以下に、本発明の実施形態及び限定理由について説明する。
配合炭に、粉コークスや無煙炭などの収縮係数の小さい低収縮率炭材を添加して、コークス炉で乾留すると、低収縮率炭材粒子は、周囲の配合炭より収縮率が小さいため、配合炭がセミコークスからコークスへ変化する過程で、低収縮率炭材の周囲に、炭材粒径程度の小亀裂が発生し、それにより、コークスケーキ全体の収縮が緩和され、コークスケーキの粗大亀裂が減少して、コークス粒径が拡大する。
しかし、低収縮率炭材は、乾留過程における配合炭の膨張時には、石炭粒子間の接着を阻害するため、また、炭材周囲の小亀裂が欠陥となるため、コークス強度を低下させる原因となる。
なお、本発明において、低収縮率炭材は、コークス炉に装入する配合炭の平均収縮率よりも少なくとも5%以上低い収縮率を有する炭材を意味する。このような低収縮率炭材として、粉コークス及び無煙炭のうちの1種又は2種を用いることができる。
本発明における収縮率とは、再固化温度から1000℃までのコークスへの変化過程における収縮率を意味し、例えば、以下の方法により測定される。
つまり、コークス炉装入用の石炭を容器内に装入し、予め設定された石炭の再固化温度R(℃)以上の温度T(℃)、例えば、T=1000(℃)まで加熱する。通常の石炭の再固化温度R(℃)は500℃前後であるから、石炭を常温からT(=1000℃)まで加熱すると、先ず、石炭は400℃前後において軟化溶融し、石炭粒子間の空隙に、軟化溶融した石炭が流れ込むことによって生じる見掛上の収縮が観察される。
その後、500℃前後で、軟化溶融した石炭の再固化(セミコークス又はコークス)による顕著な収縮が観察され、その後、さらに、1000℃まで収縮が続く。
ここで、上記石炭の加熱過程における体積変化を基に、再固化温度R(℃)での内容物の容積をVR、温度T(℃)での内容物の容積をVTとおくと、温度T(℃)でのコークス収縮率R(−)を、以下の式で定義することができる。
R=(VR−VT)/VR ・・・(1)
また、石炭の収縮率は、石炭の加熱過程における長さ収縮率と定義し、再固化温度での内容物の長さをLR、温度Tでの内容物の長さをLTとすると、温度Tでのコークス収縮率R(−)を、以下の式で定義することもできる。
R=(LR−LT)/LR ・・・(2)
本発明は、配合炭を、乾燥した後、又は、乾燥と同時に、微粉炭と粗粒炭に分級し、前記微粉炭にバインダーと低収縮率炭材を添加した後、加圧成型して成型炭とするとともに、前記粗粒炭に粘結補填材と低収縮率炭材を添加した後、又は、該添加と同時に、前記成型炭と粗粒炭を混合してコークス炉で乾留する高炉用コークスの製造方法を前提とし、配合炭中の微粉炭及び粗粒炭のそれぞれに対して低収縮率炭材の粒径、さらには、添加量を適正に調整することにより、コークス強度を維持しつつ、コークス粒径を拡大することを技術思想とする。
なお、上記微粉炭に添加するバインダーは、微粉炭を加圧成型して成型炭とする際に、成型炭の冷間強度を向上させ、コークス炉に装入するまでの成型炭の搬送過程及びコークス炉に装入する際の崩壊が生じない程度の強度を維持するために添加される。なお、このようなバインダーとしては、タール、タールの重質留分、及び、軟ピッチの1種又は2種以上からなるものが用いられる。
また、上記粗粒炭に添加する粘結補填材は、加圧成型前の微粉炭及び粗粒炭に添加される低収縮率炭材に起因するコークス強度低下を抑制するために、通常、配合炭をコークス炉に装入する直前に添加する。つまり、粘結補填材は、配合炭の粘結性成分を補填して、石炭乾留時の流動性及び膨張性を向上させ、コークス強度を向上させるために添加される。
このような粘結補填材としては、タール、タールの重質留分、軟ピッチ及び、石油ピッチの1種又は2種以上からなるものが用いられる。
従来、コークス炉に装入する直前の配合炭に、低収縮率炭材を添加し、乾留する方法が知られているが、配合炭を微粉炭と粗粒炭に分級し、塊成化前の微粉炭と粗粒炭のそれぞれに低収縮率炭材を添加する方法は知られていない。
本発明者らは、検討の結果、配合炭を微粉炭と粗粒炭に分級し、微粉炭を成型炭とし、この成型炭と粗粒炭を混合してコークス炉で乾留する場合には、塊成化前の微粉炭と粗粒炭のそれぞれに添加する低収縮率炭材の粒度によって、セミコークスからコークスへの変化過程における低収縮率炭材周囲の小亀裂の生成挙動が異なり、コークス粒径MS及びコークス強度DI150 15への影響が異なることを見いだした。
本発明者らは、以下の方法で、塊成化前の微粉炭と粗粒炭のそれぞれに添加する粉コークスの粒径が、コークス平均粒径MS、及び、コークス強度DI150 15に及ぼす影響について調査した。
つまり、粉砕して得られた、−3mmを80%含有した石炭を、分級点:0.5mm、分級率:粗粒/微粉=68/32で、微粉炭と粗粒炭に分級した。微粉炭には、低収縮率炭材として、平均粒径が0.01〜10mmの粉コークスを、微粉炭に対する質量%で、2.5%添加し、成型炭の冷間強度を維持するためのバインダーとして、蒸留タールを、微粉炭に対する質量%で、6.5%添加し、加圧成型して成型炭とした。
一方、粗粒炭には、低収縮率炭材として、平均粒径が0.01〜10mmの粉コークスを、粗粒炭に対する質量%で、2.5%添加し、低収縮率炭材添加によるコークス強度の低下を抑制するための粘結補填材として、石油ピッチを、目標とするコークス強度DI150 15:86を維持するために必要な量(粗粒炭に対する質量%)を添加した。
コークスは、上記成型炭と粗粒炭を混合して、コークス炉で乾留して製造し、得られたコークス平均粒径MS及びコークス強度DI150 15を測定した。
また、従来の低収縮率炭材の添加方法により、配合炭を微粉炭と粗粒炭に分級し、微粉炭に成型炭の冷間強度を維持するためのバインダー(蒸留タール)を、微粉炭に対する質量%で、6.5%添加し、加圧成型して成型炭とし、この成型炭と粗粒炭を混合した後、平均粒径が0.35mmの低収縮率炭材を、配合炭全体に対する質量%で、2.5%(粗粒炭に対する質量%で3.7%)添加して、粘結補填材(石油ピッチ)を、配合炭全体に対する質量%で、4.3%(粗粒炭に対する質量%で6.3%)添加し、コークス炉で乾留した結果、得られたコークス平均粒径MSは44.5mmであり、コークス強度DI150 15は86であった。
図1に、粗粒炭に添加する低収縮率炭材の平均粒径を0.35mm一定とした場合における、微粉炭に添加する低収縮率炭材(粉コークス)の平均粒径とコークス平均粒径MSとの関係を示す。
図1より、微粉炭に添加する低収縮率炭材(粉コークス)の平均粒径が0.01mm未満の場合、コークス平均粒径MSは、上記従来の低収縮率炭材の添加方法により得られるコークス平均粒径MS:44.5mmよりも小さくなる。この理由は、配合炭がセミコークスからコークスへ変化する過程で、低収縮率炭材(粉コークス)粒子の周囲に発生する亀裂が小さくなりすぎる結果、コークスケーキ全体の収縮を緩和する効果が小さくなり、コークス粒度の拡大効果が十分に得られなくなるためである。
低収縮率炭材(粉コークス)の平均粒径が0.2mmを超えると、配合炭がセミコークスからコークスへ変化する過程で、低収縮率炭材粒子の周囲に発生する亀裂が大きくなり、亀裂が互いに連結することによって、粗大亀裂となり、コークス粒度の拡大効果が低減する。特に、低収縮率炭材(粉コークス)の平均粒径が0.4mmを超えると、コークス平均粒径MSは、上記従来の低収縮率炭材の添加方法により得られるコークス平均粒径MS:44.5mmより低下することになる。
図2に、粗粒炭に添加する低収縮率炭材の平均粒径を0.35mm一定とした場合における、微粉炭に添加する低収縮率炭材(粉コークス)の平均粒径と、目標とするコークス強度DI150 15:86を維持するために必要な粘結補填材(石油ピッチ)の粗粒炭に対する添加率との関係を示す。
また、図3に、粗粒炭に添加する低収縮率炭材の平均粒径を0.35mm一定とした場合における、微粉炭に添加する低収縮率炭材(粉コークス)の平均粒径とコークス強度DI150 15との関係を示す。
なお、図2におけるコークス強度DI150 15維持に必要なピッチ添加率とは、粗粒炭及び微粉炭に低収縮率炭材を添加しない場合におけるコークス強度DI150 15の目標値:86を維持するために必要な粗粒炭への粘結補填材(石油ピッチ)添加率である。
図2より、低収縮率炭材(粉コークス)の平均粒径が大きくなるにつれて、目標とするコークス強度DI150 15:86を維持するために必要な粘結補填材の添加率は増加する。これは、微粉炭に添加する低収縮率炭材の平均粒径が大きいほど、配合炭がセミコークスからコークスへ変化する過程で、低収縮率炭材粒子の周囲に発生する亀裂が大きくなり、亀裂が互いに連結し易くなることによって、低収縮率炭材粒子の周囲に発生する亀裂がより大きくなる結果、コークス強度DI150 15の低下が大きくなるためである。
図3に示すコークス強度DI150 15は、図2に示すそれぞれの低収縮率炭材の平均粒径の場合に、コークス強度DI150 15:86を維持するために必要な粘結補填材の添加率に対応する。
図3に示すように、微粉炭に添加する低収縮率炭材(粉コークス)の平均粒径が0.2mm以下の場合には、図2に示す粘結補填材の添加率で、目標とするコークス強度DI150 15:86を維持することができる。しかし、微粉炭に添加する低収縮率炭材(粉コークス)の平均粒径が0.2mmを超えると、粘結補填材(石油ピッチ)を15%を超える量添加しても、目標とするコークス強度DI150 15:86を維持することが不可能となる。
図1〜3に例示した検討結果を踏まえて、本発明では、配合炭を微粉炭と粗粒炭に分級し、微粉炭を成型炭とし、この成型炭と粗粒炭を混合してコークス炉で乾留する際に、本発明が目的とするコークス強度DI150 15を維持しつつ、コークス平均粒径MSを向上するために、加圧成型する前の微粉炭に添加する低収縮率炭材の平均粒径の範囲を、0.01〜0.2mmとする。
さらに、コークス強度DI150 15、及び、コークス平均粒径MSの向上効果を、より安定的に確保するためには、加圧成型する前の微粉炭に添加する低収縮率炭材の平均粒径の下限を、0.03mmとするのが望ましい。
なお、前記微粉炭に平均粒径が0.01〜0.2mmの低収縮率炭材を添加するタイミングは、配合炭を微粉炭と粗粒炭に分級し、微粉炭を加圧成型する前であれば、微粉炭に粘結補填材を添加する前後、又は、同時の何れの場合でもよい。
図4に、加圧成型する前の微粉炭に添加する低収縮率炭材の平均粒径を0.07mm(一定)とした場合における、粗粒炭に添加する低収縮率炭材(粉コークス)の平均粒径とコークス平均粒径MSとの関係を示す。
図4より、粗粒炭に添加する低収縮率炭材(粉コークス)の平均粒径が0.03mm未満の場合、コークス平均粒径MSは、上記従来の低収縮率炭材の添加方法により得られるコークス平均粒径MS:44.5mmよりも小さくなる。
この理由は、配合炭がセミコークスからコークスへの変化過程で低収縮率炭材(粉コークス)粒子の周囲に発生する亀裂が小さくなりすぎる結果、コークスケーキ全体の収縮を緩和する効果が小さくなり、コークス粒度の拡大効果が、十分に得られなくなるためである。
一方、低収縮率炭材(粉コークス)の平均粒径が0.5mmを超えると、配合炭がセミコークスからコークスへ変化する過程で、低収縮率炭材粒子の周囲に発生する亀裂が大きくなり、亀裂がお互い連結することによって、粗大亀裂となり、コークス粒度の拡大効果が低減する。
特に、低収縮率炭材(粉コークス)の平均粒径が2.0mmを超えると、コークス平均粒径MSは、上記従来の低収縮率炭材の添加方法により得られるコークス平均粒径MS:44.5mmより低下することになる。
また、図5に、微粉炭に添加する低収縮率炭材の平均粒径を0.07mm(一定)とした場合における、粗粒炭に添加する低収縮率炭材(粉コークス)の平均粒径と、目標とするコークス強度DI150 15:86を維持するために必要な粘結補填材(石油ピッチ)の粗粒炭に対する添加率との関係を示す。
また、図6に、微粉炭に添加する低収縮率炭材の平均粒径を0.07mm(一定)とした場合における、粗粒炭に添加する低収縮率炭材(粉コークス)の平均粒径とコークス強度DI150 15との関係を示す。
図5より、低収縮率炭材(粉コークス)の平均粒径が大きくなるにつれて、目標とするコークス強度DI150 15:86を維持するために必要なピッチ添加率は増加する。これは、低収縮率炭材の平均粒径が大きいほど、配合炭がセミコークスからコークスへ変化する過程で、低収縮率炭材粒子の周囲に発生する亀裂が大きくなり、亀裂が互いに連結し易くなることによって、低収縮率炭材粒子の周囲に発生する亀裂がより大きくなるため、コークス強度DI150 15が大きく低下するからである。
図6に示すコークス強度DI150 15は、図5に示すそれぞれの低収縮率炭材の平均粒径の場合に、コークス強度DI150 15:86を維持するために必要な粘結補填材の添加率に対応する。図6に示すように、微粉炭に添加する低収縮率炭材(粉コークス)の平均粒径が0.5mm以下の場合には、図5に示す粘結補填材の添加率で、目標とするコークス強度DI150 15:86を維持することができる。
しかし、微粉炭に添加する低収縮率炭材(粉コークス)の平均粒径が0.5mmを超えると、粘結補填材(石油ピッチ)を、15%を超える量添加しても、目標とするコークス強度DI150 15の目標値:86を維持することが不可能である。
図4〜6に例示した検討結果を踏まえて、本発明では、配合炭を微粉炭と粗粒炭に分級し、微粉炭を成型炭とし、この成型炭と粗粒炭を混合してコークス炉で乾留する際、本発明が目的とするコークス強度DI150 15を維持しつつ、コークス平均粒径MSを向上するために、粗粒炭に添加する低収縮率炭材の平均粒径の範囲を、0.03〜0.5mmとする。
さらに、コークス強度DI150 15、及び、コークス平均粒径MSの向上効果を、より安定的に確保するためには、粗粒炭に添加する低収縮率炭材の平均粒径の下限を0.07mmとするのが望ましい。
なお、前記粗粒炭に平均粒径が0.03〜0.5mmの低収縮率炭材を添加するタイミングは、配合炭を微粉炭と粗粒炭に分級し、微粉炭からなる成型炭と粗粒炭を混合する前後、又は、同時の何れの場合でもよい。
上述したように、本発明では、配合炭を微粉炭と粗粒炭に分級し、微粉炭を加圧成型して得られた成型炭と粗粒炭を混合する際、加圧成型する前の微粉炭に添加する低収縮率炭材の平均粒径を0.01〜0.2mmとし、粗粒炭に添加する低収縮率炭材の平均粒径を0.03〜0.5mmとすることにより、成型炭と粗粒炭を混合してコークス炉で乾留して得られるコークス強度DI150 15を所要のレベルに維持しつつコークス平均粒径MSを拡大することができる。
このようにコークス強度DI150 15を所要のレベルに維持しつつ、コークス平均粒径MSを拡大するための低収縮率炭材の最適粒度範囲が、粗粒炭に添加する場合に比べて、加圧成型する前の微粉炭に添加する場合の方が、細粒側になる理由は、以下のように考えられる。
微粉炭からなる成型炭がコークス化して得られるコークス組織は、粗粒炭がコークス化して得られるコークス組織に比べ、コークス壁の厚みが薄くなる。そのため、微粉炭からなる成型炭中に添加される低収縮率炭材の粒径が比較的小さい場合でも、セミコークスからコークスへの変化過程における収縮により、低収縮率炭材粒子の周囲に発生した亀裂が互いに連結し易く、粗大亀裂となりやすい。
その結果、微粉炭からなる成型炭から得られるコークスは、コークス強度DIを所要のレベルに維持しつつ、コークス粒径MSを拡大するための低収縮率炭材の最適粒度範囲が、粗粒炭から得られるコークスに比べ、細粒側になると考えられる。
なお、本発明において、上記微粉炭及び粗粒炭のそれぞれにおける低収縮率炭材の最適粒度範囲の調整は、上限粒度以下に粉砕した後、下限粒度の篩で篩うか、風力分級などにより行うことができる。
次に、本発明者らは、以下の方法で、加圧成型前の微粉炭と粗粒炭のそれぞれに添加する粉コークスの添加率が、コークス平均粒径MS、及び、コークス強度DI150 15に及ぼす影響について調査した。なお、加圧成型前の微粉炭と粗粒炭のそれぞれに添加する粉コークスの平均粒径は、上述した適正範囲内になるように調整した。
まず、微粉炭に添加する粉コークス添加率が、コークス平均粒径MS、及び、コークス強度DI150 15に及ぼす影響について調査した。
つまり、粉砕して得られた、−3mmを80%含有した石炭を、分級点:0.5mm、分級率:粗粒/微粉=68/32で、微粉炭と粗粒炭に分級した。微粉炭には、低収縮率炭材として、平均粒径が0.07mm(一定)の粉コークスを、微粉炭に対する質量%で、0〜8%添加し、成型炭の冷間強度を維持するためのバインダーとして、蒸留タールを、微粉炭に対する質量%で、6.5%添加し、加圧成型して成型炭とした。
一方、粗粒炭には、低収縮率炭材として、平均粒径が0.35mm(一定)の粉コークスを、粗粒炭に対する質量%で、2.5%(一定)添加し、低収縮率炭材添加によるコークス強度の低下を抑制するための粘結補填材として、石油ピッチを、目標とするコークス強度DI150 15:86を維持するために必要な量を添加した。
図7に、微粉炭に、平均粒径0.07mm(一定)の低収縮率炭材を添加した場合における、低収縮率炭材(粉コークス)の添加率とコークス平均粒径MSとの関係を示す。
図7より、微粉炭に添加する粉コークスの添加率が0.5%未満の場合、コークス平均粒径MSは、上記従来の低収縮率炭材の添加方法により得られるコークス平均粒径MS:44.5mmよりも小さくなる。
この理由は、配合炭がセミコークスからコークスへ変化する過程で、低収縮率炭材(粉コークス)粒子の周囲に発生する亀裂の数が少なくなりすぎ、その結果、コークスケーキ全体の収縮を緩和する効果が小さくなるためである。
コークス粒度の拡大効果は、微粉炭に添加する低収縮率炭材(粉コークス)の添加率が5%までは、低収縮率炭材(粉コークス)の添加率の増加とともに向上する。しかし、その低収縮率炭材(粉コークス)の添加率が5%を超えると、配合炭がセミコークスからコークスへ変化する過程で、低収縮率炭材粒子の周囲に発生する亀裂の数が多くなり、亀裂が互いに連結することによって、粗大亀裂となり、コークス粒径の拡大効果は低減する。
また、図8に、微粉炭に添加する低収縮率炭材の平均粒径を0.07mm(一定)とした場合における、微粉炭に添加する低収縮率炭材(粉コークス)の添加率と、目標とするコークス強度DI150 15:86を維持するために必要なピッチ添加率との関係を示す。
また、図9に、微粉炭に添加する低収縮率炭材の平均粒径を0.07mm一定とした場合における、微粉炭に添加する低収縮率炭材(粉コークス)の添加率と、コークス強度DI150 15との関係を示す。
なお、図8におけるコークス強度DI150 15維持に必要なピッチ添加率とは、粗粒炭及び微粉炭に低収縮率炭材を添加しない場合のコークス強度DI150 15の目標値:86を維持するために必要な粗粒炭への粘結補填材(石油ピッチ)添加率である。
図8より、低収縮率炭材(粉コークス)の添加率が多くなるにつれて、目標とするコークス強度DI150 15:86を維持するために必要なピッチ添加率は増加する。
これは、低収縮率炭材の添加率が多いほど、配合炭がセミコークスからコークスへ変化する過程で、低収縮率炭材粒子の周囲に発生する亀裂の数が多くなり、亀裂が互いに連結し易くなることによって、低収縮率炭材粒子の周囲に発生する亀裂がより大きくなるため、コークス強度DI150 15の低下が大きくなるからである。
図9に示すコークス強度DI150 15は、図8に示す低収縮率炭材の添加率の場合に、コークス強度DI150 15:86を維持するために必要な粘結補填材の添加率に対応する。
図9に示すように、微粉炭に添加する低収縮率炭材(粉コークス)の添加率が5%以下の場合には、図8に示す粘結補填材の添加率で、目標とするコークス強度DI150 15:86を維持することができる。
しかし、粉コークス添加率が5%を超えると、粘結補填材(石油ピッチ)を、15%を超える量添加しても、目標とするコークス強度DI150 15:86を維持することが不可能である。
図7〜9に例示した検討結果から、配合炭を微粉炭と粗粒炭に分級し、微粉炭を成型炭とし、この成型炭と粗粒炭を混合してコークス炉で乾留する際、本発明が目的とするコークス強度DI150 15を維持しつつ、コークス平均粒径MSを向上するために、加圧成型する前の微粉炭に添加する低収縮率炭材の添加率は、0.5〜5%とするのが好ましい。
さらに、コークス強度DI150 15、及び、コークス粒径MSの向上効果を、より安定的に確保するためには、加圧成型する前の微粉炭に添加する低収縮率炭材の添加率の下限を、1.5%とするのが望ましい。
次に、粗粒炭に添加する粉コークス添加率が、コークス平均粒径MS、及び、コークス強度DI150 15に及ぼす影響について調査した。
つまり、粉砕して得られた、−3mmを80%含有した石炭を、分級点:0.5mm、分級率:粗粒/微粉=68/32で、微粉炭と粗粒炭に分級した。
微粉炭には、低収縮率炭材として、平均粒径が0.07mm(一定)の粉コークスを、微粉炭に対する質量%で、2.5%添加し、成型炭の冷間強度を維持するためのバインダーとして、蒸留タールを、微粉炭に対する質量%で、6.5%添加し、加圧成型して成型炭とした。
一方、粗粒炭には、低収縮率炭材として、平均粒径0.35mm(一定)の粉コークスを、粗粒炭に対する質量%で、0〜8%添加し、低収縮率炭材添加によるコークス強度の低下を抑制するための粘結補填材として、石油ピッチを、目標とするコークス強度DI150 15:86を維持するために必要な量を添加した。
図10に、粗粒炭に、平均粒径が0.35mm(一定)の低収縮率炭材を添加した場合における、低収縮率炭材(粉コークス)の添加率とコークス平均粒径MSとの関係を示す。
図10より、粗粒炭に添加する粉コークスの添加率が1%未満の場合、コークス平均粒径MSは、上記従来の低収縮率炭材の添加方法により得られるコークス平均粒径MS:44.5mmよりも小さくなる。
この理由は、配合炭がセミコークスからコークスへ変化する過程で、低収縮率炭材(粉コークス)粒子の周囲に発生する亀裂の数が少なくなりすぎ、その結果、コークスケーキ全体の収縮を緩和する効果が小さくなるためである。
コークス粒度の拡大効果は、粗粒炭に添加する低収縮率炭材(粉コークス)の添加率が5%までは、低収縮率炭材(粉コークス)の添加率の増加とともに向上する。
しかし、その低収縮率炭材(粉コークス)の添加率が5%を超えると、配合炭がセミコークスからコークスへ変化する過程で、低収縮率炭材粒子の周囲に発生する亀裂の数が多くなり、亀裂が互いに連結することによって、粗大亀裂となり、コークス粒径の拡大効果が低減する。
また、図11に、粗粒炭に添加する低収縮率炭材の平均粒径を0.35mm(一定)とした場合における、粗粒炭に添加する低収縮率炭材(粉コークス)の添加率と、目標とするコークス強度DI150 15:86を維持するために必要なピッチ添加率との関係を示す。
また、図12に、粗粒炭に添加する低収縮率炭材の平均粒径を0.35mm(一定)とした場合における、粗粒炭に添加する低収縮率炭材(粉コークス)の添加率と、コークス強度DI150 15との関係を示す。
図11より、低収縮率炭材(粉コークス)の添加率が多くなるにつれて、目標とするコークス強度DI150 15:86を維持するために必要なピッチ添加率は増加する。
これは、低収縮率炭材の添加率が多いほど、配合炭がセミコークスからコークスへ変化する過程で、低収縮率炭材粒子の周囲に発生する亀裂の数が多くなり、亀裂が互いに連結し易くなることによって、低収縮率炭材粒子の周囲に発生する亀裂がより大きくなるため、コークス強度DI150 15の低下が大きいためである。
図12に示すコークス強度DI150 15は、図11に示す低収縮率炭材の添加率の場合に、コークス強度DI150 15:86を維持するために必要な粘結補填材の添加率に対応する。
図9に示すように、微粉炭に添加する低収縮率炭材(粉コークス)の添加率が5%以下の場合には、図8に示す粘結補填材の添加率で、目標とするコークス強度DI150 15:86を維持することができる。
しかし、粉コークス添加率が5%を超えると、粘結補填材(石油ピッチ)を、15%を超える量添加しても、目標とするコークス強度DI150 15:86を維持することが不可能である。
図10〜12に例示した検討結果から、配合炭を微粉炭と粗粒炭に分級し、微粉炭を成型炭とし、この成型炭と粗粒炭を混合してコークス炉で乾留する際、本発明が目的とするコークス強度DI150 15を維持しつつ、コークス粒径MSを向上するために、粗粒炭に添加する低収縮率炭材の添加率は、1〜5%とするのが好ましい。
さらに、コークス強度DI150 15、及び、コークス粒径MSの向上効果を、より安定的に確保するためには、粗粒炭に添加する低収縮率炭材の添加率の下限を、1.5%とするのが望ましい。
図9及び図12に示すように、微粉炭及び粗粒炭への低収縮率炭材の添加率の上限が同一になる理由は、以下のように考えられる。
つまり、上述したように、配合炭を微粉炭と粗粒炭に分級し、微粉炭を成型炭とし、この成型炭と粗粒炭を混合してコークス炉で乾留して得られるコークス強度DI150 15、及び、コークス平均粒径MSは、成型する前の微粉炭と粗粒炭にそれぞれ添加する低収縮率炭材の平均粒径によって大きく影響され、特に、微粉炭は、粗粒炭に比べて、低収縮率炭材の平均粒径によるコークス強度DI150 15低下の感度が高い。
本発明では、微粉炭が、粗粒炭に比べて、低収縮率炭材の平均粒径によるコークス強度DI150 15低下の感度が高いことを考慮し、微粉炭及び粗粒炭にそれぞれ添加する低収縮率炭材の平均粒径を最適範囲とした。
そのため、この平均粒径の最適条件では、微粉炭及び粗粒炭への低収縮率炭材添加によらず、低収縮率炭材の添加率がコークスの強度DI150 15に及ぼす影響は、ほぼ同じになる。その結果、微粉炭及び粗粒炭への低収縮率炭材の添加率の上限が同一になると考えられる。
本発明では、配合炭を微粉炭と粗粒炭に分級し、加圧成型前の微粉炭と粗粒炭に添加する低収縮率炭材に起因するコークス強度低下を抑制するため、加圧成型する前の成型炭の冷間強度を向上するために微粉炭に添加するバインダーとは別に、成型炭と粗粒炭の混合前後、又は、該混合と同時に、目的とするコークス強度を維持するために、粗粒炭に、粘結補填材を添加する必要がある。
本発明者らは、この粗粒炭に添加する粘結補填材の添加率が、コークス平均粒径MS、コークス強度DI150 15に及ぼす影響について調査した。
前記粗粒炭に添加する粘結補填材の添加量は、微粉炭に対する質量%で、1%未満の場合には、低収縮率炭材に起因するコークス強度の低下を十分に抑制するための配合炭の粘結性補填が困難となるため、1%以上とする。
また、図2、図3、図5、及び、図6で説明したように、加圧成型する前の微粉炭及び粗粒炭にそれぞれ添加する低収縮率炭材の平均粒径の最適化により、低収縮率炭材に起因するコークス強度の低下を抑制するために、粗粒炭に添加する粘結補填材の添加量を調整することにより、粗粒炭に対する質量%で、15%までは、目標とするコークス強度DI150 15:86を維持することが可能である。
しかし、粗粒炭に添加する粘結補填材の添加量が、粗粒炭に対する質量%で、15%を超えて添加しても、コークス強度DI150 15の向上効果は飽和し、効果が得られず、コークス製造コストを増加させる原因となるため、好ましくない。
したがって、本発明では、配合炭を微粉炭と粗粒炭に分級し、加圧成型前の微粉炭と粗粒炭に添加する低収縮率炭材に起因するコークス強度低下を抑制するために、加圧成型する前の成型炭の冷間強度を向上するために微粉炭に添加するバインダーとは別に、成型炭と粗粒炭の混合前後、又は、該混合と同時に、目的とするコークス強度を維持するために、粗粒炭に、粘結補填材を、粗粒炭に対する質量%で、1〜15%の範囲で添加することが好ましい。
なお、低収縮率炭材に起因するコークス強度低下を抑制するために、前記粗粒炭に添加する粘結補填材は、特に限定する必要はなく、一般的にコークス強度向上のために配合炭に添加される、タール、タールの重質留分、軟ピッチ、及び、石油ピッチの1種又は2種以上からなるものを用いることが可能である。
添加するタイミングは、配合炭を微粉炭と粗粒炭に分級し、微粉炭からなる成型炭と粗粒炭を混合する前後、又は、同時の何れの場合でもよい。
図13を用いて、本発明による実施形態の一例を説明する。
石炭1を分級機2での微粉炭3と粗粒炭9に分級する。微粉炭用低収縮率炭材(粉コークス)ホッパー4、及び、微粉炭用粘結補填材(蒸留タール)ホッパー6にて、分級後の微粉炭3に、所定粒度の微粉炭用低収縮率炭材(粉コークス)5、及び、微粉炭用粘結材(蒸留タール)7を添加する。
この際、微粉炭3に微粉炭用低収縮率炭材(粉コークス)5を添加するタイミングは、上述したとおり、加圧成型機8により微粉炭3を成型する前に、微粉炭用低収縮率炭材(粉コークス)5及び微粉炭用バインダー(蒸留タール)7を添加し、成型炭内に粉コークスを存在させることが重要である。
分級後の粗粒炭9には、粗粒炭用低収縮率炭材(粉コークス)ホッパー10、及び、粗粒炭用粘結材(石油ピッチ)ホッパー12にて、所定粒度の粗粒炭用低収縮率炭材(粉コークス)11、及び、粗粒炭用粘結補填材(石油ピッチ)13を添加する。なお、この際、粗粒炭9への粗粒炭用低収縮率炭材(粉コークス)11及び粗粒炭用粘結補填材(石油ピッチ)13の添加は、粗粒炭9と成型炭16を混合する前及び後のいずれでもよい。
粗粒炭9、粗粒炭用低収縮率炭材(粉コークス)11、粗粒炭用粘結補填材(石油ピッチ)13、さらに、加圧成型機8により得られた微粉炭3、微粉炭用低収縮率炭材(粉コークス)5、及び、微粉炭用バインダー(蒸留タール)7からなる成型炭14は、混合された後、コークス炉16に装入されコークス化される。
乾留試験は、実際のコークス炉をシミュレートすることが可能な小型試験乾留炉を用いて行った。石炭試料としては、通常、実炉で用いられている配合炭の性状に近いもの(揮発分26.5質量%、灰分8.8質量%、全膨張率30%)を使用した。粉砕して得られた、−3mmを80%含有した石炭を、分級点:0.5mm、分級率:粗粒/微粉=68/32、で微粉炭と粗粒炭に分級した。
表1(発明例)及び表2(比較例)に示す条件で、微粉炭には、微粉炭用低収縮率炭材及びバインダー(蒸留タール)を添加し、粗粒炭には、粗粒炭用低収縮率炭材及び粘結補填材(石油ピッチ)を添加した。
微粉炭、微粉炭用低収縮率炭材、及び、バインダー(蒸留タール)を加圧成型して成型炭とし、粗粒炭、粗粒炭用低収縮率炭材及び粘結補填材(石油ピッチ)と混合した後、乾留炉に装入してコークスを製造した。その結果を、表1及び表2に、併せて示す。
発明例1では、微粉炭には、低収縮炭材として、平均粒径0.07mmの粉コークスを、微粉炭に対する質量%で、2.5%添加し、また、バインダーとして、蒸留タールを、微粉炭に対する質量%で、6.5%添加し、これらを加圧成型して成型炭とした。
粗粒炭には、低収縮炭材として、平均粒径0.35mmの粉コークスを、粗粒炭に対する質量%で、2.5%添加し、その後、粘結補填材として、石油ピッチを、粗粒炭に対する質量%で、3.2%添加した。
比較例1は、従来法に相当し、微粉炭には、低収縮炭材の添加を行わず、バインダーとして、蒸留タールのみを、微粉炭に対する質量%で、6.5%添加し、加圧成型して成型炭とした。粗粒炭には、低収縮炭材として、平均粒径0.35mmの粉コークスを、粗粒炭に対する質量%で、3.7%添加し、その後、粘結補填材として、石油ピッチを、粗粒炭に対する質量%で、6.3%添加した。
その結果、コークス平均粒径MSは44.5mm、コークス強度DI150 15は86.0であった。なお、目標とするコークス強度DI150 15:86を維持するために必要な粘結補填材(石油ピッチ)の粗粒炭に対する添加率は、6.3%であった。
比較例2では、微粉炭には、低収縮炭材として、平均粒径0.005mmの粉コークスを、微粉炭に対する質量%で、2.5%添加し、バインダーとして、蒸留タールを、微粉炭に対する質量%で、6.5%添加し、これらを加圧成型して成型炭とした。粗粒炭には、低収縮炭材として、平均粒径0.35mmの粉コークスを、粗粒炭に対する質量%で、2.5%添加し、その後、粘結補填材として、石油ピッチを、粗粒炭に対する質量%で、1.9%添加した。
その結果、目標とするコークス強度DI150 15:86を維持できたものの、微粉炭用の低収縮炭材の平均粒径が小さかったため、コークス平均粒径MSは、比較例1と比べて低下した。
比較例3では、微粉炭には、低収縮炭材として、平均粒径0.35mmの粉コークスを、微粉炭に対する質量%で、2.5%添加し、バインダーとして、蒸留タールを、微粉炭に対する質量%で、6.5%添加し、これらを加圧成型して成型炭とした。粗粒炭には、低収縮炭材として、平均粒径0.35mmの粉コークスを、粗粒炭に対する質量%で、2.5%添加し、その後、粘結補填材として、石油ピッチを、粗粒炭に対する質量%で、15.2%添加した。
その結果、コークス平均粒径MSは、比較例1と比べて、さらに向上したが、微粉炭用の低収縮炭材の平均粒径が大きかったため、粘結補填材(石油ピッチ)を、粗粒炭に対する添加率で、15.2%添加したにも関わらず、目標とするコークス強度DI150 15:86を維持できず、大きく低下した。
比較例4では、微粉炭には、低収縮炭材として、平均粒径0.07mmの粉コークスを、微粉炭に対する質量%で、2.5%添加し、バインダーとして、蒸留タールを、微粉炭に対する質量%で、6.5%添加し、これらを加圧成型して成型炭とした。粗粒炭には、低収縮炭材として、平均粒径0.01mmの粉コークスを、粗粒炭に対する質量%で、2.5%添加し、その後、粘結補填材として、石油ピッチを、粗粒炭に対する質量%で、1.6%添加した。
その結果、目標とするコークス強度DI150 15:86を維持できたものの、粗粒炭用の低収縮炭材の平均粒径が小さかったため、コークス平均粒径MSは、比較例1と比べて、大きく低下した。
比較例5では、微粉炭には、低収縮炭材として、平均粒径0.07mmの粉コークスを、微粉炭に対する質量%で、2.5%添加し、バインダーとして、蒸留タールを、微粉炭に対する質量%で、6.5%添加し、これらを加圧成型して成型炭とした。粗粒炭には、低収縮炭材として、平均粒径1.0mmの粉コークスを、粗粒炭に対する質量%で、2.5%添加し、その後、粘結補填材として、石油ピッチを、粗粒炭に対する質量%で、16%添加した。
その結果、コークス平均粒径MSは、比較例1と比べて、さらに向上したが、粗粒炭用の低収縮炭材の平均粒径が大きかったため、粘結補填材(石油ピッチ)を、粗粒炭に対する添加率で、16%添加したにも関わらず、目標とするコークス強度DI150 15:86を維持できず、大きく低下した。
発明例2では、微粉炭には、低収縮炭材として、平均粒径0.18mmの粉コークスを、微粉炭に対する質量%で、2.5%添加し、また、バインダーとして、蒸留タールを、微粉炭に対する質量%で、6.5%添加し、これらを加圧成型して成型炭とした。粗粒炭には、低収縮炭材として、平均粒径0.35mmの粉コークスを、粗粒炭に対する質量%で、2.5%添加し、その後、粘結補填材として、石油ピッチを、粗粒炭に対する質量%で、10.1%添加した。
発明例3では、微粉炭には、低収縮炭材として、平均粒径0.07mmの粉コークスを、微粉炭に対する質量%で、2.5%添加し、また、バインダーとして、蒸留タールを、微粉炭に対する質量%で、6.5%添加し、これらを加圧成型して成型炭とした。粗粒炭には、低収縮炭材として、平均粒径0.07mmの粉コークスを、粗粒炭に対する質量%で、2.5%添加し、その後、粘結補填材として、石油ピッチを、粗粒炭に対する質量%で、2.2%添加した。
発明例4では、微粉炭には、低収縮炭材として、平均粒径0.07mmの粉コークスを、微粉炭に対する質量%で、0.3%添加し、また、バインダーとして、蒸留タールを、微粉炭に対する質量%で、6.5%添加し、これらを加圧成型して成型炭とした。粗粒炭には、低収縮炭材として、平均粒径0.35mmの粉コークスを、粗粒炭に対する質量%で、4.5%添加し、その後粘結補填材として、石油ピッチを、粗粒炭に対する質量%で、13.5%添加した。
発明例5では、微粉炭には、低収縮炭材として、平均粒径0.07mmの粉コークスを、微粉炭に対する質量%で、5.5%添加し、また、バインダーとして、蒸留タールを、微粉炭に対する質量%で、6.5%添加し、これらを加圧成型して成型炭とした。粗粒炭には、低収縮炭材として、平均粒径0.35mmの粉コークスを、粗粒炭に対する質量%で、1.0%添加し、その後、粘結補填材として、石油ピッチを、粗粒炭に対する質量%で、14.2%添加した。
発明例6では、微粉炭には、低収縮炭材として、平均粒径0.07mmの粉コークスを、微粉炭に対する質量%で4.5%添加し、また、バインダーとして、蒸留タールを、微粉炭に対する質量%で、6.5%添加し、これらを加圧成型して成型炭とした。粗粒炭には、低収縮炭材として、平均粒径0.35mmの粉コークスを、粗粒炭に対する質量%で、0.3%添加し、その後、粘結補填材として、石油ピッチを、粗粒炭に対する質量%で、12.0%添加した。
発明例7では、微粉炭には、低収縮炭材として、平均粒径0.07mmの粉コークスを、微粉炭に対する質量%で、0.6%添加し、また、バインダーとして、蒸留タールを、微粉炭に対する質量%で、6.5%添加し、これらを加圧成型して成型炭とした。粗粒炭には、低収縮炭材として、平均粒径0.35mmの粉コークスを、粗粒炭に対する質量%で、5.5%添加し、その後、粘結補填材として、石油ピッチを、粗粒炭に対する質量%で、14.8%添加した。
その結果、発明例1〜7はいずれも、微粉炭用及び粗粒炭用の低収縮炭材の平均粒径が適正範囲にあるため、乾留後のコークスは、目標とするコークス強度DI150 15:86を維持しつつ、コークス平均粒径MS:44.6〜47.7mmを達成することができた。
なお、発明例1〜7の内でも、微粉炭用及び粗粒炭用の低収縮炭材の平均粒径とともに、これらの低収縮炭材の添加率が好ましい範囲内にある発明例1〜3は、コークス強度DI150 15:86.0を維持しつつ、コークス平均粒径MS:45.7〜47.7mmを達成することができる。
以上から、本発明の実施により、比較的少ない粘結補填材の添加率で目標とするコークス強度DI150 15:86を維持しつつ、従来法(比較例1)に比べて、コークス平均粒径MSの大きなコークスを製造することができることがわかる。