図1は、本発明の実施の第1形態である画像形成装置1の構成を模式的に示す断面図である。図2は、本発明の他の実施形態である帯電装置24の構成を模式的に示す斜視図である。図3は、図2に示す帯電装置24の要部の構成を模式的に示す断面図である。画像形成装置1は、複写機能、プリンタ機能およびファクシミリ機能を併せ持つ複合機である。すなわち、画像形成装置1においては、コピアモード(複写モード)、プリンタモードおよびFAXモードという3種の印刷モードを有しており、図示しない操作部からの操作入力、パーソナルコンピューターなどの外部ホスト装置からの印刷ジョブの受信などに応じて、図示しない制御部により、適切な印刷モードが選択される。画像形成装置1は、給紙ユニット部2と、画像形成部3と、排紙部4と、原稿読み取り部5とを含む。給紙ユニット部2は記録媒体を貯留しかつ画像形成部3に記録媒体を送給する。画像形成部3は記録媒体に画像を形成する。排紙部4は画像が形成された記録媒体を画像形成装置1の外部に排出する。原稿読み取り部5は複写用原稿に記載される画像および/または文字を読み取り、その情報を電気的信号に変換して画像形成部3に伝達する。
給紙ユニット部2は、給紙トレイ10,11,12,13(以下「給紙トレイ10〜13」とする)と、第1および第2搬送路14,15と、第3搬送路33と、フレーム16と、手差し部17とを含む。給紙トレイ10〜13は記録紙、OHP(オーバーヘッドプロジェクタ)用フィルムなどの記録媒体を収容する。給紙トレイ10,11は互いに並列配置され、これらの下側に給紙トレイ12が配置され、さらにその下側に給紙トレイ13が配置される。給紙トレイ10〜13への記録媒体の補給は、たとえば、画像形成装置1の正面側(操作側)に、給紙トレイ10〜13を引き出して行われる。給紙トレイ10〜13には、たとえば、トレイ毎に異なるサイズおよび/または種類の記録媒体を収容できる。ここで、サイズとは、たとえば、JIS P 0138またはJIS P 0202に規定されるA3、A4、B4、B5などのサイズを意味する。また、これらのサイズに限定されず、不定形の記録媒体も収容できる。一方、種類とは、普通紙、カラーコピー用紙、コート紙、厚紙、葉書などの記録紙、OHP用フィルムなどを意味する。勿論、給紙トレイ10〜13には、同じサイズおよび同じ種類の記録媒体も収容できる。
第1搬送路14は、フレーム16に沿って画像形成装置1の設置面100に対して垂直方向であるほぼ鉛直方向に延びて第3搬送路33に接続するように設けられ、給紙トレイ10,12,13に収容される記録媒体を画像形成部3に送給する。また、第2搬送路15は、給紙ユニット部2のフレーム16に沿って、画像形成装置1の設置面100に対して平行方向であるほぼ水平方向に延びて第3搬送路33に接続するように設けられ、給紙トレイ11に収容される記録媒体を画像形成部3に送給する。フレーム16内には、給紙トレイ10〜13ならびに第1および第2搬送路14,15が効率良く配置されるので、省スペース化が可能になる。第3搬送路33は、第1および第2搬送路14,15から搬送される記録媒体を後記する転写ニップ部に搬送する。
手差し部17はフレーム16の鉛直方向上方に設けられ、手差しトレイ18と、給紙ローラ19a,19bと、手差し送給路20とを含む。手差しトレイ18は、画像形成装置1の内部において、フレーム16の上側に固定され、かつその一部が画像形成装置1の側面1aから外方に向けて突出するように設けられる。また、手差しトレイ18は、画像形成装置1の内部に収納可能に設けられる。手差しトレイ18には、画像情報が形成された原稿が載置され、この原稿が画像形成装置1の内部に記録媒体が供給される。給紙ローラ19a,19bは、手差しトレイ18に載置される記録媒体を画像形成装置1の内部に取り込む。給紙ローラ19a,19bは、互いに圧接し、かつそれぞれ図示しない駆動手段により軸線回りに回転駆動可能に設けられる。手差しトレイ18から給紙ローラ19a,19bの圧接部に供給される記録媒体は、給紙ローラ19a,19bの回転駆動によって、手差し送給路20に送られる。手差し送給路20は、フレーム16を貫通して第2搬送路15に接続するように設けられ、給紙ローラ19a,19bにより画像形成装置1の内部に取り込まれる記録媒体を、第2搬送路15および第3搬送路33を介して画像形成部3に搬送する。手差し部17によれば、手差しトレイ18に載置される記録媒体が、給紙ローラ19a,19bによって手差し送給路20に送給され、さらに第2搬送路15を介して、画像形成部3に送られる。
給紙ユニット部2によれば、記録媒体に画像形成を行う場合に、給紙トレイ10〜13の中から、予め指定されるサイズおよび種類の記録媒体が収容されるトレイが選択され、そのトレイから記録媒体が1枚ずつ分離され、第1搬送路14および第2搬送路15のいずれかを介して画像形成部3に送給され、画像が形成される。または、手差し部17から供給される記録媒体は、同様にして、画像形成部3に送給され、画像が形成される。
画像形成部3は、電子写真プロセス部21と、定着部22とを含む。電子写真プロセス部21は、感光体ドラム23と、帯電装置24と、光走査ユニット25と、現像ユニット26と、現像剤貯留ユニット27と、転写ユニット28と、クリーニングユニット29とを含み、画像情報に応じて形成されるトナー像を記録媒体上に転写する。
感光体ドラム23は、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転駆動可能に設けられ、導電性基体と感光層とを含む部材である。導電性基体としては導電性を示すものであれば特に制限されず、たとえば、円筒状、円柱状、薄膜シート状などの形状を有する導電性基体が挙げられる。導電性基体は好ましくは円筒状である。導電性基体を形成する導電性材料としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金、白金などの金属、これらの2種以上の合金、合成樹脂フィルム、金属フィルム、紙などのフィルム状基体にアルミニウム、アルミニウム合金、酸化錫、金、酸化インジウムなどの1種または2種以上からなる導電性層を形成してなる導電性フィルム、導電性粒子および/または導電性ポリマーを含有する樹脂組成物などが挙げられる。なお、導電性フィルムに用いられるフィルム状基体としては、合成樹脂フィルムが好ましく、ポリエステルフィルムが特に好ましい。また、導電性フィルムにおける導電性層の形成方法としては、蒸着、塗布などが好ましい。
感光層としては、たとえば、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層してなる2層分離型感光層が挙げられる。電荷発生層は、光照射により電荷を発生する電荷発生物質を主成分とし、必要に応じて公知の結着樹脂、可塑剤、増感剤などを含有する。電荷発生物質としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ペリレンイミド、ペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、キナクリドン、アントラキノンなどの多環キノン系顔料、金属および無金属フタロシアニン、ハロゲン化無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、スクエアリウム色素、アズレニウム色素、チアピリリウム色素、カルバゾール骨格、スチリルスチルベン骨格、トリフェニルアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、オキサジアゾール骨格、フルオレノン骨格、ビススチルベン骨格、ジスチリルオキサジアゾール骨格またはジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料などが挙げられる。これらの中でも、無金属フタロシアニン顔料、オキソチタニルフタロシアニン顔料、フローレン環および/またはフルオレノン環を含有するビスアゾ顔料、芳香族アミンからなるビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料などは高い電荷発生能を有し、高感度の感光層を得るのに適する。電荷発生層用の結着樹脂としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリアミド、ポリエステルなどが挙げられる。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。結着樹脂に対する電荷発生物質の使用割合は特に制限されないけれども、結着樹脂100重量部に対して好ましくは5〜500重量部、さらに好ましくは10〜200重量部である。電荷発生層は、電荷発生物質および結着樹脂ならびに必要に応じて可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷発生層塗液を調製し、この電荷発生層塗液を導電性基体表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは0.05〜5μm、さらに好ましくは0.1〜2.5μmである。
電荷輸送層は、電荷発生物質から発生する電荷を受け入れて輸送する能力を有する電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂を必須成分とし、必要に応じて公知の酸化防止剤、可塑剤、増感剤、潤滑剤などを含有する。電荷輸送物質としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒ縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、ピラゾリン誘導体、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン系化合物、テトラフェニルジアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スチルベン系化合物、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物などの電子供与性物質、フルオレノン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、インデノチオフェン誘導体、フェナンスレンキノン誘導体、インデノピリジン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンゾ[c]シンノリン誘導体、フェナジンオキサイド誘導体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニル、ベンゾキノンなどの電子受容性物質などが挙げられる。電荷輸送物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷輸送層用の結着樹脂としては、この分野で常用されかつ電荷輸送物質を均一に分散できるものを使用でき、たとえば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、ポリケトン、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、これらの共重合樹脂などが挙げられる。これらの中でも、成膜性、得られる電荷輸送層の耐摩耗性、電気特性などを考慮すると、ビスフェノールZをモノマー成分として含有するポリカーボネート(以後「ビスフェノールZ型ポリカーボネート」と称す)、ビスフェノールZ型ポリカーボネートと他のポリカーボネートとの混合物などが好ましい。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。結着樹脂に対する電荷輸送物質の使用割合は特に制限されないけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して10〜300重量部、さらに好ましくは30〜150重量部である。
電荷輸送層には、電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂と共に、酸化防止剤が含まれるのが好ましい。酸化防止剤としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ビタミンE、ハイドロキノン、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール、パラフェニレンジアミン、アリールアルカンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。酸化防止剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。酸化防止剤の含有量は特に制限されないけれども、電荷輸送層を構成する成分の合計量の0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%である。電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂ならびに必要に応じて酸化防止剤、可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷輸送層用塗液を調製し、この電荷輸送層用塗液を電荷発生層表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは15〜40μmである。
なお、感光層として、電荷発生物質と電荷輸送物質とを同一の樹脂層に含有する単層型感光体を用いてもよい。その場合、電荷発生物質および電荷輸送物質の種類、含有量、結着樹脂の種類、その他の添加剤などは、電荷発生層および電荷輸送層を別々に形成する場合と同様でよい。また、感光層と導電性基体との間に、下引き層を設けるのが好ましい。下引き層を設けることによって、導電性基体の表面に存在する傷および凹凸を被覆して、感光層表面を平滑化する、繰り返し使用時における感光層の帯電性の劣化を防止する、低温および/または低湿環境下における感光層の帯電特性の向上させるといった利点が得られる。本実施の形態では、前述のような、電荷発生物質および電荷輸送物質を用いる有機感光層を形成してなる感光体ドラムを用いるけれども、それに代えて、導電性基体表面にシリコンなどを含む無機感光層を形成してなる感光体ドラムを使用できる。
帯電装置24は、図2および図3に示す構成を有する。帯電装置24は、コロナ電極50と、図示しない第1の電源と、支持部材51と、シールドケース55と、グリッド電極56と、図示しない第2の電源とを含む。帯電装置24は、電子写真プロセス部21において、感光体ドラム23を臨み感光体ドラム23の長手方向に沿って配置される。
コロナ電極50は平板部57と先鋭状突起部58とを含む板状部材である。コロナ電極50は、鋭角状の先端を有する先鋭状突起部58を有することによって、第1の電源から電圧の印加を受けると不平等電界を形成してコロナ放電し、感光体ドラム23表面を所定の電位および極性に帯電させる。平板部57は感光体ドラム23から離隔して感光体ドラム23の長手方向に延び、感光体ドラム23の軸線を含みかつ感光体ドラム23の半径方向に延びる仮想面上に設けられる板状部材である。先鋭状突起部58は、複数の先鋭状突起58aを含む。先鋭状突起58aは、平板部57の短手方向における感光体ドラム23を臨む一端部から平板部57の短手方向に突出するように形成され、平板部57の長手方向において所定のピッチTPを空けて一列に配置される。本実施の形態では、平板部57の短手方向の長さL1は10mm、先鋭状突起の突出方向長さL2は2mm、先鋭状突起の先端の曲率半径は40μm、先鋭状突起のピッチTPは2mmである。また本実施の形態では、図2に示すように、先鋭状突起は鋸歯状形状を有するけれども、それに限定されず、針状形状を有する先鋭状突起を形成してもよい。
コロナ電極50は、たとえば、コロナ電極用板金に化学研磨工程、水洗工程、酸浸漬工程、水洗工程、純水浸漬工程および乾燥工程を順次施すことによって製造できる。化学研磨工程では、コロナ電極用板金にマスキングおよびエッチングを行うことによって、先鋭状突起部58を形成する。マスキングは公知の方法に従って実施できる。エッチングも公知の方法に従って実施でき、たとえば、塩化第2鉄水溶液などのエッチング液をコロナ電極用板金に噴霧する方法などが挙げられる。ここで、コロナ電極用板金は、たとえば、ステンレス鋼、ニッケル、鉄などの鉄系金属材料からなる板金であることが好ましい。これらの中でも、コロナ電極50の耐久性向上の観点からはステンレス鋼が好ましい。ステンレス鋼の具体例としては、たとえば、SUS304、SUS309、SUS316などが挙げられ、これらの中でもSUS304が好ましい。コロナ電極用板金の厚さは特に制限されないけれども、好ましくは0.05〜1mm、さらに好ましくは0.05〜0.3mmである。化学研磨工程で先鋭状突起部58が形成されるコロナ電極用板金は、水洗工程、酸浸漬工程、水洗工程および純水浸漬工程において、水洗、酸洗浄または純水洗浄を施され、その表面から異物が除去され、さらに乾燥工程において乾燥され、コロナ電極50が得られる。なお、コロナ電極50の表面の少なくとも一部にも、ニッケル層、PTFE含有ニッケル層、金層などを設けてもよい。ニッケル層、PTFE含有ニッケル層および金層は、たとえば、後述するめっき方法よって設けることができる。また、金層はスパッタリング法などによっても形成できる。
第1の電源は、画像形成装置1に設けられる図示しない制御手段によって、コロナ電極50に対して所定の電圧を印加するように制御される。本実施の形態では、第1の電源はコロナ電極50に対して、4〜5kV程度の電圧を印加する。これによって、コロナ電極50の先鋭状突起部58には、400〜800μAの定電流が流れる。
支持部材51はコロナ電極50と同様に感光体ドラム23の長手方向に延び、長手方向に垂直な方向の断面がT字状の部材である。支持部材51の突出部分の一側面における長手方向両端部には、コロナ電極50の平板部57における長手方向の両端部がねじ部材59によってねじ止めされる。これによって、支持部材51はコロナ電極50を支持する。支持部材51は、たとえば、合成樹脂などによって形成される。シールドケース55は、感光体ドラム23の長手方向に延び、かつ感光体ドラム23表面に向けて開口する直方体の容器状部材であり、その内部空間にコロナ電極50および支持部材51を収容する。シールドケース55の底面63に支持部材51が装着される。
グリッド電極56は、コロナ電極50と感光体ドラム23との間に設けられ、図示しない第2の電源から電圧の印加を受けて、感光体ドラム23表面の帯電状態のばらつきを調整し、帯電電位をより一層均一化する薄板状部材である。グリッド電極56は厚み方向に貫通するように形成される複数の図示しない貫通孔を有する多孔性薄板状部材である。グリッド電極56は、その長手方向が感光体ドラム23の長手方向に平行になるように設けられる。図7は、グリッド電極56の構成を模式的に示す平面図である。グリッド電極56は、開口部56bと、嵌合孔56cとを含む。開口部56bは、所定のピッチで平行になるように形成される複数の貫通孔を含む。嵌合孔56cは、グリッド電極56の長手方向両端部に形成される。グリッド電極56は、2つの嵌合孔56cをシールドケース55の内部空間に設けられる図示しない支持部材に嵌合することより、シールドケース55によって着脱自在に支持される。また、グリッド電極56のコロナ電極50を臨む表面56xの一部分には、PTFE含有ニッケル層である被覆層56yが形成される。グリッド電極56は、図示しない第2の電源から電圧の印加を受けて、感光体ドラム23表面の帯電電位のばらつきを調整する帯電制御機能を有する。また、被覆層56yを設けることによって、コロナ電極50によるコロナ放電、コロナ放電の際に発生するオゾン、空気中の水分などに晒されてグリッド電極50の表面に錆などが発生し、また窒素酸化物などの異物が付着し、グリッド電極50の耐久性および帯電制御性能が低下するのを防止できる。なお、図3では、被覆層56yがグリッド電極56の貫通孔を塞ぐように図示されるけれども、これは被覆層56yの模式的な図示である。実際には被覆層56yの膜厚が貫通孔の径よりも小さくなるように被覆層56yが形成されるので、被覆層56yによって貫通孔が塞がれることはない。
グリッド電極56は、たとえば、めっき法を利用する公知の方法に従って製造できる。めっき法によれば、たとえば、グリッド電極用板金に、化学研磨工程、水洗工程、酸浸漬工程、水洗工程、純水浸漬工程、ニッケルめっき工程、PTFE含有ニッケルめっき工程、水洗工程および乾燥工程を順次施すことによって、本発明において使用するグリッド電極56が得られる。なお、前記した工程のうち、ニッケルめっき工程は必須の工程ではなく、必要に応じて実施される。
化学研磨工程では、グリッド電極用板金にマスキングおよびエッチングを行うことによって、複数の貫通孔を形成する。マスキングは公知の方法に従って実施できる。エッチングも公知の方法に従って実施でき、たとえば、塩化第2鉄水溶液などのエッチング液をコロナ電極用板金に噴霧する方法などが挙げられる。ここで、グリッド電極用板金は、たとえば、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、銅、アルミニウムなどの鉄系金属材料からなる板金であることが好ましい。これらの中でも、グリッド電極56の耐久性向上の観点からはステンレス鋼が好ましい。ステンレス鋼の具体例としては、たとえば、SUS304、SUS309、SUS316などが挙げられ、これらの中でもSUS304が好ましい。グリッド電極用板金の厚さは特に制限されないけれども、コロナ電極用板金と同様に、好ましくは0.05〜1mm、さらに好ましくは0.05〜0.3mmである。化学研磨工程で複数の貫通孔が形成されるグリッド電極用板金は、水洗工程、酸浸漬工程、水洗工程および純水浸漬工程において、水洗、酸洗浄または純水洗浄を施され、その表面から異物が除去され、グリッド電極基材が得られる。
ニッケルめっき工程は必須の工程ではないけれども、PTFE含有ニッケル層、金層などのグリッド電極基材に対する密着性、接着性などを高めるために、実施するのが好ましい。ここで、ニッケルめっきは一般的な方法により実施されるけれども、後にPTFE含有ニッケルめっき層を形成することを考慮すると、電気めっきを行うのが好ましい。ここで、ニッケルの電気めっき浴(電気めっき液)としては公知のものを使用でき、たとえば、ワット浴、スルファミン浴、高塩化浴、全塩化浴などが挙げられる。ワット浴は、たとえば、硫酸ニッケル、塩化ニッケルおよびホウ酸を主成分とする。スルファミン浴は、たとえば、塩化ニッケル、臭化ニッケルなどのニッケル源化合物およびスルファミン酸のアルカリ金属塩を主成分とする。ニッケルの電気めっき浴は多数の市販品があり、そのまま使用可能である。ニッケルめっき条件は特に制限されないけれども、たとえば、電流密度1〜100A/dm2、めっき浴のpH2〜5、めっき浴の液温30〜90℃、めっき時間0.1〜2時間程度である。また、ニッケルめっき層の層厚も特に制限されないけれども、好ましくは0.03〜3μm、さらに好ましくは0.5〜1.5μm、特に好ましくは1μm程度である。
グリッド電極基材に部分的にニッケル層を設けるには、たとえば、図4に示す電気めっき装置70を使用できる。図4は、電気めっき装置70の構成を模式的に示す断面図である。電気めっき装置70は、めっき槽72と、電極73と、電源74とを含む。めっき槽72は鉛直方向上方に向けて開口する容器状部材であり、その内部空間に電気めっき浴71が貯留され、電極73が設けられる。めっき槽72内の電気めっき浴71は、めっき槽72の近傍に設けられる図示しない加熱手段によって、適切な温度に加熱される。電極73は、めっき槽72に貯留される電気めっき浴71中に浸漬するように設けられる板状電極であり、図示しない支持手段によって支持される。電源74はめっき槽72の外部に設けられ、一端が電極73に接続され、他端が被めっき材(ここではグリッド電極基材56a)に接続され、電極73と被めっき材との間に直流電圧を印加する。被めっき材がグリッド電極基材56のような板状部材である場合、電極73と被めっき材とは、それぞれの一方の表面が対向して鉛直方向に平行になるように、電気めっき浴71中に配置される。電極73の表面と電極73の表面に対向する被めっき材との水平方向の距離を調整することによって、被めっき材にマスキングを施すことなく、被めっき材表面の所望の位置に、所望の形状および大きさを有するニッケル層を形成できる。電気めっき装置70によれば、電気めっき液71内において、グリッド電極基材56aと電極73とが鉛直方向において平行になるように配置した状態で、電源74から電圧を印加することによって、グリッド電極基材56aの所望の位置に所望の形状および大きさを有するニッケルめっき層が選択的に形成される。
PTFE含有ニッケルめっき工程は、たとえば、電気ニッケルめっき法に従って実施できる。被覆層56yであるPTFE含有ニッケルめっき層は、グリッド電極基材56aの表面の一部に設けられる。また、グリッド電極基材56aの表面の一部にニッケルめっき層が設けられる場合は、ニッケルめっき層の上にPTFE含有ニッケルめっき層を設けるのが好ましい。ニッケルめっき層を介してPTFE含有ニッケルめっき層を設けることによって、PTFE含有ニッケルめっき層のグリッド電極基材56aに対する密着性が向上する。それとともにPTFE含有ニッケルめっき層の耐久性およびグリッド電極基材56aに対する保護機能がさらに高まり、グリッド電極56の帯電制御性能が一層向上する。また、ニッケル層の存在に関係なく、PTFE含有ニッケルめっき層を部分的に設けることによって、グリッド電極56の製造コストの低減化を図り得る。それとともに、設置面積の縮小によって却ってPTFE含有ニッケルめっき層のグリッド電極基材56aに対する接着力が向上し、コロナ放電、オゾン、空気中の水分などの影響を受け難くなる。その結果、PTFE含有ニッケルめっき層の耐用寿命が増し、グリッド電極基材56aに対する保護機能の低下が少なくなる。また、PTFE粒子の不均一分散などによって、PTFE含有ニッケルめっき層の一部が部分的に欠落しても、欠落部分の周囲が欠落の影響を受けて劣化し、さらに欠落することが非常に少ない。したがって、部分的な欠落があっても、PTFE含有ニッケルめっき層全体としてのグリッド電極基材56aに対する保護機能はあまり低下せず、長期間にわたって高い水準に保持される。
電気めっき浴としては、前述のニッケルめっき工程で用いられるのと同様のめっき浴にPTFE粒子を添加してなるめっき浴が使用される。PTFE粒子の粒子径は特に制限されず、めっき層の厚みより小さければ特に制限はないけれども、好ましくは体積平均粒子径が1μm以下、さらに好ましくは体積平均粒子径が100〜500nmである。ここで、体積平均粒子径はつぎの方法によって求められる値である。電解液(商品名:ISOTON−II、ベックマン・コールター社製)50mlに、試料20mgおよびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mlを加え、超音波分散器(商品名:UH−50、STM社製)により超音波周波数20kzで3分間分散処理して測定用試料を調製した。この測定用試料について、粒度分布測定装置(商品名:Multisizer2、ベックマン・コールター社製)を用い、アパーチャ径:100μm、測定粒子数:50000カウントの条件下に測定することによって、試料粒子の体積粒度分布から体積平均粒子径が求められる。また、PTFE粒子のめっき浴への添加量も特に制限されないけれども、好ましくはめっき浴全量の0.01〜10重量%、さらに好ましくは0.1〜1.0重量%である。PTFE含有ニッケルめっき層は、前記のめっき浴および図4に示す電気めっき装置70を用いて電気めっきを行うことによって形成される。めっき条件も電気ニッケルめっきと同様でよい。PTFE含有ニッケルめっき層の厚みは、めっき条件、特にめっき時間を適宜選択することによって制御できる。
形成されるPTFE含有ニッケルめっき層中におけるPTFEの含有量は、好ましくは3〜30体積%、さらに好ましくは20〜30体積%である。形成されるPTFE含有ニッケルめっき層の層厚は特に制限はないけれども、好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは0.3〜20μm、特に好ましくは1〜10μmである。厚さが0.3μm未満では、めっき層表面の平滑性が不充分になって、異物が付着して取れ難い状態になる。また、ピンホールが発生しやすく不均一のものとなり、ピンホールを介してグリッド電極基材56aが腐食されることにより、感光体ドラム23の帯電電位が部分的に不安定になりやすい。一方、20μmを大幅に超えると、ストレスによりめっき皮膜が剥離する恐れがある。このようにしてPTFE含有ニッケルめっき層が形成され、グリッド電極56が得られる。
本実施の形態では、PTFE含有ニッケルめっき工程に代えて金めっき工程を実施してもよい。金めっき工程においても、一般的な電気金めっき浴と図4に示す電気めっき装置70とを用い、金めっきの一般的なめっき条件で電気めっきを行うことによって、所望の厚さを有する金めっき層を形成できる。金めっき方法の1つの例を挙げれば、脱脂工程と、酸洗工程と、ストライクニッケルめっき工程と、ニッケルめっき工程と、金めっき工程と、水洗工程と、乾燥工程とを含む金めっき方法が挙げられる。脱脂工程では被めっき物表面に付着する加工油などを除去する。酸洗工程では被めっき物表面を酸で洗い、活性化させる。ストライクニッケルめっき工程では、酸洗後の被めっき物表面に薄いニッケルめっき層を形成する。この場合、化学めっきでも電気めっきでもよい。ストライクニッケルめっき工程は省略してもよい。ニッケルめっき工程では電気ニッケルめっきを行う。金めっき工程では電気金めっきを行う。電気金めっき浴には、たとえば、シアン金めっき浴と、非シアン金めっき浴などがある。シアン金めっき浴としては公知のものを使用でき、たとえば、シアン化金カリウム、シアン化カリウムおよびリン酸水素二カリウムを含む金めっき浴などが挙げられる。非シアン金めっき浴としても公知のものを使用でき、たとえば、塩化金(III)酸ナトリウム、フェロシアン化カリウムおよび炭酸ナトリウムを含み、pH6、浴温60℃、電流密度0.5A/dm2である非シアン金めっき浴、金およびリン酸カリウムを含み、pH5.8、浴温70℃、0.3A/dm2であるソフトゴールド浴、アセチルシステイン金錯体、システイン金錯体、メルカプトコハク酸金錯体、塩化金錯体、亜硫酸金錯体のアルカリ金属塩および/またはアンモニウム塩から選ばれる非シアン系金化合物の1種または2種以上と、アセチルシステイン(錯化剤)とを含む非シアン金めっき浴、水酸化金、1,2−エタンジアミン二塩酸、ホウ酸および2,2−ビビリジルを含み、pH3.8である非シアン金めっき浴などが挙げられる。金めっき層の厚みは特に制限されないけれども、好ましくは0.3〜3μm、さらに好ましくは0.5〜1.5μm、特に好ましくは1μm程度である。水洗工程では、被めっき物表面に施される金めっき層を水洗する。乾燥工程では、金めっき層表面の水分を熱風などによって除去する。このようにして、金めっき層が形成されたグリッド電極56が得られる。
グリッド電極56のコロナ電極50を臨む表面56xに設けられる被覆層56yの形状および大きさは特に制限されないけれども、コロナ電極50の短手方向におけるコロナ電極50のグリッド電極56方向への仮想延長面とグリッド電極56の表面56xとの交線およびその近傍部分を含むように被覆層56yを設けるのが好ましい。たとえば、グリッド電極56の有効寸法(開口部寸法)が縦(感光体ドラム23の長手方向に垂直な方向の幅)12mm、横(感光体ドラム23の長手方向)325.5mmであれば、被覆層56yは表面56x上であって前記交線を含み、かつ縦2.5〜12mmの領域に設けるのが好ましい。なお、めっきによってニッケル層を形成する場合も、前記と同様の領域にニッケルめっき層を形成すればよい。前記の領域に被覆層56yを設けることによって、全面に被覆層56yを設ける場合に比べて、被覆面積を1/4以下に低減化できる。
図示しない第2の電源は、画像形成装置1に設けられる図示しない制御手段によって、グリッド電極56に対して所定の電圧を印加するように制御される。本実施の形態では、第2の電源は、グリッド電極56に対して550〜600Vの電圧を印加する。
帯電装置24によれば、コロナ電極50に電圧が印加されることによりコロナ放電が起こり、感光体ドラム23の表面が帯電されるとともに、グリッド電極56に所定のグリッド電圧が印加されることにより、感光体ドラム23の表面の帯電状態が均一化されるので、感光体ドラム23の表面を所定の電位および極性に帯電させることができる。
光走査ユニット25は、レーザ光源25aと、ポリゴンミラー25bと、レンズ25cと、ミラー25d,25eとを含む。レーザ光源25aは原稿読み取り部5または外部機器から入力される画像情報に応じて変調されるレーザ光である信号光を出射する。レーザ光源25aにはたとえば半導体レーザなどを使用できる。ポリゴンミラー25bはレーザ光源25aから出射されるレーザ光を主走査方向に偏向させる。レンズ25cはポリゴンミラー25bにより主走査方向に偏向されるレーザ光を感光体ドラム23の表面に結像するように収束する。ミラー25d,25eはレンズ25cにより収束されるレーザ光を反射して、所定の電位および極性に帯電する感光体ドラム23表面に照射する。これによって、感光体ドラム23表面に応じた静電潜像が形成される。光走査ユニット25によれば、レーザ光源25aから出射されるレーザ光は、ポリゴンミラー25bにより偏向され、さらにレンズ25cにより収束され、ミラー25d,25eによって反射されて感光体ドラム23の表面に照射されることによって静電潜像が形成される。
現像ユニット26は、現像ローラ26aと、供給ローラ26bと、ケーシング26cとを含む。現像ローラ26aは、感光体ドラム23表面に圧接しかつ図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられるローラ状部材である。現像ローラ26aと感光体ドラム23との圧接部が現像ニップ部である。現像ローラ26aは、現像ニップ部において、感光体ドラム23表面の静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する。現像ローラ26aには現像バイアス電圧が印加されてもよい。供給ローラ26bは、現像ローラ26aに圧接しかつ図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、現像ローラ26aにトナーを含む現像剤を供給する。ケーシング26cは内部空間を有する容器状部材であり、その内部空間に現像剤を収容し、現像ローラ26aおよび供給ローラ26bを回転自在に支持する。現像ユニット26によれば、ケーシング26c中に収容される現像剤が、供給ローラ26bの回転駆動により現像ローラ26aの表面に付着し、さらに現像ニップ部において現像ローラ26aの表面から感光体ドラム23表面の静電潜像に供給され、静電潜像が現像されてトナー像が得られる。
転写ユニット28は、駆動ローラ28aと、従動ローラ28b,28cと、無端ベルト28dとを含む。駆動ローラ28aは、無端ベルト28dを介して感光体ドラム23表面に圧接し、かつ図示しない駆動手段により軸線回りに回転駆動可能に設けられるローラ状部材である。駆動ローラ28aと感光体ドラム23との圧接部が転写ニップ部である。駆動ローラ28aの回転駆動によって、無端ベルト28dひいては従動ローラ28b,28cが従動回転する。駆動ローラ28aには転写バイアス電圧が印加されてもよい。従動ローラ28b,28cは図示しない支持手段によって回転自在に支持され、駆動ローラ28aの回転に従動回転するローラ状部材である。従動ローラ28b,28cは無端ベルト28dが円滑に回転駆動するように、無端ベルト28dに適切な張力を付与する。無端ベルト28dは駆動ローラ28aと従動ローラ28b,28cとに張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状部材であり、駆動ローラ28aの回転駆動に従動回転する。無端ベルト28dは、その従動回転によって、転写ニップ部でトナー像が転写された記録媒体を定着部22に向けて搬送する。転写ユニット28によれば、記録媒体は給紙ユニット部2から第3搬送路32を通過して転写ニップ部に供給され、駆動ローラ28aによる押圧によって記録媒体が感光体ドラム23表面に圧接し、該表面のトナー像が記録媒体に転写される。トナー像が転写された記録媒体は定着部22に送給される。
クリーニングユニット29は、転写ユニット28にて記録媒体にトナー像を転写した後に、感光体ドラム23の表面に残留するトナーを除去し、感光体ドラム23の表面を清浄化する。クリーニングユニット29には、たとえば、クリーニングローラとトナー収容容器とを含むクリーニングユニットを使用できる。クリーニングローラは感光体ドラム23に圧接するように設けられるローラ状部材であり、感光体ドラム23表面に残留するトナー、紙粉などを除去する。トナー収容容器はクリーニングローラによって感光体ドラム23表面から除去されるトナー、紙粉などを一時的に貯留する。また、クリーニングローラに代えてクリーニングブレードを使用できる。クリーニングブレードは感光体ドラム23の長手方向に延び、短手方向の一端が感光体ドラム23表面に当接するように設けられる。なお、本発明の画像形成装置1においては、感光体ドラム23として、主に有機感光体ドラムが用いられ、有機感光体ドラムの表面は樹脂成分を主体とするものであるため、帯電装置によるコロナ放電によって発生するオゾンの化学的作用によって表面の劣化が進行しやすい。ところが、劣化した表面部分はクリーニングユニット29よる擦過作用を受けて摩耗し、徐々にではあるが確実に除去される。したがって、オゾンなどによる表面の劣化の問題が実際上解消され、長期間にわたって、帯電動作による帯電電位を安定に維持することができる。
電子写真プロセス部21によれば、感光体ドラム23の回転駆動に伴い、帯電、露光による静電潜像の形成、静電潜像の現像によるトナー像の形成、トナー像の記録媒体への転写、および感光体ドラム23表面の清浄化という一連の動作を実行することにより、トナー像が記録媒体に転写され、この記録媒体は定着部22に送給される。
定着部22は定着ローラ30と加圧ローラ31と温度センサ32とを含み、電子写真プロセス部21において記録媒体上に転写されるトナー像を記録媒体に定着させる。定着ローラ30は、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転駆動可能に設けられ、その内部に図示しない加熱手段を有するローラ状部材である。加熱手段には、赤外線ヒータ、ハロゲンランプなどを使用できる。加圧ローラ31は定着ローラ30の表面に圧接し、軸線回りに回転自在に支持され、定着ローラ30の回転駆動に従動回転するように設けられるローラ状部材である。定着ローラ30と加圧ローラ31との圧接部が定着ニップ部である。温度センサ32は定着ローラ30の表面近傍に設けられ、定着ローラ30の表面温度を検知する。温度センサ32による検知結果に応じて、定着ローラ30の表面温度が所定温度に維持されるように、図示しない制御部によって、ヒータに供給される電力量が制御される。定着部22によれば、電子写真プロセス部21において得られる、トナー像が転写された記録媒体が定着ニップ部に供給され、定着ローラ30および加圧ローラ31の回転駆動に伴って定着ニップ部を通過する際に加圧および加熱を受けることによって、トナー像が記録媒体に定着され、画像記録済み記録媒体が得られる。
画像形成部3によれば、給紙ユニット部2から送給される記録媒体に、画像情報に応じたトナー像が転写され、さらに加熱加圧してトナー像を記録媒体に定着することにより、長期的かつ連続的に、高画質画像が形成された記録媒体が得られる。
排紙部4は、第4搬送路34と、第5搬送路35と、反転ローラ36a,36bと、第6搬送路37と、図示しない排紙トレイと、図示しない切換えゲートとを含む。第4搬送路34は画像形成部3の定着部22において得られる画像記録済み記録媒体を反転ローラ36a,36bに供給する。第5搬送路35は画像記録済み記録媒体を排紙トレイまたは第6搬送路37に搬送する。反転ローラ36a,36bは、いずれも軸線回りに順逆回転可能にかつ圧接するように設けられ、画像記録済み記録媒体の搬送方向を変更する。第4搬送路34を介して反転ローラ36a,36bの圧接部に供給される画像記録済み記録媒体は、その端部が反転ローラ36a,36bの順方向の回転によって反転ローラ36a,36b間に挟持される。その後、反転ローラ36a,36bの逆方向の回転によって、第5搬送路35内を搬送される。第6搬送路37は第3搬送路33に接続されるように設けられ、片面に画像が記録された記録媒体を再度第3搬送路33に搬送する。排紙トレイは画像形成装置1の外部に設けられる。切換えゲートは第5搬送路35を逆送されて来る画像記録済み記録媒体の搬送方向を矢符101の方向または第6搬送路37に切換える。排紙部4によれば、記録媒体の片面のみに画像が記録される場合には、第5搬送路35を介して、図示しない切換えゲートの動作によって矢符101の方向に、画像形成装置1外部の図示しない排紙トレイに排出される。また、記録媒体の両面に画像が形成される場合には、図示しない切換えゲートの動作によって第5搬送路35から第6搬送路37に搬送され、表裏反転された後、第3搬送路を経由して画像形成部3に搬送され、トナー像の転写および定着が行われる。
原稿読み取り部5は、原稿供給部38と画像読み取り部39とを含む。原稿供給部38は、原稿トレイ40と、原稿規制板41と、湾曲搬送路42と、保護マット43と、排出ローラ49とを含む。原稿トレイ40には原稿の画像面が上方を向くように載置される。原稿規制板41は原稿を1枚ずつ湾曲搬送路42に送給する。湾曲搬送路42は原稿の画像面が下方を向くように反転させながら原稿を後記する原稿台45の真上まで搬送する。保護マット43は原料供給部38と原稿台45との接触面に設けられ、主にプラテンガラスで形成される原稿台45を保護する。排出ローラ49は、原稿台45において画像読み取り手段39によって画像情報が読み取られた後の原稿を、画像形成装置1の外部に設けられる図示しない排出トレイに排出する。原稿供給部38によれば、原稿トレイ40に画像面を鉛直方向上方に向けて原稿を載置し、画像形成装置1の外装前面部に配置される図示しない操作パネルにおいて、条件入力キーにより印刷枚数、印刷倍率、用紙サイズなどの印刷条件を入力したのち、スタートキーを押すことによって、コピー動作が開始される。原稿トレイ40に載置される原稿が1枚ずつ自動的に搬送され、搬送の途中で画像面が下方を向くように反転処理され、原稿台45の真上まで搬送される。そして、原稿が原稿台45の上を通過する間に、原稿の画像情報が画像読み取り部39により読み取られる。その後、原稿は排出ローラ49によって画像形成装置1外部の図示しない排出トレイに排出される。
画像読み取り部39は、原稿台44と、原稿台45と、光源ユニット46と、ミラーユニット47と、CCD読み取りユニット48とを含む。原稿台44はたとえばハプテンガラスからなり、自動搬送が不可能な原稿を載置し、その画像情報を読み取るために設けられる。原稿台45はたとえばハプテンガラスからなり、副走査方向において原稿台44から離間するように設けられる。原稿台45は原稿トレイ40からの自動搬送が可能な原稿を通過させ、通過の際にその画像情報を読み取るために設けられる。光源ユニット46は、光源46aと、図示しないレフレクタと、図示しないスリットと、ミラー46bとを含む。光源46aは原稿台44,45の面に平行な方向(副走査方向)に移動可能に設けられ、読み取り用照明光を原稿に出射する。レフレクタは光源46aから出射される読み取り用の照明光を原稿台44または原稿台45の所定の読み取り位置に集光する凹面のレフレクタである。スリットは原稿からの反射光のみを選択的に通過させる。ミラー46bは原稿からの反射光をさらに90°反射する。光源ユニット46によれば、読み取り用照明光を原稿に出射し、原稿から反射される光をミラーユニット47に供給する。ミラーユニット47は一対のミラー47a,47bを含む。一対のミラー47a,47bは反射面が相互に直交するように配置され、光源ユニット46から供給される原稿からの反射光の光路を180°変更し、CCD読み取りユニット48に導く。CCD読み取りユニット48は結像レンズ48aとCCDイメージセンサ48bとを含み、原稿からの反射光を電気信号に変換する。結像レンズ48aはミラーユニット47からの反射光を結像する。CCDイメージセンサ48bは結像レンズ48aにより結像される光に応じる電気信号を出力する。CCD読み取りユニット48によれば、ミラーユニット47から結像レンズ48aに入射する反射光が結像され、その像がCCDイメージセンサ48bによって電気信号に変換され、図示しない制御部を介して、電気信号としての画像情報が光走査ユニット25に入力され、それに応じる画像形成が実行される。
画像読み取り部39によれば、原稿台44,45に載置される原稿の画像情報が、光源ユニット46からの光照射により原稿からの反射光として取り込まれ、さらにこの反射光がミラーユニット47を介してCCD読み取りユニット48に導かれ、電気信号の画像情報に変換される。この情報は、予め設定される条件で画像処理が行われ、画像形成部3の光走査ユニット25へ送信され、画像形成が実施される。
また、画像形成装置1の内部空間における上部には、図示しない制御手段が設けられる。制御手段は記憶部と演算部と制御部とを含む。記憶部は、各種情報および画像形成装置1における各制御を行うためのプログラムが入力される。さらに記憶部には、画像形成装置1の鉛直方向上面に配置される図示しない表示手段を介して設定される各種設定値、画像形成装置1内部の各所に配置される図示しないセンサなどからの検知結果、外部機器からの印刷指令に含まれる画像情報などが入力される。記憶部には、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、リードオンリィメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。演算部は、記憶部に入力される各種データ(印刷指令、検知結果、画像情報など)および各種手段のプログラムを取り出し、各種判定を行う。制御部は、演算部における判定結果に応じて該当装置に制御信号を送付し、動作制御を行う。制御部および演算部は、たとえば、中央処理装置(CPU、Central Processing Unit)を備えるマイクロコンピュータ、マイクロプロセッサなどによって実現される処理回路である。制御手段は、記憶部、演算部および制御部とともに主電源を含む。
画像形成装置1によれば、オゾン、空気中の水分に対して優れた耐久性を有し、画像形成装置1の耐用期間全般にわたって、感光体ドラム23表面を均一にかつ安定的に帯電させることができ、しかも製造コストの低いコロナ電極50を有する帯電装置24を備えることによって、一定の高画質を有する画像を安定的にかつ長期的に形成できる。
本実施の形態では、帯電装置24が用いられるけれども、それに限定されず、たとえば、図5および図6に示す帯電装置24aも使用できる。図5は、別形態の帯電装置24aの構成を模式的に斜視図である。図6は、図5に示す帯電装置24aの要部の構成を模式的に示す正面図である。帯電装置24aは帯電装置24に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。帯電装置24aは、コロナ電極50、支持部材51、シールドケース55およびグリッド電極56のほかに、清掃部材52a,52bと、保持部材53と、移動用部材54とを含むことを特徴とする。コロナ電極50、支持部材51、シールドケース55およびグリッド電極56は、帯電装置24と同様の構成である。清掃部材52a,52b、保持部材53および移動用部材54は、コロナ電極50を清掃するために設けられる。
清掃部材52a,52bは、平面投影形状がT字状である板状部材であり、コロナ電極50に対して相対的に移動可能に設けられ、移動時にコロナ電極50を擦過することによってコロナ電極50の表面を清掃する。清掃部材52a,52bは、たとえば、金属材料または高分子材料の弾性体から形成される。これらの中でも金属材料が好ましい。金属材料には、たとえば、りん青銅、普通鋼、ステンレス鋼などを使用できる。これらの中でも、清掃部材52a,52bがコロナ放電によって発生するオゾン雰囲気中で使用されることを考慮すると、耐酸化性に基づく耐久寿命の観点から、ステンレス鋼が好ましい。ステンレス鋼としては公知のものを使用できるけれども、たとえば、日本工業規格(JIS)G4305に規定されるオーステナイト系ステンレス鋼であるSUS304、フェライト系ステンレス鋼であるSUS430などが挙げられる。清掃部材52a,52bの厚さtは20〜40μmである。厚さtが20μm未満では、コロナ電極50に当接する際に容易に変形するけれども、変形に伴う反力であるコロナ電極50に対する押圧力が弱くなるので、コロナ電極50に付着する汚染物質を充分に除去できないおそれがある。厚さtが40μmを超えると、コロナ電極50に付着する汚染物質を充分に除去できるけれども、剛性が高くなってコロナ電極50に対する押圧力が強くなり過ぎるので、コロナ電極50の先鋭状突起58aの先端部58bを変形破損するおそれがある。また、厚さtが20〜40μmの範囲を外れると、帯電不良による画像むらなどが発生する可能性がある。清掃部材52a,52bを構成する。
清掃部材52a,52bの硬さは、米国材料試験協会(ASTM)規格D785に規定されるロックウェル硬さMスケールとして、好ましくは115以上、さらに好ましくは115〜130である。ロックウェル硬さが115未満では、軟質にすぎるので、コロナ電極50に当接させて擦過するとき、清掃部材52a,52bが必要以上に変形し過ぎて清掃効果が得られない。一方、ロックウェル硬さ130は現時点でのASTM規格D785の上限値であり、ASTM規格D785にはそれ以上高い硬さの規定はない。なお、清掃部材52a,52bはロックウェル硬さ130よりも硬くても差し支えない。
清掃部材52a,52bの、コロナ電極50と当接する部分であるT字の縦棒部分における幅寸法w、すなわち清掃部材52a,52bの移動方向に対して垂直方向かつ突起部58が延びる方向に対して垂直方向における清掃部材52a,52bの寸法wは、好ましくは3.5mm以上、好ましくは3.5mm〜10mmである。幅寸法wが3.5mm未満では、コロナ電極50に押圧されて変形する際に生じる力の単位面積あたりの値が大きくなるので、繰返し変形に対する疲労破壊を起こしやすくなり、耐用寿命が低下する。寸法wが3.5mm以上であれば、前述した力の単位面積あたりの値を小さくなり、変形の繰返しに対する耐久性を向上させ得る。しかしながら、過度に幅広にすると剛性が強くなり過ぎるとともに、装置が大型化するので、上限は10mm程度に設定されるのが望ましい。
なお、清掃部材52a,52bとコロナ電極50とは、清掃部材52a,52bに対するコロナ電極50の突起部58の食込み量dが、0.2〜0.8mmになるように配置されるのが好ましい。ここで、食込み量dは、清掃部材52a,52bと突起部58とを、清掃部材52a,52bがコロナ電極50に対して相対的に移動する方向に垂直な仮想平面に投影させた状態で、清掃部材52a,52bと突起部58とが、突起部58の延びる方向に重なり合う長さを意味する。食込み量dが0.2mm未満では、清掃部材52a,52bの変形に伴う反力であるコロナ電極50に対する押圧力が弱くなるので、コロナ電極50に付着する汚染物質を充分に除去できない。食込み量dが0.8mmを超えると、コロナ電極50に付着する汚染物質は充分に除去できるけれども、清掃部材52a,52bの変形に伴う反力(コロナ電極50に対する押圧力)が強くなり過ぎるので、コロナ電極50の突起部58先端を変形破損するおそれがある。この結果、食込み量dが0.2〜0.8mmの範囲を外れると、帯電不良による画像むらなどが発生する可能性が生じる。
保持部材53は、清掃部材52a,52bを支持する逆L字状の形状を有する部材であり、その梁状部分に、T字状を有する清掃部材52a,52bの腕部分が装着される。2枚の清掃部材52a,52bは、コロナ電極50に対して相対的に移動する方向に関して予め定められる間隔L3を有するように設けられる。間隔L3は、一方の清掃部材52aがコロナ電極50に当接して変形するとき、他方の清掃部材52bが変形している清掃部材52aに当たることのない距離に選ばれ、装着される保持部材53の梁状部分の厚みで調整できる。この間隔L3は、清掃部材52a,52bを構成する素材によって変形状態が変化するので、該素材の変形状態を事前に試験して定めるのが望ましい。清掃部材52a,52bが、たとえば厚さt=30μmのステンレス鋼からなるとき、間隔L3は2mmが好ましい。2枚の清掃部材52a,52bに間隔L3を設けることによって、一方の清掃部材52aがコロナ電極50を擦過する間中、他方の清掃部材52bによってその変形を阻害されることなく好適範囲の押圧力を維持できるので、コロナ電極50の先端部を変形損傷させることなく充分に清掃できる。
清掃部材52a,52bのコロナ電極50に対する押圧力は、好ましくは10〜30gfである。押圧力が10gf未満では、コロナ電極50に付着するトナー、紙粉などの汚染物質を充分に除去できないおそれがある。一方30gfを超えると、コロナ電極50の突起部58の先端が変形破損するおそれがある。コロナ電極50に対する清掃部材52a,52bの押圧力は、たとえば、次のようにして調整できる。後述する移動用部材54の一方の端部に錘を吊り下げた状態で、清掃部材52aまたは52bに負荷される力の大きさを測定する。測定は、たとえば、清掃部材52aまたは52bにばね秤を接続して行われる。そして、清掃部材52aまたは52bに負荷される力が10〜30gfになる錘を選定し、コロナ電極50を清掃するに際して、予め選定した錘を移動用部材54の端部に吊り下げることによって、所定の押圧力で清掃できる。また、移動用部材54の端部に回転トルクを調整した電動機を接続し、所定の押圧力を負荷できるようにしてもよい。
保持部材53は柱状部と支持部とを有し、清掃部材52a,52bを支持する部材である。柱状部は鉛直方向に延び、その鉛直方向下端部は、シールドケース55の内側面61と支持部材51とによって形成される溝部62に摺動可能に挿入される。また、柱状部には、シールドケース55の長手方向に貫通する貫通孔60が形成される。支持部は、柱状部の鉛直方向上端部からコロナ電極50の鉛直方向上方に向けて水平方向に延びるように設けられる。支持部のシールドケース55の長手方向側の図示しない両側面には、清掃部材52a,52bが装着される。これによって、清掃部材52a,52bが支持される。
移動用部材54は、保持部材53の柱状部に形成される貫通孔60に挿通されてシールドケース55の長手方向に平行に延びるように設けられ、貫通孔60において保持部材53に固定される。さらに移動用部材54は、シールドケース55に形成される孔または隙間からシールドケース55の外方に延び、シールドケース55の外面または画像形成装置1の機体に設けられる滑車64a,64bを介してその端部が垂下される。なお、図5では、滑車64a,64bおよび移動用部材54の端部の図示を省略する。移動用部材54の端部は、画像形成装置1の機体外方にまで延長するのが好ましい。この構成によって、
移動用部材54の端部をシールドケース55の長手方向に牽引すれば、保持部材53が溝部62に対して摺動し、かつ溝部62に案内されてシールドケース55の長手方向に移動できる。すなわち、保持部材53に支持される清掃部材52a,52bをコロナ電極50に当接させて擦過させ得る。これによって、帯電装置24aを画像形成装置1から取外すことなくまたは画像形成装置1を開放することなく、コロナ電極50の清掃を実施できる。
帯電装置24aはコロナ電極50と清掃機構とを含む。コロナ電極50は、オゾン、空気中の水分に対して優れた耐久性を有し、画像形成装置1の耐用期間全般にわたって、感光体ドラム23表面を均一にかつ安定的に帯電させることができ、しかも製造コストも低い。清掃機構は、コロナ電極50表面を効率的に清浄化する。したがって、帯電装置24aにおいては、コロナ電極50による感光体ドラム23表面に対する放電が一層安定し、環境条件が多少変化しても、感光体ドラム23表面を所定の電位および極性に安定的に帯電させることが可能になる。