他の3種のMAbの結合を立体的に妨げるのに十分近い1つのエピトープまたは2つ以上のエピトープと反応する。すべてのCシリーズ抗体は、このエピトープ(または重複するエピトープ)を同様に検出する。他の別個の1つまたは2つ以上のエピトープを、Ovr110 A89、A57、A31、A72、A107 MAbにより検出する。最高のシグナル/ノイズ比を有するいくつかの対を用いて、組換えタンパク質についての感受性、細胞系中の自然のタンパク質およびいくつかの最初の血清試料に対する反応性を試験した。
エピトープ特異性−MAbの結合およびエピトープマッピング
これらの表における結果から誘導されたOvr110 MAbのエピトープマップを、図16に示す。
ヒト血清試料
ヒト癌および良性血清試料を、IMPATH-BCP, IncおよびDSS (Diagnostic Support Service)から得た。健康な女性からの血清試料を、ProMedex, LCCから得た。すべての試料を、到着の際に等分し、用いるまで−80℃で貯蔵した。
結果
上記したように、血清試料中のOvr110の検出のために、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)および高感受性TMB基質(DAKO)を用いることに基づく感受性の検出システムを、用いた。このELISA様式におけるOvr110についての最小の検出可能な用量(MDD)は、100pg/mlである。中央値の計算のために、MDDより低い値を有する試料を、100pg/mlのOvr110として定義した。最小の検出可能な用量を、背景シグナルより高い2つの標準的な略し方として定義する。健康な患者からの血清試料のほとんどは、サンドイッチELISAにおいて低いOvr110濃度を示した一方、卵巣癌患者からの血清は、上昇したレベルのOvr110を有する。
本発明者らは、肺癌、乳癌、結腸癌、前立腺癌もしくは卵巣癌を有する患者、または非癌性の、良性の疾患を有する患者からの、2700個を超える血清試料におけるOvr110濃度を試験した。すべての試験した試料の完全なリストについて、以下の表10を参照。
図17は、540人の健康なドナーおよび癌を有する1200人を超える患者からの血清中のOvr110濃度を示す。上昇したレベルのOvr110が、すべての癌のタイプの数人の患者において観察されるが、卵巣癌を有する患者は、最高の中央のOvr110濃度を有する。
本発明者らは、漿液または子宮内膜卵巣癌を有する147人の女性の血清および粘液性癌を有する女性の67人分の血清中のOvr110の濃度を、すべての4つの段階の腫瘍進行を表す血清を用いて試験した。図18に示すように、最初の2つの卵巣癌タイプは、IHCによるOvr110について陽性であり、一方粘液性癌は、陽性ではなかった。これらのデータとの良好な整合において、子宮内膜および漿液癌を有する患者の血清中の中央のOvr110濃度は、粘液性癌患者よりも高い。
健康な女性と比較した際に、漿液および子宮内膜癌におけるOvr110の中央の濃度は、2倍よりも大きく高い。この群の260人の健康な女性中のほとんどの女性は、年齢が50歳を超えていて、卵巣癌を有する女性の年齢分布を正確に描写する。本発明者らは、閉経前の、および閉経後の年齢の健康な女性におけるOvr110検出の差異を認識することができない。一層重要なことに、本発明者らはまた、良性の卵巣疾患を有する150人の女性の血清中のOvr110の上昇されたレベルを検出しない(それぞれ子宮内膜症、拡大された卵巣および多嚢胞性卵巣を有する患者の50人分の血清)。
Ovr110が、細胞表面膜タンパク質として発現されるという本発明者らの発見と整合して、血清中のOvr110の全体の濃度は、漿液癌を有する女性においても極めて低い。従って、漿液癌を有する女性からの血清において検出されたOvr110濃度は、20ng/mlより低い。
例7:寄託
細胞系およびDNAの寄託
以下のハイブリドーマ細胞系を、10801 University Boulevard, Manassas, Virginia 20110-2209, U.S.A.に位置するアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)に寄託し、受託番号が付与された。
Ovr110.A57.1 (PTA-5180)を、2003年5月8日に寄託した。Ovr110.A7.1 (PTA-5855)およびOvr110.A72.1 (PTA-5856)を、2004年3月11日に寄託した。Ovr110.C3.2 (PTA-5884)を、2004年3月23日に寄託した。上記の寄託されたハイブリドーマ細胞系の名称を、参照の好都合のために短縮することができる。例えば、A57.1は、Ovr110.A57.1に相当する。これらのハイブリドーマは、表11に列挙するクローン(これらの完全な名称と共に)に相当する。
これらの寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約(ブダペスト条約)の規定の下でなされた。これは、寄託の日付から30年の生存可能な培養物の維持を確実にする。生物は、ブダペスト条約の規約の下で、ATCCにより入手可能にされており、diaDexus, Inc.とATCCとの間の合意が施されており、これは、最初に到来するすべての、関連する米国特許の刊行またはすべての米国の、もしくは外国の特許出願の公共への公開の際に、培養の子孫の公共への永久的な、および制限されない入手可能性を確実にし、35 USC§122およびこれに準拠する長官の規則(886 OG 638に対する特定の参照を有する3 7 CFR§1.14を含む)に従って米国の特許および商標局長官によりこれに権利を付与するべきものとすると決定されたものに対する子孫の入手可能性を確実にする。
本出願の譲受人は、寄託された培養物が、好適な条件の下で培養された際に死滅するかまたは失われるかまたは破壊された場合に、これらを、公告に際して同一の培養物の生存可能な標本と即座に交換することに同意した。寄託された菌株の入手可能性は、この特許法に従ってすべての政府の権力の下に付与された権利に違反して本発明の実施の許諾として考慮されるべきではない。これらの寄託をなすことは、いかなる意味によっても、寄託が、本発明を可能にするのに必要であることを承認するものではない。