JP4883868B2 - 耐火性板ガラス - Google Patents

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Description

【0001】
(発明が属する技術分野)
本発明は、水ガラスを含有する新規な組成物、水ガラスに基づく発泡性防炎中間層から構成される耐火性ガラス積層体、およびこのような積層体を製造する方法、に関する。水ガラスに基づく防炎中間層を有する耐火性ガラス積層体は、商標パイロストップ(PYROSTOP)およびパイロデュア(PYRODUR)の下でピルキントングループの会社から販売されている。これらの積層体は水ガラスの水溶液を第1ガラスペインの表面上に注ぎ、この溶液を透明な中間層が形成されるような方法で乾燥させることにより製造される。その後、第2ガラスぺインを前記第1ぺインの表面上に配置して積層体を形成する。さらに、2シートより多いガラスおよび1枚より多いの中間層を含む積層体も製造されるが、比較的厚くなり、かつ製造費用が相応して高くなる。
【0002】
これらの積層体が火にさらされると、前記中間層は泡沸して膨張しフォームを形成する。フォームは、より長期間前記積層体の構造的完全性を保持するのに役立ち、これにより、火の伝搬に抗するバリヤを保持する。さらに、前記フォームは、板ガラス(glazing)を介して移動される熱の量を減少させるインシュレータでもあり、これにより、前記ガラスの火のない側にある引火性材料の発火を阻害する。
【0003】
水ガラス基中間層を具えた積層体の製造は、英国特許第1518958号、英国特許第2199535号、米国特許第4451312号、米国特許第4626301号および米国特許第5766770号明細書等、多くの特許に記載されている。有益であることを企図される水ガラス溶液は、SiO:MO(Mはアルカリ金属を表す)の重量比が2.5:1〜5.0:1の範囲にあるアルカリ金属珪酸塩である。これらの特許において実際に使用され、かつ市販の耐火性ガラス積層体に使用される、水ガラス溶液は、SiO:MOの重量比が3.4:1またはそれより大きい珪酸後ナトリウムである。SiO:NaOの重量比が3.3:1より小さい珪酸ナトリウム水ガラスは実際には使用されていない。その理由は、これらが粘性であり、これにより扱いが困難となり、乾燥により脆い中間層を形成し、その結果、耐火性板ガラスに組み入れた場合、耐火性がより低く、耐衝撃性がより小さくなるからである。
【0004】
米国特許第4626301号および第5766770号明細書は、多価有機化合物を水ガラス溶液に含有させることをさらに開示する。前記有機化合物は、火の作用下で前記乾燥した中間層の前記表面におけるクラッキングの発生を減少するのに役立ち、チャーを結合することにより火に抗するバリヤを維持するために役立つ。しかし、有機化合物は引火性なので使用量は火に燃料を供給しないために最小限に維持された。米国特許第5766770号には、このような好ましい多価化合物はグリセロールであり、前記中間層は6重量%より少ない有機化合物を好ましくは含むことを開示している。
【0005】
我々は、改良した特性を有する耐火性ガラス積層体がSiO:NaOの重量比が3.0:1より小さい珪酸ナトリウム水ガラス溶液およびより高い割合の多価有機化合物を含有する水ガラス基組成物を形成し、その組成物をガラスシートの前記表面上で乾燥して耐火性中間層を乾燥して耐火性中間層を形成し、少なくとも1枚のこのような中間層を具える積層ガラスを形成することにより製造できることを発見した。
【0006】
他のアルカリ金属珪酸塩水ガラス特に珪酸カリウム水ガラスおよび珪酸リチウム水ガラスもまた本発明の組成物において役立つ。これらの珪酸塩のSiO:MOの重量比はカリウムとリチウムとで異なる原子量について割合を調整すべきである。SiO:NaOの重量比が3.0:1より小さい珪酸ナトリウム水ガラスについて以降説明する。
【0007】
これらの水ガラス基組成物は新規であると考えられ、したがって一つの観点から本発明はSiO:NaOの重量比が3.0:1より小さい珪酸ナトリウム水ガラスおよび前記溶液の少なくとも8重量%の量における多価有機化合物を含有し、30〜70重量%の水から構成される溶液を提供する。
【0008】
最も好ましい多価有機化合物はグリセロールである。使用はできるがその使用があまり好ましくない他の化合物としてはエチレングリコール、単層類、および多糖類等の他のポリオール等を例示できる。
【0009】
多価化合物がグリセロールである好ましい態様において、溶液を乾燥する前のその溶液中のグリセロールの濃度は好ましくは少なくとも10重量%である。多価化合物の濃度が上がるにつれて、溶液を乾燥する場合に生成される中間層の可撓性が増加する。これによりその積層体の耐衝撃性が改良される傾向にある。しかし、多価化合物を過剰割合で含有させると、特に中間層が比較的厚い場合に不利益となり得る。これらのより厚いより重い中間層は、特によりサイズの大きい積層体において使用される場合スランプへの傾向があり、このような積層体は使用に際しては受け入れられない。さらに、本発明の積層体は非常に良好な耐火性を有するが、含有される多価化合物の量が増加することにより中間層の引火性に寄与し、かつこれにより燃焼試験における積層体の性能が減少する。これらの理由のために、我々は、この溶液が最大20%の有機多価化合物を含有することを選択する。最も好ましくは、この水ガラス溶液は14〜18重量%の有機多価化合物を含有する(乾燥工程前)。
【0010】
アルカリ金属珪酸塩水ガラスは好ましくは珪酸ナトリウム水ガラスである。これらの好ましい水ガラスは、SiO:NaOの重量比が好ましくは少なくとも2.0:1、より好ましくは少なくとも2.5:1、最も好ましくは少なくとも2.85:1である水ガラスである。SiO:NaOの重量比が2.0:1; 2.5:1;2.85:1および3.3:1の珪酸ナトリウム水ガラスが市販品として利用可能である。SiO:NaOの重量比が上記特定の比以外の比を有する水ガラスは、これらの市販材料の適当量をブレンドすることにより製造できる。
【0011】
ナトリウム珪酸塩水ガラス以外のアルカリ金属珪酸塩水ガラスを、本発明の組成物で使用できる。カリウム珪酸塩水ガラスおよびリチウム珪酸塩基水ガラスは特に有益である。一般に、これらの代替物はナトリウム珪酸塩基水ガラスに対する部分的置換物として使用され、好ましい態様では、カリウムまたはリチウムに対するナトリウムのモル比は少なくとも2:1である。
【0012】
特に好ましい態様において、本発明の溶液はナトリウム対カリウムのモル比が好ましくは少なくとも4:1である、ナトリウム水ガラスおよびカリウム水ガラスの混合物から構成される。このような珪酸カリウム水ガラスが存在する場合SiO:KOの比は1.43:1〜2.05:1の範囲にあると好ましい。
【0013】
これらの溶液は、多価有機化合物を攪拌下にゆっくり1種または複数種の水ガラスの水溶液に添加することにより都合よく製造できる。得られた溶液は従来の技術を使用して耐火性板ガラスの製造において使用できる。具体的には、この溶液は、溶液をガラスシートの表面上に保持するエッジバリヤを具えたガラスシートの表面上に拡げられる。使用した溶液の量は所望の中間層の厚さに応じて変更できる。この量はお決まりの実験により決定できる。
【0014】
その後、この溶液は、泡や他の光学的不完全性のない、清澄で透明な中間層の製造を確実にするために注意深く制御された温度および湿度の条件下で乾燥される。この溶液の水分量は乾燥工程の間に、一般に10〜35重量%の範囲のレベルに減少される(乾燥した中間層の全重量に基づいて)。相応して、乾燥した中間層における有機多価化合物の濃度は好ましくは10〜40重量%の値、より好ましくは20〜30重量%の値に増加する。この水ガラスは乾燥した中間層の組成物の均衡をもたらす。このような乾燥した中間層は新規であると考えられ、本発明の別の観点を含む。
【0015】
この乾燥した中間層の厚さは一般に0.5〜2.0mmの範囲にある。本発明の耐火性積層体は、1.0〜3.0mmの厚さの、好ましくは少なくとも1枚の発泡性防炎中間層から構成される。より厚い中間層の形成にはより長い乾燥時間が必要であり、これにより、不利となる。より薄い中間層は相応してより短い乾燥時間が必要であり、より厚い中間層から構成される積層体は、例えば0.5〜1.0mmの厚さのより薄い中間層を有する2シートのガラスを向かい合わせて配置し、1.0〜2.0mmの厚さの中間層を形成することにより便利に製造できる。
【0016】
種々の厚さの平らなガラスシートを、本発明の積層体において使用できる。典型的に2.0〜4.0の厚さのソーダライムフロートガラスのシートを使用できる。
【0017】
エッジバリヤは乾燥工程が完了したとき通常は切り離され、乾燥した中間層を片面上に有するガラスシートができる。積層体は第2ガラスシートを前記第1シート上に載置することにより形成できる。別の態様では、前記第2ガラスシートそれ自体が片面上に載置した耐火性中間層を有するものであってもよい。この第2シートは前記第1中間層にこの中間層を隣接して載置し、比較的厚い中間層を有するツーペイン積層体を提供する。より普通には、第2ガラスシートはその上面に中間層を載置して、その上に第3ガラスシートを載置して、3枚のガラスシートおよび2枚の中間層から構成される積層体を提供する。8枚もの中間層を有する積層体が、特別に厳しい耐火安全性の要件に適合させるために、製造されることもある。
【0018】
我々は、本発明の乾燥フィルムの可撓性および強度が、該フィルムを形成した基板の表面から該フィルムを除去可能なように十分な程度であることをも発見した。このようにして形成されたフィルムはガラスシートの表面に載置され、ガラスシートの片面に乾燥中間層を具えたガラスシートを形成するのに必要なサイズに切断される。その後、第2ガラスシートは前記第1ガラスの上に載置されて2枚のガラスシートおよび乾燥中間層から構成される積層体を形成する。
【0019】
これらのフィルムは、本発明の水ガラス溶液を、該溶液を乾燥し次に除去できる平らな表面を有するガラス基板またはその他の基板上で乾燥されることにより形成される。
【0020】
したがって、別の観点から本発明は、耐火性板ガラスの製造法を提供し、その方法は、SiO:NaOが3.0:1.0より小さい珪酸ナトリウム水ガラスおよび少なくとも8重量%の多価化合物から構成される溶液を平らな表面に注ぎ、その溶液を制御された条件下で乾燥し、弾性箔を形成し、この箔を前記表面から外し、この箔を第1ガラスシートの表面に載置し、この箔の上に第2ガラスシートを置くことにより、構成される。
【0021】
本発明のこの観点における使用に好ましい水ガラスは、典型的には乾燥工程の前には30〜70重量%の水を含有し、そして乾燥工程の後には水の含有量は10〜35重量%になる。好ましい多価化合物はグリセロールである。
【0022】
本発明の水ガラス溶液は、有益な既知の他の添加剤をも含有させることができる。特に、少なくとも1種のジルコニウム含有アニオンアグリゲートを含有可能である。有益なアグリゲートは我々の国際公開第01/10638号パンフレットに開示されたもの全てを含む。有益なジルコニウム含有化合物の例としては、炭酸カリウムジルコニウムである。乾燥中間層中に少なくとも0.5重量%のジルコニウムを供給するような量でこのようなアグリゲートが存在することにより、ガラスの耐火特性が改良されることを見いだした。
【0023】
本発明を以下の例により説明する。
実施例1
アルカリ金属水ガラスを含有する一連の組成物を以下の方法を使用して製造した。
一連の水ガラス溶液を使用した。
(A)SiO:NaOの重量比が3.3:1であり、固形分が38.1重量%である珪酸ナトリウム水ガラス溶液(これは英国のウォリントンにあるクロスフィールドカンパニー(Crosfield Company)からクリスタル79珪酸ナトリウム溶液(Crystal 79 sodium silicate solution)として販売されている);
(B)SiO:NaOの重量比が2.85:1であり、固形分が43.2重量%である珪酸ナトリウム水ガラス溶液(これはクロスフィールドカンパニーからクリスタル96珪酸ナトリウムとして販売されている);
(C)SiO:NaOの重量比が2.5:1であり、固形分が43.6重量%である珪酸ナトリウム水ガラス溶液(これはクロスフィールドカンパニーからクリスタル0503珪酸ナトリウムとして販売されている);
(D)SiO:KOの重量比が1.43:1であり、固形分が52.4重量%である珪酸カリウム水ガラス溶液(これはクロスフィールドカンパニーからクリスタルK120珪酸カリウムとして販売されている);
【0024】
これらの溶液に適当量のグリセロールを混合し、表1に記載の配合の組成物を作成した。珪酸ナトリウムおよび珪酸カリウムの量は適当な水溶液A、B、C、またはDの重量として表す。全ての場合に、バランスは珪酸ナトリウム溶液の形態において100%の配合にされている。配合12〜15について珪酸ナトリウム水ガラスおよび珪酸カリウム水ガラスを500rpm回転でパドルミキサー中で、目視的に均一な溶液になるまで初めに混合した。その後グリセロールを徐々にその混合物に攪拌下に添加した。配合1〜8の場合は、グリセロールは珪酸ナトリウム水ガラスに添加した。
【0025】
これらの混合組成物をエッジバリヤガラスペイン上に、3.5kg/m〜5.0kg/mの充填レベルで注いだ。前記ガラスペインは、ソーダライムフロートガラスから形成し、表1のカラム4にmmで示した厚さを有する。これらの溶液を、温度および湿度を注意深く制御した条件下で、厚さ1.4mmおよび水分量約25重量%(カールフィッシャー(Karl Fisher)滴定により測定)の乾燥中間層が形成されるまで乾燥した。この乾燥中間層の上面にトップガラスを置くことにより、厚さ1.4mmの積層体を形成した。厚さ2.8mmの積層体を、片面で乾燥した中間層をそれぞれ具える2枚のガラスシートを使用し、中間層を互いに接触させて配置することにより、形成した。
【0026】
表1のカラム6〜9に記載のサイズの積層体を切断して得た。これらの耐火性能および衝撃性能を、カラムの見出しに示した方法を使用して測定した。この結果をカラム6〜9に示す。
【0027】
実施例1および2は、従来の配合の特性を示す比較例である。これらの従来の配合は、全衝撃試験に不合格である。実施例3〜15は本発明にかかる組成物の例である。これらの全ては、英国標準6206に記載されたクラスC衝撃試験に合格しており、配合3、4、6、11〜14はより大変なDIN52337クラスB試験に合格している。配合3〜15の耐火性能は比較例1および2に対してあまり違いがない。
【0028】
【表1】
Figure 0004883868

Claims (21)

  1. SiO:NaOの重量比が3.0:1より小さいケイ酸ナトリウム水ガラスおよび溶液の少なくとも8重量%の量のポリオール化合物を含む溶液であって、前記溶液は30〜70重量%の水を含む、溶液。
  2. 前記水ガラスは、SiO:NaOの重量比が2.5:1.0の水ガラスである、請求項1に記載の溶液。
  3. 前記水ガラスは、SiO:NaOの重量比が2.85:1.0の水ガラスである、請求項1に記載の溶液。
  4. ケイ酸カリウム水ガラスを含む、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の溶液。
  5. 前記カリウム水ガラスが、SiO:KOの重量比が1.43:1.0のものである、請求項4に記載の溶液。
  6. Na:Kのモル比が少なくとも2.0:1である、請求項4または5に記載の溶液。
  7. 前記ポリオール化合物がグリセロールである、請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の溶液。
  8. 10〜20重量%のグリセロールを含む、請求項7に記載の溶液。
  9. ガラスシートであって、その片方の表面上に透明な乾燥した中間層を具え、その中間層が10〜35重量%の水分量を有し、かつその中間層は、前記ガラスの前記表面上に請求項1〜8のうちいずれか1項に記載の溶液を注ぎ、かつこれを温度および湿度の制御した条件下で乾燥することにより製造されたものである、ガラスシート。
  10. 前記透明中間層が0.5mm〜2.0mmの厚さである、請求項9に記載のシート。
  11. 請求項9または10に記載のガラスシートを利用すること、かつ第2ガラスシートを前記中間層の表面上に載置することを含む、耐火性ガラス積層体の製造方法。
  12. 前記第2ガラスシートがいずれの表面上にも耐火性中間層を具えていない、請求項11に記載の方法。
  13. 前記第2ガラスシートが透明な乾燥した中間層を片面上に具え、かつその中間層が前記第1シート上の前記中間層に接触するように配置されている、請求項11に記載の方法。
  14. 前記第2ガラスシートが透明な乾燥した中間層を片面上に具え、かつ他方の表面が前記第1シート上の前記中間層に接触するように配置され、かつ第3ガラスシートが前記第2ガラスシートの前記表面上の前記乾燥した中間層の表面上に配置されて3枚のガラスシートおよび2枚の中間層を含む積層体を形成する、請求項11に記載の方法。
  15. 請求項1〜8のうちいずれか1項に記載の溶液を平らな表面上に注ぐこと、前記溶液を温度および湿度の制御した条件下で乾燥して箔を形成すること、前記箔を前記表面から除去すること、前記箔をガラスの第1シート上に配置すること、ガラスの第2シートを前記箔の表面上に配置すること、を含む、耐火性ガラス積層体の製造方法。
  16. 前記溶液を乾燥させる前記平らな表面がガラスシートであることを特徴とする請求項15に記載の方法。
  17. SiO:NaOの重量比が3.0:1より小さいケイ酸ナトリウム水ガラス、少なくとも15重量%のポリオール化合物、および10〜35重量%の水を含む、透明な弾性材料。
  18. ポリオール化合物がグリセロールであることを特徴とする請求項17に記載の材料。
  19. 20〜30重量%のグリセロールを含む請求項17または18に記載の材料。
  20. ケイ酸カリウム水ガラスを含むことを特徴とする請求項17〜19のうちいずれか1項に記載の材料。
  21. Na:Kのモル比が2:1またはそれより大きいことを特徴とする、請求項19に記載の材料。
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