JP4879553B2 - 水処理用微生物担体 - Google Patents

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Description

本発明は、曝気槽等に投入される水処理用微生物担体に関する。
従来、水処理には、微生物による働きで溶存有機物を分解させる方法が多用されている。前記微生物による水処理においては、樹脂発泡体からなる水処理用微生物担体を、浄化槽等に設けられた曝気槽(エアレーションタンク)等へ投入し、水処理用微生物担体に繁殖し保持された微生物による働きで処理水中の溶存有機物を分解させている。
水処理用微生物担体が投入される曝気槽等においては、浄化槽のポンプ能力や担体の強度等を考慮して濾過膜のメッシュや担体のサイズが決定されている。すなわち、濾過膜のメッシュを細かくした場合、一定の流量を確保するにはポンプの能力を高めねばならず、装置が大きくなる。一方、濾過膜のメッシュを粗くして能力の小さいポンプでも使用可能にすると、濾過膜から担体が流出しないように担体のサイズを大きくしなければならず、担体の強度が低下して耐久性低下を生じるようになる。しかも、担体のサイズを大きくすると、曝気槽等内における担体の流動性が低下して水処理効率が低下するようになる。これらの理由から、水処理用微生物担体としては、一辺10〜15mm程度の立方体または直方体のものが使用されている。
前記微生物による水処理効率を高めるには、水処理用微生物担体でより多くの微生物が繁殖できるようにするのが好ましい。しかし、前記のように、浄化槽の能力、環境に従い、水処理用微生物担体の大きさが限定されていることから、水処理用微生物担体のサイズを大きくして微生物をより多く繁殖できるようにすることができなかった。
そこで、従来、水処理効率を高めるには、水処理用微生物担体の比表面積を高める必要があると考えられていた。さらに比表面積を高めるためには、水処理用微生物担体として、セル径の小さい(セルが細かい、すなわちセル数の多い)発泡体が好ましいとされていた。
本発明者等は、従来の好ましいとされている方法にしたがい、一辺10〜15mm程度の立方体または直方体からなる発泡体において、セル径の小さい(セルが細かい、セル数が大きい)ものを水処理用微生物担体として用いる実験をしたところ、発泡体の表面から5mm程度の深さまでの表面付近でしか微生物が繁殖した痕跡が認められなかった。また、生物化学的酸素消費量(BOD)も少なかった。したがって、従来、水処理用微生物担体において好ましいとされている方法、すなわち発泡体のセル径を小さく(セルを細かく、セル数を多く)する方法では、発泡体(担体)内部まで効率よく微生物を繁殖させることができず、水処理効率を高めるのが難しいことが判明した。これは、発泡体内部深くまで処理水が侵入し難くなって微生物が発泡体の内部深くに入り難くなることによると考えられる。
特開2004−250593号公報
本発明者等は、前記の点に鑑み、従来好ましいとされている方法とは異なり、水処理用微生物担体を構成する発泡体のセルを粗くする共に、セル膜を除去して発泡体内部への処理水の侵入性を高めることにより、発泡体内中央まで微生物を繁殖し易くして水処理効率を高め、しかも、セルを粗くすることおよびセル膜の除去によって生じる発泡体の機械的強度(担体の耐久性)の低下を抑え、かつ曝気槽等内で流動性を損なわない密度及び大きさとすることのできる水処理用微生物担体の提供を目的とする。
請求項1の発明は、ポリウレタン樹脂発泡体からなる水処理用微生物担体において、前記ポリウレタン樹脂発泡体は、高分子粒子が分散し、セル膜が除去されていると共に、セル数が15〜50個/25mmであることを特徴とする水処理用微生物担体に係る。
請求項2の発明は、請求項1において、前記高分子粒子の直径が0.5〜4.0μmであることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記高分子粒子が、前記ポリウレタン樹脂発泡体の発泡原料におけるポリオールに対して10〜50重量%の含有量であることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1から3の何れか一項において、前記ポリウレタン樹脂発泡体の密度が40〜60kg/mであることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1から4の何れか一項において、前記ポリウレタン樹脂発泡体が、一辺10〜15mmの立方体または直方体からなることを特徴とする。
本発明によれば、水処理用微生物担体は、ポリウレタン樹脂発泡体がセル膜の除去された、かつセル数15〜50個/25mmのものからなるため、ポリウレタン樹脂発泡体の表面から内部の深い部分まで微生物が繁殖し易くなり、微生物による水処理効率を高めることができる。しかも、水処理用微生物担体は、通常の曝気槽等における濾過膜のメッシュサイズやポンプの能力を変化させる必要が無く、流動性を損なわない密度及び大きさとすることができる。
本発明における水処理用微生物担体は、ポリウレタン樹脂発泡体からなる。ポリウレタン樹脂発泡体は、ポリオールとイソシアネートを発泡剤、触媒及び整泡剤の存在下反応させることにより得られものであり、さらに本発明においては、高分子粒子が添加されて分散し、かつセル膜の除去されたものが用いられる。
ポリオールは、ポリウレタン樹脂発泡体を加水分解のし難いものとするため、ポリエーテルポリオールからなるもの、あるいはポリエーテルポリオールを主体とするものが特に好ましく、一部にエステル基を含むポリエーテルポリエステルポリオールを用いることもできる。ポリエーテルポリオールとしては特に制限されるものではなく、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ハイドロキノン、水、レゾルシン、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、エチレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、トリエチレンテトラアミン、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール等を出発原料として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加して得られるものなどを用いることができる。
本発明におけるイソシアネートは、特に制限されるものではなく、芳香族系、脂環式、脂肪族系の何れでもよく、また、1分子中に2個のイソシアネート基を有する2官能のイソシアネート、あるいは1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する3官能以上のイソシアネートであってもよく、それらを単独であるいは複数組み合わせて使用してもよい。
例えば、2官能のイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−フェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネートなどの芳香族系のもの、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環式のもの、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、リジンイソシアネートなどの芳香族系のものを挙げることができる。
また、3官能以上のイソシアネートとしては、1−メチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、1,3,5−トリメチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、ビフェニル−2,4,4’−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,4’−トリイソシアネート、メチルジフェニルメタン−4,6,4’−トリイソシアネート、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’テトライソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、ポリメリックMDI等を挙げることができる。
発泡剤としては、水が好適である。水の添加量はポリオール100重量部に対して1.5〜5重量部程度が一般的である。
触媒としては、ポリウレタン樹脂発泡体用として公知のものを用いることができ、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノモルフォリン、N−エチルモルホリン、テトラメチルグアニジン等のアミン触媒や、スタナスオクトエートやジブチルチンジラウレート等の錫触媒やフェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される。)を挙げることができる。触媒の一般的な量は、ポリオール100重量部に対して0.05〜0.7重量部程度である。
整泡剤としては、ポリウレタン樹脂発泡体に用いられるものであればよく、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤および公知の界面活性剤等を挙げることができる。
高分子粒子は、直径0.5〜4.0μmのものが好ましい。直径が0.5μm未満の場合には、高分子粒子によるポリウレタン樹脂発泡体の機械的強度の向上効果が得られ難く、一方4.0μmより大の場合には高分子粒子の存在によりポリウレタン樹脂発泡体の発泡性が損なわれ、良好なポリウレタン樹脂発泡体を得難くなる。前記ポリウレタン樹脂発泡体の機械的強度が高いことは、同一伸びにおける引張強度及び硬さの値が高いことから判断することができる。前記高分子粒子の量は、前記ポリウレタン樹脂発泡体の発泡原料におけるポリオール(全ポリオール成分)に対して10〜50重量%が好ましい。10重量%未満の場合には、高分子粒子によるポリウレタン樹脂発泡体の機械的強度の向上効果が得られ難く、一方50重量%より大の場合には高分子粒子の存在によりポリウレタン樹脂発泡体の発泡性が損なわれ、良好なポリウレタン樹脂発泡体を得難くなる。また、前記高分子粒子としては、アクリルニトリルやスチレンなどを挙げることができ、前記ポリウレタン樹脂発泡体における前記ポリオールの少なくとも一部としてポリマーポリオールを使用することにより、前記ポリウレタン樹脂発泡体に高分子粒子を分散させることができる。前記ポリマーポリオールは、ポリエーテルポリオールにアクリロニトリル及び/又はスチレンの固形分をグラフト重合し、懸濁分散させた多官能化合物をいう。前記アクリロニトリルとスチレンの含有量は、適宜選択されるが、水処理用微生物担体として流水内で衝突及び摩擦に耐える特性を付与するには、スチレン成分の割合が多い方が好ましい。
その他、顔料などの添加剤を適宜配合することができる。顔料は、求められる色に応じたものが用いられる。
なお、前記ポリウレタン樹脂発泡体は、ポリオール(ポリマーポリオールを含む)、イソシアネート、発泡剤、触媒、整泡剤及び適宜の添加剤からなる発泡原料を攪拌混合して前記ポリオールとイソシアネートを反応させ、発泡させる公知の発泡方法によって製造され、裁断等により所定のサイズにされる。また、公知の発泡方法の中でも、前記発泡原料を、移動するコンベアベルト上に吐出し、常温及び常圧下で連続的に発泡させる、公知のスラブ発泡によるのが好ましい。
前記ポリウレタン樹脂発泡体におけるセル膜除去は、爆発法、アルカリ溶解法等、公知のセル膜除去方法によって行われる。
また、前記ポリウレタン樹脂発泡体は、セル数が15〜50個/25mmとされる。セル数が15個/25mm未満であると、微生物がポリウレタン樹脂発泡体の表面付近しか繁殖できなくなる。一方、セル数が50個/25mmを超えると、ポリウレタン樹脂発泡体の機械的強度の低下が大きくなって、耐摩耗性等に劣り、水処理用微生物担体の耐久性が低下するようになると共に、比表面積が小さくなって、微生物がポリウレタン樹脂発泡体で効率よく繁殖し難くなる。セル数の調節は、通常のポリウレタン樹脂発泡体と同様に、発泡剤の量や整泡剤の量及び種類等によって行うことができる。
また、前記ポリウレタン樹脂発泡体は、密度が40〜60kg/mであるのが好ましい。40kg/m未満の場合には機械的強度が低下し、一方、60kg/mを超える、前記水処理用微生物担体が処理水中で流動し難くなり、微生物による水処理効率が低下するようになる。
さらに、前記ポリウレタン樹脂発泡体は、一辺が10〜15mmの立方体または直方体であるのが好ましい。これは、前記のように、濾過膜のメッシュサイズ及びポンプの能力の関係及びポリウレタン樹脂発泡体の機械的強度等の点から好ましいものである。
以下この発明の実施例を、比較例と共に具体的に説明する。表1に示す配合の発泡原料を用いて公知のスラブ発泡により実施例及び比較例のポリウレタン樹脂発泡体を形成し、爆発法によりセル膜を除去した。
Figure 0004879553
表1において、ポリオール1はポリエーテルポリオール、三洋化成工業(株)製、品名:サンニックスGP−3050、水酸基価56(mgKOH/g)、ポリオール2はアクリロニトリル−スチレングラフトポリマーポリオール、高分子粒子の直径:2.0μm、旭硝子(株)製、品名:エクセノール941、固形分(すなわち高分子粒子)含量40%、ポリオール3はポリエステル系ポリオール、日本ポリウレタン工業(株)製、品名:ニッポラン101、触媒1はアミン触媒、花王(株)製、品名:カオライザーNo.31、触媒2はアミン触媒、花王(株)製、品名:カオライザーNo.22、触媒3はオクチル酸第1スズ、城北化学工業(株)製、品名:MRH110、整泡剤1はシリコーン系界面活性剤、ゴールドシュミット(株)製、品名:B8110、整泡剤2はシリコーン系界面活性剤、ゴールドシュミット(株)製、品名:B8300、イソシアネートは日本ポリウレタン工業(株)製、2,4−TDI/2,6−TDI=80/20、品名:コロネートT−80である。
このようにして得られた実施例及び比較例のポリウレタン樹脂発泡体(セル膜除去後のもの、以下同様である。)に対して密度(JIS K7222−2004)、セル数(JIS K6400−1:2004 付属書1(参考)(軟質ウレタンフォーム試験方法)、硬さ(JIS K6400−2:2004)、反発弾性率(JIS K6400−3:2004)、引張強度(JIS K6400−5:2004)、伸び(JIS K6400−5:2004)を測定した。また、前記実施例及び比較例のポリウレタン樹脂発泡体を、1辺13mmの立方体に裁断して実施例及び比較例の水処理用微生物担体を作成し、それらにおける微生物繁殖性を調べた。微生物繁殖性の評価方法は以下のとおりである。まず、10Lのアクリル槽に、容積にして2L分の担体を投入した。次に、溶存酸素量400mg/Lに調整された人工下水を1L/Hrの速度で定量供給し、アクリル槽に鑑賞魚用の市販エアーポンプで空気を送りながら、1ヶ月間、前記下水を攪拌、循環させた。1ヶ月後、アクリル槽から水を処理水として採取し、処理水中に残存する溶存酸素量(残存溶存酸素量)を測定した。なお、JIS K 0102にしたがい、試料を希釈水で希釈し、20℃で5日間放置して測定した。上記試験では、溶存酸素量400mg/Lに調整された人工下水において、微生物によってどれだけ多くの溶存酸素が消費されて、残存溶存酸素量の低い汚水、清い水になったかを測定している。測定結果の残存溶存酸素量が低いほど、多くの微生物によって水が清くされていることを示している。
表1の測定結果から理解されるように、比較例1は、発泡体中に高分子粒子が含有されていないことから、硬さ及び引張強度が低く、耐久性に欠けるものである。比較例2,3は、セル数が少ない場合(比較例2)とセル数の多い場合(比較例3)であり、何れも残存溶存酸素量の値が高いことから、担体中の好気性微生物によって消費された溶存酸素量が少ない、すなわち担体における好気性微生物の繁殖性に劣っているものである。比較例4は、エステルポリオールを使用しており、反発弾性率に劣り、また密度が低く、浄化槽(上記試験ではアクリル槽)における旋回性が悪い。
それに対し、実施例は、セル数が15〜50個/25mmにおいて、残存溶存酸素量の値が55以下であり、担体中の好気性微生物によって消費された溶存酸素量が多い、すなわち担体における好気性微生物の繁殖性が良好なものである。また、実施例における何れの発泡体においても、高分子粒子の重量が10〜40重量部であり、諸物性において均衡のとれた水処理用微生物担体であった。

Claims (5)

  1. ポリウレタン樹脂発泡体からなる水処理用微生物担体において、
    前記ポリウレタン樹脂発泡体は、高分子粒子が分散し、セル膜が除去されていると共に、セル数が15〜50個/25mmであることを特徴とする水処理用微生物担体。
  2. 前記高分子粒子は、直径が0.5〜4.0μmであることを特徴とする請求項1に記載の水処理用微生物担体。
  3. 前記高分子粒子は、前記ポリウレタン樹脂発泡体の発泡原料におけるポリオールに対して10〜50重量%の含有量であることを特徴とする請求項1または2に記載の水処理用微生物担体。
  4. 前記ポリウレタン樹脂発泡体は、密度が40〜60kg/mであることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の水処理用微生物担体。
  5. 前記ポリウレタン樹脂発泡体は、一辺が10〜15mmの立方体または直方体からなることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の水処理用微生物担体。
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