JP4881972B2 - 水底ケーソン及び水底ケーソンの補強改修工事方法 - Google Patents

水底ケーソン及び水底ケーソンの補強改修工事方法 Download PDF

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Description

本発明は、港湾等における防波堤を建造するための水底ケーソン及び水底ケーソンの補強改修工事方法に関するものである。
防波堤を建造する水底ケーソンの一例として、特許文献1に開示されているものがある。この例では、水底に設けた基礎上に、コンクリート製の水底ケーソンを着底させるにあたり、基礎と水底ケーソンの底部との間にアスファルト合材からなる変形層を介在させ、これにより基礎と水底ケーソンの底部との間の摩擦力を増大させている。基礎と水底ケーソンの底部との間の摩擦力を増大させる理由は、地震や波力等により水底ケーソンが基礎上を滑動したり転倒することを防止するためである。
特開平09-221761号公報
しかしながら、近年の地球温暖化に起因する異常気象の影響により、我が国には台風クラスの大型低気圧がより頻繁に通過するようになり、これ伴い各地の沿岸部に設けられている既存の防波堤には、その設計当初の耐波力を上回るような波浪が及ぶようになり、地震の多い我が国の事情とも相俟って、防波堤を構成する水底ケーソンが滑動及び転倒する等し、防波堤の機能が損なわれるようになってきた。
しかし、防波堤を新たに造り直すのは、古い防波堤(水底ケーソン)を撤去、廃棄する手間やコスト等も含めると非常に多大な経費と時間が掛かる。一方、既存の防波堤を構成している水底ケーソンの底面と、地盤との間を垂直な索状のグラウンドアンカーで締結して水底ケーソンの接地力(垂直力)を向上させる補強改修工事は、水底ケーソンの耐波力向上に高い効果がある反面、その施工は必ずしも容易ではない。
即ち、まず水底ケーソン上部の蓋部材を一時撤去して内部に充填されているウェイト材(砂や砂利等)を一旦全部抜き取り、次に水底ケーソンの底部から地盤の所定の深さまで達するアンカー挿通孔を削孔してグラウンドアンカーを配設し、さらに水底ケーソンの内部から砂等のウェイト材がアンカー挿通孔を経て流出することがないようシーリング施工を行い、次に水底ケーソンの内部にウェイト材を再充填し、最後に蓋部材を載置してグラウンドアンカー上端の締結部を締結して水底ケーソンの接地力を向上させる、という複数の工程を有する複雑な工事となるため、防波堤を新たに新造する場合に比べて特に多大なメリットがある訳ではない。
また、防波堤を新たに造り直す場合も、既存の防波堤を補強改修する場合も、防波堤の機能を一旦停止させなければならないため、その間は仮の防波堤を設置したり、港湾を一時的に閉鎖する等、不便を余儀無くされる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、構造が簡素且つ安価であり、なお且つ短期間の工事で水底ケーソンを波浪や地震による滑動及び転倒等から効果的に保護することのできる、水底ケーソン及び水底ケーソンの補強改修工事方法を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の発明は、水底に設置されるケーソン本体と、前記ケーソン本体の頂部に載置され、前記ケーソン本体の平面外周輪郭線よりも外側に突出する突出縁部を有する天板と、前記天板の前記突出縁部に設けられて前記ケーソン本体の平面外周輪郭線よりも外側に位置するアンカー連結部と、上端部が前記アンカー連結部に連結され、下端部が前記ケーソン本体の平面外周輪郭線の外側に位置するように前記水底の地盤中に固定され、前記ケーソン本体に水底側への張力を付与するグラウンドアンカーとを備えてなる水底ケーソンとしたことを特徴とする。
本発明の請求項に記載の発明は、請求項に記載の構成に加え、前記ケーソン本体の外面を覆う防護体を設け、この防護体の内部に前記グラウンドアンカーを配設した水底ケーソンとしたことを特徴とする。
本発明の請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記グラウンドアンカーを、前記アンカー連結部から鉛直線に沿って、又は鉛直線に対し傾斜した角度で下方に延ばして前記水底の地盤中に固定した水底ケーソンとしたことを特徴とする。
本発明の請求項に記載の発明は、請求項1乃至のいずれかに記載の構成に加え、前記グラウンドアンカーとして、前記アンカー連結部から鉛直線に沿って延びるグラウンドアンカーと、前記アンカー連結部から鉛直線に対し傾斜した角度で延びるグラウンドアンカーとを兼備した水底ケーソンとしたことを特徴とする。
本発明の請求項に記載の発明は、水底上に既設されたケーソン本体に、その平面外周輪郭線よりも外側に位置するアンカー連結部を設置するアンカー連結部設置工程と、前記ケーソン本体の平面外周輪郭線よりも外側となる前記水底地盤に、所定の深さに達するアンカー孔を削孔するアンカー孔削孔工程と、前記アンカー孔にグラウンドアンカーの一端を固定するグラウンドアンカー固定工程と、前記グラウンドアンカーの他端を前記アンカー連結部に連結し、前記グラウンドアンカーを緊張させるグラウンドアンカー緊張・締結工程と、を備えてなる水底ケーソンの補強改修工事方法としたことを特徴とする。
本発明の請求項に記載の発明は、請求項に記載の構成に加え、前記ケーソン本体の頂部に、前記ケーソン本体の平面外周輪郭線よりも外側に位置するアンカー連結部を備えた天板を載置して前記アンカー連結部設置工程とする水底ケーソンの補強改修工事方法としたことを特徴とする。
本発明の請求項に記載の発明は、請求項5又は6に記載の構成に加え、前記ケーソン本体の外面に、その内部に前記グラウンドアンカーを配設し得る防護体を設ける防護体設置工程をさらに有する水底ケーソンの補強改修工事方法としたことを特徴とする。
請求項1の発明によれば、ケーソン本体に水底側への張力を付与するグラウンドアンカーが、ケーソン本体の内部ではなく外部を通るように配設されるため、グラウンドアンカーの配設作業が非常に容易になり、これにより簡素で安価、且つ短期間の工事で水底ケーソンを波浪や地震による滑動及び転倒等から効果的に保護することができる。
また、ケーソン本体の頂部に天板を載置するだけでアンカー連結部を設置できるため、より簡素で安価、且つ短期間の工事で水底ケーソンを波浪や地震による滑動及び転倒等から効果的に保護することができる。
請求項の発明によれば、防護体によりケーソン本体の外面とグラウンドアンカーとが保護され、長期に亘ってグラウンドアンカーの健全性が確保されるため、水底ケーソンをより効果的に保護することができる。
請求項の発明によれば、水底ケーソンを転倒に対してより効果的に保護することができる。
請求項の発明によれば、水底ケーソンを滑動及び転倒のどちらからも効果的に保護することができる。
請求項の発明によれば、ケーソン本体に水底側への張力を付与するグラウンドアンカーが、ケーソン本体の内部ではなく外部を通るように配設されるため、従来、既存のケーソン本体の内部にグラウンドアンカーを配設するために必要とされていた複数の工程を省くことができ、これにより簡素で安価、且つ短期間の工事で、既存の水底ケーソンを波浪や地震による滑動及び転倒等に耐え得るよう改修することができる。
請求項の発明によれば、既存のケーソン本体の頂部に天板を載置するだけでアンカー連結部を設置できるため、より簡素で安価、且つ短期間の工事で、既存の水底ケーソンを波浪や地震による滑動及び転倒等に耐え得るよう改修することができる。
請求項の発明によれば、防護体によりケーソン本体の外面とグラウンドアンカーとが保護され、長期に亘ってグラウンドアンカーの健全性が確保されるため、水底ケーソンをより効果的に保護することができる。
本発明の実施の形態1に係る水底ケーソンの縦断面図である。 同実施の形態1に係る図1のII矢視による防波堤及び水底ケーソンの平面図である。 同実施の形態1に係る図1のIII部拡大図である。 水底ケーソンがマウンド上で滑動した状態を示す縦断面図である。 ケーソン本体がマウンド上の正規の位置に戻された状態を示す縦断面図である。 ケーソン本体の頂部に天板が載置された状態を示す縦断面図である。 アンカー孔が削孔された状態を示す縦断面図である。 アンカー体部を形成する耐荷体がアンカー孔の最深部まで挿入された状態を示す縦断面図である。 アンカー体部が形成された状態を示す縦断面図である。 グラウンドアンカーの上端部がアンカー連結部に連結された状態を示す縦断面図である。 本発明の実施の形態2に係る水底ケーソンの縦断面図である。 本発明の実施の形態3に係る水底ケーソンの縦断面図である。 同実施の形態3に係る図12のXIII矢視による水底ケーソンの平面図である。 同実施の形態3に係る図12のXIV部拡大図である。 本発明の実施の形態4に係る水底ケーソンの縦断面図である。
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
[発明の実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る水底ケーソンの縦断面図である。ここでは、例えば港湾の入口等に設置される防波堤1を構成する水底ケーソン10の例を示しており、図面に向かって左側が港外、右側が港内となっている。また、図2は図1のII矢視による防波堤1及び水底ケーソン10の平面図である。水底ケーソン10は一般には捨石等を堆積して水底に設置されたマウンド11の上に設置され、複数の水底ケーソン10が図1の紙面奥行方向に一列に整列配置されることにより防波堤1が構成される。
水底ケーソン10は、ケーソン本体14と天板15とを備えて構成されている。これらはいずれも鉄筋コンクリート構造、或いは鉄骨コンクリート構造である。ケーソン本体14は、例えば上方に開口する有底筐体状であり、ここではその横断面形状が矩形をなしている。ケーソン本体14の内部には複数のウェイト室17が設けられ、その内部に砂や砂利等のウェイト材18が充填される。また、平板状に形成された天板15は、ケーソン本体14の上部に載置されてケーソン本体14の上部開口部を閉塞する。
天板15は、ケーソン本体14の平面外周輪郭線14a,14bよりも外側に突出する突出縁部15a,15bを有している。ここでは、突出縁部15a,15bがケーソン本体14の港外側の外面14c及び港内側の外面14dから水平方向に庇状に数十センチ〜約2m程度突出している。そして、この突出縁部15a,15bの上面側にアンカー連結部21が設けられる。従って、アンカー連結部21は天板15を介してケーソン本体14に連結され、ケーソン本体14の平面外周輪郭線14a,14bよりも外側に位置することとなる。本実施形態では、水底ケーソン10一基あたり、その港外側と港内側とに、それぞれ4基ずつ、合計8基のアンカー連結部21が配置されている。
図3に拡大して示すように、アンカー連結部21は、天板15の上面に形成された下方に陥没するアンカー凹部22と、このアンカー凹部22の底部から天板15を貫通する形で下方に延びるアンカー挿通孔23と、アンカー凹部22の上部を閉塞するアンカー蓋部材24とを有している。このアンカー連結部21には後述するグラウンドアンカー28の上端部が連結される。
一方、水底の地盤G中、且つマウンド11よりも十分に深い部位にアンカー体部26が形成される。このアンカー体部26は、後述するようにグラウンドアンカー28の下端部を直接グラウトで固めて形成するものである。このアンカー体部26は、アンカー連結部21の鉛直下部、即ちケーソン本体14の平面外周輪郭線14a,14bの外側に位置するように配置されている。
そして、8本の鋼索状のグラウンドアンカー28は、その上端部がアンカー連結部21に連結され、ここから鉛直線に沿って下方に延び、その下端部がアンカー体部26に連結、若しくはアンカー体部26に連続する形で水底地盤中に固定される。アンカー連結部21とアンカー体部26とが共に平面視でケーソン本体14の平面外周輪郭線14a,14bの外側に配置されているため、各グラウンドアンカー28もケーソン本体14の平面外周輪郭線14a,14bの外側に配設される。
図3に示すように、グラウンドアンカー28の上端部は、前述の通り天板15に形成されたアンカー連結部21のアンカー挿通孔23とアンカー凹部22とに挿通され、台座31を介してナット32が締結される。ナット32が締め込まれることによってグラウンドアンカー28が緊張し、その張力により図1に示すように水底ケーソン10に水底側への垂直力Vが付与される。その後、アンカー凹部22の上部がアンカー蓋部材24により閉塞され、アンカー蓋部材24はボルト33等で天板15に締結される。
このような場合、グラウンドアンカー28の締結後、長期的にはアンカー緊張力の変動が生じる可能性もあるので、この場合、アンカー蓋部材24を取り外し、ナット32を締め込む、或いは緩めて荷重調整(再緊張)することができる。
このように水底ケーソン10に水底側への垂直力V(張力)が付与されることにより、水底ケーソン10の横抵抗力、即ち水平方向への滑動に抗する力が増大する。横抵抗力Fは次の式より求まる。
F=μ×V
(μは水底と水底ケーソン10底面との間の摩擦係数、Vは垂直力)
よって、グラウンドアンカー28を設けない場合よりも水底ケーソン10の横抵抗力Fを格段に増大させることができ、水底ケーソン10を波浪や地震による滑動及び転倒等から効果的に保護することができる。なお、垂直力Vは、グラウンドアンカー28の設置本数や緊張力を適宜選択することにより自在に設定することができる。本実施例では、1基のケーソン本体14当り8本のグラウンドアンカー28を設置したが、これに限らず適切な本数を配置して最適な垂直力に設定することができる。
また、ケーソン本体14の港外側及び港内側の外面14c,14dを覆う防護体36が設けられており、この防護体36の内部に、ケーソン本体14の外面14c,14dの外側を通るグラウンドアンカー28が埋設されている。防護体36は、例えば鉄筋コンクリートを打設して形成されるが、ケーソン本体14の材質とは別な素材によりカバー部材状に形成してもよい。また、防護体36は、ケーソン本体14の外面14c,14dを全面的に覆わずに、グラウンドアンカー28の周囲及び周辺のみを覆うように形成してもよい。
さらに、防護体36の両外面の下部とマウンド11の上面との角部には、例えばコンクリートブロックを用いた方塊38が配列される。この方塊38により、水底ケーソン10下端のマウンド11の洗掘が防止され、且つ水底ケーソン10の位置ずれがより効果的に防止される。
図4〜図10は、滑動(又は転倒)した既存の水底ケーソン100を、本発明に係る補強改修工事方法により、前述した構成を持つ水底ケーソン10として補強改修(リニューアル)する場合における工事手順を示している。
この補強改修工事方法は、アンカー連結部設置工程a、アンカー孔削孔工程b、アンカー体部形成工程c(c1、c2)、グラウンドアンカー緊張・締結工程d、防護体設置工程eの5つの工程を有している。
a.アンカー連結部設置工程
図4はマウンド11上で滑動した水底ケーソン100を示す。まず、この水底ケーソン100を正規の位置に戻さなければならない。最初に、滑動した水底ケーソン100の既存の天板101を撤去し、ケーソン本体14の内部に充填されている砂や砂利等のウェイト材18を除去する。また、方塊38も撤去する。
次に、ケーソン本体14の上部開口部に図示しない仮蓋を取り付け、ケーソン本体14の内部に空気を入れて浮上させつつ、クレーンで吊り上げる等してケーソン本体14をマウンド11上の正規の位置に移動させて水を注入し、正規の位置に据え付ける。そして仮蓋を撤去し、ケーソン本体14内部にウェイト材18を再充填する(図5参照)。
次に、図6に示すように、アンカー連結部21を備えた天板15を新たにケーソン本体14の頂部に載置する。前述したように、天板15の港外側及び港内側の突出縁部15a,15bに設けられているアンカー連結部21がそれぞれケーソン本体14の平面外周輪郭線14a,14bよりも外側に位置する。
b.アンカー孔削孔工程
次に、図7に示すように、アンカー連結部21の鉛直下の位置、即ちケーソン本体14の平面外周輪郭線14a,14bよりも外側となる水底に、マウンド11を貫通して地盤G内部の所定の深さまで達するアンカー孔41を削孔する。
c.アンカー体部形成工程
次に、下記の手順でアンカー孔41の最深部にアンカー体部26を形成する。
c1.耐荷体挿入工程
まず、図8に示すように、グラウンドアンカー28の下端部に連続的に形成された耐荷体42をアンカー孔41の最深部まで挿入する。
c2.グラウト工程
次に、図9に示すように、セメントやモルタル、又は合成樹脂材料等でなるペースト状のグラウト43をアンカー孔41の内部且つ耐荷体42の周囲に高圧注入する。このグラウト43が硬化することにより、耐荷体42とグラウト43とが一体化してアンカー体部26が形成される。グラウト43は高圧注入されることによりアンカー孔41の内径よりも拡径して硬化するため、アンカー体部26として地盤G中に堅固に固定され、グラウンドアンカー28の張力が及んでも抜脱することがない。その後、アンカー体部26よりも上方のアンカー孔41にさらにグラウトが充填される。なお、上記は最も好適なグラウト工程を示したが、その他の既知のグラウト工程を採用しても良い。
d.グラウンドアンカー緊張・締結工程
次に、図10に示すように、グラウンドアンカー28の上端部をアンカー連結部21に連結し、前述したようにグラウンドアンカー28の上端部のナット32を締結することによりグラウンドアンカー28を緊張させ、その張力により水底ケーソン100に水底側への垂直力を付与する。これは最も好適な緊張締結工程であるが、その他の既知の緊張・締結工程を採用してもよい。
e.防護体設置工程
最後に、図1に示すように、ケーソン本体14の港外側及び港内側の外面14c,14dを覆う防護体36が設置される。防護体36は、例えば鉄筋コンクリートを打設して形成しても、コンクリート以外の物質により形成してもよい。この防護体36を形成することにより、グラウンドアンカー28が防護体36の内部に埋設され、外部には露呈しなくなる。さらに、防護体36の両外面の下部とマウンド11の上面との隅角部に方塊38を配列して、既存の水底ケーソン100を本発明に係る水底ケーソン10としてリニューアルする補強改修工事が完了する。
なお、防護体設置工程を、アンカー孔削孔工程に先行して施工する場合もある。このようにアンカー孔削孔工程に先行して防護体36を例えばコンクリート打設により形成する場合には、防護体36を形成する型枠の内部に予めアンカー孔形成用の箱抜きを設置しておくと好適である。また、このように防護体36に予め形成されたアンカー孔とグラウンドアンカー28との間の間隙には、グラウンドアンカー28の緊張・締結工程の後にグラウト等が充填される。また、図3に示すように、天板15に穿設されるアンカー挿通孔23とグラウンドアンカー28との間の間隙にもグラウトが注入される場合がある。
以上のように構成された水底ケーソン10は、その水平方向への滑動に抗する力を増大させるために備えられたグラウンドアンカー28が、ケーソン本体14の平面外周輪郭線14a,14bよりも外側、即ちケーソン本体14の内部ではなく外部を通るように配設されるため、グラウンドアンカー28の配設作業が非常に容易になり、これにより簡素で安価、且つ短期間の工事で水底ケーソン10を波浪や地震による滑動及び転倒等から効果的に保護することができる。
特に、グラウンドアンカー28を備えていない既存の水底ケーソン100にグラウンドアンカー28を設ける補強改修工事を行う場合には、既存の水底ケーソン100を大幅に改造する必要がなく、簡単な補修程度の工数でグラウンドアンカー28を設けることができ、その間、防波堤1の機能を停止させる必要もないため、非常に利便性が高い。
また、ケーソン本体14の頂部に載置される天板15に、ケーソン本体14の平面外周輪郭線14a,14bよりも外側に突出する突出縁部15a,15bを形成し、この突出縁部に、グラウンドアンカー28の上端部が連結されるアンカー連結部21を設けたため、ケーソン本体14の頂部に天板15を載置するだけでアンカー連結部21を設置することができ、より簡素で安価、且つ短期間の工事で水底ケーソン10を構築、又は補強改修することができる。
さらに、ケーソン本体14の外面を覆う防護体36を設け、この防護体36の内部にグラウンドアンカー28が配設されるため、防護体36によりケーソン本体14の外面14c,14dとグラウンドアンカー28とが保護され、特に鋼索状のグラウンドアンカー28は長期に亘ってその健全性が確保されるため、水底ケーソン10をより効果的に保護することができる。
[発明の実施の形態2]
図11は、本発明の実施の形態2に係る水底ケーソンの縦断面図である。この水底ケーソン50において、実施の形態1に示す水底ケーソン10及びその周辺構造と同様な構成の部分には同符号を付して説明を省略する。
この水底ケーソン50のケーソン本体14には既存の天板51が載置されている。この天板51の平面形状はケーソン本体14の上面形状と一致しており、ケーソン本体14の上面からはみ出ない。
既存の天板51の上には、新たに天板52が載置され、ボルト締結等により固定される。この新設の天板52は、ケーソン本体14の平面外周輪郭線、即ちここではケーソン本体14の港外側及び港内側の外面14c,14dよりも外側に突出する突出縁部52a,52bを有している。この突出縁部52a,52bの突出長さはケーソン本体14の外面14c,14dから数十センチ〜約2m程度である。
突出縁部52a,52bにはアンカー連結部53が設けられている。従ってアンカー連結部53は新設の天板52と既存の天板51とを介してケーソン本体14に連結され、ケーソン本体14の平面外周輪郭線(外面14c,14d)よりも外側に位置する。アンカー連結部53の詳細構造及びアンカー連結部53の配置位置等は実施の形態1に示す水底ケーソン10のアンカー連結部21と同様である。
水底の地盤G中に形成されるアンカー体部26及びグラウンドアンカー28、ならびに防護体36、方塊38等の構成は実施の形態1の場合と同様であり、補強改修工事における工事手順もほぼ同様であるが、そのアンカー連結部設置工程のみが、実施の形態1のように既存の天板51を除去して新たにアンカー連結部を備えた天板を載置するものから、既存の天板51の上にそのまま新たな天板52を載置し、この天板52をボルト締結等により天板51上に固定するものに代わる。
このように、既存の水底ケーソン100の天板51の上に、既にアンカー連結部53が設けられた新たな天板52を載置して固定し、アンカー連結部53とアンカー体部26との間をグラウンドアンカー28で連結する工法とすることにより、既存の水底ケーソン100にアンカー連結部53を設ける工程を大幅に簡略化し、水底ケーソン100の補強改修工事期間を短くすると共に、工事のコストを低減することができる。
また、実施の形態1の場合と同じく、グラウンドアンカー28がケーソン本体14の外部に配設されるため、その配設作業が非常に容易であり、簡素で安価、且つ短期間の工事で水底ケーソン100を波浪や地震による滑動及び転倒等に対して多大な耐性を持つ水底ケーソン50として効率良く補強改修することができる。
[発明の実施の形態3]
図12は、本発明の実施の形態3に係る水底ケーソン60の縦断面図であり、図13は図12のXIII矢視による水底ケーソン60の平面図である。
この水底ケーソン60の、ケーソン本体14、ウェイト室17、ウェイト材18、アンカー連結部21、アンカー体部26、グラウンドアンカー28、防護体36等の構成は、実施の形態1,2に示す水底ケーソン10,50と同様であるため、同符号を付して説明を省略する。なお、マウンド11の上面は被覆石層61により覆われている。
ケーソン本体14の上面に載置される天板63には、1つのケーソン本体14当り8基のアンカー連結部21が設けられている他に、複数の傾斜アンカー連結部65が設けられている。これらの傾斜アンカー連結部65は、港内側に設けられたアンカー連結部21よりもやや港外側にずれた位置に配置されている。また、これらの傾斜アンカー連結部65は、平面視(図13参照)でケーソン本体14の平面外周輪郭線よりも外側、例えば複数のケーソン本体14の間の間隙の上に位置するように天板63に設けられている。
図14に図12のXIV部を拡大して示すように、傾斜アンカー連結部65は、天板63の上面に形成されたアンカー凹部66と、このアンカー凹部66の底部から天板63を貫通する形で下方に延びる傾斜アンカー挿通孔67と、アンカー凹部66の上部を閉塞するアンカー蓋部材68とを有しており、傾斜アンカー挿通孔67の軸線方向が下方且つ港外側に傾斜している。アンカー蓋部材68はボルト69等で天板63に締結される。
一方、水底の地盤G中、且つマウンド11よりも十分に深い部位に傾斜アンカー体部71が形成される。この傾斜アンカー体部71の形成方法は、実施の形態1,2に記載した方法と同様である。傾斜アンカー体部71の軸方向は、傾斜アンカー挿通孔67の軸線を地盤G中まで延ばした線に沿っており、傾斜アンカー体部71の下端が港外側、上端が港内側に寄るように傾斜している。
そして、グラウンドアンカー28と同様な鋼索状の傾斜グラウンドアンカー72が配設される。この傾斜グラウンドアンカー72の上端部は傾斜アンカー連結部65に連結され、ここから傾斜グラウンドアンカー72はケーソン本体14の外部(複数のケーソン本体14の間)を通りながら鉛直線に対し傾斜した角度で下方に延び、その下端部が傾斜アンカー体部71に連結、若しくは傾斜アンカー体部71に連続する形で水底地盤中に固定される。これにより傾斜グラウンドアンカー72はケーソン本体14の後上部から前下方に向かって、側面視で斜めに、且つ平面視で港外側から水底ケーソン60に及ぶ波力Wに沿う方向に張設される。このように、傾斜グラウンドアンカー72は、グラウンドアンカー28と同じく、ケーソン本体14の外部を通るように配設するのが好適である。
図14に示すように、傾斜グラウンドアンカー72の上端部は、前述の通り天板63に形成された傾斜アンカー連結部65の傾斜アンカー挿通孔67に下方から挿通されてアンカー凹部66内に進入し、楔状の台座74を介してナット75で締結される。ナット75が締め込まれることによって傾斜グラウンドアンカー72が緊張し、その張力により、図12に示すように、水底ケーソン60を水底側に押し付けようとする垂直分力F1と、波力Wの方向と反対の方向に水底ケーソン60を牽引しようとする牽引分力F2とが付与される。垂直分力F1は、グラウンドアンカー28によって水底ケーソン60に付与される水底側への垂直力Vに加担する。なお、ナット75の締結後、長期的にはアンカー緊張力の変動が生じる可能性があるので、その場合はアンカー蓋部材68を取り外し、ナット75を締め込むか緩めて荷重調整(再緊張)を行う。
このように、水底ケーソン60は、アンカー連結部21から鉛直線に沿って下方に延び、水底ケーソン60に垂直力Vを付与するグラウンドアンカー28と、傾斜アンカー連結部65から鉛直線に対し傾斜した角度で下方に延び、水底ケーソン60に及ぶ波力Wに抗する方向にケーソン本体14を牽引しようとする牽引分力F2を付与する傾斜グラウンドアンカー72とを兼備しているため、鉛直なグラウンドアンカー28のみを装備した場合に比べて、水底ケーソン60を波力Wによる滑動及び転倒のどちらからも、非常に効果的に保護することができる。
なお、場合によっては、鉛直なグラウンドアンカー28を設けずに、傾斜グラウンドアンカー72のみを設けて、水底ケーソン60に垂直分力F1と牽引分力F2とを付与してもよい。
[発明の実施の形態4]
図15は、本発明の実施の形態4に係る水底ケーソンの縦断面図である。この水底ケーソン80において、実施の形態3に示す水底ケーソン60及びその周辺構造と同様な構成の部分には同符号を付して説明を省略する。
ここでは、各々のケーソン本体14の港外側及び港内側の両側に、傾斜グラウンドアンカー72aと傾斜グラウンドアンカー72bとがそれぞれ交差する形で配設されている。傾斜グラウンドアンカー72aの構成は実施の形態3の図12に示す傾斜グラウンドアンカー72と同一であり、傾斜グラウンドアンカー72bは傾斜グラウンドアンカー72aを反転させた位置に配設されている。
これにより、水底ケーソン80には、傾斜グラウンドアンカー72aがもたらす垂直分力F1と港外側方向への牽引分力F2とに加え、傾斜グラウンドアンカー72bがもたらす垂直分力F3と港内側方向への牽引分力F4とが加わるため、水底ケーソン80を港内側と港外側との両方向に向かって転倒しにくくし、地震等に対して効果的な補強を行うことができる。
なお、上記実施の形態1乃至4は、いずれも港湾等に設置される防波堤を本願発明に係る水底ケーソンによって構築した実施形態について説明したが、防波堤に限らず、例えば岸壁を構成する水底ケーソンとして本願発明に係る水底ケーソンを適用することもできる。その場合には、図1、図11、図12、図15中に示す「港内」という領域が「陸地」となる。
1 防波堤
10,50,60,80 水底ケーソン
11 マウンド
14 ケーソン本体
14a,14b ケーソン本体の平面外周輪郭線
15,52,63 天板
15a,15b,52a,52b 突出縁部
18 ウェイト材
21,53 アンカー連結部
26 アンカー体部
28 グラウンドアンカー
36 防護体
41 アンカー孔
65 傾斜アンカー連結部
71 傾斜アンカー体部
72,72a,72b 傾斜グラウンドアンカー
G 地盤
F1,F3 垂直分力
F2,F4 牽引分力
V 垂直力
W 波力

Claims (7)

  1. 水底に設置されるケーソン本体と、
    前記ケーソン本体の頂部に載置され、前記ケーソン本体の平面外周輪郭線よりも外側に突出する突出縁部を有する天板と、
    前記天板の前記突出縁部に設けられて前記ケーソン本体の平面外周輪郭線よりも外側に位置するアンカー連結部と、
    上端部が前記アンカー連結部に連結され、下端部が前記ケーソン本体の平面外周輪郭線の外側に位置するように前記水底の地盤中に固定され、前記ケーソン本体に水底側への張力を付与するグラウンドアンカーと、
    を備えてなることを特徴とする水底ケーソン。
  2. 前記ケーソン本体の外面を覆う防護体を設け、この防護体の内部に前記グラウンドアンカーを配設したことを特徴とする請求項1に記載の水底ケーソン。
  3. 前記グラウンドアンカーを、前記アンカー連結部から鉛直線に沿って、又は鉛直線に対し傾斜した角度で下方に延ばして前記水底の地盤中に固定したことを特徴とする請求項1又は2に記載の水底ケーソン。
  4. 前記グラウンドアンカーとして、前記アンカー連結部から鉛直線に沿って延びるグラウンドアンカーと、前記アンカー連結部から鉛直線に対し傾斜した角度で延びるグラウンドアンカーとを兼備したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水底ケーソン。
  5. 水底上に既設されたケーソン本体に、その平面外周輪郭線よりも外側に位置するアンカー連結部を設置するアンカー連結部設置工程と、
    前記ケーソン本体の平面外周輪郭線よりも外側となる前記水底の地盤に、所定の深さに達するアンカー孔を削孔するアンカー孔削孔工程と、
    前記アンカー孔にグラウンドアンカーの一端を固定するグラウンドアンカー固定工程と、
    前記グラウンドアンカーの他端を前記アンカー連結部に連結し、前記グラウンドアンカーを緊張させるグラウンドアンカー緊張・締結工程と、
    を備えてなることを特徴とする水底ケーソンの補強改修工事方法
  6. 前記ケーソン本体の頂部に、前記ケーソン本体の平面外周輪郭線よりも外側に位置するアンカー連結部を備えた天板を載置して前記アンカー連結部設置工程とすることを特徴とする請求項5に記載の水底ケーソンの補強改修工事方法。
  7. 前記ケーソン本体の外面に、その内部に前記グラウンドアンカーを配設し得る防護体を設ける防護体設置工程をさらに有することを特徴とする請求項5又は6に記載の水底ケーソンの補強改修工事方法。
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