JP4873010B2 - バランス型弾性波フィルタ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、弾性境界波や弾性表面波のような弾性波を利用した弾性波フィルタ装置に関し、より詳細には、平衡−不平衡変換機能を備えたバランス型の弾性波フィルタ装置に関する。
従来、携帯電話機のRF段の帯域フィルタ等に弾性表面波フィルタ装置が広く用いられている。また、近年、弾性表面波フィルタ装置に変えて、弾性境界波を利用した弾性境界波フィルタ装置が種々提案されている。
ところで、例えば携帯電話機のRF段の帯域フィルタでは、入力端がアンテナ端子に接続される。そして、帯域フィルタの後段には平衡入力を備えた増幅回路が接続される。従って、平衡−不平衡変換機能を有するバランと称されている部品を省略するために、帯域フィルタ自体が平衡−不平衡変換機能を備えることが求められている。
このような用途に用いる平衡−不平衡変換機能を有する弾性表面波フィルタ装置の一例が、下記の特許文献1に開示されている。図14に示すように、特許文献1に記載されている弾性表面波フィルタ装置1001は、不平衡端子1002と、第1,2の平衡端子1003,1004とを有する。不平衡端子1002に、1ポート型弾性表面波共振子1005,1006を介して、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部1007が接続されている。縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部1007では、中央に配置された第1のIDT1008の両側に、第2,3のIDT1009,1010が設けられている。また、第1〜3のIDT1008〜1010が設けられている領域の表面波伝搬方向両側に、反射器1011,1012が配置されている。
第2,3のIDT1009,1010の各一端が共通接続され、弾性表面波共振子1005,1006を介して不平衡端子1002に接続されている。IDT1009,1010の各他端はアース電位に接続されている。
第1のIDT1008の一端が第1の平衡端子1003に接続されており、他端が第2の平衡端子1004に接続されている。第2のIDT1009の極性に対し、第3のIDT1010の極性が反転されている。第1のIDT1008の電極指の本数は偶数本とされている。従って、平衡−不平衡変換機能が実現されている。
ところで、平衡−不平衡変換機能を有する弾性表面波フィルタ装置では、第1,2の平衡端子から取り出される信号の位相平衡度及び振幅平衡度が良好であることが強く求められる。特許文献1に記載の弾性表面波フィルタ装置1001では、平衡度を改善するために、アースパターン1013が設けられている。このアースパターン1013は、図14では、浮いた状態で示されているが、具体的には、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部1007の入力側を占めるスペースにおいて、不平衡端子1002と第2,3のIDT1009,1010とを結ぶ入力信号ライン1014と、第1の平衡端子1003との間の領域に設けられている。そして、特許文献1では、このアースライン1013は、例えば、電極パッド上に形成された平衡端子1003の周囲を囲むように、コの字状等の形状に形成されていることが好ましい旨が示されている。
特許第3384403号公報
特許文献1に記載の弾性表面波フィルタ装置では、平衡−不平衡変換機能を有する構成において、入力信号ライン1014と第1の平衡端子1003との間に上記アースライン1013を設けることにより、位相平衡度及び振幅平衡度が改善されるとされていた。しかしながら、上記アースライン1013を設けただけでは、位相平衡度及び振幅平衡度はなお十分ではなく、より一層の改善が強く求められている。他方、従来、フロート型ではなく、中点接地型の平衡−不平衡変換機能を有する縦結合共振子型の弾性表面波フィルタ装置や弾性境界波フィルタ装置も知られている。中点接地型の弾性波フィルタ装置においても、平衡度の改善が強く求められている。
そして、特許文献1に記載のように、入力用信号ラインと第1の平衡端子との間に、アースラインを設けた構成を、中点接地型の縦結合共振子型弾性波フィルタ装置にも適用し得ると考えられる。しかしながら、特許文献1に記載のようなフロート型の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ1001では、第1,2の平衡端子1003,1004は、中央の第1のIDTの両端に接続されていた。従って、入力側に位置している不平衡端子1002と同じ側に配置されている第1の平衡端子1003と、不平衡端子1002との間の上記アースライン1013を設ければよかった。これに対して、中点接地型の縦結合共振子型弾性波フィルタ装置では、中央の第1のIDTの両側に位置している第2,3のIDTの各一端から第1,2の平衡端子に接続されているので、上記アースライン1013をそのまま適用することはできなかった。
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、平衡−不平衡変換機能を有する縦結合共振子型弾性波フィルタ装置であって、平衡度がより一層改善された縦結合共振子型の弾性波フィルタ装置を提供することにある。
本発明によれば、平衡−不平衡変換機能を有するバランス型フィルタ装置であって、圧電体と、前記圧電体上に設けられた電極構造とを備え、前記電極構造は、第1のIDTと第1のIDTの弾性波伝搬方向両側に配置された第2,3のIDTと、前記第1〜3のIDTが設けられている部分の弾性波伝搬方向両側に配置された第1,2の反射器とを有し、それによって、縦結合共振子型弾性波フィルタ部が形成されており、前記電極構造が、不平衡端子と、第1,第2の平衡端子と、前記不平衡端子と前記縦結合共振子型弾性波フィルタ部と接続している入力信号ラインとをさらに備え、前記第1のIDTの一端が前記入力信号ラインにより前記不平衡端子に接続されており、前記第2,3のIDTの一端が、それぞれ、第1,2の平衡端子に接続されており、前記第2,第3のIDTの他端が、それぞれ、アース電位に接続されており、前記電極構造は、前記入力信号ラインと前記第2の平衡端子との間に配置されており、アース電位に接続されるシールドパターンをさらに備えており、第1のIDTと第3のIDTとが隣接する箇所で互いに隣接する最外電極指の極性が異極性であることを特徴とする、バランス型弾性波フィルタ装置が提供される。
本発明に係るバランス型弾性波フィルタ装置では、第1〜第3のIDTが設けられている弾性波伝搬方向両側に、さらに第4,第5のIDTが配置されていてもよく、その場合には、第1,第2の反射器が第1〜第5のIDTが設けられている部分の両側に配置されることになり、本発明に従って、平衡度がより一層改善された5IDT型の縦結合共振子型の弾性波フィルタ部を備えたバランス型弾性波フィルタ装置を提供することができる。この場合、前記入力信号ラインにより、前記第1のIDTだけでなく、前記第4,第5のIDTの一端が前記不平衡端子に接続されており、第3のIDTと第1のIDTとが隣接する箇所で互いに隣接する最外電極指の極性、及び第3のIDTと第5のIDTとが隣接する箇所で互いに隣接する最外電極指の極性が異極性とされる。
本発明に係る弾性波フィルタ装置では、圧電体上に積層された誘電体がさらに備えられていてもよく、その場合、弾性波として弾性境界波が用いられてもよく、それによって、弾性境界波フィルタ装置を提供することができる。
本発明に係るバランス型弾性波フィルタ装置では、好ましくは、前記誘電体上に設けられたアースラインをさらに備えられている。アースラインは前記シールドパターンに対向されている。この場合には、上記アースラインがさらに設けられているため、平衡度をより一層改善することができる。
好ましくは、上記アースラインは、誘電体を貫通するように設けられたビアホール導体により上記シールドパターンに電気的に接続され、それによって、シールドパターンはアース電位に確実に電気的に接続することができ、それによって、平衡度をより一層改善することが可能となる。
本発明に係るバランス型弾性波フィルタ装置は、弾性波として弾性表面波を用いたものであってもよく、その場合には、本発明に従って、平衡度が改善されたバランス型弾性波フィルタ装置を提供することが可能となる。
(発明の効果)
本発明に係るバランス型弾性波フィルタ装置では、不平衡端子に第1のIDTが接続されており、第2,3のIDTが、それぞれ、第1,2の平衡端子に接続されており、平衡−不平衡変換機能が実現されている。そして、入力信号ラインと、第2の平衡端子との間にシールドパターンが設けられているため、後述する実施形態から明らかなように、第1の平衡端子から取り出される第1の平衡信号と、第2の平衡端子から取り出される第2の平衡信号との平衡度を効果的に改善することが可能となる。
よって、本発明によれば、例えば携帯電話のRF段に用いられる帯域フィルタ等に好適な平衡−不平衡変換機能を有する弾性波フィルタ装置を提供することができる。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る弾性境界波フィルタ装置の圧電体上の電極構造及び外部と接続するために端子上に形成されるバンプの位置を模式的に示す平面図である。 図2は、第1の実施形態の弾性境界波フィルタ装置を説明するための模式的正面断面図である。 図3は、第1の実施形態の弾性境界波フィルタ装置の電極構造を示す模式的平面図である。 図4は、第1の実施形態及び第1の比較例の弾性境界波フィルタ装置の振幅平衡度特性を示す図である。 図5は、第1の実施形態及び第1の比較例の弾性境界波フィルタ装置の位相平衡度特性を示す図である。 図6は、第1の実施形態及び第1の比較例の弾性境界波フィルタ装置のコモンモード減衰量−周波数特性を示す図である。 図7は、第1の実施形態及び第2の比較例の弾性境界波フィルタ装置の振幅平衡度特性を示す図である。 図8は、第1の実施形態及び第2の比較例の弾性境界波フィルタ装置の位相平衡度特性を示す図である。 図9は、第1の実施形態及び第2の比較例の弾性境界波フィルタ装置のコモンモード減衰量−周波数特性を示す図である。 図10は、第2の実施形態の弾性境界波フィルタ装置を模式的に示す正面断面図である。 図11は、第2の実施形態及び第1の比較例の弾性境界波フィルタ装置の振幅平衡度特性を示す図である。 図12は、第2の実施形態及び第1の比較例の弾性境界波フィルタ装置の位相平衡度特性を示す図である。 図13は、第2の比較例の弾性境界波フィルタ装置の電極構造を示す模式的平面図である。 図14は、従来の弾性表面波フィルタ装置の電極構造を示す模式的平面図である。
符号の説明
1…弾性境界波フィルタ装置
2…圧電体
3…誘電体
3a,3b…開口
4…電極構造
5a,5b…電極パッド
7a,7b…導電パターン
8…樹脂層
9a,9b…導電性接合材
10a,10b…バンプ
11…不平衡端子
12,13…第1,第2の平衡端子
14〜16…アース端子
17…弾性境界波共振子
18…縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部
19…弾性境界波共振子
20…付加容量
21〜25…第1〜第5のIDT
26,27…反射器
31…入力信号ライン
32…シールドパターン
33,34…出力信号ライン
41…弾性境界波フィルタ装置
42…アースライン
43…ビアホール導体
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
図1〜図3を参照して、本発明の一実施形態に係るバランス型弾性境界波フィルタ装置を説明する。
図2に示すように、本実施形態のバランス型弾性境界波フィルタ装置1は、圧電体2上に誘電体3を積層した構造を有する。圧電体2としては、LiNbOが用いられている。また、誘電体3としては、SiOが用いられている。圧電体2と誘電体3との境界には、電極構造4が形成されている。誘電体3には、複数の開口3a,3bが形成されている。
電極構造4を外部と電気的に接続するために、圧電体2上には、電極構造4に接続される複数の電極パッド5a,5bが形成されている。電極パッド5a,5bを露出させるように、上記開口3a,3bが形成されている。また、開口3a,3bから開口3a,3b外の誘電体3の上面に至るように導電パターン7a,7bが形成されている。
誘電体3を被覆するように、樹脂層8が設けられている。樹脂層8は、シリコン樹脂やエポキシ樹脂などの適宜の合成樹脂などからなり、圧電体2と誘電体3との境界で発生した弾性境界波が上面側に漏洩してきた場合に吸音するように作用する。それによって、所望でないスプリアスを抑制することが可能とされている。
樹脂層8には、開口3a,3bに連なる開口部が設けられている。そして、この開口内に、Cuからなる導電性接合材9a,9bが充填され、半田からなる金属バンプ10a,10bが導電性接合材9a,9bにより上記導電パターン7a,7bを介して電極パッド5a,5bに電気的に接続されている。すなわち、弾性境界波フィルタ装置1は、上記のように、バンプ10a,10bを有するので、バンプ10a,10b側からプリント回路基板などに表面実装することが可能とされている。
上記弾性境界波フィルタ装置1の電極構造の詳細を示すために、図1では、図2に示す構造から、誘電体3、樹脂層8などを取り除き、圧電体2の上面に設けられている電極構造及び上記電極パッド等を模式的に示す平面図であり、図3は電極構造の電気的接続を明らかにするための模式的平面図である。
図3に示すように、本実施形態の弾性境界波フィルタ装置1は、不平衡端子11と、第1,第2の平衡端子12,13と、第1〜第3のアース端子14〜16とを有する。不平衡端子11及び第1,第2の平衡端子12,13並びに第1〜第3のアース端子14〜16が上記電極構造を外部と電気的に接続する部分に相当し、図2に示した電極パッド5aなどを有するように構成されている。
入力端子としての不平衡端子11には、1ポート型弾性境界波共振子17を介して縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部18が接続されている。1ポート型弾性境界波共振子17は、IDTと、IDTの境界波伝搬方向両側に配置された反射器とを有する。
縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部18は、中央に配置された第1のIDT21と、第1のIDT21の境界波伝搬方向両側に配置された第2,第3のIDT22,23と、第1〜第3のIDTが設けられている部分の境界波伝搬方向両側に配置された第4,第5のIDT24,25と、反射器26,27とを有する。すなわち、縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部18は、5IDT型の縦結合共振子型弾性境界波フィルタである。
第1のIDT21、第4のIDT24及び第5のIDT25の各一端が共通接続され、上記1ポート型弾性境界波共振子17を介して不平衡端子11に接続されている。第1のIDT21、第4のIDT24及び第5のIDT25の各他端が誘電体3上で共通接続され、第3のアース端子16に電気的に接続されている。
他方、第2のIDT22の一端は、第1のアース端子14に接続されており、他端は第1の平衡端子12に接続されている。
また、第3のIDT23の一端は、第2のIDT22の一端と誘電体上で共通接続されて、第1のアース端子14に接続されており、第3のIDT23の他端は、第2の平衡端子13に電気的に接続されている。
そして、第2のIDT22の極性に対して、第3のIDT23の極性が反転されており、従って、第2のIDT22から第1の平衡端子12に流れる信号の位相と、第3のIDT23から第2の平衡端子13に流れる信号の位相とが180°異ならされている。それによって、平衡−不平衡変換機能が実現されている。
他方、第1,第2の平衡端子12,13間には、1ポート型弾性境界波共振子19が接続されている。また、第1の平衡端子12と、第3のアース端子16との間には、付加容量20が接続されている。
本実施形態の弾性境界波フィルタ装置1では、不平衡端子11側が入力端子として用いられ、従って、縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部18の入力側において、不平衡端子11と、第1、第4及び第5のIDT、21,24,25の一端とを接続している信号ラインが、入力信号ライン31を構成している。すなわち、入力信号ライン31は、不平衡端子11と、弾性境界波共振子17とを接続している部分、並びに弾性境界波共振子17と、第1のIDT21、第4のIDT24及び第5のIDT25を接続している信号ライン部分を含む。本実施形態の特徴は、この入力信号ライン31と、縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部18の後段に設けられている第2の平衡端子13との間に、アース電位に接続されるシールドパターン32が設けられていることにある。シールドパターン32は、図3に示すように、第1,第2のアース端子14,15に電気的に接続されている。
より具体的には、図1に示すように、圧電体2は、一対の長辺2a,2b及び一対の短辺2c,2dを有する矩形の平面形状を有する。そして、一方の長辺2aの両側に位置するコーナー部分に、第1,第2のアース端子14,15が配置されており、他方の長辺2bの両側のコーナー部分において、第1,第2の平衡端子12,13が配置されている。そして、長辺2a近傍であって、長辺2aの長さ方向中央部分に不平衡端子11が配置されており、他方の長辺2bの中央部分近傍に、第3のアース端子16が配置されている。図1では、上記不平衡端子11及び第1,第2の平衡端子12,13並びに第1〜第3のアース端子14〜16の位置を円印で示しているが、この円印は、図2に示したバンプ10a,10bに相当するものである。すなわち、上記不平衡端子11を例にとると、不平衡端子11は、外部と電気的に接続する部分であるため、図2に示すバンプ10aで示されるように、下方に配置されている電極パッド上に導電性接合材を介してバンプを設けることにより、外部と電気的に接続し得るように構成されている。
図1では、上記外部と電気的に接続する端子部分において、本来は上方に形成されており、図示されないバンプと、バンプの下方に位置している電極パッドの形状を模式的に示す。すなわち、実際には、円形のバンプは誘電体3及び樹脂層8上に形成されるものであるが、理解を容易とするために、図1では、各端子上のバンプを円で示すこととする。
図1から明らかなように、各バンプの下方には、バンプが接合される電極パッドが形成されている。そして、縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部18の側方に、1ポート型弾性境界波共振子17が配置されており、縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部18の入力側の入力信号ライン31は、縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部18と不平衡端子11とを接続する導電パターンとされている。
他方、弾性境界波フィルタ部18の出力側においては、出力信号ライン33,34が、導電パターンにより形成されている。この出力信号ライン33,34が第1,第2の平衡端子12,13にそれぞれ電気的に接続されている。
図1から明らかなように、弾性境界波フィルタ部18の各IDTのアース端子は長方形のアース電極パッドに接続されている。このアース電極パッド上の誘電体3が除去されて開口3aが形成されている。開口3aを介して導電パターン7aにより5個のアース電極パッドが共通接続されて導電パターン7aによりアース端子14に接続されている。このアース電極パッド上には導電性接合材9aやバンプ10aは形成されない。
本実施形態では、シールドパターン32が、上記入力信号ライン31と、第2の平衡端子13との間に位置するように設けられている。言い換えれば、シールドパターン32により、縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部18の入力端と、第2の平衡端子13とを結ぶ出力信号ライン34と、入力信号ライン31とを電気的に分離するために、シールドパターン32が設けられている。それによって、平衡度をより一層改善することが可能とされている。これを、具体的な実験例に基づき説明する。
上記縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部18を以下の仕様で設計した。
第1のIDTの電極指交差幅=110μm、電極指の本数=15。
第2,第3のIDTの電極指交差幅=110μm、電極指の本数=16。但し、第2のIDTと第3のIDTとは極性が反転されている。
第4,第5のIDTの電極指の交差幅=110μm、電極指の本数=29。
第1〜第5のIDTの波長λ=3.5μm。
両側の反射器の電極指の本数=22。
1ポート型弾性境界波共振子17の仕様
IDTの電極指交差幅=168μm、電極指の本数=81。
両側の反射器の電極指の本数=20。
1ポート型弾性境界波共振子19の仕様
IDTの電極指交差幅=75μm、電極指の本数=41。
両側の反射器の電極指の本数=20。
なお、縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部18及び1ポート型弾性境界波共振子17,19の電極構造は、Auからなる金属を120nmの厚みに成膜することにより形成した。
また、付加容量20は、一対の互いに間挿し合うくし歯電極により構成し、その容量は、0.05pFとした。また、付加容量20を構成するくし歯電極は、上記縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部18などの電極構造を形成する際に、同時に同じ材料を用いて形成した。
シールドパターン32については、縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部18を構成する電極と同じ材料で同時に形成した。
また、上記入力信号ライン31、出力信号ライン33,34等についても、縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部18を形成するに際し、同じ電極材料を用いてパターニングすることにより形成した。
また、不平衡端子11などの外部と電気的に接続する部分に形成される電極パッド5a,5bについては、別途、Alを1600nmの厚みに成膜することにより、形成した。
SiOからなる誘電体3の厚みは6μmとし、樹脂層8はポリイミドからなる樹脂を6μmの厚みに成膜することにより形成した。
このようにして得られた本実施形態の弾性境界波フィルタ装置と、比較のために、上記シールドパターン32が設けられていないことを除いては、同様にして形成した第1の比較例の弾性境界波フィルタ装置を作製した。
上記のようにして得られた実施形態及び第1の比較例の弾性境界波フィルタ装置の振幅平衡度特性及び位相平衡度特性を図4及び図5にそれぞれ示す。また、図6に本実施形態及び第1の比較例の弾性境界波フィルタ装置のコモンモード減衰量−周波数特性を示す。
図4〜図6から明らかなように、シールドパターン32を設けたことにより、本実施形態の弾性境界波フィルタ装置によれば、直達波の影響が緩和されてコモンモードが減少しており、それによって振幅平衡度及び位相平衡度が第1の比較例の場合に比べて大きく改善されていることがわかる。
次に、比較のために、縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部18において、第2,第3のIDTの極性をそれぞれ逆転させ、第1の平衡端子12と第2の平衡端子13との位置を図1に示す状態とは逆としたことを除いては、上記実施形態と同様にして形成された第2の比較例の弾性境界波フィルタ装置を作製した。第2の比較例の弾性境界波フィルタ装置の電極構造を図13に模式的平面図で示す。図13から明らかなように、第2の比較例の弾性境界波フィルタ装置101では、シールドパターン102は、第1の平衡端子と縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部とを結ぶ出力信号ライン33と、入力信号ライン31との間に配置されることになる。
このようにして用意された第2の比較例の縦結合共振子型弾性境界波フィルタ装置の振幅平衡度特性及び位相平衡度特性並びに減衰量−周波数特性を図7〜図9にそれぞれ実線で示す。なお、図7〜図9では、比較を容易とするために、破線で、第1の比較例の弾性境界波フィルタ装置の振幅平衡度特性、位相平衡度特性及び減衰量−周波数特性を併せて示す。
図7〜図9から明らかなように、シールドパターン32を設けたとしても、第1,第2の平衡端子が上記実施形態の場合と逆転されている第2の比較例では、コモンモードの減少は僅かであり、平衡度改善効果も小さいことがわかる。
よって、上記シールドパターン31は、入力信号ライン31と、第2の平衡端子13との間に設けるほうが好ましいことがわかる。
なお、第2の平衡端子側の出力信号ライン側にのみ上記シールドパターン32を設けることにより、第2の平衡端子側の出力信号ライン34とアース電位との間に容量が発生し、それによって、平衡度が若干悪化するおそれがある。しかしながら、第1の平衡端子12側の出力信号ライン33と、アースラインとの間の付加容量20により、出力信号ライン34とアース電位との間に発生した上記容量を相殺することができる。従って、上記付加容量20を設けることにより、平衡度の悪化をより一層抑制することができ、望ましい。
上記シールドパターン32は、立体的には、上方に配置されるバンプと電気的に接続され、誘電体3の上方に設けられたアースパターンと対向されていることにより、シールド効果がより一層高められ、かつ平衡度を改善することができる。
図10は、本発明の第2の実施形態の弾性境界波フィルタ装置41の要部を説明するための模式的正面断面図である。
図10では、SiOからなる誘電体3上に、アースライン42が設けられている。このアースライン42は、誘電体3を介して下方に位置しているシールドパターン32と対向されている。このように、誘電体3を介してシールドパターン32と対向するようにアースライン42を設けることにより、平衡度をより一層改善することができる。
また、図10に示すように、上記アースライン42は、下方に位置しているシールドパターン32と、ビアホール導体43により電気的に接続されており、またアースライン42はアース電位に電気的に接続される。従って、シールドパターン32によるアースを強化することができ、それによって直達波の影響をより一層低減することができ、平衡度をさらに改善することができる。これを具体的な実験結果に基づき、図11及び図12を参照して説明する。
上記ビアホール導体及びアースラインを設けたことを除いては、第1の実施形態と同様にして作製された第2の実施形態の弾性境界波フィルタ装置の振幅平衡度及び位相平衡度を測定した。結果を図11及び図12に示す。図11及び図12において、実線が第2の実施形態の結果を、破線が第1の比較例の結果を示す。図11及び図12から明らかなように、上記ビアホール導体でアースラインに電気的に接続されている構造を有する第2の実施形態によれば、振幅平衡度及び位相平衡度をより一層改善し得ることがわかる。
なお、SiOに代えて、他の酸化ケイ素を用いてもよい。また、誘電体は、酸化ケイ素以外の、例えば窒化ケイ素などの他の誘電体材料により形成されていてもよい。同様に、圧電体についても、LiNbO以外の圧電単結晶により形成されていてもよい。
なお、第1,第2の実施形態では、第1〜第5のIDTを有する5IDT型の縦結合共振子型弾性境界波フィルタ装置につき説明したが、本発明は、第1〜第3のIDTのみが設けられている3IDT型の縦結合共振子型弾性波フィルタ装置にも適用することができる。さらに、本発明は、弾性境界波フィルタ装置に限らず、弾性表面波を利用した弾性表面波フィルタ装置にも適用することができる。

Claims (6)

  1. 平衡−不平衡変換機能を有するバランス型フィルタ装置であって、
    圧電体と、
    前記圧電体上に設けられた電極構造とを備え、
    前記電極構造は、第1のIDTと第1のIDTの弾性波伝搬方向両側に配置された第2,3のIDTと、前記第1〜3のIDTが設けられている部分の弾性波伝搬方向両側に配置された第1,2の反射器とを有し、それによって、縦結合共振子型弾性波フィルタ部が形成されており、
    前記電極構造が、不平衡端子と、第1,第2の平衡端子と、前記不平衡端子と前記縦結合共振子型弾性波フィルタ部と接続している入力信号ラインとをさらに備え、
    前記第1のIDTの一端が前記入力信号ラインにより前記不平衡端子に接続されており、
    前記第2,3のIDTの一端が、それぞれ、第1,2の平衡端子に接続されており、
    前記第2,第3のIDTの他端が、それぞれ、アース電位に接続されており、
    前記電極構造は、前記入力信号ラインと前記第2の平衡端子との間に配置されており、アース電位に接続されるシールドパターンをさらに備えており、第1のIDTと第3のIDTとが隣接する箇所で互いに隣接する最外電極指の極性が異極性であることを特徴とする、バランス型弾性波フィルタ装置。
  2. 前記第1〜第3のIDTが設けられている部分の弾性波伝搬方向両側に配置された第4,第5のIDTをさらに備え、第1,第2の反射器が、前記第1〜第5のIDTが設けられている部分の両側に配置されており、それによって、5IDT型の縦結合共振子型弾性波フィルタ部が形成されており、前記入力信号ラインにより、前記第1のIDTだけでなく、前記第4,第5のIDTの一端が前記不平衡端子に接続されており、第3のIDTと第1のIDTとが隣接する箇所で互いに隣接する最外電極指の極性、及び第3のIDTと第5のIDTとが隣接する箇所で互いに隣接する最外電極指の極性が異極性である、請求項1に記載のバランス型弾性波フィルタ装置。
  3. 前記圧電体上に積層された誘電体をさらに備え、前記弾性波として弾性境界波が用いられている、請求項1または2に記載のバランス型弾性波フィルタ装置。
  4. 前記誘電体上に設けられたアースラインをさらに備え、該アースラインが、前記シールドパターンと誘電体を介して対向されている、請求項3に記載のバランス型弾性波フィルタ装置。
  5. 前記シールドパターンと前記アースラインとを電気的に接続するように、前記誘電体を貫通するように設けられたビアホール導体をさらに備える、請求項4に記載のバランス型弾性波フィルタ装置。
  6. 前記弾性波として弾性表面波が用いられる、請求項1または2に記載のバランス型弾性波フィルタ装置。
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