以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この場合、画像形成装置としてのカラーのプリンタにおいて、画像を形成する画像形成部に、媒体供給装置としての給紙装置によって媒体としての用紙を供給する場合について説明する。また、媒体として、用紙のほかに、OHPシート、複写紙、封筒等を使用することができる。
図2は本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの概略図、図3は本発明の第1の実施の形態における給紙装置の斜視図、図4は本発明の第1の実施の形態における給紙装置の断面図である。
図に示されるように、第1の媒体積載部としての給紙トレイ11は、プリンタの装置本体に対して脱着自在に配設され、給紙トレイ11内に用紙12が収容される。そして、前記給紙トレイ11内には、媒体積載板13が揺動軸sh1を揺動中心にして揺動自在(回動自在)に配設され、媒体積載板13上に用紙12の前半部が積載される。
また、給紙トレイ11には、用紙12の積載位置を規制する図示されないガイド部材が配設され、該ガイド部材によって、用紙12の繰出方向に対して直角の方向において、用紙12の側縁が案内されるとともに、規制され、用紙12の位置が設定される。
そして、給紙トレイ11の繰出し側、すなわち、前端部には、リフトアップレバー14が揺動軸sh2を揺動中心にして揺動自在に配設され、該揺動軸sh2は媒体積載用の駆動部としてのモータ15と係脱自在に連結される。
この場合、前記給紙トレイ11が装置本体に収容されると、リフトアップレバー14とモータ15とが係合させられる。そして、図示されない制御部の媒体持上処理手段が、媒体持上処理を行い、モータ15を駆動すると、前記リフトアップレバー14が回動させられ、リフトアップレバー14の先端が媒体積載板13の底壁に当たり、媒体積載板13の前端を持ち上げ、媒体積載板13上に積載された用紙12の前端が上昇させられる。前記用紙12の前端が所定の高さまで上昇すると、上昇検出部16が用紙12を検出し、検出信号を前記制御部に送る。したがって、前記媒体持上処理手段は、検出信号を受けると、モータ15を停止させ、リフトアップレバー14の回動を停止させる。
また、前記給紙トレイ11の前端部には用紙12を1枚ずつ繰り出す媒体繰出部20が配設され、該媒体繰出部20は、所定の高さまで上昇した用紙12の前端に圧接するように配設され、用紙12を繰り出すための繰出部材を構成する繰出用ローラとしてのピックアップローラ21、及び該ピックアップローラ21によって繰り出された用紙12を1枚ずつ分離させるために配設され、第1の弁別用のローラとしての、かつ、フィード機構としてのフィードローラ22、及び第2の弁別用のローラとしての、かつ、リタード機構としてのリタードローラ23から成り、前記フィードローラ22及びリタードローラ23によって弁別装置が構成される。
前記リタードローラ23は、用紙12を戻す方向にトルクを発生させ、用紙12が1枚だけ繰り出された場合、用紙12とリタードローラ23との間の摩擦(力)によって繰出方向に連れ回り、用紙12が2枚以上繰り出された場合、前記トルクによって、1枚だけが繰り出されるようにブレーキをかけ、用紙12をさばく、分離機能を有する。
また、媒体繰出部20には、前記上昇検出部16と隣接させて配設され、用紙12の有無を検出する媒体有無検出部24、及び上昇検出部16より所定の量だけ下方に配設され、用紙12の残量を検出する媒体残量検出部25が配設される。
前記ピックアップローラ21によって繰り出され、前記フィードローラ22及びリタードローラ23によって1枚ずつ分離させられた用紙12は、媒体搬送部30に送られる。そして、用紙12は、第1の媒体検出部としての媒体センサ31を通過し、該媒体センサ31によって前端が検出された後、ローラr1、r2から成る搬送ローラ対32に送られる。媒体センサ31は、前記用紙12の前端を検出すると、検出信号を前記制御部に送る。
該制御部の搬送処理手段は、搬送処理を行い、前記検出信号を読み込み、媒体センサ31における用紙12の通過タイミングに基づいて、第1の供給用の駆動部としての図示されないモータを駆動し、搬送ローラ対32を回転させ、用紙12を搬送する。なお、前記通過タイミングに対して、搬送ローラ対32の回転を開始するタイミングを遅らせることによって、用紙12は搬送ローラ対32のローラr1、r2間に形成される圧接部に押し込まれる。その結果、用紙12の斜行が矯正される。なお、前記給紙トレイ11、媒体繰出部20、媒体搬送部30等によって第1の給紙装置が構成される。
前記搬送ローラ対32から送り出された用紙12は、第2の媒体検出部としての媒体センサ33を通過し、媒体センサ33によって前端が検出された後、ローラr3、r4から成る搬送ローラ対34に送られる。前記媒体センサ33は、用紙12の前端を検出すると、検出信号を前記制御部に送る。
前記搬送処理手段は、前記検出信号を読み込み、媒体センサ33における用紙12の通過タイミングに基づいて、第2の供給用の駆動部としての図示されないモータを駆動し、搬送ローラ対34を回転させ、用紙12を停止させることなく搬送する。
続いて、搬送ローラ対34から送り出された用紙12は、第3の媒体検出部としての書込センサ35を通過し、書込センサ35によって前端が検出された後、画像形成部40に送られる。前記書込センサ35は、用紙12の前端を検出すると、検出信号を前記制御部に送る。
前記画像形成部40は、直列に並べられた四つの画像形成部41Y、41M、41C、41Bk、該画像形成部41Y、41M、41C、41Bkに対向させて配設され、静電潜像を形成する露光装置としてのLEDヘッド45Y、45M、45C、45Bk、及び前記画像形成部41Y、41M、41C、41Bkによって形成された現像剤像としてのトナー像をクーロン力によって用紙12に転写する転写部51を有する。
前記画像形成部41Yは、トナー像を担持する像担持体としての感光体(OPC)ドラム43Y、該感光体ドラム43Yの表面を帯電させる帯電装置としての帯電ローラ44Y、前記静電潜像にイエローのトナー像を摩擦帯電によって形成する現像剤担持体としての現像ローラ46Y、現像剤としてのイエローのトナーを供給するトナー供給部47Y、及び感光体ドラム43Y上に残留したトナーを除去するクリーニング装置48Yによって構成される。
また、前記画像形成部41Mは、トナー像を担持する像担持体としての感光体ドラム43M、該感光体ドラム43Mの表面を帯電させる帯電装置としての帯電ローラ44M、前記静電潜像にマゼンタのトナー像を摩擦帯電によって形成する現像剤担持体としての現像ローラ46M、現像剤としてのマゼンタのトナーを供給するトナー供給部47M、及び感光体ドラム43M上に残留したトナーを除去するクリーニング装置48Mによって構成される。
そして、前記画像形成部41Cは、トナー像を担持する像担持体としての感光体ドラム43C、該感光体ドラム43Cの表面を帯電させる帯電装置としての帯電ローラ44C、前記静電潜像にシアンのトナー像を摩擦帯電によって形成する現像剤担持体としての現像ローラ46C、現像剤としてのシアンのトナーを供給するトナー供給部47C、及び感光体ドラム43C上に残留したトナーを除去するクリーニング装置48Cによって構成される。
さらに、前記画像形成部41Bkは、トナー像を担持する像担持体としての感光体ドラム43Bk、該感光体ドラム43Bkの表面を帯電させる帯電装置としての帯電ローラ44Bk、前記静電潜像にブラックのトナー像を摩擦帯電によって形成する現像剤担持体としての現像ローラ46Bk、現像剤としてのブラックのトナーを供給するトナー供給部47Bk、及び感光体ドラム43Bk上に残留したトナーを除去するクリーニング装置48Bkによって構成される。
前記各LEDヘッド45Y、45M、45C、45Bkは、LEDアレイから成り、帯電ローラ44Y、44M、44C、44Bkによって帯電させられた感光体ドラム43Y、43M、43C、43Bkの表面を露光し、静電潜像を形成する。
また、転写部51は、搬送用の駆動部としての図示されない搬送用モータ、回転自在に配設され、前記搬送用モータを駆動することによって回転させられるドライブローラ53、該ドライブローラ53と所定の距離を置いて回転自在に配設されたテンションローラ54、前記ドライブローラ53とテンションローラ54との間に張設され、前記ドライブローラ53の回転に伴って走行させられ、用紙12を静電吸着して搬送する搬送部材としての転写ベルト52、前記画像形成部41Y、41M、41C、41Bkと対向させて、感光体ドラム43Y、43M、43C、43Bkに圧接させて配設され、トナー像を用紙12に転写する転写装置としての転写ローラ55Y、55M、55C、55Bk、前記転写ベルト52上に付着したトナーを掻き取って転写ベルト52をクリーニングするクリーニングブレード56、該クリーニングブレード56によって掻き取られたトナーを堆積させて収容する現像剤収容部としてのトナーボックス57等を備える。
前記画像形成部41Y、41M、41C、41Bkと転写ベルト52とは同期して作動させられ、各色のトナー像が転写ベルト52上の用紙12に順次重ねて転写され、カラーのトナー像が形成される。このようにして、カラーのトナー像が形成された用紙12は、定着部60に送り出される。
該定着部60は、表面を弾性体で形成された第1のローラとしてのアッパローラ61、及び第2のローラとしてのロワローラ62を備えたローラ対から成り、アッパローラ61内には第1の熱源となるハロゲンランプ63が、ロワローラ62内には第2の熱源となるハロゲンランプ64が配設される。前記定着部60によって、前記画像形成部40から送り出された用紙12上のカラーのトナー像に、熱及び圧力が加えられてカラーのトナー像が溶融させられ、用紙12に定着させられる。その後、定着部60から送り出された用紙12は、第4の媒体検出部としての排出センサ36を通過し、排出センサ36によって前端が検出された後、搬送路上のあらかじめ設定された複数の箇所に配設された排出ローラ対65によってスタッカ部66に排出される。なお、前記排出センサ36は、用紙12の前端を検出すると、検出信号を前記制御部に送る。
ところで、給紙トレイ11では対応することができないようなA3判等の媒体長の大きい長尺の用紙12、薄い用紙12、厚い用紙12、幅狭の用紙12等を給紙し、画像形成部40に供給するために、装置本体から延在させられる第2の媒体積載部としての給紙トレイ70及び媒体繰出部80によって構成される第2の給紙装置が配設される。
前記給紙トレイ70は、装置本体に対して矢印A方向に揺動自在に配設され、使用する場合に開かれ、使用しない場合に閉じられ(折り畳まれて収納され)、MPT(マルチパーパストレイ)又は手差しトレイとして機能する。
前記給紙トレイ70は、用紙12の側縁を規制する一対の側面ガイド部材75、揺動軸sh13を揺動中心にして揺動自在に配設され、用紙12を積載し、昇降させる媒体積載板71、長尺の用紙12を積載するための第1、第2の補助トレイ76、77等を備える。前記側面ガイド部材75によって、用紙12の繰出方向に対して直角の方向において、用紙12の側縁が案内されるとともに、規制され、用紙12の位置が設定される。なお、該第1、第2の補助トレイ76、77によって補助トレイ部が構成される。
そして、前記媒体積載板71の位置を制御するために、前記揺動軸sh13は媒体積載用の駆動部としての図示されないモータと選択的に連結される。
また、前記媒体繰出部80は、前記装置本体において、前記給紙トレイ70に対応させて用紙12に圧接させて配設され、用紙12を繰り出すための繰出部材を構成する繰出用ローラとしてのピックアップローラ81、及び該ピックアップローラ81によって繰り出された用紙12を1枚ずつ分離させる分離部材としての弁別装置を備える。該弁別装置は、ローラ対から成り、互いに当接させられた第1の弁別用のローラとしての、かつ、フィード機構としてのフィードローラ82、及び第2の弁別用のローラとしての、かつ、リタード機構としてのリタードローラ83を備える。
該リタードローラ83は、リタードローラ23と同様に、用紙12を戻す方向にトルクを発生させ、用紙12が1枚だけ繰り出された場合、用紙12とリタードローラ83との間の摩擦(力)によって繰出方向に連れ回り、用紙12が2枚以上繰り出された場合、前記トルクによって、1枚だけが繰り出されるようにブレーキをかけ、用紙12をさばく、分離機能を有する。
そのために、前記リタードローラ83の近傍又はリタードローラ83内には、図示されないトルクリミッタが配設され、該トルクリミッタ自身は、回転自在に保持されているだけで、能動的に回転させられない。そして、トルクリミッタを支持する支持軸は固定され、該支持軸とトルクリミッタとの間に、金属、プラスティック等の樹脂材によって形成されたコイルばねが収容される。前記トルクリミッタは、所定の角度まで回転し、コイルばねが支持軸に巻き付いた状態でコイルばねと支持軸とが相対的に滑動した場合に、所定のトルクを保持するような構成にされる。したがって、複数枚の用紙12が前記フィードローラ82とリタードローラ83との間に突入すると、前記トルクリミッタによってリタードローラ83のトルクが保持される。その結果、用紙12の重走が発生することがない。
なお、前記トルクリミッタは、支持軸との間にカップリングとして連結したり、リタードローラ83に内蔵したりすることができる。
また、前記媒体繰出部80には、用紙12の有無を検出する図示されない媒体有無検出部、ピックアップローラ81の位置及び用紙12の高さを検出する図示されない位置検出部が配設される。
前記ピックアップローラ81は、第1の支持部材としてのピックアップフレーム84によって回転自在に支持される。また、該ピックアップフレーム84は、フィードローラ82の回転中心82aを揺動中心として、第2の支持部材としてのフィーダーフレーム85に対して揺動自在に支持され、該フィーダーフレーム85は、シャフト86を揺動中心として装置本体を構成する筐体としてのメインフレーム87によって揺動自在に支持される。
そして、前記シャフト86と給紙トレイ70とを連結するためにリンク機構Lkが配設され、該リンク機構Lkは、連結部材としてのリンク部材88を備える。なお、前記ピックアップローラ81、ピックアップフレーム84及びフィーダーフレーム85によって繰出装置が構成される。
そして、前記媒体繰出部80において、用紙12は、ピックアップローラ81によって給紙トレイ70から繰り出され、前記フィードローラ82及びリタードローラ83によって1枚ずつ分離させられ、さばかれて、搬送路に向けて給紙される。
ところで、前記フィードローラ82とリタードローラ83との間に形成される圧接部に、2枚の用紙12が重なって突入した場合、用紙を分離させることができるが、3枚以上の用紙が重なって突入した場合、ピックアップローラ82及びリタードローラ83と接触する2枚の用紙12を分離させることはできるが、2枚の用紙12によって挟まれた用紙12が、用紙12間の摩擦によって繰り出されてしまい、重走が発生してしまう。
そこで、前記トルクリミッタによって保持されるリタードローラ83のトルクを大きくし、分離性能を向上させることが考えられるが、その場合、リタードローラ83のトルクを大きくなる分だけ、搬送系、駆動系等に加わる負荷が大きくなってしまう。
そこで、本実施の形態においては、用紙12に重走が発生するのを防止するために、ピックアップローラ81とフィードローラ82との間に重走規制部材を配設するようにしている。
図1は本発明の第1の実施の形態における媒体繰出部の第1の概念図、図5は本発明の第1の実施の形態における媒体繰出部の第2の概念図、図6は媒体繰出部の第1の参考図、図7は媒体繰出部の第2の参考図、図8は本発明の第1の実施の形態における媒体繰出部の第3の概念図、図9は本発明の第1の実施の形態における媒体繰出部の第4の概念図、図10は比較例における媒体繰出部の第1の概念図、図11は比較例における媒体繰出部の第2の概念図である。
図において、71は揺動軸sh13を揺動中心にして揺動自在に配設された媒体積載板、80は媒体繰出部、81はピックアップローラ、82はフィードローラ、83はリタードローラであり、前記フィードローラ82とリタードローラ83との間に圧接部qが形成される。
また、91は前記用紙12の搬送方向におけるピックアップローラ81とフィードローラ82との間に配設された重走規制部材であり、該重走規制部材91は、下端において曲折され、メインフレーム87(図3)に取り付けられた固定部101、該固定部101から水平に媒体積載板71側に延在させられる水平部102、該水平部102の先端から垂直方向(積層された用紙12の高さ方向)に前記圧接部qより低い位置まで延びる垂直部103、該垂直部103の先端からフィードローラ82よりわずかに手前に、斜め上方に向けて延び、繰り出された用紙12の前端をさばくとともに、案内する重走規制部としての傾斜部104、及び該傾斜部104の先端から斜め下方に向けて延び、用紙12の前端を圧接部qに向けて導入する導入部105を備える。
前記重走規制部材91の前記傾斜部104の先端によって表される頂点部t1は、前記ピックアップローラ81及びフィードローラ82の共通の接線より距離ε1、本実施の形態においては、2.1〔mm〕だけ上方に置かれる。また、前記重走規制部材91において、前記傾斜部104の水平方向に対する傾斜角度α1、α2が、
α1=45〔°〕
α2=60〔°〕
にされる。そして、前記媒体積載板71上に積載された用紙12がピックアップローラ81によって繰り出されて、前記頂点部t1に突入する際の角度、すなわち、突入角θ1、θ2は、媒体積載板71上に用紙12が最大の量(本実施の形態においては、250枚)だけ積層(フルセット)されているときに、
θ1=48.5〔°〕
θ2=63.5〔°〕
にされ、媒体積載板71上に用紙12が最小の量(1枚)だけ積層されているときに、
θ1=36.7〔°〕
θ2=51.7〔°〕
にされる。
なお、前記突入角θ1、θ2は、前記傾斜角度α1、α2によって、また、媒体積載板71上に積載された用紙12の量によって変化する。すなわち、傾斜角度α1、α2が大きいほど、突入角θ1、θ2は大きく、傾斜角度α1、α2が小さいほど、突入角θ1、θ2は小さくされる。また、用紙12の量が少なくなると、媒体積載板71上が回動し、媒体積載板71の角度が変化し、前記突入角θ1、θ2が小さくなる。したがって、前記突入角θ1、θ2は、
36.7〔°〕≦θ1≦48.5〔°〕
51.7〔°〕≦θ2≦63.5〔°〕
になる。
なお、前記重走規制部材91は、薄板である板金から成り、本実施の形態においては、板厚が0.2〔mm〕、摩擦係数が1.0未満のステンレスを使用した。
次に、前記第2の媒体供給部の動作について説明する。
前記媒体繰出部80において、用紙12は、ピックアップローラ81によって給紙トレイ70から圧接部qに向けて繰り出され、前記傾斜部104に突入させられ、該傾斜部104によって用紙12の前端がさばかれ、各用紙12の前端にそれぞれ独立に力が加わった状態で前記傾斜部104に沿うように塞き止められる。このとき、重走を発生させる原因となる用紙12間の密着性が緩和される。そして、前端がさばかれた用紙12は、重走規制部材91の頂点部t1を乗り越え、前記圧接部qに送られ、媒体搬送部30(図2)に送られる。
ところで、重走の発生を防止するのに最適な突入角を評価及び確認した結果、図10及び11に示されるように、傾斜角度α3を80〔°〕にし、媒体積載板71上に用紙12が最大の量だけ積層されているときに、突入角θ3が67.9〔°〕になるように設定し、媒体積載板71上に用紙12が最小の量だけ積層されているときに、突入角θ3を71.7〔°〕になるように設定した場合、用紙12は傾斜部104に突入した後、頂点部t1を乗り越えることができず、用紙12を搬送することができなかった。
これに対して、突入角θ3を前記突入角θ1、θ2の範囲に収まるように、すなわち、63.5〔°〕以下になるように設定すると、重走規制部材91が板金から成るので、用紙12の搬送に対して抵抗を小さくすることができ、用紙12は傾斜部104に突入した後、頂点部t1を乗り越えることができ、用紙12を安定させて搬送することができた。
なお、従来の媒体繰出部のように、ピックアップローラ81とフィードローラ82との間に重走規制部材が配設されない場合、媒体積載板71上に用紙12が最大の量だけ積層されているときに、図6に示されるように、用紙12はリタードローラ83に向けて突入するのに対し、媒体積載板71上に用紙12が最小の量だけ積層されているときに、図7に示されるように、用紙12はフィードローラ82に向けて突入する。
これに対して、本実施の形態においては、ピックアップローラ81とフィードローラ82との間に前記重走規制部材91が配設されるので、媒体積載板71上における用紙12の積載量に係わらず、用紙12を常に前記フィードローラ82に向けて突入させることができる。
また、繰り出された用紙12は、前記傾斜部104に突入させられ、該傾斜部104によって用紙12の前端がさばかれ、前記傾斜部104に沿うように塞き止められるので、重走を発生させる原因となる用紙12間の密着性を緩和することができる。したがって、重走を発生させることがなくなる。
また、重走が発生するのを防止するために、トルクリミッタによってリタードローラ83のトルクを大きくする必要がなくなる。したがって、搬送系、駆動系等に加わる負荷を小さくすることができる。
また、前記重走規制部材91によって、突入角θ1、θ2を一定の範囲に収めることができるので、用紙12を安定させて分離することができる。
なお、本実施の形態においては、フィードローラ82にリタードローラ83を圧接させたリタード分離方式の給紙装置について説明しているが、本発明を、フィードローラ82にコルク片、ゴム片等の摩擦片を接触させる舌片分離方式の給紙装置に適用することができる。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
図12は本発明の第2の実施の形態における媒体繰出部の断面図、図13は本発明の第2の実施の形態における媒体繰出部の概念図である。
図において、93は、繰出部材を構成する繰出用ローラとしてのピックアップローラ81と、第1の弁別用のローラとしての、かつ、フィード機構としてのフィードローラ82との間に配設されたステンレス等の板金から成る重走規制部材であり、該重走規制部材93は、下端において曲折され、メインフレーム87(図3)に取り付けられた固定部111、該固定部111から水平に媒体積載板71側に延在させられる水平部112、該水平部112の先端から垂直方向(積層された用紙12の高さ方向)に前記圧接部qより低い位置まで延びる垂直部113、垂直部113の先端からフィードローラ82よりわずかに手前に向けて斜め上方に向けて延びる支持部114、及び該支持部114の上面に貼付され、支持部114に沿って配設され、用紙12の前端をさばくとともに、案内する傾斜部としての、かつ、重走規制部としての摩擦片89を備える。なお、前記支持部114の始点に、摩擦片89におけるピックアップローラ81側のエッジを保持するための曲げ部115が上方に突出させて形成される。
前記重走規制部材93の前記摩擦片89の先端によって表される頂点部t2は、前記ピックアップローラ81及びフィードローラ82の共通の接線より距離ε2、本実施の形態においては、2.39〔mm〕だけ上方に置かれる。
前記摩擦片89としては、コルクのほかに、EPDM、発泡ウレタン等のゴム材料が使用され、厚さdが1.61〔mm〕にされ、摩擦係数が1.0以上にされる。また、傾斜角度α11は21.8〔°〕に、突入角は25〔°〕以下にされる。そして、摩擦片89とフィードローラ82との間の隙間ρ1が0.2〔mm〕にされる。
この場合、前記媒体繰出部80において、用紙12は、ピックアップローラ81によって給紙トレイ70から繰り出され、前記圧接部qに向けて送り出される。送り出された用紙12は、前記摩擦片89によって形成された傾斜面に突入させられるが、摩擦片89の摩擦係数が大きいので、前記傾斜面に沿うように塞き止めることができる。したがって、前記傾斜面によって用紙12の前端を十分にさばくことができ、繰り出された用紙12を一層安定させて分離させることができる。
なお、前記摩擦片89としてEPDMを使用し、光沢紙(MPT、コート紙、長尺紙)等のような平滑度の高い用紙12を搬送した場合、裏面が前記摩擦片89のエッジ部に摺動させられるが、擦れ音が発生することはない。
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図14は本発明の第3の実施の形態における媒体繰出部の第1の概念図、図15は本発明の第3の実施の形態における媒体繰出部の第2の概念図である。
この場合、93は、繰出部材を構成する繰出用ローラとしてのピックアップローラ81と、第1の弁別用のローラとしての、かつ、フィード機構としてのフィードローラ82との間に配設されたステンレス等の板金から成る重走規制部材であり、該重走規制部材93は、下端において曲折され、メインフレーム87(図3)に取り付けられた固定部121、該固定部121から水平に媒体積載板71側に延在させられる水平部122、該水平部122の先端から垂直方向(積層された用紙12の高さ方向)に前記圧接部qより低い位置まで延びる垂直部123、該垂直部123の先端からフィードローラ82よりわずかに手前に向けて斜め上方に向けて延びる支持部124、及び該支持部124の上面に貼付され、支持部124に沿って配設され、用紙12の前端をさばくとともに、案内する傾斜部としての、かつ、重走規制部としての摩擦片89を備える。
そして、前記重走規制部材93において、前記支持部124の水平方向に対する傾斜角度α21が、
α21=21.8〔°〕
にされる。前記突入角θ21は、媒体積載板71上に用紙12が最大の量だけ積層されているときに、
θ21=25.3〔°〕
にされ、媒体積載板71上に用紙12が最小の量だけ積層されているときに、
θ21=13.5〔°〕
にされる。
また、本実施の形態においては、摩擦片89とフィードローラ82との隙間ρ2が用紙12の厚さに対応させて設定される。
前記用紙12として、厚さが0.07〜0.25〔mm〕の普通紙、厚さが0.25〜0.4〔mm〕の厚紙、厚さが0.15〔mm〕程度であり、OHP用フィルム、光沢紙等のように平滑度の高い特殊紙を使用し、前記隙間ρ2を変更して分離性能を評価した結果を表1に示す。
この場合、○は普通紙、厚紙及び特殊紙において重走が発生しなかったことを、△は、普通紙では重走が発生しなかったが、厚紙及び特殊紙では重走が発生したことを、×は普通紙、厚紙及び特殊紙において重走が発生したことを表す。
例えば、用紙12として、媒体厚が0.07〜0.25〔mm〕の普通紙を使用する場合、前記摩擦片89とフィードローラ82とを接触させて隙間ρ2を零にすると、摩擦片89とフィードローラ82との間にフィード力が発生するので、摩擦片89が用紙12の前端をさばききれなかったり、用紙12間の摩擦が大きかったりする場合に、そのままフィードローラ82及びリタードローラ83によって複数の用紙12が繰り出されてしまうことがある。また、前記隙間ρ2を0.5〔mm〕以上にすると、摩擦片89が用紙12の前端をさばききれなかったり、用紙12が密着していたりする場合に、そのままフィードローラ82及びリタードローラ83によって複数の用紙12が繰り出されてしまう。
そこで、本実施の形態においては、普通紙を使用する場合、前記隙間ρ2が0.1〜0.4〔mm〕、好ましくは0.15〜0.3〔mm〕に設定される。したがって、前記摩擦片89によって前端がさばかれた用紙12は、1枚目の用紙12だけが、摩擦片89のエッジを乗り越え、前記隙間ρ2を通過して前記圧接部qに送られる。
前記重走規制部材93は、ステンレス等の板金から成り、板ばねとして機能する。したがって、媒体厚が0.3〔mm〕以上の用紙12が突入した場合でも、重走規制部材93が逃げることができるので、問題なく搬送することができる。さらに、媒体厚が0.15〔mm〕以上の用紙12に重走が発生した場合でも、前記重走規制部材93が撓むので、用紙12の搬送を規制する方向に力を付与することができる。
このように、前記フィードローラ82と摩擦片89との間に0.1〜0.4〔mm〕、好ましくは0.15〜0.3〔mm〕の隙間ρ2が形成されるので、ピックアップローラ81によって繰り出された用紙12を安定させて分離させることができる。
また、前記特殊紙を頻繁に扱う給紙トレイ70においては、操作者の多種多様な要求を満たすことができる。
ところで、前記各実施の形態においては、前記ピックアップローラ81、フィードローラ82及びリタードローラ83の各ローラにおいては、表面がゴムローラによって形成され、かつ、任意の摩擦係数を有するようになっている。したがって、給紙が行われる際に、用紙12から出る紙粉、炭酸カルシウム、スターチ等が前記各ローラの表面に付着し、摩擦係数が低下し、安定して用紙12を分離したり、給紙を行ったりすることができなくなってしまう。
そこで、安定して用紙12を分離したり、給紙を行ったりすることができるようにした本発明の第4の実施の形態について説明する。
図16は本発明の第4の実施の形態における媒体繰出部の斜視図である。
この場合、メインフレーム87の所定の箇所に、取付部としてのガイド部材90が、移動自在に、本実施の形態においては、ヒンジhgを揺動中心にして矢印E方向に揺動自在に配設され、前記ガイド部材90に重走規制部材93が取り付けられる。そして、ガイド部材90を、繰出部材を構成する繰出用ローラとしてのピックアップローラ81、及び第1の弁別用のローラとしての、かつ、フィード機構としてのフィードローラ82の軸方向に平行になるように閉位置に置くと、重走規制部材93をピックアップローラ81とフィードローラ82との間にセットすることができる。また、ガイド部材90をピックアップローラ81及びフィードローラ82の軸方向に対して直角になるように開位置に置くと、ピックアップローラ81、フィードローラ82、第2の弁別用のローラとしての、かつ、リタード機構としてのリタードローラ83、及び傾斜部としての、かつ、重走規制部としての摩擦片89を目視することができる。したがって、ピックアップローラ81、フィードローラ82、リタードローラ83及び摩擦片89の保守を行い、必要に応じて、清掃及び交換を行うことができる。
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
図17は本発明の第5の実施の形態における媒体繰出部の第1の概念図、図18は本発明の第5の実施の形態における媒体繰出部の第2の概念図、図19は本発明の第5の実施の形態における媒体繰出部の拡大図である。
この場合、第1の弁別用のローラとしての、かつ、フィード機構としてのフィードローラ82、及び第2の弁別用のローラとしての、かつ、リタード機構としてのリタードローラ83の表面には、ローレット加工が施され、重走規制部としての凹凸が形成される。そして、給紙トレイ70(図3)上に積載された用紙12は、繰出部材を構成する繰出用ローラとしてのピックアップローラ81によって給紙トレイ70から繰り出され、圧接部qに向けて送り出される。
このとき、媒体積載板71上に用紙12が最大の量だけ積層されていると、図17に示されるように、用紙12はリタードローラ83側に突入するのに対して、媒体積載板71上に用紙12が最小の量だけ積層されていると、図18に示されるように、用紙12はフィードローラ82側に突入する。すなわち、給紙トレイ70上に積載された用紙12の枚数によって突入角が異なる。
ところが、本実施の形態においては、複数の用紙12が前記フィードローラ82とリタードローラ83との間に突入すると、前記フィードローラ82及びリタードローラ83の凹凸に突き当たり、用紙12の前端がさばかれ、重走を引き起こす原因となる用紙12間の密着性が緩和される。
したがって、重走が発生するのを防止することができる。また、フィードローラ82及びリタードローラ83のゴムローラを変更するだけでよいので、媒体繰出部80のコストを低くすることができる。
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。