JP4883643B2 - 高gaba含有量のそば種子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
このため、毎日食する穀物中にGABA含有量を増加させることが検討されている。例えば、下記特許文献1及び特許文献2には、発芽することのない水分量を添加した玄米を20℃以上の温度下で静置して、玄米中にGABA含有量を増加させることが提案されている。
しかし、かかる玄米中のGABA含有量は、高々18mg/100g程度であり、更にGABA含有量を高めた穀物が要望されている。
かかる要望に応えるべく、玄米よりもGABA含有量が高いそば種子を用いることが考えられる。
しかしながら、玄米と同様に、全量吸水可能の水分量を添加したそば種子を20℃以上の温度下で静置したところ、殆どのそば種子が発芽してしまった。この様に、発芽したそば種子中のGABA含有量は低下し且つ食味も低下する。
そこで、本発明は、玄米よりも更にGABA含有量を高めることができ且つ食味も良好な高GABA含有量のそば種子及びその製造方法を提供することを目的とする。
かかる知見を基にして本発明者は更に検討を重ねた結果、全量吸水可能の水分量を添加したそば種子を非通水性の袋に入れた後、この袋内の大気を排出して、そば種子の雰囲気を嫌気的雰囲気とし、そば種子入りの袋を2〜4℃に保持した冷水中に保存したところ、そば種子中のGABA含有量が著しく増加することを見出し、本発明に到達した。
また、本発明は、全量吸水可能の水分量を添加したそば種子を、流水と非接触状態として、氷点以上の温度で且つ発芽することのない温度に保持しつつ、嫌気的雰囲気内で熟成保存して、前記そば種子中のγ−アミノ酪酸の含有量を増加させた後、前記そば種子を乾燥することを特徴とする高GABA含有量のそば種子の製造方法でもある。
また、そば種子の乾燥を、60〜80℃の温度で通風乾燥で行うことによって、迅速にそば種子を乾燥でき、そば種子中のGABA含有量の減少を可及的に少なくできる。
かかる本発明において、熟成保存するそば種子に、酢或いはグルタミン酸又はその塩を添加することによって、得られるそば種子中のGABA含有量を更に増加できる。
尚、そば種子として、殻を除去したそば種子を用いることによって、そのまま食用に提供できる。
更に、そば種子は発芽していないため、そば種子の食味を損ねることを防止できる。
本発明に係るそば種子は、製粉して高濃度にGABAを含有するそば粉としてもよく、米と混ぜて雑穀米として食してもよい。
かかるそば種子は、殻付きのそば種子であってもよいが、殻を除去したそば種子を用いることによって、得られたそば種子をそのまま食用に提供できるため好ましい。
本発明では、そば種子に全量吸水可能の水分量を添加する。かかる水分量としては、そば種子に対して40〜60%の水分量とすることが好ましい。
ここで、添加水分量が40%未満では、そば種子中のGABA含有量の増加割合が低下する傾向にあり、添加水分量が60%を超えると、そば種子が吸収できる水分量以上の水分が添加されるため、そば種子中のGABA含有量が低下する傾向にある。
このことを図1に示す。図1は、そば種子として信濃1号とタカネルビーとの各々について、所定水分量を添加して4℃で15日間保持した後に、各そば種子中のGABA含有量を測定した測定値の平均値を示した。図1から明らかな様に、添加水分量が80%のそば種子は、添加水分量が40%、60%のそば種子に比較して、GABA含有量が少ない。
ここで、そば種子として信濃1号を用い、添加水分量をそば種子に対して50%とし、そば種子の熟成保存を15日間継続しても、そば種子の発芽は勿論のこと、デンプンの変質も全く見られなかった。
一方、熟成温度を6℃に昇温すると、6日間の熟成保存によって、そば種子中のデンプンの変質が見られた。更に、熟成保存温度を8℃に昇温すると、6日間の熟成保存で略全そば種子が発芽した。
この様に、そば種子を流水と非接触状態で且つ嫌気的雰囲気とするには、全量吸水可能の水分量を添加したそば種子を、プラスチックフィルム袋等の非通水性の袋に入れた後、この袋内の大気を排出し、次いで、袋の入口を密封することによって行うことができる。
かかる袋を、2〜4℃に調整されている水中に浸漬することによって、そば種子を流水と非接触状態で且つ嫌気的雰囲気下で近氷温保存できる。
従って、そば種子を流水と非接触状態で且つ嫌気的雰囲気下で近氷温保存(熟成保存)の期間を5〜15日、特に6〜15日とすることが好ましい。
この様に、所定期間の熟成保存したそば種子を、含有するGABAの含有量を減少させないように乾燥する。
かかる乾燥は、熟成保存したそば種子に対して、60〜80℃の温度で通風乾燥を施すことによって、迅速にそば種子を乾燥でき、そば種子中のGABA含有量の減少を可及的に少なくできる。また、この通風乾燥では、そば種子に60〜80℃の風を吹き付けるため、そば種子を殺菌できるため好ましい。
かかる迅速乾燥に対し、熟成保存したそば種子を自然乾燥すると、図2に示す矢印Bの
曲線の如く、そば種子中のGABAが減少する。
また、そば種子を流水と非接触状態で且つ嫌気的雰囲気下で近氷温保存(熟成保存)する際に、そば種子に酢やグルタミン酸又はその塩を添加することによって、そば種子中のGABA含有量を更に一層増加できる。例えば、処理前にGABA含有量が10mg/100g程度のそば種子に、酢とグルタミン酸ナトリウムとを添加して処理すると、GABA含有量が60mg/100gのそば種子を得ることができる。
この様にして得られた高GABA含有量のそば種子は、そのまま米と混ぜて雑穀米として食してもよいが、製粉してそば粉とし、そばとして食することもできる。そばの食味は、処理前のそば種子を用いたそばと同程度である。
そば種子が封入された袋を、4℃±0.1℃に制御されている水中に浸漬して15日間保持することによって、そば種子を嫌気的雰囲気下で熟成保存した。
15日間熟成保存したそば種子を、袋から取り出して60〜80℃の温度で通風乾燥を施した。
乾燥後に得られたそば種子中のGABA含有量は30mg/100gに増加していた。
得られたそば種子中のGABA含有量を測定して、その結果を図3に示す。図3において、「Gul」はグルタミン酸ナトリムであり、「Mo50%」はそば種子に対して50%となる水分量を添加していることを意味する。図3には、処理前のそば種子については「元種子」と示した。
図3から明らかな様に、グルタミン酸ナトリウムと食酢とを添加した水準では、処理前のそば種子のABA含有量に対して約6倍にGABA含有量が増加している。
Claims (11)
- 全量吸水可能の水分量を添加したそば種子を、氷点以上で且つ発芽することのない温度雰囲気に保持して熟成保存した後乾燥させた発芽していないそば種子であって、前記そば種子中には、30mg/100g以上のγ−アミノ酪酸が含有されていることを特徴とする高GABA含有量のそば種子。
- 熟成保存の温度が、5℃以下である請求項1記載の高GABA含有量のそば種子。
- 添加水分量が、そば種子に対して40〜60%の水分量である請求項1又は請求項2記載の高GABA含有量のそば種子。
- そば種子が、殻が除去されたそば種子である請求項1〜3のいずれか一項記載の高GABA含有量のそば種子。
- 全量吸水可能の水分量を添加したそば種子を、流水と非接触状態として、氷点以上の温度で且つ発芽することのない温度に保持しつつ、嫌気的雰囲気内で熟成保存して、前記そば種子中のγ−アミノ酪酸の含有量を増加させた後、前記そば種子を乾燥することを特徴とする高GABA含有量のそば種子の製造方法。
- そば種子の乾燥を、60〜80℃の温度で通風乾燥で行う請求項5記載の高GABA含有量のそば種子の製造方法。
- 全量吸水可能の水分量を添加したそば種子を、非通水性の袋に入れた後、前記袋内の大気を排出して、前記そば種子の雰囲気を嫌気的雰囲気とする請求項5又は6記載の高GABA含有量のそば種子の製造方法。
- 熟成保存の温度を5℃以下とする請求項5〜7のいずれか一項記載の高GABA含有量のそば種子の製造方法。
- 全量吸水可能の水分量を、そば種子に対して40〜60%の水分量とする請求項5〜8のいずれか一項記載の高GABA含有量のそば種子の製造方法。
- そば種子として、殻を除去したそば種子を用いる請求項5〜9のいずれか一項記載の高GABA含有量のそば種子の製造方法。
- 熟成保存するそば種子に、酢或いはグルタミン酸又はその塩を添加する請求項5〜10のいずれか一項記載の高GABA含有量のそば種子の製造方法。
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