以下に、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明を実施した車両用操舵装置の全体構成を概略的に示していて、この車両用操舵装置は、左右の車輪Wを転舵操作するための操舵部材すなわちステアリングホイール10と、このステアリングホイール10に操舵反力を付与可能な反力アクチュエータ(電気モータ)20と、ステアリングホイール10の転舵操作に応じて左右の車輪Wを転舵可能な転舵アクチュエータ(電気モータ)30を備えるとともに、メカエンドロック機構40とメカバックアップ機構50を備えている。
また、図1に示した車両用操舵装置は、上記した反力アクチュエータ20、転舵アクチュエータ30、メカエンドロック機構40、メカバックアップ機構50の各作動を制御するとともに、上記した各構成機器を含む当該操舵システムの正常・異常(電気制御系の異常)を判定する電気制御装置ECUを備えている。
反力アクチュエータ20は、操舵角と車速に応じた操舵反力をステアリングホイール10に付与するものであり、反力アクチュエータ駆動回路C1を介して電気制御装置ECUに接続されていて、操舵システムの正常時には、操舵角センサS1によって検出されるステアリングホイール10の操舵角(転舵操作量)と、車速センサS2によって検出される車速に応じて、電気制御装置ECUにより作動を制御されて出力し、操舵システムの異常時には、電気制御装置ECUにより作動を制御されて出力しないように構成されている。なお、反力アクチュエータ20の出力は、ステアリングホイール10に操舵反力として伝達されるように構成されている。
転舵アクチュエータ30は、転舵アクチュエータ駆動回路C2を介して電気制御装置ECUに接続されていて、操舵システムの正常時には、操舵角センサS1によって検出されるステアリングホイール10の操舵角と、車速センサS2によって検出される車速と、絶対角センサS3によって検出される絶対角(転舵アクチュエータ30の作動状態を示す角度)に応じて、電気制御装置ECUにより作動を制御されて出力し、操舵システムの異常時には、電気制御装置ECUにより作動を制御されて出力しないように構成されている。なお、転舵アクチュエータ30の出力は、ピニオンギヤシャフト81、ラックバー82、ナックル83,83等からなるステアリングリンク機構80に伝達されて、左右の両車輪Wに伝達されるように構成されている。
メカエンドロック機構40は、操舵システムの正常時にステアリングホイール10の操作範囲を所定量(例えば、直進状態から±1.5〜3回転程度)に機械的に制限し、操舵システムの異常時にステアリングホイール10の操作範囲の機械的な制限を解除する機能(ステアリングホイール10を直進状態から何回転でも回転可能とする機能)を有している。
このメカエンドロック機構40は、図1および図2に示したように、反力アクチュエータ20とメカバックアップ機構50間に配置されてメカバックアップ機構50のバックアップハウジング59に組付けられたエンドロックハウジング41と、このエンドロックハウジング41内に設けたボールねじ42、ボールナット43、複数個の圧縮コイルばね44,45、複数個のストッパピン46,47と、エンドロックハウジング41外に設けたエンド切換機構48を備えている。
エンドロックハウジング41は、メカバックアップ機構50のバックアップハウジング59に対してボールねじ42の回転方向にて回転可能かつボールねじ42の軸方向にて移動不能に組付けられている。このエンドロックハウジング41は、エンド切換機構48によりバックアップハウジング59に対して固定・解除可能とされていて、固定時にはアップハウジング59に対して回転不能とされ、解除時にはアップハウジング59に対して回転可能とされる。
ボールねじ42は、エンドロックハウジング41に対して回転可能かつ軸方向にて移動不能に組付けられていて、反力アクチュエータ20を介してステアリングホイール10に常に動力伝達可能に連結されるとともに、図2および図5に示したように、メカバックアップ機構50における入力側遊星歯車機構51のキャリア51aに常に動力伝達可能に連結されている。
ボールナット43は、複数個のガイドシャフト49によりエンドロックハウジング41に対してボールねじ42の回転方向にて回転不能かつボールねじ42の軸方向にて移動可能に組付けられていて、エンドロックハウジング41がメカバックアップ機構50のバックアップハウジング59に対して回転不能であるときには、ボールねじ42が回転するとボールねじ42の軸方向に移動し、エンドロックハウジング41がメカバックアップ機構50のバックアップハウジング59に対して回転可能でボールねじ42とともに回転するときには、ボールねじ42が回転してもボールねじ42の軸方向に移動しないように構成されている。
入力側の各圧縮コイルばね44は、ガイドシャフト49の外周に組付けられた状態でエンドロックハウジング41の入力側端壁とボールナット43間に自由状態(圧縮されていない状態)で介装されていて、操舵システムの正常状態でステアリングホイール10が例えば時計方向に回転されてボールナット43がボールねじ42の入力側に移動するとき、エンドロックハウジング41の入力側端壁とボールナット43間で圧縮されて、ステアリングホイール10に作用するばね反力をステアリングホイール10の回転量に応じて増大させるように構成されている。
出力側の各圧縮コイルばね45は、ガイドシャフト49の外周に組付けられた状態でエンドロックハウジング41の出力側端壁とボールナット43間に自由状態で介装されていて、操舵システムの正常状態でステアリングホイール10が例えば反時計方向に回転されてボールナット43がボールねじ42の出力側に移動するとき、エンドロックハウジング41の出力側端壁とボールナット43間で圧縮されて、ステアリングホイール10に作用するばね反力をステアリングホイール10の回転量に応じて増大させるように構成されている。
入力側の各ストッパピン46は、ボールナット43に対向するようにしてエンドロックハウジング41の入力側端壁に固着されていて、ボールナット43との当接によってボールナット43の入力側への軸方向移動を規制するように構成されている。出力側のストッパピン47は、ボールナット43に対向するようにしてエンドロックハウジング41の出力側端壁に固着されていて、ボールナット43との当接によってボールナット43の出力側への軸方向移動を規制するように構成されている。
エンド切換機構48は、操舵システムの正常・異常に応じて切り換えられて、エンドロックハウジング41をバックアップハウジング59に対して固定・解除するためのものであり、エンドロックレバー48aを備えている。エンドロックレバー48aは、図2および図3に示したように、バックアップハウジング59に一体的に組付けた支持シャフト58に対して傾動可能に組付けられていて、メカバックアップ機構50における入力側のバックアップ切換機構53と機械的に連動可能に連結されている。
このエンドロックレバー48aは、その先端に形成したフック48a1にてエンドロックハウジング41の外周に周方向にて等間隔に形成した複数(8個)の凹部41aに係合・離脱可能であり、操舵システムの正常時に、メカバックアップ機構50における入力側のバックアップ切換機構53の作動に連動して、フック48a1がエンドロックハウジング41の凹部41aに係合することにより、エンドロックハウジング41をバックアップハウジング59に対して回転不能に固定する。
また、エンドロックレバー48aは、操舵システムの異常時に、メカバックアップ機構50における入力側のバックアップ切換機構53の作動に連動して、フック48a1がエンドロックハウジング41の凹部41aから離脱することにより、エンドロックハウジング41のバックアップハウジング59に対する固定を解除し、エンドロックハウジング41をバックアップハウジング59に対して回転可能とするように設定されている。なお、エンドロックレバー48aと支持シャフト58間には、フック48a1がエンドロックハウジング41の凹部41aから離脱する方向にエンドロックレバー48aを付勢するステアリングが介装されている。
かかる構成のメカエンドロック機構40では、操舵システムの正常時、エンドロックレバー48aがエンドロックハウジング41をバックアップハウジング59に対して回転不能に固定するため、メカエンドロック機構40のストッパ機能(ボールナット43の軸方向移動を所定量で規制する機能)が有効とされて、ステアリングホイール10の操作範囲が所定量に機械的に制限される。また、操舵システムの異常時、エンドロックレバー48aがエンドロックハウジング41のバックアップハウジング59に対する固定を解除してエンドロックハウジング41をバックアップハウジング59に対して回転可能とするため、メカエンドロック機構40のストッパ機能が無効とされて、上記したステアリングホイール10の操作範囲制限が解除される。
メカバックアップ機構50は、操舵システムの正常時にステアリングホイール10と車輪Wとの機械的な連結を解除(遮断)し、操舵システムの異常時にステアリングホイール10と車輪Wを機械的に連結するものであり、図1に示したように、バックアップ駆動回路C3を介して電気制御装置ECUに接続されていて、電気制御装置ECUにて判定される操舵システムの正常・異常に応じて、電気制御装置ECUにより作動を制御されるように構成されている。
このメカバックアップ機構50は、図1、図2および図5にて示したように、車体の一部(図示省略)に回転不能かつ軸方向に移動不能に組付けられるバックアップハウジング59と、ステアリングホイール10と車輪Wの機械的な動力伝達系に介装されて増速機構として機能する2個(複数)の遊星歯車機構51,52と、電気制御装置ECUにより作動を制御されてロック・アンロック可能でありロック状態では各遊星歯車機構51,52を動力伝達可能状態としアンロック状態では各遊星歯車機構51,52を動力伝達不能状態とするバックアップ切換機構53,54を備えている。
入力側の遊星歯車機構51は、キャリア51a、複数個のピニオンギヤ51b、リングギヤ51c、サンギヤ51d等を構成要素とし、キャリア51aを入力要素としサンギヤ51dを出力要素としリングギヤ51cを固定要素とするものであり、バックアップハウジング59内に組付けられている。なお、キャリア51aはメカエンドロック機構40のボールねじ42に動力伝達可能に連結されていて、ボールねじ42と反力アクチュエータ20を介してステアリングホイール10に常に動力伝達可能に連結されている。また、各ピニオンギヤ51bは、キャリア51aの支持軸に対して回転可能に組付けられていて、リングギヤ51cの内歯とサンギヤ51dの外歯に常に噛合している。
出力側の遊星歯車機構52は、キャリア52a、複数個のピニオンギヤ52b、リングギヤ52c、サンギヤ52d等を構成要素とし、キャリア52aを入力要素としサンギヤ52dを出力要素としリングギヤ52cを固定要素とするものであり、バックアップハウジング59内に組付けられている。なお、キャリア52aは入力側の遊星歯車機構51のサンギヤ51dに常に動力伝達可能に連結されている。また、各ピニオンギヤ52bは、キャリア52aの支持軸に対して回転可能に組付けられていて、リングギヤ52cの内歯とサンギヤ52dの外歯に常に噛合している。また、サンギヤ52dはバックアップケーブル60と増速機70と転舵アクチュエータ30を介してステアリングリンク機構80のピニオンギヤシャフト81に常に動力伝達可能に連結されている(図1参照)。
入力側のバックアップ切換機構53は、バックアップハウジング59に組付けられて入力側のリングギヤ51cに対して係合・離脱可能なロックレバー53aを有している。ロックレバー53aは、図2および図4に示したように、バックアップハウジング59に一体的に組付けた支持シャフト58に対して傾動可能に組付けられていて、その先端に形成したフック53a1にてリングギヤ51cの外周に周方向にて等間隔に形成した複数(8個)の凹部51c1に係合・離脱可能であり、支持シャフト58上に回転可能に組付けた連結スリーブCSを介してメカエンドロック機構40におけるエンド切換機構48のエンドロックレバー48aに一体的に連結されている。
このロックレバー53aは、操舵システムの正常時に電気制御装置ECUによって作動を制御される電磁ソレノイド53bにより入力側のリングギヤ51cの凹部51c1から離脱するアンロック位置に移動されて、入力側のリングギヤ51cをバックアップハウジング59に対して回転可能とし、入力側の遊星歯車機構51を動力伝達不能状態とする(図5の(a)参照)。また、ロックレバー53aは、操舵システムの異常時に電気制御装置ECUによって作動を制御される電磁ソレノイド53bにより入力側のリングギヤ51cの凹部51c1と係合するロック位置に移動されて、入力側のリングギヤ51cをバックアップハウジング59に対して回転不能とし、入力側の遊星歯車機構51を動力伝達可能状態とする(図5の(b)参照)。
出力側のバックアップ切換機構54は、バックアップハウジング59に組付けられて出力側のリングギヤ52cに対して係合・離脱可能なロックレバー54aを有している。ロックレバー54aは、図2に示したように、バックアップハウジング59に一体的に組付けた支持シャフト58に対して傾動可能に組付けられていて、その先端に形成したフック(図示省略)にてリングギヤ52cの外周に周方向にて等間隔に形成した複数(8個)の凹部52c1に係合・離脱可能である。
このロックレバー54aは、操舵システムの正常時に電気制御装置ECUによって作動を制御される電磁ソレノイド54bにより出力側のリングギヤ52cの凹部52c1から離脱するアンロック位置に移動されて、出力側のリングギヤ52cをバックアップハウジング59に対して回転可能とし、出力側の遊星歯車機構52を動力伝達不能状態とする(図5の(a)参照)。また、ロックレバー54aは、操舵システムの異常時に電気制御装置ECUによって作動を制御される電磁ソレノイド54bにより出力側のリングギヤ52cの凹部52c1と係合するロック位置に移動されて、出力側のリングギヤ52cをバックアップハウジング59に対して回転不能とし、出力側の遊星歯車機構52を動力伝達可能状態とする(図5の(b)参照)。
かかる構成のメカバックアップ機構50では、操舵システムの正常時、各ロックレバー53a,54aが各リングギヤ51c,52cをバックアップハウジング59に対して回転可能とするため、メカバックアップ機構50の動力伝達機能が無効とされていて、ステアリングホイール10からステアリングリンク機構80への機械的な動力伝達が不能である。また、操舵システムの異常時、各ロックレバー53a,54aが各リングギヤ51c,52cをバックアップハウジング59に対して回転不能とするため、メカバックアップ機構50の動力伝達機能が有効とされて、ステアリングホイール10からステアリングリンク機構80への機械的な動力伝達が可能となる。
上記のように構成したこの実施形態の車両用操舵装置においては、操舵システムの正常時、メカエンドロック機構40において、エンドロックレバー48aがエンドロックハウジング41をバックアップハウジング59に対して回転不能に固定するため、メカエンドロック機構40のストッパ機能が有効とされて、ステアリングホイール10の操作範囲が所定量に機械的に制限される。また、メカバックアップ機構50において、各ロックレバー53a,54aが各リングギヤ51c,52cをバックアップハウジング59に対して回転可能とするため、メカバックアップ機構50の動力伝達機能が無効とされていて、ステアリングホイール10からステアリングリンク機構80への機械的な動力伝達が不能である。
したがって、操舵システムの正常時には、ステアリングホイール10の操作範囲がメカエンドロック機構40により所定量に機械的に制限されるとともに、ステアリングホイール10からステアリングリンク機構80への機械的な動力伝達がメカバックアップ機構50によって不能とされた状態で、ステアリングホイール10の転舵操作に応じて車輪W,Wが転舵アクチュエータ30により転舵される。
また、操舵システムの異常時、メカエンドロック機構40において、エンドロックレバー48aがエンドロックハウジング41のバックアップハウジング59に対する固定を解除してエンドロックハウジング41をバックアップハウジング59に対して回転可能とするため、メカエンドロック機構40のストッパ機能が無効とされて、上記したステアリングホイール10の操作範囲制限が解除される。また、メカバックアップ機構50において、各ロックレバー53a,54aが各リングギヤ51c,52cをバックアップハウジング59に対して回転不能とするため、メカバックアップ機構50の動力伝達機能が有効とされて、ステアリングホイール10からステアリングリンク機構80への機械的な動力伝達が可能となる。また、このときには、反力アクチュエータ20と転舵アクチュエータ30が出力しないように制御される。
したがって、操舵システムの異常時には、メカエンドロック機構40による上記したステアリングホイール10の操作範囲制限が解除されるとともに、ステアリングホイール10からステアリングリンク機構80への機械的な動力伝達がメカバックアップ機構50によって可能とされた状態で、ステアリングホイール10の転舵操作に応じて車輪W,Wが転舵される。
ところで、この実施形態の車両用操舵装置においては、メカエンドロック機構40におけるエンド切換機構48のエンドロックレバー48aと、メカバックアップ機構50における入力側のバックアップ切換機構53のロックレバー53aが、連結スリーブCSを介して一体的に連結されていて、機械的に連動可能に連結されているため、各切換機構48,53の駆動装置すなわち電磁ソレノイド53bを共通のものとして共用することが可能である。このため、当該車両用操舵装置にて必要な駆動装置の個数を減ずることができて、当該車両用操舵装置の小型化を図るとともに、コストダウンを図ることが可能である。
図1〜図5に示した上記実施形態においては、操舵システムの正常・異常に応じて切り換えられるエンド切換機構を有していて操舵システムの正常時には操舵部材(ステアリングホイール10)の操作範囲を所定量に機械的に制限し操舵システムの異常時には前記操舵部材の操作範囲の機械的な制限を解除するメカエンドロック機構として、図2および図3に示したメカエンドロック機構40を採用して本発明を実施したが、これに代えて、図6〜図8に示したメカエンドロック機構140を採用して本発明を実施することも可能である。
図6〜図8に示したメカエンドロック機構140は、大径のベベルギヤ141、ロックプレート142、ロックピン143、ピン支持プレート144、エンド切換機構145を備えていて、エンド切換機構145はメカバックアップ機構150における入力側のバックアップ切換機構153と機械的に連動可能に連結されている。なお、メカエンドロック機構140とメカバックアップ機構150のハウジング190は、車体の一部(図示省略)に回転不能かつ軸方向に移動不能に組付けられるものであり、一体化されていて共用されている。
大径のベベルギヤ141は、ハウジング190に回転可能かつその軸方向に移動不能に組付けられていて、ステアリングホイール110と一体的に回転するメインシャフト111に一体的に組付けた小径のベベルギヤ112と常に噛合するとともに、反力アクチュエータ(電気モータ)120の回転軸121に一体的に組付けた小径のベベルギヤ122と常に噛合している。なお、メインシャフト111は、ハウジング190に回転可能かつその軸方向に移動不能に組付けられている。
ロックプレート142は、ベベルギヤ141の背面に一体的に固着されていて、ベベルギヤ141と一体的に回転可能であり、ベベルギヤ141の外径より大径でC字状の溝142aが形成されている。溝142aは、ロックプレート142を貫通するようにして形成されていて、ロック位置にあるロックピン143に対して摺動可能に係合している。
ロックピン143は、ピン支持プレート144によって支持されていて、ロックプレート142の溝142aに対して嵌合離脱可能であり、溝142aに嵌合しているロック位置では、溝142aの各端部にてロックプレート142と係合(当接)してベベルギヤ141の回転、すなわち、ステアリングホイール110の回転を機械的に制限し、溝142aから離脱しているアンロック位置では、ベベルギヤ141の回転を許容して、ステアリングホイール110の上記した制限を解除するように構成されている。
ピン支持プレート144は、ロックピン143の一端に固着されていて、ハウジング190に対してベベルギヤ141の軸方向にて移動可能に組付けられている。なお、ピン支持プレート144は、ハウジング190間に介装したスプリング(図示省略)によって、ロックピン143がロックプレート142の溝142aから離脱する方向(図8の下方)に付勢されている。
エンド切換機構145は、操舵システムの正常・異常に応じて切り換えられて、ピン支持プレート144をベベルギヤ141とロックプレート142に対してアップ・ダウンするためのものであり、エンドロックレバー145aを備えている。エンドロックレバー145aは、図7および図8に示したように、ハウジング190に一体的に組付けた支持シャフト191に傾動可能に組付けられていて、メカバックアップ機構150における入力側のバックアップ切換機構153と機械的に連動可能に連結されている。
このエンドロックレバー145aは、操舵システムの正常時に、メカバックアップ機構150における入力側のバックアップ切換機構153の作動に連動して、ピン支持プレート144をベベルギヤ141とロックプレート142に対してアップさせて、ロックピン143をロックプレート142の溝142aに嵌合させ、操舵システムの異常時に、メカバックアップ機構150における入力側のバックアップ切換機構153の作動に連動して、ピン支持プレート144をベベルギヤ141とロックプレート142に対してダウンさせて、ロックピン143をロックプレート142の溝142aから離脱させるように設定されている。なお、入力側のバックアップ切換機構153は、エンドロックレバー145aに連結スリーブCSを介して一体的に連結されたロックレバー153aと、このロックレバー153aを支持シャフト191上で傾動させる電磁ソレノイド153bを備えている。
かかる構成のメカエンドロック機構140では、操舵システムの正常時、エンドロックレバー145aがピン支持プレート144をベベルギヤ141とロックプレート142に対してアップさせてロックピン143をロックプレート142の溝142aに嵌合させるため、メカエンドロック機構140のストッパ機能(大径のベベルギヤ141の回転を所定量で規制する機能)が有効とされて、ステアリングホイール110の操作範囲が所定量に機械的に制限される。
また、メカエンドロック機構140では、操舵システムの異常時、エンドロックレバー145aがピン支持プレート144をベベルギヤ141とロックプレート142に対してダウンさせてロックピン143をロックプレート142の溝142aから離脱させるため、メカエンドロック機構140のストッパ機能が無効とされて、上記したステアリングホイール110の操作範囲制限が解除される。
なお、図6〜図8に示した実施形態の反力アクチュエータ(電気モータ)120は、図1〜図5に示した上記実施形態の反力アクチュエータ(電気モータ)20と実質的に同様に機能するものであり、電気制御装置ECUにより作動を制御されて、ベベルギヤ122、141、112等を介してステアリングホイール110に操舵反力を付与することが可能である。
また、図6〜図8に示した実施形態のメカバックアップ機構150は、図1〜図5に示した上記実施形態のメカバックアップ機構50と実質的に同様に機能するものであり、ステアリングホイール110と車輪の機械的な動力伝達系に介装されて増速機構として機能する2個(複数)の遊星歯車機構151,152と、電気制御装置ECUにより作動を制御されてロック・アンロック可能でありロック状態では各遊星歯車機構151,152を動力伝達可能状態としアンロック状態では各遊星歯車機構151,152を動力伝達不能状態とするバックアップ切換機構153,154を備えている。なお、遊星歯車機構151,152とバックアップ切換機構153,154の構成は、上記実施形態の遊星歯車機構51,52とバックアップ切換機構53,54の構成と実質的に同じであるため、説明は省略する。
上記した各実施形態においては、メカエンドロック機構(40,140)のエンド切換機構(48,145)とメカバックアップ機構(50,150)における入力側のバックアップ切換機構(53,153)が機械的に連動可能に連結されていて、入力側のバックアップ切換機構(53,153)と出力側のバックアップ切換機構(54,154)が別個に構成されている実施形態について説明したが、入力側のバックアップ切換機構(53,153)と出力側のバックアップ切換機構(54,154)の駆動装置すなわち電磁ソレノイドを共通のものとして共用する構成として本発明を実施することも可能である。
また、上記した各実施形態においては、操舵システムの正常・異常に応じて切り換えられるバックアップ切換機構を有していて操舵システムの正常時にはステアリングホイール(操舵部材)と車輪との機械的な連結を解除し操舵システムの異常時にはステアリングホイール(操舵部材)と車輪を機械的に連結するメカバックアップ機構として、2個の遊星歯車機構を備えたメカバックアップ機構(50,150)を採用して本発明を実施したが、これに代えて、メカバックアップ機構(50,150)とは異なる構成のメカバックアップ機構(例えば、特開2005−186861号公報、特開2005−132327号公報等に記載されているメカバックアップ機構)を採用して本発明を実施することも可能である。
10…ステアリングホイール(操舵部材)、20…反力アクチュエータ、30…転舵アクチュエータ、40…メカエンドロック機構、48…エンド切換機構、48a…エンドロックレバー、CS…連結スリーブ、50…メカバックアップ機構、51…入力側の遊星歯車機構、52…出力側の遊星歯車機構、53…入力側のバックアップ切換機構、53a…ロックレバー、53b…電磁ソレノイド、54…出力側のバックアップ切換機構、54a…ロックレバー、54b…電磁ソレノイド、60…バックアップケーブル、70…増速機、80…ステアリングリンク機構、S1…操舵角センサ、S2…車速センサ、S3…絶対角センサ、W…車輪、C1…反力アクチュエータ駆動回路、C2…転舵アクチュエータ駆動回路、C3…バックアップ駆動回路、ECU…電気制御装置