JP4868428B2 - 高純度キチンスラリーの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、タンパク質等の不純物の含量が低い高純度キチンスラリーの製造方法に関する。
キチンは、カニやエビ等の甲殻類の殻、昆虫の表皮、キノコ等の細菌細胞壁から得られる天然ムコ多糖類であって、地球上に大量に存在する生物資源である。このようなキチンは、保湿性、生理活性、生体適合性等、様々な優れた特性を有することが明らかとなってきた。このため、キチンの優れた特性を、繊維、フィルム、化粧品、食品、医薬、医用材料等の分野に利用するために、多くの研究がなされている。
しかしながら、キチンは、その化学構造に由来する強固な水素結合によって、硬い結晶構造を形成しているため、難溶性を示すことが知られている。この難溶性のため、キチンを溶解または良分散させた溶液または分散体を形成することができず、その利用分野は、キチンの粉体を基材中へ物理的に練り込んで成形体とすることによる用途等、極めて限定されたものであった。
本発明者らは、上記のように難溶性であるキチンを溶媒中に溶解または良分散させることができれば、キチンの上記優れた特性の利用が容易となることに着眼して鋭意検討を行ったところ、アルコール(特にメタノール)とハロゲン化カルシウム塩またはハロゲン化マグネシウム塩(特に塩化カルシウム二水塩)とを含んでなる特定の溶媒を用いると、キチンを溶解させることができることを見出した(特許文献1および非特許文献1)。その結果、上記キチン溶液を使用した種々の混合物および成形体等が開発されている(特許文献2〜4)。
また、上記キチン溶液を水で希釈することにより、上記の特別な溶媒が水分子と置換した水和キチンゲル(水和キチンスラリー)が得られることが分かった(特許文献5および6、非特許文献2)。当該水和キチンスラリーは、メタノールによる環境汚染の問題を引き起こすことなく、種々の用途に適用可能である。
上記水和キチンスラリーの原料となるキチンは、通常、その原料に由来して少量のタンパク質が不純物としてキチン高分子に結合している。タンパク質は、抗原抗体反応を引き起こし、健康被害を与える可能性がある。特に蟹由来のキチンの場合、甲殻アレルゲン(トロポミオシン)が残存し、甲殻アレルギーを引き起こす可能性がある。
また、原料となるキチンには、キトサン(アセチル化度が50%以下のN−アセチルグルコサミンとグルコサミンとのポリマー)が不純物として含まれており、また、アセチル化度が比較的低く、キトサンに近い低品質のキチンも存在する。キトサンは、体質に合わない人が存在し、また、大量にキトサンを摂取した場合、人体に悪影響を及ぼす可能性がある。
さらに、従来の水和キチンスラリーの製造方法において、キチン溶液中の不溶物をろ過工程において除去する場合、これまで確認されていたキトサンなどの不溶物の他にタンパク質が多く結合したキチン、低品質のキチン等の不純物が不溶性のゲルを形成し、ろ布の目詰まりの原因となることが判明した。さらに、真空ろ過等の外力を用いてろ過する場合、当該ゲルはキトサンなどの不溶物と異なりろ布を通過し、得られる水和キチンスラリーの品質の低下を引き起こしていた。
以上のように、従来の水和キチンスラリーの製造方法では、人体に悪影響を及ぼし得るタンパク質、キトサン等の不純物の除去が十分ではなく、得られる水和キチンスラリーの品質および安全性に問題があった。また、その生産効率も低く、満足できる程度ではなかった。
特開平06-179702号公報 特開平07-316202号公報 特開平08-120173号公報 特開平10-101811号公報 特開2005-035934号公報 特開2005-036109号公報 Akihiro Shirai, Kiyohisa Takahashi, Ratana Rujiravanit, Norio Nishi and Seiichi Tokura, Title: Chitin and Chitosan: The Versatile Environmentally Friendly Modern Materials "Regeneration of Chitin Using New Solvent System", Ed. Mat B Zakaria, Wan Mohamed Wan Muda, Md Pauzi Abdullah, Pb. Universiti Kebangsaan Malaysia Press, 1995 「キチン,キトサン実験マニュアル」、キチン,キトサン研究会編、技報堂出版株式会社(1991年4月)
本発明の課題は、人体に悪影響を及ぼし得るタンパク質、キトサン等の不純物が十分に低く、品質および安全性が向上した水和キチンスラリーを効率的に製造する方法を提供することである。
本発明者らは、以下に詳細に説明するように、特定のキチンを出発原料として使用し、必要に応じて、特定の工程を行うことで、上記の課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明には以下のものが含まれる。
〔1〕(a)タンパク質含量0.14重量%未満およびアセチル化度96%以上のキチンを、メチルアルコールまたはエチルアルコールからなるアルコールと、ハロゲン化カルシウム塩またはハロゲン化マグネシウム塩とを含んでなる溶媒に溶解して、キチン溶液を得る工程と、
(b)キチン溶液をろ過して不溶物を除去する工程と、
(c)ろ過されたキチン溶液を水で希釈し、必要に応じて、生成したキチンの沈殿を水洗し、または透析を行い、溶液中に含まれるカルシウムイオンまたはマグネシウムイオンとアルコールを水分子で置換して、水和キチンスラリーを得る工程と
を含む、水和キチンスラリーの製造方法。
〔2〕(d)キチン溶液または水和キチンスラリーに炭酸ガスおよび/または炭酸水素ナトリウムを添加して、残留するアルコールを分離する工程をさらに含む、上記〔1〕に記載の方法。
〔3〕(e)キチン溶液または水和キチンスラリーに、有機酸を添加して、残留するカルシウムイオンまたはマグネシウムイオンを分離する工程をさらに含む、上記〔1〕または〔2〕に記載の方法。
〔4〕有機酸が、クエン酸、コハク酸、無水コハク酸、グルタミン酸、エチレンジアミン酸およびアスルビン酸からなる群から選択される、上記〔3〕に記載の方法。
〔5〕工程(a)に使用されるキチンが、60℃以上の温度で乾燥させたものである、上記〔1〕に記載の方法。
〔6〕工程(a)に使用されるキチンが、再生キチンである、上記〔1〕に記載の方法。
〔7〕工程(a)に使用されるキチンが、脱O−アシル化されたものである、上記〔1〕に記載の方法。
本発明のキチンスラリーの製造方法によれば、人体に悪影響を及ぼし得るタンパク質、キトサン等の不純物が十分に低く、品質および安全性が向上した水和キチンスラリーを効率的に製造することができる。
本発明の水和キチンスラリーの製造方法は、
(a)タンパク質含量0.14重量%未満およびアセチル化度96%以上のキチンを、メチルアルコールまたはエチルアルコールからなるアルコールと、ハロゲン化カルシウム塩またはハロゲン化マグネシウム塩とを含んでなる溶媒に溶解して、キチン溶液を得る工程と、
(b)キチン溶液をろ過して不溶物を除去する工程と
(c)キチン溶液を水で希釈し、必要に応じて、生成したキチンの沈殿を水洗し、溶液中に含まれるカルシウムイオンまたはマグネシウムイオンとアルコールを水分子で置換して、水和キチンスラリーを得る工程と
を含む。
本発明の水和キチンスラリーの製造方法において出発原料となるキチンは、一般に、カニやエビ等の甲殻類の殻、昆虫の表皮、イカ等の骨格、キノコ等の細菌細胞壁から得られる多糖類(ポリN−アセチル−D−グルコサミン)であって、通常は、粉体の性状を有している。本発明では、市販されている任意のキチンを使用することができ、微生物を利用して製造されたものであってもよい。また、キトサン等をN−アセチル化した再生キチンであってもよい。特に再生キチンを利用することで、通常のキチンにおいてタンパク質除去、分子量の変更過程で発生する脱アセチル化による純度の低下問題を解決し、任意の分子量を持つ高純度キチンスラリーを作成することが可能となる。さらに、キチンは、α型およびβ型を含むいかなる立体構造を有するものであってもよい。
上記出発原料のキチンの重量平均分子量は、2.3×10以上、好ましくは5×10以上、より好ましくは1×10〜5×10、特に好ましくは5×10〜5×10である。当該重量平均分子量は、最終生成物の用途に応じて適宜選択すればよい。
上記キチンの重量平均分子量の値は、後述する粘度法によって決定される値である。
本発明において、上記出発原料のキチン中のタンパク質含量(アミノ酸含量として算出)は、0.14重量%未満、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.01重量%以下であり、および上記出発原料のキチンのアセチル化度は、96%以上、好ましくは97%以上、特に好ましくは98%以上である。
上記出発原料のキチンを低タンパク質含量および高アセチル化度のキチンにすることで、ろ過工程(b)においてろ過を妨害するゲル状物質の生成量を減少させることができる。したがって、ろ過を、高いろ過速度で行うことができ、また、外力を使用する必要がないためゲル状物質がろ布を通過することがない。その結果、ろ液中のキチンは高品質(高純度)になる。
ここで、ゲル状物質となるのは、アセチル化度が低いキチン、タンパク質含量が高いキチン、および後述するメタノール、水などが含まれるキチンなどである。
なお、上記キチン中のタンパク質含量(アミノ酸含量)の値は、アミノ酸18種(リジン、ヒスチジン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、バリン、スレオニン、トリプトファン、アルギニン、チロシン、アラニン、グリシン、プロリン、グルタミン酸、セリン、アスパラギン酸、シスチン)をアミノ酸自動分析法および高速液体クロマトグラフ法によって測定することによって決定される値である。
また、上記キチンのアセチル化度の値は、2mol/lの塩酸にて処理されたキチンを、0.1mol/lのNaOHにて中和滴定することによって決定される値である。
上記出発原料のキチンは、工程(a)において溶媒に溶解させる前に、好ましくは60℃以上、より好ましくは100℃以上の温度で予め乾燥させたものであることが好ましい。乾燥温度の上限は、特に限定されないが、好ましくは200℃以下、より好ましくは120℃以下である。特に好ましくは、80℃〜100℃の温度である。
また、乾燥時間は、特に限定されないが、例えば、1時間〜48時間、好ましくは4時間〜12時間である。
さらに、当該乾燥は、減圧〜真空下で行うことが好ましい。
このように乾燥させることで、ろ過工程(b)においてろ過を妨害するゲル状物質の生成量をより一層減少させることができる。したがって、ろ過を、より高いろ過速度で外力を使用することなく行うことができる。その結果、ろ液中のキチンはより高品質(高純度)になる。
なお、このような乾燥により、キチンに付着した水分、およびキチン(再生キチン)の製造工程、洗浄工程などにおいて使用される有機溶媒(メタノールなど)の残存物がキチンから除去されるため、ゲル状物質の生成量の減少が生じると考えられている。
また、乾燥温度、乾燥時間および乾燥圧力は、ろ過速度の向上の程度を考慮して、適宜設定することができる。
上記出発原料のキチンは、再生キチンであることが好ましい。本発明における「再生キチン」とは、キトサン(アセチル化度50%以下)、キチン・キトサン(アセチル化度50%前後)中のグルコサミンを再度アセチル化してN−アセチルグルコサミンとして、アセチル化度を50%よりも高くしたキチン、低品質キチン(アセチル化度90%以下)中のグルコサミンを再度アセチル化したキチンを意味する。
また、再生キチンは、例えば、酢酸に溶解させたキトサンを、無水酢酸にてアセチル化することにより製造することができる。
また、本発明においては、出発原料のキチン(特に再生キチン)は、脱O−アシル化されたものであることが好ましい。再生キチンを製造するために、キトサンをN−アセチル化する際にOH基もアセチル化(O−アシル化)されるが、O−アシル化されたキチンは工程(a)における溶媒中に溶解しない。その結果、O−アシル化されたキチンは、ろ過工程(b)において不溶物として除去され、得られる水和キチンスラリー中のキチン量が減少することになる。脱O−アシル化することにより、このようなキチン量の低下を防ぐことができる。
脱O−アシル化は、例えば、pH10〜pH11(特にpH11)のアルカリ条件下にて20℃〜95℃(特に80℃)で加熱することで行うことができる。
上記工程(a)では、タンパク質含量0.14重量%未満およびアセチル化度96%以上のキチンを、メチルアルコールまたはエチルアルコールからなるアルコールと、ハロゲン化カルシウム塩またはハロゲン化マグネシウム塩とを含んでなる溶媒に溶解して、キチン溶液を得る。このような溶媒を用いることにより、難溶性を示すキチンの硬い結晶構造を崩して溶媒をキチン分子内部まで浸透させることが可能となり、その結果、溶媒和が生じて拡がった分子構造になり、溶解状態のキチンを得ることができる。当該工程は、例えば特開平06-179702号公報に記載されるように行うことができる。
上記溶媒におけるハロゲン化カルシウム塩としては、塩化カルシウム・2水塩、臭化カルシウム・2水塩、ヨウ化カルシウム・2水塩等が挙げられる。
上記溶媒におけるハロゲン化マグネシウム塩としては、塩化マグネシウム・6水塩等が挙げられる。
また、上記溶媒におけるアルコール中のハロゲン化カルシウム塩またはハロゲン化マグネシウム塩の濃度は、キチン溶解量の点からは、飽和濃度であることが好ましい。しかしながら、アルコールの蒸発等によりハロゲン化カルシウム塩またはハロゲン化マグネシウム塩が析出した場合、析出した塩は、未だ溶解していないキチンと結合し、該キチンが溶解するのを妨害するばかりでなく、ろ過工程(b)においてゲル状物質を形成し、ろ過を妨害する。したがって、キチンの収量およびろ過工程(b)の効率(ろ過速度)の観点からは、ハロゲン化カルシウム塩またはハロゲン化マグネシウム塩の濃度を調節して、これらの塩が析出しないようにすることが好ましい。
ある実施形態においては、キチンを上記の溶媒中に、好ましくは0.1〜5%(w/v)、より好ましくは0.5〜2%(w/v)となるような濃度で添加し、好ましくは20℃〜70℃、より好ましくは40℃〜60℃の温度で、還流下充分撹拌しながら溶解させる。使用するキチンの分子量の大きさに応じて、溶媒中のキチン濃度を調節することが好ましい。
上記工程(b)では、キチン溶液をろ過して不溶物を除去する。本発明においては、出発原料として上記の特定のキチンを使用するため、従来のキチンを使用した場合よりも、はるかに高いろ過速度で、外力を使用することなくキチン溶液をろ過することができる。
ろ過工程(b)に使用するろ布は、出発原料のキチン等に応じて種々の材料および種々の性状(厚さ、孔径、孔密度等)を有するものを使用できる。
例えば、平均孔径が、好ましくは0.01〜1mm、より好ましくは0.05〜0.5mm、特に0.13mmおよび0.2mmであり、および/または、平均網目数が、好ましくは0.5〜50個/mm、より好ましくは1〜10個/mm、特に4個/mmであるろ布を使用することができる。
ここで、平均孔径は、顕微鏡、マイクロスコープなどの光学測定装置により測定される値である。
また、平均網目数(個/mm)は、ろ布1mmの長さ当たりに存在する網目(孔)の数の平均値を指す。
また、ろ過工程(b)におけるろ過は、特に限定されず、例えば、上記のろ布にキチン溶液を注ぎ、重力によってろ過を行う自然ろ過、吸引ろ過等が挙げられる。
また、キチンの収量が減少するが、不純物であるゲルを静置後に沈殿分離または遠心分離し、その後にろ過(自然ろ過、吸引ろ過等)を行うこともできる。
上記工程(c)では、ろ過されたキチン溶液を水で希釈し、必要に応じて、生成したキチンの沈殿を水洗し、または透析を行い、溶液中に含まれるカルシウムイオンまたはマグネシウムイオンとアルコールを水分子で置換することにより、水和キチンスラリーを得ることができる。
ある実施形態においては、キチン溶液を室温に冷却後、ろ布(ネル)で不溶部を除去する。その後、蒸留水で希釈する。その際の希釈濃度は、キチン溶液と水との体積比(キチン溶液:水)が、好ましくは1:1〜1:4、より好ましくは1:2〜1:3である。蒸留水で希釈すると通常キチンが沈澱するので、これを十分水洗をして、アルコールとカルシウムイオンまたはマグネシウムイオンを除去する。また、水で希釈後、アルコールとカルシウムイオンまたはマグネシウムイオンを除去するために、透析を行ってもよい。また、水洗および透析は繰り返し行ってもよい。
さらに、得られる水和キチンスラリーの水分量を、遠心法等によって調節して、所望のキチン含量の水和キチンスラリーを得ることもできる。
本発明の方法は、必要に応じて、キチン溶液または水和キチンスラリーに、炭酸ガスおよび/または炭酸水素ナトリウムを添加して、残留するアルコールを除去する工程(d)、および/または、キチン溶液または水和キチンスラリーに、有機酸(例えば、クエン酸、コハク酸、無水コハク酸、グルタミン酸、エチレンジアミン酸、アスユルビン酸)を添加して、カルシウムイオンまたはマグネシウムイオンを除去する工程(e)を含む。これらの工程を得ることにより、得られる水和キチンスラリーは、より高品質のものになる。
上記工程(d)では、キチン溶液(例えば上記工程(b)から得られるもの)または水和キチンスラリー(例えば上記工程(c)から得られるもの)を、必要に応じて水で希釈後、これに炭酸ガスおよび/または炭酸水素ナトリウムを添加して、残留するアルコールを分離する。炭酸ガスおよび/または炭酸水素ナトリウムを添加することで、キチン溶液および水和キチンスラリー(これらの水による希釈物を含む)は、キチンと炭酸カルシウムまたはマグネシウムとの沈澱(固相)と、水、アルコールおよびNaOHよりなる液相に分離する。したがって、ろ過、遠心分離等の既知の固液分離手段によって、キチンの沈澱(固相)から、アルコールを含有する水溶液(液相)を分離することができる。
次いで、アルコールを分離したキチンの沈澱を、上記工程(c)と同様に処理することにより、アルコール含量がさらに低減された水和キチンスラリーを得ることができる。
工程(d)におけるキチン溶液および水和キチンスラリー(これらの水による希釈物を含む)に対する炭酸ガスおよび/または炭酸水素ナトリウムの添加量は、添加によってpH4〜6.5(特にpH6)になるように調節すればよい。
工程(d)は、例えば、冷却下(例えば1℃〜15℃)から室温(約20〜30℃)までの温度において、上記キチン溶液150mL(キチン含有量1.5g)を、イオン交換水150mLで希釈し、次いで、炭酸水素ナトリウム3gを添加し、混合する(この場合、pH4.5になる)。次いで、得られた沈澱物を上記工程(b)と同様にろ過し、アルコールを含有する液相を分離する。次いで、ろ過された沈澱物を、上記工程(c)と同様に処理することにより、アルコール含量がさらに低減された水和キチンスラリーを得る。
上記工程(e)では、キチン溶液(例えば上記工程(b)から得られるもの)または水和キチンスラリー(例えば上記工程(c)または(d)から得られるもの)に、有機酸を添加して、残留するカルシウムイオンまたはマグネシウムイオンを分離する。このような酸をキチン溶液または水和キチンスラリーに加えることで、キチン溶液または水和キチンスラリー中に存在する炭酸カルシウムまたはマグネシウム等の不溶性塩は溶解する。したがって、透析等を行うことにより、キチン溶液または水和キチンスラリーからカルシウムイオンまたはマグネシウムイオンを分離することができる。
上記工程(e)に使用される有機酸としては、例えば、クエン酸、グルタミン酸、エチレンジアミン酸、アスユルビン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、ジカルボン酸群(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸など)などが挙げられる。これらは、単独でも2種以上の混合物でもよい。
なかでも、安全性、入手性などから、クエン酸、コハク酸、無水コハク酸、グルタミン酸、エチレンジアミン酸およびアスユルビン酸から選択される有機酸を使用することが好ましい。
工程(e)における水和キチンスラリーに対する上記有機酸の水溶液濃度は、0.1〜10%(w/v)、好ましくは1〜3%(w/v)、より好ましくは1〜2%(w/v)である。
また、工程(e)は、特に工程(d)から得られる水和キチンスラリー(キチンの沈澱)に対して適用することが好ましい。この場合、工程(d)により水和キチンスラリー中に蓄積された炭酸カルシウムまたはマグネシウムを液中に溶解させ、ろ過、遠心分離等の既知の固液分離手段によってカルシウムイオンまたはマグネシウムイオンとして容易に分離することができる。その結果、アルコール含量、カルシウムイオンまたはマグネシウムイオン含量がさらに低減された水和キチンスラリーを得ることができる。
工程(e)は、例えば、上記キチン溶液150mL(キチン含有量1.5g)を、イオン交換水150mLで希釈し、次いで、炭酸水素ナトリウム3gを添加して処理して得られた水和キチンスラリー(キチン含有量1.5g;pH約4.5)を、室温下で1%(w/v)クエン酸水溶液500mLに添加し、混合する。次いで、得られた沈澱物を上記工程(b)と同様にろ過し、カルシウムイオンまたはマグネシウムイオンを含有する液相を分離する。次いで、ろ過された沈澱物を、上記工程(c)と同様に処理することにより、カルシウムイオンまたはマグネシウムイオン含量がさらに低減された水和キチンスラリーを得る。
本発明の方法は、必要に応じて、水和キチンスラリーを機械的に混合する工程をさらに含む。これにより、水和キチンスラリーをより均一なものにすることができる。このような機械的混合は、例えば、ブレンダー、自転・公転式撹拌機等の各種の撹拌機を用いて行うことができる。
本発明の方法により得られる水和キチンスラリーは、タンパク質含量およびキトサン含量が人体に影響を与えない程度まで低減されている。例えば、蟹由来のキチンに含有され得る甲殻アレルゲン(トロポミオシン)は、ELISA法による測定で検出限界以下(例えば、0.3ppm以下)となり得る。したがって、本発明の方法により得られる水和キチンスラリーは、従来の水和キチンスラリーに比べて、品質および安全性が大幅に向上されている。
本発明の方法により得られる水和キチンスラリーは、キチンおよびキトサンの適用分野に好適に適用することが可能である。すなわち、以下の適用分野に適用することができる。
(1)化粧品分野:ヘルスケア、スキンケア、ヘアケア、オーラルケア、アンチエイジング用等のクリーム、クレンジング等(保湿剤、増粘剤、炎症抑制、紫外線、ヘアダメージ抑制、皮膚ダメージ抑制、皮膚再生)、忌避剤等、
(2)食品分野:腸内代謝改善(乳酸菌増殖、乳糖の消化に必要なβガラクシトーゼの生産促進)、免疫力増強、パンのふくらみ向上、ヒアルロン酸産生促進、変形関節症の予防・改善用等の健康食品、機能性食品等、
(3)医療分野:創傷治癒剤(材)、不織布、人工皮膚、手術用縫合糸、クリーム、医薬品(薬、不織布形状でがん細胞増殖抑制、免疫増強作用(がん細胞増殖抑制や日和見感染菌−Lisera monocytogenesに対する防御効果)、乳酸菌増殖、乳糖の消化に必要なβガラクシトーゼの生産促進、ヒアルロン酸産生促進、変形関節症の予防・改善、炎症改善、治癒(口内炎、歯肉炎、歯槽膿漏等も含む)、鎮痛抑制剤、止血剤、殺菌剤)、生体材料(骨、歯等)等、
(4)植物分野:土壌改良材、植物防除材等、
(5)バイオ分野:細胞増殖用基材等、
(6)成形材料分野:プラスチック製品へのフィラー(増粘剤、生分解素材)、天然素材成形品、フィルム等、
(7)増粘剤等。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、以下の実施例および比較例における物性の評価方法は以下の通りである。
〔重量平均分子量〕
キチンの分子量は、以下の手順により決定した(粘度法)。
(1)複数の既知の濃度のキチン溶液を作成し、これらの粘度をコーンプレート型回転粘度計で測定する(機器:ブルックフィールド社製「DV-II+Pro」、温度:25℃)。
(2)上記の粘度より対象キチンの固有粘度を計算する。
(3)算出した固有粘度より、以下の粘度式にしたがって重量平均分子量を算出する。
[η]=2.54×10−20.45
〔式中、[η]:固有粘度、M:重量平均分子量〕。
〔アセチル化度〕
キチンのアセチル化度は、以下の手順により決定した。
(前処理)
(1)2M−塩酸100mlとキチン2gを100mlビーカーに入れ、400rpmで30分間攪拌(マグネチックスターラー)する。
(2)混合物を、ろ紙(ADVANTEC製「QUALITVE FILTER PAPRE NO.1」)にてろ過後、ろ過残渣とメタノール100mlをビーカーに入れ、15分間攪拌洗浄する。次いで、混合物を再びろ過する。
(3)上記(2)の操作を4回以上繰り返し行う。
(4)メタノールによる洗浄の終了後、得られた残渣(キチン)を約1時間風乾する。その後、50℃で真空乾燥を12時間行う。
(測定)
(1)前処理したキチンを0.5000g精秤する。
(2)蒸留水50ml(メスシリンダーで計量)を加え、フェノールフタレインを3滴加え、400rpmで攪拌しながら、0.1N水酸化ナトリウム水溶液で滴定する。液の着色(ピンク)が30秒以上続いた点を終点とする。
(3)キチンの重量(a)と0.1N水酸化ナトリウム水溶液の滴定量(b)から次式よりアセチル化度を算出する。
アセチル化度(%)=(2.03×b)/[a+(5.5×b×10−4)]
〔タンパク質含量〕
キチンのタンパク質含量は、以下の手順によりアミノ酸18種(リジン、ヒスチジン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、バリン、スレオニン、トリプトファン、アルギニン、チロシン、アラニン、グリシン、プロリン、グルタミン酸、セリン、アスパラギン酸、シスチン)を分析して決定した(アミノ酸分析法)。
(1)キチンを加水分解する(塩酸加水分解;メチオニン、シスチンは過ギ酸酸化処理後、塩酸加水分解)。
(2)アミノ酸分析機(日立製高速アミノ酸分析計L8800k)によって各種アミノ酸量を測定する。
(3)トリプトファンのみ高速液体クロマトグラフ法(日本電子製株式会社製JLC−500 V)にて測定する。
〔キチンスラリー中のキチン濃度(水分量)〕
キチンスラリー中のキチン濃度(水分量)は、示差熱測定器でキチンスラリーを200℃まで加熱し、減量解析を行い算出した。
〔キチン粉末中の水分量〕
キチン粉末の水分量は、示差熱測定器で150℃まで加熱し、減量解析を行い算出した。
〔キチン粉末〕
実施例および比較例には、以下のキチン粉末を使用した。
(1)キトサン((株)協和テクノス製「フローナックC」)に基づく再生キチン(以下の製造例1にしたがって調製)
a)重量平均分子量:50,000〜100,000
b)アセチル化度:98.9%〜96.4%
c)タンパク質含量(上記方法により測定):総量0.01重量%(グリシンのみが検出)
(2)甲陽ケミカル(株)製「キチンTCL」
a)重量平均分子量:数十万
b)アセチル化度97.3%
c)タンパク質含量(上記方法により測定):総量0.14重量%
〔残留ゲル状物質量およびその乾燥重量〕
(1)残留ゲル状物質量(g)は、漏斗内のキチン溶液がほぼなくなった時点で、ろ布ごとその重量を測定し、次いで、当該重量よりろ布の乾燥重量を引くことにより算出する。
(2)残留ゲル状物質の乾燥重量(g)は、残留ゲル状物質量を測定した後、ビーカーに入れたイオン交換水にろ布を浸漬して、ろ布よりゲル状物質を取り出し、次いで、ビーカーの内容物をガラス棒などで撹拌し、水溶性の物質(塩化カルシウムなど)を溶解させる。当該溶液をろ過し、ろ過残渣を乾燥機にて乾燥した後、重量を測定して、乾燥重量とする。
〔製造例1〕 再生キチン粉末の調製
(1)1%(v/v)酢酸水溶液(5L;シグマアルドリッチジャンパン(株)製、SAJ一級、酢酸)にキトサン(100g:(株)協和テクノス製「フローナックC」)を溶解させた。
(2)メタノール(5L)に無水酢酸(528mL;関東化学株式会社製)を混合した溶液を、上記の溶液に混合し、一晩静置し、N−アセチル化を行った。
(3)40%(w/v)NaOH水溶液(シグマアルドリッチジャンパン(株)製 SAJ一級 水酸化ナトリウム)にて中和した後、遠心脱水機((株)コクサン製「H−122」)を用いて500〜1,000rpm、ろ布(コクサン製PR−20)の条件下、ろ過した。
(4)上記の沈殿物をイオン交換水に浸漬後、40%NaOH水溶液を添加して、pH11に調整後、80℃、30分間加熱し、脱O−アシル化を行った。
(5)10%(v/v)塩酸(シグマアルドリッチジャンパン(株)製、試薬特級)にて中和後、イオン交換水、メタノール、アセトンに各々浸漬、上記(3)の条件でろ過し、洗浄を行った。
(6)48時間風乾した後、乾燥機(東京理科器械(株)製「EYELA VOS301SD」)にて60℃、18時間真空乾燥を行った。
(7)ブレンダー(オスター製「オスターブレンダー ST−1」)にて上記の乾燥物を粉砕後、60mesh/inchの篩に掛け、再生キチン粉末を調製した。この再生キチン粉末のアセチル化度は、97.4%であり、タンパク質含量は、0.01重量%であった。
〔実施例1〕 水和キチンスラリーの調製
(1)メタノール(10L)に塩化カルシウム2水和物(8.5kg;和光純薬製「塩化カルシウム(2水)」)を溶解させて、塩化カルシウム2水和物飽和メタノール溶液を調製した。次いで、55℃に温調されたウォーターバス中で、該溶液(11L)中に、上記製造例1で得られた再生キチン粉末(70g)を、撹拌機(「FINE FL−105N」)を用いてダイヤル3〜7の撹拌条件下に溶解させ、キチン溶液を調製した。
(2)上記キチン溶液を、ろ布(平均孔径約0.2mm、平均網目数約4個/mm)を用いてろ過し、不溶物等を除去した。ろ過時間は、約20分であった。
(3)次いで、ろ過されたキチン溶液と、等倍〜2倍量のイオン交換水を、ブレンダー(オスター製「オスターブレンダー ST−1」)を用いて10,300〜15,700rpmの撹拌条件下に混合し、次いで一晩静置してキチンを沈殿させた。
(4)その後、沈殿物を、遠心脱水機((株)コクサン製「H−122」)を用いて500〜1,000rpm、ろ布(コクサン製 PR−20)の条件下、ろ過した。次いで、脱水された沈殿物を、さらに遠心脱水による排水量と同量のイオン交換水を追加しながら遠心脱水を行い、排水の導電率が約0.3〜0.2mS/m以下に達するまで洗浄し、最後に脱水することにより、水和キチンスラリーを得た。
得られた水和キチンスラリー中のメタノール残量をガスクロマトグラフィー(島津製作所製 GC14B)で測定したところ、検出限界である5ppm未満であった。
(5)得られた水和キチンスラリーの一部を乾燥機(yamato社製「DN410H」)にて80℃で一晩乾燥し、キチン濃度を測定した。最終的に418g(平均キチン濃度10.4重量%)の水和キチンスラリーを得た。収率は約62%であった。
〔実施例2〕
(1)上記製造例1と同様の方法で調製した再生キチン粉末(アセチル化度98.7%、タンパク質含量0.01重量%)を、乾燥機(東京理科器械(株)製 EYELA VOS301SD)にて85℃、18時間真空乾燥後、その62.5gを、55℃に温調されたウォーターバス中で、上記実施例1(1)と同様の方法で調製した塩化カルシウム2水和物飽和メタノール溶液(7L)に添加し、撹拌機(IKA社製、LABORTECHNIK RW20.n)を用いてダイヤル2〜7の撹拌条件下に溶解させ、キチン溶液を調製した。
(2)上記キチン溶液を、ろ布(平均孔径約0.2mm、平均網目数約4個/mm)を用いてろ過し、不溶物等を除去した。ろ過時間は、6分40秒であった。
(3)次いで、ろ過されたキチン溶液と、その1.25倍のイオン交換水を、ブレンダー(オスター製「オスターブレンダー ST−1」)を用いて10,300〜15,700rpmの撹拌条件下に混合し、次いで一晩静置してキチンを沈殿させた。
(4)その後、沈殿物を、遠心脱水機((株)コクサン製「H−122」)を用いて500〜1,000rpm、ろ布(コクサン製PR−20)使用の条件下に脱水した。次いで、脱水された沈殿物を、さらに遠心脱水による排水量と同量のイオン交換水を追加しながら遠心脱水を行い、排水の導電率が約0.3〜0.2mS/m以下に達するまで洗浄し、最後に脱水することにより、水和キチンスラリーを得た。
(5)得られた水和キチンスラリーの一部を示唆熱分析器で原料解析を行い、キチン濃度を測定した。最終的に569g(平均キチン濃度8.3重量%)の水和キチンスラリーを得た。収率は約76%であった。
(6)(3)においてろ布上の残余物のアセチル化度を測定したところ、98.3%であり、アセチル化度の低い低品質の再生キチンが分離されていた。
〔実施例3〕
(1)上記製造例1と同様の方法で調製した再生キチン粉末(80g;アセチル化度96.4%、タンパク質含量0.01重量%)を、55℃に温調されたウォーターバス中で、上記実施例1(1)と同様の方法で調製した塩化カルシウム2水和物飽和メタノール溶液(11L)に添加し、撹拌機(IKA社製、LABORTECHNIK RW20.n)を用いてダイヤル2〜7の撹拌条件下に溶解させ、キチン溶液を調製した。
(2)上記キチン溶液を、ろ布(平均孔径約0.2mm、平均網目数約4個/mm)を用いてろ過し、不溶物等を除去した。
(3)次いで、ろ過されたキチン溶液を2つにわけ、片方を上記実施例1(4)以降と同様の方法で洗浄し、最終的に332g(平均キチン濃度7.7重量%)のキチンスラリーを得た。収率は64%であった。この際、使用した洗浄用イオン交換水量は約120Lを越えており、最終的な排水の導電率も0.177mS/mであった。その後、乾燥してアセチル度を測定したところ、ろ過以前より品質のよいアセチル化度97.6%を得た。したがって、アセチル化度が低い品質の悪いキチンが分離され、調製されたキチンスラリーの純度が向上したことが確認できた。
(4)もう片方のキチン溶液(4L)に炭酸水素ナトリウム(100g;シグマアルドリッチ社製、炭酸水素ナトリウム、特級)を混合し、撹拌後、ろ過し、沈殿物を得た。
(5)得られた沈殿物を1%(w/v)クエン酸水溶液(4L;シグマアルドリッチ社製、クエン酸、1級)に混合し、撹拌後、ろ過し、沈殿物を得た。
(6)得られた沈殿物を上記実施例1(4)以降と同様の方法で洗浄して、最終的に400g(平均キチン濃度6.8重量%)のキチンスラリーを得た。収率は68%であった。この際、使用した洗浄用イオン交換水は約100Lであり、最終的な排水の導電率も0.122mS/mであった。したがって、炭酸水素ナトリウムによる洗浄、およびクエン酸による洗浄を行った場合、蒸留水のみによる洗浄よりも効率よく洗浄できていた。
〔実施例4〕
上記製造例1と同様の方法で調製した再生キチン(1.000g;アセチル化度97.5%、タンパク質含量0.01重量%)を、上記実施例1(1)と同様の方法で調製した塩化カルシウム2水和物飽和メタノール溶液(137mL)に添加し、55℃に温調されたウォーターバス中で保温しながら、撹拌機にて7時間撹拌して溶解させた。
上記溶液をPP製ハイスピードロートにろ布(平均孔径130μm、平均網目数4目/mm)にてろ過を行い、100mLおよび125mLのろ過に必要とされた時間(ろ過時間)を測定した。
その結果、100mLのろ過には397秒、および125mLのろ過には1680秒必要であった。
ろ過後、ろ布上およびろ布内に残留したゲル状物質の重量およびその乾燥重量を測定した。ゲル状物質量は5.813gであり、その乾燥重量は0.178gであった。
上記のキチン溶液を希釈し、洗浄して、キチンスラリーを得た。
〔実施例5〕
アセチル化度が高い再生キチン(アセチル化度98.7%、タンパク質含量0.01重量%)を使用した以外は、上記実施例4と同様にして、キチン溶液を得、これをろ過し、ろ過時間およびろ過の残留物の量を測定した。
その結果、100mLのろ過には300秒、および125mLのろ過には721秒必要であった。
残留ゲル状物質量は5.674gであり、その乾燥重量は0.111gであった。
上記のキチン溶液を希釈し、洗浄して、キチンスラリーを得た。
〔実施例6〕
上記実施例4で使用した再生キチン(アセチル化度97.5%、タンパク質含量0.01重量%)を乾燥機(東京理科器械(株)製「EYELA VOS301SD」)を用いて50℃、12時間真空乾燥した後、上記実施例4と同様にして、キチン溶液を得、これをろ過し、ろ過時間およびろ過の残留物の量を測定した。
その結果、100mLのろ過には406秒、および125mLのろ過には1200秒必要であった。
残留ゲル状物質量は測定できず、および乾燥重量は0.222gであった。
上記のキチン溶液を希釈し、洗浄して、キチンスラリーを得た。
〔実施例7〕
上記実施例4で使用した再生キチン(アセチル化度97.5%、タンパク質含量0.01重量%)を乾燥機(東京理科器械(株)製「EYELA VOS301SD」)を用いて100℃、12時間真空乾燥した。その後、上記実施例4と同様にして、キチン溶液を得、これをろ過し、ろ過時間およびろ過の残留物の量を測定した。
その結果、100mLのろ過には296秒、および125mLのろ過には945秒必要であった。
残留ゲル状物質量は6.971gであり、その乾燥重量は0.337gであった。
上記のキチン溶液を希釈し、洗浄して、キチンスラリーを得た。
〔実施例8〕
(1)上記実施例4と同様の方法で調製したキチン溶液50ml(キチン含有量0.4g、キチンアセチル化度97.5%、キチンタンパク質含量0.01重量%)に炭酸水素ナトリウム(1g;シグマアルドリッチ社製、炭酸水素ナトリウム、特級)を混合し、撹拌後、ろ過し、沈澱物を得た。その際のpHは、4.5であった。
(2)得られた沈殿物を1%(w/v)クエン酸水溶液(300ml;シグマアルドリッチ社製、クエン酸、1級)に混合し、撹拌後、ろ過した。
(3)得られた沈殿物をイオン交換水による洗浄およびろ過を繰り返し、最終的に5.2gのキチンスラリーを得た。収率は38%であった。
〔比較例1〕
甲陽ケミカル(株)製「キチンTCL」を粉砕し、60mesh/inchの篩に掛け、分級した。このキチン(1.000g)を、上記実施例4と同様にして、塩化カルシウム2水和物飽和メタノール溶液(137mL)に溶解し、ろ過した。
100mLのろ過において、5400秒経過後もろ過しきれないキチン溶液が存在した。したがって、ろ過時間を5400秒以上とした。
残留ゲル状物質量は20.367gであり、その乾燥重量は0.4734gであった。
〔比較例2〕
上記実施例1(1)と同様の方法で調製した塩化カルシウム2水和物飽和メタノール溶液(2L)に、甲陽ケミカル(株)製「キチンTCL」(12.5g)を添加した。この混合物をビーカーに入れ、60℃に温調されたウォーターバスで保温しながら、撹拌機(IKA社製、LABORTECHNIK RW20.n)を用いて撹拌し、キチンを溶解させた。
上記溶液を、ろ布(平均孔径約0.2mm、平均網目数約4個/mm)を用いてろ過したところ、ゲル状物質がろ布につまり、ろ過が停止した。
手でもってろ布を絞り上げ、不溶物をろ過した。この際、ほとんどのゲル状物質がろ布を通り抜け、キチン溶液中に混入した。
上記実施例1と同様の方法で洗浄し、最終的に128g(平均濃度2.2重量%)のキチンスラリーを得た。収率は22%であった。
Figure 0004868428
Figure 0004868428

Claims (7)

  1. (a)タンパク質含量0.01重量%以下およびアセチル化度96%以上のキチンを、メチルアルコールまたはエチルアルコールからなるアルコールと、ハロゲン化カルシウム塩またはハロゲン化マグネシウム塩とを含んでなる溶媒に溶解して、キチン溶液を得る工程と、
    (b)キチン溶液をろ過して不溶物を除去する工程と、
    (c)ろ過されたキチン溶液を水で希釈し、必要に応じて、生成したキチンの沈殿を水洗し、または透析を行い、溶液中に含まれるカルシウムイオンまたはマグネシウムイオンとアルコールを水分子で置換して、水和キチンスラリーを得る工程と
    を含む、水和キチンスラリーの製造方法。
  2. (d)キチン溶液または水和キチンスラリーに炭酸ガスおよび/または炭酸水素ナトリウムを添加して、残留するアルコールを分離する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. (e)キチン溶液または水和キチンスラリーに、有機酸を添加して、残留するカルシウムイオンまたはマグネシウムイオンを分離する工程をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
  4. 有機酸が、クエン酸、コハク酸、無水コハク酸、グルタミン酸、エチレンジアミン酸およびアスコルビン酸からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
  5. 工程(a)に使用されるキチンが、60℃以上の温度で乾燥させたものである、請求項1に記載の方法。
  6. 工程(a)に使用されるキチンが、再生キチンである、請求項1に記載の方法。
  7. 工程(a)に使用されるキチンが、脱O−アシル化されたものである、請求項1に記載の方法。
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