JP4875808B2 - 積層型二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウムイオン二次電池等の、正極、電解質層、及び負極を積層することによって製造される積層型二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の携帯機器の小型・薄型・軽量化に対応して、リチウムイオン二次電池においても同様に小型・薄型・軽量化が強く求められている。薄型・軽量化を追求する方法のひとつとして、セパレータである電解質層に有機電解液を吸収保持する多孔性のポリマーを用いたリチウムポリマー二次電池が注目されている。中でも電解質層と電極に同一のポリマーを用い接合一体化すれば、良好な電解質層と電極間の接触が実現でき、電池自体の薄型・軽量化に有効である。
【0003】
電解質層と電極間が接合一体化されている例として、米国特許4,830,939号公報および、米国特許5,478,668号公報に記載されているものが挙げられる。特に米国特許5,478,668号公報の場合、ポリマー材料としてフッ化ビニリデン(VDF)と6フッ化プロピレン(HFP)の共重合体(PVDF−HFP)を用い、積層電極の正極、負極及びセパレータである電解質層を作成した後、セパレータと正極あるいは負極を熱溶着により一体化させ、その後、さらに溶着した逆のセパレータ面に溶着した極性と違う正極あるいは負極を同様に熱溶着させて積層一体化させている。
【0004】
従来の電池構成を図10に示す。本図に示す正極用基材には、アルミニウム箔11を用いている。負極には、銅箔8を用いている。一般的にこれら箔材は冷間圧延して製造されているため、箔表面は平滑となり、この平滑面に正極層5あるいは負極層7を塗布する。それら正極層5や負極層7の塗膜は、平滑な基材上にあるため、アンカーリングする要素が無いことから密着性は低い。
【0005】
塗膜乾燥後は、塗料に混合分散するバインダー比によっては、バインダーの収縮などにより塗膜だけが剥離してしまい電極構成に至らない場合があった。リチウムイオン二次電池のエネルギー容量を増大させるために正極層5及び負極層7に含まれる活物質の量を増加させると、相対的にバインダー量が減少することとなり、アルミニウム箔11に対する正極層5塗膜の密着力、および銅箔8に対する負極層7塗膜の密着力は、より一層減少もしくは密着不可能な状態になっていた。
【0006】
前記塗膜の密着力不足により、工程上においては作業性の低下、電池構成における塗膜の欠落により生産歩留まりの低下を招いている。この対応策として、アルミニウム箔11及び銅箔8の表面をサンドブラストによる粗面化処理、あるいは正極層5及び負極層7に含まれている同組成のカーボン粉を主成分に結晶性バインダーと溶剤とを混合分散した塗料を薄膜にしてカーボン層12として塗布した。150℃の乾燥により、カーボン塗膜面の結晶化を行う。結晶化によるカーボン層12の表面粗度は、約3〜4μmの凹凸粗面化が成され、塗膜の密着力を乾燥後の状態でも向上させる工夫等も行われている。
【0007】
しかしながら、前記構成で圧延を行うと、図11に示すように基材となるアルミニウム箔11は塗膜と接している部分で歪みを生じてしまっている。この歪みは、積層による打ち抜き又は帯状に裁断する際、所定幅に、外形寸法を変化させる影響があった。積層する工程には一般的に画像認識などで自動化させているが、前記歪み影響によって寸法変化の極板を不良と判断し、歩留低下を招く結果が起きていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、カーボン層12を用いてアルミニウム箔11と正極層5との密着性や、銅箔8と負極層7との密着性の向上を図る場合、カーボン層12の塗布及び結晶化による塗膜面の粗面化を行うために、実質的にカーボン塗料製造工程と塗布工程を別途設ける必要性が出てくる。
【0009】
また、アルミニウム箔11面へカーボン層12を塗布した場合、アルミニウム箔11表面にアルミニウム箔製造過程で微量に付着した異物の影響を受け、ダイ塗工方式による長尺塗布では、断続的に塗膜の抜けスジなど塗布不良が発生する。前記抜けスジなどの塗布不良があるカーボン層12面へ正極層5を塗布していくとカーボン層12塗膜の欠損が無いところでは、欠落等の発生が起きない密着力を達成できるものの塗布不良による抜けスジ部分に塗布された正極層5は、極端に密着力が低下するなどバラツキが大きく発生していた。また、サンドブラストによる箔表面の粗面化による正極層5塗膜の密着力は向上するものの、アルミニウム箔に対する正極層5塗膜の密着性は未だ十分では無いため、一層の改善が求められている。
【0010】
さらに、カーボン層12を用いると、図11を用いて説明したように、アルミニウム箔11は塗膜と接している部分で歪みを生じてしまう。したがって、カーボン層12を用いずに、アルミニウム箔11と正極層5、及び銅箔8と負極層7との密着性の向上を図る必要がある。
【0011】
リチウムイオン二次電池を例にとって説明したように、従来は、二次電池を構成する正極板と正極層との密着性、及び負極板と負極層との密着性が良くなかった。
【0012】
本発明は、上記従来の課題を考慮し、正極板と正極層との密着性が良い積層型二次電池を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
【0021】
第1の本発明(請求項1に対応)は、正極板、正極層、電解質層、負極層、及び負極板がこの順に積層された積層型二次電池であって、
前記正極板の前記正極層側の表面には、孔部が設けられ、
前記孔部は、深さ方向に向かって先細りになる円錐形状で、前記正極板を貫通しており、前記正極板の前記正極層側の表面の開口径が1.0〜5.0μmであり、1平方cm当たり最大5個までの点在量である、積層型二次電池である。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明および本発明に関連する発明の実施の形態について、図を用いて説明する。
【0030】
(実施の形態1)
実施の形態1では、正極板としてのアルミニウム箔、正極層、電解質層、負極層、及び負極板としての銅箔がこの順で積層されたリチウムイオン二次電池を例にとって、本発明に関連する発明の二次電池の製造方法及び二次電池を説明する。
【0031】
まず、厚さ50μmの帯状アルミニウム箔を用意し、この帯状アルミニウム箔を温度90℃の塩酸を主成分とする溶液に浸漬し、前記帯状アルミニウム箔に電流密度0.35A/cm2の直流を所定時間、印加することにより前記帯状アルミニウム箔の片面に平均開口ピット径5.0μm、深さが最大20.0μmで平均的に13μmのピット(凹部)を形成した。ピットの深底部付近の径を平均1.0μm以下とし、先細りの円錐状ピットとした。印加処理条件によっては、直進的でなく枝分かれしたピットが形成されるが、電流密度、液温度の管理、印加時間により、本発明に関連する発明のピットを形成できる。このような開口ピット処理されたアルミニウム箔の一部分を抜粋し拡大した断面概要図を図1に示す。
【0032】
次に、図5に示すように、図1に示すピット処理されたアルミニウム箔へ正極層5を塗布することによって、ピット2内へ正極塗料内に含まれる活物質粒子及びバインダーが適正量で浸透あるいは充填状態となる。その後、圧延工程を経ると、図6に示すようにピット処理された面は厚さ方向に減縮されつつ、ピット2内へ活物質粒子及びバインダーをさらに充填することになる。
【0033】
このように、アルミニウム箔の表面にピットを設けておき、そのピットが設けられている面に正極層5を塗布すると、正極塗料がピットに浸透するので、正極層5の密着力は、従来構成である図11に示した平滑な面に正極層5を塗布し圧延した後の状態と比べ、塗膜のアンカーリング効果によって大幅に向上する。また、ピット形成による立体構造化で正極層5とアルミニウム箔1との接地面積は、ピット処理比率に比例して向上させることができる。また、ピット形状によって、電池容量と電解液貯留能力をも向上させることができる。
【0034】
なお、アルミニウム箔の表面に設けるピットは、図1に示すような深さ方向に先細りになる円錐状ピット2に限定するものではない。他のピット形状としては、図2に示す片面からピット処理された円柱状、また、図1と同様のピット形成処理を両面に行い、図4に示すように基材の芯を残すようにしたものが挙げられる。その図4に示した両面にピット処理を行ったアルミニウム箔は、例えば、両面に正極層5を形成した後、両方の塗膜に接するように負極を積層する場合に用いる。尚、前記ピットの開口形状と深度方向の形状、そして深度方向の長さ及びピット数、開口処理を行う面は、溶液の温度と電流密度と処理時間の条件、さらに電流を負荷する電極位置を片面、両面に配置することによって容易に制御することができる。よって、アルミニウム箔の厚みに影響されずに開口径の大きさ、ピット数等の条件が限定されるものでない。
【0035】
ここで、開口部の径が0.4〜2.5μm平均であるピットが平均的に分布している中に径3.0〜7.0μmの開口部を有するピットを不特定多数点在させることが好ましい。点在数量は、1平方cm面積内に径3.0〜7.0μmの開口部を有するピットが少なくとも1つ以上存在していれば良い。図1では、箔表面から厚さ方向に向かって円錐状のピット2が設けられているが、その円錐状のピット2の開口径が0.08μm未満であって、そのが主に点在及び分布する場合、正極塗料に含有する活物質粒子及びバインダー等が前記ピット内部まで入りにくいため、結果的に乾燥後の正極塗膜の密着力は低下してしまう。よって、開口処理条件を最適に調整して、上述したように開口部の径が0.4〜2.5μm平均であるピットが平均的に分布している中に径3.0〜7.0μmの開口部を有するピットを不特定多数点在させるようにした。
【0036】
また、ピットの開口形状は図1では円形としているが、処理する塩酸主成分の溶液の液温を任意に設定、さらに電流密度の設定をすることで、開口形状は、四角形、もしくは多角形形状に制御することができる。つまり、最終形状が円形となるため、円形になる直前で処理を終えるようにすれば、形状は四角もしくは多角形で作製することができる。前記開口形状の縁の頂点に習って深度方向へエッチング処理が行われ、多角錘形状となる。深度方向の形状は、円錐状、針状、円柱状と、これらも同様に処理条件で制御することができる。
【0037】
また、Al箔表面には、エッチングによる開口処理により、絶縁性酸化皮膜が薄膜に形成され、電子的には絶縁性であるが、電池用塗料を塗布後圧延により、塗料に含有する活物質粒子が前記絶縁性酸化皮膜を突き破りAl箔自体と接するため、電子的には導通が行えるため絶縁性酸化皮膜を敢えて脱膜する必要性は無い。また、アルミニウム箔の材質については、純度99.99%の純アルミ材質、あるいは数%ほど他の物質を添加し剛性、耐熱性などを付与した合成アルミ材質であってもよく、特に限定するものではない。
【0038】
上述したように、塗布・圧延されたアルミニウム箔と、正極層、電解質層、塗布・圧延された負極層と、銅箔をこの順に積層することによってリチウムイオン二次電池を製造する方法において、アルミニウム箔の正極層側の表面にピット(凹部)を設けておくと、アルミニウム箔と正極層との密着性が向上する。また、銅箔の負極層側の表面に上述したピットを設けておくと、銅箔と負極層との密着性が向上する。塗布・圧延されたアルミニウム箔と、正極層、電解質層、塗布・圧延された負極層と、銅箔と、負極層、電解質層、塗布・圧延された正極層とアルミニウム箔をこの順に積層することによりリチウムイオン二次電池を製造する場合では、例えば図4に示すように銅箔の両面にピットを設けておいても良い。
【0039】
つまり、箔の上に正極層あるいは負極層を塗布後、乾燥させ圧延した後、正極板と負極板を構成し、正極層と負極層との間に電解質を設けるようにせきそう或いは重ね合わせて2次電池を製造する。
【0040】
また、上述した実施の形態では、リチウムイオン二次電池について説明したが、上述したリチウムイオン二次電池と同様な、正極板、正極層、電解質層、負極層、及び負極板をこの順に積層し、圧延することにより二次電池を製造する方法において、正極板の正極層側の表面に及び/又は負極板の負極層側の表面に、ピット(凹部)を設けておくと、正極板と正極層との密着性、及び/又は負極板と負極層との密着性が向上する。
【0041】
(実施の形態2)
図3を用いて、本発明の実施の形態2について説明する。
【0042】
ピット処理方法は、実施の形態1と同様のため省略する。図3に示すように厚さ方向を貫通したピット4を形成する。しかしながら、箔内に貫通したピット4を多数形成すると基材自体の強度が低下するため、貫通するピット4は、1平方cm当たり多くとも5個までの点在量に制御して作成する。また、ピットの平均開口径は、1.0〜5.0μm範囲としているため、点在量を規制する必要性がある。
【0043】
径をこの範囲で規制するのは、活物質の粒子径が最小3.0μmということと、1.0μm径より小さいと電解液の注液性あるいは浸透性が低下することから規制している。正極層5を塗布した場合、ピット4内全てを正極層5に含まれる活物質粒子及びバインダーによって充填する必要性は無い。
【0044】
つまり厚さ方向約1/3程度を前記活物質粒子及びバインダーが占めているだけで、十分な密着力は得ることができる。この貫通したピット4の役目は、図9に示す一例となる積層型の電池構成を用いて説明する。この図9では、電解液を注液する一例となる方法を示している。電解液の注液方法は、本実施の形態2では、真空脱気した後、電解液9に着水させて注液を開始するようにした。アルミニウム箔1が板状であれば注液速度、浸透性は非常に遅くおよそ6時間程度要していたが、図3のような貫通ピット4を点在させることによって、電解液注液時間は2時間以内に短縮することができた。
【0045】
以上説明した実施の形態2の構成によって、例えば図9に示した積層型電池では、従来構成である図10のように板状のアルミニウム箔11を用いた場合に比べ、電極積層部内全面を真空脱気できるため、脱気不良による注液不良を解消でき、電解液の注液性あるいは浸透性時間を大幅に短縮することができる。
【0046】
また、開口されたピット内へ容易に塗料が流れ込み、圧延によってさらに押し込み充填が行え、アンカーリング効果によって塗膜の密着力は大幅な向上を図ることができた。
【0047】
【実施例】
(実施例1)
次に本発明に関連する発明の実施例1について、図1に示す円錐状ピット2処理を行ったアルミニウム箔1への正極層5の形成について説明する。図5に正極層5を塗布乾燥後の断面構成図を示す。図5に引用したピット2の形状は円錐状としているが、図2に示す円柱状、また、図4に示すように基材の両面に形成し、基材の芯厚を残す構成を用いても良い。後段工程での圧延後の断面を図6に示す。圧延により、正極層5内活物質粒子及びバインダーは、前記ピット2内に押し込み充填される。この時、ピット形成されたアルミニウム箔1面は、正極層5の圧延影響により、元の総厚より若干厚みの減少が起きるが、ピット構成上及び塗膜強度への影響は無い。
【0048】
図8に塗布乾燥後、圧延後の塗膜強度を、従来のアルミニウム箔の場合A、A’とカーボン層12を形成したアルミニウム箔11の場合B、B’と、本発明に関連する発明の実施例のアルミニウム箔1の場合C、C’として、90°方向剥離強度評価結果をグラフにして示す。
【0049】
尚、測定方法は、図7に示す方法で行った。測定サンプル数は、n=10で行い、その数値の平均をグラフ化している。カーボン層12を塗布したアルミニウム箔11へ正極層5を塗布し圧延したB’の剥離強度243gfに比較して、本発明に関連する発明の実施例の開口処理が施されたアルミニウム箔1に正極層5を塗布した圧延前塗膜Cの強度は、ほぼ同等の247gfを実現することができた。また、圧延後の塗膜C’は、さらに50%程度の強度アップを図ることができた。圧延後塗膜C’の剥離強度が従来A’及びB’と比べ、355gfと大幅に高いが、この強度レベルにより、後段工程での組立では、塗膜の欠落不良などを解消でき、生産歩留まりを向上させることができた。
【0050】
以上のアルミニウム箔の構成により、ピット内まで正極層5が充填されているため、集電体の役目となるアルミニウム箔との接地面積は、ピット形成による立体構造化により、従来の平面と比べ、大幅に増え、電子的導通と電池容量の向上が見込める。また、このピット構成により、極板へ電解液を注液するとピット内にまで電解液は浸透し、貯留効果が生まれ、電解液量の低下による劣化を防ぎ、電池寿命を従来比約30%延ばすことができた。
【0051】
(実施例2)
本発明の実施例2について、図3の円錐状貫通ピット4をアルミニウム箔1に形成し正極層5を塗布した内容について説明する。
【0052】
ピットは、温度60℃の塩酸を主成分とする溶液にアルミニウム箔を浸漬し、帯状アルミニウム箔に電流密度0.35A/cm2の直流を所定時間、印加することによって形成した。前記帯状アルミニウム箔の厚みは20μmであり、片面側に電極を配置して開孔を行った。この時の開孔平均径は5.0μm、深さは20.0μm平均とし、結果的に貫通した円錐状ピット4が点在するように製造した。
【0053】
この製造に注意するべき点は、図3に示すように厚さ方向に貫通したピット4形状を箔内に多数形成すると基材自体の強度が低下するため、貫通するピット4は、1平方cm当たり多くとも5個までの点在量になるように電極位置、電流密度を細かに制御して行う点である。正極層5を、この処理面上に塗布した場合、ピット4内全てを正極層5に含まれる活物質粒子及びバインダーによって充填する必要性は無い。つまり厚さ方向約1/3程度を前記活物質粒子及びバインダーが占めているだけで、十分な密着力は得ることができた。
【0054】
この時の密着強度は、90°剥離強度で評価したところ、253gfを実現できた。圧延により、さらに強度は374gfを実現できた。圧延によってアルミニウム箔1の厚みは、約20%薄く16μmになるが、ピット内に活物質及びバインダーが充填されるため、箔自体の強度は、正極層5を塗布する前に比べ、若干向上することになる。また、この貫通したピット4の役目は、図9に一例として示す積層型の電池構成を用いて説明する。
【0055】
この図9では、電解液を注液する一例の方法を示している。電解液の注液方法は、本実施例では、真空脱気した後、電解液9に着水させて注液を開始するようにした。アルミニウム箔1が板状であれば、活物質内に含まれるガスあるいは空気を完全に脱気することができず、そのため、注液速度及び浸透性は非常に遅くなる。電解液の粘性を下げて浸透性を上げる狙いとして、積層型電池ともに40〜50℃ぐらいまで加温した後、注液を行い、電解液の注液速度を少しでも向上させる工夫を成されるが、それでも注液完了時間が、およそ6時間程度要し、生産性が悪い状況下にある。そこで、本実施例で示すように貫通ピット4をアルミニウム箔1に点在させることによって、積層面全面に塗布され形成された活物質内に存在するガス等を完全に脱気することができ、積層面積・外形サイズにも左右されるが、平均的に電解液注液時間は、2時間以内に短縮することができた。
【0056】
以上の構成によって、例えば図9に示した積層型電池では、従来構成である図10のように板状のアルミニウム箔11を用いた場合に比べ、積層面中央の活物質内に含まれるガスあるいは空気を真空脱気により、短時間且つ完全に脱気することができる。そのため、従来ガス残留による注液不良などを解消でき、電解液の注液性あるいは浸透性時間を大幅に短縮することができ、生産性を従来比3倍に増強することが可能となる。また、開孔されたピット内へ容易に塗料が流れ込み、圧延によってさらに押し込み充填を行うことによって、塗膜は、基材の厚み方向へ多数のくさび状に充填されるため(アンカーリング効果)、塗膜の密着力を後段工程での組立で塗膜欠落を防止でき、不良率を大幅に削減することができた。
【0057】
以上述べたように、リチウムイオン二次電池の正極用集電体であるアルミニウム箔に開口したピットを点在して製造されたものを用い、前記ピット面に正極塗料を塗布することで、塗膜の密着力向上を図ることができるものである。従来、アルミニウム箔の被塗布面をサンドブラストで荒す、または、カーボン粉とバインダーの混合溶液を薄膜に塗布して、塗膜の密着力を向上するなどの工夫を行っていたが、十分な密着強度を得るものではなかった。
【0058】
上述した開口ピットが形成されたアルミニウム箔を用いることによって、容易に塗膜密着強度を向上させることができ、さらに、接地面積を向上することで集電率はピット数に比例して向上することとなる。このピット構成により、極板へ電解液を注液するとピット内にまで電解液は浸透し、貯留効果が生まれ、電解液量の低下による劣化を防ぎ、電池寿命を従来比約30%延ばすことができる。
【0059】
【発明の効果】
以上述べたところから明らかなように、本発明は、正極板と正極層との密着性が良い積層型二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に関連する発明の実施の形態1のアルミニウム箔の一部抜粋立体断面を示した概略図である。
【図2】本発明に関連する発明の実施の形態1のアルミニウム箔の一部抜粋立体断面を示した概略図である。
【図3】本発明の実施の形態2のアルミニウム箔の一部抜粋立体断面を示した概略図である。
【図4】本発明に関連する発明の実施の形態1のアルミニウム箔の一部抜粋立体断面を示した概略図である。
【図5】本発明に関連する発明の実施の形態1のアルミニウム箔へ正極層を塗布した状態の断面図である。
【図6】本発明に関連する発明の実施の形態1のアルミニウム箔へ正極層を塗布・圧延した状態の断面図である。
【図7】本発明に関連する発明及び本発明の実施例1及び2における塗膜の90°剥離強度評価方法の説明図である。
【図8】本発明に関連する発明及び本発明の実施例1及び2において、90°剥離強度評価結果をまとめたグラフである。
【図9】本発明の実施の形態2に示したアルミニウム箔を用いた電池構成及び電解液注液方法の説明図である。
【図10】従来の電池の断面図である。
【図11】従来方法によるアルミニウム箔へ正極を塗布・圧延した状態の断面図である。
【符号の説明】
1 アルミニウム箔
2 円錐状ピット
3 円柱状ピット
4 円錐状貫通ピット
5 正極層
6 高分子電解質層
7 負極層
8 銅箔
9 電解液
10 電解液貯留容器
11 アルミニウム箔
12 カーボン層
13 接着剤層
14 測定用基板
15 回転式サンプル固定ロッド
Claims (1)
- 正極板、正極層、電解質層、負極層、及び負極板がこの順に積層された積層型二次電池であって、
前記正極板の前記正極層側の表面には、孔部が設けられ、
前記孔部は、深さ方向に向かって先細りになる円錐形状で、前記正極板を貫通しており、前記正極板の前記正極層側の表面の開口径が1.0〜5.0μmであり、1平方cm当たり最大5個までの点在量である、積層型二次電池。
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