JP4020421B2 - 車両用操舵装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両用操舵装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両、主に自動車の操舵装置では、操舵ハンドルの回転操作によりステアリング軸が回転し、これに一定の固定ギヤ比で連結された操舵機構を介して操舵輪の方向が変えられる。その操舵機構には油圧式又は電動式等の操舵力助勢装置、いわゆるパーワーステアリング装置が付加されることが多く、これにより操舵ハンドルの回転操作に要する力は小さくて済む。
【0003】
ところで、車庫入れ、縦列駐車、幅寄せ等の操舵ハンドルの大きな操作が必要なときには、ハンドルの操作力が小さくて済む(軽く回せる)ことに加え、少ないハンドル操作量で操舵輪の方向をより大きく変えられれば、取り回しが楽になるから都合がよい。これを実現するために、操舵ハンドルと転舵輪(車輪操舵軸)とを連結する操舵伝達系の途中に、伝達比を可変にする伝達比可変ユニット(ギヤユニット等)を介在させた伝達比可変型の操舵装置が提案されている。
【0004】
より詳しくは、車両の操舵装置、特に自動車用の操舵装置において、近年、その更なる高機能化の一端として、操舵ハンドルの操作角(ハンドル操作角)と車輪操舵角とを1:1比率に固定せず、ハンドル操作角の車輪操舵角への変換比(舵角変換比)を車両の運転状態に応じて可変とした、いわゆる可変舵角変換比機構を搭載したものが開発されている。車両の運転状態としては、例えば、車両速度(車速)を例示でき、高速運転時においては舵角変換比を小さくすることにより、ハンドル操作角の増加に対して操舵角が急激に大きくならないようにすれば、高速走行の安定化を図ることができる。他方、低速走行時には、逆に舵角変換比を大きくすることで、一杯まで切るのに必要なハンドルの回転数を減少させることができ、車庫入れや縦列駐車あるいは幅寄せなど、操舵角の大きい運転操作を非常に簡便に行なうことができる。
【0005】
舵角変換比を可変化する機構としては、例えば特開平11−334604号公報に開示されているように、ハンドル軸と車輪操舵軸とを、ギア比が可変な歯車式伝達部にて直結したタイプのものがあるが、この構成は、歯車式伝達部のギア比変更機構が複雑になる欠点がある。そこで、ハンドル軸と車輪操舵軸とを分離し、モータ等のアクチュエータにより車輪操舵軸を回転駆動するタイプのものが、例えば特開平11−334628号公報等に提案されている。具体的には、角度検出部が検出するハンドル操作角と車両運転状態とに応じて定まる舵角変換比とに基づいて、コンピュータ処理により最終的に必要な車輪操舵角を演算し、その演算された車輪操舵角が得られるように、ハンドル軸から機械的に切り離された車輪操舵軸をアクチュエータ(モータ)により回転駆動する。
【0006】
ところで、このようなハンドル軸と車輪操舵軸とが切り離され、中間に伝達比可変モータ等のアクチュエータが介在する操舵装置では、CPUの暴走等により制御部に異常が発生した場合、ハンドル軸と車輪操舵軸が相対的にどの位置で止まったか分からなくなることがある。この場合は、修理工場等において車両の操舵輪を真っ直ぐにして、給電ケーブルの巻き締め保持状態を中立位置に合わせ、その後ハンドルを中立に合わせて、当初の正常な相対位置関係を復元する作業を手作業で行う必要があった。
【0007】
また、車両の組立工程において、上述の伝達比可変ユニットが組み込まれた操舵装置(操舵アッセンブリ)を車体に搭載する場合、予めその操舵アッセンブリの納入時には、給電ケーブルの巻き締め保持の中立状態で、その給電ケーブルの回転が固定ピンで阻止(固定)され、そのステアリング中立状態で操舵アッセンブリを車体に搭載し(伝達比可変のアクチュエータをステアリングシャフト(ハンドル軸)に締結、ハーネス結合・固定等)、その後、固定ピンを除去して搭載が完了するようになっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように制御部の異常等でハンドルの中立位置がわからなくなった場合に、作業者が給電ケーブルの巻き締め保持状態を中立位置に合わせ、さらにハンドルを中立に合わせて、当初の正常な中立状態に回復する作業は、面倒であって時間もかかる。
また、工場での操舵アッセンブリの搭載時、固定ピンによりステアリング中立状態を維持し、搭載後そのピンを除去する方式では、固定ピンが何らかの理由で外れると、ステアリング中立状態が分からなくなり、搭載(組み付け)不具合を生じる。また、固定ピンは組み付けにのみ必要で、部品点数を増加させる結果となる。ディーラ等の工場外の施設で操舵アッセンブリの交換や再組み付け時に、上記固定ピンはないこともあり、中立出しが容易でない問題がある。
【0009】
本発明は、伝達比可変アクチュエータと操舵ハンドルの相対関係における中立位置等の基準位置を容易に付与することができる車両用操舵装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
本発明は、操舵ハンドルから車輪操舵軸にいたる操舵伝達系の途中に伝達比を可変にするモータで駆動される伝達比可変ユニットを介在させ、前記伝達比を車両の状況に応じて制御する伝達比制御部を有する車両用操舵装置において、
前記操舵ハンドルと一体的に回転するハンドル軸に前記モータが固定され、そのモータに電力を供給する給電ケーブルが自身の固定部から延びる自由端側においてそのハンドル軸と一体的に形成されたケーブルホルダ部に渦巻き状にかつ弛緩方向の弾性力を生じるように巻かれるとともに、前記操舵ハンドルの回転に応じて巻き締められて外径を減少し、又は弛緩されて外径を増大するように保持されるケーブル保持装置を備え、さらに、
前記給電ケーブルの許容保持範囲で前記モータを作動させて前記操舵ハンドルを回転させた際に、前記給電ケーブルの巻き締め端又は弛緩端におけるモータトルクの増大を検出するモータトルク検出装置と、
そのモータトルクが所定の増大値を示すことにより前記給電ケーブルの巻き締め端又は弛緩端を探査するエンド探査装置と、
そのエンド探査に基づいて前記モータを停止し、その時のハンドル位置を基準位置としての操舵限度位置として認識する基準位置認識装置と、
を含むことを特徴とする。
【0011】
ここで、上述のケーブル保持装置、モータトルク検出装置及びそのモータトルクが所定の増大値を示すことにより前記給電ケーブルの巻き締め端又は弛緩端を探査するエンド探査装置とに加え、その給電ケーブルの巻き締め端又は弛緩端から、前記操舵ハンドルを中立位置側へ戻すように前記モータを所定量回転させるハンドル中立認識装置と、を含むようにすることができる。
【0012】
このようにすれば、例えば、伝達比可変ユニットのモータを巻き締め方向に回転させて所定のモータトルクを検出した後(巻き締め端又は弛緩端のエンド検出)、そのモータを反対方向に予め定められた量だけ回転させてから停止させることにより、装置側が自動的に中立点を見つけるので、制御部に異常が生じた後におけるハンドル中立位置の設定・回復を容易かつ迅速に行うことができ、作業の効率化が図られ、またメンテナンス性が向上する。また、工場における操舵アッセンブリの車体への搭載においても、上記のようにして中立点を簡単に付与することができ、固定ピンを省略することができるから、固定ピンの外れ等による不具合が回避され、また固定ピン廃止により部品点数が削減され、さらにディーラーの工場から離れた修理工場の等での交換や再組み付け時に、中立出しが簡単に行い得る。
なお、操舵輪を真っ直ぐにした状態で、伝達比変更アクチュエータのモータが給電ケーブルの巻き締め端又は弛緩端までハンドル軸(ステアリングホイール)を回転させる際、ハンドルの許容回転量は最大例えば5回転くらいであるとすれば、その場合は上記モータトルクが生じるエンドを検出してからモータを約2.5回転逆転させて中立位置を見出すこととなる。
ただし、この発明は中立点の探査に限られない。例えば、操舵輪を一杯に切った状態で、その操舵方向に対応する側へモータを回転させて、上記巻き締め端又は弛緩端で回転エンドを検出すれば、その位置が操舵ハンドルと操舵軸とが相対的に対応する基準位置(操舵限度位置又はモータ回転限度位置)となるから、回転エンドを検出してから常に中立側へ戻し回転(逆転)させるわけではない。この意味で、上記モータトルクによりモータ回転限度を検出してからの全回転許容範囲の約半分の戻し回転は不可欠ではない。中立位置を見つける場合に特有の要件である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明が適用される車両用操舵装置(操舵制御システム)の、全体構成の一例を模式的に示したものである(なお、本実施形態において「車両」は自動車とするが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではない)。該車両用操舵制御システム1は、操舵用ハンドル2に直結されたハンドル軸3と、車輪操舵軸8とが機械的に分離された構成を有する。車輪操舵軸8はアクチュエータとしてのモータ6により回転駆動される。車輪操舵軸8の先端はステアリングギアボックス9内に延び、該車輪操舵軸8とともに回転するピニオン10がラックバー11を軸線方向に往復動させることにより、車輪13,13の転舵角が変化する。なお、本実施形態の車両用操舵制御システム1においては、ラックバー11の往復動が、周知の油圧式、電動式あるいは電動油圧式のパワーアシスト機構12により駆動補助されるパワーステアリングが採用されている。
【0014】
ハンドル軸角度位置φ(以下、ハンドル軸角度位置φ)は、ロータリエンコーダ等の周知の角度検出部からなるハンドル軸角度検出部101により検出される。他方、車輪操舵軸8の角度位置θは、同じくロータリエンコーダ等の角度検出部からなる操舵軸角度検出部103により検出される。また、本実施形態においては、自動車の運転状態を検出する運転状態検出部として、車速Vを検出する車速検出部(車速センサ)102が設けられている。車速検出部102は、例えば車輪13の回転を検出する回転検出部(例えばロータリエンコーダやタコジェネレータ)で構成される。そして、操舵制御部100が、検出されたハンドル軸角度位置φと車速Vとに基づいて、車輪操舵軸8の目標角度位置θ’(以下、目標操舵角度位置θ’という)を決定し、該車輪操舵軸8の角度位置θが目標操舵角度位置θ’に近づくように、モータドライバ18を介してモータ6の動作を制御する。
【0015】
なお、ハンドル軸3と車輪操舵軸8との間には、両者を一体回転可能にロック結合したロック状態と、該ロック結合を解除したアンロック状態との間で切り替え可能なロック機構19が設けられている。ロック状態では、ハンドル軸3の回転角が変換されることなく(つまり、舵角変換比が1:1)車輪操舵軸8に伝達され、マニュアルステアリングが可能となる。該ロック機構19のロック状態への切り替えは、異常発生時などにおいて操舵制御部100からの指令によりなされる。
【0016】
図2は、モータ6による車輪操舵軸8の駆動部ユニットの構成例を、自動車への取付状態にて示すものである。該駆動部ユニット14において、ハンドル2(図1)の操作によりハンドル軸3を回転させると、モータケース33がその内側に組み付けられたモータ6とともに一体的に回転するようになっている。本実施形態においては、ハンドル軸3は、ユニバーサルジョイント319を介して入力軸20に連結され、該入力軸20がボルト21,21を介して第一カップリング部材22に結合されている。この第一カップリング部材22にはピン31が一体化されている。他方、ピン31は、第二カップリング部材32の一方の板面中央から後方に延びるスリーブ32a内に係合してはめ込まれている。他方、筒状のモータケース33は、第二カップリング部材32の他方の板面側に一体化されている。なお、符号44はゴムあるいは樹脂にて構成されたカバーであり、ハンドル軸3と一体的に回転する。また、符号46は、コックピットパネル48に一体化された駆動部ユニット14を収容するためのケースであり、符号45は、カバー44とケース46との間をシールするシールリングである。
【0017】
モータケース33の内側には、コイル35,35を含むモータ6のステータ部分23が一体的に組み付けられている。該ステータ部分23の内側には、モータ出力軸36がベアリング41を介して回転可能に組み付けられている。また、モータ出力軸36の外周面には永久磁石からなる電機子34が一体化されており、この電機子34を挟む形でコイル35,35が配置されている。なお、コイル35,35からは、モータケース33の後端面に連なるように給電端子50が取り出され、該給電端子50において給電ケーブル42によりコイル35,35に給電がなされる。
【0018】
後述の通り、本実施形態においてモータ6はブラシレスモータであり、給電ケーブル42は、該ブラシレスモータの各相のコイル35,35に個別に給電する素線を集合させた帯状の集合ケーブルとして構成されている。そして、モータケース33の後端側に隣接する形でハブ43aを有するケーブルケース43が設けられ、その中に給電ケーブル42が、ハブ43aに対してゼンマイ状に巻かれた形で収容されている。給電ケーブル42の、給電端子50に接続されているのと反対の端部は、ケーブルケース43のハブ43aに固定されている。そして、ハンドル軸3がモータケース33ひいては給電端子50とともに正方向又は逆方向に回転すると、ケーブルケース43内の給電ケーブル42は、ハブ43aへの巻き付き又は繰り出しを生じさせることにより、上記モータケース33の回転を吸収する役割を果たす。この点については後に更に詳しく説明する。
【0019】
モータ出力軸36の回転は、減速機構7を介して所定比率(例えば1/50)に減速された上で車輪操舵軸8に伝達される。本実施形態において減速機構7は、周知のハーモニックドライブ減速機にて構成してある。すなわち、モータ出力軸36には、楕円型のインナーレース付ベアリング37が一体化され、その外側に変形可能な薄肉の外歯車38がはめ込まれている。そして、この外歯車38の外側に、カップリング40を介して車輪操舵軸8が一体化された内歯車39,139が噛み合っている。モータ出力軸36が回転すると、外歯車38と内歯車39,139との歯数差をn、内歯車39の歯数をNとして、n/Nに減速された形で車輪操舵軸8にその回転が伝達される。内歯車39,139は、同軸的に配置された内歯車39と内歯車139とからなり、内歯車39がモータケース33に固定されて該モータケース33と一体回転する一方、内歯車139はモータケース33に非固定とされ、該モータケース33に対して相対回転可能とされている。また、内歯車39,139は、本実施形態においては、コンパクト化を測るために、ハンドル軸3の入力軸20、モータ出力軸36及び車輪操舵軸8が同軸的に配置されている。
【0020】
次に、ロック機構19は、ハンドル軸3に対して相対回転不能なロックベース部(本実施形態においてはモータケース33)側に固定されたロック部材51と、車輪操舵軸8に対して相対回転不能なロック受けベース部(本実施形態においては、モータ出力軸36側)に設けられたロック受け部材52とを有する。図3に示すように、ロック部材51は、ロック受け部材52に形成されたロック受け部53に係合するロック位置と、該ロック受け部53から退避したアンロック位置との間で進退可能に設けられている。本実施形態においては、車輪操舵軸8と一体的に回転するロック受け部材52の周方向にロック受け部53が所定の間隔で複数形成され、ロック部材51の先端に設けられたロック部51aが、車輪操舵軸8の回転角位相に応じて、それら複数のロック受け部53の任意の1つのものに選択的に係合するようになっている。ハンドル軸3はモータケース33に対し(本実施形態では、カップリング22及びピンにより)相対回転不能に結合されている。ロック部材51とロック受け部材52とが係合してロック状態になると、モータ出力軸36はモータケース33に対して相対回転不能となる。そして、減速機構7の内歯車39,139のうち、内歯車39がモータケース33に固定されているから、内歯車39、外歯車38及び内歯車139の順でハンドル軸3の回転が車輪操舵軸8に直接伝達されることとなる。
【0021】
なお、本実施形態においては、ロック受け部材52は、モータ出力軸36の一端の外周面に取り付けられ、各ロック受け部53は、該ロック受け部材52の外周面から半径方向に切れ込む凹状に形成されている。また、図2に示すように、ロック部材51は、モータケース33に設けられた回転ベース300に対し、車輪操舵軸8とほぼ平行な軸線周りに回転可能に取り付けられ、その後端部55aが結合されている。また、ソレノイド55の付勢が解除されたときに、ロック部材51を元の位置に弾性復帰させる弾性部材54が設けられている。ソレノイド55の付勢及び付勢解除の動作により、ソレノイド55aの先端に設けられた凸部55aとロック部材51の一端部51bに形成された溝部を介してロック部材51の先端に形成されたロック部51aが、前記したロック/アンロックのためにロック受け部材52に対し接近/離間する。
【0022】
図4は、操舵制御部100の電気的構成の一例を示すブロック図である。操舵制御部100の要部をなすのは2つのマイコン110及び120である。主マイコン110は、主CPU111、制御プログラムを格納したROM112、CPU111のワークエリアとなる主CPU側RAM113及び入出力インターフェース114を有する。また、副マイコン120は、副CPU121、制御プログラムを格納したROM122、副CPU121のワークエリアとなる副CPU側RAM123及び入出力インターフェース124を有する。車輪操舵軸8を駆動するモータ6(アクチュエータ)の動作制御を直接行なうのは主マイコン110であり、副マイコン120は、必要なパラメータ演算等、モータ6の動作制御に必要なデータ処理を主マイコン110と並行して行なうとともに、そのデータ処理結果を主マイコン110との間で通信することにより、主マイコン110の動作が正常であるかどうかを監視・確認し、必要に応じて情報の補完を行なう補助制御部としての機能を果たす。本実施形態において主マイコン110と副マイコン120とのデータ通信は、入出力インターフェース114,124間の通信によりなされる。なお、両マイコン110及び120は、自動車の運転終了後(すなわち、イグニッションOFF後)においても、図示しない安定化電源からの電源電圧Vcc(例えば+5V)の供給を受け、RAM113,123あるいはEEPROM(後述)115の記憶内容が保持されるようになっている。
【0023】
ハンドル軸角度検出部101、車速検出部102及び操舵軸角度検出部103の各出力は、主マイコン110及び副マイコン120の入出力インターフェース114,124にそれぞれ分配入力される。本実施形態では、いずれの検出部もロータリエンコーダで構成され、そのエンコーダからの計数信号が図示しないシュミットトリガ部を経て入出力インターフェース114,124のデジタルデータポートに直接入力されている。また、主マイコン110の入出力インターフェース114には、前述のロック機構19の駆動部をなすソレノイド55が、ソレノイドドライバ56を介して接続されている。なお、マイコンは主マイコン110のみとし、副マイコン120を省略することもできる。
【0024】
モータ6はブラシレスモータ、本実施形態では3相ブラシレスモータにて構成され、PWM制御により回転速度が調整される。また、モータドライバ18には、モータ6の電源となる車載バッテリー57が接続されている。モータドライバ18が受電するバッテリー57の電圧(電源電圧)Vsは、自動車の各所に分散した負荷の状態や、オルターネータの発電状態により随時変化する(例えば9〜14V)。本実施形態においては、このような変動するバッテリー電圧Vsを、安定化電源回路を介さず、モータ電源電圧として直接使用する。操舵制御部100は、このように相当幅にて変動する電源電圧Vsの使用を前提として、モータ6の制御を行なうので、電源電圧Vsの測定部が設けられている。本実施形態では、モータ6への通電経路(ドライバ18の直前)から電圧測定用の分岐経路が引き出され、そこに設けられた分圧抵抗60,60を経て電圧測定信号を取り出している。該電圧測定信号はコンデンサ61により平滑化された後、電圧フォロワ62を経て入出力インターフェース114,124のA/D変換機能付入力ポート(以下、A/Dポートという)に入力される。
【0025】
また、過電流発生の有無など、モータ6の通電状態を監視するために、モータ6への通電経路上に電流検出部が設けられている。具体的には、経路上に設けられたシャント抵抗(電流検出抵抗)58の両端電圧差を電流センサ70により測定し、該両端電圧差に基づく電流Isの測定信号を入出力インターフェース114,124のA/Dポートに入力するようにしている。この電流センサ70は、モータ6のトルクを検出するモータトルク検出装置としても機能し、モータの負荷(トルク)が高くなるとモータ電流が大きくなるので、結果としてモータトルクの増大値(ピーク等)を検出することができる。なお、シャント抵抗以外にも、ホール素子や電流検出コイルなど、電磁的な原理に基づいて電流検出するプローブを用いてもよい。
【0026】
図4に戻り、両マイコン110,120のRAM113,123には、それぞれ以下のようなメモリエリアが形成されている。
▲1▼車速測定値メモリ:車速センサ102からの現在の車速の測定値を記憶する。
▲2▼ハンドル軸角度位置(φ)カウンタメモリ:ハンドル軸角度位置検出部101をなすロータリエンコーダからの計数信号をカウントし、ハンドル軸角度位置φを示すそのカウント値を記憶する。なお、ロータリエンコーダは回転方向の識別が可能なものを使用し、正方向回転の場合はカウンタをインクリメントし、逆方向回転の場合はデクリメントする。
▲3▼舵角変換比(α)算出値メモリ:車速測定値に基づいて算出された舵角変換比αを記憶する。
▲4▼目標操舵軸角度位置(θ’)算出値メモリ:現在のハンドル軸角度位置φと舵角変換比αとの値から、例えばφ×αにより算出された操舵軸角度位置の目標値、すなわち目標操舵軸角度位置θ’の値を記憶する。
▲5▼操舵軸角度位置(θ)カウンタメモリ:操舵軸角度検出部103をなすロータリエンコーダからの計数信号をカウントし、操舵軸角度位置θを示すそのカウント値を記憶する。操舵軸角度検出部103は、回転方向の識別が可能なインクリメント型ロータリエンコーダとして構成され、車輪操舵軸8の回転方向が正であれば上記のカウンタをインクリメントし、逆であればカウンタをデクリメントする。
▲6▼Δθ算出値メモリ:目標操舵軸角度位置θ’と現在の操舵軸角度位置θとの隔たりΔθ(≡θ’−θ)の算出値を記憶する。
▲7▼電源電圧(Vs)測定値メモリ:モータ6の電源電圧Vsの測定値を記憶する。
▲8▼デューティ比(η)決定値メモリ:モータ6をPWM通電するための、Δθと電源電圧Vsとに基づいて決定されたデューティ比ηを記憶する。
▲9▼電流(Is)測定値:電流センサ70による電流Isの測定値を記憶する。
さらに、この例では、操舵ハンドルの中立位置探査(認識)のために、後述するモータ6の回転エンド(給電ケーブルの巻き締め端又は弛緩端)からの中立側への戻し回転量を規定する回転角度設定値(ハンドルの許容回転限度が例えば5回転くらいなら、中立位置の戻し回転設定値は約2.5回転として記憶させておく等)を予め設定・記憶しておくための中立出し回転角度メモリが設けられている。
【0027】
また、主マイコン110の入出力インターフェース114には、運転終了時(つまり、イグニッションOFF時)における車輪操舵軸8の角度位置、すなわち終了角度位置を記憶するためのEEPROM115が第二の記憶部として設けられている。該EEPROM115(PROM)は、主CPU111が主CPU側RAM112に対するデータ読出し/書込みを行なう第一の動作電圧(+5V)においては、主CPU111によるデータの読出しのみが可能であり、他方、第一の動作電圧(+5V)とは異なる第二の動作電圧(本実施形態では、第一の動作電圧より高い電圧が採用される:例えば+7V)を設定することにより主CPU111によるデータの書込みが可能となるものであり、主CPU111が暴走しても内容が誤って書き換えられることがない。第二の動作電圧は、EEPROM115と入出力インターフェース114との間に介在する図示しない昇圧回路によって生成される。
【0028】
以下、車両用操舵制御システム1の動作について説明する。
図8には、主マイコン110による制御プログラムの主ルーチンの処理の流れを示すものである。S1は初期化処理であり、前回イグニッションスイッチをOFFにしたときの終了処理にてEEPROM115に書き込まれている車輪操舵軸8の終了角度位置(後述)を読み出し、該終了角度位置を、処理開始に際しての車輪操舵軸8の初期角度位置として設定することを要旨とする。具体的には、終了角度位置を示すカウンタ値を、前述の操舵軸角度位置カウンタメモリにセットする。なお、後述するEEPROM115へのデータ書込み完了フラグは、この時点でクリアしておく。
【0029】
初期化処理が終了すれば、S2に進んで操舵制御処理となる。該操舵制御処理は、パラメータサンプリングの間隔を均一化するために、一定の周期(例えば数百μs)にて繰り返し実行される。その詳細を、図9により説明する。S201においては、現在の車速Vの測定値をリードし、次いでS202ではハンドル軸角度位置φをリードする。そして、S203においては、車速Vの算出値から、ハンドル軸角度位置φを操舵軸8の目標操舵角度位置θ’に変換するための舵角変換比αを決定する。舵角変換比αは、車速Vに応じて異なる値が設定される。具体的には、図6に示すように、車速Vが一定以上に大きい状態では、舵角変換比αは小さく設定され、車速Vが一定以下に小さい低速走行時には舵角変換比αは大きく設定される。本実施形態では、図5に示すような、種々の車速Vに対応した舵角変換比αの設定値を与えるテーブル130をROM112(122)に格納しておき、このテーブル130を参照して現在の車速Vに対応する舵角変換比αを補間法により算出する。なお、本実施形態においては、車両の運転状態を示す情報として車速Vを用いているが、これ以外にも、車両が受ける横圧や路面の傾斜角等を車両の運転状態を示す情報としてセンサにより検出し、その検出値に応じて舵角変換比αを特有の値に設定することが可能である。また、車速Vに応じて舵角変換比αの基本値を決定し、上記のような車速以外の情報に基づいて、その基本値を随時補正して使用することも可能である。
【0030】
S204では、検出されたハンドル軸角度位置φに、決定された舵角変換比αを乗じて目標操舵軸角度位置θ’を算出する。そして、S205において、現在の操舵軸角度位置θを読み取る。S206では、操舵軸角度位置カウンタから求められた現在の操舵軸角度位置θと目標操舵軸角度位置θ’との隔たりΔθ(=θ’−θ)を算出する。さらにS207においては、現在の電源電圧Vsの測定値を読み取る。
【0031】
モータ6は、目標操舵軸角度位置θ’と現在の操舵軸角度位置θとの差Δθが縮小するように車輪操舵軸8を回転駆動する。そして、操舵軸角度位置θが目標操舵軸角度位置θ’に迅速かつスムーズに近づくことができるように、Δθが大きいときはモータ6の回転速度を大きくし、逆にΔθが小さいときはモータ6の回転速度を小さくする。基本的にはΔθをパラメータとした比例制御であるが、オーバーシュートやハンチング等を抑制し、制御の安定化を図るために、Δθの微分あるいは積分を考慮した周知のPID制御を行なうことが望ましい。
【0032】
モータ6は前述の通りPWM制御されており、回転速度は、そのデューティ比ηを変更することにより調整される。電源電圧Vsが一定であれば、デューティ比により回転速度をほぼ一義的に調整できるが、本実施形態では前述の通り電源電圧Vsは一定でない。従って、電源電圧Vsも考慮してデューティ比ηを定めるようにする(S208)。例えば、図7に示すように、種々の電源電圧VsとΔθとの各組み合わせに対応したデューティ比ηを与える二次元のデューティ比変換テーブル131をROM112(122)に格納しておき、電源電圧Vsの測定値とΔθの算出値に対応するデューティ比ηの値を読み取って用いることができる。なお、モータ6の回転速度は負荷によっても変動する。この場合、電流センサ70によるモータ電流Isの測定値を元に、モータ負荷の状態を推定し、デューティ比ηを補正して用いることも可能である。
【0033】
ここまでの処理は、図4の主マイコン110と副マイコン120との双方にて並列的に実行される。例えば、主マイコン110の動作が正常であるかどうかは、主マイコン110のRAM113に記憶された各パラメータの演算結果を副マイコン120に随時転送し、副マイコン120側にて、RAM123の記憶内容と照合することにより、異常発生の有無を監視させることができる。他方、主マイコン110側では、決定されたデューティ比ηを元にPWM信号を生成する。そして、操舵軸角度検出部103をなすロータリエンコーダからの信号を参照してモータドライバ18に該PWM信号を出力することにより、モータ6をPWM制御する。
【0034】
図8に戻り、S3ではイグニッションスイッチがOFFされているかどうかを確認し、もしOFFされている場合はS4の終了処理となる。すなわち、イグニッションスイッチがOFFになっている場合は、自動車の運転が終了したことを意味するから、主マイコン110において操舵軸角度位置カウンタに記憶されている、車輪操舵軸8の終了角度位置を読み出し、これをEEPROM115に格納し、さらに、RAM113に設けられたデータ書込み完了フラグをセットして処理を終了する。
【0035】
図10に概念的に示すように、給電ケーブル(スパイラルケーブル)42は、樹脂の絶縁材料で被われた柔軟性(弾性)を有する帯状のハーネスで、内部に例えばモータ6への通電用の三相の導線が互いに絶縁状態で封入され、また制御用の信号線も組み入れることができる。この給電ケーブルは、ケーブルケース43の回転巻締め部材(ハブ43a)に一端が固定され、他端は車体B側のハーネス固定部に固定されて、ケーブルケース43内に渦巻き状態(ゼンマイばねのように)で保持されている。このケース43の固定アウタケース43bは車体B側に固定され、この固定状態のアウタケース43bの内部で、回転巻締め部材(巻締め軸)43aが回転可能に保持され、巻締め状態ではケーブル42の外径が収縮し、巻緩み状態(弛緩状態)では、ケーブル42の外径が膨らんで(拡大して)、巻締め部材43aの回転(言い換えれば操舵軸3及びハウジング(モータケース33)の回転)を吸収する。
【0036】
図10(b)は給電ケーブル42の巻締め端(モータ6の回転可能域ひいては操舵ハンドル2の回転可能域の例えば右エンド)を、同(c)は弛緩端(巻緩め端)(同じく例えば左エンド)を示す。いま、車輪13の直進位置(中立位置)で車輪操舵軸8が固定され、この操舵軸8に対してモータケース8(ハウジング)がフリーな状態とする。言い換えれば異常時のメカニカルロック機構を構成する図3のロック部材52が、ソレノイド55の作動によりアンロック位置に解放されて、ロックが解除された状態では、ハンドル2、ハンドル軸3及びモータケース(ハウジング)33はフリーに回転できる状況にある。そして給電ケーブル42の巻締め部材43aはそれらハンドル2等と一体的に回転可能な状態にある。
【0037】
ここでモータ6を回転駆動すると、車輪13(タイヤ)及び車輪操舵軸8(出力軸)は中立位置で止まっているから、モータ6の回転により反作用でモータケース33、ケーブル42の巻締め部材43a及びハンドル2等が一体的に回転することとなる。そしてこの回転に伴い、給電ケーブル42が図10(b)のように巻締め端に至ると、ケーブル42のツッパリ(張力)により、図11のようにモータトルク(モータ電流とも言える)が上昇する。他方、図10(c)のように給電ケーブル42が巻緩め端に至った場合も、ケーブル42の外周が固定アウタケースの内周面に押し付けられてそれ以上の行き場を失うため、図11に示すように巻締め端と同様に巻緩め端でもモータトルクが上昇する。そして、モータトルクの上昇点である左右のエンド間の回転可能範囲が、モータ6(ひいてはハンドル2)の許容される全体の回転角θ0ということになる。概略的に言えば、さらにその右エンド又は左エンドからθ0/2だけ戻し回転(逆転)させてやれば、ハンドル2の中立位置を見出すことができる。
【0038】
図12(A)〜(C)は、中立状態の車輪操舵軸8(出力軸)に対し、ハウジング(モータケース33)が任意の位置にあるものとして、モータ6の回転に伴う反作用により、ハウジングが回転する様子を概念的に示したものである。スパイラルケース(固定アウタケース43b)は車体側に固定され、ハーネス(給電ケーブル42)の基端も車体側に固定されている。(B)のようにスパイラル巻締め方向へハウジングが回転するようにアクチュエータ(モータ6)を回転させ、規定トルク(スパイラル巻締め方向上限トルク)に至ると、モータ6の駆動が停止する。次に(C)のように、逆方向(巻緩み方向)へ規定回転数(例えば2.5回転)だけモータ6を回転駆動して停止させる。このモータ6の駆動に同期対応してフリーな状態のハンドル2がまず一方向へ回転、さらに例えば2.5回転分だけ逆転して中立位置が認識される(中立セットの完了)。
【0039】
図13はそのような中立位置設定(自動中点出し)の処理の流れを示したものである。例えばCPU等の制御部の故障等で、本来設定されていた中立位置(車輪操舵軸とハンドルとの相対的な基準位置)が分からなくなって修理としてこの自動中点出しの処理を行う場合、P1においてタイヤ(車輪13)を直進位置(中立)に合わせる。他方、工場の組立でパーツアッセンブリとして、モータ6等を含む操舵ユニットを車体に搭載する場合は、Q1で、ハウジング(モータケース33)の回転位相を任意の状態にして車体へ搭載する(つまり固定ピンもなく、任意の回転位相でハンドル軸3に締結する)。さらにQ2で、タイヤ(車輪13)を直進位置に合わせる。
【0040】
そして、次のステップR1からモータ6の起動が開始され、伝達比可変アクチュエータであるモータ6を、給電ケーブル42の例えば巻締め方向(右エンド)に回転駆動する。そのモータ駆動の過程で、R2ではモータトルクを検出し、そのトルクが規定最大値(しきい値)Tmaxを超えたかどうかを判断する。ここで、モータ6のトルクは図4の電流センサ70の値が所定値を超えたかどうか(所定値に達したかどうか)を、CPU111等がRAM113等に一時記憶された電流値を参照することにより、比較判定する。
【0041】
R2でモータトルクが所定値を超えたことが検出されれば(図11も参照)、図10の(b)に示すように給電ケーブル42が巻締め端に達したものと判断して、R3においてモータの駆動を停止し、モータ6を給電ケーブル42の巻緩み方向(弛緩方向)、例えば左エンド側へ所定回転量(例えば2.5回転分)逆転して戻す。モータ6の停止モードを介在させることなく、上記右エンド等に達してから直ちに反転させてもよい。
【0042】
このR3におけるモータ回転範囲の半分の戻し回転を実行してからモータ6を停止させれば、ハンドル2の中立点を見出す(設定する)ことができる。このようなモータ6を所定量だけ戻し回転させる上では、モータ6に付属するロータリエンコーダ等のモータ回転量センサによりCPU111等がモータ回転量をサンプリング(参照)し、予定された回転量に達したらモータ6を停止させればよい。なお、R4で作業者がハンドル位置を微調整して最終的な中立位置を設定してもよい。また、中立位置が決まったら、R5で必要に応じてメカニカルロックをオンする(図3のソレノイド55の作動を解除してロック部材51をアンロック位置からロック位置へ移動させる)ことができる。
【0043】
なお、上記給電ケーブル42のツッパリ状態(巻締め端又は巻緩め端)によるハンドルの回転限度角度位置は、ステアリング限界角より外に設定してあり、ステアリングの限界が給電ケーブル42のツッパリ(巻締め端又は巻緩め端の回転トルク上昇)で規制されるわけではない。すわなち、正常な状態でハンドルを一杯に切った場合、給電ケーブルが巻締め端又は巻緩め端に達することはなく、給電ケーブル42に多少のゆとりを持った状態で図示しないステアリングの操舵ラックの端部がストッパに当たってステアリング限界となる。したがって、伝達比が1:1の操舵限界のハンドル回転数が左右のどちらかに例えば2回転半だとすると、給電ケーブル42のツッパリでハンドルの回転を止めたら、ハンドルは相対的にステアリング限界角より少しだけ向こうに(ステアリング限界の外)に行くはずである。そこから例えば2回転半戻すと、ハンドルは少し中立から外れた位置で止まる。生産工程等では、これを少し作業者が手で中立位置に戻して、作業完了とすれば、精度の高い中点設定ができる。図13のR4はこのことも想定したものである。
【0044】
見方を変えれば、そうした作業者の補正作業をなくすように、モータ6の回転量を調整することができる。つまり、モータ6のトルク増大で検出される給電ケーブル42の巻締め端又は巻緩み端と、操舵限界(操舵ラックがストッパに当たる状態)との角度差分だけ水増し補正してモータ6の戻し回転量を設定する。例えば上記角度差がΔθであるとすれば、給電ケーブル42のツッパリ(抵抗)によって左右の両方向の全体回転許容角度をθ0とすれば、モータ6の戻し回転の回転量(回転角度)は、(θ0/2)+Δθに設定することによって、より精度の高い中立位置の設定(中点出し)を実行することができる。
【0045】
なお、図13のR1でモータ6を給電ケーブル42の巻緩み端に向かって回転し、R2でモータトルクが上がったところで、次にR3においてモータ6を給電ケーブル42の巻締め方向へ所定量戻すことにより中立位置を見出すこともできる。モータ6をどちらに回転しても給電ケーブル42によりトルクが顕著に上昇するのであれば、モータ6をまずどちらの方向に回転させるかは重要でない。ただし、仮に巻締め方向であればモータトルクがピーク状に上がるが、巻緩み方向(弛緩方向)ではモータトルクがピーク状に上がらずモータ6の回転エンドを規定しにくい場合は、巻締め限度で回転エンドを検出することが必須となる。
【0046】
また、中立位置の探査以外に、図14に示す自動基準位置設定ルーチンに示すように、操舵軸とハンドルが切り離された状態で、U1においてタイヤ(車輪13)を一方の限度まで一杯に切って止める。その状態で、U2において、伝達比可変アクチュエータであるモータ6を給電ケーブル42の、上記ハンドルを一杯に切った方向に対応する回転限度(例えば給電ケーブル42の巻締め端)へ向かって駆動し、U3においてモータトルクが規定最大値になったら、U4でモータ6を止める。そうすると、車輪13を操舵限度にほぼ対応するハンドル基準位置を見出すことができる。U5では、その基準位置の微調整を行うことができ、またU6では必要に応じてその状態でメカニカルロックをかけ、基準位置を保持することができる。
【0047】
この場合でも、車輪13の操舵限界を超えて、給電ケーブル42の巻締め又は巻緩み端までモータ6が回転する際の角度差を補正するために、上記モータトルクを生じる給電ケーブル42の巻締め又は巻緩み端までモータ6を回転した後、操舵限界と給電ケーブル42の巻締め又は巻緩め端との角度差分だけ(オーバーシュート分だけ)、モータ6を戻し回転してから停止させれば、より精度の高い基準位置探査が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の車両用操舵制御システムの全体構成を模式的に示す図。
【図2】駆動部ユニットの一実施例を示す縦断面図。
【図3】図2のA−A断面図。
【図4】本発明の車両用操舵制御システムの電気的構成の一例を示すブロック図。
【図5】舵角変換比と車速との関係を与えるテーブルの模式図。
【図6】車速に応じて舵角変換比を変化させるパターンの一例を示す模式図。
【図7】モータ電源電圧と角度偏差Δθとによりデューティ比を決定するための二次元テーブルの模式図。
【図8】本発明の車両用操舵制御システムにおけるコンピュータ処理の主ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図9】図8の操舵制御処理の詳細の一例を示すフローチャート。
【図10】給電ケーブルの構造とその巻締め端及び巻緩め端とを概念的に示す簡略図。
【図11】その給電ケーブルの巻締め端及び巻緩め端におけるモータトルクの上昇を説明するグラフ。
【図12】中立位置設定の概念を示す説明図。
【図13】その中立位置設定(自動中点出し)の処理を一例を示すフローチャート。
【図14】中点だし以外の、基準位置設定の処理の一例を示すフローチャート。
【符号の説明】
3 ハンドル軸
6 モータ(アクチュエータ)
8 車輪操舵軸
42 給電ケーブル
70 電流センサ(モータトルク検出装置)
100 操舵制御部
101 ハンドル軸角度検出部
103 操舵軸角度検出部
111 主CPU
115 EEPROM(第二の記憶部)
113 主CPU側RAM
121 副CPU
123 副CPU側RAM(第一の記憶部)
Claims (4)
- 操舵ハンドルから車輪操舵軸にいたる操舵伝達系の途中に伝達比を可変にするモータで駆動される伝達比可変ユニットを介在させ、前記伝達比を車両の状況に応じて制御する伝達比制御部を有する車両用操舵装置において、
前記操舵ハンドルと一体的に回転するハンドル軸に前記モータが固定され、そのモータに電力を供給する給電ケーブルが自身の固定部から延びる自由端側においてそのハンドル軸と一体的に形成されたケーブルホルダ部に渦巻き状にかつ弛緩方向の弾性力を生じるように巻かれるとともに、前記操舵ハンドルの回転に応じて巻き締められて外径を減少し、又は弛緩されて外径を増大するように保持されるケーブル保持装置を備え、さらに、
前記給電ケーブルの許容保持範囲で前記モータを作動させて前記操舵ハンドルを回転させた際に、前記給電ケーブルの巻き締め端又は弛緩端におけるモータトルクの増大を検出するモータトルク検出装置と、
そのモータトルクが所定の増大値を示すことにより前記給電ケーブルの巻き締め端又は弛緩端を探査するエンド探査装置と、
そのエンド探査に基づいて前記モータを停止し、その時のハンドル位置を基準位置としての操舵限度位置として認識する基準位置認識装置と、
を含むことを特徴とする車両用操舵装置。 - 操舵ハンドルから車輪操舵軸にいたる操舵伝達系の途中に伝達比を可変にするモータで駆動される伝達比可変ユニットを介在させ、前記伝達比を車両の状況に応じて制御する伝達比制御部を有する車両用操舵装置において、
前記操舵ハンドルと一体的に回転するハンドル軸に前記モータが固定され、そのモータに電力を供給する給電ケーブルが自身の固定部から延びる自由端側においてそのハンドル軸と一体的に形成されたケーブルホルダ部に渦巻き状にかつ弛緩方向の弾性力を生じるように巻かれるとともに、前記操舵ハンドルの回転に応じて巻き締められて外径を減少し、又は弛緩されて外径を増大するように保持されるケーブル保持装置を備え、さらに、
前記給電ケーブルの許容保持範囲で前記モータを作動させて前記操舵ハンドルを回転させた際に、前記給電ケーブルの巻き締め端又は弛緩端におけるモータトルクの増大を検出するモータトルク検出装置と、
そのモータトルクが所定の増大値を示すことにより前記給電ケーブルの巻き締め端又は弛緩端を探査するエンド探査装置と、
その給電ケーブルの巻き締め端又は弛緩端から、前記操舵ハンドルを中立位置側へ戻すように前記モータを所定量回転させるハンドル中立認識装置と、
を含むことを特徴とする車両用操舵装置。 - 前記モータを巻き締め方向に回転させて所定のモータトルクを検出した後、そのモータを反対方向に予め定められた量だけ回転させてから停止させる請求項1又は2に記載の車両用操舵装置。
- 前記ハンドル軸と前記車輪操舵軸とは同軸上に位置し、その間に前記給電ケーブルを巻き締め又は弛緩させる巻き取り軸及び前記モータの出力軸が更に同軸的に配置されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車両用操舵装置。
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